【文献】
CPRI Specification V5.0 [online],2011年 9月21日,<URL:http://www.cpri.info/downloads/CPRI_v_5_0_2011-09-21.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のような技術では、以下のような課題がある。例えば、上述のようにハフマン符号化によってデータ圧縮を行う場合、ベースバンド信号に対応するサンプル値の頻度分布が時間的に変動すると、データ圧縮率も時間的に変動する。ここで、
図10に一例として示すように、BBUとRFUとの間で伝送されるベースバンド信号の平均電力は、数百ミリ秒程度のオーダで変動し、それに応じて、ベースバンド信号に対応するサンプル値
(振幅値)の頻度分布も、同様のオーダで変動する。このため、ハフマン符号化による圧縮におけるデータ圧縮率は、時間的に変動することになる。その結果、BBUとRFUとの間で伝送されるベースバンド信号を圧縮する際のデータ圧縮率を十分に確保することができず、所要のデータ圧縮率(例えば50%)を達成できない可能性がある。
【0008】
また、ベースバンド信号サンプルの1次または高次の差分の計算及びその符号化によってデータ圧縮を行う場合、サンプル値
(振幅値)の差分の符号化に要するビット数を、ベースバンド信号の時間的な変動によって、所要のデータ圧縮率を達成するビット数に抑えることができない場合が起こりうる。この場合、圧縮に伴う信号品質の劣化を抑えつつ、所要のデータ圧縮率を達成することができない可能性がある。
【0009】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。本発明は、基地局システムにおいてBBUとRFUとの間の通信回線で伝送されるベースバンド信号を、圧縮に伴う信号品質の劣化を抑えつつ、より高いデータ圧縮率で圧縮することを可能にする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る基地局システムは、ベースバンドユニットと、通信回線を介して前記ベースバンドユニットと接続された無線周波数(RF)ユニットと、を備える基地局システムであって、前記RFユニットは、前記ベースバンドユニットへの送信用のベースバンド信号に対応するデジタル信号を、サンプルデータとして生成する生成手段と、前記生成手段によって生成されるサンプルデータが示す
振幅値の出現頻度を測定し、出現した
振幅値と出現頻度との関係を表す頻度分布を生成する測定手段と、前記サンプルデータを圧縮するための、
振幅値の量子化処理に用いる複数の閾値を、前記測定手段によって生成された頻度分布に応じて決定する決定手段と、前記決定手段によって決定された複数の閾値を用いた量子化処理により前記サンプルデータを圧縮することで、前記ベースバンドユニットに送信すべき圧縮データを生成する圧縮手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の別の一態様に係る基地局システムは、ベースバンドユニットと、通信回線を介して前記ベースバンドユニットと接続された無線周波数(RF)ユニットと、を備える基地局システムであって、前記ベースバンドユニットは、前記RFユニットへの送信用のベースバンド信号に対応するデジタル信号を、サンプルデータとして生成する生成手段と、前記生成手段によって生成されるサンプルデータが示す
振幅値の出現頻度を測定し、出現した
振幅値と出現頻度との関係を表す頻度分布を生成する測定手段と、前記サンプルデータを圧縮するための、
振幅値の量子化処理に用いる複数の閾値を、前記測定手段によって生成された頻度分布に応じて決定する決定手段と、前記決定手段によって決定された複数の閾値を用いた量子化処理により前記サンプルデータを圧縮することで、前記RFユニットに送信すべき圧縮データを生成する圧縮手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係る通信装置は、基地局システムにおいて、通信回線を介して接続された対向装置と通信する通信装置であって、前記対向装置への送信用のベースバンド信号に対応するデジタル信号を、サンプルデータとして生成する生成手段と、前記生成手段によって生成されるサンプルデータが示す
振幅値の出現頻度を測定し、出現した
振幅値と出現頻度との関係を表す頻度分布を生成する測定手段と、前記サンプルデータを圧縮するための、
振幅値の量子化処理に用いる複数の閾値を、前記測定手段によって生成された頻度分布に応じて決定する決定手段と、前記決定手段によって決定された複数の閾値を用いた量子化処理により前記サンプルデータを圧縮することで、前記対向装置に送信すべき圧縮データを生成する圧縮手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基地局システムにおいてBBUとRFUとの間の通信回線で伝送されるベースバンド信号を、圧縮に伴う信号品質の劣化を抑えつつ、より高いデータ圧縮率で圧縮することができる。
【0014】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0017】
[第1の実施形態]
まず、
図1乃至
図8を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0018】
<基地局システムの構成>
図1は、本実施形態に係る基地局システム100の構成例を示すブロック図である。本実施形態では、基地局システム100は、コアネットワークに接続された収容局(CO:Central Office)110と、無線通信における無線周波数(RF)の処理等を実行する複数のRFユニット(RFU)120a、120bとを備える。収容局110内には、無線通信におけるベースバンド処理等を実行するベースバンドユニット(BBU)130が設けられる。RFU120a、120bはそれぞれ、無線通信のためのサービスエリア140a、140bを形成する。RFU120a、120bは、セルラ通信用のアンテナに接続されており、当該アンテナを介して、自らが形成するサービスエリア内に存在する携帯電話等のユーザ端末との間で無線通信を行う。
【0019】
本実施形態では、
図1に示すように、BBUを複数のRFUに対して個別に設けるのではなく、BBUを収容局110に集約することで、複数のRFUに対してBBUを共通化している。BBU130には、任意の数のRFUを、通信回線150を介して接続可能である。基地局システム100では、一例として、2つのRFU120a、120bがBBU130に接続されている。なお、RFU120a、120bは同様の構成を備えるものとし、以下では、RFU120と記載した場合、RFU120a、120bのそれぞれを示すものとする。
【0020】
通信回線150は、BBU130とRFU120とを結ぶフロントホール回線であり、本実施形態では、CPRIに準拠した光回線(CPRI回線)として構成される。BBU130とRFU120とは、通信回線150を介して、デジタル化されたベースバンド信号を相互に伝送する。
【0021】
図2は、本実施形態に係る基地局システム100における、RFU120及びBBU130の構成例を示すブロック図である。RFU120は、アンテナ201と接続されるとともに、受信部(Rx)202、アナログ‐デジタル変換器(ADC)203、圧縮部204、解凍部205、デジタル‐アナログ変換器(DAC)206、及び送信部(Tx)207を備える。また、BBU130は、解凍部211、信号処理部212、及び圧縮部213を備える。RFU120側の圧縮部204は、通信回線150を介して、BBU130側の解凍部211と接続されている。BBU130側の圧縮部213は、通信回線150を介して、RFU120側の解凍部205と接続されている。圧縮部204、213及び解凍部205、211の構成については、
図3及び
図4を用いて後述する。なお、基地局システム100において、圧縮部204、213、解凍部211、213及び信号処理部212は、ベースバンド信号(サンプルデータ)の同相(I)チャネル成分及び直交(Q)チャネル成分のそれぞれのデータについて、個別に後述する処理を実行する。
【0022】
(上り方向の信号伝送)
まず、基地局システム100における、RFU120からBBU130への上り方向の信号伝送について説明する。RFU120において、1つ以上のユーザ端末から送信された無線信号は、アンテナ201で受信される。アンテナ201で受信された無線信号は、アナログ信号(アナログ電気信号)に変換された後、Rx202によってRFからベースバンド周波数にダウンコンバートされる。これにより、Iチャネル成分及びQチャネル成分を含むベースバンド信号が生成される。Rx202から出力されたベースバンド信号は、ADC203に入力される。
【0023】
ADC203は、入力されたベースバンド信号のIチャネル成分及びQチャネル成分のそれぞれを、サンプリング処理及び量子化処理によって、アナログ信号からデジタル信号に変換して、サンプルデータとして出力する。このサンプルデータには、IチャネルのデータとQチャネルのデータとが含まれる。なお、ADC203は、サンプリング周波数Fsでサンプリング処理を行うとともに、サンプル幅(量子化ビット数)Nビットで量子化処理を行う。ADC203から出力されたサンプルデータは、圧縮部204に入力される。このように、RX202及びADC203は、BBU130への送信用のベースバンド信号に対応するデジタル信号を、サンプルデータとして生成する。
【0024】
圧縮部204は、入力されたサンプルデータに対して、1サンプル当たりNビットのサンプルデータを1サンプル当たりMビット(M<N)のサンプルデータ(圧縮データ)に変換(圧縮)する圧縮処理を実行する。即ち、圧縮部204は、圧縮率(データ圧縮率)M/Nの圧縮処理を実行する。圧縮部204から出力されたMビットの圧縮データは、通信回線150を介してBBU130に送信される。
【0025】
BBU130では、RFU120から通信回線150を介して受信された圧縮データは、まず、解凍部211に入力される。解凍部211は、入力された圧縮データに対して、1サンプル当たりMビットのサンプルデータを1サンプル当たりNビットのサンプルデータに変換(解凍)する解凍処理を実行する。解凍部211から出力されたNビットのサンプルデータは、信号処理部212に出力される。信号処理部212は、入力されたサンプルデータ(ベースバンド信号)に対して所定のベースバンド信号処理(復調、誤り訂正等)を行うことで、ユーザデータを抽出する。
【0026】
(下り方向の信号伝送)
次に、基地局システム100における、BBU130からRFU120への下り方向の信号伝送について説明する。BBU130において、信号処理部212は、1つ以上のユーザ端末を宛先として、RFU120への送信用のベースバンド信号に対応するデジタル信号を、サンプルデータとして生成し、圧縮部213に出力する。圧縮部213は、圧縮部204と同様、入力されたサンプルデータに対して、1サンプル当たりNビットのサンプルデータを1サンプル当たりMビット(M<N)のサンプルデータ(圧縮データ)に変換(圧縮)する圧縮処理を実行する。圧縮部213から出力されたMビットの圧縮データは、通信回線150を介してRFU120に送信される。
【0027】
RFU120では、BBU130から通信回線150を介して受信された圧縮データは、まず、解凍部205に入力される。解凍部205は、解凍部211と同様、入力された圧縮データに対して、1サンプル当たりMビットのサンプルデータを1サンプル当たりNビットのサンプルデータに変換(解凍)する解凍処理を実行する。解凍部211から出力されたNビットのサンプルデータは、DAC206に出力される。DAC206は、入力されたサンプルデータのIチャネル成分及びQチャネル成分のデータを、それぞれアナログ信号に変換して、Tx207に出力する。Tx207は、Iチャネル及びQチャネルの、入力されたアナログ信号を、ベースバンド周波数からRFにアップコンバートし、アンテナ201に出力する。RFのアナログ信号は、アンテナ201から無線信号として送信される。
【0028】
なお、本実施形態では、上り方向の信号伝送では、RFU120が、通信回線150を介して接続された対向装置と通信する通信装置の一例であり、BBU130が、対向装置の一例である。一方、下り方向の信号伝送においては、BBU130が、通信回線150を介して接続された対向装置と通信する通信装置の一例であり、RFU120が、対向装置の一例である。
【0029】
本実施形態では、圧縮部204、213による圧縮処理では、圧縮率を可能な限り高めることを可能にするために、通信回線150を介して送信されるデジタル化されたベースバンド信号(サンプルデータ)に対して非可逆圧縮を行う。即ち、Nビットのサンプルデータから圧縮されたMビット(M<N)のサンプルデータを解凍部205、211によってNビットのサンプルデータに解凍すると、圧縮前のNビットサンプルデータとは異なるデータとなりうる。これにより、RFU120とBBU130との間で伝送されるベースバンド信号の品質が劣化しうる。
【0030】
本実施形態では、圧縮に伴う信号品質の劣化を抑えつつ、ベースバンド信号が時間的に変動する環境下でも高い圧縮率を達成できるようにするために、ベースバンド信号のサンプル値
(振幅値)の頻度分布に応じた不均一(非線形)量子化処理によって圧縮処理を行うことを特徴としている。
【0031】
<圧縮部>
図3は、本実施形態に係るRFU120の圧縮部204の構成例を示すブロック図である。なお、BBU130の圧縮部213も同様の構成を有する。圧縮部204は、バッファ311、頻度分布生成部312、量子化閾値決定部313、符号器314、及び圧縮情報付加部315を備える。圧縮部204に入力されたサンプルデータは、バッファ311に保存されるとともに、頻度分布生成部312に入力される。
【0032】
(頻度分布の生成)
頻度分布生成部312は、Nビットのサンプルデータを用いて、サンプルデータが示すサンプル値
(振幅値)の出現頻度を測定し、出現したサンプル値と出現頻度との関係を表す頻度分布を生成する。頻度分布生成部312は、サンプルデータに含まれるIチャネル及びQチャネルのそれぞれのデータについて、頻度分布を生成する。なお、頻度分布生成部312は、所定のサンプル数に対応するサンプルデータ(サンプルデータ系列)を用いて、頻度分布を生成する。また、頻度分布生成部312は、1サンプルのサンプルデータが入力されるごとに、頻度分布を更新することが可能である。
【0033】
ここで、
図5は、頻度分布生成部312によって生成される頻度分布の一例を示す図である。
図5では、5秒間にわたって受信した実際の上りLTE信号を16ビット(N=16)のデジタル信号に変換し、そのIチャネルのデータを用いて生成した頻度分布を示している。なお、横軸は、Iチャネルのサンプル値(振幅
値)を示し、縦軸は、出現頻度に対応する確率密度を示している。頻度分布生成部312によって生成される頻度分布は、BBU130へ送信されるベースバンド信号の統計的性質に依存する。
図5に示す頻度分布は、正規分布500を示しており、得られた頻度分布が概ね正規分布500で近似できることがわかる。
【0034】
頻度分布生成部312による処理対象となるベースバンド信号(サンプルデータ)が、
図5に示すように正規分布で近似できることが予め分かっている場合には、サンプル値の出現頻度の平均値μ及び標準偏差σを算出することによって、容易に頻度分布を生成できる。この場合、頻度分布生成部312は、入力されたサンプルデータ系列を用いてサンプル値の出現頻度を測定し、その測定結果に基づいて、出現頻度の平均値μ及び標準偏差σ(または分散σ
2)を算出する。更に、頻度分布生成部312は、算出した平均値μ及び標準偏差σによって定まる正規分布N(μ,σ
2)を、頻度分布として生成すればよい。
【0035】
(量子化閾値の決定)
頻度分布生成部312によって生成された頻度分布は、量子化閾値決定部313に入力される。量子化閾値決定部313は、入力された頻度分布に応じて、符号器314でサンプルデータを圧縮(量子化)するための、サンプル値の量子化処理に用いる複数の閾値を決定する。具体的には、例えば、量子化閾値決定部313は、NビットのサンプルデータをMビットのサンプルデータに圧縮(量子化)するために、圧縮の際にサンプル値と比較される2
M個の閾値(以下、「量子化閾値」とも称する。)を生成する。
【0036】
図6及び
図7は、量子化閾値決定部313による、頻度分布に基づく量子化閾値の決定プロセスを模式的に示す図である。
図6では、頻度分布生成部312によって、正規分布で近似した頻度分布600が生成された場合を示している。なお、
図6の横軸は、Nビットのサンプルデータのサンプル値(振幅
値)を10進数で示しており、縦軸は、各サンプル値の出現頻度を示している。量子化閾値決定部313は、
図6に示すように、頻度分布600に基づいて、圧縮率に応じた数(2
M個)の閾値610を決定する。閾値610は、
図7に示すように決定できる。
【0037】
図7では、ADC203による量子化で用いる、N(=6)ビットのサンプルデータを得るための量子化閾値と、圧縮部204による圧縮(量子化)で用いる、M(=3)ビットのサンプルデータを得るための量子化閾値とを示している。なお、ADC203では、間隔が均一の複数の閾値を用いてNビットの量子化が行われ、Nビットのサンプルデータが生成される。一方、圧縮部204では、頻度分布生成部312によって生成された頻度分布に応じて決定される、間隔が不均一な複数の閾値を用いて、NビットサンプルデータがMビットのサンプルデータに変換(圧縮)される。
【0038】
圧縮部204による圧縮で用いる量子化閾値は、頻度分布に応じて、以下のように決定されうる。具体的には、
図7に示すように、量子化閾値決定部313は、サンプル値
(振幅値)が取りうる範囲を複数の閾値で分割して得られる複数の区間のそれぞれについて、当該区間に含まれる
振幅値の出現頻度が高いほど、当該区間の幅(量子化ステップ幅または量子化ステップサイズ)が狭くなるように、複数の閾値を決定すればよい。逆に、
振幅値が取りうる範囲を複数の閾値で分割して得られる複数の区間のそれぞれについて、当該区間に含まれる
振幅値の出現頻度が低いほど、当該区間の幅が広くなるように、複数の閾値を決定すればよい。
【0039】
量子化閾値決定部313による複数の量子化閾値の決定は、頻度分布を用いて、例えば以下のような手法で実現できる。まず、
振幅値が取りうる値の範囲を複数の閾値で分割して得られる複数の区間にそれぞれについて、当該区間に含まれる
振幅値の出現頻度の積分値を算出する。更に、算出した積分値が、当該複数の区間について(可能な限り)等しくなるように、複数の量子化閾値を決定すればよい。具体的には、j番目の量子化閾値と(j+1)番目の量子化閾値との間の区間(量子化ステップ)において
振幅値の出現頻度を積分して得られる値が、j=0,..., 2
M−1のすべてに対して可能な限り等しくなるよう、複数の量子化閾値を決定すればよい。
【0040】
また、量子化閾値決定部313は、決定した複数の量子化閾値に基づいて、ADC203の出力と符号器314の出力との対応関係を決定する。
図8は、N=6、M=3とした場合の、ADC203の出力と符号器314の出力との対応関係の一例を示す図である。量子化閾値決定部313は、サンプル値(振幅
値)が取りうる範囲を、上述のように決定した量子化閾値を用いて分割して得られる、サンプル値の各区間に対して、1つの符号器314出力を割り当てる。例えば、サンプル値(振幅
値)が15〜31(ADC203出力が「001111」〜「011111」)の区間に対して、符号器314の出力として「011」を割り当てる。量子化閾値決定部313は、
図8に示すような、NビットのサンプルデータをMビットのサンプルデータに対応付けた変換テーブルを示すデータを、符号器314及び圧縮情報付加部315に出力する。
【0041】
(圧縮処理)
圧縮部204に入力されたサンプルデータ系列は、量子化閾値決定部313で量子化閾値が決定され、
図8に示すような変換テーブルが生成されるまでの間、バッファ311に保存(バッファリング)される。符号器314は、量子化閾値決定部313で生成された変換テーブルが入力されると、Nビットから成るサンプルデータをバッファ311から順に読み出して、読み出したサンプルデータに対して圧縮処理を行う。このように、符号器314は、頻度分布生成部312による頻度分布の生成に用いたサンプルデータ系列に対し、当該頻度分布に応じて決定した量子化閾値を用いた圧縮処理を適用する。
【0042】
符号器314は、量子化閾値決定部313によって決定された複数の量子化閾値を用いた量子化処理により、サンプルデータを圧縮することで、BBU130に送信すべき圧縮データを生成する。具体的には、符号器314は、量子化閾値決定部313から出力された変換テーブルを参照することで、バッファ311から読み出した、Nビットのサンプルデータ(ADC203の出力)を、対応付けられたMビットのサンプルデータに変換する。これにより、符号器314は、NビットのサンプルデータをMビットのサンプルデータに圧縮して出力する。
【0043】
(送信処理)
符号器314から出力されたサンプルデータ(圧縮データ)は、圧縮情報付加部315に入力される。圧縮情報付加部315は、入力された圧縮データに、受信側となるBBU130の解凍部211における解凍処理で用いる制御情報(圧縮情報)を付加し、通信回線150を介してBBU130に送信する。この制御情報には、量子化閾値決定部313によって決定された複数の量子化閾値を示す情報が含まれ、例えば、
図8に示すような変換テーブルそのものが含まれてもよい。あるいは、圧縮部204と解凍部211とで、異なる複数の頻度分布に対応した複数の変換テーブルを予め保持しておき、頻度分布生成部312によって生成された頻度分布に対応する変換テーブルを使用して、符号器314による圧縮処理を行ってもよい。この場合、圧縮情報付加部315が送信する制御情報には、使用された変換テーブルを示す情報が含まれればよい。また、圧縮情報付加部315は、BBU130に送信する制御情報として、頻度分布生成部312によって算出された平均値μ及び標準偏差σをBBU130に送信してもよい。
【0044】
<解凍部>
図4は、本実施形態に係るBBU130の解凍部211の構成例を示すブロック図である。なお、RFU120の解凍部205も同様の構成を有する。解凍部211は、圧縮情報抽出部411、量子化閾値決定部412、バッファ、及び復号器414を備える。通信回線150を介してRFU120から受信され、解凍部211に入力されたデータは、圧縮情報抽出部411に入力される。
【0045】
圧縮情報抽出部411は、入力されたデータから、圧縮情報付加部315によって圧縮データに付加された制御情報(圧縮情報)を抽出し、当該制御情報を量子化閾値決定部412に出力する。更に、圧縮情報抽出部411は、入力されたデータに含まれる圧縮データを、バッファ413に保存する。量子化閾値決定部412は、圧縮情報抽出部411から入力された制御情報に基づいて、復号器414による解凍処理で用いる複数の量子化閾値を決定する。例えば、量子化閾値決定部412は、制御情報から、
図8に示すような変換テーブルを取り出して、復号器414に出力すればよい。
【0046】
復号器414は、Mビットから成る圧縮データ(サンプルデータ)を順にバッファ413から読み出すとともに、量子化閾値決定部412から入力された変換テーブルを用いて、当該圧縮データを解凍する解凍処理を行う。具体的には、復号器414は、Mビットから成る圧縮データを、Nビットから成るサンプルデータに変換することによって、解凍処理を行う。例えば、復号器414は、Mビットの圧縮データ(符号器出力)に対応する、複数のNビットのADC出力のうちのいずれかを、解凍されたサンプルデータとして出力すればよい。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、
振幅値の出現頻度が高いほど、当該
振幅値に対応する量子化ステップが狭くなるように圧縮処理が行われるため、圧縮前の
振幅値と圧縮後の
振幅値との誤差を低減することができる。一方、圧縮前の
振幅値と圧縮後の
振幅値との誤差が大きくなるのは、
振幅値の出現頻度が低いサンプルデータに限られる。このため、Nビットのサンプルデータに圧縮処理を適用した際に、当該サンプルデータを、Mビット(M<N)のサンプルデータでより精度良く表現することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、頻度分布に応じてデータ圧縮に用いる量子化閾値を適応的に制御することによって、圧縮処理に伴う信号品質の劣化(即ち、量子化雑音)を抑えつつ、高い圧縮率でベースバンド信号を圧縮することが可能となる。
【0048】
なお、頻度分布生成部312によって生成される頻度分布は、最小で1サンプル単位で更新していくことが可能である。このため、圧縮処理及び解凍処理に起因した処理遅延量を、低く抑える(例えば100μs以下)ことが可能である。
【0049】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、サンプルデータの頻度分布を正規分布で近似するとともに、当該正規分布に応じて、サンプルデータを圧縮するための複数の量子化閾値を決定する。本実施形態では、特に、頻度分布(正規分布)の累積分布関数を算出し、算出した累積分布関数に基づいて、複数の量子化閾値を決定することを特徴としている。なお、本実施形態に係る基地局システム100(BBU130、RFU120)の構成(
図1〜
図4)は、第1の実施形態と同様である。以下では、RFU120からBBU130への上り方向のベースバンド信号伝送を例として、基地局システム100の、第1の実施形態とは異なる動作について説明する。
【0050】
<圧縮部>
RFU120の圧縮部204において、頻度分布生成部312は、入力されるサンプルデータが示すサンプル値
(振幅値)の出現頻度を測定し、その平均値μ及び標準偏差σを算出する。頻度分布生成部312は、算出した平均値μ及び標準偏差σによって定まる正規分布N(μ,σ
2)を、頻度分布として生成する。なお、頻度分布生成部312は、第1の実施形態と同様、Iチャネル及びQチャネルのデータのそれぞれについて、頻度分布を生成する。ここで、次式は、正規分布N(μ,σ
2)の確率密度関数f(x)である。
頻度分布生成部312は、算出した平均値μ及び標準偏差σを、
振幅値の頻度分布を示す情報として、量子化閾値決定部313に出力する。
【0051】
量子化閾値決定部313は、式(1)の確率密度関数f(x)に対応する、次式に示す累積分布関数g(x)を生成する。なお、次式でerf()は誤差関数である。
量子化閾値決定部313は、式(2)の累積分布関数g(x)に基づいて、複数の(2
M個の)量子化閾値を決定する。具体的には、量子化閾値決定部313は、累積分布関数g(x)の取りうる値の範囲(即ち、[0,1])を等間隔に分割するための複数の閾値に対応する複数の
振幅値を、複数の量子化閾値として決定する。
【0052】
このように、累積分布関数g(x)の取りうる値の範囲を等間隔に分割する複数のxの値を求めることは、(
振幅値の出現頻度に対応する)確率密度関数f(x)の積分値が等しくなる、xの複数の範囲(区間)を求めることと等価である。このため、このような複数のxの値を求めることによって、上述のように、頻度分布に応じて、複数の量子化閾値を決定することが可能である。即ち、
振幅値が取りうる範囲を複数の閾値で分割して得られる複数の区間のそれぞれについて、当該区間に含まれる
振幅値の出現頻度が高いほど、当該区間の幅が狭くなるよう、複数の閾値を決定できる。また、各区間について、当該区間に含まれる
振幅値の出現頻度が低いほど、当該区間の幅が広くなるように、複数の閾値を決定できる。
【0053】
ここで、
図9を参照しながら、量子化閾値決定部313による複数の量子化閾値の決定プロセスについて、より具体的に説明する。まず、
図9の900に示すように、頻度分布生成部312は、サンプル値
(振幅値)の出現頻度の平均値μ及び標準偏差σを算出することで、実際の頻度分布901を正規分布902(N(μ,σ
2))で近似する。
【0054】
次に、
図9の910に示すように、量子化閾値決定部313は、累積分布関数g(x)に、決定すべき量子化閾値の数2
Mを乗算することで、g(x)を2
Mでスケーリングする。これにより、スケーリングされた累積分布関数g(x)の取りうる値の範囲は、[0,2
M]となる。その結果、g(x)×2
Mが自然数(1,2,...,2
M)となるサンプル値
(振幅値)xを求めることによって、累積分布関数の取りうる値の範囲を等間隔に分割するための複数の閾値に対応する、複数の
振幅値を求めることが可能である。
【0055】
ただし、
振幅値xは、Nビットで表現される離散値であるため、g(x)×2
Mが自然数(1,2,...,2
M)となる
振幅値xを厳密に求めることができない可能性がある。このため、量子化閾値決定部313は、g(x)×2
Mが2
M個の自然数(1,2,...,2
M)にそれぞれ最も近くなる2
M個の
振幅値xを特定し、それを2
M個の量子化閾値として決定すればよい。具体的には、Nビットサンプルデータが示す
振幅値xの取りうる値のうち、g(x)×2
M=j(j=1,2,...,2
M)に最も近い値を、j番目の量子化閾値として決定する(
図9の920)。
【0056】
このようなプロセスによって、j番目の量子化閾値と(j+1)番目の量子化閾値との間の区間における、
振幅値の出現頻度に対応する正規分布N(μ,σ
2)の積分値が、j=1,2,...,2
M−1の全てについて(可能な限り)等しくなるように、複数の量子化閾値を決定することが可能となる。なお、量子化閾値決定部313は、第1の実施形態と同様、決定した複数の量子化閾値に基づいて、
図8に示すような変換テーブルを示すデータを生成し、符号器314及び圧縮情報付加部315に出力する。
【0057】
符号器314は、第1の実施形態と同様の圧縮処理を実行することで、NビットのサンプルデータをMビットのサンプルデータに圧縮して出力する。また、圧縮情報付加部315も、第1の実施形態と同様の処理を実行することで、BBU130の解凍部211における解凍処理で用いる制御情報(圧縮情報)を付加した圧縮データを、通信回線150を介してBBU130に送信する。なお、圧縮情報付加部315は、BBU130に送信する制御情報として、頻度分布生成部312によって算出された平均値μ及び標準偏差σをBBU130に送信してもよい。
【0058】
<解凍部>
BBU130の解凍部211は、第1の実施形態と同様の解凍処理を実行することで、Mビットの圧縮データをNビットのサンプルデータに解凍しうる。ただし、RFU120から、
振幅値の出現頻度の平均値μ及び標準偏差σを制御情報として受信した場合、量子化閾値決定部412は、μ及びσに基づいて、復号器414による解凍処理で用いる複数の量子化閾値を決定する。この場合、量子化閾値決定部412は、RFU120側の量子化閾値決定部313と同様、式(2)に示す累積分布関数g(x)に基づいて、複数の(2
M個の)量子化閾値を決定し、
図8に示すような変換テーブルを示すデータを生成する。
【0059】
復号器414は、第1の実施形態と同様の解凍処理を実行することで、Mビットの圧縮データをNビットのサンプルデータに変換(解凍)して出力する。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様、頻度分布に応じてデータ圧縮に用いる量子化閾値を適応的に制御することによって、圧縮処理に伴う信号品質の劣化を抑えつつ、高い圧縮率でベースバンド信号を圧縮することが可能となる。
【0061】
本発明は上記の実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。したがって、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。