特許第5982610号(P5982610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982610
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】プラスチックベアリング
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/20 20060101AFI20160818BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   F16C33/20 Z
   F16C17/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-186482(P2012-186482)
(22)【出願日】2012年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-43896(P2014-43896A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226507
【氏名又は名称】株式会社ニックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−121894(JP,A)
【文献】 特開平7−103229(JP,A)
【文献】 実開平3−35320(JP,U)
【文献】 特開平4−193045(JP,A)
【文献】 特開平9−303387(JP,A)
【文献】 特開昭59−212521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/20
F16C 17/02
F16C 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に回転シャフトを回転可能に保持するための軸孔を有する円筒状の本体部と、該本体部の外面より放射状に突出する複数の第1リブと、これら複数の第1リブを連結して前記本体部の周方向に突出する第2リブとを有し、
前記軸孔は、前記本体部の長さ方向の中間部に、前記本体部の長さ方向の中央部における直径が最大で、前記本体部の長さ方向の両端部側に至るにしたがって直径が小さくなる太鼓状凹部を有し、
前記第1リブは、その先端部の形状が、前記本体部の長さ方向の中央部における高さ寸法が最も大きく、前記本体部の長さ方向の両端部に至るにしたがって高さ寸法が小さくなる円弧状に形成され、
前記第2リブは、前記本体部の長さ方向の中央部に形成され、その高さ寸法は、前記本体部の長さ方向の中央部における前記第1リブの高さ寸法と同一である、
ことを特徴とするプラスチックベアリング。
【請求項2】
前記太鼓状凹部の両端における前記本体部の肉厚をt、前記本体部との接続部における前記第1リブの肉厚をdb、前記第2リブの肉厚をdaとしたとき、各部の寸法が下記の第1式及び第2式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のプラスチックベアリング。
da≧2×t/3 ・・・(第1式)
2×t/3≧db≧t/2 ・・・(第2式)
【請求項3】
前記本体部、前記第1リブ及び前記第2リブは、射出成形により一体形成されていることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載のプラスチックベアリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコン機器やOA機器等に備えられた回転シャフトを回転自在に保持するプラスチックベアリングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプラスチックベアリングとしては、外形が円筒状に形成され、その中心部に開設された軸孔の長さ方向に、軸孔内に一定高さで突出する連接環を所定間隔で複数形成し、各連接環の間に形成される陥凹部内に潤滑油を溜めるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1の図1参照。)。この特許文献1に記載のプラスチックベアリングは、各連接環の間に形成される陥凹部内に潤滑油を溜めるので、摩擦係数が小さく、回転シャフトを回転駆動するモータの消費電力量を抑制できると共に、油漏れが起こりにくく、製品の寿命を延長することができる。
【0003】
しかしながら、このような構成のプラスチックベアリングを射出成形法により製造するためには、連接環を形成するための凹部と陥凹部を形成するための凸部とを有するピン状の軸孔形成用金型を備えた金型装置を必要とするが、凹凸を有する軸孔形成用金型の周囲に形成されたプラスチックベアリングを取り出すことは困難であるため、良品を効率よく製造することが著しく困難であるか、実際上不可能である。
【0004】
このような問題を解決するため、射出成形時に発生する溶融樹脂の硬化収縮によるヒケを利用して、軸方向両端部の内径がほぼ同一であり、軸方向中間部にタイコ形に膨らんだ軸孔を形成した樹脂軸受が従来提案されている(例えば、特許文献2の図1参照。)。この特許文献2に記載の樹脂軸受は、凹凸を有する軸孔形成用金型を用いることなく製造できるので、良品を効率よく製造することができる。また、特許文献2の図1には、円筒状に形成された軸受成形品の外面中央部より、リブ状の肉厚部を放射状又は羽根状に張り出したものも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−157290号公報
【特許文献2】特開平07−121894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エアコン機器やOA機器等に備えられた回転シャフトを回転自在に保持するプラスチックベアリングは、ゴムブッシュを介してエアコン機器やOA機器等の筺体に取り付けられる。したがって、プラスチックベアリングの外面には、ゴムブッシュとプラスチックベアリングとの間の滑りを防止し、筺体の所定位置にプラスチックベアリングを確実に設定するため、リブ状の回り止め突起を形成することが望ましい。上述のように、特許文献2には、外周部にリブ状の肉厚部を放射状又は羽根状に張り出した樹脂軸受が記載されているので、この樹脂軸受を用いれば、ゴムブッシュへの取付時にリブ状の肉厚部をゴムブッシュに食い込ませることができて、ゴムブッシュとプラスチックベアリングとの間の滑りを防止でき、プラスチックベアリングを筺体の所定位置に確実に設置することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載のプラスチックベアリングは、溶融樹脂の硬化収縮によるヒケを利用して、軸方向の中間部にタイコ形に膨らんだ軸孔を形成するものであり、溶融樹脂の硬化収縮によるヒケは、樹脂軸受各部の肉厚の差によって大きさが変化する。したがって、円筒状に形成された軸受成形品の外面中央部より、リブ状の肉厚部を放射状又は羽根状に張り出すと、リブ状の肉厚部が形成された部分と、これが形成されない部分とでは、樹脂のヒケ量に差異が生じ、軸孔の真円度が悪くなる。言うまでもなく、軸孔の真円度が悪くなると、回転シャフトの摺動性が悪くなって、回転シャフトの心振れに起因する振動を発生したり、タイコ状の凹部内に貯えられた潤滑油が外部に流れ出し、短期間のうちに潤滑性が失われるという問題が発生しやすくなる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、回転シャフトの振動を抑制できると共に、回転シャフトを長期間にわたって滑らかに回転させることが可能なプラスチックベアリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような技術的な課題を解決するため、中心部に回転シャフトを回転可能に保持するための軸孔を有する円筒状の本体部と、該本体部の外面より放射状に突出する複数の第1リブと、これら複数の第1リブを連結して前記本体部の周方向に突出する第2リブとを有し、前記軸孔は、前記本体部の長さ方向の中間部に、前記本体部の長さ方向の中央部における直径が最大で、前記本体部の長さ方向の両端部側に至るにしたがって直径が小さくなる太鼓状凹部を有し、前記第1リブは、その先端部の形状が、前記本体部の長さ方向の中央部における高さ寸法が最も大きく、前記本体部の長さ方向の両端部に至るにしたがって高さ寸法が小さくなる円弧状に形成され、前記第2リブは、前記本体部の長さ方向の中央部に形成され、その高さ寸法は、前記本体部の長さ方向の中央部における前記第1リブの高さ寸法と同一である、ことを特徴とする。
【0010】
軸孔の太鼓状凹部は、プラスチックベアリングを射出成形した際に生じる溶融樹脂の硬化収縮によるヒケを利用して形成される。上述したように、成形品のヒケ量は、各部の肉厚の差によって大きさが変化するが、本体部の長さ方向の中央部に、本体部の長さ方向の中央部における前記第1リブの高さ寸法と同一寸法の第2リブをリング状に形成すると、本体部の中央部の周方向における肉厚の差を小さくすることができる。よって、本体部の周方向における成形品のヒケ量を均一化でき、プラスチックベアリングに真円度の高い軸孔を形成することが可能になる。このように、プラスチックベアリングに真円度の高い軸孔を形成すると、回転シャフトの摺動性を高めることができて、回転に伴う回転シャフトの振動を抑制することができる。また、太鼓状凹部内に貯えられた潤滑油が外部に流出しにくくなるので、高い潤滑性を長期間にわたって維持することができる。
【0011】
また本発明は、前記構成のプラスチックベアリングにおいて、前記太鼓状凹部の両端における前記本体部の肉厚をt、前記本体部との接続部における前記第1リブの肉厚をdb、前記第2リブの肉厚をdaとしたとき、各部の寸法が下記の第1式及び第2式を満たすことを特徴とする。
【0012】
da≧2×t/3 ・・・(第1式)
2×t/3≧db≧t/2 ・・・(第2式)
実験によると、成形品各部の寸法を第1式及び第2式を満たすように設定することにより、軸孔の長さ方向の中間部に、所定量の潤滑油を貯えることが可能な太鼓状凹部を形成することができ、かつ、軸孔の両端側の真円度を高められることが判明した。よって、回転シャフトの振動を抑制できると共に、太鼓状凹部内に貯えられた潤滑油の流出を防止できて、高い潤滑性の長期間にわたる維持が可能になる。
【0013】
また本発明は、前記構成のプラスチックベアリングにおいて、前記本体部、前記第1リブ及び前記第2リブは、射出成形により一体形成されていることを特徴とする。
【0014】
プラスチックベアリングを射出成形する場合において、成形品各部の寸法を前出の第1式及び第2式を満たすように設定すると、軸孔の長さ方向の中間部に太鼓状凹部を形成することができる。よって、軸孔成形用の金型として凹凸のないものを用いることが可能になり、成形品を無理に金型から引き抜く必要がないので、良品を高能率に製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るプラスチックベアリングは、中心部に回転シャフトを回転可能に保持するための軸孔を有する円筒状の本体部と、該本体部の外面より放射状に突出する複数の第1リブと、本体部の長さ方向の中央部においてこれら複数の第1リブを連結し、本体部の周方向に突出する第2リブとを設けたので、長さ方向の中間部に太鼓状凹部を有し、かつ真円度の高い軸孔を形成することができる。よって、回転シャフトの摺動性を高めることができて、回転に伴う回転シャフトの振動を抑制できると共に、太鼓状凹部内に貯えられた潤滑油を外部に流出しにくくすることができて、高い潤滑性を長期間にわたって維持することができる。そして、高い潤滑性を長期間にわたって維持できることから、回転シャフトのトルク損失及び回転シャフトの回転に伴う摩擦熱の発生を抑制できると共に、油切れによる異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るプラスチックベアリングの斜視図である。
図2】実施形態に係るプラスチックベアリングの中央部横断面図である。
図3】実施形態に係るプラスチックベアリングの中央部縦断面図である。
図4】実施形態に係るプラスチックベアリングの使用状態の断面図である。
図5】実施例に係るプラスチックベアリングの構成と性能を示す表図である。
図6】比較例に係るプラスチックベアリングの構成と性能を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るプラスチックベアリングの実施形態を、図を用いて説明する。
【0018】
実施形態に係るプラスチックベアリング1は、図1乃至図4に示すように、中心部に軸孔2を有する円筒状の本体部3と、該本体部3の外面より放射状に突出形成された複数の第1リブ4と、本体部3の外面の周方向に形成された第2リブ5とを有する。本例のプラスチックベアリングは、樹脂材料よりなり、射出成形により一体に成形されている。
【0019】
軸孔2は、図3に示すように、本体部3の長さ方向の両端部を除く中間部に、本体部3の長さ方向の中央部における直径が最大で、本体部3の長さ方向の両端部側に至るにしたがって直径が小さくなる太鼓状凹部6を有している。太鼓状凹部6を形成する面は、球面状に形成される。また、本体部3の長さ方向の両端部には、回転シャフトS(図4参照)の装着を容易にするための面取り7が施されている。
【0020】
第1リブ4の断面形状は、図2に示すように、根元、即ち、本体部3と接する側の幅が小さく、先端側に至るに従って幅が大きくなる略扇形に形成されている。また、第1リブ4の側面形状は、図3に示すように、本体部3の長さ方向の中央部における高さ寸法が最も大きく、本体部3の長さ方向の両端部に至るに従って高さ寸法が小さくなる円弧状に形成されている。第1リブ4の両端部は、本体部3の長さ方向の両端部まで達している。
【0021】
第2リブ5は、本体部3の長さ方向の中央部に形成され、複数の第1リブ4のそれぞれを連結して、本体部3の周方向に突出形成されている。第2リブ5の高さ寸法は、本体部3の長さ方向の中央部における第1リブ4の高さ寸法と同一であり、第1リブ4の先端部と第2リブ5の先端部とは滑らかに連結されている。
【0022】
本実施形態に係るプラスチックベアリング1は、図4に示すように、ゴムブッシュBを介してエアコン機器やOA機器等の筺体Cに設定され、モータ軸等の回転シャフトSを回転自在に保持する。このようにすると、同図より明らかなように、プラスチックベアリング1に形成された第1リブ4及び第2リブ5がゴムブッシュBに食い込んで、プラスチックベアリング1とゴムブッシュBとの間の滑りを防止できるので、プラスチックベアリング1を筺体Cの所定位置に確実に設置することができる。
【0023】
図5に実施例に係るプラスチックベアリングの構成及び性能を示し、図6に比較例に係るプラスチックベアリングの構成及び性能を示す。なお、図5及び図6に記載の符号t、da、Ha、db、Hbは、それぞれ本体部3の肉厚、第2リブ5の肉厚、第2リブ5の高さ、第1リブ4の根元の肉厚、第1リブ4の最大高さである(図2及び図3参照。)。
【0024】
図5に示すように、実施例1〜6に係るプラスチックベアリングは、5%の炭化水素系鉱物油が添加されたポリエチレン樹脂(PE)から作製されている。
【0025】
実施例7〜12に係るプラスチックベアリングは、3%のシリコーンオイルが添加されたポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)から作製されている。
【0026】
実施例13〜18に係るプラスチックベアリングは、3%の鉱物油が添加されたポリオキシメチレン樹脂(POM)から作製されている。
【0027】
実施例19〜24に係るプラスチックベアリングは、5%の炭化水素系鉱物油が添加されたポリプロピレン樹脂(PP)から作製されている。
【0028】
図6に示すように、比較例1に係るプラスチックベアリングは、5%の炭化水素系鉱物油が添加されたポリプロピレン樹脂(PP)から作製されている。
【0029】
比較例2〜11に係るプラスチックベアリングは、5%の炭化水素系鉱物油が添加されたポリエチレン樹脂(PE)から作製されている。
【0030】
比較例12〜21に係るプラスチックベアリングは、3%のシリコーンオイルが添加されたポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)から作製されている。
【0031】
比較例22〜31に係るプラスチックベアリングは、3%の鉱物油が添加されたポリオキシメチレン樹脂(POM)から作製されている。
【0032】
比較例32〜41に係るプラスチックベアリングは、5%の炭化水素系鉱物油が添加されたポリプロピレン樹脂(PP)から作製されている。
【0033】
第2リブ5の高さHa及び第1リブ4の最大高さHbは、実施例1〜24及び比較例1〜41の全てについて、2mmとした。そして、実施例1〜24については、下記の第1式及び第2式の双方を満たすように、本体部3の肉厚t、第2リブ5の肉厚da、第1リブ4の肉厚dbを設定した。これに対して、比較例1〜41については、下記の第1式及び第2式のいずれか一方を満たさないように、本体部3の肉厚t、第2リブ5の肉厚da、第1リブ4の肉厚dbを設定した。
【0034】
da≧2×t/3 ・・・(第1式)
2×t/3≧db≧t/2 ・・・(第2式)
図5図6の比較から明らかなように、実施例に係るプラスチックベアリングは、軸孔2の真円度が0.008mm〜0.03mmであるのに対して、比較例に係るプラスチックベアリングは、真円度が0.003mm〜0.08mmである。このことから、実施例に係るプラスチックベアリングは、比較例に係るプラスチックベアリングに比べて、軸孔2の真円度が小さく、かつ安定していることが分かる。
【0035】
また、図5図6の比較から明らかなように、実施例に係るプラスチックベアリングは、太鼓状凹部6の深さが0.02mm〜0.07mmで、太鼓状凹部6の幅が3.5mm〜6mmであるのに対して、比較例に係るプラスチックベアリングは、太鼓状凹部6の深さが0.003mm〜0.09mmで、太鼓状凹部6の幅が0.04mm〜7mmである。このことから、実施例に係るプラスチックベアリングは、比較例に係るプラスチックベアリングに比べて、太鼓状凹部6の形状が安定で、かつ十分な量の潤滑油を貯えることが可能なサイズに形成されていることが分かる。
【0036】
実施例に係るプラスチックベアリング及び比較例に係るプラスチックベアリングを、それぞれモータ軸の軸受として使用し、モータを連続稼働して、各プラスチックベアリングの耐久性を試験した。その結果、実施例に係るプラスチックベアリングは、所定の耐久試験経過後も所要の潤滑性を有しており、図5に○印で示すように、格別な異常は生じなかった。これに対して、比較例に係るプラスチックベアリングは、所定の耐久試験経過に達する前に、図6に×印で示すように、モータ軸のトルク損失の増加、摩擦熱によるプラスチックベアリングの異常昇温、摩擦音などの異常が発生した。
【0037】
なお、前記実施形態においては、オイルが混練された樹脂材料を用いてプラスチックベアリング1を射出成形したが、かかる構成に代えて、オイルが混練されていない樹脂材料を用いてプラスチックベアリング1を射出成形した後、作製されたプラスチックベアリング1をオイルにディッピング(どぶ漬け)するという方法をとることもできる。
【0038】
また、本発明に係るプラスチックベアリングは、図5に例示した樹脂材料を用いて作製されたものに限定されるわけではなく、所定の硬度を有するものであれば、他の樹脂材料を用いて作製することもできる。他の樹脂材料としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、液晶ポリマ、ポリアミド、ポリアミドイミド、非晶ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルペンテン、ポリフタルアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリサルフォン、ポリ塩化ビニルなどを例示することができる。
【0039】
さらに、本発明に係るプラスチックベアリングに添加される潤滑油についても、図5に例示したものに限定されるわけではなく、他の潤滑油を用いることもできる。他の潤滑油としては、オレフィン油、エステル油、マシン油などを例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、エアコン機器やOA機器等に備えられる小型モータの回転シャフトを保持する軸受に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 プラスチックベアリング
2 軸孔
3 本体部
4 第1リブ
5 第2リブ
6 太鼓状凹部
7 面取り
B ゴムブッシュ
C 筺体
S 回転シャフト
図1
図2
図3
図4
図5
図6