(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982561
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】医療用補助具
(51)【国際特許分類】
A61M 5/00 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
A61M5/00 500
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-509698(P2015-509698)
(86)(22)【出願日】2013年4月1日
(86)【国際出願番号】JP2013059921
(87)【国際公開番号】WO2014162445
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】和田 哲
【審査官】
田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−103146(JP,U)
【文献】
特開平10−179662(JP,A)
【文献】
実公平03−21227(JP,Y2)
【文献】
実開昭53−119786(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
A61F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足首の血管に対する穿刺または止血を行う際に血管の位置を保持するための医療用補助具であって、
くるぶし近傍を露出させつつ足首の関節を挟んでつま先側部位と下腿側部位にそれぞれ固定される第1の固定部および第2の固定部と、
足首の関節を曲げた状態に維持するように前記第1の固定部と前記第2の固定部を互いに連結する連結部材と
を備えたことを特徴とする医療用補助具。
【請求項2】
つま先側部位から下腿側部位までを覆うと共にくるぶし近傍に開口部を有する靴下状部材を備え、前記第1の固定部および前記第2の固定部は、前記靴下状部材に一体に形成されている請求項1に記載の医療用補助具。
【請求項3】
前記第1の固定部および前記第2の固定部は、それぞれ、つま先側部位および下腿側部位に嵌められる環状部材からなる請求項1に記載の医療用補助具。
【請求項4】
前記第1の固定部および前記第2の固定部は、それぞれ、前記連結部材を係止するための係留部を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用補助具。
【請求項5】
前記連結部材の一端は、前記第1の固定部および前記第2の固定部の一方に固定されており、
前記連結部材の一端が固定されていない前記第1の固定部および第2の固定部の他方は、前記連結部材の他端を係止するための係留部を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用補助具。
【請求項6】
前記連結部材は、前記第1の固定部と前記第2の固定部の間の連結長さを調節する長さ調節機構を有する請求項4に記載の医療用補助具。
【請求項7】
前記連結部材は、前記第1の固定部の前記係留部および前記第2の固定部の前記係留部にそれぞれ通して両端を互いに重ね合わせた状態で固定するベルト状部材からなり、
前記長さ調節機構は、前記ベルト状部材の両端にそれぞれ取り付けられた面ファスナーからなる請求項6に記載の医療用補助具。
【請求項8】
前記連結部材は、前記第1の固定部の前記係留部および前記第2の固定部の前記係留部にそれぞれ通して互いに重ね合わせた状態で固定するベルト状部材からなり、
前記ベルト状部材の一方の面の一端部に第1の面ファスナーが取り付けられると共に前記第1の面ファスナーが取り付けられた面とは異なる面の全面にわたって前記第1の面ファスナーに連結される第2の面ファスナーが取り付けられ、
前記長さ調節機構は、前記第1の面ファスナーおよび前記第2の面ファスナーからなる請求項6に記載の医療用補助具。
【請求項9】
前記連結部材は、前記第1の固定部と前記第2の固定部の間の連結長さを調節する長さ調節機構を有する請求項5に記載の医療用補助具。
【請求項10】
前記連結部材は、前記連結部材の他端を前記係留部に通して、前記連結部材の他端と前記連結部材の一部とを重ね合わせた状態で固定するベルト状部材からなり、
前記長さ調節機構は、前記ベルト状部材の少なくとも2箇所に取り付けられた面ファスナーからなる請求項9に記載の医療用補助具。
【請求項11】
前記連結部材は、両端にそれぞれ前記第1の固定部の前記係留部および前記第2の固定部の前記係留部に引っかけるフックを有する請求項4に記載の医療用補助具。
【請求項12】
前記連結部材は、前記連結部材の他端に、前記係留部に引っかけるフックを有する請求項5に記載の医療用補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療用補助具に係り、特に、後脛骨動脈等の足首の血管に対する穿刺または止血を行う際に血管の位置を保持するための医療用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内にカテーテル等の医療器具を挿入して治療および検査等を行う場合には、通常、穿刺針を用いて皮膚から血管内まで穿刺し、穿刺針を通してガイドワイヤを血管内に挿入し、ガイドワイヤを残して穿刺針を抜去した後、ダイレータを挿入してセットした状態のイントロデューサシースを、残されたガイドワイヤの周囲に覆いかぶせるようにして血管内に挿入し、イントロデューサシースを血管内に残して、ガイドワイヤとダイレータを抜去し、イントロデューサシースを留置する。そして、この留置したイントロデューサシースを通して、血管内に医療器具が挿入される。イントロデューサシースは、治療および検査等が終了した後に抜去されるが、このとき、皮膚の上から穿刺部位を圧迫して止血が行われる。
このような血管への穿刺を伴う作業では、血管内への穿刺時においても、止血時においても、血管の位置を保持する必要がある。
特に、くるぶしの下部付近を走行する後脛骨動脈等、足首を通る血管内に医療器具を挿入する際には、足首の関節を伸ばした姿勢では、後脛骨動脈周辺の筋肉が弛緩して後脛骨動脈の位置が定まらないため、足首の関節を曲げて後脛骨動脈周辺の筋肉を伸ばした状態で、穿刺および止血を行うことが望まれている。ここで、足首の関節を曲げた状態とは、下腿部の中心軸と足裏に平行な平面とがなす角度が90度以下の状態をいう。
【0003】
従来、足首の姿勢を変化させるものとして、例えば、特許文献1に、深部静脈の血流を増加させて血栓を予防するために、手術中あるいは手術後の患者の下肢運動を補助する装置が開示されている。この装置では、下腿を固定する下腿固定部が台座上に配置されると共に、足裏を支持する足裏支持板が台座に回転可能に取り付けられ、モータの駆動力により足裏支持板が台座に対して揺動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−29787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された装置を用いて足首の関節を曲げた状態を維持し、後脛骨動脈に医療器具を挿入しようとしても、足裏支持板を回転するための回転軸がくるぶしの近傍に配置されているため、くるぶしの下部付近への穿刺および止血を行うことが困難である。
また、台座に対する足裏支持板の回転機構および回転駆動のためのモータの装備等により、装置が複雑化すると共に大型化するという問題もあった。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、簡単な構造でありながら足首の姿勢を維持して足首の血管に対する穿刺または止血を行うことができる医療用補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る医療用補助具は、足首の血管に対する穿刺または止血を行う際に血管の位置を保持するための医療用補助具であって、くるぶし近傍を露出させつつ足首の関節を挟んでつま先側部位と下腿側部位にそれぞれ固定される第1の固定部および第2の固定部と、足首の関節を曲げた状態に維持するように第1の固定部と第2の固定部を互いに連結する連結部材とを備えたものである。
【0008】
つま先側部位から下腿側部位までを覆うと共にくるぶし近傍に開口部を有する靴下状部材を備え、第1の固定部および第2の固定部が、靴下状部材に一体に形成されるように構成することができる。
あるいは、第1の固定部および第2の固定部を、それぞれ、つま先側部位および下腿側部位に嵌められる環状部材から形成することもできる。
【0009】
また、第1の固定部および第2の固定部は、それぞれ、連結部材を係止するための係留部を有することが好ましい。
あるいは、連結部材の一端は、第1の固定部および第2の固定部の一方に固定されており、連結部材の一端が固定されていない第1の固定部および第2の固定部の他方が、連結部材の他端を係止するための係留部を有するように構成してもよい。
【0010】
さらに、連結部材は、第1の固定部と第2の固定部の間の連結長さを調節する長さ調節機構を有することが好ましい。この場合、連結部材が、第1の固定部の係留部および第2の固定部の係留部にそれぞれ通して両端を互いに重ね合わせた状態で固定するベルト状部材からなり、長さ調節機構が、ベルト状部材の両端にそれぞれ取り付けられた面ファスナーから形成することができる。また、同様に、連結部材が、第1の固定部の係留部および第2の固定部の係留部にそれぞれ通して互いに重ね合わせた状態で固定するベルト状部材からなり、ベルト状部材の一方の面の一端部に第1の面ファスナーが取り付けられると共に第1の面ファスナーが取り付けられた面とは異なる面の全面にわたって第1の面ファスナーに連結される第2の面ファスナーが取り付けられ、長さ調節機構が、第1の面ファスナーおよび第2の面ファスナーからなるように構成することもできる。このように構成した場合、第2の面ファスナーが、ベルト状部材の第1の面ファスナーが取り付けられた面とは異なる面の全面にわたって取り付けられているため、第1の面ファスナーが第2の面ファスナーに連結できる範囲が広くなり、様々な使用者に対して第1の固定部と第2の固定部の間の連結長さを調節することができる。
【0011】
また、連結部材の一端が第1の固定部および第2の固定部の一方に固定されている場合でも、第1の固定部と第2の固定部の間の連結長さを調節する長さ調節機構を有することが好ましい。この場合、連結部材は、連結部材の他端を係留部に通して、連結部材の他端と連結部材の一部とを重ね合わせた状態で固定するベルト状部材からなり、長さ調節機構は、ベルト状部材の少なくとも2箇所に取り付けられた面ファスナーからなるように構成することができる。
【0012】
あるいは、連結部材は、両端にそれぞれ第1の固定部の係留部および第2の固定部の係留部に引っかけるフックを有していてもよい。
また、連結部材の一端が第1の固定部および第2の固定部の一方に固定されている場合でも、連結部材は、連結部材の他端に、係留部に引っかけるフックを有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、くるぶし近傍を露出させつつ足首の関節を挟んでつま先側部位と下腿側部位にそれぞれ第1の固定部および第2の固定部が固定され、足首の関節を曲げた状態に維持するように連結部材で第1の固定部と第2の固定部を互いに連結するので、簡単な構造でありながら足首の姿勢を維持して足首の血管に対する穿刺または止血を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る医療用補助具を示す側面図である。
【
図2】実施の形態1に係る医療用補助具に用いられた係留部を示し、
図2Aはつま先側部位に配置される第1の係留部、
図2Bは下腿側部位に配置される第2の係留部を示す部分斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る医療用補助具に用いられた連結部材を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る医療用補助具に用いられた連結部材を示す側面図である。
【
図5】実施の形態1の変形例に係る医療用補助具に用いられた連結部材を示す斜視図である。
【
図6】実施の形態1の他の変形例に係る医療用補助具を示す側面図である。
【
図7】実施の形態2に係る医療用補助具に用いられた連結部材を示す側面図である。
【
図8】実施の形態3に係る医療用補助具を示す側面図である。
【
図9】実施の形態4に係る医療用補助具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に実施の形態1に係る医療用補助具の全体構造を示す。医療用補助具は、足首の関節を挟んでつま先側部位Aから下腿側部位Bまでを覆う靴下状部材11を備えている。この靴下状部材11は、つま先側部位Aに装着されて固定される第1の固定部12と、下腿側部位Bに装着されて固定される第2の固定部13とを有している。第1の固定部12には、足の甲側に第1の係留部14が取り付けられ、第2の固定部13には、足の脛側に第2の係留部15が取り付けられ、これら第1の固定部12と第2の固定部13が、連結部材21により互いに連結されている。
また、靴下状部材11には、くるぶし近傍に対応して矩形状の開口部16が形成されている。この開口部16によりくるぶし近傍が露出され、開口部16を通して後脛骨動脈等に対する穿刺および止血が行われる。
【0016】
第1の係留部14および第2の係留部15は、それぞれ、連結部材21を係止するためのもので、
図2Aおよび2Bに示されるように、アーチ形状を有しており、両端部分が靴下状部材11の表面に固定され、中間部分が靴下状部材11の表面から離れている。
【0017】
連結部材21は、
図3に示されるように、可撓性を有するベルト状部材からなり、連結部材21の一端部の表面側に第1の面ファスナー22か取り付けられると共に、他端部の裏面側に第2の面ファスナー23か取り付けられている。
図4に示されるように、この連結部材21を第1の係留部14および第2の係留部15にそれぞれ通し、一端部の表面側に取り付けられた第1の面ファスナー22と他端部の裏面側に取り付けられた第2の面ファスナー23が互いに対向するように、連結部材21の両端を互いに重ね合わせると、第1の面ファスナー22および第2の面ファスナー23が互いに接着され、第1の係留部14および第2の係留部15の間を連結することができる。
また、連結部材21の両端に取り付けられた第1の面ファスナー22および第2の面ファスナー23は、長さ調節機構を構成しており、第1の面ファスナー22および第2の面ファスナー23の相対位置を互いにずらして接着することにより、第1の係留部14および第2の係留部15の間の長さ、すなわち、第1の固定部12と第2の固定部13の間の連結長さを調節することができる。
【0018】
なお、靴下状部材11は、繊維を織り込んだ布材料、あるいは、繊維を編み込んだ編み地材料、または、ある程度の伸縮性を有する樹脂材料、ゴム材料から形成することができる。第1の固定部12および第2の固定部13は、患者または被検者の負担とならない程度につま先側部位Aおよび下腿側部位Bに密着していることが好ましい。また、開口部16は、穿刺および止血を行うのに十分な大きさを有することが好ましく、例えば、下腿に沿った長さ5〜6cm、幅3〜4cmとすることができる。
第1の係留部14および第2の係留部15は、靴下状部材11と同一の材料から形成することもでき、あるいは、靴下状部材11とは異なる、樹脂材料、金属材料から形成することもできる。
連結部材21は、布材料、編み地材料、樹脂材料、皮革材料等、柔軟性を有する各種の材料から形成することができる。
【0019】
実施の形態1に係る医療用補助具の使用時には、まず、連結部材21を取り付けない状態の靴下状部材11を患者または被検者の足に着用させ、第1の固定部12をつま先側部位Aに、第2の固定部13を下腿側部位Bにそれぞれ装着する。
次に、
図1に示されるように、足首の関節を曲げた状態で靴下状部材11の第1の係留部14および第2の係留部15に連結部材21を通し、連結部材21の両端を互いに重ね合わせて第1の面ファスナー22および第2の面ファスナー23を互いに接着する。これにより、連結部材21の両端が第1の面ファスナー22および第2の面ファスナー23で互いに固定され、第1の係留部14および第2の係留部15を介して第1の固定部12と第2の固定部13が互いに連結される。その結果、患者または被検者の足は、足首の関節を伸ばすことができなくなり、足首の関節を曲げた状態が維持される。
【0020】
足首の関節を曲げた状態が維持されるので、後脛骨動脈周辺の筋肉が伸ばされ、後脛骨動脈の位置が保持されることとなる。この状態で、くるぶし近傍に形成された靴下状部材11の開口部16を通して、後脛骨動脈等に対する穿刺が行われ、治療および検査等が実行される。治療および検査等の終了後は、靴下状部材11の開口部16を通して止血を行うことができる。
【0021】
このように、足に着用した靴下状部材11の第1の係留部14および第2の係留部15にそれぞれ連結部材21を通して、第1の面ファスナー22および第2の面ファスナー23により連結部材21の両端を互いに接着するだけで、足首の関節を曲げた状態が維持され、足首の血管に対する穿刺または止血を効率よく行うことが可能となる。
なお、第1の面ファスナー22および第2の面ファスナー23を用いて連結部材21の両端を互いに接着するため、患者または被検者による足形状のバラツキ、足首の関節の柔軟性のバラツキ等を吸収して、個々の患者または被検者に適した曲げ状態に足首の関節を維持することができる。
【0022】
また、連結部材21の代わりに、
図5に示されるような連結部材21Aを用いることもできる。この連結部材21Aは、
図3に示した連結部材21と同様に、可撓性を有するベルト状部材からなり、連結部材21Aの一方の面の一端部に第1の面ファスナー22Aが取り付けられると共に、この第1の面ファスナー22Aが取り付けられた面とは異なる面には、連結部材21Aの全長にわたってほぼ全面上に第2の面ファスナー23Aが取り付けられている。
このように構成した場合も、連結部材21Aを第1の係留部14および第2の係留部15にそれぞれ通し、一端部の表面側に取り付けられた第1の面ファスナー22Aと裏面側に取り付けられた第2の面ファスナー23Aが互いに対向するように、連結部材21Aの両端を互いに重ね合わせることで、第1の面ファスナー22Aおよび第2の面ファスナー23Aが互いに接着され、第1の係留部14および第2の係留部15の間を連結することができる。
【0023】
また、連結部材21Aの両面に取り付けられた第1の面ファスナー22Aおよび第2の面ファスナー23Aは、長さ調節機構を構成しており、第1の面ファスナー22Aおよび第2の面ファスナー23Aの相対位置を互いにずらして接着することにより、第1の係留部14および第2の係留部15の間の長さ、すなわち、第1の固定部12と第2の固定部13の間の連結長さを調節することができる。このとき、第2の面ファスナー23Aが連結部材21Aの裏面側の全長にわたって取り付けられているので、連結部材21Aの長さ調節機構の長さ調節可能範囲が広くなり、使用者の身体の大きさ、形状等に合わせて連結部材21Aの長さを容易に調節できるため、より好ましい。
【0024】
なお、上記の実施の形態1では、靴下状部材11に、くるぶし近傍に対応して矩形状の開口部16が形成されていたが、例えば、
図6に示される靴下状部材11Aのように、くるぶし近傍だけでなく、かかと全体が露出した開口部16Aを有していてもよい。
【0025】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、連結部材21または21Aが、第1の係留部14および第2の係留部15にそれぞれ通されて、第1の面ファスナー22および第2の面ファスナー23または第1の面ファスナー22Aおよび第2の面ファスナー23Aにより両端が互いに接着されたが、これに限るものではなく、例えば
図7に示される連結部材31のように、両端にそれぞれ第1の係留部14および第2の係留部15に引っかけるフック32および33を有していてもよい。
患者または被検者の足に着用された靴下状部材11の第1の係留部14および第2の係留部15に連結部材31のフック32および33をそれぞれ引っかけることにより、連結部材31の両端が第1の係留部14および第2の係留部15にそれぞれ係止され、足首の関節を曲げた状態が維持される。
【0026】
この場合、連結部材31は、柔軟性を有する材料から形成してもよく、あるいは、柔軟性を有しない剛体から形成されていてもよい。
このような連結部材31を用いても、足首の関節を曲げ状態に維持することができるが、個々の患者または被検者による足形状のバラツキ、足首の関節の柔軟性のバラツキが大きい場合には、上述した実施の形態1のように、第1の面ファスナー22および第2の面ファスナー23または第1の面ファスナー22Aおよび第2の面ファスナー23Aによる長さ調節機構を有する連結部材21または21Aを用いた方が、患者または被検者に合わせて第1の固定部12と第2の固定部13の間の連結長さを調節することができるので好ましい。
【0027】
実施の形態3
上記の実施の形態1及び実施の形態2では、連結部材21、21A、31が、第1の係留部14および第2の係留部15の各々に対して取り付け・取り外しが可能な部材であるが、これに限るものではなく、連結部材の両端部のうちの一方が、第1の係留部14および第2の係留部15のいずれかに固定された構造となっていてもよい。
図8に示されるように、実施の形態3で用いられる連結部材41では、患者または被検者が第1の係留部14および第2の係留部15を備えた靴下状部材11を足に着用する前から、連結部材41の一端部41aが第2の係留部15を介して靴下状部材11の第2の固定部13に取り外しができないように固定されている。このような連結部材41を用いても、連結部材41の他端部41bを第1の係留部14に通して面ファスナーにより連結部材41の中間部分41cに接着することで、足首の関節を曲げた状態が維持される。
【0028】
この場合、連結部材41の一端部41aは、第2の係留部15を介さずに、靴下状部材11の第2の固定部13に直接固定されていてもよい。
連結部材41は、柔軟性を有する材料から形成してもよく、あるいは、柔軟性を有しない剛体から形成されていてもよい。また、靴下状部材11に固定されていない連結部材41の他端部41bを面ファスナーにより連結部材41の中間部分41cに接着する代わりに、実施の形態2で用いたようなフックを介して連結部材41の他端部を第1の係留部14に連結することもできる。ただし、足首の関節を曲げた状態に維持する際に、個々の患者又は被検者による足形状のバラツキ、足首の関節の柔軟性のバラツキが大きい場合には、靴下状部材11に固定されていない連結部材41の他端部41bと第1の係留部14との連結は、面ファスナーを使用した方が長さを調整できるために好ましい。ここで、連結部材41の中間部分41cとは、連結部材41の一端部41aと連結部材41の他端部41bとの間の領域をいう。また、実施の形態3の場合、連結部材41は、連結部材41の他端部41bを第1の係留部14に通して、連結部材41の他端部41bと中間部分41cとを重ね合わせて状態で固定するベルト状部材からなり、ベルト状部材の一方の面の他端部41bと中間部分41cに面ファスナーが取り付けられている。
【0029】
さらに、
図8に示される靴下状部材11には、第2の固定部13の近傍に、連結部材41を収納するための収納部42が形成されている。収納部42は、例えば、面ファスナーからなり、足首の関節を曲げた状態で維持しない際に、連結部材41の他端部41b側に取り付けられた面ファスナーが接着されることで、連結部材41の位置を第2の固定部13の近傍に固定することができる。このような構成とすれば、穿刺等を行う手技前後に靴下状部材11を着用していても、連結部材41が歩行時に邪魔になることはない。
なお、収納部42を、靴下状部材11に一体に形成された袋状部材から構成し、足首の関節を曲げた状態で維持しない際に、連結部材41の他端部41b側の部分を袋状部材からなる収納部42内に収納するように構成してもよい。
【0030】
また、上記の実施の形態3では、連結部材41の一端部41aが、第2の係留部15を介して靴下状部材11の第2の固定部13に取り外しができないように固定されていたが、これに限るものではない。連結部材41の一端部41aが、第1の係留部14を介して靴下状部材11の第1の固定部12に取り外しができないように固定される、あるいは、第1の係留部14を介さずに靴下状部材11の第1の固定部12に直接固定されていてもよい。この場合、連結部材41の他端部41bを靴下状部材11の第2の係留部15に連結することにより、足首の関節を曲げた状態を維持することができる。
【0031】
実施の形態4
図9に実施の形態4に係る医療用補助具を示す。この医療用補助具は、
図1に示した実施の形態1の医療用補助具において、つま先側部位Aから下腿側部位Bまでを覆う靴下状部材11の代わりに、つま先側部位Aに嵌められる第1の環状部材51Aと、下腿側部位Bに嵌められる第2の環状部材51Bを用いたものであり、第1の環状部材51Aにより、つま先側部位Aに装着される第1の固定部52が形成され、第2の環状部材51Bにより、下腿側部位Bに装着される第2の固定部53が形成されている。第1の環状部材51Aと第2の環状部材51Bは、互いに離れて配置されており、くるぶし近傍は、これら第1の環状部材51Aおよび第2の環状部材51Bの間で大きく露出されている。
第1の環状部材51Aおよび第2の環状部材51Bには、実施の形態1と同様の第1の係留部14および第2の係留部15がそれぞれ取り付けられている。
【0032】
第1の環状部材51Aおよび第2の環状部材51Bは、それぞれ実施の形態1の靴下状部材11と同様に、繊維を織り込んだ布材料、あるいは、繊維を編み込んだ編み地材料、または、ある程度の伸縮性を有する樹脂材料、ゴム材料から形成することができる。さらに、両端にそれぞれ面ファスナーが取り付けられた、可撓性を有するベルト状部材から第1の環状部材51Aおよび第2の環状部材51Bを形成することもできる。ベルト状部材をつま先側部位Aおよび下腿側部位Bにそれぞれ巻き付けて面ファスナーで固定すればよい。
このような第1の環状部材51Aおよび第2の環状部材51Bを用いても、実施の形態1および2と同様に、足首の関節を曲げた状態が維持され、足首の血管に対する穿刺または止血を効率よく行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
11,11A 靴下状部材、12,52 第1の固定部、13,53 第2の固定部、14 第1の係留部、15 第2の係留部、16,16A 開口部、21,21A,31,41 連結部材、22,22A 第1の面ファスナー,23,23A 第2の面ファスナー、32,33 フック、41a 連結部材の一端部、41b 連結部材の他端部、41c 連結部材の中間部、42 収納部、51A 第1の環状部材、51B 第2の環状部材、A つま先側部位、B 下腿側部位。