(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1〜7に基づいて、本発明の一実施形態に係る車両の制御装置を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
図1に示すように、車両1には内燃機関としてのディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)10が搭載されている。エンジン10の出力軸は、クラッチ11を介して無段変速機12の入力軸に接続されている。また、無段変速機12の出力軸は、プロペラシャフト13、終減速機14及び、ドライブシャフト15を介して駆動輪16に接続されている。すなわち、エンジン10の駆動力は、クラッチ11が接続されると、無段変速機12で連続的に変速された後に、プロペラシャフト13、終減速機14及び、ドライブシャフト15を介して駆動輪16へと伝達されるように構成されている。
【0017】
アクセルセンサ18は、ドライバによるアクセルペダルの操作量を検出するもので、検出された操作量は電気的に接続された演算ECU40にアクセル開度A
pとして出力される。
【0018】
回転数センサ19は、無段変速機12の出力回転数を検出するもので、検出された出力回転数は電気的に接続された演算ECU40に変速機出力回転数N
tとして出力される。
【0019】
シフトポジションセンサ17は、シフトレバー4の操作位置(以下、シフトレンジという)を検出するもので、検出された各シフトレンジは電気的に接続された演算ECU40に出力される。
【0020】
エンジンECU20は、エンジン10の燃料噴射等の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。このエンジンECU20は、演算ECU40と電気配線を介して相互通信可能に接続されており、演算ECU40から入力される制御信号に応じてエンジン10の運転状態を制御する。具体的には、エンジン10の燃料噴射量が演算ECU40から入力される目標燃料噴射量F
tとなるように、図示しないインジェクタの電磁ソレノイドに所定パルスの電流を印可するように構成されている。
【0021】
変速機ECU30は、無段変速機12の動作を制御するもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。この変速機ECU30は、演算ECU40と電気配線を介して相互通信可能に接続されており、演算ECU40から入力される制御信号に応じて無段変速機12の変速比を制御する。具体的には、無段変速機12の変速比が演算ECU40から入力される目標変速比S
tとなるように、図示しない変速用アクチュエータに所定の作動信号を出力するように構成されている。
【0022】
演算ECU40は、エンジン10の目標燃料噴射量F
tや無段変速機12の目標変速比S
tを演算するもので、前述のエンジンECU20や変速機ECU30と同様に公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。これら目標燃料噴射量F
tや目標変速比S
tを演算するために、演算ECU40には、アクセルセンサ18、回転数センサ19、シフトポジションセンサ17及び図示しない車速センサ等の各種センサの出力信号がA/D変換された後に入力される。
【0023】
また、
図2に示すように、演算ECU40は、エンジン出力設定部41と、目標燃料噴射量設定部42と、目標エンジン回転数設定部43と、目標変速比演算部44とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアである演算ECU40に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0024】
エンジン出力設定部41は、アクセルセンサ18から入力されるアクセル開度A
pと、回転数センサ19から入力される変速機出力回転数N
tとに基づいて、エンジン10の目標となるエンジン出力W
eを設定する。より詳しくは、演算ECU40には、予め実験等で作成された変速機出力回転数毎のアクセル開度A
pとエンジン出力Wとの関係を示す
図3のエンジン出力マップ(第1のマップ)が記憶されている。このエンジン出力マップは、横軸をアクセル開度A
p、縦軸をエンジン出力Wとした座標平面上に、複数本の変速機等出力回転数ライン(
図3中の太線参照)が所定回転数毎に設定されている。エンジン出力マップ上において、各変速機等出力回転数ラインは、アクセル開度A
pが大きくなるにつれてエンジン出力Wが増加するように設定されている。また、変速機等出力回転数ラインは、出力回転数が大きいものほどエンジン出力Wの増加率が大きくなるように設定されている。エンジン出力設定部41は、エンジン出力マップから、アクセル開度A
pと変速機出力回転数N
tとに対応するエンジン出力Wを読み取ることで、エンジン10の目標となるエンジン出力W
eを設定する。このようにして設定されたエンジン出力W
eは、詳細を後述する目標燃料噴射量設定部42と目標エンジン回転数設定部43とにそれぞれ入力されるように構成されている。
【0025】
目標燃料噴射量設定部42は、エンジン出力設定部41で設定されたエンジン出力W
eに基づいて、エンジン10の目標燃料噴射量F
tを設定する。より詳しくは、演算ECU40には、
図4の最少燃料噴射量ラインを示すマップを読み替えた、
図5のエンジン出力W
eと燃料噴射量Fとの関係を示す出力噴射量マップ(第2のマップ)が記憶されている。この出力噴射量マップには、横軸をエンジン出力W
e、縦軸を燃料噴射量Fとした座標平面上に、エンジン10の燃料噴射量を最も少なくする最少燃料噴射量ライン(
図5中の太線参照)が設定されている。特に、この最少燃料噴射量ラインは、エンジン出力W
eの正側領域では、エンジン出力W
eが増加するにつれて、燃料噴射量Fは多くなるように設定される一方、エンジン出力W
eの負側領域では、燃料噴射量Fは0(ゼロ)となるように設定されている。
【0026】
目標燃料噴射量設定部42は、出力噴射量マップからエンジン出力W
eに対応する燃料噴射量Fを読み取ることで、目標燃料噴射量F
tを設定すると共に、設定した目標燃料噴射量F
tをエンジンECU20に出力するように構成されている。これにより、エンジンECU20から図示しないインジェクタの電磁ソレノイドに目標燃料噴射量F
tに応じた所定パルスの電流が印可され、エンジン10の燃料噴射量は目標燃料噴射量F
tとなるように制御される。
【0027】
目標エンジン回転数設定部43は、エンジン出力設定部41で設定されたエンジン出力W
eに基づいて、エンジン10の目標エンジン回転数N
eを設定する。より詳しくは、演算ECU40には、
図4に示すマップを読み替えた、
図6のエンジン出力W
eとエンジン回転数Nとの関係を示す出力回転数マップが記憶されている。さらに、この出力回転数マップには、横軸をエンジン出力W
e、縦軸をエンジン回転数Nとした座標平面上に、エンジン10の出力に応じた最適エンジン回転数ライン(
図6中の太線参照)が設定されている。最適エンジン回転数ラインは、エンジン出力W
eの正側領域では、エンジン出力W
eが増加するにつれて、エンジン回転数N
eは上昇するように設定される一方、エンジン出力W
eの負側領域では、エンジン出力W
eが低下するにつれて、エンジン回転数N
eは上昇するように設定されている。目標エンジン回転数設定部43は、出力回転数マップからエンジン出力W
eに対応するエンジン回転数Nを読み取ることで、目標エンジン回転数N
eを設定するように構成されている。
【0028】
目標変速比演算部44は、回転数センサ19から入力される変速機出力回転数N
t及び、目標エンジン回転数設定部43で設定された目標エンジン回転数N
eに基づいて、無段変速機12の目標変速比R
tmを算出する。ここで、目標変速比R
tmは、以下の式(1)で算出することができる。
R
tm=N
e/N
t・・・(1)
【0029】
このようにして算出された目標変速比R
tmは、変速機ECU30に出力される。これにより、変速機ECU30から図示しない変速用アクチュエータに目標変速比S
tに応じた作動信号が入力され、無段変速機12の変速比は目標変速比S
tとなるよう制御される。
【0030】
次に、本実施形態に係る車両の制御装置による制御フローを
図7に基づいて説明する。なお、本制御はエンジン10の始動(イグニッションスイッチのキースイッチON)と同時にスタートする。
【0031】
ステップ(以下、ステップを単にSと記載する)100では、エンジン出力設定部41により、アクセルセンサ18から入力されるアクセル開度A
pと、回転数センサ19から入力される変速機出力回転数N
tとに基づいて、
図3に示すエンジン出力マップからエンジン10のエンジン出力W
eが設定される。
【0032】
S110では、目標燃料噴射量設定部42により、
図5に示す出力噴射量マップから前述のS100で設定されたエンジン出力W
eに対応する燃料噴射量Fが読み取られることで、目標燃料噴射量F
tが設定される。
【0033】
S120では、S100で設定されたエンジン出力W
eが正側領域にあるか、もしくは負側領域にあるかが確認される。正側領域の場合はS130へと進み、負側領域の場合はS140へと進む。S130に進んだ場合は、目標エンジン回転数設定部43により、
図6に示す出力回転数マップからエンジン出力W
eに対応するエンジン回転数Nが読み取られることで、目標エンジン回転数N
eが設定される。
【0034】
一方、S140に進んだ場合は、目標エンジン回転数設定部43により、
図6に示す出力回転数マップからエンジン出力W
eに対応するエンジン回転数Nが読み取られることで、目標エンジン回転数N
eが設定される。さらに、S160では、目標変速比演算部44により、回転数センサ19から入力される変速機出力回転数N
t及び、前述のS130もしくはS150で設定された目標エンジン回転数N
eに基づいて、無段変速機12の目標変速比R
tmが算出される。
【0035】
S170では、前述のS110で設定された目標燃料噴射量F
tが、演算ECU40からエンジンECU20に入力されると共に、前述のS160で算出された目標変速比R
tmが、演算ECU40から変速機ECU30に入力される。さらに、S180では、エンジン10の燃料噴射量が目標燃料噴射量F
tとなるように制御され、かつ、無段変速機12の変速比が目標変速比R
tmとなるように制御されてリターンされる。その後、本制御のS100〜180までの各ステップは、エンジン10の停止(イグニッションスイッチのキースイッチOFF)まで繰り返し行われる。
【0036】
次に、本実施形態に係る車両の制御装置による作用効果について説明する。
【0037】
本実施形態の車両の制御装置では、アクセルセンサ18で検出されるアクセル開度A
pと、回転数センサ19で検出される変速機出力回転数N
tとに基づいて、
図3に示すエンジン出力マップからエンジン出力W
eが設定される。
【0038】
その後、設定されたエンジン出力W
eは、
図5に示す出力噴射量マップから最少燃料噴射量ラインに応じた目標燃料噴射量F
tの設定に用いられる。また、設定されたエンジン出力W
eは、図6に示す出力回転数マップから目標エンジン回転数N
eの設定に用いられる。さらに、設定された目標エンジン回転数N
eと、回転数センサ19で検出される変速機出力回転数N
tとに基づいて、無段変速機12の目標変速比R
tmが算出される。このようにして設定された目標燃料噴射量F
tはエンジンECU20に出力されると共に、目標変速比R
tmは変速機ECU30に出力されるように構成されている。これにより、エンジン10の燃料噴射量は目標燃料噴射量F
tとなるように制御され、かつ、無段変速機12の変速比は目標変速比R
tmとなるように制御される。
【0039】
したがって、本実施形態の車両の制御装置によれば、
図3に示す簡素なエンジン出力マップから、ドライバのアクセル操作に応じたエンジン10の運転状態と無段変速機12の変速比とを一意に決定することができる。さらに、最少の燃料噴射量でドライバが所望する車両の走行を可能にしつつ、エンジン10の燃費を向上することができる。
【0040】
また、本実施形態の車両の制御装置では、
図5の出力噴射量マップに示すように、エンジン出力W
eの負側領域において、燃料噴射量Fは0(ゼロ)となるように設定されている。さらに、
図6の出力回転数マップに示すように、エンジン出力W
eの負側領域において、エンジン出力W
eが低下するにつれて、エンジン回転数Nは上昇するように設定されている。
【0041】
したがって、本実施形態の車両の制御装置によれば、エンジン出力W
eの負側領域において、無駄な燃料噴射を行わないことで、エンジン10の燃費を効果的に向上することができると共に、エンジン回転数を上昇させることで、エンジンブレーキを効果的に作用させることができる。
【0042】
また、本実施形態の車両の制御装置では、
図3のエンジン出力マップに示すように、各シフトレンジに対応して複数個のエンジン出力が設定されている。このエンジン出力マップでは、シフトレンジが高速レンジになるほど、
エンジン出力の上昇率は小さくなるように設定されている。
【0043】
したがって、エンジン出力負側の領域で、エンジンブレーキ力がシフトレンジに応じて切り替えられるため、車両の下り坂走行中等における車速を一定速度に維持することが可能となり、運転操作性を向上することができる。さらに、無駄な減速が無くなることで燃費を向上できると共に、無駄なブレーキの使用が減ることで車両のブレーキ装置の寿命を効果的に向上することができる。
【0044】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0045】
例えば、上述の実施形態において、各ECU20,30,40は別体のハードウェアに設けられるものとして説明したが、これら一部もしくは全部を一体のハードウェアとして設けることもできる。
【0046】
また、エンジン10はディーゼルエンジンに限られず、例えばガソリンエンジンなど、他の内燃機関にも広く適用することができる。