特許第5982643号(P5982643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982643
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】バージンキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   B65D41/34
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-190846(P2012-190846)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-46941(P2014-46941A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502263916
【氏名又は名称】協同硝子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】和光純薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080274
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 仁義
(72)【発明者】
【氏名】宮田 由弘
(72)【発明者】
【氏名】七浦 光雄
【審査官】 佐野 健治
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3124569(JP,U)
【文献】 特開2004−051195(JP,A)
【文献】 特開2008−137670(JP,A)
【文献】 特開2007−001588(JP,A)
【文献】 特開2006−182357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記リング部材には、スリットが形成されており、前記過締め防止ラチェットは、前記スリットの対向面の略180°離間した位置に形成されているバージンキャップ。
【請求項2】
外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記3個の必須ラチェットは、開封時には、前記リング部材の弾性変形により瓶側の突起に一緒に係止し得るが、巻き締め時には、瓶側の突起に同時に乗り上げないように形成されたバージンキャップ。
【請求項3】
外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記3個の必須ラチェットのうちの1個のラチェットは、巻き締め時には、他の2個の必須ラチェットと同時には瓶側の突起に乗り上げないような位置に配置し、高さも他の必須ラチェットよりも低く形成されているバージンキャップ。
【請求項4】
外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記リング部材には、スリットが形成されており、前記3個の必須ラチェットのうちスリットに近い2個は、スリットから30゜以上離れた位置に配置されたバージンキャップ。
【請求項5】
外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記3個の必須ラチェットのうち2個のラチェットの間は、180゜若しくはその近くとし、他の1個のラチェットは、巻き締め時には、3個同時には前記瓶側の突起に乗り上げないが、開封時には、前記リング部材の弾性変形により瓶側の突起に一緒に係止し得る位置となるように形成されたバージンキャップ。
【請求項6】
外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記リング部材には、スリットが形成されており、前記スリットには、一つ以上の不正開封を検知するブリッジが設けられており、前記不正開封を検知するブリッジは、前記リング部材の縦スリットの開栓方向の面に凹部を形成し、該スリットの反対方向の面に形成したロッドを、該凹部内に間隔づけて位置させ、該ロッドの上面と該凹部上面及び該ロッドの下面と該凹部下面とを連結するブリッジで形成されているバージンキャップ。
【請求項7】
外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記キャップ本体下端に開封方向に上昇傾斜したスロープを有する凹部を形成し、該凹部の対向面のリング部材上端に該凹部に遊嵌する凸部を形成したバージンキャップ。
【請求項8】
外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記キャップ本体下端に開封方向に上昇傾斜したスロープを有する凹部を形成し、該凹部の対向面のリング部材上端に該凹部に遊嵌する凸部を形成し、前記凸部は、開封方向に上昇傾斜したスロープを有するバージンキャップ。
【請求項9】
前記過締め防止ラチェットの高さは、他のラチェットの少なくとも一つよりも低く形成する請求項1〜8のいずれかに記載のバージンキャップ。
【請求項10】
前記過締め防止ラチェットが、瓶側の突起に乗り上げる場合は、他のラチェットは、瓶側の突起に乗り上げない請求項1〜のいずれかに記載のバージンキャップ。
【請求項11】
前記3個の必須ラチェットは、巻き締め時には、瓶側の突起に同時には乗り上げない請求項1、2、4、6〜8のいずれかに記載のバージンキャップ。
【請求項12】
前記リング部材には、スリットが形成されている請求項2、3、5、7又は8のいずれかに記載のバージンキャップ。
【請求項13】
前記リング部材の必須ラチェットは、開封方向に緩やかな上昇斜面が形成され、巻き締め方向には急激な傾斜若しくは垂直面に形成され、該傾斜若しくは垂直面は、開封時には前記必須ラチェットが前記瓶側の突起に係止する係止面となる請求項1〜のいずれかに記載のバージンキャップ。
【請求項14】
前記瓶の突起は、巻き締め方向に緩やかな上昇斜面が形成され、開封方向には急激な傾斜若しくは垂直面に形成され、該傾斜若しくは垂直面は、開封時には前記必須ラチェットの係止面となる請求項1〜8のいずれかに記載のバージンキャップ。
【請求項15】
前記瓶は、90゜間隔で外周に4個の突起が設けられた瓶口を有する瓶である請求項1〜のいずれかに記載のバージンキャップ。
【請求項16】
前記過締め防止ラチェットは、前記3個の必須ラチェットのいずれかに対して開封方向に45°を超えない位置で、且つ、瓶口の突起が嵌るのに十分な間隔が確保される位置に配置する請求項1〜のいずれかに記載のバージンキャップ。
【請求項17】
前記過締め防止ラチェットは、前記3個の必須ラチェットのいずれかに対して開封方向に約30°以下の位置とする請求項16に記載のバージンキャップ。
【請求項18】
前記3個の必須ラチェットのそれぞれの隣接するラチェット間に、補助ラチェットを設ける請求項1〜8のいずれかに記載のバージンキャップ。
【請求項19】
前記3個の必須ラチェットの2個が巻き締め時に同時に瓶の突起に乗り上げ、残りの1個は、前記2個の必須ラチェットと同時に乗り上げないように、上記いずれかの必須ラチェットから、90゜を超える位置(95〜100゜)か、又は90゜未満の位置(80〜85゜)に配置する請求項1〜8のいずれかに記載のバージンキャップ。
【請求項20】
前記前記スリットには、一つ以上の不正開封を検知するブリッジが設けられている請求項1,4,6又は12のいずれかに記載のバージンキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開封したら直ちにわかるようにして不正開封の防止を図るバージンキャップに係り、詳記すれば不正開封の防止が図れる封印帯を備え、且つセット時の過締めによる液漏れを封印帯に備えた過締め防止ラチェットにより防止したバージンキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
各種飲料や食品等を入れた瓶類が店頭に陳列されている間に、不正な開封を検知して、その防止を図ることができれば、中身を保護し、安心して売ることができ、かつ安心して買うことができるようになる。このような目的を達成するために、いわゆるバージンキャップが従来より使用されている。
【0003】
従来のバージンキャップには、ガラス瓶及びキャップの封印帯にラチェットを備えたものが知られており、流通、保管においてキャップに緩みが生じ難く、緩みを原因とする液漏れの発生を防止できる。
【0004】
ラチェットを備えたバージンキャップに関する先行技術としては、開封認知環の易開離部から蓋本体のねじ外し方向に最も近いラチェット凸部の間隔を他のラチェット凸部の間隔より小さくした、開封認知部材付き容器蓋が開示されている(特許文献1)。また、キャップの係止爪と瓶の係止突起のいずれか一方又は両方を不均一化することによって、複数のブリッジの切断タイミングをずらすことにより、ブリッジの切断時の開栓トルクを小さくするキャップが開示されている(特許文献2)。
【0005】
意匠登録第1418987号公報(特許文献3)は、バージンキャップのスリット部分に関する部分意匠を開示するものであるが、封印帯内周には、等間隔に多数のラチエットが配置されている。
【0006】
しかしながら、従来の市販のラチェットを有するバージンキャップは、瓶口にセットするために、キャッパーを用いて一定の回転力をキャップに加える方式が一般に採用されているが、瓶口が内容物の溶媒で濡れていたりすると、滑り易くなるため過締めによりキャップの天板が変形し、キャップによる瓶口のシール状態が不十分となり、液漏れが生じることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭54―64646号公報
【特許文献2】特開平8-301319号公報
【特許文献3】意匠登録第1418987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、過締めによりキャップの天板が膨らんで、キャップによる瓶口のシール状態が不十分となり、液漏れが生じる問題を解決した過締め防止ラチェットを持つバージンキャップを提供することを目的とする。
【0009】
しかしながら、従来、このような過締め防止ラチェットは、全く知られていない。
【0010】
上記目的に沿う本発明は、以下の(1)〜(8)の発明からなる。
(1)外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記リング部材には、スリットが形成されており、前記過締め防止ラチェットは、前記スリットの対向面の略180°離間した位置に形成されているバージンキャップ(請求項1)。
(2)外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記3個の必須ラチェットは、開封時には、前記リング部材の弾性変形により瓶側の突起に一緒に係止し得るが、巻き締め時には、瓶側の突起に同時に乗り上げないように形成されたバージンキャップ(請求項2)。
(3)外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記3個の必須ラチェットのうちの1個のラチェットは、巻き締め時には、他の2個の必須ラチェットと同時には瓶側の突起に乗り上げないような位置に配置し、高さも他の必須ラチェットよりも低く形成されているバージンキャップ(請求項3)。
(4)外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記リング部材には、スリットが形成されており、前記3個の必須ラチェットのうちスリットに近い2個は、スリットから30゜以上離れた位置に配置されたバージンキャップ(請求項4)。
(5)外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記3個の必須ラチェットのうち2個のラチェットの間は、180゜若しくはその近くとし、他の1個のラチェットは、巻き締め時には、3個同時には前記瓶側の突起に乗り上げないが、開封時には、前記リング部材の弾性変形により瓶側の突起に一緒に係止し得る位置となるように形成されたバージンキャップ(請求項5)。
(6)外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記リング部材には、スリットが形成されており、前記スリットには、一つ以上の不正開封を検知するブリッジが設けられており、前記不正開封を検知するブリッジは、前記リング部材の縦スリットの開栓方向の面に凹部を形成し、該スリットの反対方向の面に形成したロッドを、該凹部内に間隔づけて位置させ、該ロッドの上面と該凹部上面及び該ロッドの下面と該凹部下面とを連結するブリッジで形成されているバージンキャップ(請求項6)。
(7)外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記キャップ本体下端に開封方向に上昇傾斜したスロープを有する凹部を形成し、該凹部の対向面のリング部材上端に該凹部に遊嵌する凸部を形成したバージンキャップ(請求項7)。
(8)外周に突起が設けられた瓶口を有する瓶に螺合する合成樹脂製バージンキャップであり、該バージンキャップは、キャップ本体に開封時に切断されるブリッジを介して連結したリング部材と、該リング部材の内周に形成された3個の必須ラチェットと過締め防止ラチェットとを具備し、該3個の必須ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止し、前記過締め防止ラチェットは、開封時には、瓶側の突起に係止しないが、巻き締め終了時に瓶側の突起に上昇接触して抵抗を高めて過締めを防止する作用を有し、前記キャップ本体下端に開封方向に上昇傾斜したスロープを有する凹部を形成し、該凹部の対向面のリング部材上端に該凹部に遊嵌する凸部を形成し、前記凸部は、開封方向に上昇傾斜したスロープを有するバージンキャップ(請求項8)。
【0011】
なお、本明細書において「係止」とは、バージンキャップの開封時に、瓶の突起がキャップのラチェットにひっかかって止まっている状態を指す。従って、瓶の突起が一旦キャップのラチェットにひっかかるが、その状態を保持できずにラチェットを乗り越えた場合には、「係止」とはいわない。
【0012】
過締め防止ラチェットは、開栓方向に緩やかな上昇斜面(以後、緩やかな傾斜面と記載する場合がある。)と、平坦なフラット面を有する頂部と、巻き締め方向には急激な傾斜若しくは垂直面とを有する。過締め防止ラチェットは、巻き締め終了時に緩やかな傾斜面とフラット面が瓶側の突起と接触して抵抗を高めて過締めを防止するが、突起に乗り上げる場合も乗り過ごす場合も、上昇接触により抵抗を高めて、過締めを防止する。過締め防止ラチェットは、開封時には、突起に係止しない高さにしているが、これは、3個の必須ラチェットを、突起に係止させるためである。
【0013】
ここでいう「急激な傾斜面」とは、過締め防止ラチェットが瓶側の突起を乗り越えた状態で巻き締めが終了した場合、その後自然条件下でキャップが巻き戻ったとしても瓶側の突起が過締め防止ラチェットに係止するために十分な角度を有する面である。
【0014】
前記過締め防止ラチェットの高さは、他のラチェットの少なくとも一つよりも低く形成するのが好ましい(請求項)。開封時のブリッジ切断には、関与しないようにすることと、巻き締め終了時に瓶側の突起に乗り上げても、封印帯が膨れないようにするためである。
【0015】
そのような過締め防止ラチェットの高さは、他のラチェットの少なくとも一つよりも低いが、過締め防止ラチェットが瓶側の突起を乗り越えた状態で巻き締めが終了した場合、その後自然条件下でキャップが巻き戻ったとしても瓶側の突起が過締め防止ラチェットに係止するために十分な高さ(例えば、他のラチェットに対して少なくとも一つの70〜80%程度の高さ)を備えていればよい。
【0016】
さらに、過締め防止ラチェットは、必須ラチェットと同等の周方向幅を備え頂部のフラット面が必須ラチェットよりも長い形状がより好ましい。このように設けることで、他のラチェットよりも高さを低く形成しても、過締めに対して十分な抵抗を発生させることができる。例えば、必須ラチェットのフラット面の1.5〜2.5倍程度の長さのフラット面であればよい。
前記過締め防止ラチェットが、瓶側の突起に乗り上げる場合は、他のラチェットは、瓶側の突起に乗り上げないのが好ましい(請求項10)。巻き締め終了時に過締め防止ラチェットと一緒に他のラチェットが乗り上げると、封印帯が膨らんで見栄えが悪い等の問題が生じるからである。
【0017】
前記3個の必須ラチェットは、巻き締め時には、瓶側の突起に同時には乗り上げないことが好ましい(請求項11)。瓶側の突起を乗り越える際の抵抗が同時に発生してブリッジが切れてしまうのを防止することができるからである。また、前記リング部材には、スリットが形成されているのが好ましい(請求項1、4,6、12)。このように構成することにより、開封時、封印帯を瓶口に残さないようにすることができるからである。
【0018】
前記過締め防止ラチェットは、前記スリットの対向面に略180°離間した位置に形成するのが好ましい(請求項)。過締め防止ラチェットが瓶口の突起に乗り上げても、スリットの変形が生じにくく、外観が不体裁なものになることを防止できるようになるからである。
【0019】
前記3個の必須ラチェットは、開封時には、前記リング部材の弾性変形により瓶側の突起に一緒に係止し得るが、巻き締め時には、瓶側の突起に同時に乗り上げないように形成されているのが好ましい(請求項)。瓶側の突起を乗り越える際の抵抗が同時に発生してブリッジが切れてしまうのを防止することができ、且つ効果的に開封できるからである。
【0020】
なお、本発明のバージンキャップは合成樹脂製であり、特にポリプロピレンが好適に用いられる。
【0021】
前記リング部材の必須ラチェットは、開封方向に緩やかな上昇斜面(以後、「緩やかな傾斜面」と記載する場合がある。)が形成され、巻き締め方向には急激な傾斜若しくは垂直面が形成され、該傾斜若しくは垂直面は、開封時には前記必須ラチェットが前記瓶側の突起に係止する係止面となるように形成するのが好ましい(請求項13)。
【0022】
ここでいう「急激な傾斜面」とは、開封時に3個の必須ラチェットが瓶側の突起に係止し得る角度を有する面である。
【0023】
更に上記必須ラチェットは、平坦なフラット面を有する頂部を有する。
【0024】
前記瓶の突起は、巻き締め方向に緩やかな上昇斜面が形成され、開封方向には急激な傾斜若しくは垂直面に形成され、該傾斜若しくは垂直面は、開封時には前記必須ラチェットの係止面となるように形成するのが好ましい(請求項14)。
【0025】
前記瓶は、90゜間隔で外周に4個の突起が設けられた瓶口を有する瓶であるのが好ましい(請求項15)。製造が容易となるからである。
前記過締め防止ラチェットは、前記3個の必須ラチェットのいずれかに対して開封方向に45°を超えない位置で、且つ、瓶口の突起が嵌るのに十分な間隔が確保される位置に配置するのが好ましい(請求項16)。過締め防止ラチェットは、前記3個の必須ラチェットのいずれかに対して開封方向に約30°以下の位置とするのが更に好ましい(請求項17)。開封時に必須ラチェットが瓶の突起に係止するまでの距離を短くするためである。
【0026】
前記3個の必須ラチェットのうちの1個のラチェットは、巻き締め時には、他の2個の必須ラチェットと同時に瓶側の突起に乗り上げないような位置に配置し、高さも他の必須ラチェットよりも低く形成されているのが好ましい(請求項)。但し、この1個のラチェットは、開封時にキャップの封印帯が弾性変形して広がったときも、他の必須ラチェットと一緒に瓶側の突起に係止可能であるような高さであることが必要である。
1個のラチェットを、他のラチェットと幅を同じにして、高さを低くすると、フラット面が長くなるか、傾斜面の角度が緩やかになる。しかし、何れの場合にも、巻き締め時において、瓶側の突起を乗り越えるまでの時間が他のラチェットより長くなり、その間、封印帯に負荷が生じる。これを軽減するために、この1個のラチェットは、他の必須ラチェットより周方向幅を狭くしてもよい。この場合、例えば他の必須ラチェットより15〜30%程度狭くすることができる。
【0027】
また、前記3個の必須ラチェットのうちの2個のラチェットは高さ及び周方向幅を同じにして、他の1個のラチェットは高さが他の2個のラチェットより低く、周方向幅を狭くしたものであることが、より好ましい。
【0028】
なお、逆に瓶口の突起をこのように形成しても良いが、瓶口の突起は、等間隔の方が製造し易いからこのように形成するのが好ましい。
【0029】
前記3個の必須ラチェットのうちスリットに近い2個は、スリットから30゜以上離れた位置に配置されているのが、スリットのブリッジが巻き締め時に意図せずに切れるのを防止できることから好ましい(請求項)。
【0030】
前記3個の必須ラチェットのうち2個のラチェットの間は、180゜若しくはその近くとし、他の1個のラチェットは、巻き締め時には、3個同時には前記瓶側の突起に乗り上げないが、開封時には、弾性変形により瓶側の突起に一緒に係止し得る位置となるように形成されているのが良い(請求項)。ブリッジの切断が容易となるからである。
【0031】
前記3個の必須ラチェットのそれぞれの隣接するラチェット間に、補助ラチェットを設けるのが、ラチェット間の距離が短くなるので、キャップが緩み難くなることから好ましい(請求項18)。
【0032】
前記3個の必須ラチェットの2個が巻き締め時に同時に瓶の突起に乗り上げ、残りの1個は、前記2個の必須ラチェットと同時に乗り上げないように、上記いずれかの必須ラチェットから、90゜を超える位置(95〜100゜)か、又は90゜未満の位置(80〜85゜)に配置するのが好ましい(請求項19)。前記スリットには、一つ以上の不正開封を検知するブリッジが設けられているのが好ましい(請求項20)。
【0033】
前記不正開封を検知するブリッジは、前記リング部材の縦スリットの開封方向の面に凹部を形成し、該スリットの反対方向の面に形成したロッドを、該凹部内に間隔づけて位置させ、該ロッドの上面と該凹部上面及び該ロッドの下面と該凹部下面とを連結するブリッジで形成されているのが好ましい(請求項)。
【0034】
前記キャップ本体下端に開封方向に上昇傾斜したスロープを有する凹部を形成し、該凹部の対向面のリング部材上端に該凹部に遊嵌する凸部を形成するのが好ましい(請求項)。このように形成することによって、開封時キャップ本体に上昇する力を与えるので、ブリッジが切断され易くなる。前記凸部は、開封方向に上昇傾斜したスロープを有するのが好ましい(請求項)。

【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、過締め防止ラチェットを設けているので、巻き締め終了時に過締めが防止されるから、過締めによりキャップの天板が膨らんで、キャップによる瓶口のシール状態が不十分になり、液漏れが生じることが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施例を示す一部破断正面図である。
図2】本発明のバージンキャップの背面図である。
図3】瓶に本発明のバージンキャップを巻き締めセットした時の例である。
図4】瓶に本発明のバージンキャップを巻き締めセットした時の他の例を示す。
【符号の説明】
【0037】
1・・・・・・・・・キャップ本体
2・・・・・・・・・ブリッジ
2´・・・・・・・・・太いブリッジ
3・・・・・・・・・リング部材(封印帯)
4・・・・・・・・・矢印状スリット
5、5´・・・・・・不正開封を検知する縦方向ブリッジ
6・・・・・・・・・凹部
7・・・・・・・・・ロッド
10・・・・・・・・・キャップ本体に形成した凸部
11・・・・・・・・・キャップ本体に形成した凹部
12・・・・・・・・・封印帯に形成した凸部
#1, #4, #7・・・・必須ラチェット
#5・・・・・・・過締め防止ラチエット
#3,#6,#9・・・・補助ラチェット
A,B,C,D・・・・・瓶口のラチェット(突起)
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0039】
図1は、本発明のバージンキャップを示すものであり、内周面にネジ部を形成したキャップ本体1と、同キャップ本体1に弾力性を有するブリッジ2,2´を介して一部を残して破断し得るように連設したリング部材(封印帯)3と、同リング部材の破断部となる矢印状スリット4と、該矢印状スリットの上下に連結された不正開封を検知する縦方向ブリッジ5,5´とから形成した例を示す。
【0040】
縦方向ブリッジ2(細幅)は、易破断連結部となるものであり、キャップ本体1とリング部材3の間に間隔づけて複数本連結されている。
【0041】
縦方向ブリッジ2´(太いブリッジ)は、非破断連結部となるブリッジであり、開封方向のスリット近くに位置し、切れ難くするため太く形成されている。
【0042】
このように形成しているので、キャップを開封すると、縦方向ブリッジ2(細幅)と、不正開封を検知する縦方向ブリッジ5,5´が切れて、縦方向ブリッジ2´は連結された状態で、リング部材はキャップと共に瓶口部分から外れる。
【0043】
太いブリッジとスリット4は、必ずしも形成しなくとも差支えないが、これらが無いと、キャップ開封後リング部材は、瓶口に残るので、太いブリッジとスリット4は、設けた方が好ましい。
【0044】
不正開封を検知する縦方向ブリッジ5,5´は、特に設けなくとも差支えないが、その場合は、ブリッジ2が不正開封を検知する縦方向ブリッジの役割を有することになる。
【0045】
図2は、本発明のバージンキャップの背面図であり、前記キャップ本体1下端に開封方向に上昇傾斜したスロープを有する凹部11が形成され、該凹部11の対向面のリング部材3上端に該凹部11に遊嵌する開封方向に上昇傾斜したスロープを有する凸部12が形成されている。
【0046】
このように形成することにより、開封時3個の必須ラチェットが一緒に係止し、更に回転させると、キャップ本体1は、上昇する方向に移動するので、ブリッジ2が切断され易くなる。
【0047】
本発明に使用する瓶口のビード部の突起は、3個の必須ラチェットを、開封時には、瓶側の突起と係止し得るが、巻き締め時には、3個の必須ラチェットに同時には乗り上げないように形成すればよい。リング部材内の3個の必須ラチェットを等間隔とし、瓶の突起を非等間隔とすることもできるが、製造上の理由で瓶の突起を等間隔とするのが好ましい。瓶は、ガラス製とするのが好ましいが、合成樹脂製であっても良い。瓶口のビード部の突起の個数は、好ましくは、3個若しくは4個、製造上の理由で特に4個が好ましい。
【0048】
本発明の実施例では、図3に示すように、ガラス製の瓶の瓶口外周ネジ部の下方のビード部に、90゜間隔で外周に4個のラチェット(突起)A,B,C,Dが形成されている。尚、図3は、巻き締め終了時の状態を示している。
【0049】
キャップの封印帯内には、#1、#3、#4、#5、#6、#7、#9の7つのラチェットが形成されている。30゜間隔で形成すれば、12個形成できるが、スリットとスリットの両側には、キャップを閉めた時にスリットが開かない(ブリッジ2が切れない)ようにするため、ラチェットは設けなかった。#2と#8のラチェットは、キャップセット時に瓶口の突起と重なる位置になり、ラチェット#2と#8が瓶口の突起に乗り上げることによりキャップが膨らむので、このラチェットは、設けなかった。#2と#8の一方でも、巻き締め終了時に#5のラチェットと同時に乗り上げると、封印帯が膨れて意図しないブリッジ切れが起きる。
【0050】
ブリッジやスリットのブリッジを破断するため必須なラチェットは、ラチェット#1、#4、#7である。これらは、開封ストッパー役のラチェットであり、開封操作時にキャップの封印帯が切れて開封されたことを明確に示すようにするため、開封操作の際に瓶口の突起に係止する役割をするものである。
【0051】
3個の必須ラチェットは、巻き締め時には、キャップのラチェット2個が瓶口の突起2つに同時に乗り上げるのが好ましいが、3個の突起には同時に乗り上げない位置に配置するのが好ましい。巻き締め時に、瓶口の3つの突起を乗り越える抵抗が同時に発生してブリッジが切れてしまうのを防止するためである。本発明で「乗り上げる」というのは、瓶口の突起の表面にキャップのラチェットが位置し封印帯が不要に膨れたり、ブリッジが切れる恐れがある状態になることを言う。また、このように配置することで、3個の必須ラチェットが、巻き締め時に瓶口の突起に同時に乗り上げることがないので、瓶側の突起がラチェットを乗り越える際に、キャップの封印帯を連結するブリッジに及ぼす影響が小さいものとなっている。
【0052】
そして、開封時には、キャップのラチェット1個が瓶口の突起の1つに順次係止しても良いが、3個一緒に瓶口の突起に係止するのが好ましい。プラスチックで形成しているので、多少伸びる(すなわち、弾性変形する)から、若干ずらすだけで、このように形成することは可能である。
【0053】
「3個一緒に」とは、開封の動作により瓶側の突起が3個の必須ラチェットに順次係止するが、キャップが弾性変形することによって、開封の時点では瓶側の突起が3個の必須ラチェットに係止している状態になっている場合を含む。
【0054】
また、3個のラチェットが順次係止して、開封の時点でも瓶側の突起が3個の必須ラチェットに係止している状態にはならず、その結果、開封操作により順次ブリッジが破断するようにしても良いが、開封操作時には「3個一緒に」係止するのが望ましい。
【0055】
上記実施例では、ラチェット#7は位置をずらして、巻き締め時にキャップのラチェット3個が瓶口の突起3つに同時に乗り上げないような位置に配置している。またラチェット#7の高さもラチェット#1と#4よりは、低く形成している。巻き締め時に瓶口の3つの突起を乗り越える抵抗が同時に発生して、封印帯が変形してブリッジが切断するのを防止するためである。そればかりか、開封時、瓶口の突起3つにラチェット3個が同時に係止した場合、開封するために強い力が必要となり、不便である。尚、位置をずらしたり、高さを低くするのは、他のラチェット#1と#4のいずれかであっても良い。
【0056】
さらに後記するように、上記実施例では、ラチェット#7の周方向幅は、他のラチェット#1と#4、及び過締め防止ラチェット#5よりも狭くなっている。
【0057】
必須ラチェットが2個あれば、開封時に、必須ラチェット2個が瓶口の突起の2つに一緒に係止して、ブリッジ部分が切断され、開封される。しかし実際には、必須ラチェットが2個の場合、キャップの初期開封時に、例えばスリットに近い方のラチェットに関しては開封時の力が逃げてしまい、キャップの必須ラチェットが瓶口の突起に係止する際の係りが不十分となり、その結果、キャップのブリッジが破断しないという問題が生じる場合がある。よって、確実に開封されるためには、上記3個の必須ラチェットがあることが好ましい。
【0058】
ラチエット#5は、過締め防止ラチェットであり、巻き締め時の過締めを防止し、過締めによりキャップの天板が膨らんで、キャップによる瓶口のシール状態が不十分になり、液漏れが生じてしまうのを防止するものである。
瓶口の突起にラチェット#5が乗り上げることで締め付け抵抗が増大し、巻き締め操作が停止する。ラチェット#5が瓶口の突起をも乗り越えて巻き締めが行われた場合は、上昇接触により締め付け抵抗が増大し、キャップのパッキンに当たって、締め付け抵抗が更に増大し巻き締め操作が停止する。
【0059】
ラチェット#5は、瓶側の突起に乗り上げた状態で停止するのが好ましいが、図4に示すようにラチェット#5が瓶口の突起をも乗り越えて巻き締めが行われた場合には、自然条件下でキャップに弛緩が生じてもそれを許容範囲に納めるという役割がある。即ち、ラチェット#5が瓶の突起を乗り越える時には、自然にキャップが巻き戻っても、ラチェット#5で巻き戻りが止まる。尚、閉栓時には図4の状態で停止しても、開封時には、ラチェット#5は、瓶口の突起に係止しないので、図3の状態となり、更に回転させて、3個の必須ラチェットが瓶の突起に係止し得るようになる。
【0060】
次に、ラチェット#1, #4, #7の許容される位置関係について説明する。
まず、ラチェット#1及び#7は、スリットのブリッジが意図せずに切れるのを避けるため、スリット近傍には配置せずに、スリットから30°以上離れた位置に配置する。尚、スリットの内面には、ラチェットを配置することができない。
【0061】
3個の必須ラチェットのうち2個のラチェットの間は、180゜若しくはその近くとし、他の1個のラチェットは、巻き締め時には、3個同時には乗り上げないが、開封時には、弾性変形により瓶側の突起に一緒に係止し得る位置とするのが好ましい。180゜若しくはその近くの角度の#1と #7とで押えて、#4で押すと、ブリッジの切断が容易となるからである。
【0062】
封印帯が膨らんでしまう問題を解決するための3つのラチェットの好ましい
位置関係は以下の(1)〜(3)のいずれかになる。
(1)ラチェット#1と#4の間が90°である場合(ラチェット#1と#4とが巻き締め時に瓶の突起を同時に乗り越える)
残りのラチェット#7は、巻き締め時に、ラチェット#1及び#4と同時には瓶口の突起を乗り越えない位置に配置する。
具体的には、ラチェット#7をラチェット#4に対して90°を超える位置(95°〜100°)、又はラチェット#4に対して90°未満の位置(80°〜85°)に配置する。
【0063】
(2)ラチェット#4と#7の間が90°である場合(ラチェット#4と#7とが巻き締め時に瓶の突起を同時に乗り越える)
残りのラチェット#1は、巻き締め時に、ラチェット#4及び#7と同時には瓶口の突起を乗り越えない位置に配置する。
具体的には、ラチェット#1をラチェット#4に対して90°を超える位置(95°〜100°)、又はラチェット#4に対して90°未満の位置(80°〜85°)に配置する。
(3)ラチェット#1と#7の間が180°である場合(ラチェット#1と#7とが巻き締め時に瓶の突起を同時に乗り越える)
残りのラチェット#4は、巻き締め時に、ラチェット#1及び#7と同時には瓶口の突起を乗り越えない位置に配置する。
具体的には、ラチェット#4を、ラチェット#1に対して90°を超えるか(95°〜100°)、90°未満(80°〜85°)の位置に配置する。
【0064】
次に、過締め防止ラチェット#5の位置関係について説明する。
【0065】
過締め防止ラチエット#5が図3に示すように、瓶口の突起に停止する場合は、特に問題はないが、図4に示すように、過締め防止ラチェット#5が瓶口の突起を越えて停止した場合は、ラチェット#4と過締め防止ラチェット#5との距離が長いと、瓶口の突起に係止させるまでの空回りの距離が長くなるから好ましくない。
そのため過締め防止ラチェット#5は、ラチェット#1、#4、#7のいずれかに対して開封方向に45°を超えない位置で、且つ、瓶口の突起が嵌るのに十分な間隔が確保される位置に配置するのが好ましい。
【0066】
過締め防止ラチエット#5は、開封時にラチェット#1、#4、#7が瓶の突起に係止するまでの距離を短くするため、ラチェット#1、#4、#7のいずれかに対して、開封方向に約30°以下の位置とするのが更に好ましい。
【0067】
実際には、巻き締めセット時瓶口の突起に、過締め防止ラチェット#5が乗り上げてもスリットのブリッジが破断しないように、ラチェット#5は、スリットからなるべく遠い位置にあることが好ましい。ラチェット#4に対して、開封方向に約30°以下の位置であるのが好ましい。過締め防止ラチェット#5は、スリットに対して180°の位置が最も好ましい位置である。
【0068】
過締め防止ラチェット#5は、1個以上あってもよい。
但し、過締め防止ラチェット#5に対して、ラチェット#5の開栓方向、巻き締め方向に90°の位置には他のラチェットを配置しないのが好ましい。このような配置とすることで、過締め防止ラチェットが1個以上ある場合でも、巻き締め終了時に過締め防止ラチェットがそれぞれ異なる瓶側の突起に乗り上げることがないし、開封操作時には、過締め防止ラチェットは瓶口の突起に係止せず、開封には関与しない。
【0069】
巻き締め終了時に、過締め防止ラチェットと他のラチェットとがそれぞれ異なる瓶側の突起に乗り上げて停止した場合、前記したように封印帯が膨れて意図しないブリッジ切れが起きる(段落0040を参照)、あるいは流通、保管において、封印帯が瓶側の突起のある複数箇所が拡がった状態で長期間維持され、開封時に必須ラチェットが瓶側の突起に係止せず乗り越える恐れがある。
【0070】
過締め防止ラチェット#5は、他のラチェットの少なくとも一つよりも高さを低く設定する。開封操作時には瓶口の突起に係止しない(開封には関与しない)ようにすることと、巻き締め終了時に瓶口の突起に乗り上げても、封印帯が膨れて見栄えが悪くならないようにするためである。
【0071】
また、前記したように、過締め防止ラチェットの高さは、過締め防止ラチェットが瓶側の突起を乗り越えた状態で巻き締めが終了した場合、その後自然条件下でキャップが巻き戻ったとしても瓶側の突起が過締め防止ラチェットに係止して、自然条件下でのゆるみが発生しないのに十分な高さ、であればよい。
【0072】
次に、補助ラチェット#3,#6,#9について説明する。
図3に示すように、ラチェット#4と#5の間に瓶側の突起が位置するようにキャップが巻き締めセットされるのが理想である。
【0073】
しかし、かりに巻き締めが弱くても、液漏れが起こさない程度にはしっかりキャップが閉まるような、キャップの位置を確保するために、ラチェット#1と#4の間、ラチェット#5と#7の間、ラチェット#7とスリットの間に、補助ラチェットとして、それぞれラチェット#3, #6, #9を設けるのが好ましい。ラチェット間の距離が短くなるので、キャップが緩み難くなるからである。
【0074】
補助ラチェット#3,#6,#9は、必須ラチェット同様、緩やかな傾斜面と、平坦なフラット面を有する頂部と、瓶側の突起に係止する係止面とで構成される。
【0075】
実施例では、ラチェット#3の高さはラチェット#1と同じに設定し、ラチェット#6の高さはラチェット#4と同じに設定し、ラチェット#9の高さはラチェット#7と同じに設定している。すなわち、ラチェット#9は、ラチェット#7と同様、他のラチェットよりも高さが低くなるように設定する。ラチェット#9の高さ及び幅は、3個の必須ラチェットのうち、高さを低く設定する1個のラチェットと同じでよい。
【0076】
また、上記実施例では、ラチェット#3と#6の幅はラチェット#1と#4の幅と同じになるように設定した。また、ラチェット#9の幅は、ラチェット#7と同じ幅に、すなわち他のラチェットよりも狭くなるように設定した。
【0077】
上記実施例でのキャップのラチェット#1、#3、#4、#5、#6の幅は17°(緩やかな傾斜面の幅は13°)、ラチェット#7、#9の幅は13°(緩やかな傾斜面の幅は9°)、瓶口の突起の幅は10°である。
【0078】
上記実施例でのキャップの各ラチェットの高さは以下の通りである。
#1, #3, #4, #6=1.3mm
#5, #7, #9=1.0mm
上記実施例において、ラチェット#5は、必須ラチェット#1や必須ラチェット#4の頂部をさらに切り欠いた、すなわちフラット面が長くなる形状になっている。すなわち、各ラチェットの上部フラット面の幅は4°であるが、ラチェット#5の上部フラット面の幅は8°である
上記実施例でのキャップの全ラチェット間の関係は以下の通りである。
#1〜#3:60°
#3〜#4、#4〜#5、#5〜#6:30°
#6〜#7:36°
#7〜#9:60°(#6〜#9:96°)
次に、不正開封を検知するブリッジについて説明する。
【0079】
上記実施例では、図1に示すように、リング部材の縦スリットの開封方向の面に凹部6を形成し、該スリットの反対方向の面に形成したロッド7を、該凹部6内に間隔づけて位置させ、ロッド7の上面と凹部6上面及びロッド6の下面と凹部7下面とを縦方向ブリッジ5,5´で連結することにより形成されている。
【0080】
前記ロッドの先端には、上方に向けた突起部8を形成し、前記凹部入口には上下に突起した上下の突起部9を形成し、封印帯が拡がったとき、前記突起部8と前記上下の突起部9とが係合するようになっている。
【0081】
上下の突起部9の上方の突起の開封方向の近くのキャップ本体下端には、突起10が形成されている。封印帯が拡がったとき、前記突起10と前記上下の突起部9とが係合するようになっている。
【0082】
このようにロッド7の移動が制限されるように形成されているので、キャップの巻き締め時に、ブリッジが意図せずに切れるのを防止している。
【0083】
また、上記実施例では、ロッド7は、上下の縦方向ブリッジ5,5´で連結されているが、上下の一方で連結すると、ロッドの移動が不規則なものとなり、開封時に不正開封を検知するブリッジが切れない等の問題が生じる恐れがある。
【0084】
また、不正開封を検知するブリッジは、封印帯に縦スリットを形成し、これを不正開封を検知する横方向ブリッジで連結しても差し支えない。また、前記特許文献1に記載のように、スリットの近傍の封印帯に凹状部若しくは凸状部を形成し、キャップ本体に凹状部若しくは凸状部の移動を制御するストッパーを設け、該凹状部若しくは凸状部とストッパーとを不正開封を検知する横方向ブリッジで連結しても良い。本発明に於いては、不正開封を検知する横方向ブリッジは、特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、過締めによりキャップの天板が膨らんで、キャップによる瓶口のシール状態が不十分になり、液漏れが生じる問題を、過締め防止ラチェットという従来全く知られていないラチェットにより解決したので、その利用が期待される。
図1
図2
図3
図4