特許第5982715号(P5982715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーフイダー ファーマシューティカルズ グループ(ジリン)リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982715
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】抗高血圧薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4422 20060101AFI20160818BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20160818BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20160818BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   A61K31/4422
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61K31/404
   A61K47/04
   A61K47/12
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61P9/12
   A61P43/00 121
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-553272(P2011-553272)
(86)(22)【出願日】2010年6月17日
(65)【公表番号】特表2012-514048(P2012-514048A)
(43)【公表日】2012年6月21日
(86)【国際出願番号】CN2010073998
(87)【国際公開番号】WO2011097857
(87)【国際公開日】20110818
【審査請求日】2012年10月26日
【審判番号】不服2014-25874(P2014-25874/J1)
【審判請求日】2014年12月18日
(31)【優先権主張番号】201010107945.5
(32)【優先日】2010年2月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511049185
【氏名又は名称】シーフイダー ファーマシューティカルズ グループ(ジリン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】ヤーン、イェン リン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ、チュワン シャオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン、シィ ティエン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ホワン
(72)【発明者】
【氏名】ソーン、セン タオ
【合議体】
【審判長】 蔵野 雅昭
【審判官】 村上 騎見高
【審判官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−517050号公報(JP,A)
【文献】 HEBEI MEDICINE,2005年,Vol.11,No.10,p.901−902
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−アムロジピン又はその薬学的に許容される塩と、インダパミドとを含み、
前記L−アムロジピンと前記インダパミドとの重量比は、1:0.04〜0.2である
ことを特徴とする抗高血圧薬組成物。
【請求項2】
前記薬学的に許容される塩は、ベンゼンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、アスパラギン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、硫酸塩、塩酸塩、及び臭化水素酸塩からなる塩群から選ばれる1種又は複数種であることを特徴とする請求項1に記載の抗高血圧薬組成物。
【請求項3】
薬学的に許容される添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の抗高血圧薬組成物。
【請求項4】
L−アムロジピンの含有量は0.1〜30重量%で、インダパミドの含有量は0.01〜5重量%であることを特徴とする請求項に記載の抗高血圧薬組成物。
【請求項5】
L−アムロジピンの含有量は0.25〜5重量%で、インダパミドの含有量は0.05〜2.5重量%であることを特徴とする請求項に記載の抗高血圧薬組成物。
【請求項6】
前記薬学的に許容される添加剤は、微結晶セルロース、アルファー化デンプン、乳糖、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石粉、及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる1種又は複数種であることを特徴とする請求項に記載の抗高血圧薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物は、薬学的に許容される希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、及び/又は調味剤をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の抗高血圧薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物は、錠剤又はカプセル剤であることを特徴とする請求項に記載の抗高血圧薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬分野に属し、特に、抗高血圧薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、中国の人々の生活レベルの向上や飲食構造の変化、生活上のストレスの増大、高齢者数の増加に伴い、高血圧の発症率が次第に高くなる傾向にある。さらに、それは、心臓、脳、腎臓などの臓器の損害を引き起こし、糖・脂質代謝異常症や糖尿病と密接に繋がり、患者の生活の質を著しく低下させ、ひどい場合には患者の命を危険にさらすこともある。一方、大量の世界的権威のある高血圧臨床研究により、血圧降下力を増大し、積極的かつ持続的に高血圧患者の血圧を130/85水銀柱ミリメートル以下(好ましくは、120/80水銀柱ミリメートル以下)に降下させると、高血圧による心臓、脳、腎臓などの標的臓器の損害を効果良く軽減し、脳卒中、冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、腎不全、アテローム性動脈硬化症、動脈瘤などの合併症の発生を低減又は遅延させ、心・脳血管イベントの発生率、死亡率及び障害率を減らし、患者の生活の質を改善し、患者の寿命を延長することができることが明らかになる。世界保健機関(WHO)による全世界の種々の疾患の死亡率に対する統計によると、高血圧などをはじめとする心・脳血管疾患による死亡者数が全死亡者数の36%も占めているので、人々の高血圧に対する認識の向上は、早期予防及び時宜を得た治療に極めて重要な意義を持っている。
【0003】
「高齢者高血圧の診断及び治療―2008年中国の専門家の共通理解」には、併用投与による治療が複数の異なるメカニズムにより降圧し、降圧効果が優れるとともに、副作用が少なく、標的臓器の保護にさらに有利であることが指摘されている。大量の研究により、降圧効果を積極的に増強するために、70〜100%の患者が2種以上の降圧薬剤を併用しなければならず、併用投与は、薬剤の相加又は相乗作用により、降圧効果を有意に高くすることができるとともに、薬剤の副作用を減らし、安全性及び患者のコンプライアンスを向上させることができることが分かる。また、多くの文献から明らかなように、2つの抗高血圧薬剤を適当に併用すると、2つの併用成分のそれぞれにおける副作用を相殺することも可能である。従って、単剤の常用量により望ましい効果が得られない場合に、複合剤を含む併用投薬計画により高血圧患者を治療することが好ましい。
【0004】
L−アムロジピンは、中国で最初のキラル分離による光学的純粋な薬剤であり、さらに、世界で最初のキラル分離による抗高血圧薬である。それは、持続性のアルカリ性ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬であり、種々の方法により調製可能である(文献CN00102701.8及びCN03821593.4参照)。L−アムロジピンは、細胞におけるジヒドロピリジンに繋がるサイト(Nサイト)を通して、カルシウムイオンが膜を貫通して心筋及び血管平滑筋細胞へ入り込むことを抑止するように作用し、平滑筋を弛緩させ、血管抵抗を低下させ、血圧を下げるものである。現在の臨床実験の証拠により、治療量のL−アムロジピンは、心臓の収縮力及び房室伝導に対して作用がわずかで、又は作用がなく、カルシウム拮抗薬のうち、交感神経興奮に対する作用が最も小さい薬剤であることが分かる。L−アムロジピンは、心不全の高血圧を治療することもでき、心肥大を逆転させ、心臓拡張期の弛緩機能を改善し、腎機能を保護し、軽度の利尿作用を果たし、冠状動脈性心臓病、心筋梗塞や脳卒中を予防することができ、そして、異常の血圧概日リズムを部分的に逆転させ、軽度の抗血小板、抗心筋虚血、抗不整脈、インスリン感受性の向上や、ある程度の抗アテローム性動脈硬化症などの作用がある。しかし、L−アムロジピンは、降圧中に、使用量が高いことで、ナトリウム・水貯留を引き起こして水腫になりやすく、かなりの患者の投与中止の原因となるので、臨床応用上ある程度に制約されている。
【0005】
インダパミドは、非チアジン系利尿降圧剤で、スルファニルアミド系誘導体であり、半減期が17時間で、その代謝生成物にも降圧作用があり、利尿剤であるとともに、ある程度のカルシウム拮抗作用を有する。インダパミドの降圧メカニズムは、複雑であるが、下記の2つを含む。1.プロスタノイド類物質に影響を与えることにより、冠状動脈と末梢血管の拡張作用を有するPGI2(プロスタグランジンI2)及びPGE2(プロスタグランジンE2)を向上させ、PCF2α(プロスタグランジンF2α)及びTXA2( トロンボキサンA2)を低下させ、血液レオロジーを改善する。2.ナトリウムイオンに対する血管壁の反応を軽減し、血管壁細胞のカルシウムイオンチャンネルを抑止し、且つ、ナトリウムに対する遠位尿細管の再吸収を軽く抑止することにより、平滑筋を弛緩させ、血管を拡張し、利尿・ナトリウム排出などの降圧作用を奏する。利尿剤は、CCBによるナトリウム・水貯留に起因する水腫を軽減することができるが、インダパミドは、糖代謝に干渉する副作用を有するので、長時間にわたって高用量で投与すると、低カリウム血症を引き起こす可能性がある。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、従来技術における、L−アムロジピンの単独投与による降圧中に発生されるナトリウム・水貯留に起因する水腫の副作用、インダパミドの糖代謝に対する干渉の副作用の技術的課題を鑑みて、抗高血圧薬組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の抗高血圧薬組成物は、L−アムロジピン又はその薬学的に許容される塩と、インダパミドとを含む。
【0008】
本発明は、L−アムロジピンとインダパミドを併用することにより、治療中におけるL−アムロジピン及びインダパミドの投与量を低減し、同等ひいてはそれ以上の降圧効果を達成することができ、また、L−アムロジピン及びインダパミドの低量投与により、L−アムロジピンによるナトリウム・水貯留に起因する水腫の副作用、及びインダパミドの糖代謝に対する干渉の副作用を低下させることができる。さらに、インダパミドの利尿性により、L−アムロジピンによるナトリウム・水貯留に起因する水腫の副作用をさらに低減することもできる。
【0009】
本発明において、前記L−アムロジピンと前記インダパミドとの重量比は、1:0.04〜1であり、1:0.2〜1が好ましい。
【0010】
前記薬学的に許容される塩は、ベンゼンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、アスパラギン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、硫酸塩、塩酸塩、及び臭化水素酸塩からなる塩群から選ばれる1種又は複数種である。
【0011】
本発明の抗高血圧薬組成物は、薬学的に許容される添加剤をさらに含む。
【0012】
本発明の抗高血圧薬組成物において、L−アムロジピンの含有量は0.1〜30重量%が好ましく、0.25〜5重量%がさらに好ましく、インダパミドの含有量は0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜2.5重量%がさらに好ましい。
【0013】
前記薬学的に許容される添加剤は、微結晶セルロース、アルファー化デンプン、乳糖、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石粉、及びポリビニルピロリドン(PVP−k30と略称)からなる群から選ばれる1種又は複数種である。
【0014】
本発明の抗高血圧薬組成物は、薬学的に許容される希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、及び/又は調味剤をさらに含んでもよい。
【0015】
本発明の抗高血圧薬組成物は、錠剤やカプセルを含む経口製剤として製造されてもよい。前記錠剤は、糖衣やフィルムコートをかけても、かけなくてもよい。
【0016】
本発明の積極的で進歩的な効果としては、本発明は、L−アムロジピンとインダパミドとを併用投与して、互いに良好な相乗的な降圧効果を奏する。同等ひいてはそれ以上の降圧効果を達成させるとともに、L−アムロジピン及びインダパミドの投与量を低減することができる。また、低量のL−アムロジピンも、L−アムロジピンによるナトリウム・水貯留に起因する水腫の副作用を低減することができ、インダパミドの利尿性により、L−アムロジピンによるナトリウム・水貯留に起因する水腫の副作用をさらに低減することもできる。さらに、低量のインダパミドも、インダパミドの糖代謝に対する干渉の副作用を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施例1〜2 複合錠剤
調製工程:L−アムロジピンベンゼンスルホン酸、インダパミド、微結晶セルロース、アルファー化デンプン、乳糖、カルボキシメチルデンプンナトリウムを乳鉢に投入して磨って均一に混合し、20メッシュのふるいに通し、適量の95%エタノールを加えて柔らかい素材を作製した後、20メッシュのふるいで造粒し、40℃で換気で乾燥した。乾燥した粒子を16メッシュのふるいで整粒し、ステアリン酸マグネシウムを投入して均一に混合した後、打錠して得た。
【0018】
【表1】
【0019】
実施例3〜4 複合カプセル
調製工程:L−アムロジピンベンゼンスルホン酸、インダパミド、微結晶セルロースを乳鉢に投入して磨って均一に混合し、20メッシュのふるいに通し、適量の0.5%PVP−k30エタノール溶液を加えて柔らかい素材を作製した後、20メッシュのふるいで造粒し、40℃で換気で乾燥した。乾燥した粒子を16メッシュのふるいで整粒し、滑石粉を投入し、均一に混合した後、カプセルにそれぞれ封入して得た。
【0020】
【表2】
【0021】
効果実施例1 ラットによる降圧試験
実験方法:体重200〜240gで健全な高血圧自然発症SHRラット雄雌各25匹を採った。雌雄ラットを血圧のレベルによって5群に等分し(詳しい群分け方法を表3に示す。)、強制胃内投与した。血圧についてはラット用電子血圧計を利用し、テールカフ法により、ラットの覚醒かつ安静時の収縮期血圧を間接的に測定した。尾動脈収縮期血圧の測定は、投与前、投与1週後、2週後、3週後、4週後にそれぞれ行われた。
【0022】
【表3】
【0023】
実験結果:L−アムロジピン群、インダパミド群、複合低量群、複合高量群は、モデルブランク群と比べて有意な降圧作用を有している。複合低量群及び複合高量群は、L−アムロジピン群及びインダパミド群と比べて有意な降圧作用を有し、具体的な試験結果を表4に示す。また、水腫の副作用について、モデルブランク群、インダパミド群、複合低量群、複合高量群は、いずれも水腫現象が現れなかったのに対し、L−アムロジピン群は、10%の水腫率が発生された。
【0024】
【表4】
【0025】
結論:L−アムロジピンとインダパミドとの複合剤は、L−アムロジピン及びインダパミドよりも良い降圧作用を有し、降圧効果において有意な差を有する。L−アムロジピンとインダパミドとの併用投与は、高血圧自然発症ラットに対してある程度の相乗作用を示し、両方の薬剤の単独投与による治療効果よりも優れる。また、併用投与は、ナトリウム・水貯留による水腫の副作用を引き起こしたことがない。