特許第5982672号(P5982672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982672
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】1000年プリント
(51)【国際特許分類】
   B44C 3/00 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   B44C3/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-25126(P2013-25126)
(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-151602(P2014-151602A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512021092
【氏名又は名称】株式会社大副
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】大西 直之
【審査官】 水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−153645(JP,A)
【文献】 特開平11−059099(JP,A)
【文献】 特開平01−209200(JP,A)
【文献】 特開2002−132330(JP,A)
【文献】 特開2006−255954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を加工する画像処理装置であって、
複数の異なる経年に関連付けて、現在の色漆の色および経年変化後の色漆の色の複数の色情報を記憶する色記憶部と、
前記色記憶部に記憶された複数の経年の色漆の色情報の中から、ユーザーに指定された年限の色漆の色情報に基づいて画像を色分解する画像処理部と、
前記画像処理部により色分解された画像データの色調を調整する調整部と
有する画像処理装置。
【請求項2】
画像処理された前記画像データを漆器に固定するための加工部
さらに有する
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
画像を加工する画像処理方法であって、
複数の異なる経年に関連付けて、現在の色漆の色および経年変化後の色漆の色の複数の色情報を記憶する色記憶ステップと、
前記色記憶ステップに記憶された色漆の色情報の中からユーザーに指定された年限の色漆の色情報に基づいて画像データを色分解する画像処理ステップと、
前記画像処理ステップにより色分解された画像データの色調を調整する調整ステップ
有する画像処理方法。
【請求項4】
画像処理された前記画像データを漆器に固定するための加工ステップ
さらに有する
請求項3記載の画像処理方法。
【請求項5】
画像データを既定の色毎に色分解するステップと、
経年毎に関連付けて複数の色漆の色を記憶するデータベースを参照して、前記画像データを、経年に関連付く色漆の色に基づいて色調整するステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間経過にともない発色が変化する漆絵において絵画、写真を鮮明に再現するための画像処理を用いた漆絵作成装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
漆という塗料は、乾燥ではなく酸化による固化のため、耐久性が極めて高く一度固化すると溶剤も効かず、従来の印刷技術では図画を定着できない。漆を用いた漆絵に図画を定着する方法として、古来より刀を用いて点彫し、漆を多色象嵌するキンマや、金箔を貼りこむ沈金があった。
なお、本願に係る文献公知発明として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−136542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、漆は無色透明ではないため、色漆は原発色の再現性が低く、年月を経ないと透明性が上がらず鮮明な発色を得られず、職人の熟達した技による工芸品であり作成時には時間経過後の発色の予測がつきにくく将来の仕上がりを想像しがたい。
【0005】
また、色漆には色数に限りがあり色再現性が低いとともに、塗料としては非常に扱いにくく、従来のオフセットや凸版印刷などの印刷技術には利用できず、同一品質の工業製品としての量産化には向かないという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を鑑み、絵画、写真などの図画を、画像処理装置を用いて色分解し画像の再現性を高め、加工装置を用いて漆器に定着させることにより、耐久性の高い、時の経過とともに美しくなる漆絵作成装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態および実施例のように実現することができる。
【0008】
本発明の装置は、画像を加工する画像処理装置であって、複数の色を記憶する色記憶部と、図画データを色分解する画像処理部と、色調を調整する調整部とを備えた画像処理装置。前記色記憶部は、経年変化後の原色および現在の色漆の色などを記憶する画像処理装置。
【0009】
前記画像処理装置には、画像処理した図画を漆器に固定するための加工部を備えることが好ましい。
【0010】
本発明は、色記憶部に記憶された色数によって、図画データを画像処理することにより、少ない色数で原画の再現性を高めることができる。色記憶部に経年変化後の原色および現在の色漆の色を記憶しておくことにより、現在の色合いで画像を調整するか、将来の色で調整するかを選択することができる。また、経年変化については複数の年限を選択することができる。経年変化ごと現在の色の記憶部は同一記憶部であってもよい。
【0011】
画像処理した図画データを、漆器に固定するために加工部を備えることにより耐久性の高い漆絵を作成することができる。加工部には、3次元プロッター等を用いて凹部からなる加工溝を形成し、加工溝に色漆を塗りこむ方法や、漆を塗布した上にインクジェットプリンタのように複数色の顔料を噴射し付着させるなどの方法が考えられる。また色ごとに加工して研ぎだすなどの方法や前記加工方法を併用してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、年を経ることで透明性が上がり発色が良くなるという漆の特性を活かして、長期に保存することで鮮明な画像を得ることができ、長期保存に耐えうる画像を実現することを実現できる。また、手作業に頼らず加工することにより、使用する漆の量を抑え、均一の品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ブロック図。
図2】本発明に係る実施形態1のフロー。
図3】画像処理操作画面例。
図4】画像効果操作画面例。
図5】画像効果操作画面例。
図6】キンマ加工工程。
図7】色蒔絵加工工程。
図8】色蒔絵加工対比例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るブロック図である。
図2は、本発明に係る実施形態のフローである。
本発明に係る画像処理方法は、画像処理装置に入力する工程S1と、色漆の色数に合わせて画像を色分解する工程S2と、画像の色調整をする工程S3と、画像を固定する工程S4をから構成される。画像の入力には、写真データの入力や、スキャナーなどからの画像データの取り込みなどの方法がある。
【0015】
図3は画像処理操作画面例である。
入力された画像は、色漆の色数に合わせて色分解され画像表示エリア30に表示される。パレット31で使用する色漆を指定することができ、色数に合わせて最適な再現を図ることができる。経年変化色調調整バー32を調整することにより現在の仕上がりや将来の色調を確認することができる。入力された画像を色分解する方法として、限られた色数を使用して中間色を表現するために誤差拡散法を用いて行うことが望ましいが、異なった画調を表現するためにその他の方法を用いてもよい。
【0016】
画像処理工程において、画像に対して加工処理を施し、日本画調や油絵調などの様々な画像効果を与える工程を設けてもよく、図4および図5は画像効果操作画面の例である。画像表示エリア30に表示された画像に対して、効果指定メニュー41を選択することにより効果を与える画調を指定する。また、漆が経年変化することを利用して、現在の色漆の色を用いて色分解しておくことにより、ニス引きを施した古いセピア調油彩画風の効果を得ることができ、これにより時代を経るごとに鮮やかな色調になり、あたかも絵画を復元したかのような効果を得ることができる。
【0017】
画像処理した画像を漆器に固定するためには、3次元プロッターを使用したキンマ加工や、生漆を塗布した加工面に顔料の色粉を吹き付ける色蒔絵加工を用いることが好ましい。3次元プロッターなどを用いることで平面だけではなく、花器などの立体の漆器にも画像を固定することが可能である。
【0018】
図6はキンマ加工工程を示したものである。
木地60は下地加工がされた漆器である。加工面に対して分解した色ごとに加工刀61により凹部からなる加工溝を順番に形成する。1色目の加工溝を形成後、1色目の色漆62を塗り込む。続いて2色目の加工溝を形成し、2色目の色漆63を塗り込む。この工程を使用する色数に合わせて繰り返し、最後に固定した図画を研ぎ出す。加工刀は通常キンマ等を用いるが、ドリルやヤスリなどを用いてもよい。
【0019】
通常のキンマ技法では、手作業により行うため一色加工するごとに研ぎ出しを行い、次の色を加工するが、本発明によれば、連続して加工し、研ぎ出しを一回で行うことが可能となり、また使用する漆を最小限に抑えることが可能となる。
【0020】
図7は色蒔絵加工工程を示したものである。
色蒔絵加工では、加工面に透明な生漆71を均一に塗布した後、色粉噴射ノズル72により顔料の色粉を吹き付ける。
【0021】
図8に示すように、生漆の厚さより小さな色粉81や生漆の厚さよりも大きな色粉82など吹き付ける色粉の粒子の大きさを調整してもよく、これによりマチエール(材質効果)を変えた異なる仕上がりを得ることができる。
【0022】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の形態を逸脱しない範囲内において様々な形態において実施し得る。
実施し得る形態として、たとえば現在の製品の時間経過による色シミュレートを行うことも可能である。
【符号の説明】
【0023】
30…画像表示エリア
31…パレット
32…経年変化色調調整バー
41…効果指定メニュー
60…木地
61…加工刀
62…色漆1色目
63…色漆2色目
71…生漆
72…色粉噴射ノズル
81…小さな色粉
82…大きな色粉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8