特許第5982493号(P5982493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982493
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】半同軸共振器
(51)【国際特許分類】
   H01P 7/04 20060101AFI20160818BHJP
   H01P 1/205 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   H01P7/04
   H01P1/205 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-538101(P2014-538101)
(86)(22)【出願日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】JP2013004404
(87)【国際公開番号】WO2014049922
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年3月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-212630(P2012-212630)
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513311642
【氏名又は名称】ノキア ソリューションズ アンド ネットワークス オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】住吉 高志
(72)【発明者】
【氏名】橘 稔人
【審査官】 米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−017606(JP,U)
【文献】 実開平02−090504(JP,U)
【文献】 特開昭59−004202(JP,A)
【文献】 特開昭59−139701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 7/04
H01P 1/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状の第1素子と、前記第1素子の一端に締結された正方形状かつ板状で正方形の一辺にネジ孔の縦半分が形成された第2素子とを有する共振体と、
箱状の筐体と、
を具備し、
複数の前記共振体が、互いに正方形の一辺を近づけて、前記筐体内に配置される、
半同軸共振器。
【請求項2】
円柱形状の第1素子と、前記第1素子の一端に締結された正方形状かつ板状で正方形の対向する二辺にネジ孔の縦半分がそれぞれ形成された第2素子とを有する共振体と、
箱状の筐体と、
を具備し、
複数の前記共振体が、互いに正方形の一辺を近づけて、前記筐体内に配置される、
半同軸共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SIR(Stepped Impedance Resonator)構造を有する半同軸共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおける基地局に対する小型軽量化、低コスト化の要求は高い。基地局は、無線信号の送受信を行う際、希望波以外の不要波を抑圧するために、送信時には送信フィルタを用い、受信時には受信フィルタを用いる。送信フィルタおよび受信フィルはバンドパスフィルタであり、以下の説明ではこれらを総称してフィルタと呼ぶことがある。
【0003】
各フィルタにおいて通過帯域の挿入損失が高いと、送信フィルタでは主に電力効率が劣化し、受信フィルタでは雑音指数(NF:Noise Figure)が劣化してしまう。このため、フィルタにおける通過帯域の挿入損失を低く抑える必要がある。通過帯域の挿入損失を抑えるためには、共振器に高い無負荷Qが求められる。
【0004】
また、フィルタは、その重量が基地局全体の重量の約30%を占めており、装置の重量に大きく影響している。
【0005】
一般的なTEM(Transverse Electro Magnetic)モードのエアキャビティフィルタを用いる場合、無負荷Qを上げるためには、フィルタの構造を大きくする必要があり、小型軽量化と相反する結果となってしまう。また、誘電体フィルタを用いる場合、小型軽量化は可能だがコストが増加してしまう。そこで、小型軽量化および低コスト化を実現するフィルタに用いられる半同軸共振器が特許文献1に開示されている。なお、半同軸とは、同軸線路の一端が短絡しているものである。
【0006】
特許文献1に開示の共振器(λ/4エア半同軸共振器)では、筐体(外導体)を箱型とし、筐体に収容する共振体(内導体)のオープン端を円盤形状とすることにより、低インピーダンス化を図って波長短縮を行っている。これにより、共振体及び筺体の低背化(容積減)を実現している。
【0007】
一般に、共振体は複数用いられるため、特許文献1に開示の共振器において、2つの共振体を用いた様子を図1に示す。図1に示すように、2つの共振体の電磁界結合を減少させるため、2つの共振体の間に筐体側面から内側に向けてせりだした壁が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−172003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1に開示の共振体を複数用いた共振器を小型化する場合、筐体を小さくするか、共振体オープン端の円盤形状を大きくするしか方法がなく、どちらの方法も壁と共振体との間の距離が近くなるため、電流の流れが阻害され、無負荷Qが劣化してしまう。このため、通過帯域の挿入損失を低く抑えることができないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、通過帯域の挿入損失を抑制し、小型軽量化および低コスト化を図る半同軸共振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半同軸共振器は、円柱形状の第1素子と、前記第1素子の一端に締結された正方形状かつ板状の第2素子とを有する共振体と、箱状の筐体と、を具備し、複数の前記共振体が、互いに正方形の一辺を近づけて、前記筐体内に配置される構成を採る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通過帯域の挿入損失を抑制し、小型軽量化および低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】特許文献1に開示の共振器において、2つの共振体を用いた様子を示す図
図2】本発明の一実施の形態に係る半同軸共振器の構成を示す斜視図
図3】(a)半同軸共振器を構成する共振体の上面図、(b)共振体の正面図(および背面図)、(c)共振体の底面図
図4】共振体間の結合の度合いを調整するネジを螺入するネジ孔を低インピーダンス部の一辺に形成した様子を示す図
図5】共振体間の結合の度合いを調整するネジを螺入するネジ孔を低インピーダンス部の対向する二辺に形成した様子を示す図
図6】共振体間の結合の度合いを調整しない場合の共振体を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(一実施の形態)
図2は、本発明の一実施の形態に係る半同軸共振器100の構成を示す斜視図である。また、図3(a)は半同軸共振器100を構成する共振体102の上面図、図3(b)は共振体102の正面図(および背面図)、図3(c)は、共振体102の底面図である。以下、図2および図3を用いて半同軸共振器100の構成について説明する。
【0016】
アルミニウムまたは鉄などの金属材料からなる筐体101は、箱型の形状であり、同じくアルミニウムまたは鉄などの金属材料からなる共振体102を収容する。図2では、2つの共振体102−1、102−2(以下、個別の共振体を区別する場合には、枝番を付し、区別しない場合には枝番を付さないものとする)を収容している。筐体101は、共振体102−1、102−2を収容して、開放された一面(図では上面)が金属材料からなる蓋105によって閉じられる。
【0017】
共振体102−1は、円柱状の第1素子(以下、「高インピーダンス部」という)103−1と、高インピーダンス部の開放端に締結された正方形状かつ板状の第2素子(以下、「低インピーダンス部」という)104−1とを有する。同様に、共振体102−2も、高インピーダンス部103−1と、低インピーダンス部104−2とを有する(以下、個別の高インピーダンス部、及び個別の低インピーダンス部を区別する場合には、枝番を付し、区別しない場合には枝番を付さないものとする)。
【0018】
高インピーダンス部103−1、103−2の両端にはそれぞれネジ孔が設けられており、高インピーダンス部103−1、103−2の一端が筐体101の底面に設けられたネジ孔(図示せず)を介して、筐体101の底面とネジで締結され、短絡される。一方、高インピーダンス部103−1、103−2の他端(開放端)が低インピーダンス部104−1、104−2の中央に設けられたネジ孔(図示せず)を介して、低インピーダンス部104−1、104−2とネジで締結される。
【0019】
2つの共振体102−1、102−2は、低インピーダンス部104−1、104−2の正方形の一辺が互いに向き合って配置されている。このように配置された2つの共振体間において、高インピーダンス部同士で磁界結合し、低インピーダンス部同士で電界結合する。
【0020】
このような構成を有する半同軸共振器100は、共振体102の低インピーダンス部104上面と、筐体101の蓋105との間に容量(先頭容量)を形成し、共振体102のリアクタンス成分と先頭容量により、所定の中心周波数で共振する。
【0021】
ここで、低インピーダンス部104の性質について説明する。本実施の形態に係る半同軸共振器100においては、低インピーダンス部間の距離が近いほど、また、対向する一辺の長さが長いほど、電界結合による結合係数が増加する。
【0022】
一般に、2つの共振体間の電磁界結合による結合係数kは、次式(1)によって算出される。
【数1】
【0023】
ただし、kは磁界結合による結合係数を、kは電界結合による結合係数をそれぞれ示す。ここで、k<<1の場合、次式(2)の近似式が成り立つ。
【数2】
【0024】
式(2)より、電界結合による結合係数が高いほど、電磁界結合による結合係数が減少することが分かる。半同軸共振器100では、低インピーダンス部間の距離を近づけること、また、低インピーダンス部104の正方形の一辺を長くすることにより、電界結合による結合係数が増加し、電磁界結合による結合係数が減少する。これにより、2つの共振体間に壁を設ける必要がなくなり、電流の流れが壁によって阻害されなくなるため、高い無負荷Qを得ることができる。この結果、半同軸共振器100を用いたフィルタは、通過帯域の挿入損失を低く抑えることができる。
【0025】
また、低インピーダンス部104の正方形の面積が大きいほど、波長短縮効果があり、高インピーダンス部103を短くすることができるので、半同軸共振器100全体の低背化に寄与する。すなわち、低インピーダンス部104の正方形の一辺を長くすることにより、高い無負荷Qを得ることができる一方で、自ずと正方形の面積が大きくなるため、半同軸共振器100を低背化することができる。
【0026】
このように、本実施の形態によれば、円柱状の第1素子と、第1素子の開放端に締結された正方形状かつ板状の第2素子とを有する共振体を複数、互いに正方形の一辺を近づけて、箱状の金属筐体内に配置することにより、複数の共振体間の電界結合を増加させ、この結果、電磁界結合を減少させることができる。これにより、複数の共振体間に壁を設ける必要がなくなり、電流の流れが阻害されなくなるため、良好な無負荷Qが得られ、通過帯域の挿入損失を抑制することができる。また、壁を設ける必要がなくなることから、第2素子の正方形の面積を大きくすることができ、これによる波長短縮効果により、共振体及び共振器の低背化を実現し、小型軽量化および低コスト化を図ることができる。
【0027】
なお、共振体間の結合の度合いを調整するネジを螺入するネジ孔を低インピーダンス部の対向する一辺同士によって形成してもよい(図4参照)。すなわち、一方の低インピーダンス部の一辺には、ネジ孔の縦半分が形成され、他方の低インピーダンス部の一辺にも、ネジ孔の縦半分が形成される。これらが向き合うことによって、ネジ孔が形成される。
【0028】
同様に、3つ以上の共振体を並べて配置する場合に、2つの共振体に挟まれる低インピーダンス部には、図5に示すように、対向する二辺にそれぞれネジ孔の縦半分が形成される。形成されたネジ孔の縦半分と、この低インピーダンス部の両側に位置する他の低インピーダンス部にそれぞれ形成されたネジ孔の縦半分とによってネジ孔が形成される。なお、参考までに、共振体間の結合の度合いを調整しない場合の共振体を図6に示す。これは、図2および図3に示した共振体と同一である。
【0029】
2012年9月26日出願の特願2012−212630の日本出願に含まれる明細書、図面及び要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明にかかる半同軸共振器は、移動通信システムにおける基地局のフィルタ等に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
100 半同軸共振器
101 筐体
102−1、102−2 共振体
103−1、103−2 高インピーダンス部
104−1、104−2 低インピーダンス部
105 蓋
図1
図2
図3
図4
図5
図6