(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982590
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】自動巻き腕時計用の巻き上げデバイス
(51)【国際特許分類】
G04B 5/20 20060101AFI20160818BHJP
G04D 7/02 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
G04B5/20
G04D7/02
【請求項の数】23
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-559523(P2015-559523)
(86)(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公表番号】特表2016-511832(P2016-511832A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】EP2014055662
(87)【国際公開番号】WO2014166719
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年8月26日
(31)【優先権主張番号】13163158.2
(32)【優先日】2013年4月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィルマン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ボルン,ジャン−ジャック
(72)【発明者】
【氏名】クロプフェンスタイン,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ラゴー,パトリック
【審査官】
藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】
スイス国特許出願公開第706352(CH,A3)
【文献】
特開2000−065962(JP,A)
【文献】
特開2010−286428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 5/20
G04D 7/02
G04C 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計自動巻き上げ機構のための巻き上げ用可動部材(50)であって:
前記巻き上げ用可動部材(50)の枢軸(D)上に案内部材(2)を含み;
最大半径(RMAX)の円筒に内接しており;
エネルギチャージ機構を駆動するための手段を含む、巻き上げ用可動部材(50)において、
前記巻き上げ用可動部材(50)は:
前記巻き上げ用可動部材(50)が、可変磁界を用いて前記巻き上げ用可動部材(50)を駆動するための少なくとも1つの強磁性又は帯磁部分を含むこと;及び
前記可動部材が、少なくとも1つの運動式磁性錘(1)を含み、前記少なくとも1つの運動式磁性錘(1)が、原子番号73〜79の重金属製又は原子番号73〜79の重金属を少なくとも80%含む合金製の第2の周辺部分(9)の最小半径(RMIN)よりも小さい半径に亘って延在する、第1の強磁性内側部分(8)を含むこと
を特徴とする、巻き上げ用可動部材(50)。
【請求項2】
前記第2の周辺部分(9)は、少なくとも50質量%のタングステンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の巻き上げ用可動部材(50)。
【請求項3】
前記第2の周辺部分(9)は、少なくとも50質量%のタングステン及び少なくとも20質量%の金を含むことを特徴とする、請求項1に記載の巻き上げ用可動部材(50)。
【請求項4】
前記第2の周辺部分(9)は、少なくとも20質量%の鉄を含むことを特徴とする、請求項1に記載の巻き上げ用可動部材(50)。
【請求項5】
前記第1の内側部分(8)は軟磁性材料製であることを特徴とする、請求項1に記載の巻き上げ用可動部材(50)。
【請求項6】
少なくとも1つの香箱又は機械的エネルギアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための少なくとも1つの運動式機械式錘(3)を含む、腕時計自動巻き上げ機構(10)であって、
前記自動巻き上げ機構(10)は、前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)に加えて、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含むことを特徴とする、腕時計自動巻き上げ機構(10)。
【請求項7】
少なくとも1つの香箱又は機械的エネルギアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための少なくとも1つの運動式機械式錘(3)を含む、腕時計自動巻き上げ機構(10)であって、
前記自動巻き上げ機構(10)は、前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)が、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)であることを特徴とする、腕時計自動巻き上げ機構(10)。
【請求項8】
電気エネルギアキュムレータに電気エネルギをチャージするために超小型発電機を駆動するための、少なくとも1つの運動式機械式錘(3)を含む、腕時計自動巻き上げ機構(10)であって、
前記自動巻き上げ機構(10)は、前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)に加えて、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含むことを特徴とする、腕時計自動巻き上げ機構(10)。
【請求項9】
電気エネルギアキュムレータに電気エネルギをチャージするために超小型発電機を駆動するための、少なくとも1つの運動式機械式錘(3)を含む、腕時計自動巻き上げ機構(10)であって、
前記自動巻き上げ機構(10)は、前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)が、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)であることを特徴とする、腕時計自動巻き上げ機構(10)。
【請求項10】
少なくとも1つの香箱若しくは機械的エネルギアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、又は電気エネルギアキュムレータに電気エネルギをチャージするために超小型発電機を駆動するための、少なくとも1つの運動式機械式錘(3)を含む、腕時計自動巻き上げ機構(10)であって、
前記自動巻き上げ機構(10)は、前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)に加えて、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含む、腕時計自動巻き上げ機構(10)において、
前記腕時計自動巻き上げ機構(10)は、前記少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)が、少なくとも1つの切り欠き部(40)を含む振動錘であることを特徴とする、腕時計自動巻き上げ機構(10)。
【請求項11】
少なくとも1つの香箱若しくは機械的エネルギアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、又は電気エネルギアキュムレータに電気エネルギをチャージするために超小型発電機を駆動するための、少なくとも1つの運動式機械式錘(3)を含む、少なくとも1つの自動巻き上げ機構(10)を含む、時計ムーブメント(100)であって、
前記自動巻き上げ機構(10)は、前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)である、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含むか、又は前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)に加えて、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含む、時計ムーブメント(100)。
【請求項12】
アキュムレータに電気エネルギをチャージするために駆動される少なくとも1つの超小型発電機;及び
少なくとも1つの香箱若しくは機械的エネルギアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、又は電気エネルギアキュムレータに電気エネルギをチャージするために超小型発電機を駆動するための、少なくとも1つの運動式機械式錘(3)を含む、腕時計自動巻き上げ機構(10)
を含む、時計ムーブメント(100)であって、
前記自動巻き上げ機構(10)は、前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)である、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含むか、又は前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)に加えて、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含む、時計ムーブメント(100)。
【請求項13】
少なくとも1つの香箱若しくは機械的エネルギアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、又は電気エネルギアキュムレータに電気エネルギをチャージするために超小型発電機を駆動するための少なくとも1つの運動式機械式錘(3)を含む、少なくとも1つの腕時計自動巻き上げ機構(10)を含む、自動巻き腕時計(200)であって、
前記自動巻き上げ機構(10)は、前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)である、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含むか、又は前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)に加えて、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含む、自動巻き腕時計(200)。
【請求項14】
少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ;及び
腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体(301)
を含む、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)であって、
前記容器型支持体(301)は、前記腕時計の裏蓋に当接して前記裏蓋を受承するよう構成された支承面(302)を含む、デバイス(300)において、
前記デバイス(300)は、前記支承面(302)の下側の放出領域(303)上の固定位置に配置された、渦電流の生成のための生成手段(310)を含み、前記生成手段(310)が、少なくとも1つの主セクタ(340)上で、時間の関数として可変である渦電流を生成することを特徴とする、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)。
【請求項15】
少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ;及び
腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体(301)
を含む、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)であって、
前記容器型支持体(301)は、前記腕時計の裏蓋に当接して前記裏蓋を受承するよう構成された支承面(302)を含む、デバイス(300)において、
前記デバイス(300)は:
前記デバイス(300)が、前記支承面(302)の下側の放出領域(303)上の固定位置に配置された、磁界の生成のための生成手段(310)を含み、前記生成手段(310)が、少なくとも1つの主セクタ(340)上で、時間の関数として可変である少なくとも1つの磁界を生成すること;及び
前記主セクタ(340)が、略直線状の前記放出領域(303)の少なくとも1つの直線状セグメント(307)を含み、前記生成手段(310)が、前記少なくとも1つの直線状セグメント(307)上で、前記支承面(302)に対して直交する方向の、時間の関数として可変である少なくとも1つの磁界を生成すること
を特徴とする、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)。
【請求項16】
少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ;及び
腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体(301)
を含む、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)であって、
前記容器型支持体(301)は、前記腕時計の裏蓋に当接して前記裏蓋を受承するよう構成された支承面(302)を含む、デバイス(300)において、
前記デバイス(300)は:
前記デバイス(300)が、前記支承面(302)の下側の放出領域(303)上の固定位置に配置された、静電界の生成のための生成手段(310)を含み、前記生成手段(310)が、少なくとも1つの主セクタ(340)上で、時間の関数として可変である少なくとも1つの静電界を生成すること;及び
前記主セクタ(340)が、略直線状の前記放出領域(303)の少なくとも1つの直線状セグメント(307)を含み、前記生成手段(310)が、前記少なくとも1つの直線状セグメント(307)上で、前記支承面(302)に対して直交する方向の、時間の関数として可変である少なくとも1つの静電界を生成すること
を特徴とする、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)。
【請求項17】
少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ;及び
腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体(301)
を含む、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)であって、
前記容器型支持体(301)は、前記腕時計の裏蓋に当接して前記裏蓋を受承するよう構成された支承面(302)を含む、デバイス(300)において、
前記デバイス(300)は:
前記デバイス(300)が、前記支承面(302)の下側の放出領域(303)上の固定位置に配置された、磁界の生成のための生成手段(310)を含み、前記生成手段(310)が、少なくとも1つの主セクタ(340)上で、時間の関数として可変である少なくとも1つの磁界を生成すること;及び
前記主セクタ(340)が、略環状の前記放出領域(303)の少なくとも1つの角度セクタ(304)を含み、前記生成手段(310)が、前記少なくとも1つの角度セクタ(304)上で、前記支承面(302)に対して直交する方向の、時間の関数として可変である少なくとも1つの磁界を生成すること
を特徴とする、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)。
【請求項18】
少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ;及び
腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体(301)
を含む、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)であって、
前記容器型支持体(301)は、前記腕時計の裏蓋に当接して前記裏蓋を受承するよう構成された支承面(302)を含む、デバイス(300)において、
前記デバイス(300)は:
前記デバイス(300)が、前記支承面(302)の下側の放出領域(303)上の固定位置に配置された、静電界の生成のための生成手段(310)を含み、前記生成手段(310)が、少なくとも1つの主セクタ(340)上で、時間の関数として可変である少なくとも1つの静電界を生成すること;及び
前記主セクタ(340)が、略環状の前記放出領域(303)の少なくとも1つの角度セクタ(304)を含み、前記生成手段(310)が、前記少なくとも1つの角度セクタ(304)上で、前記支承面(302)に対して直交する方向の、時間の関数として可変である少なくとも1つの静電界を生成すること
を特徴とする、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)。
【請求項19】
少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ;及び
腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体(301)
を含む、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)であって、
前記容器型支持体(301)は、前記腕時計の裏蓋に当接して前記裏蓋を受承するよう構成された支承面(302)を含む、デバイス(300)において、
前記デバイス(300)は:
前記デバイス(300)が、前記支承面(302)の下側の放出領域(303)上の固定位置に配置された、磁界及び/又は静電界の生成のための生成手段(310)を含み、前記生成手段(310)が、少なくとも1つの主セクタ(340)上で、磁界及び/又は静電界であり、かつ方向及び/又は強度及び/又は感度が時間の関数として可変である、少なくとも1つの界を生成すること;並びに
前記生成手段(310)は、前記放出領域(303)上で、前記支承面(302)に対して直交する方向において互いに対して平行な、それぞれ時間の関数として可変である複数の前記磁界を生成すること
を特徴とする、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)。
【請求項20】
少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ;及び
腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体(301)
を含む、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)であって、
前記容器型支持体(301)は、前記腕時計の裏蓋に当接して前記裏蓋を受承するよう構成された支承面(302)を含む、デバイス(300)において、
前記デバイス(300)は:
前記デバイス(300)が、前記支承面(302)の下側の放出領域(303)上の固定位置に配置された、磁界及び/又は静電界の生成のための生成手段(310)を含み、前記生成手段(310)が、少なくとも1つの主セクタ(340)上で、磁界及び/又は静電界であり、かつ方向及び/又は強度及び/又は感度が時間の関数として可変である、少なくとも1つの界を生成すること;並びに
前記生成手段(310)は、前記放出領域(303)上で、前記支承面(302)に対して直交する方向において互いに対して平行な、それぞれ時間の関数として可変である複数の前記静電界を生成すること
を特徴とする、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)。
【請求項21】
少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ;及び
腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体(301)
を含む、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)であって、
前記容器型支持体(301)は、前記腕時計の裏蓋に当接して前記裏蓋を受承するよう構成された支承面(302)を含む、デバイス(300)において、
前記デバイス(300)は:
前記デバイス(300)が、前記支承面(302)の下側の放出領域(303)上の固定位置に配置された、磁界の生成のための生成手段(310)を含み、前記生成手段(310)が、少なくとも1つの主セクタ(340)上で、方向及び/又は強度及び/又は感度が時間の関数として可変である少なくとも1つの磁界を生成すること;並びに
前記生成手段(310)は、前記放出領域(303)の全体又は一部上に複数のコイル(305)のアレイを含むこと
を特徴とする、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)。
【請求項22】
時計アセンブリ(400)であって、
前記時計アセンブリ(400)は、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)を含む、時計アセンブリ(400)であって、
前記デバイス(300)は:
少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ;及び
腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体(301)
を含み、
前記容器型支持体(301)は、前記腕時計の裏蓋に当接して前記裏蓋を受承するよう構成された支承面(302)を含み、
前記デバイス(300)は、前記支承面(302)の下側の放出領域(303)上の固定位置に配置された、磁界の生成のための生成手段(310)を含み、前記生成手段(310)が、少なくとも1つの主セクタ(340)上で、磁界及び/若しくは静電界であり、かつ方向及び/若しくは強度及び/若しくは感度が時間の関数として可変である、少なくとも1つの界、又は時間の関数として可変である渦電流を生成することを特徴とし、
また前記時計アセンブリ(400)は、少なくとも1つの腕時計(200)を含み、
前記腕時計(200)は、自動巻き上げ機構(10)を含み、
前記自動巻き上げ機構(10)は、少なくとも1つの香箱若しくは機械的エネルギアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、又は電気エネルギアキュムレータに電気エネルギをチャージするために超小型発電機を駆動するための、少なくとも1つの運動式機械式錘(3)を含み、
前記自動巻き上げ機構(10)は、前記運動式機械式錘(3)を形成する、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含むか、又は前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)に加えて、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含む、時計アセンブリ(400)において、
前記時計アセンブリ(400)は:
前記デバイス(300)が、前記生成手段(310)を制御するための調節及び制御手段(320)を含むこと;並びに
前記調節及び制御手段(320)並びに前記生成手段(310)が:
‐少なくとも1つの香箱若しくはアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、若しくは電気エネルギアキュムレータをチャージするために超小型発電機を駆動するための、前記少なくとも1つの腕時計(200)が備える少なくとも1つの運動式磁性錘(1);又は
‐前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)と同様に、少なくとも1つの香箱若しくはアキュムレータに機械的エネルギをチャージするために、若しくは電気エネルギアキュムレータをチャージするために超小型発電機を駆動するために配設された、前記少なくとも1つの腕時計(200)が備える前記運動式機械式錘(3)と同軸の少なくとも1つの常磁性導電性ディスク(20);又は
‐少なくとも1つの香箱若しくはアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、若しくは電気エネルギアキュムレータをチャージするために超小型発電機を駆動するための、前記少なくとも1つの腕時計(200)が備える少なくとも1つの運動式磁性錘(1)、及びこれもまた前記少なくとも1つの腕時計(200)が備える、前記運動式機械式錘(3)と同軸の少なくとも1つの常磁性導電性ディスク(20)
を駆動して、場合に応じて磁気結合を用いて前記少なくとも1つの運動式磁性錘(1)を、及び/又は渦電流を用いて前記少なくとも1つのディスク(20)を駆動するよう、適合及びフォーマットされていること
を特徴とする、時計アセンブリ(400)。
【請求項23】
時計アセンブリ(400)であって、
前記時計アセンブリ(400)は、自動腕時計を巻き上げるためのデバイス(300)を含む、時計アセンブリ(400)であって、
前記デバイス(300)は:
少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ;及び
腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体(301)
を含み、
前記容器型支持体(301)は、前記腕時計の裏蓋に当接して前記裏蓋を受承するよう構成された支承面(302)を含み、
前記デバイス(300)は、前記支承面(302)の下側の放出領域(303)上の固定位置に配置された、磁界の生成のための生成手段(310)を含み、前記生成手段(310)が、少なくとも1つの主セクタ(340)上で、磁界及び/若しくは静電界であり、かつ方向及び/若しくは強度及び/若しくは感度が時間の関数として可変である、少なくとも1つの界、又は時間の関数として可変である渦電流を生成することを特徴とし、
また前記時計アセンブリ(400)は、少なくとも1つの腕時計(200)を含み、
前記腕時計(200)は、自動巻き上げ機構(10)を含み、
前記自動巻き上げ機構(10)は、少なくとも1つの香箱若しくは機械的エネルギアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、又は電気エネルギアキュムレータに電気エネルギをチャージするために超小型発電機を駆動するための、少なくとも1つの運動式機械式錘(3)を含み、
前記自動巻き上げ機構(10)は、前記運動式機械式錘(3)を形成する、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含むか、又は前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)に加えて、請求項1に記載の少なくとも1つの巻き上げ用可動部材(50)を含む、時計アセンブリ(400)において、
前記時計アセンブリ(400)は:
前記デバイス(300)が、前記生成手段(310)を制御するための調節及び制御手段(320)を含むこと;並びに
前記調節及び制御手段(320)並びに前記生成手段(310)が:
‐前記少なくとも1つの運動式機械式錘(3)と同様に、少なくとも1つの香箱若しくはアキュムレータに機械的エネルギをチャージするために、若しくは電気エネルギアキュムレータをチャージするために超小型発電機を駆動するために配設された、前記少なくとも1つの腕時計(200)が備える前記運動式機械式錘(3)と同軸の少なくとも1つの常磁性導電性ディスク(20)を、渦電流を用いて駆動するよう;又は
‐少なくとも1つの香箱若しくはアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、若しくは電気エネルギアキュムレータをチャージするために超小型発電機を駆動するための、前記少なくとも1つの腕時計(200)が備える少なくとも1つの運動式磁性錘(1)を、磁気結合を用いて駆動し、かつこれもまた前記少なくとも1つの腕時計(200)が備える、前記運動式機械式錘(3)と同軸の少なくとも1つの前記常磁性導電性ディスク(20)を、渦電流を用いて駆動するよう、適合及びフォーマットされていること
を特徴とする、時計アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計自動巻き上げ機構のための巻き上げ用可動部材に関し、これはその枢軸上に案内部材を含み、最大半径の円筒内接しており、またエネルギチャージ機構を駆動するための手段を含む。
【0002】
本発明はまた、少なくとも1つの香箱又はアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための少なくとも1つの運動式機械式錘を含む、腕時計自動巻き上げ機構にも関する。
【0003】
本発明はまた、少なくとも1つの香箱又は少なくとも1つの機械的エネルギアキュムレータ及び少なくとも1つの上述のような自動巻き上げ機構を含む、時計ムーブメントにも関する。
【0004】
本発明は更に、少なくとも1つの上述のようなムーブメント、並びに/又は少なくとも1つの香箱若しくは少なくとも1つの機械的エネルギアキュムレータ及び少なくとも1つの上述のような自動巻き上げ機構を含む、自動巻き腕時計に関する。
【0005】
本発明は更に、少なくとも1つの電気的アキュムレータ及び腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体を含む、自動腕時計を巻き上げるためのデバイスに関し、上記容器型支持体は、腕時計の裏蓋に当接してこれを受承するよう構成された支承面を含む。
【0006】
本発明は更に、上述のようなデバイス及び少なくとも1つの上述のような腕時計を含む時計アセンブリに関する。
【0007】
本発明は時計学の分野に関し、より詳細には自動腕時計の巻き上げに関する。
【背景技術】
【0008】
常に装着されるわけではない自動巻き腕時計のユーザは、この腕時計を使用したい場合にディスプレイの更新作業を実行しなければならず、これは日付に関しては面倒である場合があり、又はムーンフェイズ若しくは永久カレンダーの閏年といった複雑さに関しては困難であるか若しくは不可能である場合がある。
【0009】
一般には複数の軸の周りで腕時計を回転させることによってユーザの動きをシミュレートして、巻き上げに必要なパルスを振動錘に供給する、腕時計巻き上げ用ケース又は独立した巻き上げ装置が公知である。これらの巻き上げ用ケース又は巻き上げ装置は多くの場合かさばるものであり、高価であり、また上述の動きがユーザの邪魔となる。特にこのような巻き上げ装置は、腕時計を静置して、正確な時間情報を表示した状態、かつデモンストレーションの準備ができている状態で顧客に対して提示しなければならない販売時環境には適していない。
【0010】
特許文献1は、磁性連結手段を含む慣性巻き上げ腕時計を開示している。
【0011】
特許文献2は、振動錘の磁気又は静電気駆動によって自動腕時計を巻き上げるためのデバイスを開示している。
【0012】
特許文献3は、磁気又は静電気駆動による非接触トルク伝達装置を開示している。
【0013】
特許文献4は、枢動式ホゾを有しない自動巻き腕時計を開示している。
【0014】
特許文献5は、電磁デバイスを有する経過時間インジケータを開示している。
【0015】
特許文献6は、静電誘導による腕時計用エネルギ生成デバイスを開示している。
【0016】
特許文献7は、自動渦電流切り替えドライバを開示している。
【0017】
特許文献8は、置き時計を巻き上げるための渦電流モータを開示している。
【0018】
特許文献9は、磁気の影響によって巻き上げ及び時刻設定を行う自動腕時計を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第3058294号
【特許文献2】欧州特許出願第2650735A2号
【特許文献3】スイス特許出願第706352A2号
【特許文献4】仏国特許第1242820号
【特許文献5】仏国特許第2076082号
【特許文献6】特開2010/286428号
【特許文献7】仏国特許第555777号
【特許文献8】仏国特許第759771号
【特許文献9】仏国特許第1546744号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、自動巻き腕時計を巻き上げ、腕時計が装着されていない場合であっても可能な最大パワーリザーブを常に維持するための、単純で安価で小型の手段を、ユーザが入手できるようにすることを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的のために、本発明は、請求項1に記載の腕時計自動巻き上げ機構のための巻き上げ用可動部材に関する。
【0022】
本発明はまた、請求項6又は7に記載の、少なくとも1つの香箱又はアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための少なくとも1つの運動式機械式錘を含む、腕時計自動巻き上げ機構にも関する。
【0023】
本発明はまた、請求項8又は9に記載の、電気的アキュムレータをチャージするために超小型発電機を駆動するための少なくとも1つの運動式機械式錘を含む、腕時計自動巻き上げ機構にも関する。
【0024】
本発明はまた、少なくとも1つの上述のような自動巻き上げ機構を含む時計ムーブメントにも関する。
【0025】
本発明はまた、少なくとも1つの上述のような自動巻き上げ機構を含む自動巻き腕時計にも関する。
【0026】
本発明は更に、少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ及び腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体を含む、腕時計を自動的に巻き上げるためのデバイスに関し、上記容器型支持体は、腕時計の裏蓋に当接してこれを受承するよう構成された支承面を含む。このデバイスは、上記デバイスが、上記支承面の下側の固定位置に配置された、磁界及び/又は静電界の生成のための手段を含み、上記手段が、少なくとも1つの経路上で少なくとも1つの界を生成し、上記1つの界が磁界及び/若しくは静電界であり、並びに/又は強度及び/若しくは方向が時間の関数として可変であることを特徴とする。
【0027】
本発明は更に、上述のようなデバイス及び少なくとも1つの上述のような腕時計を含む時計アセンブリに関する。この時計アセンブリは、上記デバイスが、上記生成手段を制御するための調節及び制御手段を含むこと、並びに上記調節及び制御手段並びに上記生成手段が:
‐少なくとも1つの香箱若しくはアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、若しくは電気エネルギアキュムレータをチャージするために超小型発電機を駆動するための、上記少なくとも1つの腕時計が備える少なくとも1つの運動式磁性錘;又は
‐上記少なくとも1つの運動式機械式錘と同様に、少なくとも1つの香箱若しくはアキュムレータに機械的エネルギをチャージするために、若しくは電気エネルギアキュムレータをチャージするために超小型発電機を駆動するために配設された、上記少なくとも1つの腕時計が備える運動式機械式錘と同軸の少なくとも1つの常磁性導電性ディスク;又は
‐少なくとも1つの香箱若しくはアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、若しくは電気エネルギアキュムレータをチャージするために超小型発電機を駆動するための、上記少なくとも1つの腕時計が備える少なくとも1つの運動式磁性錘、及びこれもまた上記少なくとも1つの腕時計が備える、上記運動式機械式錘と同軸の少なくとも1つの常磁性導電性ディスク
を駆動して、場合に応じて磁気結合を用いて上記少なくとも1つの運動式磁性錘を、及び/又は渦電流を用いて上記少なくとも1つのディスクを駆動するよう、適合及びフォーマットされていることを特徴とする。
【0028】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明による自動巻き上げデバイスと、自動巻き腕時計とを含む、本発明による時計アセンブリの概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明による運動式磁性錘の概略正面図である。
【
図3】
図3は、
図2の運動式磁性錘を、切り欠き部を追加することにより修正して示す。
【
図4】
図4は、本発明による磁石を有する運動式錘の概略正面図である。
【
図5】
図5は、本発明による常磁性導電性ディスクの、複数の開口を含む特定の実施形態の概略正面図である。
【
図6】
図6は、本発明による巻き上げデバイスを形成する回路間、及び腕時計巻き上げ機構の構成部品間の相互作用を示す図である。
【
図7】
図7は、腕時計の裏蓋を受承するために本発明による自動巻き上げデバイスが備える支承面の、デバイスが円形セクタ内に可変の回転界を放出する領域を含む変形例における概略正面図である。
【
図8】
図8は、上記回転界放出領域が直線状セグメント内にある別の変形例を、
図7と同様の様式で示す。
【
図9】
図9は、上記回転界放出領域が別個の複数の直線状セグメント内にある派生変形例を、
図8と同じ様式で示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、自動巻き腕時計を巻き上げるための、単純で安価で小型の手段に関する。
【0031】
これらの手段は、回転界、即ち磁界及び/若しくは静電界であり、並びに/又は強度及び/若しくは方向が時間の関数として可変である界を生成するための手段を含む。以下に示すように、回転界と呼ばれるこの界は、直線、円形又は他のプロファイルのいずれに沿って展開できる。
【0032】
本発明の原理は、香箱等の機械的エネルギアキュムレータをチャージするための可動部材を駆動すること、又は可動部材を形成する材料に応じて電磁力若しくは渦電流を用いて電気的アキュムレータをチャージする超小型発電機を駆動する可動部材を駆動することである。電磁力によって駆動される可動部材をここでは「振動錘(oscillating weight)」と呼び、これは一般に従来の機械式振動錘の形状であるディスクセクタ形状に適合される。渦電流を用いて駆動される可動部材は好ましくは、その枢軸周辺に閉曲面を含み、これ以降の説明ではそのように呼ばれる。振動錘は、例えば並進運動する機械式錘へと制限なく拡張できる。
【0033】
本発明の好ましい実装形態では、これらの巻き上げ手段は、最適な動作のために適合された腕時計と連携する。
【0034】
本発明による巻上げ手段は原則として、従来の鋼鉄製振動錘を駆動できるが、金製の振動錘又は渦電流が最適に流れることができないセクタ形状の振動錘を駆動するために最も良好に即座に適合させることはできない。
【0035】
本発明は、ムーブメントを大幅に変化させることなく、既存の振動錘を巻き上げ機構に容易に適合させることができるように開発されている。これは、標準的な振動錘を、特定の材料組成を有する錘に単純に置換するのに適している。
【0036】
渦電流駆動を使用する変形例では、本発明は、好ましくは腕時計の機械式振動錘と同軸のディスクの追加を提供する。従ってこの原位置の機械式振動錘は、腕時計装着時の巻き上げ又は駆動を保証するために、定位置に配置されたままとしなければならない。よって、特にディスクを、上記機械式振動錘とは独立して、又は上記機械式振動錘と一体として設置することによって、香箱の同一の駆動用角穴車又は別個の角穴車と係合させることができるため、ムーブメントの修正は限定される。これは当然のことながら、超小型発電機駆動にも当てはまり得る。香箱を巻き上げるための香箱の駆動に関連する問題は当業者には公知であり、ここで対処するものではない。
【0037】
腕時計巻き上げ用可動部材の材料の選択は、上記可動部材が受ける界の種類に応じた上記可動部材の最適な挙動に左右される。
【0038】
以下の議論では「透磁性(magnetically permeable)」材料は、例えば天真に関して比透磁率が約100であり、若しくは電子回路に一般的に使用される鋼鉄の場合は比透磁率が約4000である鋼鉄、又は比透磁率が8000〜10000に達する他の合金といった、比透磁率10〜10000の材料を意味する。
【0039】
例えば極片の場合、「磁性材料(magnetic materials)」は、例えば磁性エネルギ密度Emが約512kJ/m
3であり残留磁界が0.5〜1.3テスラとなる「ネオジム‐鉄‐ホウ素(Noedymium Iron Boron)」といった、残留磁界が0.1〜1.5テスラとなるように磁化できる材料を意味する。このタイプの磁性材料を、磁化の対において、上記100〜10000の範囲内で10000により近い比較的高い透磁性を有する対応する透磁性構成部品と組み合わせる場合、上記範囲の下限に向かって更に低い残留磁界レベルを使用してもよい。
【0040】
「強磁性材料(ferromagnetic materials)」は、温度T=23℃における飽和磁界Bs>0、温度T=23℃における保磁界HC>0、温度T=23℃における最大透磁率μ
R>2、キュリー温度Tc>60℃という特性を有する材料を意味する。
【0041】
より具体的には、「軟磁性材料(soft magnetic materials)」は、比較的小さい保磁界(Hc<1000A/m)及び小さいヒステリシスサイクルを有するものを意味する。
【0042】
より具体的には、「硬磁性材料(hard magnetic materials)」は、比較的大きい保磁界(Hc>3000A/m)及び比較的大きいヒステリシスサイクルを有するもの、例えば永久磁石を意味する。
【0043】
「常磁性(paramagnetic)」材料は、磁性材料と対応する透磁性構成部品との間又は2つの磁性材料の間に挿入されるスペーサ部品、例えばある構成部品と極片との間のスペーサ部品のための、比透磁率が10001〜100の材料を意味する。例えば低常磁性材料は、アルミニウム、金、真鍮等(透磁率2未満)である。
【0044】
本発明は以下のような様々なデバイスに関する:
‐1つ若しくは複数の「振動」錘1、3、5及び/又は1つ若しくは複数のディスク20で形成され、
○磁性若しくは静電性の引力及び/若しくは斥力によって;又は
○渦電流を用いて
駆動される、腕時計ムーブメントに組み込まれる巻き上げ用可動部材50;
‐巻き上げ機構10;
‐ムーブメント100;
‐腕時計200;
‐巻き上げデバイス300;
‐巻き上げデバイス300及び少なくとも1つの腕時計200を含む時計アセンブリ400。
【0045】
腕時計自動巻き上げ用可動部材50は、その枢軸D上に案内部材2を含む。この可動部材50は、上記軸D上にセンタリングされた最大半径RMAXの円筒に内接しており、また香箱等を駆動するための角穴車といった、エネルギチャージ機構を駆動するための手段を含む。
【0046】
本発明によると、この可動部材50は、可変磁界を用いて可動部材50を駆動するための強磁性若しくは帯磁部分、又は可変静電界を用いて可動部材50を駆動するための帯電部分、又は渦電流を用いて可動部材50を駆動するために十分に大きな直径に亘って枢軸Dを取り囲む常磁性導電性界を含む。最後の場合、この導電性リングは可動部材50の周にあり、従って「ディスク」20と呼ぶことを理解されたい。
【0047】
図2に示す第1の変形例では、巻き上げ用可動部材50は少なくとも1つの磁性振動錘1を含み、これは第2の周上の重金属部分9の最小半径RMINよりも小さい半径に亘って延在する第1の内側強磁性部分8を含む。「重金属(heavy metal)」は、原子番号73〜79の材料又は原子番号73〜79の重金属を少なくとも80%含む合金を意味する。
【0048】
RMIN/RMAX比は好ましくは0.5超である。
【0049】
高慣性磁性振動錘1が実現可能な特定の実施形態では、第2の周上部分9は少なくとも50質量%のタングステンを含む。
【0050】
別の同様の具体的実施形態では、第2の周上部分9は、少なくとも90質量%のタングステン及び少なくとも20質量%の金を含む。
【0051】
これら2つのタングステン系実施形態を組み合わせて、更に別の具体的実施形態では、第2の周上部分9は少なくとも20質量%の鉄を含む。
【0052】
特定の実施形態では、第1の内側部分8は軟磁性材料製である。
【0053】
図3は
図2の変形例を示し、磁性振動錘1は第1の内側部分8に開口40を含む。
【0054】
図4は、磁石を有する少なくとも1つの振動錘5を含む巻き上げ用可動部材50を示し、これは、上記案内部材2に対して中心をずらされた硬磁性材料製の少なくとも1つの構成部品6を含む。
【0055】
別の非限定的な変形例では、巻き上げ用可動部材50は、可変静電界を用いて可動部材50を駆動するための少なくとも1つの帯電部分を含み、上記部分は有利にはエレクトレットを含む。
【0056】
同一の可動部材において特に異なる経路、異なる直径及び/又は異なる面及び/又は異なるステージ上で、磁力によって又は静電力によって又は渦電流を用いて駆動できる複数の領域を組み合わせることができることを理解されたい。多数の可能な組み合わせが存在するが、本説明が多量になりすぎるのを避けるために、これらの組み合わせについてはここでは議論しない。
【0057】
渦電流駆動を用いる変形例に関して、
図5は、少なくとも1つのディスク20を含む巻き上げ用可動部材50を示し、このディスク20は、渦電流を用いて上記可動部材50を駆動するための、上記枢軸Dを取り囲む少なくとも1つの常磁性導電性リングを含む。
【0058】
本発明はまた、腕時計の内部の、少なくとも1つの香箱又はアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための少なくとも1つの機械式振動錘3を含む、腕時計自動巻き上げ機構10にも関する。
【0059】
本発明によると、この巻き上げ機構10は、少なくとも1つの機械式振動錘3に加えて、又はこれに代えて、上述のような少なくとも1つの巻き上げ用可動部材50を含む。
【0060】
特に、少なくとも1つの巻き上げ用可動部材50は、少なくとも1つの切り欠き部40を含む。
【0061】
本発明はまた、少なくとも1つの香箱又は少なくとも1つの機械的エネルギアキュムレータ及び少なくとも1つの上述のような自動巻き上げ機構10を含む、時計ムーブメント100にも関する。
【0062】
本発明はまた、少なくとも1つの超小型発電機及び少なくとも1つの電気エネルギアキュムレータ並びに少なくとも1つの上述のような自動巻き上げ機構10を含む、時計ムーブメント100にも関する。
【0063】
本発明は更に、少なくとも1つの上述のようなムーブメント100、並びに/又は少なくとも1つの香箱若しくは少なくとも1つの機械的エネルギアキュムレータ、若しくは少なくとも1つの超小型発電機及び少なくとも1つの電気エネルギアキュムレータ、並びに少なくとも1つの上述のような自動巻き上げ機構10を含む、自動巻き腕時計200に関する。
【0064】
本発明の別の実装形態では、少なくとも1つの香箱又はアキュムレータに機械的エネルギをチャージするために、腕時計200は、少なくとも1つの香箱若しくは少なくとも1つのアキュムレータ、若しくは少なくとも1つの超小型発電機及び少なくとも1つの電気エネルギアキュムレータに機械的エネルギをチャージするために配設された、唯一の常磁性導電性ディスク20、又は複数のこのようなディスク20を含む。
【0065】
本発明はまた、少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ、及び腕時計用の少なくとも1つの容器型支持体301を含む、腕時計を自動的に巻き上げるためのデバイス300にも関する。
【0066】
給電手段又は電気的アキュムレータは好ましくは、
図1に示すように光電池セル309を備える基部内に格納され、これによって電界生成手段に給電できる。
【0067】
この容器型支持体301は、腕時計の裏蓋に当接してこれを受承するよう構成された支承面302を含む。
【0068】
本発明によると、このデバイス300は、支承面302の下側の放出領域303内の固定位置に配置された、磁界及び/又は静電界の生成のための手段301を含み、上記手段301は、上記主セクタ340の少なくとも1つの経路上で、方向及び/又は強度及び/又は感度が時間の関数として可変である少なくとも1つの磁界及び/又は静電「回転」界を生成する。
【0069】
図8による特定の実施形態では、上記主セクタ340の経路は、略直線状の放出領域303の少なくとも1つの直線状セグメント307を含む。生成手段310はこの少なくとも1つの直線状セグメント307上で、支承面302に対して略直交する又は直交する方向の、強度及び/又は感度が時間の関数として可変である、少なくとも1つの磁界及び/又は静電界を生成する。
【0070】
図9は、上記主セクタ340の経路が、複数の別個の上述のようなセグメント307A、307Bを含み、これらそれぞれに対して回転界が連続して印加される変形例を示す。
【0071】
図7に示す好ましい実施形態では、上記主セクタ340の経路は、略環状の放出領域303の少なくとも1つの角度セクタ304を含む。生成手段310は、この少なくとも1つの角度セクタ304上で、支承面302に対して略直交する又は直交する方向の、強度及び/又は感度が時間の関数として可変である、少なくとも1つの磁界及び/又は静電界を生成する。
【0072】
特定の実施形態では、生成手段310は放出領域303上で、支承面302に対して直交する方向において互いに対して平行な、それぞれの強度及び/又は感度が時間の関数として可変である、複数の上述のような磁界及び/又は静電界を生成する。
【0073】
図1に示す有利な実施形態では、生成手段310は放出領域303の全て又は一部上に、複数のコイル305のアレイを含む。
【0074】
図1、7、8、9に示す特定の実装形態では、生成手段310は、支承面302の中心軸上にセンタリングされた、240°未満の角度セクタ304上で、この角度セクタ304の一方の端部から他方の端部へと交互に往復する磁界及び/又は静電界を生成する。巻き上げられる腕時計の巻き上げ軸Dは、この腕時計が裏蓋201を介して支承面302上に配置された場合に上記中心軸と略一致する。
【0075】
図8、9に、可動部材50の受承経路の軌跡308を示す。
図7は、この場合に実際にアクティブである放出領域303の限界306を示す。生成手段310は必要に応じて、可動部材50の回転速度が速過ぎる場合に界を反転させて可動部材50を制動するよう制御してよいことに留意されたい。
【0076】
別の実装形態では、生成手段310は、支承面302の360°全てに亘って均一な回転方向に磁界及び/又は静電界を生成する。
【0077】
当然のことながら、回転界を生成するための物理的手段は同一であってよく、例えば選択された制御モードに従って特定のいくつか又は全てを起動できる、複数のコイル305の完全に環状のアレイであってよい。この目的のために、デバイス300は有利には、生成手段310を制御するための調節及び制御手段320を含む。
【0078】
この好ましいケースにおいて、調節及び制御手段320は時間管理手段を含み、所定の瞬間において又は信号を受信した場合に、磁界及び/又は静電界の生成を制御する。
【0079】
これらの調節及び制御手段320は、角度セクタ304又は放出領域303に沿った回転速度Ωの「回転」界の形態の磁界及び/又は静電界の生成を制御する。
【0080】
特定の制御モードにおいて、調節及び制御手段320は、上記回転界の回転速度Ωを、界の生成が始まった瞬間から所定の期間後に加速が停止する瞬間まで加速させる。
【0081】
有利なことに、調節及び制御手段320は、磁界及び/又は静電界の変動の影響下で駆動される巻き上げ用可動部材50の位置及び/又は速度を測定するために配設された受信手段330を含み、可動部材50の過剰な回転速度が発生した場合に逆方向の界を印加できる。
【0082】
好ましい様式において、放出領域303がその全周に亘って、コイル、又はより一般には界生成手段を含む場合、調節及び制御手段320は界の変動の特定のサイクルを定義できる。例えば、初めに錘に特定の振幅を有する往復運動を開始させ、その後この振幅を修正するか又は上記往復運動を連続運動に変換できる。このツールは極めて柔軟であり、上記調節及び制御手段320の性能のみによって制限される。
【0083】
別の変形例では、腕時計自動巻き上げデバイス300は、少なくとも1つの給電手段又は少なくとも1つの電気的アキュムレータ、及び腕時計のための少なくとも1つの容器型支持体301を含み、この容器型支持体301は、腕時計の裏蓋に当接してこれを受承するよう構成された支承面302を含む。このデバイス300は、支承面302の下側の放出領域303上で少なくとも1つの磁極片及び/又は電極片を駆動して、少なくとも1つの上記主セクタ340の少なくとも1つの経路上で、方向及び/又は強度及び/又は感度が時間の関数として可変である少なくとも1つの磁界及び/又は静電界を生成するための、モータ手段を含む。より具体的には、この巻き上げ機構は、巻き上げ用可動部材上の磁石及び/又はエレクトレットに連結された1つ又は複数の磁石及び/又はエレクトレットを駆動する少なくとも1つのモータを含む。
【0084】
本発明はまた、少なくとも1つの上述のようなデバイス300及び少なくとも1つの上述のような腕時計200を含む時計アセンブリ400にも関する。
【0085】
本発明によると、このアセンブリ400のデバイス300は、生成手段310を制御するための上述のような調節及び制御手段320を含み、これら調節及び制御手段320並びに生成手段310は、少なくとも1つの巻き上げ用可動部材50を駆動する適合及びフォーマットされており、上記可動部材50は:
‐少なくとも1つの香箱若しくはアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、若しくは電気エネルギアキュムレータをチャージするために超小型発電機を駆動するための、上記少なくとも1つの腕時計200が備える少なくとも1つの磁性「振動」錘1若しくは磁石を有する「振動」錘5;又は
‐上記機械式「振動」錘3と同様に、少なくとも1つの香箱若しくはアキュムレータに機械的エネルギをチャージするために、若しくは電気エネルギアキュムレータをチャージするために超小型発電機を駆動するために配設された、上記少なくとも1つの腕時計200が備える上記機械式「振動」錘3と同軸の少なくとも1つの常磁性導電性ディスク20;又は
‐少なくとも1つの香箱若しくはアキュムレータに機械的エネルギをチャージするための、若しくは電気エネルギアキュムレータをチャージするために超小型発電機を駆動するための、上記少なくとも1つの腕時計200が備える少なくとも1つの磁性錘1、及びこれもまた上記少なくとも1つの腕時計200が備える、機械式「振動」錘3と同軸の少なくとも1つの常磁性導電性ディスク20
を含み、これは場合に応じて電磁継ぎ手を用いて少なくとも1つの磁性「振動」錘1若しくは磁石を有する「振動」錘5を、及び/又は渦電流を用いて上記少なくとも1つのディスク20を駆動するためのものである。
【0086】
本発明により、腕時計の内部において様々な巻き上げ機構のアーキテクチャが可能となる。
【0087】
従って、機械式巻き上げ機能及び磁性/静電性/渦電流式巻き上げ機能を、例えばそれぞれがこれらの機能のうちの1つ専用のものである、互いに対して振動する、一体であってもなくてもよく又は互いに連結されていてもいなくてもよい、好ましくは同軸である複数の要素と、分離させることができる。これにより、これらの要素それぞれを固有の機能に最適化でき、また全体として、巻き上げ機構の空間要件及び質量を制限できる。
【0088】
これら複数の機械式巻き上げ機能は、腕時計を磁気/静電気/渦電流による加速に供することによって、並列に(又は直列に)配置できる。
【0089】
本発明の結果として、既に従来の機械式振動錘を含んでいる腕時計を、別のチャージ用可動部材、磁性振動錘、磁石を有する振動錘又は常磁性導電性ディスクを追加することにより容易に改造できる。
【0090】
これらの可動性部材はそれぞれ、独立して又は既存の機械式振動錘と同一の機構を用いて、エネルギアキュムレータと係合してよい。
【0091】
また、これらの機能を分離させることにより、機械式巻き上げ機構のための回転運動及び磁性部分のための例えば並進運動である別の運動、又はその逆を実現できる。このような場合、香箱に向かう2つの特定の軸間を連結することが必要となる。その利点は、この並進運動をムーブメントの比較的小さい領域にシフトするために、他の機械的なオプションを利用できることである。このような場合、角度セクタのみに沿ったものではなく、軸に沿った往復運動が存在する。
【0092】
往復する動作の場合、上記往復運動を、調節及び制御手段320によって、又は機械的な制限によって、又はこれら2つの解決策の組み合わせによって制限してよい。
【0093】
巻き上げ用可動部材50の完全かつ連続的な、加速された回転は、本発明による時計アセンブリに極めて特有の特定の場合である。
【0094】
いわゆる「回転」界が実際には交番界である場合、簡略化された実施形態では、この交番界は同一軸上の2つの位置を交番してよく、これは巻き上げ機構において極めて容易に達成できる。
【0095】
別の解決策は、巻き上げデバイス内のアーバ上でシフトして、場合に応じて腕時計200の側で磁性振動錘1又は磁石を有する振動錘5を並進駆動する磁石を、所定の位置に配置することからなる。
【0096】
ほとんどの一般的なムーブメントは2方向に巻き上げることができ、ここでトルクは両方向においてある程度同一である。
【0097】
単方向巻き上げ型のムーブメントに関して、錘は事実上、一方向において自由である。
【0098】
錘の不均衡は一般に70〜300μN.mの範囲で変動する。
【0099】
慣性は200g.mm
2のオーダーである。
【0100】
サイズの例は「ETAA16」ムーブメントに基づいている。100%巻き上げられた香箱は振動錘を25°〜45°に保持し、これは210μNm(=不均衡×sin45°)の最大トルクに対応する。
【0101】
錘の90°の回転を達成するために、上記不均衡と主ゼンマイのトルクとを加算しなければならず、即ち約500μNmとしなければならない。
【0102】
チャージを保証するために、クリックホイール及び香箱のクリックの死角を超過しなければならず、即ち反転機構のクリックのノッチ及び香箱の角穴車のクリックのノッチを乗り越えるために少なくとも30°の使用可能な角度運動が必要となる。
【0103】
クラウンを用いた巻き上げのために、ステムにおいて毎分100回転の速度を超えてはならない。これは振動錘の毎分4000回の回転速度に等しい。
【0104】
少なくとも72時間のパワーリザーブのために腕時計を完全に巻き上げるには、典型的には振動錘の2000回の回転が必要となる。
【0105】
焼結したタングステンは、約18g/cm
3の質量密度を有する。
【0106】
振動錘のコアは一般に、0.3〜0.4mmのオーダーの厚さの真鍮製である。
【0107】
タングステンボールを鉄ボールと混合できる。
【0108】
本発明による巻き上げデバイス300は、毎秒5回転の回転速度Ωにより、5分未満にいずれの時計を完全に巻き上げることができる。
【0109】
コイル305と巻き上げ用可動部材50との間の空隙は、2〜3mmの範囲内で選択される。