(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パッキンの前記パッキン本体における前記開口部の表面側の口縁部と対向する面には、幅方向の両側に一対の表ひれ部が突出形成されていることを特徴とする請求項1記載の冷却貯蔵庫。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のプレハブ式冷蔵庫では、例えば庫内外の温度差や、庫内の気圧変化等に起因して、スライド扉が反るように変形する可能性があり、変形量が多い箇所では、スライド扉の裏面に装着されたパッキンが、開口部の表面側の口縁部から離れて隙間ができ、シール性が損なわれるおそれがあった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、扉が反る等の変形をした場合でも、パッキンを確実に密着させてシールを取ることができるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、周壁に開口部を備えた貯蔵庫本体と、前記開口部を開閉する扉とが具備され、この扉の裏面の周縁部にパッキンが装着された冷却貯蔵庫において、前記パッキンは、前記開口部の表面側の口縁部に弾性的に密着してシールするパッキン本体と、同パッキン本体における前記扉の裏面と対向する面に突出形成され前記扉の裏面の周縁部に形成された保持溝に抜け止めされて嵌合される保持部とから構成され、前記パッキン本体の前記扉の裏面と対向する面における前記保持部を挟んだ幅方向の両側縁には、弾力性を有する一対の裏ひれ部が前記保持部の突出方向と同方向に突出形成され、前記各裏ひれ部の内側には弾性的に体積増減が可能な押し上げ部材が設けられているところに特徴を有する。
【0006】
扉の閉鎖時には、扉の裏面に装着されたパッキンのパッキン本体は、裏ひれ部を屈曲しかつ押し上げ部材を弾性的に潰した形態において、開口部の表面側の口縁部に弾性的に密着し、シールが取られる。この閉扉時において、仮に扉が反る等の変形をして、パッキン本体が開口部の表面側の口縁部から離れようとすると、押し上げ部材が弾性的に膨張しつつパッキン本体を開口部の表面側の口縁部に向けて押し上げることにより密着させ、シール状態が維持される。
すなわち、扉が変形すること等に起因してパッキンのパッキン本体が開口部の表面側の口縁部から離れようとしても、押し上げ部材の弾性的な体積膨張によってパッキン本体が開口部の表面側の口縁部に密着してシールされる。押し上げ部材は裏ひれ部の内側に配され、言い換えると裏ひれ部で隠されているから、見栄えもよい。
【0007】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記パッキンの前記パッキン本体における前記開口部の表面側の口縁部と対向する面には、幅方向の両側に一対の表ひれ部が突出形成されている。
扉の閉鎖時には、表ひれ部を屈曲させつつパッキン本体の表面が開口部の表面側の口縁部に密着される。扉が反る等の変形をして、パッキン本体が開口部の表面側の口縁部から離れようとした場合、その離間量が少ない間は、表ひれ部が真直姿勢に戻りつつその先端が開口部の表面側の口縁部に密着される。離間量が大きくなると、押し上げ部材の弾性的な体積膨張を伴って、特にパッキン本体の表面における幅方向の両側に設けられた一対の表ひれ部が押し上げられ、その先端が開口部の表面側の口縁部に密着することにより、引き続いてシール状態が維持される。
【0008】
(2)前記扉が前記開口部と平行に移動して開閉されるスライド扉である。
仮に押し上げ部材や裏ひれ部が剛性の高いものであると、扉に変形の無いときにはパッキン本体が開口部の表面側の口縁部に強固に押し付けられた状態となるため、特にスライド扉の場合は、開扉の動作の初め等に大きな摩擦抵抗を受けることとなって、扉の開閉動作が重くなる嫌いがある。
その点本構成では、押し上げ部材や裏ひれ部が剛性には劣るから、パッキン本体を必要以上に強固に開口部の表面側の口縁部に押し付けることが無く、摩擦抵抗の増大化が回避されて、スライド扉のスムーズな開閉動作が担保される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、扉が反る等の変形をした場合でも、パッキンを確実に密着させてシールを取ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
本発明の一実施形態を
図1ないし
図6に基づいて説明する。この実施形態では、プレハブ式冷凍冷蔵庫を例示している。
図1において、符号10は貯蔵庫本体であって、複数枚の断熱パネル11を組み付けた方形の断熱箱体から構成されている。貯蔵庫本体10の前壁10Aにおける正面から見た右側の領域には、
図3に示すように、窓孔12がほぼ全高に亘って形成され、同窓孔12には合成樹脂製の開口枠体14が嵌着されている。この開口枠体14の表面側の周縁にはフランジ15が全周に亘って張り出し形成され、同フランジ15が、窓孔12の表面側の孔縁部を覆って配されている。この開口枠体14の枠内の開口が本発明の開口部16に相当し、またフランジ15が開口部16の表面側の口縁部17に相当する。
【0012】
貯蔵庫本体10の前面には、上記した開口部16を開閉する断熱性のスライド扉30が配設されている。このスライド扉30の表面における右側縁部には、同スライド扉30を開閉操作するための把手31が設けられている。スライド扉30の裏面の周縁部には、詳しくは後記するように、上記した開口部16の口縁部17に当接して同開口部16を密閉するためのパッキン50が装着されている。
【0013】
スライド扉30の開閉構造を簡単に説明すると、貯蔵庫本体10の前面には、開口部16の上縁に沿った位置にレールがほぼ全幅に亘って装着され、スライド扉30の上縁の左右両端部に設けられた一対の車輪が吊り下げ支持されている。なお、レールの配設部分はカバー32で覆われているため、レール、車輪等は図示されてはいない。
スライド扉30は、上縁の車輪をレール上を転動させつつ開閉され、全閉されたときには、車輪がレールに設けられた凹部に落とし込まれる等によりスライド扉30が貯蔵庫本体10側に接近し、スライド扉30の裏面のパッキン50が、開口部16の表面側の口縁部17に密着させることでシールするようになっている。
なお、スライド扉30の下縁に設けられたガイド33が、下部基板34に設けられたローラ35を挟んでいることにより、スライド扉30の開閉時に下端側がばたつくことが規制されるようになっている。
【0014】
次に、パッキン50並びにその装着構造を詳細に説明する。
スライド扉30は、上記した開口部16よりも一回り大きい正面視長方形状をなし、
図3に示すように、裏面の中央部が膨出した段差状に形成されている。詳細には、表面全面と4側面を構成する金属板製の外装パネル41と、裏面の膨出面を構成する同じく金属板製の内装パネル42が間隔を開けて配設されるとともに、両パネル41,42の端縁の間に、裏面の周縁部を構成する合成樹脂製の枠体43が嵌められて連結されることにより外殻体40が形成され、同外殻体40内に発泡樹脂からなる断熱材44が発泡充填されることでスライド扉30が形成されている。
【0015】
上記したスライド扉30の裏面の周縁部を構成する枠体43の表面が、パッキン50の装着面45となっており、装着面45における中央幅位置よりもやや外側に寄った位置には、保持溝47が全周に亘って形成されている。
一方、開口部16の表面側の口縁部17(フランジ15の表面)のうち基端部が、パッキン50の密着面20となっている。この密着面20にはヒータ装着溝21が形成されて、コードヒータ等のヒータ22が装着され、ヒータ装着溝21には、合成樹脂製のヒータカバー24が密着面20と面一に被着されている。
【0016】
パッキン50は、ゴム材の押し出し成形によって形成され、
図2に示すように、開口部16の表面側の口縁部17の密着面20(ヒータカバー24)に弾性的に密着してシールするパッキン本体51と、同パッキン本体51におけるスライド扉30の裏面と対向する面に突出形成された矢尻部52(保持部)とから構成されている。
パッキン本体51は、半円よりも大きい円弧部53の両端を、緩やか山形をなして同方向に突出した基部54で連結したような断面形状をなし、基部54は円弧部53と比べて若干厚肉に形成されている。
【0017】
パッキン本体51の内部では、円弧部53と基部54の中央部同士に亘るようにして屈曲された仕切壁55が形成され、同仕切壁55の両側に2つの空気室56が形成されている。
また、パッキン本体51における開口部16の口縁部17の密着面20と対向した円弧面53Aには、幅方向の両側において、一対の表ひれ部57が互いに平行姿勢をなして突出形成されている。同表ひれ部57の突出端は、円弧面53Aの最も張り出した位置よりも所定寸法突出した位置にある。
パッキン本体51の基部54における山の頂上の裏面からは、上記した矢尻部52が突出形成されている。
【0018】
パッキン50は、矢尻部52が、スライド扉30の裏面の周縁部を構成する枠体43の保持溝47に挿入され、同保持溝47の開口縁に形成された係止部48に両裾が係止されることにより、抜け止めされて装着されている。
そして、スライド扉30が正規に全閉されると、
図3に参照して示すように、パッキン50は、両表ひれ部57を弾性変形させつつ、円弧部53の最も張り出した面が若干弾縮して、開口部16の口縁部17の密着面20に設けられたヒータカバー24に密着する設定となっている。
【0019】
さて本実施形態では、パッキン50における基部54の両端から、弾力性を有する一対の裏ひれ部60が、矢尻部52の突出方向と同方向に突出形成されている。ただし、両裏ひれ部60は、基部54の厚さ程度しか突出長さを持たない背の低いものであり、かつ突出端が外側に少し開いた形態で形成されている。
また、パッキン本体51の基部54の裏面における矢尻部52と各裏ひれ部60との間には、
図5に示すように、それぞれ弾力性を有する両面テープ65(本発明の押し上げ部材に相当)が装着されている。両面テープ65の厚さは、基部54の厚さの半分強である。
【0020】
本実施形態の作用を説明する。パッキン50をスライド扉30の裏面の周縁部に設けられた装着面45に装着するには、まずパッキン本体51の基部54の裏面における矢尻部52の両側に、両面テープ65の一面を貼り付ける。係る状態からパッキン50の矢尻部52を、装着面45に形成された保持溝47に押し込むと、矢尻部52が抜け止めされるとともに、各両面テープ65のもう一方の面が、装着面45における保持溝47の両側の領域に貼り付けられることで、
図5に参照して示すように、パッキン50は、各裏ひれ部60の内側に両面テープ65が配された形態で装着される。
【0021】
スライド扉30が正規形状を保持した状態において全閉されると、
図3及び
図4に示すように、スライド扉30の裏面の装着面45に装着されたパッキン50は、裏ひれ部60をほぼ真横に開くように屈曲させ、かつ両面テープ65を弾性的に潰した形態において、パッキン本体51の円弧面53Aの最も張り出した部分が若干弾縮して、開口部16の表面側の口縁部17の密着面20に設けられたヒータカバー24に密着され、これによってシールが取られる。
この閉扉時において、スライド扉30が反る等の変形をして、パッキン本体51が開口部16の表面側の口縁部17の密着面20から離れようとした場合、その離間量が少ない間は、表ひれ部57が真直姿勢に戻りつつその先端が密着面20に密着される。
【0022】
スライド扉30がさらに変形する等により、パッキン本体51の密着面20からの離間量がさらに大きくなると、
図5及び
図6に示すように、両面テープ65の弾性的な復元膨張を伴って、特にパッキン本体51の円弧部53の表面(円弧面53A)における幅方向の両側に設けられた一対の表ひれ部57が押し上げられ、その先端が開口部16の表面側の口縁部17の密着面20に密着することにより、引き続いてシール状態が維持されることになる。
【0023】
本実施形態によれば、スライド扉30が変形すること等に起因してパッキン50のパッキン本体51が開口部16の表面側の口縁部17の密着面20から離れ、とりわけ表ひれ部57でもシール状態が保てない程度に密着面20から離れようとしても、両面テープ65の弾性的な復元膨張によって両表ひれ部57が押し上げられ、その先端が開口部16の表面側の口縁部17の密着面20に密着することにより、引き続いてシール状態を維持することができる。両面テープ65自体は裏ひれ部60の内側に配され、言い換えると裏ひれ部60で隠されているから、見栄えもよいものとなる。
【0024】
仮に両面テープ65や裏ひれ部60が剛性の高いものであると、スライド扉30に変形の無いときには、パッキン本体51が開口部16の表面側の口縁部17の密着面20に強固に押し付けられた状態となるため、本実施形態のようなスライド扉30の場合は、開扉の動作の初め等に大きな摩擦抵抗を受けることとなって、スライド扉30の開閉動作が重くなる嫌いがある。
その点この実施形態では、両面テープ65や裏ひれ部60が剛性には劣るから、パッキン本体51を必要以上に強固に開口部16の表面側の口縁部17の密着面20に押し付けることが無く、摩擦抵抗の増大化が回避されて、スライド扉30のスムーズな開閉動作が担保される。
【0025】
なお、両面テープ65は、スライド扉30の反り等の変形が大きい箇所(縦辺の中央部付近)の範囲だけに貼り、反りの少ない箇所(角付近)には貼るのを控えることにより、パッキン50の開口部16の表面側の口縁部17への押圧力を、部分的に必要以上に大きくならないようにして全周に亘って均一にすることができる。
また、両面テープ65は、当該プレハブ式冷凍冷蔵庫の出荷時に最初から貼るのではなく、反りが発生したときに必要箇所に後から貼るようにしても良い。
【0026】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)押し上げ部材としては、上記実施形態に例示した両面テープに限らず、スポンジ等、要は弾性的に体積増減が可能のものであればよい。
(2)パッキンとしては表ひれ部を備えない形状のものであってもよく、そのようなものにも本発明は同様に適用可能である。
(3)上記実施形態では、貯蔵庫本体の一側面に形成される開口部が4周縁を有する構造のものを例示したが、開口部が下縁が開放された構造であって、上縁及び左右の側縁の表面側の口縁部のみに、スライド扉の裏面に設けたパッキンを密着させる形式のものにも、同様に適用することができる。
【0027】
(4)上記実施形態では、開口部を開閉する扉としてスライド扉を例示したが、揺動開閉式の扉であってもよく、そのようなものにも本発明は適用可能である。
(5)本発明は上記実施形態に例示したプレハブ式冷却貯蔵庫に限らず、要は、周壁に開口部を備えた貯蔵庫本体とこの開口部を開閉する扉とが具備され、扉の裏面の周縁部に装着したパッキンを開口部の口縁部に密着させてシールする形式の冷却貯蔵庫全般に広く適用することができる。