特許第5982662号(P5982662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5982662
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】介護用ベッド
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/008 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   A61G7/008
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-198572(P2015-198572)
(22)【出願日】2015年10月6日
【審査請求日】2015年11月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000251118
【氏名又は名称】林金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 雄司
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−141021(JP,A)
【文献】 特開2004−073673(JP,A)
【文献】 特開2001−204587(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/026211(WO,A1)
【文献】 実開昭49−000793(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視長方形状をなす寝台部及び前記寝台部を支持する脚部を備え、前記寝台部は、長辺に対してそれぞれ平行に配設された一対の軸部材を有し、前記脚部は前記各軸部材を載置するそれぞれの受け部材を有する介護用ベッドであって、
前記寝台部の下方に配置され、支点、力点及び作用点を有する梃子部材として、
一方の軸部材を揺動軸として他方の軸部材側を持ち上げるための他方の梃子部材と、
他方の軸部材を揺動軸として一方の軸部材側を持ち上げるための一方の梃子部材と
を備え、
前記寝台部は、作用点が当接する当接部材を有し、
前記他方の梃子部材の力点に加えられた力が作用点から前記当接部材に伝達されることにより、前記寝台部は、前記受け部材に載置された一方の軸部材を揺動軸として、他方の軸部材側が持ち上がり、
前記一方の梃子部材の力点に加えられた力が作用点から前記当接部材に伝達されることにより、前記寝台部は、前記受け部材に載置された他方の軸部材を揺動軸として、一方の軸部材側が持ち上がる
ことを特徴とする介護用ベッド。
【請求項2】
請求項1に記載の介護用ベッドであって、
前記梃子部材は、
第1種梃子であり、
支点の軸方向が前記軸部材の軸方向と平行となり、作用点が前記当接部材に下方から当接するように配設されており、
作用点が少なくとも支点の真上に位置するまで動かすことが可能である
ことを特徴とする介護用ベッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の介護用ベッドであって、
前記一方の梃子部材は、他方の軸部材を持ち上げる場合に、一方の軸部材側が持ち上がることを抑止する一方の抑止部を有し、
前記他方の梃子部材は、一方の軸部材を持ち上げる場合に、他方の軸部材側が持ち上がることを抑止する他方の抑止部を有する
ことを特徴とする介護用ベッド。
【請求項4】
請求項3に記載の介護用ベッドであって、
前記抑止部は、前記当接部材に係合することで軸部材が上がることを抑止する
ことを特徴とする介護用ベッド。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の介護用ベッドであって、
一の梃子部材は、支点、力点及び作用点のうちの少なくとも一つの要素を複数有する
ことを特徴とする介護用ベッド。
【請求項6】
平面視長方形状をなす寝台部及び前記寝台部を支持する脚部を備え、前記寝台部は、長辺に対してそれぞれ平行に配設された一対の軸部材を有し、前記脚部は前記各軸部材を載置するそれぞれの受け部材を有する介護用ベッドであって、
前記寝台部の下方に配置され、支点、力点及び作用点のうちの少なくとも一つの要素を複数有する梃子部材を少なくとも一つ備え、
前記寝台部は、作用点が当接する当接部材を有し、
前記梃子部材の力点に加えられた力が作用点から前記当接部材に伝達されることにより、前記寝台部は、前記受け部材に載置された一方の軸部材を揺動軸として、他方の軸部材側が持ち上がる
ことを特徴とする介護用ベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝台部及び寝台部を支持する脚部を備える介護用ベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会と呼ばれる昨今においては、被介護者に対する介護の効率化が重要な課題となっている。例えば、寝たきりの被介護者の身体を動かす場合、状況によっては数人の介護者が必要な作業となることもある。そこで1人の介護者でも被介護者を移動させることが可能な介護用のクレーン装置が販売されている。
【0003】
しかしながら、ベッドの近傍に配設される介護用のクレーン装置は大型であるため、ベッドとクレーン装置を併せると、広大な設置スペースが必要になるという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1では、電動クレーンを装備したクレーン付き介護用ベッドを開示している(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−12203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたクレーン付き介護用ベッドは高額であるという問題がある。特に、介護者が比較的体力を有する場合は、補助は必要であるが、クレーンを用いるほどではないときもあり、そのようなときには、クレーン付き介護用ベッドの導入はコスト面での問題が生じる。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みて為されたものであり、梃子部材を用いて揺動可能な寝台部を備えることにより、コストを抑制することが可能な介護用ベッドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願記載の介護用ベッドは、平面視長方形状をなす寝台部及び前記寝台部を支持する脚部を備え、前記寝台部は、長辺に対してそれぞれ平行に配設された一対の軸部材を有し、前記脚部は前記各軸部材を載置するそれぞれの受け部材を有する介護用ベッドであって、前記寝台部の下方に配置され、支点、力点及び作用点を有する梃子部材として、一方の軸部材を揺動軸として他方の軸部材側を持ち上げるための他方の梃子部材と、他方の軸部材を揺動軸として一方の軸部材側を持ち上げるための一方の梃子部材とを備え、前記寝台部は、作用点が当接する当接部材を有し、前記他方の梃子部材の力点に加えられた力が作用点から前記当接部材に伝達されることにより、前記寝台部は、前記受け部材に載置された一方の軸部材を揺動軸として、他方の軸部材側が持ち上がり、前記一方の梃子部材の力点に加えられた力が作用点から前記当接部材に伝達されることにより、前記寝台部は、前記受け部材に載置された他方の軸部材を揺動軸として、一方の軸部材側が持ち上がることを特徴とする。
【0009】
また、本願記載の介護用ベッドは、平面視長方形状をなす寝台部及び前記寝台部を支持する脚部を備え、前記寝台部は、長辺に対してそれぞれ平行に配設された一対の軸部材を有し、前記脚部は前記各軸部材を載置するそれぞれの受け部材を有する介護用ベッドであって、前記寝台部の下方に配置され、支点、力点及び作用点のうちの少なくとも一つの要素を複数有する梃子部材を少なくとも一つ備え、前記寝台部は、作用点が当接する当接部材を有し、前記梃子部材の力点に加えられた力が作用点から前記当接部材に伝達されることにより、前記寝台部は、前記受け部材に載置された一方の軸部材を揺動軸として、他方の軸部材側が持ち上がることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る介護用ベッドは、寝台部及び寝台部を支持する脚部と、寝台部を揺動させる梃子部材とを備えている。これにより、介護を補助する機能を安価に設けることが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る介護用ベッドの構成例を概略的に示す外観図である。
図2】本発明に係る介護用ベッドの揺動の概要を例示する概略断面図である。
図3】本発明に係る介護用ベッドが備える梃子部材の一例を示す概略外観図である。
図4】本発明に係る介護用ベッドが備える梃子部材の一例を示す概略斜視図である。
図5】本発明に係る介護用ベッドが備える梃子部材の動作の一例を概略的に示す模式図である。
図6】本発明に係る介護用ベッドが備える梃子部材の動作の一例を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る介護用ベッド1の構成例を概略的に示す外観図である。図1(a)は左側方からの視点、図1(b)は後方からの視点、そして図1(c)は上方からの視点で介護用ベッド1をそれぞれ示している。なお、図1の各図は、介護用ベッド1の構成の位置関係を容易に把握できるように、細部の記載を省略し、全体として概略的に記載している。また、各部材の関係を把握し易くするため各部材の縮尺を適宜変更し、要部を明確にして記載している。以降の説明において、介護用ベッド1の方向は、一般的な被介護者の仰向け寝姿勢において頭部の方向を前方(頭側)、脚部3の方向を後方(足側)とし、右半身側を右側、そして左半身側を左側として示す。
【0014】
介護用ベッド1は、マットレス、布団等の寝具を載置可能な寝台部2と、寝台部2を支持する脚部3とを備えている。寝台部2は、平面視長方形状をなす底板20を備えている。底板20の下部には、STK700鋼等の鋼材製のパイプ材を用いて構成された寝台部フレーム21が、底板20の各辺に略平行になるよう平面視長方形状に配設されている。
【0015】
底板20は、主に被介護者の上半身を支える上板20a、主に腰から膝までを支える中板20b、及び主に膝から足先までを支える下板20cに三分割されている。上板20a、中板20b及び下板20cは、それぞれ長方形状をなし、互いに接する辺は、蝶番状の接続部20dにより揺動可能に接続されている。なお、下板20cの足先側には、必要に応じて下板20cに対して直角をなすようにフットボード20eを設けることができる。フットボード20eに相対するように、頭側にはヘッドボード20fが設けられている。
【0016】
また、底板20の下方には、被介護者の頭側の寝台部フレーム21及び足側の寝台部フレーム21を渡す一対の軸部材22が架設されている。一対の軸部材22は、断面が円状をなすパイプ材を用いて構成されており、底板20の左右の長辺の内側に、左右の長辺に沿って平行に配設されている。なお、平行に配設された軸部材22とは、所定の長さに切断された直線状をなす軸部材22が一定の距離を隔てて配設されていることを示すが、例えば、軸部材22に多少屈曲した部分があっても良く、また軸部材22間の間隔に若干の変動が有っても良い。即ち、ここでいう平行に配設された軸部材22とは、略並行に配設された軸部材22を示す。
【0017】
寝台部フレーム21の下部には、軸部材22の外周上面となる半円形の部分が嵌まり込む嵌合部材23が複数配設されており、軸部材22の外周上面が嵌合部材23に嵌まり込むことにより、寝台部フレーム21及び底板20は、軸部材22により支持される。嵌合部材23は、摩擦係数が大きく弾性を有する樹脂等の材料を用いて形成されている。また、寝台部フレーム21及び底板20は、軸部材22に固定されているのではなく、軸部材22に嵌合部材23が嵌合することにより、軸部材22上に載置されている。このため、図1(a)に仮想線で示すように、底板20は、上板20aの頭側を上げ、中板20b及び下板20cの接続部20dを上側に凸になるように折り曲げることができる。底板20を折り曲げることにより、被介護者が上半身を起こして食事等の行為を行う場合に、被介護者を支えることができる。なお、折り曲げた上板20aを支えるべく、上板20aの下部には、長尺状をなし、伸縮自在な油圧シリンダー等の伸縮支持部材20gの一端が揺動自在に取り付けられており、伸縮支持部材20gの他端は、上板20aの下方に揺動自在に取り付けられている。また、被介護者の背骨から腰及び脚にかけての曲線に沿って凹凸を有するように底板20を固定することも可能である。
【0018】
また、寝台部2の左右には、到立U字状をなす介助バー等の付属品を必要に応じて取り付けることが可能であり、更に食台、テレビ台、テーブル、鏡等の付属品も必要に応じて取り付けることが可能である。
【0019】
脚部3は、STK700鋼等の鋼材製のパイプ材を用いて構成された脚部フレーム30が、寝台部2の各辺に略平行になるよう平面視長方形状に配設されている。脚部3の長方形の各頂点又はその近傍にはそれぞれ脚柱31が配設されており、各脚柱31は床上に略垂直になるように立設される。脚部フレーム30を構成する複数本のパイプ材のうちの2本は、寝台部2の一対の軸部材22の下方に、軸部材22に沿ってそれぞれ配設されている。軸部材22の下方に配設された各脚部フレーム30には、軸部材22の外周下面となる半円形の部分を載置可能な凹部を有する鋼材製の受け部材32が複数配設されている。
【0020】
さらに、脚部フレーム30には、支点、力点及び作用点を有する梃子部材33が取り付けられており、力を加えていない状態において梃子部材33は寝台部2の下方に位置している。梃子部材33は、長辺側の最外枠となる左右の脚部フレーム30にそれぞれ取り付けられている。一の梃子部材33は、一本の鋼材の両端側をそれぞれ複数箇所屈曲して形成されており、長辺に平行な直線状をなす中央部は力点となり、屈曲した位置から両端部にかけて、それぞれ支点及び作用点を有している。一の梃子部材33のそれぞれの両端部は作用点となっており、両側の支点を揺動軸として脚部フレーム30に取り付けられている。支点の軸方向は、軸部材22の軸方向と略平行になるように配設されている。即ち、一の梃子部材33は、支点及び作用点を複数有し、直線状の中央部を力点として共有している。寝台部2に対し、複数の作用点、ここでは頭側と足側との2点から力を加える構造とすることにより、揺動の際の安定性の向上による操作性の向上を見込むことができる。梃子部材33の力点となる直線状をなす中央部には、寝台部2の下方に位置する梃子部材33を容易に引き出せるように把持部33aが設けられている。梃子部材33の詳細については後述する。
【0021】
図2は、本発明に係る介護用ベッド1の揺動の概要を例示する概略断面図である。図2は、図1(a)A−A方向の断面を概略的に示している。介護用ベッド1の寝台部2は、一対の軸部材22を備えており、軸部材22は、脚部3の受け部材32に載置された状態で使用される。そして、図2に示すように、介護用ベッド1の寝台部2は、受け部材32に載置された一方の軸部材22を揺動軸として、他方の軸部材22側を持ち上げることが可能である。寝台部2の一側を持ち上げることにより、被介護者の体位の変換、移動等の介護作業を補助することができる。なお、いずれの側を持ち上げることも可能である。図2に例示した揺動のための作業を容易にするための機構の一部として梃子部材33が用いられる。
【0022】
図3は、本発明に係る介護用ベッド1が備える梃子部材33の一例を示す概略外観図であり、図4は、本発明に係る介護用ベッド1が備える梃子部材33の一例を示す概略斜視図である。図3(a)は、梃子部材33の正面図であり、介護用ベッド1に取り付けられた場合、介護用ベッド1の側方からの視点での図となる。図3(b)は、梃子部材33の側面図であり、介護用ベッド1の頭側又は足側の視点からの図となる。
【0023】
梃子部材33は、一本の鋼材の両端側をそれぞれ複数回屈曲して形成されており、正面視でU字状をなし、側面視で鈍角に屈曲する倒立L字状をなしている。梃子部材33の下部に位置し、直線状をなす中央部は梃子の力点として機能する。力点として機能する直線状の部位には、把持部33aが設けられている。把持部33aは、寝台部2の下方で、側部の外側に向くように配設されており、作業者は、寝台部2の下方から把持部33aを把持して引き出すことにより、梃子部材33を動かす作業を途中まで容易にすることができる。鋼材の両端には、回転コロ33bが回動自在に軸支されており、梃子の作用点として機能する。側面視の屈曲部の近傍には、軸孔33cが開設されており、軸孔33cに軸ピン33d(図5図6参照)を通して脚部フレーム30に揺動自在に軸支することにより、軸ピン33dが梃子の支点として機能する。脚部フレーム30に取り付けられた梃子部材33は、力を加えていない状態で、図3(b)に示すように、力点から屈曲部まで略垂直に直線状に延びており、屈曲部で鈍角に屈曲している。このように、梃子部材33は、力点と作用点との間に支点を有し、力点に加えられた力を作用点に伝える第1種梃子である。
【0024】
また、梃子部材33には、力点から屈曲部までの直線状の部分から更に直線状に延伸する方向へ向けて抑止部33eが設けられている。一方の梃子部材33に設けられた抑止部33eは、他方の側が持ち上げられた場合、一方の軸部材22が持ち上がることを抑止する部材である。抑止部33eは直線状に延びる部位の先端が屈曲しており、後述する当接部材24(図5図6参照)に係合することにより、一方の軸部材22の持ち上がりを抑止する。
【0025】
図5及び図6は、本発明に係る介護用ベッド1が備える梃子部材33の動作の一例を概略的に示す模式図である。図5及び図6は、介護用ベッド1の寝具部及び脚部3の一部を足側からの視点で模式的に示している。図5は、両方の軸部材22を受け部材32に載置した状態を示しており、図6は、一方の軸部材22側(図に向かって右側)を持ち上げた状態を示している。なお、図5及び図6において矢印は力点及び作用点が移動する方向を示している。
【0026】
図5に示す載置状態について説明する。寝台部2の下部に位置する軸部材22は、脚部3の脚部フレーム30に設けられた受け部材32に載置されている。軸部材22には、鋼材製の板状をなし、介護用ベッド1の内側に向けて水平方向から若干上方へ向けて延びる当接部材24が取り付けられている。受け部材32は、軸部材22の真下に位置する様に脚部フレーム30上に設けられている。脚部フレーム30には、介護用ベッド1の内側に向けて略水平方向へ延びる鋼材製の軸支部材34が取り付けられており、軸支部材34の先端近傍で軸ピン33dにより梃子部材33の支点が揺動自在に軸支されている。梃子部材33の作用点となる回転コロ33bは、当接部材24の下面に対して回動自在に当接している。また、梃子部材33に設けられた抑止部33eは、先端の屈曲部が底板20の下面と当接部材24の上面との間に入り込んでいる。
【0027】
図5に示す載置状態から、図6に示すように一方の軸部材22側を持ち上げた状態への遷移について説明する。作業者は、梃子部材33の力点に設けられた把持部33aを把持し、把持部33aを介護用ベッド1の下方から引き出すようにして梃子部材33を揺動させることにより、水平方向から若干上方に向けて屈曲されていた屈曲部が立ち上がり、作用点となる回転コロ33bが当接部材24の下面に当接しながら矢印で示すように内側へ移動する。これにより、他方の軸部材22が揺動軸となって一方の軸部材22側が持ち上がるように寝台部2が揺動する。なお、梃子部材33は、力点となる先端までの部分が、脚部フレーム30の下部に当接するまで揺動させることが可能である。そして梃子部材33を脚部フレーム30に当接するまで動かすと、作用点は、支点の真上に位置するまで揺動し、屈曲部が鈍角であるため更に支点の真上を若干超えて反対側に倒れる位置まで揺動する。作用点が少なくとも支点の真上に位置するまで動かすことが可能であるため、梃子部材33を限界まで(脚部フレーム30に当接して規制されるまで)動かした状態で、梃子部材33にかける力を抜いた場合でも、梃子部材33が図5に示す元の位置に戻ることはない。そして、図6に示すように、作用点を支点の真上を超える位置まで動かした場合、寝台部2からの加重により梃子部材33にかかる回転モーメントの方向が反転するため、一方の軸部材22側を持ち上げた状態で安定させることができる。
【0028】
また、一方の軸部材22側を持ち上げた状態において、他方の側に設けられた当接部材24の上面は、他方の側に設けられた抑止部33eの下面に係止される。これにより、一方の軸部材22側が持ち上げた状態で、例えば、一方の側の寝台部2の側部先端に加重が加えられたとしても、他方の軸部材22が受け部材32から浮き上がることを抑止する。従って、例えば、持ち上げられた寝台部2の側部先端に子供が力を加えたとしても、寝台部2の浮き上がりを防止することが可能である。なお、載置状態において、底板20の下面と当接部材24の上面との間に入り込んでいる抑止部33eの先端の屈曲部は、梃子部材33が揺動した場合、底板20と当接部材24との間から外れるため、屈曲部が梃子部材33の揺動を妨げることはない。
【0029】
このように本発明に係る介護用ベッド1は、寝台部2及び脚部3を備えており、梃子部材33により、側部の一方を容易に持ち上げることが可能である。従って、介護用ベッド1は、被介護者の体位の変換、移動等の介護作業の補助を行うことが可能である等、優れた効果を奏する。
【0030】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形態で実施することが可能である。そのため、上述した実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形及び変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0031】
例えば、前記実施形態では、寝台部の両側部を持ち上げる形態を示したが、本発明はこれに限らず、一方の側部にのみ梃子部材を設け、一方のみが持ち上げられるように構成する等、様々な形態に展開することが可能である。
【0032】
さらに、前記実施形態では、第1種梃子の梃子部材を用いる形態を示したが、本発明はこれに限らず、支点と力点との間に作用点を有する第2種梃子の梃子部材を用いる等、様々な形態に展開することが可能である。また、当接部材の位置も寝台部の下方に設けるのではなく、寝台部の側方に設ける等、様々な形態に展開することが可能である。
【0033】
さらに、前記実施形態では、一の梃子部材が、支点及び作用点を複数有し、力点を共有する形態を示したが、梃子の要素である作用点、支点及び力点のうちの少なくとも一つを複数有し、他の要素を共有する一の梃子部材であれば、これに限るものではない。例えば、作用点を複数有し、支点及び力点を共有する形態、作用点及び力点を複数有し、支点を共有する形態等、様々な形態に展開することが可能である。更には、作業時において同時に使用するこことができるのであれば、一方の側の梃子部材が梃子の要素である作用点、支点及び力点の全てを複数有し、共有する要素が無くても良い。
【符号の説明】
【0034】
1 介護用ベッド
2 寝台部
20 底板
21 寝台部フレーム
22 軸部材
24 当接部材
3 脚部
30 脚部フレーム
31 脚柱
32 受け部材
33 梃子部材
33a 把持部
33b 回転コロ
33c 軸孔
33d 軸ピン
33e 抑止部
【要約】
【課題】寝台部及び寝台部を支持する脚部を備え、寝台部の一側を容易に持ち上げることが可能な介護用ベッドを提供する。
【解決手段】介護用ベッド1は、寝台部2及び寝台部2を支持する脚部3を備え、寝台部2は平行に配設された一対の軸部材22を有し、脚部3は各軸部材22がそれぞれ載置される受け部材32を有する。寝台部2の下方には、支点、力点及び作用点を有する梃子部材33が配設されており、寝台部2は、作用点が当接する当接部材24を有する。そして、梃子部材33の力点に力を加えることにより、寝台部2は、受け部材32に載置された一方の軸部材22を揺動軸として、他方の軸部材22側が持ち上がる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6