(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982541
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】可撓性を有する計時器用ガイダンス
(51)【国際特許分類】
G04B 15/14 20060101AFI20160818BHJP
G04B 13/02 20060101ALI20160818BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
G04B15/14 A
G04B15/14 Z
G04B13/02 Z
B81B3/00
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-136645(P2015-136645)
(22)【出願日】2015年7月8日
(65)【公開番号】特開2016-20906(P2016-20906A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2015年7月29日
(31)【優先権主張番号】14176918.2
(32)【優先日】2014年7月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス−ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ストランツル
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第2273323(EP,A2)
【文献】
米国特許第3318087(US,A)
【文献】
仏国特許発明第1502775(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 15/14
B81B 3/00
G04B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向を定める回転軸(Z)のまわりの1つの要素の別の要素に対する回転を可能にする計時器用機構のための弾性回転ガイダンスデバイスであって、
当該デバイスは、構造ブレード(4a、4b)を有し、
これらの構造ブレードはそれぞれ、主要部(3a、3b)と、及び前記主要部から一方の端(8)まで延在する機能的部分(10)とを有するアセンブリー固定部(6)を有し、
前記アセンブリー固定部及び前記機能的部分は、少なくとも2つの延伸部分(17)に設けられた少なくとも1つの溝(12)によって分けられており、これらの延伸部分(17)は、互いに弾性的に接続され、軸方向と交わる半径方向(X、Y)にて延在し、
当該デバイスは、さらに、可撓性を有する当該デバイスの軸方向の両端にて、要素に固定されるように構成するアンカー領域(9、11)が設けられており、
前記構造ブレードは、主平面を定めるシート状材料から形成され、
前記構造ブレードの向きは、可撓性を有する前記ガイダンスの回転軸(Z)が前記構造ブレードの主平面と平行であるように向いている
ことを特徴とする弾性回転ガイダンスデバイス。
【請求項2】
前記シート状材料は、結晶性材料で作られたウェハーである
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
ウェハーである前記シート状材料は、溶着ないし接着によって一体的となった厚みが同じ又は異なる2つの層を有し、
前記構造ブレードは、これらの2つの層の一方の厚みに対応する厚みを有する部分と、及びこれらの2つの層の厚みに対応する厚みを有する部分を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記主要部は、当該デバイスの回転軸(Z)を包含する当該デバイスの中央部にある
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のデバイス。
【請求項5】
少なくとも1つの前記構造ブレード(4b)の前記主要部(13b)は、他の構造ブレード(4a)の一部が半径方向に挿入されるように構成するアセンブリー空欠部(14)を有し、これによって、前記構造ブレードの対応する前記アセンブリー固定部どうしが交差する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
前記構造ブレード(4b)のうちの1つは、前記アセンブリー空欠部を形成する溝(14)を有し、
他の構造ブレード(4a)の機能的部分は、この構造ブレード(4a)の主要部(13a)が前記構造ブレード(4b)の主要部(13b)に対して当接するまで前記溝に挿入される
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のデバイス。
【請求項7】
前記構造ブレードはそれぞれ、実質的に二次元的プロセスにおける堆積及び/又はエッチングのプロセスで形成される
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記構造ブレードは、シリコンベースの材料で作られる
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記構造ブレードはそれぞれ、前記主要部の横側の両方で半径方向に延在する機能的部分を有し、
この主要部は、前記構造ブレードの端(8)に対して回転する中央部を形成する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記構造ブレードの両端(8)は、自由端である
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
当該デバイスは、前記回転軸(Z)のまわりを回転させる発振器ないし要素のためのばねと支持体を構成している
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
前記構造ブレードのそれぞれは、前記アセンブリー固定部から延在する機能的部分を1つのみ有し、これらの機能的部分は、「V字」構成を形成する
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のデバイス。
【請求項13】
前記構造ブレードは、弾性部分(16)を有する複数の機能的な延伸部分を形成するように、軸方向にて離れて配置される複数の溝を有する
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のデバイス。
【請求項14】
前記構造ブレードはそれぞれ、モノリシック構造を形成している
ことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のデバイス。
【請求項15】
当該デバイスは、2つの構造ブレードで形成されている
ことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のデバイス。
【請求項16】
前記構造ブレードそれぞれの前記アセンブリー固定部は、空欠部ないしアセンブリー凹部(14)、及びアセンブリー延伸部分(15)を有し、これらは、対応するものどうしが交差し半径方向に嵌められて一体的にロックされる
ことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のデバイス。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載のデバイスを有する
ことを特徴とする腕時計用ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する計時器用ガイダンスに関し、特に、腕時計用ムーブメントの1つの要素の回転軸のまわりの回転を可能にするような弾性回転ガイダンスデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
計時器用ムーブメント内には、回転軸のまわりを回転する部品がいくつかある。例えば、パレット、エスケープデバイスのバランス車である。これらの回転する要素のいくつかは、ばねにつながれている。他の振動する要素としては、例えば、エスケープデバイスのバランス車がある。機械的な腕時計においては、高出力のムーブメントを備えると有利である。パワー貯蔵量を減らさないためである。回転する部品のベアリングにおける摩擦によるエネルギー損失は、エネルギー損失の最も大きな原因の1つである。機械的な腕時計にとって、部品のQも重要な考慮事項である。
【0003】
このような損失を減らすために、欧州特許出願EP2273323で記載されているような、ベアリングのないピボットのまわりを振動する可撓性回転ガイダンスが知られている。この可撓性ガイダンスは、シリコンウェハーをエッチングして得られたシリコン部品を有し、これは、フレーム、弾性ブレード及び中央取り付け体を有するモノリシック構造を形成している。発振機能のために十分に堅牢性を有するフレーム及び十分に大きな回転振幅を得るために、上記の複数のモノリシック構造が、お互いの上に積み重ねられている。この構造の不利な点の1つは、三次元のモノリシック要素の製造コストが高いということである。さらに、半径方向に延在するばねブレードは、デリケートであって、所望の機能に対する最適な形を有していない。この所望の機能とは、すなわち、回転軸に垂直な平面内で大きな可撓性を有し、回転軸の方向で大きな剛性を有することである。実際に、シリコンウェハーをその表面に垂直な方向にエッチングしてブレードを得るので、ブレードの厚みの制御を高精度で制御するのは難しい。このことは、パフォーマンスに悪影響を与え、特に、詳細に決められている可撓性、堅牢性及び弾性のパラメーターに対して悪影響を与えてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の1つは、コンパクトで、製造するのに経済的で、使用時のパフォーマンスが良好な弾性回転ガイダンスデバイスを提供することである。
【0005】
特定の機能のために、大きな回転角を可能にする弾性ガイダンスデバイスを提供することは有利である。
【0006】
用途に応じて複雑であるが実装が経済的であるような構造を作ることを可能にするような弾性回転ガイダンスデバイスを製造する方法を提供することは有利である。
【0007】
使用時のエネルギー消費が非常に低い弾性ガイダンスデバイスを提供することは有利である。
【0008】
堅牢性がある弾性ガイダンスデバイスを提供することは有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、請求項1に記載の計時器用機構のための弾性回転ガイダンスデバイスによって達成される。従属請求項においては、本発明の様々な有利な態様について記載されている。
【0010】
本出願において、軸方向を定める回転軸のまわりの1つの要素の別の要素に対する回転を可能にするような、計時器用機構のための弾性回転ガイダンスデバイスについて説明する。
【0011】
本デバイスは、構造ブレードを有し、これらの構造ブレードはそれぞれ、主要部と、及び前記主要部から一方の端まで延在する機能的部分とを有するアセンブリー固定部を有し、前記アセンブリー固定部及び前記機能的部分は、少なくとも2つの延伸部分に設けられた少なくとも1つの溝によって分けられており、これらの延伸部分は、互いに弾性的に接続され、軸方向と交わる半径方向にて延在し、当該デバイスは、さらに、可撓性を有する当該デバイスの軸方向の両端にて、要素に固定されるように構成するアンカー領域が設けられている。前記構造ブレードは、主平面を定める、特に、結晶性材料である、シート状材料から形成され、前記構造ブレードの向きは、可撓性を有する前記ガイダンスの回転軸が前記構造ブレードの主平面と平行であるように向いている。
【0012】
一実施形態において、薄型ウェハーは、溶着ないし接着によって一体的となった厚みが同じ又は異なる2つの層を有し、前記構造ブレードは、これらの2つの層の一方の厚みに対応する厚みを有する部分と、及びこれらの2つの層の厚みに対応する厚みを有する部分を有する。
【0013】
一実施形態において、前記構造ブレードそれぞれの前記アセンブリー固定部は、空欠部ないしアセンブリー凹部、及びアセンブリー延伸部分を有し、これらは、対応するものどうしが交差し半径方向に嵌められて一体的にロックされる。
【0014】
一実施形態において、前記主要部は、当該デバイスの回転軸を包含する当該デバイスの中央部にある。
【0015】
一実施形態において、少なくとも1つの前記構造ブレードの前記主要部は、他の構造ブレードの一部が、軸方向に交わる半径方向に挿入されるように構成するアセンブリー空欠部を有し、これによって、前記構造ブレードの前記アセンブリー固定部どうしが交差する。
【0016】
一実施形態において、前記構造ブレードのうちの1つは、前記アセンブリー空欠部を形成する溝を有し、他の構造ブレードの機能的部分は、この構造ブレードの主要部が前記構造ブレードの主要部に対して当接するまで前記溝に挿入される。
【0017】
好ましいことに、前記構造ブレードはそれぞれ、実質的に二次元的プロセスにおける堆積及び/又はエッチングのプロセスで形成される。
【0018】
一実施形態において、構造ブレードは、シリコンベースの材料で作られている。一実施形態において、構造ブレードは、例えば、単結晶シリコンのブロックから切り取られるウェハーで形成される。
【0019】
他の実施形態において、構造ブレードは、Ni、NiP又はアモルファス金属で作ることができ、また、LIGAタイプの電鋳プロセスで形成することができる。
【0020】
構造ブレードは、さらに、アセンブリーを補助する犠牲構造を有することができる。
【0021】
一実施形態において、前記構造ブレードはそれぞれ、前記主要部の横側の両方で半径方向に延在する機能的部分を有し、この主要部は、前記構造ブレードの端に対して回転する中央部を形成する。
【0022】
一実施形態において、ブレードの端は、自由であって揺動している。
【0023】
一実施形態において、当該デバイスは、前記回転軸のまわりを回転する発振器ないし要素のためのばね、また、支持体として、この発振器ないし要素のための別のピボット又は支持体を必要としないように、構成している。
【0024】
一実施形態において、前記構造ブレードのそれぞれは、前記アセンブリー固定部から延在する機能的部分を1つのみ有し、これらの機能的部分は、例えば、実質的に「V字」である構成を形成する。
【0025】
一実施形態において、構造ブレードそれぞれのアセンブリー固定部は、アセンブリー空欠部及びアセンブリー延伸部分を有し、これらの対応するものどうしは、交差し、半径方向に嵌って一体的にロックされる。
【0026】
一実施形態において、前記構造ブレードは、弾性部分を有する複数の機能的な延伸部分を形成するように、軸方向にて離れて配置される複数の溝を有する。
【0027】
一実施形態において、前記構造ブレードはそれぞれ、モノリシック構造を形成している。
【0028】
一実施形態において、当該デバイスは、モノリシック構造の構造ブレードを2つのみ有する。
【0029】
請求の範囲、下記の実施形態についての詳細な説明、及び添付図面を読むことで、本発明の他の目的及び有利な態様を思い浮かべることができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1a】
図1aは、本発明の一実施形態による、計時器用機構のための弾性回転ガイダンスデバイスの概略斜視図である。
【
図1b】
図1bは、アセンブリー時における
図1aの実施形態についての概略斜視図である。
【
図1c】
図1cは、機構におけるガイダンスデバイスの機能を示す概略図である。
【
図2a】
図2aは、本発明の第2の実施形態による、計時器用機構のための弾性回転ガイダンスデバイスの概略分解斜視図である。
【
図2b】
図2bは、本発明の第2の実施形態による、計時器用機構のための弾性回転ガイダンスデバイスの概略分解斜視図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態による、計時器用機構のための弾性回転ガイダンスデバイスの概略斜視図である。
【
図4a】
図4aは、本発明の第4の実施形態による、計時器用機構のための弾性回転ガイダンスデバイスの分解斜視図である。
【
図4b】
図4bは、中立位置にある第4の実施形態の斜視図である。
【
図4c】
図4cは、回転位置にある第4の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面を参照する。弾性回転ガイダンスデバイス2は、構造ブレード4a、4bを有し、これらは、組み立てられて一体的に固定されるように構成し、これによって、弾性回転ガイダンスデバイス2を形成する。構造ブレードはそれぞれ、少なくとも1つの溝12を有し、この溝12は、弾性的に連結され可動である少なくとも2つの部分にこの構造ブレードを分ける。この弾性ガイダンスデバイスは、要素1(例、バランス車又はパレット)の別の要素3(例、フレーム)に対する回転軸Zのまわりの回転を可能にし、これらの要素はそれぞれ、アンカー領域9、11において弾性ガイダンスデバイスに固定される。このアンカー領域9、11は、可撓性ガイダンスデバイスの軸方向の両端に設けられ、この軸方向は、回転軸Zによって定められている。
【0032】
構造ブレード4a、4bは、アセンブリー固定部6と、及びこのアセンブリー固定部6から自由端8まで延在する機能的部分10とを有し、これらのアセンブリー固定部6及び機能的部分10は、少なくとも2つの延伸部分17における少なくとも1つの溝12によって分けられており、これらの延伸部分17は、互いに弾性的に接続されており、軸方向Zと交わる半径方向X、Yに延在する。
【0033】
本デバイスの構造ブレードは、
図1a及び1bに示すようにアセンブリー固定部6の両側に機能的部分を有することができ、あるいは
図2a〜2cに示すようにアセンブリー固定部6の片側にのみ機能的部分が延在することもできる。アセンブリー固定部6は、特定の実施形態又は変種においてデバイスの回転軸Zを包含するデバイス中央部を表すような主要部13を形成することができる。
【0034】
図面において、軸方向は、弾性回転ガイダンスデバイスの回転軸と平行な軸Zによって表されている。半径方向は、垂直方向Zに垂直な平面内に位置する軸X及びYによって示されている。可撓性ガイダンスの用途においては、軸方向において剛性が大きく回転方向において可撓性が大きいことが求められる。
【0035】
アセンブリー固定部6は、主要部13a、13bを有し、構造ブレード4bの少なくとも1つの主要部13bは、空欠部ないしアセンブリー凹部14を有し、これに、他方の構造ブレード4aの一部分が半径方向に挿入されて、アセンブリー固定部6において構造ブレード4a、4bが互いに交差するように構成する。このように2つの構造ブレード4a、4bのアセンブリー固定部が互いに交差することは、非常に有利である。なぜなら、最適な形態で構造ブレードを独立して製造することが可能になるからであり、これによって、弾性回転ガイダンスデバイスが組み立てられた後に軸方向Zにて大きな剛性を有するようにブレードの厚みを定めることができる。実際に、各構造ブレード4a、4bは、実質的に二次元的なプロセスにおけるシリコン又は他の材料の既知の堆積又はエッチングのプロセスによって形成することができる。例えば、フォトリソグラフィーマスクによってである。二次元的プロセスは、単純なフォトリソグラフィープロセスによって定められるマスクによって、ブレードの長さにわたって高精度な厚みを得ることを可能にし、また、ブレードの長さにわたって様々な厚みを有する形を優れた精度で容易に製造することを可能にする。ブレードの増加又は減少の指示は、もっぱら半径方向X、Yに垂直な弾性変位方向Tx、Tyに応じて行うことができる。このプロセスは、単純、経済的で、厚みの容易な制御を可能にして、これによって、軸方向Zにおいて剛性を有するにもかかわらず、高精度な弾性を有し均一で堅牢性を有する構造を有するように良好に制御されるようなブレードを得ることができる。
【0036】
構造ブレードは、材料(特に、結晶性材料)のブロックから切り取られたシート状体で形成され、このシート状体は、一般に「ウェハー」と呼ばれている。材料のブロックは、実際に、単結晶シリコンのブロック、又は集積回路又はマイクロ機械業界向けのウェハーにおいて使用される他の材料のブロックであることができる。構造ブレードのエッチングは、ウェハーの主平面に垂直な方向(ウェハーの切断面と平行である)に行われる。構造ブレードの向きは、軸方向Zに延在する可撓性ガイダンスの回転軸が構造ブレードの主平面と平行であるように、向いている。構造ブレードの弾性変位方向Tx、Tyの性質及び弾性特性は、構造ブレードの主平面に垂直な方向の厚みに結果的に依存し、これらの厚みは、経済的な製造工程において良好に制御することができる。
【0037】
一実施形態において、ウェハーは、溶着又は接着された厚みが同じ又は異なる2つの層を有することができる。これによって、エッチングプロセスで、一又は複数の層の厚みに対応する高精度な厚みを得ることが可能になる。実際に、2つの層間の界面は、境界を定める。これによって、エッチングプロセス時に界面の高さレベルで材料の減少を高精度で止めることが可能になる。このような厚みの形成における精度は、構造ブレードの弾性特性及び耐性を良好に制御するために利点となる。この実施形態において、2つの高さレベルがある構造ブレードを経済的に高精度で製造することができ、これは、一又は複数の層の厚みに対応する厚みを有する部分、及び2つの層の厚みに対応する厚みを有する部分を有する。
【0038】
構造ブレードは、さらに、組み立てを補助する犠牲構造を有することができる。
【0039】
図1b及び1aに示す実施形態において、一方の構造ブレード4bは、アセンブリー空欠部を形成する溝14を有し、他方のブレード4aの機能的部分10は、このブレード4aの主要部13aが前記一方の構造ブレード4bの主要部13bに当接するまで、溝14内に挿入される。図示した変種において、構造ブレード4a、4bはそれぞれ、主要部13a、13bの両側で半径方向に延在する機能的部分10を有し、この主要部13a、13bは、ブレードの端8に対する回転の中央部を形成する。この実施形態において、ブレードの端8は自由である。しかし、いくつかの変種において、これらの端8を、バランス車、フレーム又は別の構造に固定することができる。
【0040】
主要部13a、13bは、アンカー領域9、11において溝12の両側で2つの要素に固定される。この2つの要素の一方は、他方に対して可動である。例えば、一方のアンカー領域9をフレームに固定することができ、他方のアンカー領域を、フレーム対して回転する要素に固定することができる。この実施形態において、本デバイスは、回転要素のために別のピボット又は支持体を必要とせずに、発振器又は回転軸Zのまわりを回転する要素のためのばね及び支持体としてはたらくことができる。しかし、本デバイスを他の構成においても使用することができる。例えば、中央体13をアンカー領域9、11において2つの可動要素に固定し、ブレードの端8をフレームにつなぐことができる。
【0041】
図2a〜2cに示す実施形態を参照する。構造ブレード4a、4bはそれぞれ、アセンブリー固定部6から延在する機能的な延伸部分10を1つのみ有し、これらの機能的な延伸部分10は、「V字」構成を形成する。アセンブリー固定部6の軸方向の端9、11を、互いに対して可動である要素ないし構造につなぐことができる。各構造ブレード4a、4bのアセンブリー固定部6は、アセンブリー空欠部14及びアセンブリー延伸部分15を有し、これらは、互いに交差し、一体的に嵌ってロックされる。これらの2つの構造ブレードを、溶着ないしはんだ処理、接着剤、又はクランプ又は他の機械的なクリッピング手段によって、一体的にロックすることができる。構造ブレード4a、4bは、
図2c、3及び4a〜4cに示すように、軸方向Zにおいて間隔を空けて配置されている複数の溝12を有することができる。これによって、弾性部分16を有する複数の機能的な延伸部分を形成することができる。このことによって、アンカー領域9、11の間の弾性回転の角振幅を大きくすることが可能になる。
【0042】
構造ブレードは、複雑な形であるが、高精度で容易に製造することができる。これは、例えば、
図2a〜2cに示すように、エッチングと堆積それぞれにおける厚み、方向(方向T)を変えることによって行われ、これにおいて、機能的部分が、弾性部分16と、これらの弾性部分16の間に配置された剛性部分18と、さらに一又は複数の半径方向の溝12とを有する。
図4a〜4cに別の例を示す。これにおいて、ブレードが弾性部分16を有し、これらの弾性部分16は、実質的にブレードの全長にわたって延在し、かつ、それらの端8で剛性部分18に接続されており、この剛性部分18は、端8からピボット軸Zまで延在する。弾性部分は、剛性部分の壁よりも薄い壁を有する。
【0043】
構造ブレードの回転方向(方向T)における弾性は、剛性部分18の長さ、弾性部分16の長さをそれぞれ変えることによって、また、軸方向で積み重ねられる半径方向の延伸部分の数、溝の数をそれぞれ変えることによって、それぞれ制御することができる。このことによって、同様に、質量の分布を制御することが可能になり、最終的には、ばね定数だけでなく、共振振動数も同様に制御することができる。特に、一次の弾性系のものについてである。
【0044】
本発明の利点の1つは、構造部品として2つの高さレベルで構造ブレードを製造することができるということである。第1の高さレベルは、非常に精密であることができ、例えば、10μmのオーダーであって、これによって、可撓性を有するブレードを形作ることができる。厚い方の高さレベルは、例えば、400μmの大きさのオーダーであって、これによって、剛性を有するマウンティングを作ることが可能になり、このことによって、溝を有する2つの高さレベルを有するように構成する実質的に平坦な部分を与える。また、交差させて一体的に嵌めることによる2つのブレードの組み立ては、非常に単純に行うことができる。
【0045】
本発明に係る可撓性ガイダンスは、様々な用途のために使用することができる。例えば、腕時計におけるパレットのガイダンス、又は腕時計におけるバランス車のガイダンスとしてであり、これにおいて、バランス車は、回転する摩擦軸もらせん体ももはや有さず、これらの2つの要素は、可撓性ガイダンスで置き換えられる。
【符号の説明】
【0046】
1 要素(例、バランス車)
2 弾性回転ガイダンスデバイス
3 要素(例、フレーム)
4a、4b 構造ブレード
6 アセンブリー固定部
13 主要部
14 アセンブリー空欠部
15 アセンブリー延伸部分
8 自由端
10 機能的部分
17 半径方向の延伸部分
16 弾性部分
18 剛性部分
12 半径方向の溝
9、11 アンカー領域
Z 軸方向/回転軸
X、Y 半径方向
X−Y 半径方向の平面
Z−X、Z−Y 軸平面
Tx、Ty 弾性変位の方向