特許第5982849号(P5982849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982849
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   B41J2/01 107
   B41J2/01 305
   B41J2/01 451
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-28124(P2012-28124)
(22)【出願日】2012年2月13日
(65)【公開番号】特開2013-163338(P2013-163338A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2015年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】朴木 真奈
【審査官】 有家 秀郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−189712(JP,A)
【文献】 特開2008−132613(JP,A)
【文献】 特開2011−194612(JP,A)
【文献】 特開2009−039933(JP,A)
【文献】 特開平11−342651(JP,A)
【文献】 特開2008−126452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイズが異なる複数種のシートの両端と当接して主走査方向の中央に位置合わせするサイドガイドを有し、シートが載置されるトレイと、
上記トレイに載置されるシートを、上記主走査方向と直交する副走査方向に沿って搬送する搬送部と、
上記搬送部により搬送されたシートに対して上記主走査方向へ往復移動しながら画像記録を行う記録部と、
上記記録部に設けられたセンサを備えており、当該センサから発せられる信号によりシートの有無を検知する検知部と、
上記複数種の各シートそれぞれにおいて上記主走査方向の中央に対して当該主走査方向の両側の検知位置が記憶された記憶部と、
上記記録部によって画像が記録されるシートのサイズを示すサイズ情報、及び当該シートに記録される画像データを取得する取得手段と、
上記取得手段によって取得されたサイズ情報及び画像データに基づいて、上記シートに対して上記記録部が画像記録を開始する上記主走査方向における画像記録開始位置、及び当該画像記録開始位置からシートへ画像記録を行うときに上記記録部が往復移動のうちの一方の向きに移動する移動向きを決定する第1決定手段と、
上記取得手段によって取得されたサイズ情報が示す主走査方向のサイズに対応する上記検知位置のうち、上記画像記録開始位置よりも上記移動向きの上流側の一方を、上記検知部による検知位置とする第2決定手段と、
上記第2決定手段によって決定された検知位置に上記記録部を移動させてから、決定された検知位置において上記検知部によるシートの有無の検知を行い、上記検知部がシートを検知したことを条件として、上記移動向きに上記記録部を移動させて上記画像記録開始位置から上記記録部に画像記録を行わせる制御手段と、を備える画像記録装置。
【請求項2】
上記第2決定手段は、上記画像記録開始位置よりも上記移動向きの上流側の検知位置が複数存在する場合、上記記録部の現在位置に最も近い位置を上記検知部による検知位置とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記第2決定手段は、上記現在位置に最も近い検知位置が上記現在位置よりも上記移動向きの上流側である場合、上記画像記録開始位置に最も近い位置を上記検知部による検知位置とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記第2決定手段は、上記画像記録開始位置よりも上記移動向きの上流側の検知位置が存在しない場合、上記記録部の現在位置に最も近い位置を上記検知部による検知位置とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項5】
シートの上記副走査方向の位置を検出するシート位置検出手段を更に備え、
上記制御手段は、上記シート位置検出手段によってシートが上記センサと対向し得る対向位置に位置すると検知されるまでに、上記第2決定手段によって決定された検知位置に上記記録部を移動させてから、上記シート位置検出手段によってシートが上記対向位置に位置すると検知されたことを条件として、上記検知部によるシートの有無を検知する請求項1から4のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項6】
シートの上記副走査方向の位置を検出するシート位置検出手段を更に備え、
上記制御手段は、上記シート位置検出手段によってシートが上記センサと対向し得る対向位置に位置すると検知されたことを条件として、上記第2決定手段によって決定された検知位置に上記記録部を移動させてから、上記検知部によるシートの有無を検知する請求項1から4のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項7】
上記記憶部に記憶された上記検知位置は、上記主走査方向において2つの位置であって且つそれぞれが上記中央から等距離である請求項1から6のいずれかに記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に画像を記録する記録部に搭載された検知部により、当該被記録媒体を検知することが可能な画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような画像記録装置の一例として、インクジェット記録方式の画像記録装置が知られている。インクジェット記録方式の画像記録装置は、インクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドが搭載されており、被記録媒体の搬送方向と交差する走査方向へ往復移動するキャリッジとを備えている。インクジェット記録方式の画像記録装置による被記録媒体への画像記録は、以下のようにして実行される。つまり、キャリッジが走査方向へ移動しながら、記録ヘッドから被記録媒体へインク滴が吐出される。これにより、被記録媒体に画像が記録される。
【0003】
このようなインクジェット記録方式の画像記録装置として、特許文献1に記載されているインクジェット記録装置が存在する。特許文献1に記載のインクジェット記録装置は、キャリッジに搭載されたメディアセンサによって、キャリッジと対向する位置に搬送された被記録媒体を検知することができる。
【0004】
特許文献1に記載されたインクジェット記録装置では、以下のようにして被記録媒体の検知が実行される。メディアセンサによる検出位置が被記録媒体のサイズ毎に予め設定されている。キャリッジは、パーソナルコンピュータから出力される記録指令によって、当該記録指令で指示されたサイズ情報に対応した検出位置と対向する位置に移動される。記録指令は、検出位置における被記録媒体の有無を、メディアセンサに検出させる。メディアセンサによって被記録媒体が検出位置に存在することが検出されると、当該被記録媒体に対する画像記録が実行される。
【0005】
つまり、特許文献1に記載されたインクジェット記録装置の場合、キャリッジは、まず検出位置に移動されて一旦停止された後、画像記録の開始位置に移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−132108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インクジェット記録方式の画像記録装置の場合、移動するキャリッジが画像記録の開始位置に到達すると、記録ヘッドからインク滴が吐出されて、被記録媒体に対する画像記録が開始される。つまり、キャリッジが開始位置に到達すると、記録ヘッドからインク滴が吐出されればよく、キャリッジが開始位置において必ずしも停止する必要はない。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたインクジェット記録装置の場合、検出位置及び開始位置や、当該開始位置において画像記録が開始される際のキャリッジの移動向きによっては、キャリッジが開始位置で一旦停止される必要がある。
【0009】
例えば、検出位置が開始位置よりも画像記録が開始される際の移動向きの下流側にある場合、検出位置から開始位置に向かうキャリッジは、移動向きと反対向きに移動することがある。開始位置に到達したキャリッジは一旦停止される。その後、キャリッジは、開始位置から移動向きに移動する。
【0010】
以上のように、キャリッジが開始位置で一旦停止されると、被記録媒体への画像記録に要する時間が余計にかかってしまう。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被記録媒体に画像を記録する移動可能な記録部の停止回数を減らすことにより、被記録媒体への画像記録に要する時間を低減することができる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 本発明の画像記録装置は、サイズが異なる複数種のシートの両端と当接して主走査方向の中央に位置合わせするサイドガイドを有し、シートが載置されるトレイと、上記トレイに載置されるシートを、上記主走査方向と直交する副走査方向に沿って搬送する搬送部と、上記搬送部により搬送されたシートに対して上記主走査方向へ往復移動しながら画像記録を行う記録部と、上記記録部に設けられたセンサを備えており、当該センサから発せられる信号によりシートの有無を検知する検知部と、上記複数種の各シートそれぞれにおいて上記主走査方向の中央に対して当該主走査方向の両側の検知位置が記憶された記憶部と、上記記録部によって画像が記録されるシートのサイズを示すサイズ情報、及び当該シートに記録される画像データを取得する取得手段と、上記取得手段によって取得されたサイズ情報及び画像データに基づいて、上記シートに対して上記記録部が画像記録を開始する上記主走査方向における画像記録開始位置、及び当該画像記録開始位置からシートへ画像記録を行うときに上記記録部が往復移動のうちの一方の向きに移動する移動向きを決定する第1決定手段と、上記取得手段によって取得されたサイズ情報が示す主走査方向のサイズに対応する上記検知位置のうち、上記画像記録開始位置よりも上記移動向きの上流側の一方を、上記検知部による検知位置とする第2決定手段と、上記第2決定手段によって決定された検知位置に上記記録部を移動させてから、決定された検知位置において上記検知部によるシートの有無の検知を行い、上記検知部がシートを検知したことを条件として、上記移動向きに上記記録部を移動させて上記画像記録開始位置から上記記録部に画像記録を行わせる制御手段と、を備える。
【0013】
本構成では、複数種の各シートそれぞれにおいて複数の検知位置が設定されている。そして、第2決定手段は、複数の検知位置のうち、画像記録開始位置よりも移動向きの上流側の位置を検知部による検知位置とする。これにより、シートへの画像記録が開始される際、制御手段は、検知位置の記録部を、画像記録開始位置に向かって移動向きに移動させる。そして、記録部は、画像記録開始位置に到達すると、そのまま移動向きに移動しつつ、シートへの画像記録を開始する。つまり、本構成によれば、記録部は、画像記録開始位置で一旦停止することなく、シートへの画像記録を開始することができる。
【0014】
(2) 上記第2決定手段は、上記画像記録開始位置よりも上記移動向きの上流側の検知位置が複数存在する場合、上記記録部の現在位置に最も近い位置を上記検知部による検知位置とする。
【0015】
本構成によれば、検知部によるシートの有無の検知を早期に実行することができる。
【0016】
(3) 上記第2決定手段は、上記現在位置に最も近い検知位置が上記現在位置よりも上記移動向きの上流側である場合、上記画像記録開始位置に最も近い位置を上記検知部による検知位置とする請求項2に記載の画像記録装置。
【0017】
画像記録開始位置よりも移動向きの上流側の検知位置が複数存在し、且つ記録部の現在位置に最も近い検知位置が当該現在位置よりも移動向きの上流側である場合に、第2決定手段が当該検知位置を検知部による検知位置とすると、記録部は、検知部による検知のために画像記録開始位置から離れるように移動してしまう。その結果、シートの画像記録の開始時期が遅くなってしまう。そこで、本構成によれば、上記のような場合に、第2決定手段は、画像記録開始位置に最も近い位置を検知部による検知位置とする。これにより、シートの画像記録の開始時期を早くすることができる。
【0018】
(4) 上記第2決定手段は、上記画像記録開始位置よりも上記移動向きの上流側の検知位置が存在しない場合、上記記録部の現在位置に最も近い位置を上記検知部による検知位置とする。
【0019】
本構成によれば、記録部が検知位置を経て画像記録開始位置に移動するために要する距離を短くすることができる。これにより、シートの画像記録の終了時期を早めることができる。
【0020】
(5) 本発明の画像記録装置は、シートの上記副走査方向の位置を検出するシート位置検出手段を更に備える。上記制御手段は、上記シート位置検出手段によってシートが上記センサと対向し得る対向位置に位置すると検知されるまでに、上記第2決定手段によって決定された検知位置に上記記録部を移動させてから、上記シート位置検出手段によってシートが上記対向位置に位置すると検知されたことを条件として、上記検知部によるシートの有無を検知する。
【0021】
本構成によれば、シートの搬送と記録部の移動とを並行して実行できる。これにより、搬送部によるシートの搬送が開始されてから、記録部による当該シートへの画像記録が終了するまでに要する時間を短くすることができる。
【0022】
(6) 本発明の画像記録装置は、シートの上記副走査方向の位置を検出するシート位置検出手段を更に備える。上記制御手段は、上記シート位置検出手段によってシートが上記センサと対向し得る対向位置に位置すると検知されたことを条件として、上記第2決定手段によって決定された検知位置に上記記録部を移動させてから、上記検知部によるシートの有無を検知する。
【0023】
本構成によれば、シートが対向位置に未だ到達していない状態で、検知部によるシートの検知が実行されることによる誤検知の発生を防止することができる。
【0024】
(7) 上記記憶部に記憶された上記検知位置は、上記主走査方向において2つの位置であって且つそれぞれが上記中央から等距離である。
【0025】
本構成によれば、2つの検知位置のうちの一方が主走査開始位置よりも移動向きの上流側となり、2つの検知位置のうちの他方が主走査開始位置よりも移動向きの下流側となる可能性が高くなる。つまり、本構成は、(1)の作用効果を奏するための好適な構成である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、記録部は、主走査開始位置で一旦停止することなく、シートへの画像記録を開始することができる。よって、本発明によれば、記録部の停止回数を減らすことにより、シートへの画像記録に要する時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、複合機1の外観構成を示す斜視図である。
図2図2は、プリンタ部2の主要構成を模式的に示す縦断面図である。
図3図3は、給紙トレイ20の外観構成を示す斜視図である。
図4図4は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図である。
図5図5は、制御部130の構成を示すブロック図である。
図6図6は、用紙検知制御について説明するためのフローチャートである。
図7図7は、記録部24と対向する位置における搬送路23を前から見た模式図であり、(A)には主走査開始位置12が搬送路23の左側である状態が示されており、(B)には主走査開始位置12が搬送路23の中央部である状態が示されており、(C)には主走査開始位置12が搬送路23の右側である状態が示されている。
図8図8(A)は、データテーブルを示す図であり、図8(B)は検知位置について説明するために搬送路23上の記録用紙19が示された模式図である。
図9図9は、記録用紙19への画像の記録領域を示す模式図である。
図10図10は、検知位置について図8(B)とは別の実施形態について説明するために記録用紙19が示された模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態に係る複合機1について説明する。なお、実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。複合機1は、図1に示す状態に設置されて使用される。本実施形態において、図1に矢印を付して示す3つの方向が、上下方向7、前後方向8、及び左右方向9である。また、以下の説明においては、複合機1が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口6が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8が定義され、複合機1を手前側(正面)から見て左右方向9が定義される。なお、図1に示す3つの方向は、他の図面においても同様に表示される。更に、以下の説明では、「向き」とは一方の点から他方の離れた点に向く状態を意味し、「方向」とは、2つの離れた点の間で向く状態である。つまり、「方向」とは、一方の点から他方の離れた点に向く状態と、他方の離れた点から一方の点に向く状態とを含む意味である。
【0029】
[複合機1の外観]
図1を用いて、複合機1の外観について説明する。図1に示されるように、複合機1は、概ね直方体に形成されている。複合機1は、当該複合機1の下部に配置されたプリンタ部2(本発明の画像記録装置の一例)と、上部に配置されたスキャナ部3とを備えている。複合機1は、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を有する。プリント機能以外の機能は任意のものである。例えば、本発明に係るインクジェット記録装置が、スキャナ部3が省略されたプリント機能のみを有するプリンタとして実施されてもよい。
【0030】
プリンタ部2は、コンピュータ等の外部情報機器から送信された画像データに基づいて、記録用紙19(本発明のシートの一例、図2参照)に画像を記録する。プリンタ部2は、正面に開口6が形成されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21が、開口6の内側に上下2段に設けられている。スキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。なお、ここでは、スキャナ部3の詳細な説明は省略される。
【0031】
スキャナ部3の正面側の上面には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、各種操作ボタン10や液晶表示部11から構成されている。
【0032】
[給紙トレイ20]
図2に示されるように、プリンタ部2の下部に給紙トレイ20(本発明のトレイの一例)が設けられている。図3に示されるように、給紙トレイ20は、記録用紙19が載置される底板26と、底板26の後端から立設された傾斜部27と、底板26の左右方向9(本発明の主走査方向の一例)の両端から立設された側板28とを備えている。
【0033】
底板26には、一対のサイドガイド29が設けられている。サイドガイド29の一方が底板26の左右方向9へスライドされると、これに連動して、サイドガイド29の他方が相反する方向へスライドされる。一対のサイドガイド29は、記録用紙19の左右両端と当接する。これにより、記録用紙19の左右方向9の中央位置が給紙トレイ20の左右方向9の中央に略一致する。更に、以下で説明する給紙ローラ25によって後述する搬送路23へ搬送された記録用紙19の左右方向9の中央位置は、搬送路23の左右方向9の中央に略一致する。以上より、一対のサイドガイド29は、左右方向9のサイズが異なる複数種の記録用紙19を左右方向9の中央が同じ位置となるように位置合わせする。
【0034】
なお、本実施形態では、本発明のトレイの一例として、給紙トレイ20がプリンタ部2に設けられているが、本発明のトレイの一例は給紙トレイ20に限らず、例えば、いわゆる手差しトレイ(不図示)でもよい。
【0035】
[給紙ローラ25]
図2に示されるように、給紙トレイ20の上側に給紙ローラ25(本発明の搬送部の一例)が設けられている。給紙ローラ25が給紙モータ76(図5参照)から駆動伝達されて回転されることにより、給紙トレイ20に載置された記録用紙19のうち最上位置の記録用紙19が、後側(以下で説明される搬送路23の側)へ搬送される。
【0036】
[搬送路23]
図2に示されるように、給紙トレイ20の後端部から搬送路23が延出されている。給紙トレイ20に載置された記録用紙19は、給紙ローラ25及び後述する搬送ローラ対89及び排紙ローラ対92によって搬送路23に沿った搬送方向(本発明の副走査方向の一例、図2に波線で示される方向)に搬送される。記録用紙19は、搬送路23において、下方から上方へUターンするように搬送されて記録部24に至る。記録用紙19は、記録部24に至ると、搬送方向のうち、図2に波線矢印で示される搬送向き15に搬送される。そして、記録用紙19は、記録部24により当該記録用紙19へ画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
【0037】
[搬送ローラ対89及び排紙ローラ対92]
図2に示されるように、記録部24よりも後側の搬送路23には、搬送ローラ87及びピンチローラ88を備える搬送ローラ対89(本発明の搬送部の一例)が設けられている。記録部24よりも前側の搬送路23には、排紙ローラ90及び拍車91を備える排紙ローラ対92(本発明の搬送部の一例)が設けられている。記録用紙19は、搬送ローラ対89によって後述するプラテン42上へ搬送される。次に、プラテン42上へ搬送された記録用紙19は、排紙ローラ対92によって排紙トレイ21へ搬送される。搬送ローラ87及び排紙ローラ90は、搬送モータ59(図5参照)の回転駆動力が駆動伝達機構(不図示)を介して伝達されて駆動される。
【0038】
[記録部24]
図2に示されるように、搬送路23におけるプラテン42と対向する位置には、記録部24が配置されている。ここで、プラテン42は、板状の部材であり、搬送路23を搬送方向に沿って搬送される記録用紙19を支持する。記録部24は、インクジェット方式の記録ヘッド39と、記録ヘッド39を搭載するキャリッジ38とを備えている。キャリッジ38は、プリンタ部2のフレームなどによって、左右方向9へ往復移動可能に支持されている。
【0039】
記録ヘッド39は、キャリッジ38の下面に配置されている。また、記録ヘッド39は、インク滴を吐出する複数個のノズル40を備えている。各ノズル40は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのいずれかの色に対応している。不図示のインクカートリッジから各色のインク滴が対応するノズル40に供給される。
【0040】
キャリッジ38が往復移動される間に、複数個のノズル40からプラテン42に向かって、各色インク滴が吐出される。これにより、搬送ローラ対89によって搬送されてプラテン42によって支持されている記録用紙19に画像が記録される。なお、以上説明したインク滴の吐出は、後述する制御部130によって制御される。
【0041】
図4に示されるように、一対のガイドレール43、44のそれぞれが前後方向8において対向して配置されると共に、左右方向9に延設されている。一対のガイドレール43、44は、プリンタ部2を構成する各部材を支持するフレームの一部である。キャリッジ38は、一対のガイドレール43、44を跨ぐようにして左右方向9に移動可能に載置されている。
【0042】
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動伝達機構46が配設されている。ベルト駆動伝達機構46は、駆動プーリ47と従動プーリ48と無端環状のベルト49とを有する。各プーリ47、48は、ガイドレール44の左右方向9の両端付近に設けられている。各プーリ47、48を架け渡すように、無端環状のベルト49が張架されている。駆動プーリ47の軸に、ガイドレール44の下面に設けられたキャリッジモータ80(図5参照)の駆動軸が連結されている。なお、以下において、キャリッジモータはCRモータと記される。CRモータ80の回転駆動力が駆動プーリ47に伝達されると、駆動プーリ47の回転によりベルト49が周運動する。
【0043】
キャリッジ38は、その底面側においてベルト49に連結されている。これにより、ベルト49が周運動すると、キャリッジ38がガイドレール43、44上を左右方向9に移動する。
【0044】
[リニアエンコーダ52]
図4に示されるように、ガイドレール44には、エンコーダストリップ50が配設されている。ガイドレール44の左右方向9の両端には、ガイドレール44の上面から起立するように一対の支持用リブ33、34が形成されている。エンコーダストリップ50は、その両端部を支持用リブ33、34に支持されて、左右方向9に架設されている。
【0045】
エンコーダストリップ50には、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが長手方向に等ピッチで交互に配置されたパターンが記されている。キャリッジ38の上面のエンコーダストリップ50に対応する位置には、光学センサ35が設けられている。エンコーダストリップ50と光学センサ35とによって、キャリッジ38の左右方向9の位置を検知するリニアエンコーダ52が構成される。キャリッジ38が移動されると光学センサ35によってエンコーダストリップ50の透光部と遮光部が検出される毎に、光学センサ35がパルス信号を生成する。光学センサ35によって生成されたパルス信号は、後述する制御部130(図5参照)に出力される。
【0046】
[ロータリーエンコーダ68]
図2に示されるように、搬送ローラ87の回転量を検出するロータリーエンコーダ68が設けられている。ロータリーエンコーダ68は、エンコーダディスク51と光学センサ60とからなる。エンコーダディスク51は、搬送ローラ87と同軸に設けられて搬送ローラ87と共に回転する。また、エンコーダディスク51には、光が透過される透過部と光が透過されない非透過部とが円周方向に等ピッチで交互に配置されたパターンが形成されている。搬送ローラ87と共にエンコーダディスク51が回転すると、光学センサ60によってロータリーエンコーダ68の透過部と非透過部とが検出される毎にパルス信号が生成される。光学センサ60によって生成されたパルス信号は、後述する制御部130に出力される。後述する制御部130は、当該パルス信号に基づいて、記録用紙19の搬送方向の位置を検出する。以上より、本発明のシート位置検出手段は、ロータリーエンコーダ68と制御部130とで構成されている。
【0047】
[センサ110]
図2に示されるように、キャリッジ38において記録ヘッド39よりも搬送向き15の上流側には、センサ110が設けられている。センサ110は、搬送路23を搬送される記録用紙19を検知するためのものである。
【0048】
センサ110は、発光ダイオードなどからなる発光部111(図5参照)と光学式センサなどからなる受光部112(図5参照)とを備えている。発光部111は、プラテン42へ向けて光を照射する。照射された光は、プラテン42に記録用紙19が支持されている場合に記録用紙19で反射し、プラテン42に記録用紙19が支持されていない場合にプラテン42で反射する。反射された光は受光部112で受光される。ここで、反射光の強さは、照射光が記録用紙19及びプラテン42のいずれで反射されたかによって、異なる強さとなるように設定されている。受光部112で受光された反射光の強さに応じたレベルの信号が、受光部112から制御部130に出力される。後述する制御部130は、受光部112から出力される信号に基づいて、センサ110と対向する位置において、プラテン42上に記録用紙19が有るか否かを判断する。なお、制御部130は、発光部111が照射する光の強さを制御する。以上より、本発明の検知部は、センサ110と制御部130とで構成されている。
【0049】
[制御部130]
以下、図5が参照されて、制御部130の概略構成が説明される。制御部130は、CPU131、ROM132(本発明の記憶部の一例)、RAM133、EEPROM134、ASIC135、及びこれらを相互に接続する内部バス137を備えている。
【0050】
ROM132には、CPU131が後述する用紙検知制御を含む各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記憶する記憶領域として使用される。
【0051】
また、ROM132には、複数種の各記録用紙19それぞれにおいて左右方向9の中央に対して左右方向9において一対をなす検知位置(左検知位置及び右検知位置)が記憶されている。ここで、検知位置は、左右方向9の位置のことである。また、左検知位置は、搬送路23の左右方向9の中央よりも左側の位置であり、右検知位置は、搬送路23の左右方向9の中央よりも右側の位置である。なお、検知位置は、EEPROM134に記憶されていてもよい。また、本実施形態においては、左右方向9において、プラテン42から外れる右側の位置に、記録ヘッド39のノズル40を覆う不図示のキャップ部が配置されている。しかし、キャップ部の位置は、右側の位置に限らず左側に配置されていてもよいことは言うまでもない。
【0052】
例えば、図8(A)に示されるように、A4及びB5といった記録用紙19のサイズと、当該サイズの各々に対応する左検知位置17A、17B(図8(B)参照)の値及び右検知位置18A、18B(図8(B)参照)の値とが、データテーブルとしてROM132に記憶されている。ここで、本実施形態において、左検知位置17A、17B及び右検知位置18A、18Bの値は、図8(B)に示されるように、プラテン42の左右方向9において右側に外れる位置に設定された基準位置14からの距離A〜Dである。また、本実施形態において、当該距離の単位は、エンコーダストリップ50に記されたパターンのピッチであるエンコーダのカウント値(enc)である。なお、本実施形態においては、基準位置14において、不図示のキャップ部によってノズル40が覆われる。つまり、基準位置14は、所謂原点位置であり、制御部130は、基準位置14におけるエンコーダのカウント値を零として記録部24の左右方向9の移動が制御される。
【0053】
なお、図8(B)では、ROM132に記憶された左検知位置17Aに対して右検知位置18A、及び左検知位置17Bに対して右検知位置18Bは、それぞれ搬送路23の左右方向9の中央を通り且つ搬送向き15に沿った中心線16に対して、線対称の関係である。つまり、中心線16からの左検知位置17Aまでの左右方向9の距離と、中心線16から右検知位置18Aまでの左右方向9の距離とは、等距離である。しかし、図10(A)に示されるように、左検知位置17と右検知位置18は、線対称の関係でなくてもよい。
【0054】
また、図8(B)では、検知位置は、各サイズについて2つずつ設定されているが、3つ以上設定されていてもよい。例えば、図10(B)に示されるように、左検知位置17が記録用紙19の左右方向9の中央の左側に2つ設定されており、右検知位置18が記録用紙19の左右方向9の中央の右側に1つ設定されていてもよい。つまり、図10(B)のように、検知位置は、3つ設定されていてもよいが、この場合、左右方向9の右側及び左側にそれぞれ少なくとも1つずつ設定されている。
【0055】
ASIC135には、各モータ(給紙モータ76、搬送モータ59、及びCRモータ80)を制御する駆動回路が組み込まれている。CPU131から所定のモータに応じた駆動回路に各モータを回転させるための駆動信号が入力されると、駆動信号に応じた駆動電流が駆動回路から対応するモータへ出力される。これにより、対応するモータが所定の回転速度で正転又は逆転する。
【0056】
また、ASIC135には、ロータリーエンコーダ68の光学センサ60、リニアエンコーダ52の光学センサ35、及びセンサ110が接続されている。CPU131は、光学センサ35からの検知信号に基づいてキャリッジ38の位置を算出する。また、CPU131は、光学センサ60からのパルス信号に基づいて搬送ローラ87の回転量を算出する。つまり、制御部130は、搬送ローラ87によって搬送されている記録用紙19の搬送量及び副走査方向の位置を検知する。また、CPU131は、センサ110の発光部111が照射する光の強さを制御し、センサ110の受光部112からの信号レベルに基づいて記録用紙19がプラテン42上に有るか否かを判断する。
【0057】
[用紙検知制御]
制御部130は、以下で説明するように、図6に示されるフローチャートにしたがって、センサ110による記録用紙19の有無の検知を行う用紙検知制御を実行する。また、制御部130による用紙検知制御の実行は、プリンタ部2が、ユーザが操作パネル4を操作したり、複合機1と接続される外部情報機器を操作することによって開始される記録開始の指示を受けると開始される。以上の制御部130による用紙検知制御の実行によって、本発明が実現される。
【0058】
ユーザの操作によって外部情報機器から複合機1に送信された画像データ及びサイズ情報がRAM133に記憶される。つまり、制御部130は、画像データ及びサイズ情報を取得する(S10)。ここで、画像データは、記録部24によって記録用紙19に画像として記録されるデータである。また、サイズ情報は、記録部24によって当該画像データが記録される記録用紙19のサイズを示す情報である。例えば、サイズ情報は、当該記録用紙19が画像記録される際の前後方向8(搬送方向)及び左右方向9の長さで表される。また、サイズ情報は、A4やB5といった記録用紙19のサイズを示す情報であってもよい。なお、この場合、当該情報の各々に対応する前後方向8及び左右方向9の長さよりなるデータテーブルがROM132などに記憶されており、A4やB5といった情報から、当該長さが導き出される。ステップS10の処理は、本発明の取得手段の一例である。
【0059】
なお、制御部130は、画像データ及びサイズ情報を、外部情報機器以外から取得してもよい。例えば、SDカード(登録商標)などのメモリカードを挿入可能なカードスロットが、複合機1に設けられており、カードスロットに挿入されたSDカードに記憶されている画像データ及びサイズ情報が、RAM133に記憶されてもよい。また、複合機1のユーザによる操作パネル4の操作によって指定された記録用紙19のサイズ、つまりサイズ情報が、RAM133に記憶されてもよい。
【0060】
次に、制御部130は、ステップS10で取得したサイズ情報に基づいて、検知位置を決定する。具体的には、制御部130は、ROM132に記憶されたデータテーブルを参照して、サイズ情報に対応する検知位置を、以下の処理で使用する検知位置とする。例えば、データテーブルが図8(A)のように構成されている場合であって、且つ送信されたサイズ情報がA4である場合、制御部130は、以下の処理で使用する検知位置を左検知位置17A及び右検知位置18Aとしてひとまず決定し、それらの値をそれぞれ「D(enc)」及び「A(enc)」とする。
【0061】
次に、制御部130は、ステップS10で取得した画像データ及びサイズ情報に基づいて、主走査開始位置12(本発明の画像記録開始位置の一例、図9参照)と移動向きとを決定する(S30)。
【0062】
ここで、主走査開始位置12は、記録用紙19に対して記録部24が画像記録を開始する位置のうち、左右方向9における位置、つまり主走査方向における位置である。また、記録部24が画像記録を開始する位置は、左右方向9(主走査方向)及び前後方向8(搬送方向であり且つ副走査方向)で特定される。
【0063】
また、移動向きは、記録部24が主走査開始位置12から記録用紙19へ画像記録を開始するとき、つまり記録部24が記録用紙19に対するインク滴の吐出を開始するときに、記録部24が移動する向きである。なお、本実施形態では、記録部24が往復移動する方向は左右方向9であるため、移動向きは、右向きまたは左向きのいずれかとなる。
【0064】
以下、主走査開始位置12(図7及び図9参照)の決定について説明する。例えば、制御部130は、画像データ及びサイズ情報に基づいて、記録用紙19に記録される画像の領域を求める。求めた画像の領域が図9においてハッチングで示された領域である場合、記録部24による画像記録は、搬送向き15の最も下流側であり且つ左右両端である位置101、102のいずれかで開始される。そして、主走査開始位置12は、移動向きに基づいて決定される。つまり、移動向きが右向きである場合に位置101が主走査開始位置12とされ、移動向きが左向きである場合に位置102が主走査開始位置12とされる。
【0065】
以下、移動向き(画像記録開始時における記録部24が移動する向き)の決定について説明する。移動向きは、画像データに基づいて決定される。例えば、記録される画像がカラー画像である場合では、各色のインクの記録用紙19への着弾順序を一定にしなければならない。つまり、記録部24がインク滴を吐出しながら移動する向きは、右向きまたは左向きの一方に固定する必要がある。これは、記録ヘッド39に形成される各色のノズル40が左右方向9において非対称であるためである。この場合、右向きまたは左向きに固定された向きが移動向きとされる。また、記録される画像が白黒である場合やインクの吐出において右向き及び左向きの双方向を使用する双方向記録である場合は、1回目の走査においてのみ右向きまたは左向きに固定される。以上説明したステップS30の処理は、本発明の第1決定手段の一例である。
【0066】
次に、制御部130は、左右方向9において、主走査開始位置12よりも移動向きの上流側に存在する検知位置の数を求める(S40)。以下、図7に基づいて説明する。図7は、記録部24と対向する位置における搬送路23を前から見た模式図である。以下の説明では、図7に示されるように、ステップS30で決定された記録部24の移動向き13は、右向きとする。図7(A)に示されるように、主走査開始位置12の左側、つまり右向きである移動向き13の上流側に2つの検知位置17A、18Aが存在する場合、制御部130は、検知位置の数を2個と判断する。図7(B)に示されるように、主走査開始位置12の右側に1つの検知位置18Aが存在する場合、制御部130は、検知位置の数を1個と判断する。図7(C)に示されるように、主走査開始位置12の左側に検知位置が存在しない場合、制御部130は、検知位置の数を0個と判断する。
【0067】
制御部130は、検知位置の数を2個以上(本実施形態の場合は2個)と判断した場合(S40:2個以上)、これら2個以上の検知位置から、記録部24の現在位置に最も近い検知位置を選択して、後述するステップS100においてセンサ110が記録用紙19の有無を検知する際の検知位置とする(S50)。例えば、図7(A)において、記録部24の現在位置が検知位置17Aと検知位置18Aとの中間位置103よりも右側である場合、制御部130は検知位置18Aを選択し、記録部24の現在位置が当該中間位置103よりも左側である場合、制御部130は検知位置17Aを選択する。また、ステップS50にて検知位置17Aが選択されると、制御部130はRAM133に検知位置としてD(enc)を記憶し、一方で、検知位置18Aが選択されると、制御部130はRAM133に検知位置としてA(enc)を記憶する。
【0068】
また、制御部130は、検知位置の数を1個と判断した場合(S40:1個)、当該1個の検知位置を、ステップS100においてセンサ110が記録用紙19の有無を検知する際の検知位置とする(S60)。例えば、図7(B)において、制御部130は、検知位置17Aを、ステップS100においてセンサ110が記録用紙19の有無を検知する際の検知位置とする。つまり、制御部130は、ステップS20で決定した一対の検知位置のうち、ステップS30で決定した主走査開始位置12よりも移動向き13の上流側の一方を、センサ110による検知位置とする。
【0069】
また、制御部130は、検知位置の数を0個と判断した場合(S40:0個)、ステップS10で決定した全て(本実施形態の場合は2個)の検知位置のうち、記録部24の現在位置に最も近い検知位置を選択する。そして、選択された検知位置を後述するステップS100においてセンサ110が記録用紙19の有無を検知する際の検知位置とする(S70)。例えば、図7(C)において、記録部24の現在位置が検知位置17Aと検知位置18Aとの中間位置103よりも右側である場合、制御部130は検知位置18Aを選択し、記録部24の現在位置が当該中間位置103よりも左側である場合、制御部130は検知位置17Aを選択する。
【0070】
以上説明したステップS40〜S70の処理は、本発明の第2決定手段の一例である。
【0071】
次に、制御部130は、給紙トレイ20に載置されている記録用紙19を対向位置まで搬送する(S80)。ここで、対向位置は、センサ110の前後方向8における位置と同位置である。つまり、対向位置は、前後方向8(搬送方向であり且つ副走査方向)で特定される位置であって、記録用紙19がセンサ110と対向し得る位置である。例えば、記録用紙19の記録面のいずれかの搬送方向の位置と、センサ110の搬送方向の位置とが一致している場合、当該記録用紙19は対向位置に位置している。
【0072】
以下、ステップS80の処理について詳述する。制御部130は、給紙モータ76を駆動して給紙ローラ25を回転させる。これにより、給紙トレイ20に載置された記録用紙19は、搬送ローラ対89に向かって搬送路23に沿って搬送される。記録用紙19が搬送ローラ対89に到達すると、制御部130は、搬送モータ59を駆動して搬送ローラ87を回転させる。これにより、記録用紙19は、搬送ローラ対89に挟持されつつ、記録ヘッド39の直下に向かって搬送される。
【0073】
記録用紙19の記録面のいずれかがセンサ110と対向し得る位置まで記録用紙19が搬送されると、つまり記録用紙19が対向位置まで搬送されると、制御部130は、搬送モータ59を停止させることによって記録用紙19を停止させる。なお、制御部130は、光学センサ60からのパルス信号に基づいて、記録用紙19が対向位置に到達したか否かを判断する。
【0074】
本実施形態において、以下のときに、制御部130は、記録用紙19が対向位置に到達したと判断して、当該記録用紙19を停止させる。具体的には、記録用紙19において画像が記録される位置のうち搬送向き15の最も下流側の位置と、画像記録時に使用される複数のノズル40のうち搬送向き15の最も下流側のノズル40とが同位置となったときである。ここで、センサ110は、ノズル40よりも搬送向き15の上流側に設けられている。なお、以下では、画像記録時に使用される複数のノズル40のうち搬送向き15の最も下流側のノズル40を、ノズル40Dと称する。また、センサ110とノズル40Dとの間の搬送方向の距離は、記録用紙19の搬送方向の長さよりも短い。よって、上記のような対向位置に記録用紙19が停止させられた場合、センサ110と対向し得る位置には、記録用紙19の記録面が存在していることになる。
【0075】
記録用紙19が上述したような位置に停止されている場合、後述するステップS120において記録部24が検知位置から主走査開始位置に移動する際に、記録用紙19を搬送させる必要がなくなる。つまり、記録用紙19を搬送させることなく、記録用紙19に対する画像記録を開始することができる。
【0076】
ステップS80において記録用紙19が上述したような位置で停止されたことを条件として、制御部130は、CRモータ80を駆動させて、記録部24をステップS50〜S70において決定された検知位置へ移動させる(S90)。なお、制御部130は、光学センサ35からの検知信号に基づいて、記録部24の移動を制御する。これにより、記録部24を検知位置へ正確に移動させることができる。
【0077】
ステップS90において記録部24が検知位置へ移動されると、制御部130は、センサ110を制御することによって、検知位置に記録用紙19が存在しているか否かを判断する(S100)。例えば、制御部130は、センサ110の発光部から光を照射させて、当該光の反射光の強さを予め設定された閾値と比較する。制御部130は、反射光の強さが閾値以下の場合に、当該光はプラテン42において反射した、つまり記録用紙19が検知位置に存在していないと判断する。一方、制御部130は、反射光の強さが閾値より大きい場合に、当該光はプラテン42に支持された記録用紙19において反射した、つまり記録用紙19が検知位置に存在すると判断する。
【0078】
ステップS100において記録用紙19が検知された場合、制御部130は、記録部24を検知位置から主走査開始位置へ移動させる。そして、制御部130は、記録部24が主走査開始位置へ到達すると、記録部24からインク滴を吐出させる。その後、制御部130は、記録部24からインク滴の吐出と、記録用紙19の所定改行分の搬送とを交互に繰り返させる。つまり、制御部130は、記録用紙19への画像記録を実行する(S120)。以上説明したステップS80〜S120の処理は、本発明の制御手段の一例である。
【0079】
一方、ステップS100において記録用紙19が検知されなかった場合、制御部130は、操作パネル4に、画像記録すべき記録用紙19が記録部24と対向する位置に存在しない旨のメッセージを表示させる(S130)。
【0080】
[実施形態の効果]
本実施形態では、複数種の各記録用紙19それぞれにおいて複数の検知位置が設定されている。そして、制御部130は、ステップS40〜S70において、複数の検知位置のうち、主走査開始位置12よりも移動向き13の上流側の位置をセンサ110による検知位置とする。これにより、記録用紙19への画像記録が開始される際、制御部130は、検知位置の記録部24を、主走査開始位置12に向かって移動向き13に移動させる。そして、記録部24は、主走査開始位置12に到達すると、そのまま移動向き13に移動しつつ、記録用紙19への画像記録を開始する。つまり、本実施形態によれば、記録部24は、主走査開始位置12で一旦停止することなく、記録用紙19への画像記録を開始することができる。よって、本実施形態によれば、記録部24の停止回数を減らすことにより、記録用紙19への画像記録に要する時間を低減することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、ステップS40において検知位置の数が2個以上の場合にステップS50が実行されることにより、センサ110による記録用紙19の有無の検知を早期に実行することができる。
【0082】
また、本実施形態によれば、ステップS40において検知位置の数が0個の場合にステップS70が実行されることにより、記録部24が検知位置を経て主走査開始位置12に移動するために要する距離を短くすることができる。これにより、記録用紙19の画像記録の終了時期を早めることができる。
【0083】
また、本構成によれば、制御部130は、記録用紙19が対向位置に到達したことを条件として、センサ110による記録用紙19の有無を検知する。これにより、記録用紙19が対向位置に未だ到達していない状態で、センサ110による記録用紙19の検知が実行されることによる誤検知の発生を防止することができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、2つの検知位置が中心線16に対して線対称の関係である。これにより、2つの検知位置のうちの一方が主走査開始位置12よりも移動向き13の上流側となり、2つの検知位置のうちの他方が主走査開始位置12よりも移動向き13の下流側となる可能性が高くなる。
【0085】
[変形例1]
上述の実施形態においては、ステップS80において記録用紙19が対向位置に到達したことを条件として、制御部130は、記録部24をステップS50〜S70において決定された検知位置へ移動させていた(S90)。しかし、ステップS80及びステップS90は、並列に実行されてもよい。つまり、制御部130は、給紙トレイ20に載置された記録用紙19を対向位置に向けて搬送させながら、記録部24を検知位置へ向けて移動させてもよい。換言すると、制御部130は、記録用紙19が対向位置に到達するまでに、記録用紙19をステップS50〜S70において決定された検知位置へ移動させてもよい。以上のような制御部130の処理も、上述の実施形態と同様に、本発明の第1制御手段の一例である。
【0086】
変形例4によれば、制御部130は、記録用紙19が対向位置に到達するまでに、記録部24を検知位置に移動させる。これにより、記録用紙19の搬送と記録部24の移動とを並行して実行できる。その結果、給紙ローラ25及び搬送ローラ対89による記録用紙19の搬送が開始されてから、記録部24による当該記録用紙19への画像記録が終了するまでに要する時間を短くすることができる。
【0087】
[変形例2]
上述の実施形態では、ステップS80において、制御部130は、記録用紙19における画像が記録される位置のうち搬送向き15の最も下流側の位置と、ノズル40Dとが同位置となったとき、記録用紙19を停止させた。
【0088】
しかし、ステップS80において、制御部130は、記録用紙19における画像が記録される位置のうち搬送向き15の最も下流側の位置が、ノズル40Dよりも搬送向き15の上流側となるように、記録用紙19を停止させてもよい。例えば、記録用紙19は、ステップS80において、搬送向き15の下流端部(例えば下流端よりも3mmだけ上流側)と、センサ110とが同位置となるように、停止させられてもよい。
【0089】
記録用紙19がステップS80において上記のような位置に停止されている場合、ステップS100の後に、記録用紙19がステップS80における停止位置から更に搬送向き15の下流側へ搬送されるステップが追加される。具体的には、追加された当該ステップにおいて、記録用紙19は、その搬送向き15の下流端部がセンサ110と同位置となっている位置から、その搬送向き15の下流端部がノズル40Dと同位置となる位置まで、搬送される。
【0090】
そして、追加されたステップが実行された後に、記録用紙19に対する画像記録が実行される(S120)。なお、追加されたステップは、ステップS100とステップS110の間ではなく、ステップS110とステップS120の間において実行されてもよい。
【0091】
[変形例3]
上述の実施形態においては、制御部130は、検知位置の数を2個以上と判断した場合(S40:2個以上)、これら2個以上の検知位置から、記録部24の現在位置に最も近い検知位置を選択した(S50)。しかし、上記の場合であっても、記録部24の現在位置に最も近い検知位置が上記現在位置よりも移動向き13の上流側である場合には、制御部130は、これら2個以上の検知位置から、主走査開始位置12に最も近い検知位置を選択してもよい。なお、記録部24の現在位置に最も近い検知位置が上記現在位置よりも移動向き13の上流側である場合としては、例えば、図7(A)において、記録部24の現在位置が中間位置103と検知位置17Aとの間である場合である。
【0092】
主走査開始位置12よりも移動向き13の上流側の検知位置が複数存在し、且つ記録部24の現在位置に最も近い検知位置が当該現在位置よりも移動向き13の上流側である場合に、制御部130が当該検知位置をステップS100においてセンサ110が記録用紙19の有無を検知する際の検知位置とすると、記録部24は、センサ110による検知のために主走査開始位置12から離れるように移動してしまう。その結果、記録用紙19の画像記録の開始時期が遅くなってしまう。そこで、変形例3によれば、上記のような場合に、制御部130は、主走査開始位置12に最も近い位置をセンサ110による検知位置とする。これにより、記録用紙19の画像記録の開始時期を早くすることができる。
【符号の説明】
【0093】
1・・・複合機
2・・・プリンタ部(画像記録装置)
9・・・左右方向(主走査方向)
19・・・記録用紙(シート)
20・・・給紙トレイ(トレイ)
24・・・記録部
25・・・給紙ローラ(搬送部)
29・・・サイドガイド
89・・・搬送ローラ対(搬送部)
92・・・排紙ローラ対(搬送部)
110・・・センサ
130・・・制御部
132・・・ROM(記憶部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10