(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
ここでは、まず沈降分離装置を利用するシステムとして、ガス化ガス精製システムについて説明し、続いて本実施形態の特徴である沈降分離装置について詳述する。
【0021】
(ガス化ガス精製システム100)
図1は、本実施形態にかかるガス化ガス精製システム100を説明するための説明図である。
図1に示すように、ガス化ガス精製システム100は、ガス化ガス生成装置110と、ガス化ガス精製装置200と、排水処理装置300とを含んで構成される。
図1中、ガスの流れを実線の矢印で、ガス化原料の流れを破線の矢印で、砂の流れを一点鎖線の矢印で、水やタール、スラッジの流れを白抜きの矢印で示す。
【0022】
ガス化ガス生成装置110としての、例えば、二塔式の流動層ガス化炉では、硅砂(珪砂)等の砂で構成される流動媒体を熱媒体として循環させ、ガス化原料をガス化させてガス化ガスを生成する。
図1に示すようにガス化ガス生成装置110は、燃焼炉112と、媒体分離装置114と、ガス化炉116とを含んで構成される。
【0023】
流動媒体としての砂の流れに着目すると、燃焼炉112で1000℃程度に加熱された高温の砂は、燃焼排ガスと共に媒体分離装置114に導入され、媒体分離装置114において高温の砂と、燃焼排ガスに分離される。媒体分離装置114で分離された高温の砂は、ガス化炉116に導入され、最終的に燃焼炉112に戻る。また、媒体分離装置114で分離された燃焼排ガスは、ボイラ等で熱回収される。
【0024】
ガス化炉116は、例えば、気泡流動層ガス化炉であり、褐炭等の石炭、石油コークス(ペトロコークス)、バイオマス、タイヤチップ等の固体原料や、黒液等液体原料のガス化原料を700℃〜900℃でガス化させてガス化ガスを生成する。本実施形態では、ガス化炉116に水蒸気を供給することにより、ガス化原料をガス化させてガス化ガスを生成する(水蒸気ガス化)。ガス化炉116で生成されたガス化ガスX1には、酸化鉄、酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化ケイ素(シリカ)等の無機物を含んで構成されるスラッジ(固形物粒子)、タール、水蒸気等が含まれているため、下流のガス化ガス精製装置200に送出され、精製される。
【0025】
なお、ここでは、ガス化炉116として、循環流動層方式を例に挙げて説明したが、ガス化原料をガス化することができれば、ガス化炉116は、単なる流動層方式や、砂が自重で鉛直下方向に流下することで移動層を形成する移動層方式であってもよい。
【0026】
(ガス化ガス精製装置200)
図2は、ガス化ガス精製装置200および排水処理装置300の具体的な構成を説明するための説明図である。
図2に示すようにガス化ガス精製装置200は、改質炉(酸化改質炉)210と、第1熱交換器212と、スプレー塔214と、ミストセパレータ216と、第2熱交換器218とを含んで構成される。
図2中、ガスの流れを破線の矢印で、水やタール、スラッジの流れを実線の矢印で示す。
【0027】
改質炉210は、ガス化炉116で生成されたガス化ガスX1に酸素や空気を加え、900〜1500℃程度にして、ガス化ガスX1に含まれるタールを改質(酸化改質)する。
【0028】
第1熱交換器212は、改質炉210で改質されたガス化ガスX2と水蒸気との熱交換を行い、すなわち、ガス化ガスX2の顕熱を水蒸気で回収し、ガス化ガスX2の出口温度を300℃〜600℃にする。
【0029】
スプレー塔214は、処理対象であるガス化ガスX2に40℃程度の冷却水Y1をスプレー噴霧することにより、300℃〜600℃となったガス化ガスX2を70℃程度に冷却する。これにより、ガス化ガスX2に含まれるタールやスラッジが凝縮し、ガス化ガスX2から除去され、精製ガスX3と油混合水Z1が生成される。そして、スプレー塔214は、精製ガスX3を下流のミストセパレータ216に供給し、油混合水Z1(水温(液温)は70℃程度)を排水処理装置300に送出する。ここで、油混合水Z1は、液体である水と、水よりも比重が大きい物質(重物質)である、重質タールと、スラッジとを少なくとも含む混合物である。
【0030】
ミストセパレータ216は、精製ガスX3に、冷却水Y2(水温は40℃程度)を、スプレー塔214における粒径よりも小さい水滴としてスプレー噴霧する。これにより、スプレー塔214では、十分に分離、除去できなかった精製ガスX3に含まれる霧状のタール、スラッジ等が凝縮し、精製ガスX3から除去され、精製ガスX4と油混合水Z2が生成される。そして、ミストセパレータ216は、精製ガスX4を下流の第2熱交換器218に供給し、油混合水Z2(液温は70℃程度)を排水処理装置300に送出する。ここで、油混合水Z2は、上記油混合水Z1と同様に、液体である水と、水よりも比重の大きい物質(重物質)である、重質タールと、スラッジとを少なくとも含む混合物である。
【0031】
第2熱交換器218は、海水、ブライン等を用いて、精製ガスX4を30℃以下にさらに冷却する。これにより、さらに残存したタール、スラッジ等が凝縮し、精製ガスX4から除去され、精製ガスX5(精製ガス化ガス)が生成される。
【0032】
(排水処理装置300)
図2に示すように、排水処理装置300は、沈降分離装置(タールデカンタ)350と、第1バッファタンク310と、第1タールタンク312と、第2タールタンク314と、第1ポンプ316aと、第2ポンプ316bと、第3ポンプ316cと、第2バッファタンク320と、加圧浮上槽322と、NH
3放散塔324と、活性汚泥槽326と、最終沈殿池328とを含んで構成される。
【0033】
沈降分離装置350は、スプレー塔214から送出された油混合水Z1およびミストセパレータ216から送出された油混合水Z2に含まれるタールおよびスラッジを、比重の違いによって油混合水Z1、Z2から分離する。本実施形態において沈降分離装置350は、水より比重の大きい、重質タールT1およびスラッジS1を、後述する貯留部352の下部に沈降させる。ここで、重質タールT1は、例えば、アントラセン、フェナントレン等の三環芳香族、三環芳香族を含むアントラセン油、カルボル油、洗浄油、ピッチ等である。また、スラッジS1は、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等の無機物を含む。
【0034】
また、沈降分離装置350は、水より比重の小さい軽質タールT2を、貯留部352の上部に浮上させる。ここで、軽質タールT2は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール等の一環芳香族や、ナフタレン等の二環芳香族を含む。
【0035】
そして、沈降分離装置350は、油混合水Z1、Z2から重質タールT1、スラッジS1、および、軽質タールT2が分離、除去された水である処理水Y3を第1バッファタンク310に送出する。沈降分離装置350の具体的な構成については、後に詳述する。
【0036】
第1バッファタンク310は、沈降分離装置350において油混合水Z1、Z2から分離された処理水Y3を貯留する。また、第1バッファタンク310は、第1ポンプ316aを通じてスプレー塔214に冷却水Y1を供給し、第2ポンプ316bを通じてミストセパレータ216に冷却水Y2を供給する。
【0037】
第1タールタンク312は、後述するバルブ384aを通じて、貯留部352の下部から排出された重質タールT1およびスラッジS1を貯留する。第2タールタンク314は、第3ポンプ316cを通じて、貯留部352の上部から排出された軽質タールT2を貯留する。
【0038】
第1ポンプ316aは、スプレー塔214における冷却水Y1を噴霧する噴霧部と第1バッファタンク310とを接続する配管の途中に設けられ、第1バッファタンク310から処理水Y3を汲み上げて、その処理水Y3を冷却水Y1としてスプレー塔214の噴霧部に供給する。第2ポンプ316bは、ミストセパレータ216における冷却水Y2を噴霧する噴霧部と第1バッファタンク310とを接続する配管の途中に設けられ、第1バッファタンク310から処理水Y3を汲み上げて、その処理水Y3を冷却水Y2としてミストセパレータ216の噴霧部に供給する。第3ポンプ316cは、第2タールタンク314と貯留部352とを接続する配管の途中に設けられ、貯留部352の上部に浮上した軽質タールT2を汲み上げて第2タールタンク314に排出する。
【0039】
第2バッファタンク320は、第1バッファタンク310で余剰した処理水Y3と、第2熱交換器218で利用された処理水Y4とを貯留し、加圧浮上槽322へ送出する。加圧浮上槽322は、加圧した空気を処理水Y5(Y3とY4の混合物)に導入し、処理水Y5に含まれるスラッジ等の浮遊物質を浮上させて除去する。NH
3放散塔324は、浮遊物質が除去された処理水Y6からアンモニア(NH
3)を除去する。活性汚泥槽326は、アンモニアが除去された処理水Y7に活性汚泥(好気性の微生物)を適用することで、処理水Y7に含まれる有機物を分解して除去する。最終沈殿池328は、活性汚泥と有機物が除去された排水Y8を分離する。そして、最終沈殿池328で分離された排水Y9は、放流、または廃棄される。
【0040】
このように、本実施形態にかかる排水処理装置300によれば、沈降分離装置350において、スプレー塔214およびミストセパレータ216で生成された油混合水Z1、Z2から、重質タールT1とスラッジS1が沈降分離され、軽質タールT2が浮上分離される。以下、本実施形態において特徴的な沈降分離装置350について説明する。
【0041】
(沈降分離装置350)
図3は、沈降分離装置350の具体的な構成を説明するための説明図である。
図3に示すように、沈降分離装置350は、貯留部352と、供給部354と、センターウエル356と、軽質タール回収ウエル358と、越流部360と、沈降物回収口362と、攪拌部370と、邪魔部380と、濁度測定部382と、排出部384と、加温部386とを含んで構成される。
【0042】
上述したように、沈降分離装置350は、比重の違いによって、油混合水Z1、Z2から重質タールT1、および、スラッジS1を沈降分離し、軽質タールT2を浮上分離する。そして、重質タールT1、スラッジS1、軽質タールT2が分離された処理水Y3を第1バッファタンク310に送出する。
【0043】
貯留部352は、上部貯留部352aと、下部貯留部352bとを含んで構成され、例えば5t程度の油混合水Z1、Z2を貯留する。
【0044】
上部貯留部352aは、その中心軸が鉛直方向(
図3中Z軸方向)に延びた円筒形状に形成され、沈降分離装置350の設置状態において、上端は開放されており、下端には下部貯留部352bが連接されている。本実施形態において、沈降分離装置350における処理水Y3の喫水面は、上部貯留部352aの上端となる。
【0045】
下部貯留部352bは、略円錐形状に形成され、沈降分離装置350の設置状態において、下端から上端になるに従って(下端から鉛直上方に向かうに連れて)、水平断面積(
図3中X軸方向の断面積)が、徐々に大きくなる(ここでは半径が大きくなる)形状である。なお、本実施形態において下部貯留部352bの安息角θは、重質タールT1やスラッジS1が容易に排出されるように適宜設定される。ここでは、例えば、60°に設定されているとする。そして、下部貯留部352bには、後述する領域Rで分離された、水より比重が大きい重質タールT1やスラッジS1が沈積する。
【0046】
供給部354は、第1供給管354aと、第2供給管354bとを含んで構成され、上部貯留部352aの中央(または中央付近)に配された供給口354cを通じて、貯留部352に油混合水Z1、Z2を供給する。具体的に説明すると、第1供給管354aは、スプレー塔214に接続されており、スプレー塔214から排出された油混合水Z1を貯留部352に供給する。また、第2供給管354bは、ミストセパレータ216に接続されており、ミストセパレータ216から排出された油混合水Z2を貯留部352に供給する。
【0047】
ここで、仮に、スプレー塔214に接続される供給管とミストセパレータ216に接続される供給管を同一系統にした供給部とすると、いずれか一方の流路が供給口まで閉塞した場合、他方から送出された油混合水が沈降分離装置350へ到達することができなくなってしまう。また、同一系統にした供給部とすると、スプレー塔214およびミストセパレータ216のいずれか一方をメンテナンスする際に、双方ともに機能を停止する必要がある。そこで、本実施形態のように、スプレー塔214に接続される供給管(第1供給管354a)と、ミストセパレータ216に接続される供給管(第2供給管354b)とを別系統にした供給部354とすることで、双方の流路が同時に閉塞してしまう事態を回避でき、また、双方の流路を個別に管理したり、個別にメンテナンスすることができる。
【0048】
なお、供給口354cは、貯留部352に油混合水Z1、Z2を供給できれば、上部貯留部352aの中央に限らずどの位置に配されてもよい。
【0049】
センターウエル356は、上部貯留部352a、下部貯留部352bと同心の、鉛直方向に延びた円筒形状に形成されている。センターウエル356の水平断面の直径は、上部貯留部352aの水平断面の直径より短く、第1供給管354aの水平断面の直径と第2供給管354bの水平断面の直径とを合わせた長さよりも長い。また、
図3に示すように、センターウエル356の下端は、供給口354cよりも鉛直下方向に位置するように構成されている。
【0050】
軽質タール回収ウエル358は、上部貯留部352a、下部貯留部352b、およびセンターウエル356と同心の、鉛直方向に延びた円筒形状に形成されている。軽質タール回収ウエル358の水平断面の直径は、上部貯留部352aの水平断面の直径より短く、センターウエル356の水平断面の直径よりも長い。また、
図3に示すように、軽質タール回収ウエル358の下端は、センターウエル356の下端よりも鉛直上方向に位置するよう構成されている。
【0051】
センターウエル356の下方であり、軽質タール回収ウエル358の下端の下を外周とする円盤状の領域Rは、油混合水Z1、Z2に含まれる重質タールT1、スラッジS1、軽質タールT2が鉛直方向から水平方向に流れを変えて軽質タール回収ウエル358の直下に到達する間に、物質それぞれの比重に基づいて分離される領域である。
【0052】
軽質タール回収口358aは、軽質タール回収ウエル358の天面に設けられ、配管358bを通じて、第3ポンプ316c(
図2参照)に接続されている。そして、第3ポンプ316cを駆動させることにより、領域Rにおいて分離され、軽質タール回収ウエル358の上部に浮上した軽質タールT2が汲み上げられて第2タールタンク314に排出される。
【0053】
越流部360は、上部貯留部352aに設けられ、領域Rにおいて、油混合水Z1、Z1から重質タールT1、スラッジS1、および軽質タールT2が除去された処理水Y3(液体)が所定水位(ここでは、上部貯留部352aの上端)を越えると、処理水Y3を外部へ越流させる。つまり、処理水Y3は越流部360から外部へ溢れ出ることになる。そして、越流部360によって貯留部352の外部に越流された処理水Y3は、処理水回収口360aを通じて、第1バッファタンク310に送出される。
【0054】
沈降物回収口362は、下部貯留部352bの下端、すなわち、下部貯留部352bにおける水平断面積が最も小さくなる箇所(ここでは底面)に設けられ、油混合水Z1、Z2から沈降分離され、下部貯留部352bに沈積した重質タールT1およびスラッジS1(以下、下部貯留部352bに沈積した重質タールT1およびスラッジS1を沈降物と称する)が通過する。
【0055】
ここで、沈降物回収口362は、下部貯留部352bの下端、つまり、鉛直方向に最も低い場所に設けられる。領域Rで分離された沈降物は、自重で鉛直下方に沈降し、下部貯留部352bの下端(底面)に収集される。また、上述したように、本実施形態において下部貯留部352bは、略円錐形状に形成されているため、下部貯留部352bの内周面に衝突した沈降物も、下部貯留部352bの内周面を伝って下端に集約される。したがって、沈降物が集約される下部貯留部352bの下端に沈降物回収口362を設けることにより、沈降物を効率よく、貯留部352外に排出することが可能となる。
【0056】
攪拌部370は、配管372a、372b、372cで構成された循環路372と、沈降物回収ポンプ374とを含んで構成される。
【0057】
配管372aは、沈降物回収口362と沈降物回収ポンプ374とを接続する管である。配管372bは、沈降物回収ポンプ374と後述するバルブ384aとを接続する管である。配管372cは、配管372bから分岐され、下部貯留部352bに設けられた吐出口352cに接続された管である。本実施形態において、吐出口352cは、下部貯留部352bの鉛直方向の長さLに対して、下端からL/2のいずれかの位置、ここではL/3程度の位置に設けられる。
【0058】
沈降物回収ポンプ374は、スラリーポンプ(ダイヤフラムポンプ)、渦巻きポンプ、プランジャーポンプ等の重質タールT1やスラッジS1を好適に汲み出すことができるスラッジ用のポンプで構成されている。
【0059】
図4は、沈降物の流れを説明するための説明図である。
図4中、黒い塗り潰しの矢印に示すように、下部貯留部352bに沈積した沈降物(重質タールT1、スラッジS1)は下部貯留部352bの下部に滞留した処理水Y3の一部とともに、沈降物回収ポンプ374によって汲み出され、沈降物回収口362を通じて配管372aから配管372bへ移動する。そして、処理水Y3の一部と沈降物(以下、沈降混合物と称する)は、配管372bから配管372cへ移動し、吐出口352cから、下部貯留部352bに再導入される。そして、再導入された沈降混合物は、沈降物回収ポンプ374によって汲み出され、再び沈降物回収口362を通じて配管372aに移動する。以降、沈降混合物の一部または全部は、沈降物回収口362、配管372a、沈降物回収ポンプ374、配管372b、配管372c、下部貯留部352bの下部を循環することになる。
【0060】
そうすると、下部貯留部352bの下部において、吐出口352cから沈降物回収口362への沈降混合物の流れができることになる。かかる流れによって、下部貯留部352bに沈積した沈降物を攪拌することができる。したがって、貯留部352における沈降物の圧密を防止することができ、下部貯留部352b、沈降物回収口362、配管372aが沈降物で閉塞してしまう事態を回避することが可能となる。
【0061】
また、上述したように、沈降物には、重質タールT1とスラッジS1とが含まれる。ここで、重質タールT1とスラッジS1との比重について説明すると、スラッジS1に含まれる酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等の無機物の比重は5程度であり、重質タールT1(2程度)と比較して大きい。
【0062】
従来技術のように、沈降物回収口362から下部貯留部352bに向かって圧縮空気を逆噴射させる構成をとる場合、スラッジS1のような相対的に比重の大きい沈降物を押し退ける程度の圧力で圧縮空気を逆噴射させると、重質タールT2等の相対的に比重の小さい沈降物が貯留部352の上部に舞い上がってしまい、折角沈降分離された沈降物が再度処理水Y3に混入してしまう。一方、重質タールT2等の相対的に比重の小さい沈降物を押し退ける程度の圧力で圧縮空気を逆噴射させると、スラッジS1等の相対的に比重の大きい沈降物を押し上げることができず、閉塞した沈降物を除去することができない。
【0063】
しかし、本実施形態にかかる攪拌部370によれば、吐出口352cから沈降物回収口362への沈降混合物の流れによって、沈降物を攪拌するため、にこのような比重の異なる物質で構成される沈降物であっても、重質タールT1等の相対的に比重の小さい沈降物が領域Rまで舞い上がってしまう事態を回避するとともに、スラッジS1等の相対的に比重が大きい沈降物の圧密を確実に防止することが可能となる。
【0064】
邪魔部380は、下部貯留部352bの内周面であって、供給口354cの下方かつ吐出口352cの上方に設けられ、下部貯留部352bの外周中心に向かって突出して形成されている。ここで、邪魔部380は、領域Rで沈降分離された重質タールT1、スラッジS1の沈降を妨げない程度、例えば、下部貯留部352bにおける邪魔部380が設けられる位置の内径の10〜20%程度(下部貯留部352bの内周全周に亘って設けられる場合は、両側から10〜20%程度すなわち内径の20〜40%程度)、下部貯留部352bの中心方向に向かって突出している。
【0065】
吐出口352cから再導入された沈降混合物のうち、大部分(
図4中、黒い塗り潰しの矢印で示す)は、沈降物回収口362へと導かれることとなるが、一部(
図4中、白抜きの矢印で示す)は、鉛直上方に導かれることもある。そこで、邪魔部380を設けることにより、吐出口352cから再導入され、鉛直上方に導かれる沈降混合物が、邪魔部380と衝突することになり、その流れを鉛直下方に変更することができる。これにより、鉛直上方に導かれた沈降物が領域Rまで到達してしまうことがなくなり、領域Rで分離され、鉛直上方に導かれる処理水Y3に再度沈降物(重質タールT1、スラッジS1)が混入してしまう事態を回避することが可能となる。
【0066】
また、本実施形態において、邪魔部380は、上面(天面)および下面(底面)が、下部貯留部352bの内周面から下部貯留部352bの外周中心に向かうに従って、鉛直下方に傾斜している。かかる構成により、領域Rにおいて沈降分離され、邪魔部380の上面380aに到達した重質タールT1やスラッジS1を、下部貯留部352bの下部に誘導することができる。
【0067】
図3に戻って説明すると、濁度測定部382は、下部貯留部352bの下部に貯留された沈降混合物の濁度を測定する。
図5は、固形物濃度と濁度との関係を示す図である。
図5に示すように、固形物濃度(スラッジの濃度)と濁度とは1次関数の関係を有しているため、測定した濁度からスラッジS1の濃度を推測することが可能である。なお、濁度測定部382は、散乱光測定方式、透過光測定方式、透過光・散乱光演算方式、積分球測定方式等の既存の方式の濁度計を採用することができるが、ここでは、散乱光測定方式の濁度計を例に挙げて説明する。
【0068】
図6は、
図3におけるV−V矢視図である。
図6に示すように、濁度測定部382は、下部貯留部352bの内周面における、例えば、下部貯留部352bの中心を頂点として、水平断面における吐出口352cと為す角が90°程度になる位置に設けられる。吐出口352cから再導入される沈降混合物の流れの影響は、例えば、吐出口352cの縁等において相対的に大きく、上述した、下部貯留部352bの内周面における、下部貯留部352bの中心を頂点として、水平断面における吐出口352cと為す角が90°程度になる位置において相対的に小さい。
【0069】
そこで、濁度測定部382を、吐出口352cから再導入される沈降混合物の流れの影響が小さい位置に設けることにより、濁度測定部382の破損を回避することができる。なお、ここで、濁度測定部382は、吐出口352cと為す角が90°程度になる位置に設けられているが、再導入される沈降混合物の流れの影響が小さい位置であり、下部貯留部352bの下部に貯留された沈降混合物の濁度が測定できる位置であれば、その位置に限定はない。
【0070】
そして濁度測定部382は、測定した濁度を示す濁度信号を後述するバルブ制御部384bに送信する。
【0071】
図3に戻って説明すると、排出部384は、バルブ384aと、バルブ制御部384bと、第1タールタンク312に接続された配管384cとを含んで構成される。バルブ384aは、配管372bと配管384cとを接続している。バルブ制御部384bは、濁度測定部382から送信された濁度信号を受信し、濁度信号に示された濁度に基づいて、バルブ384aの開閉を制御する。
【0072】
具体的に説明すると、下部貯留部352bの下部に沈積した沈降物の一部または全部は、外部に排出されることなく、攪拌部370によって、下部貯留部352bと、循環路372とを循環している。しかし、供給部354から油混合水Z1、Z2は常時供給されるため、循環する沈降物の濃度は徐々に上昇することになる。
【0073】
そこで、バルブ制御部384bは、濁度が所定値(例えば、8500mg−Kaoline/L:固形物濃度10%に相当)未満である場合、バルブ384aを閉に維持し、濁度が所定値以上である場合、バルブ384aを閉から開にする。こうして、バルブ384aが閉から開になると、沈降物回収ポンプ374で下部貯留部352bから汲み出された沈降物は、配管372b、バルブ384a、配管384cを通じて、第1タールタンク312へ排出されることになる。
【0074】
このように、バルブ制御部384bが濁度に応じてバルブ384aの開閉を制御することにより、下部貯留部352bにおける沈降物の濃度の過度な上昇を抑制することができる。
【0075】
加温部386は、貯留部352の外周を被覆する形状に形成され、スチームトレース、ヒータ等で構成される。加温部386は、貯留部352に貯留された油混合水Z1、Z2を加温する。重質タールT1は、融点が高いため凝固しやすく、沈降物回収口362を閉塞してしまうおそれがある。しかし、加温部386を設ける構成により、重質タールT1の凝固を防止することができ、沈降物回収口362の閉塞を回避することが可能となる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態にかかる沈降分離装置350によれば、攪拌部370によって、沈積した沈降物を、下部貯留部352bと循環路372とで循環させるといった簡易な構成で、下部貯留部352bの下部に沈積した、重質タールT1のみならず、粒子状のスラッジS1を攪拌することが可能となる。これにより、沈降物の圧密を抑制し、沈降物回収口362や、配管372a等の閉塞を防止することが可能となる。
【0077】
(変形例)
図7は、変形例の沈降分離装置450を説明するための説明図であり、
図8は、
図7のVII−VII矢視図である。
図7に示すように、沈降分離装置450は、貯留部352と、供給部354と、センターウエル356と、軽質タール回収ウエル358と、越流部360と、沈降物回収口362と、攪拌部470と、邪魔部380と、濁度測定部382と、排出部484と、加温部386とを含んで構成される。上述した沈降分離装置350の構成要素として既に述べた、貯留部352、供給部354、センターウエル356、軽質タール回収ウエル358、越流部360、沈降物回収口362、邪魔部380、濁度測定部382、加温部386は、実質的に機能が同一であるため、同一の符号を付して説明を省略し、ここでは、構成が相違する攪拌部470と、排出部484を主に説明する。
【0078】
図7に示すように、攪拌部470は、攪拌羽根472と、回転制御部474とを含んで構成される。
【0079】
攪拌羽根472は、後述する回転制御部474の制御指令に応じて回転し、下部貯留部352bに沈積した沈降物を攪拌する。攪拌羽根472は、プロペラ(エレファントイヤー型)、ピッチパドル、アンカー翼(錨型、馬蹄型)、ピッチドタービン(フラットタービン)、リボン翼、鋸歯ディスクタービン、門形翼(糸巻形翼)等、どのような形状であってもよいが、ここでは、
図8に示すように、プロペラ形状で構成された、複数の羽根を放射状に配置した攪拌羽根472を例に挙げる。
【0080】
回転制御部474は、攪拌羽根472を回転させ、沈降物を攪拌する。回転制御部474が攪拌羽根472を回転させる速度は、例えば、攪拌羽根472の先端(羽根の先端)の速度が1.0m/sec〜2.0m/secとなる程度がよく、好ましくは、1.5m/secである。
【0081】
このように、回転制御部474が攪拌羽根472を回転させることにより、下部貯留部352bに沈積した沈降物を攪拌することができる。したがって、貯留部352における沈降物の圧密を防止することができ、下部貯留部352b、沈降物回収口362が沈降物で閉塞してしまう事態を回避することが可能となる。
【0082】
排出部484は、沈降物回収ポンプ484aと、配管484b、484cと、バルブ384aと、バルブ制御部384bと、配管384cとを含んで構成される。
【0083】
沈降物回収ポンプ484aは、スラリーポンプ(ダイヤフラムポンプ)、渦巻きポンプ、プランジャーポンプ等の重質タールT1やスラッジS1を好適に汲み出すことができるスラッジ用のポンプで構成されている。
【0084】
配管484bは、沈降物回収口362と沈降物回収ポンプ484aとを接続する管である。配管484cは、沈降物回収ポンプ484aとバルブ384aとを接続する管である。
【0085】
沈降物の流れについて説明すると、バルブ制御部384bは、濁度測定部382によって送信された濁度信号が示す濁度が所定値以上である場合、バルブ384aを閉から開にする。バルブ384aが閉から開になると、沈降物回収ポンプ484aで下部貯留部352bから汲み出された沈降物は、配管484b、484c、バルブ384a、配管384cを通じて、第1タールタンク312へ排出されることになる。
【0086】
なお、沈降分離装置450において、邪魔部380は、供給口354cの下方かつ攪拌羽根472の上方に設けられる。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0088】
上述した実施形態では、スプレー塔214やミストセパレータ216から排出された排水からタールおよびスラッジを分離するためのタールデカンタとして沈降分離装置を利用する例を挙げて説明した。しかし、最終沈殿池328に本発明の沈降分離装置を利用することもできる。また、本発明の沈降分離装置を、上述したガス化ガス精製システム100に限らず、他の様々なシステム、例えば、下水処理場における、下水に含まれる砂等の固形物を沈降分離する槽や、活性汚泥槽から流出した活性汚泥を沈降分離して回収する槽に利用してもよい。
【0089】
また上述した実施形態では、沈降物回収口362を、下部貯留部352bの下端(底面)に設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限定されず、沈降物回収口362は、貯留部352における、供給口354cの下方のいずれの位置に設けられてもよい。
【0090】
さらに、上述した実施形態において、吐出口352cは、下部貯留部352bの鉛直方向の長さLに対して、下端からL/3程度の位置に設けられる例について説明した。しかし、領域Rで分離された重質タールT1やスラッジS1が再び領域Rに混入しない位置であれば、吐出口352cは、貯留部352における、供給口354cの下方かつ沈降物回収口362の上方のいずれの位置に設けられてもよい。
【0091】
また、上述した実施形態において邪魔部380は、供給口354cの下方かつ吐出口352cの上方に設けられる場合を例に挙げて説明した。しかし、邪魔部380の設置位置は、これに限定されず、吐出口352cから再導入され、鉛直上方に導かれた沈降混合物が、邪魔部380に衝突することによって、領域Rに混入しない位置であれば、どの位置でもよい。
【0092】
さらに、邪魔部380の鉛直方向の設置位置は、貯留部352の周方向において一定でなくともよく、例えば、
図9に示すように、吐出口352cに近い位置の邪魔部380より、遠い位置の邪魔部380のほうが鉛直上方になるように設けられてもよい。また、邪魔部380の形状も、貯留部352の周方向において実質的に等しい長さに突出していなくてもよい。
【0093】
また、上述した実施形態において邪魔部380は、その上面および下面が、下部貯留部352bの内周面から下部貯留部352bの外周中心に向かうに従って、鉛直下方に傾斜している構成について説明した。しかし、邪魔部380は少なくともその上面が下部貯留部352bの内周面から下部貯留部352bの外周中心に向かうに従って、鉛直下方に傾斜していればよい。
【0094】
さらに、上述した実施形態においてバルブ制御部384bは、濁度に応じてバルブ384aを開閉(オンオフ)している。しかし、バルブ制御部384bは、濁度に応じて、バルブ384aの開度を調整し、常に所定量の沈降物が排出されるようにしてもよい。
【0095】
また、上述した実施形態において、貯留部352における下部貯留部352bが略円錐形状である場合について説明した。しかし、貯留部352の形状に限定はなく、例えば、下部貯留部が、有底円筒形状に形成されてもよい。