【実施例】
【0016】
図1は、本発明によるヒートポンプサイクル装置の構成を示している。このヒートポンプサイクル装置100は、圧縮機1、四方弁2、冷媒と水との熱交換を行う利用側熱交換器3、流量調整手段である膨張弁4、熱源側熱交換器5、アキュムレータ6を順に冷媒配管で接続した冷媒回路10を有しており、四方弁2を切り換えることによって冷媒循環方向を切り換えることができるようになっている。
【0017】
この冷媒回路10において、圧縮機1の吐出口付近の冷媒配管には、圧縮機1から吐出された冷媒の温度(吐出温度)を検出するための吐出温度センサ51が備えられている。また、利用側熱交換器3と膨張弁4との間の冷媒配管には、膨張弁4付近の冷媒温度を検出する冷媒温度センサ53が、膨張弁4と熱源側熱交換器5との間の冷媒配管には、熱源側熱交換器5の温度を検出する熱交温度センサ54が、それぞれ備えられている。さらには、圧縮機1の吐出側(四方弁2と利用側熱交換器3との間)の冷媒配管には、利用側熱交換器3が凝縮器として機能する際の凝縮圧力を検出する圧力センサ50が備えられている。
【0018】
圧縮機1の図示しない密閉容器の下方には、圧縮機1の温度を検出するための圧縮機温度センサ52が備えられている。また、熱源側熱交換器5近傍には、外気温度を検出するための外気温度センサ55が設けられている。また、
【0019】
利用側熱交換器3には、冷媒配管と給湯配管12とが接続されている。
図1に示すように、給湯配管12の一端は三方弁31に接続されており、この三方弁31には室内ユニット側配管12aの一端と貯湯タンク側配管12bの一端とが各々接続されている。また、給湯配管12の他端には、室内ユニット側配管12aの他端と貯湯タンク側配管12bの他端とが接続されている(
図1において、給湯配管12と室内ユニット側配管12aと貯湯タンク側配管12bとの接続部を接続点13としている)。そして、室内ユニット側配管12aには、床暖房装置やラジエター等の室内ユニット40が設けられており、また、貯湯タンク側配管12bには、貯湯タンク70が設けられている。
【0020】
貯湯タンク70内部の下方には、スパイラル形状に形成された熱交換部71が備えられている。熱交換部71の両端は貯湯タンク側配管12bに接続されており、貯湯タンク側配管12bを流れる湯水が熱交換部71にも流れるようになっている。貯湯タンク70の上部には、貯湯タンク70内部に貯留されている湯水を浴槽や洗面台蛇口に供給するための給湯口73が備えられている。また、貯湯タンク70の下部には、貯湯タンク70内部に水を供給するための入水口72が備えられており、入水口72には図示しない水道管が直結されている。
【0021】
給湯配管12と室内ユニット側配管12aと貯湯タンク側配管12bとの接続点13と、利用側熱交換器3との間には、循環ポンプ30が設けられている。循環ポンプ30を駆動することにより、利用側熱交換器3で冷媒と熱交換された水が、
図1に示す矢印90の方向に循環する。尚、利用側熱交換器3から流出した水は、三方弁31の切り換えに応じて室内ユニット側配管12aに流れて室内ユニット40に流入する、あるいは、貯湯タンク側配管12bに流れて貯湯タンク70に流入する。そして、室内ユニット40や貯湯タンク70から流出した水は、接続点13を介して利用側熱交換器3に流入する。
以上説明したように、利用側熱交換器3と循環ポンプ30と室内ユニット40と貯湯タンク70とが給湯配管12と室内ユニット側配管12aと貯湯タンク側配管12bとで接続されて、ヒートポンプサイクル装置100の給湯回路を構成している。
【0022】
給湯配管12における利用側熱交換器3の水の入口側には、利用側熱交換器3に流入する水の温度を検出する入口温度センサ56が、給湯配管12における利用側熱交換器3の水の出口側には、利用側熱交換器3から流出する水の温度を検出する出口温度センサ57が、それぞれ備えられている。また、貯湯タンク70内部には、貯湯タンク温度検出手段である第1タンク温度センサ58および第2タンク温度センサ59が備えられている。第1タンク温度センサ58は、貯湯タンク70内部の上下方向の略中央部に、第2タンク温度センサ59は、第1タンク温度センサ58より下方であって熱交換部71の上端部と略同じ高さに、それぞれ配置されている。
【0023】
以上説明した構成の他に、ヒートポンプサイクル装置100には制御手段60が備えられている。制御手段60は、各温度センサで検出した温度や圧力センサ50で検出した凝縮圧力を取り込み、あるいは、図示しないリモコン等による使用者からの運転要求を取り込み、これらに応じて圧縮機1や循環ポンプ30の駆動制御、四方弁2の切り換え制御、膨張弁4の開度制御や三方弁31の切り換え制御等といった、ヒートポンプサイクル装置100の運転に関わる様々な制御を行う。
【0024】
また、
図1に示すように、冷媒回路10を暖房サイクルとしてヒートポンプサイクル装置100を運転したときは、四方弁2から流出した冷媒は利用側熱交換器3、膨張弁4、熱源側熱交換器5と順に流れて再び四方弁2に流入する(
図1に示す矢印80)。尚、冷媒回路10を冷房サイクルとしてヒートポンプサイクル装置100を運転したときは、四方弁2から流出した冷媒は熱源側熱交換器5、膨張弁4、利用側熱交換器3と順に流れて再び四方弁2に流入する、というように、暖房サイクルとして運転したとき(矢印80の方向)と逆方向となるが、
図1においてこの場合の冷媒流れ方向の記載は省略している。
【0025】
次に、以上説明した本発明のヒートポンプサイクル装置100における、冷媒回路10や給湯回路の動作やその作用・効果について説明する。尚、以下の説明では、ヒートポンプサイクル装置100の冷媒回路10が暖房サイクルとして運転する場合であって、室内ユニット40を駆動して暖房運転を行う場合と、貯湯タンク70に貯留されている水を所定温度に加熱する沸き上げ運転を行う場合とを例に挙げて説明する。
【0026】
まず、室内ユニット40を駆動して暖房運転を行う場合について説明する。使用者が室内ユニット40のリモコン等を操作してスイッチをオンし、暖房運転を指示すると、制御手段60は、循環ポンプ30を起動するとともに、室内ユニット側配管12aに水が流れるように三方弁31を切り換える。これにより、利用側熱交換器3と室内ユニット40との間で水が循環する。
【0027】
また、制御手段60は、冷媒回路10が暖房サイクルとなるように四方弁2を切り換え、圧縮機1を起動してヒートポンプサイクル装置100の暖房運転を開始する。制御手段60は、出口水温センサ57で検出された利用側熱交換器3における出口温度が目標出口水温となるように、圧縮機1の駆動制御を行う。この目標出口水温は、制御手段60が、使用者が定めた暖房運転の目標温度である設定温度に所定温度を加えて算出するもので、例えば、設定温度が26℃であれば、目標出口水温はこの設定温度に所定温度、例えば、4℃を加えた30℃となる。尚、上記所定温度は、予め試験等によって求められた温度であり、現在の室温からの加熱分(例えば、2℃)と、利用側熱交換器3から流出した湯水の温度が給湯回路2や室内ユニット側配管12aを流れる際の放熱により低下する温度分(例えば、2℃)を考慮して求められている。
【0028】
圧縮機1から吐出された冷媒は四方弁2を通過し、利用側熱交換器3で水と熱交換して凝縮し、さらに膨張弁4で減圧されて熱源側熱交換器5で外気と熱交換して蒸発し、圧縮機1に吸入されて再び圧縮機1で圧縮される過程を繰り返す。
【0029】
一方、利用側熱交換器3で所定温度に加熱された湯水は、循環ポンプ30の運転によって給湯配管12に流出し、三方弁31を介して室内ユニット側配管12aを流れて室内ユニット40に流入する。室内ユニット40が設置されている部屋は、室内ユニット40(を流れる湯水)の放熱によって暖房される。室内ユニット40から流出した湯水は、接続点13、循環ポンプ30を介して利用側熱交換器3に流入し、再び冷媒と熱交換を行って加熱される。
【0030】
次に、ヒートポンプサイクル装置100が沸き上げ運転を行う場合の給湯回路の制御や動作について説明する。尚、沸き上げ運転時の冷媒回路10の制御や動作については、後述する圧縮機1の回転数制御を除いて、上述した暖房運転時と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、以下の説明では、第1タンク温度センサ58で検出した温度を第1貯湯タンク温度Ts1、第2タンク温度センサ59で検出した温度を第2貯湯タンク温度Ts2、出口水温センサ57で検出した温度を出口水温Te、使用者による設定等によって予め定められている貯湯タンク70に貯留する湯水の温度を目標貯湯タンク温度Tsg、とする。
【0031】
貯湯タンク70に貯留されている湯水は、給湯口73から流出することによって減少する。入水口72には前述したように水道管が直結されているので、水道管の水圧によって減少した分だけ貯湯タンク70には入水口72から水が供給されて貯湯タンク70に貯留されている湯水の温度は低下する。制御手段60は、貯湯タンク70に貯留されている湯水の温度として、第1タンク温度センサ58で検出した第1貯湯タンク温度Ts1を定期的(例えば、1分毎)に取り込み、取り込んだ第1貯湯タンク温度Ts1が、例えば、目標貯湯タンク温度Tsgから5℃低い温度(以下、しきい温度と記載する)以下となった場合は、貯湯タンク70に貯留されている湯水の温度を目標貯湯タンク温度Tsgとするために、沸き上げ運転を開始する。
【0032】
制御手段60は、循環ポンプ30を起動するとともに、貯湯タンク側配管12bに水が流れるように三方弁31を切り換える。これにより、利用側熱交換器3と貯湯タンク70との間で水が循環する。利用側熱交換器3で所定温度に加熱された湯水は、循環ポンプ30の運転によって利用側熱交換器3から給湯配管12に流出し、三方弁31を介して貯湯タンク側配管12bを流れて貯湯タンク70内部に配置されている熱交換部71に流入する。貯湯タンク70に貯留されている水は、熱交換部71を流れる湯水と熱交換することによって加熱される。熱交換部71から流出した湯水は、接続点13、循環ポンプ30を介して利用側熱交換器3に流入し、再び冷媒と熱交換を行って加熱される。
【0033】
次に、上述した沸き上げ運転を行う際の、各温度センサでの検出値に基づく圧縮機1の回転数制御の詳細や、この制御を行うことによる効果について、
図2および
図3を用いて説明する。制御手段60は、沸き上げ運転を行う際、出口水温センサ57で検出した出口水温Teの目標温度となる目標出口水温Teaを算出する。
【0034】
ここで、本実施例のヒートポンプサイクル装置100において、貯湯タンク70に、第1タンク温度センサ58および第2タンク温度センサ59の2つの温度センサを備える理由について説明する。貯湯タンク70では、入水口72が貯湯タンク70の下部に設けられており、貯湯タンク70に給水を行えば貯湯タンク70の下方から水が貯湯タンク70内部に流入する。そこで、
図1に示すように、熱交換部71を貯湯タンク70の下方に配置すれば、貯湯タンク70に供給される水を効率よく加熱することができる。
【0035】
熱交換部71で加熱された湯水は、熱対流によって貯湯タンク70内部を上昇する。従って、沸き上げ運転を行っているときは、貯湯タンク70内部に貯留されている湯水の温度は、上方へ行くほど高くなり、下方へ行くほど低くなる。
【0036】
上記のような貯湯タンク70内部の湯水の温度状態であるときに、貯湯タンク70に設けられている温度センサが貯湯タンク70の略中央部に配置されている第1タンク温度センサ58のみであれば、貯湯タンク70下方に存在する水の温度に比べて常に比較的高い湯水温度を検出することとなる。この検出結果を元に目標出口水温Teaを算出し、検出した出口水温Teが目標出口水温Teaとなるよう沸き上げ運転制御を行うと、貯湯タンク70下方に温度の低い水が存在するにも関わらず、貯湯タンク温度が目標貯湯タンク温度Tsgに到達して沸き上げ運転が終了することとなる。
【0037】
上記のような状態で沸き上げ運転を終了すれば、貯湯タンク70内部では、上方の高い温度である湯水から下方の温度の低い湯水に熱が移動して、貯湯タンク温度が目標貯湯タンク温度Tsgより低下する。これにより、貯湯タンク温度がしきい温度以下となれば、再び沸き上げ運転が必要となる。このように沸き上げ運転を頻繁に行うことによってヒートポンプサイクル装置100での消費電力が増加して省エネ性が低下する虞がある。
【0038】
一方、貯湯タンク70に設けられている温度センサが熱交換部71の上端部と略同じ高さに配置されている第2タンク温度センサ59のみである場合は、貯湯タンク70に入水口72から水が供給される度に低下した水温を貯湯タンク温度として検出することとなる。従って、沸き上げ運転の開始条件である貯湯タンク温度がしきい温度以下となる状態が頻繁に発生する虞があり、沸き上げ運転が頻繁に行われることで、ヒートポンプサイクル装置100での消費電力が増加して省エネ性が低下する虞がある。
【0039】
以上の問題点を解決するために、本実施例では貯湯タンク70内部に第1タンク温度センサ58と第2タンク温度センサ59とを設けている。本実施例では、貯湯タンク70に貯留されている湯水の温度を、第1タンク温度センサ58で検出した第1貯湯タンク温度Ts1とし、この第1貯湯タンク温度Ts1が目標貯湯タンク温度Tsgに到達したか否かで沸き上げ運転継続/完了を判断するとともに、第1貯湯タンク温度Ts1がしきい温度以下となったか否かで沸き上げ運転要/不要を判断している。
【0040】
第1タンク温度センサ58は、第2タンク温度センサ59より上方に配置されているので、入水口72から貯湯タンク70に流入した温度の低い水の影響を受けにくい。従って、第1タンク温度センサ58で検出した第1貯湯タンク温度Ts1を監視することで、貯湯タンク温度を第2タンク温度センサ59で検出する場合と比べて、貯湯タンク温度が目標貯湯タンク温度Tsgに到達したか否かを正確に判断することができるともに、検出する貯湯タンク温度が頻繁にしきい温度以下となることによって、沸き上げ運転が頻繁に行われることを防止できるので、ヒートポンプサイクル装置100での消費電力を低減し省エネ性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施例では、第1貯湯タンク温度Ts1を目標貯湯タンク温度Tsgとするための出口水温Teの目標温度である目標出口水温Teaの算出に、第2タンク温度センサ59で検出した第2貯湯タンク温度Ts2を使用する。第2タンク温度センサ59は、入水口72から貯湯タンク70に流入した温度の低い水によって低下した貯湯タンク温度を第2貯湯タンク温度Ts2として検出するので、貯湯タンク温度を第1タンク温度センサ58で検出する場合と比べて、より現在の貯湯タンク温度に則した目標出口水温Teaを算出することができる。そして、出口水温Teがこのようにして求めた目標出口水温Teaとなるように沸き上げ運転時の制御を行うので、沸き上げ運転終了後に第1貯湯タンク温度Ts1がしきい温度以下となって再度沸き上げ運転となることを抑制でき、ヒートポンプサイクル装置100での消費電力を低減し省エネ性を向上させることができる。
【0042】
具体的には、制御手段60は、第2タンク温度センサ59で検出した第2貯湯タンク温度Ts2を定期的(例えば、1分毎)に取り込む。そして、制御手段60は、
図2に示すように、目標出口水温Teaを、取り込んだ第2貯湯タンク温度Ts2に目標算出温度T1(例えば、5℃)を加えて求める。目標算出温度T1は、予め試験等によって求められている温度であり、現在の第2貯湯タンク温度Ts2からの加熱分(例えば、3℃)と、利用側熱交換器3から流出した湯水の温度が給湯配管12や貯湯タンク側配管12bを流れる際の放熱により低下する温度分(例えば、2℃)とを考慮して求められている。
【0043】
上述したように目標出口水温Teaを算出するので、第2貯湯タンク温度Ts2が上昇するのに伴って目標出口水温Teaも上昇する。そして、目標出口水温Teaが目標到達出口温度Tegとなれば(
図2の点A)、それ以降は目標到達出口温度Tegを目標出口水温Teaと設定する。尚、目標到達出口温度Tegとは、目標出口水温Teaの最終目標温度であり、
図2に示すように、目標貯湯タンク温度Tsgに補正温度T2(例えば、2℃)を加えて求められる。
【0044】
補正温度T2は、予め試験等によって求められている温度であり、利用側熱交換器3から流出した湯水が、給湯配管12や貯湯タンク側配管12bを流れる際の放熱により低下する温度分を補正するためである。利用側熱交換器3の出口水温Teが目標到達出口温度Tegに到達すれば、第1貯湯タンク温度Ts1が目標貯湯タンク温度Tsgに到達する。
【0045】
出口水温Teが目標到達出口温度Tegに近付いたとき、つまり、貯湯タンク温度Ts1が目標貯湯タンク温度Tsgに近付いたときは、利用側熱交換器3での凝縮圧力が高くなるために圧縮機1の吐出圧力も高くなり、圧縮機1の吐出圧力の上限値を超えてしまう虞がある。従って、目標到達出口温度Tegを必要以上に高く設定すれば、上述した圧縮機1の吐出圧力の上限値を超えてしまう可能性が高くなる。以上のことを考慮して、本実施例では、補正温度T2(2℃)は、目標出口水温Teaを求めるときの目標算出温度T1(5℃)より低い温度としている。
【0046】
制御手段60は、出口水温センサ57から取り込んだ出口水温Teが、目標出口水温Teaとなるように、圧縮機1の回転数(以下、圧縮機回転数Rcと記載)を制御する。例えば、
図2に示すように、圧縮機回転数Rcは、出口水温Teが上昇して目標到達出口水温Tegに到達するまでは段階的に上昇させる。また、圧縮機回転数Rcは、出口水温Teが目標到達出口水温Tegに到達してから第1貯湯タンク温度Ts1が目標貯湯タンク温度Tsgに到達するまで(
図2の点B)の間は段階的に下降させる。そして、制御手段60は、第1タンク温度センサ58から取り込んだ第1貯湯タンク温度Ts1が目標貯湯タンク温度Tsgとなれば、圧縮機1の運転を停止して沸き上げ運転を終了する。
【0047】
次に、
図3を用いて、上述した沸き上げ運転制御を行うことにより省エネ性が向上する理由を説明する。従来のヒートポンプサイクル装置では、
図3(A)に示すように、沸き上げ運転開始直後から目標出口水温Teaを目標到達水温Tegに設定し、出口水温センサ57から取り込んだ出口水温Teが目標到達水温Tegとなるように制御していた。従って、圧縮機1は沸き上げ運転開始直後から最高の圧縮機回転数Rcとされて駆動を続けることとなる。
【0048】
上記のように、圧縮機1を最高の圧縮機回転数Rcとして駆動を続けると、利用側熱交換器3における出口水温Teが高い状態が継続される。利用側熱交換器3における出口水温Teが高い状態で維持されると、利用側熱交換器3における凝縮圧力が高い状態が継続されることとなって、圧縮機1の運転負荷が増大する。圧縮機1の運転負荷が増大すれば圧縮比が上昇し、圧縮比の上昇に伴って圧縮機1での消費電力量が増大するので、冷媒回路10の運転効率が低下して沸き上げ運転の効率低下を招く虞があった。
【0049】
これに対し、本発明のヒートポンプサイクル装置100では、検出した第2貯湯タンク温度Ts2に目標算出温度T1を加算することによって目標出口水温Teaを算出し、出口水温Teが目標出口水温Teaとなるように圧縮機回転数Rcを制御して圧縮機1を駆動する。
【0050】
上記のように圧縮機1を駆動制御すれば、
図3(B)に示すように、圧縮機1の駆動直後は、第1タンク温度センサ58で検出した出口水温Teと目標出口水温Teaとに差があるが、
図3(A)に示す従来のヒートポンプサイクル装置の場合と比べてその差(従来は、出口水温Teと目標到達出口水温Tegとの差)は小さい。従って、
図2に示すように、圧縮機1の駆動直後の圧縮機回転数Rcは、従来のヒートポンプサイクル装置の場合と比べて低くなる。
【0051】
上記のように圧縮機1を駆動制御して沸き上げ運転を継続すると、圧縮機1の駆動時間とともに貯湯タンク70に供給される湯水の温度が上昇するため、出口水温Teと目標出口水温Teaとの差は時間とともに縮まって時間Hで略等しくなる。その後は、出口水温Teと目標出口水温Teaとが略同じとなる状態のまま目標出口水温Teaが目標到達出口水温Tegに徐々に近づくよう、圧縮機回転数Rcが段階的に上昇し、最終的には出口水温Teが目標到達水温Tegに到達する段階で圧縮機回転数Rcが最大回転数となる。
【0052】
以上のように沸き上げ運転制御を行うことで、
図2を用いて説明したように、圧縮機回転数Rcは段階的に上昇するので、圧縮機1を最高の圧縮機回転数Rcとして駆動する時間が短縮される。従って、従来の沸き上げ運転時の制御のように、圧縮機1の回転数Rcが高い状態で長く圧縮機1を駆動しないので、沸き上げ運転時のヒートポンプサイクル装置100の効率悪化を抑制することができる。また、圧縮機回転数Rcが徐々に上昇すれば熱源側熱交換器5での蒸発能力も徐々に上昇するので、熱源側熱交換器5での着霜も発生しにくくなり、頻繁な除霜運転への移行も抑制できる。従って、ヒートポンプサイクル装置100全体として運転効率が向上し、省エネ性が向上する。
【0053】
次に、本発明のヒートポンプサイクル装置100に関わる処理について、
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
図4に示すフローチャートは、ヒートポンプサイクル装置100で沸き上げ運転を行う際の制御に関する処理の流れを示すものであり、STはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。尚、室内ユニット40を用いた暖房運転や、熱源側熱交換器5の除霜運転等、本発明に関わる処理以外の、一般的なヒートポンプサイクル装置100に関わる制御については、説明を省略する。
【0054】
ヒートポンプサイクル装置100が運転を行っているとき、制御手段60は、第1タンク温度センサ58から取り込んだ第1貯湯タンク温度Ts1がしきい温度以下となったか否かを判断する(ST1)。第1貯湯タンク温度Ts1がしきい温度以下となっていなければ(ST1−No)、制御手段60は、ST1に処理を戻す。
【0055】
第1貯湯タンク温度Ts1がしきい温度以下となっていれば(ST1−Yes)、制御手段60は、第1タンク温度センサ58から第1貯湯タンク温度Ts1を、第2タンク温度センサ59から第2貯湯タンク温度Ts2を、それぞれ取り込む(ST2)。
【0056】
次に、制御手段60は、取り込んだ第2貯湯タンク温度Ts2に所定温度T1を加算して、目標出口水温Teaを算出する(ST3)。次に、制御手段60は、算出した目標出口水温Teaが目標到達出口水温Teg以上であるか否かを判断する(ST4)。
【0057】
算出した目標出口水温Teaが目標到達出口水温Teg以上であれば(ST4−Yes)、制御手段60は、目標到達出口水温Tegを目標出口水温Teaと定めて(ST8)、ST5に処理を進める。
【0058】
算出した目標出口水温Teaが目標到達出口水温Teg以上でなければ(ST4−No)、制御手段60はST5に処理を進める。ST5において制御手段60は、出口水温センサ57から取り込んだ出口水温Teが目標出口水温Teaとなるように、圧縮機1の回転数Rcを制御する(ST5)。
【0059】
次に、制御手段60は、第1貯湯タンク温度Ts1が目標貯湯タンク温度Tsgとなったか否かを判断する(ST6)。第1貯湯タンク温度Ts1が目標貯湯タンク温度Tsgとなっていなければ(ST6−No)、制御手段60は、ST2に処理を戻す。第1貯湯タンク温度Ts1が目標貯湯タンク温度Tsgとなっていれば(ST6−Yes)、制御手段60は、圧縮機1を停止して(ST7)、ST1に処理を戻す。
【0060】
以上説明した通り、本発明のヒートポンプサイクル装置は、沸き上げ運転時に、圧縮機の回転数を許容最大回転数として駆動しつづけるのではなく、貯湯タンク内部に貯留されている湯水の温度、つまり、貯湯タンク温度に応じて圧縮機の回転数を決定する。これにより、利用側熱交換器における出口水温が高い状態が継続される、つまり、利用側熱交換器における凝縮圧力が高い状態が継続されることがなく、圧縮機の運転負荷が軽減できる。従って、冷媒回路の運転効率の低下を抑制し、ひいては、沸き上げ運転の効率低下を抑制できる。