特許第5982611号(P5982611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982611
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/28 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   F16D55/28 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-160138(P2012-160138)
(22)【出願日】2012年7月19日
(65)【公開番号】特開2014-20469(P2014-20469A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】中田 富雄
(72)【発明者】
【氏名】青柳 典明
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭36−017807(JP,Y1)
【文献】 実開平03−000335(JP,U)
【文献】 特開2011−190918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿って延在する回転軸の外周に固定されるとともに水平方向に沿って延在されたブレーキディスク部と、
前記ブレーキディスク部の上方に配置された上側挟持部材と、
前記ブレーキディスク部の下方に配置された下側挟持部材と、
前記上側及び下側挟持部材のいずれか一方を他方に向けて変位させることにより前記上側挟持部材と前記下側挟持部材との間に前記ブレーキディスク部を挟み込んで前記回転軸の回転を制限するとともに、前記一方を前記他方から引き離すことにより前記ブレーキディスク部を解放して前記回転軸の回転を許容する制動制御部と、
前記一方が前記他方から引き離されている際に、前記ブレーキディスク部の下面を前記下側挟持部材の上面よりも高い位置で支持し、前記ブレーキディスク部の下面と前記下側挟持部材の上面との間に隙間を形成する支持体と
を備え、
前記回転軸の回転が制動される際に前記下側挟持部材が前記上側挟持部材に向けて付勢される構成であり、
前記支持体は、前記回転軸の外周に固定されるとともに前記ブレーキディスク部の下面に接して配置されたプレートである
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
回転軸の外周に固定されるとともに回転軸の径方向に沿って延在されたブレーキディスク部と、
前記ブレーキディスク部を挟んで互いに対向して配置されたサイドプレート及びアーマチュアと、
前記アーマチュアを前記サイドプレートに向けて変位させることにより前記アーマチュアと前記サイドプレートとの間に前記ブレーキディスク部を挟み込んで前記回転軸の回転を制限するとともに、前記アーマチュアを前記サイドプレートから引き離すことにより前記ブレーキディスク部を解放して前記回転軸の回転を許容する制動制御部と、
前記ブレーキディスク部よりも前記サイドプレート側で前記回転軸の外周に固定された基部と、
前記基部と前記ブレーキディスク部との間に配置され、前記ブレーキディスク部を前記アーマチュア側に付勢するとともに、前記アーマチュアが前記サイドプレートに向けて変位された際に圧縮されて前記ブレーキディスク部の前記サイドプレート側への変位を許容する弾性部材と、
前記回転軸の外周に固定されるとともに、前記アーマチュア側の前記ブレーキディスク部の端面に接して配置されたプレートと
を備えていることを特徴とするブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転を制限するブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種のブレーキ装置としては、例えば下記の特許文献1,2等に示されている構成を挙げることができる。図5は、従来のブレーキ装置を示す構成図である。例えばACサーボモータ等の回転軸1は、水平方向1bに沿って延在されている。この回転軸1の外周には、ハブ20を介してブレーキディスク21が固定されている。
【0003】
ブレーキディスク21の両側には、サイドプレート4及びアーマチュア5が配置されている。サイドプレート4は、ネジ6を介してコア7に接続されている。ネジ6の外周には、カラー6aが取付けられている。ネジ6及びカラー6aは、アーマチュア5に設けられた孔に通されている。アーマチュア5は、ネジ6に案内されて、ブレーキディスク部2に近づく方向及びブレーキディスク部2から離れる方向に変位可能に設けられている。
【0004】
コア7には、ばね7a及び励磁コイル7bが埋め込まれている。ばね7aは、アーマチュア5をサイドプレート4に向けて常時付勢している。励磁コイル7bは、外部から供給される電流により励磁された際に、ばね7aのばね力よりも大きな力でアーマチュア5をサイドプレート4から引き離す方向に付勢する。励磁コイル7bが励磁されて、励磁コイル7bの作用によりアーマチュア5がサイドプレート4から引き離された状態では、ブレーキディスク21が解放されて、回転軸1の回転が許容される。一方で、励磁コイル7bが励磁されてなく、ばね7aの作用により、アーマチュア5がサイドプレート4に向けて変位された状態では、ブレーキディスク21がアーマチュア5とサイドプレート4とにより挟持されて、回転軸1の回転が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−192305号公報
【特許文献2】特開2009−092094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来のブレーキ装置は、基本的に回転軸1が水平方向1bに沿って延在される構成に使用されるものである。このような従来装置を回転軸1が鉛直方向に沿って延在される構成に適用した場合、ブレーキディスク21が自重により垂下して、ブレーキディスク21の下方に位置するサイドプレート4又はアーマチュア5とブレーキディスク21とが軽接触してしまうことがある。ブレーキディスク21がサイドプレート4又はアーマチュア5と軽接触した状態で回転軸1が回転され続けると、ブレーキディスク21等が摩耗してしまい、製品寿命を縮めてしまう。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、回転軸が鉛直方向に沿って延在される構成でもブレーキディスク部が垂下により他の部材と軽接触することを回避でき、製品寿命が短くなることを防止できるブレーキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るブレーキ装置は、鉛直方向に沿って延在する回転軸の外周に固定されるとともに水平方向に沿って延在されたブレーキディスク部と、ブレーキディスク部の上方に配置された上側挟持部材と、ブレーキディスク部の下方に配置された下側挟持部材と、上側及び下側挟持部材のいずれか一方を他方に向けて変位させることにより上側挟持部材と下側挟持部材との間にブレーキディスク部を挟み込んで回転軸の回転を制限するとともに、一方を他方から引き離すことによりブレーキディスク部を解放して回転軸の回転を許容する制動制御部と、一方が他方から引き離されている際に、ブレーキディスク部の下面を下側挟持部材の上面よりも高い位置で支持し、ブレーキディスク部の下面と下側挟持部材の上面との間に隙間を形成する支持体とを備え、回転軸の回転が制動される際に下側挟持部材が上側挟持部材に向けて付勢される構成であり、支持体は、回転軸の外周に固定されるとともにブレーキディスク部の下面に接して配置されたプレートである
【発明の効果】
【0009】
本発明のブレーキ装置によれば、上側及び下側挟持部材の一方が他方から引き離されている際に、ブレーキディスク部の下面を下側挟持部材の上面よりも高い位置で支持し、ブレーキディスク部の下面と下側挟持部材の上面との間に隙間を形成する支持体が設けられているので、回転軸が鉛直方向に沿って延在される構成でもブレーキディスク部が垂下により他の部材と軽接触することを回避でき、製品寿命が短くなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1によるブレーキ装置を示す構成図である。
図2図1の励磁コイルが励磁されていない状態を示す説明図である。
図3】本発明の実施の形態2によるブレーキ装置を示す構成図である。
図4図3の励磁コイルが励磁されていない状態を示す説明図である。
図5】従来のブレーキ装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1によるブレーキ装置を示す構成図であり、図2図1の励磁コイル7bが励磁されていない状態を示す説明図である。図1に示すように、例えばACサーボモータ等の回転軸1は鉛直方向1aに沿って延在されている。回転軸1の外周には、ハブ20を介してブレーキディスク21が取付けられている。ハブ20は、フランジ20aを有する円筒部材により構成されており、回転軸1に焼き嵌めされている。ブレーキディスク21は、フランジ20aの先端から放射状に延出された輪状部材である。フランジ20a及びブレーキディスク21は、水平方向1b(径方向)に沿って延在されたブレーキディスク部2を構成している。
【0012】
ブレーキディスク部2の下方にはサイドプレート4が配置され、ブレーキディスク部2の上方にはアーマチュア5が配置されている。サイドプレート4及びアーマチュア5は、ブレーキディスク部2を挟んで互いに対向して配置されている。なお、この実施の形態1では、サイドプレート4が下側挟持部材を構成し、アーマチュア5が上側挟持部材を構成している。
【0013】
サイドプレート4は、基部4aを介して回転軸1に固定されている。基部4aは、ブレーキディスク部2の下方でハブ20を介して回転軸1の外周に固定された円板状部材である。
【0014】
サイドプレート4は、ネジ6を介してコア7に接続されている。ネジ6の外周には、カラー6aが取付けられている。ネジ6及びカラー6aは、アーマチュア5に設けられた孔に通されている。アーマチュア5は、ネジ6に案内されて、ブレーキディスク部2に近づく方向及びブレーキディスク部2から離れる方向に変位可能に設けられている。
【0015】
コア7には、制動制御部を構成するばね7a及び励磁コイル7bが埋め込まれている。ばね7aは、アーマチュア5をサイドプレート4に向けて常時付勢している。励磁コイル7bは、外部から供給される電流により励磁された際に、ばね7aのばね力よりも大きな力でアーマチュア5をサイドプレート4から引き離す方向に付勢する。
【0016】
図1は、励磁コイル7bが励磁されて、励磁コイル7bの作用によりアーマチュア5がサイドプレート4から引き離されている状態を示している。この状態では、ブレーキディスク21が解放されて、回転軸1の回転が許容される。一方で、図2は励磁コイル7bが励磁されてなく、ばね7aの作用によりアーマチュア5がサイドプレート4に向けて変位された状態を示している。この状態では、ブレーキディスク21がアーマチュア5とサイドプレート4とにより挟持されて、回転軸1の回転が制限される。
【0017】
ブレーキディスク部2の下方には、図1のようにアーマチュア5がサイドプレート4から引き離されている際に、ブレーキディスク部2の下面をサイドプレート4の上面よりも高い位置で支持し、ブレーキディスク部2の下面とサイドプレート4の上面との間に隙間8aを形成する支持体8が設けられている。支持体8により隙間8aが形成されることで、ブレーキディスク部2がサイドプレート4と軽接触することを回避でき、製品寿命が短くなることを防止できる。
【0018】
本実施の形態では、支持体8は、基部4aと弾性部材9とにより構成されている。基部4aは、前述のように、ブレーキディスク部2の下方でハブ20を介して回転軸1の外周に固定された円板状部材である。弾性部材9は、基部4aとブレーキディスク部2の下面との間に配置されており、ブレーキディスク部2を上方に付勢するとともに、図2に示すようにアーマチュア5がサイドプレート4に向けて変位された際に圧縮されてブレーキディスク部2の下方への変位(撓み)を許容する。すなわち、弾性部材9のばね力は、アーマチュア5をサイドプレート4に向けて付勢するばね7aのばね力よりも十分に小さく設定されている。弾性部材9は、図に示すように板厚方向に波を打つように湾曲されたウェーブワッシャにより構成することができる。
【0019】
ブレーキディスク部2の上方には、回転軸1の外周に固定されるとともにブレーキディスク部2の上面に接して配置された輪状のプレート10が設けられている。プレート10は、弾性部材9の力に対抗してブレーキディスク部2の上方への変位(撓み)を規制して、サイドプレート4とアーマチュア5との間でのブレーキディスク部2の位置を確定させている。
【0020】
このようなブレーキ装置では、アーマチュア5がサイドプレート4から引き離されている際に、ブレーキディスク部2の下面をサイドプレート4の上面よりも高い位置で支持し、ブレーキディスク部2の下面とサイドプレート4の上面との間に隙間8aを形成する支持体8が設けられているので、回転軸1が鉛直方向1aに沿って延在される構成でもブレーキディスク部2が垂下により他の部材(サイドプレート4)と軽接触することを回避でき、製品寿命が短くなることを防止できる。
【0021】
また、支持体8が、ブレーキディスク部2の下方で回転軸1の外周に固定された基部4aと、基部4aとブレーキディスク部2との間に配置され、ブレーキディスク部2を上方に付勢するとともに、アーマチュア5がサイドプレート4に向けて変位された際に圧縮されてブレーキディスク部2の下方への変位を許容する弾性部材9とにより構成されているので、アーマチュア5がブレーキディスク部2の上方に配置され、サイドプレート4がブレーキディスク部2の下方に配置される構成においても支持体8によってブレーキ動作に支障がでることを回避でき、ブレーキ動作の信頼性を向上できる。
【0022】
さらに、弾性部材9は、板厚方向に波を打つように湾曲されたウェーブワッシャによって構成されているので、ブレーキディスク部2を上方に付勢するとともに、アーマチュア5がサイドプレート4に向けて変位された際に圧縮されてブレーキディスク部2の下方への変位を許容する構成をより簡単且つ確実に実現できる。
【0023】
実施の形態2.
図3は本発明の実施の形態2によるブレーキ装置を示す構成図であり、図4図3の励磁コイル7bが励磁されていない状態を示す説明図である。図3及び図4に示す実施の形態2の構成は、実施の形態1の構成から天地逆転された構成である。すなわち、この実施の形態2ではアーマチュア5がブレーキディスク部2の下方に配置され、サイドプレート4がブレーキディスク部2の上方に配置されている。従って、この実施の形態2では、アーマチュア5が下側挟持部材を構成し、サイドプレート4が上側挟持部材を構成している。
【0024】
プレート10は、回転軸1の外周に固定されるとともにブレーキディスク部2の下面に接して配置されている。すなわち、この実施の形態2では、プレート10によって支持体8が構成され、プレート10によってブレーキディスク部2の下面がアーマチュア5の上面よりも高い位置で支持されることで、ブレーキディスク部2の下面とブレーキディスク部2の上面との間に隙間8aが形成されている。この隙間8aにより、ブレーキディスク部2がアーマチュア5と軽接触することが回避され、製品寿命が短くなることが防止されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0025】
このようなブレーキ装置では、回転軸1の外周に固定されるとともにブレーキディスク部2の下面に接して配置されたプレート10によって支持体8が構成されるので、アーマチュア5がブレーキディスク部2の下方に配置され、サイドプレート4がブレーキディスク部2の上方に配置される構成においても、確実に隙間8aを形成できる。これにより、ブレーキディスク部2がアーマチュア5と軽接触することを回避できるとともに、製品寿命が短くなることを防止できる。
【0026】
なお、実施の形態1,2で示したように、図1図4に示す共通の構成によって、天地の向きに拘わらず、ブレーキディスク部2及びその下方に配置される部材との軽接触を防止できることが分る。
すなわち、回転軸1の外周に固定されるとともに回転軸1の径方向に沿って延在されたブレーキディスク部2と、ブレーキディスク部2を挟んで互いに対向して配置されたサイドプレート4及びアーマチュア5と、アーマチュア5をサイドプレート4に向けて変位させることによりアーマチュア5とサイドプレート4との間にブレーキディスク部2を挟み込んで回転軸1の回転を制限するとともに、アーマチュア5をサイドプレート4から引き離すことによりブレーキディスク部2を解放して回転軸1の回転を許容する制動制御部(ばね7a及び励磁コイル7b)と、ブレーキディスク部2よりもサイドプレート4側で回転軸1の外周に固定された基部4aと、基部4aとブレーキディスク部2との間に配置され、ブレーキディスク部2をアーマチュア5側に付勢するとともに、アーマチュア5がサイドプレート4に向けて変位された際に圧縮されてブレーキディスク部2のサイドプレート4側への変位を許容する弾性部材9と、回転軸1の外周に固定されるとともに、アーマチュア5側のブレーキディスク部2の端面に接して配置されたプレート10とを備える構成を採ることで、上下どちらの向きに配置されてもブレーキディスク部2及びその下方に配置される部材との軽接触を防止でき、製品寿命が短くなることを防止できる。
【0027】
なお、実施の形態1,2では、弾性部材9はウェーブワッシャにより構成されると説明したが、例えばコイルばね等の他の弾性部材によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 回転軸
1a 鉛直方向
1b 水平方向
2 ブレーキディスク部
4 サイドプレート(上側挟持部材又は下側挟持部材)
4a 基部
5 アーマチュア(上側挟持部材又は下側挟持部材)
7a ばね(制動制御部)
7b 励磁コイル(制動制御部)
8 支持体
8a 隙間
9 弾性部材
10 プレート
図1
図2
図3
図4
図5