(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定条件は、記録指令に基づく1以上の記録媒体に対する画像記録が終了するとともに当該記録指令に続く新たな記録指令がないことであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
前記所定条件は、複数の記録媒体への連続画像記録中において次回搬送される記録媒体の前記一方向に関する幅が今回搬送された記録媒体よりも大きくなることであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
先ず、
図1を参照し、本発明の液体吐出装置の一実施形態であるインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
【0020】
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部4が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、第1給紙部23及び第2給紙部17から排紙部4に向かう用紙搬送経路が形成されており、
図1に示す黒太矢印に沿って用紙Pが搬送される。空間Aでは、第2給紙部17から搬送経路への給紙、用紙Pへの画像形成、用紙Pの排紙部4への搬送が行われる。空間Bでは、第1給紙部23から搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aのヘッド1に対してインクが供給される。
【0021】
空間Aには、ブラックインクを吐出するヘッド1、搬送機構40、用紙Pをガイドする2つのガイド部10a,10b、第2給紙部17、用紙センサ26、環境センサ29(
図6参照)、ヘッド昇降機構33(
図6参照)、ワイパユニット36(
図9参照)、クリーナユニット37、及び、制御部100等が配置されている。なお、環境センサ(検出手段)29は、ヘッド1近傍に配置されており、ヘッド1周囲の温度及び湿度を検出する。
【0022】
ヘッド1は、ヘッドホルダ5を介して筐体101aに支持されている。ヘッド1の下面は、複数の吐出口108(
図3参照)が配列された吐出面1aである。ヘッドホルダ5は、吐出面1aと搬送ベルト43との間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド1を保持している。
【0023】
ヘッド1は、ヘッド本体3(
図2参照)に加えて、リザーバユニット、フレキシブルプリント配線基板(FPC)、制御基板等が積層された積層体である。制御基板で調整された信号は、FPC上のドライバICで駆動信号に変換され、さらにアクチュエータユニット21に出力される。アクチュエータユニット21が駆動されると、リザーバユニットから供給されたインクが、吐出口108から吐出されることになる。
【0024】
搬送機構40は、2つのベルトローラ41,42と、搬送ベルト43と、プラテン46と、ニップローラ47と、剥離プレート45とを有している。搬送ベルト43は、両ローラ41,42の間に巻回されたエンドレスのベルトである。プラテン46は、ヘッド1に対向配置され、搬送ベルト43の上側ループを内側から支える。ベルトローラ42は、駆動ローラであって、搬送ベルト43を走行させる。ベルトローラ42は、図示しないモータによって、
図1中時計回りに回転される。ベルトローラ41は、従動ローラであって、搬送ベルト43の走行によって回転される。ニップローラ47は、第1給紙部23及び第2給紙部17から搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト43の外周面に押さえ付ける。用紙Pは、シリコン層(弱粘着性の外周面被覆層)によって搬送ベルト43に保持され、ヘッド1に向かって搬送される。剥離プレート45は、搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト43から剥離し、下流側の排紙部4へと導く。
【0025】
2つのガイド部10a,10bは、搬送機構40を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部10aは、2つのガイド31a,31bと送りローラ対32とを有し、第1給紙部23と搬送機構40とを繋ぐ。また、ガイド31bの途中部位には、ガイド18が接続されており、第2給紙部17と搬送機構40も繋ぐ。画像形成用の用紙Pが、搬送機構40に向けて搬送される。搬送方向下流側のガイド部10bは、2つのガイド33a,33bと2つの送りローラ対34,35とを有し、搬送機構40と排紙部4とを繋ぐ。画像形成後の用紙Pが、排紙部4に向けて搬送される。
【0026】
用紙センサ26は、ヘッド1の上流側に配置され、搬送される用紙Pの先端を検知する。このとき出力された検知信号は、ヘッド1と搬送機構40との駆動の同期に用いられ、所望の解像度と速度で画像が形成されることになる。
【0027】
ヘッド昇降機構33は、ヘッドホルダ5を昇降させ、ヘッド1が印刷位置と退避位置の間で移動する。印刷位置では、
図1に示すように、ヘッド1が搬送ベルト43と印刷に適した間隔で対向する。退避位置では、ヘッド1が搬送ベル43から印刷位置以上の間隔で離隔する(
図9(c)参照)。退避位置では、ヘッド1と搬送ベルト43との間の空間を、後述するワイパ36aが移動可能である。
【0028】
ワイパユニット36は、
図9に示すように、ワイパ36a、これを支持する基部36bおよびワイパ移動機構27とを有している。ワイパ36aは、板状の弾性部材(例えば、ゴム)であり、吐出面1aの幅より若干長い。基部36bは、副走査方向を長手方向とする直方体であって、両端に孔が形成されている。孔は、基部36bを主走査方向に貫通し、一方の内面には雌ねじが形成されている。
【0029】
ワイパ移動機構27は、主走査方向に延びた一対のガイド(例えば、丸棒)28と駆動モータ(不図示)とから構成される。一対のガイド28は、孔に貫挿された棒部材であって、ヘッド1の側面を副走査方向両側から挟む。一方のガイド28は、外周面に雄ねじが形成され、孔の雌ねじと螺合している。このガイド28は、駆動モータの回転力を受ける。他方のガイド28は、他の孔の内周面と摺動する。
【0030】
駆動モータの正及び逆回転によって、基部36bがガイド28に沿って往復移動する。
図9(a)に示すように、ヘッド1の左側端部近傍は、基部36bの待機位置である。ワイピング時は、
図9(b)に示すように、払拭位置のヘッド1に対して、ワイパ36aが図中右方に移動して、吐出面1aを払拭する。払拭位置は、印刷位置と退避位置との間にある。この後、
図9(c)に示すように、ヘッド1の退避位置への移動を待って、ワイパ36aは待機位置に戻される。
【0031】
クリーナユニット37は、洗浄液塗布部材37a、ブレード37b及び移動機構37c(
図6参照)を有し、搬送ベルト43の外周面をクリーニングする。クリーナユニット37は、
図1に示すように、搬送ベルト43の右下方であって、ベルトローラ42に対向して配置されている。洗浄液塗布部材37aは、多孔質体(例えば、スポンジ)とこれを支持する支持部材から構成され、ブレード37bは、板状弾性部材(例えば、ゴム)で構成される。共に、搬送ベルト43を全幅に亘って接触可能である。移動機構37cは、洗浄液塗布部材37a及びブレード37bを搬送ベルト43の外周面に離接させる。クリーニング動作において、多孔質体から外周面に洗浄液が塗布され、下流側のブレード37bにより汚れや洗浄液が外周面から掻き取られる。
【0032】
第2給紙部17は、手差トレイ15及び給紙ローラ16を有し、ガイド18を介してガイド31bの途中部位に合流している。手差トレイ15は、筐体101aに回動可能に支持された板状部材であり、所定サイズ(例えば、B5サイズ)の用紙P2が載置される。給紙ローラ16は、制御部100の制御により、手差トレイ15上で最も上方の用紙P2を送り出す。ここで、手差トレイ15は、筐体101aに形成された開口に収容可能で、開口に収容されて、筐体101aの側壁を構成する。
【0033】
空間Bには、第1給紙部23が配置されている。第1給紙部23は、給紙トレイ24及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ24が、筐体101aに対して着脱可能となっている。給紙トレイ24は、上方に開口する箱であり、複数の用紙P1を収納可能である。本実施形態においては、A4サイズの用紙P1を収納可能である。給紙ローラ25は、制御部100の制御により、給紙トレイ24内で最も上方の用紙P1を送り出す。
【0034】
ここで、副走査方向とは、搬送機構40によって搬送される用紙搬送方向Dと平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0035】
空間Cには、ブラックインクを貯留するカートリッジ22が筐体101aに着脱可能に配置されている。カートリッジ22は、ヘッド1にチューブ(不図示)及びポンプ38(
図6参照)を介して接続されている。なお、ポンプ38(排出手段の一部)は、ヘッド1にインクを強制的に送るとき以外は停止状態にあり、ヘッド1へのインク供給を妨げない。
【0036】
次に、制御部100について説明する。制御部100は、プリンタ101各部の動作を制御してプリンタ101全体の動作を司る。制御部100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から供給された印刷信号に基づいて、画像形成動作を制御する。具体的には、制御部100は、用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作等を制御する。
【0037】
制御部100は、例えば、A4サイズの用紙P1に印刷を行う印刷信号を外部装置から受信した場合、当該印刷信号に基づいて、第1給紙部23、搬送機構40、及び、各送りローラ対32,34,35の駆動を制御する。給紙トレイ24から送り出された用紙Pは、上流側ガイド部10aによりガイドされ、搬送機構40に送られる。搬送機構40によって搬送される用紙P1は、ヘッド1のすぐ下方を通過する際に、インクが吐出される。これにより、用紙P1上に所望の画像が形成される。画像が形成された用紙P1は、搬送ベルト43から剥離された後、下流側ガイド部10bにより筐体101a上部の排紙部4に排出される。なお、第2給紙部17を用いる印刷を行う場合は、第2給紙部17から搬送機構40に用紙P2が送り出され、これ以外は上述と同様な制御が行われる。
【0038】
また、制御部100は、メンテナンス動作も制御する。メンテナンス動作では、ヘッド1のインク吐出特性の回復・維持や印刷に係わる準備が行われる。メンテナンス動作には、インク排出動作、吐出面1aのワイピング(払拭)動作、搬送ベルト43のクリーニング動作等が含まれる。
【0039】
インク排出動作(液体排出動作)には、パージ及び吐出フラッシング動作がある。パージ動作では、ポンプ38が駆動されて、すべての吐出口108に対し、インクが強制的に送られる。このとき、アクチュエータは駆動されない。吐出フラッシング動作では、アクチュエータが駆動されて、吐出口108からインクが吐出される。インク吐出は、吐出フラッシングデータ(画像データと異なるデータ)に基づいて行われる。ワイピング動作では、吐出面1aがワイパ36a(
図9参照)によって払拭される。ワイピング動作は、パージ動作後に行われ、吐出面1a上の残留したインクなどの異物が取り除かれる。また、クリーニング動作では、搬送ベルト43がクリーナユニット37によって払拭される。クリーニング動作は、パージ及び吐出フラッシング動作後に行われ、搬送ベルト43上のインクなどの異物が除去される。
【0040】
次に、
図2〜
図5を参照しつつヘッド1について詳細に説明する。
図3では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
【0041】
流路ユニット9は、
図4に示すように、ステンレス製の9枚の金属プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の上面には、
図2に示すように、計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、
図2〜
図4に示すように、インク供給口105bを一端とするマニホールド流路105、及び、マニホールド流路105から分岐した複数の副マニホールド流路105aが形成されている。さらに、各副マニホールド流路105aの出口からアパーチャ112及び圧力室110を経て吐出口108に至る複数の個別インク流路132が形成されている。流路ユニット9の下面は、吐出面1aであって、多数の吐出口108がマトリクス状に配置されている。これら吐出口108は、主走査方向に所定の距離ずつ離れて並んでいる。
【0042】
リザーバユニットは、流路ユニット9と同様に、インク流路が形成された流路部材である。インク流路のリザーバには、流路ユニット9へのインクが貯留される。
図2〜
図4に示すように、リザーバユニットのインクは、インク供給口105bから流路ユニット9内に供給される。なお、ポンプ38は、リザーバユニットを介して流路ユニット9にインクを強制的に供給する。
【0043】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。アクチュエータユニット21は、流路ユニット9の上面に固定されて、ヘッド本体3を構成する。
図2に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に千鳥状に配置されている。
【0044】
アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックス製であり、3枚の圧電層161〜163から構成されたピエゾ式アクチュエータである。最上層の圧電層161は、厚み方向に分極され、上面の個別電極135及び下面全体の共通電極134に挟まれている。
図5に示すように、個別電極135は、大部分が圧力室110と対向し、平面視で圧力室外の一部が個別ランド136と接続している。この形態が、圧力室110毎に形成され、それぞれが個別のアクチュエータ(エネルギー付与手段:排出手段の一部)として働く。つまり、アクチュエータユニット21には、圧力室110に対応した数のアクチュエータが作り込まれており、それぞれ圧力室110内のインクに選択的な吐出エネルギーを与える。
【0045】
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。各アクチュエータは、いわゆるユニモルフ型アクチュエータである。圧電層161の両電極134、135で挟まれた部分は、分極方向に電界が印加されると、分極方向と直交する方向(平面方向)に縮む。このとき、下の圧電層162、163との間で歪み差が生じるので、個別電極135と圧力室110で挟まれた部分が、圧力室110側に向かって突出する。これに伴い、圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、吐出口108からインク滴が吐出される。
【0046】
なお、本実施形態においては、個別電極135の電位が、予め所定の電位が付与されているところ、駆動信号が供給されて、一旦グランド電位となり、その後の所定のタイミングで再び所定電位に復帰する。いわゆる、引き打ち駆動である。グランド電位となるタイミングでは、圧力室110の容積増大に伴い、圧力室110内にインクが吸い込まれる。続く所定電位への復帰では、圧力室110の容積減少(インク圧力の上昇)により、吐出口108からインク滴が吐出される。
【0047】
次に、
図6を参照しつつ、制御部100について説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御部100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。
図6に示すように、制御部100は、搬送制御部141と、画像データ記憶部142と、データ書込部143と、ヘッド制御部144と、判定部145と、排出量導出部146と、累積部148と、メンテナンス制御部150と、カウント部157とを有している。
【0048】
搬送制御部141は、外部装置から受信した印刷信号に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、第1給紙部23、第2給紙部17、ガイド部10a,10b及び搬送機構40の各動作を制御する。本実施形態では、ユーザによって、第1給紙部23に大サイズの用紙P1がセットされ、第2給紙部17に小サイズの用紙P2がセットされる。なお、用紙P1のサイズが用紙P2よりも大きければ、用紙P1はA4サイズに限らないし、用紙P2もB5サイズに限らない。
【0049】
ヘッド制御部144は、インクの吐出に際して、アクチュエータユニット21に含まれる各アクチュエータの駆動を制御する。ヘッド制御部144は、駆動データ記憶部144a及び駆動部144bを含む。駆動データ記憶部144aは、各アクチュエータの駆動形態を指示する駆動データ(後述の、画像データや吐出フラッシングデータ)を記憶する。駆動部144bは、ドライバICを含み、駆動データに基づいて、各アクチュエータを駆動する駆動信号を出力する。ヘッド制御部144は、用紙センサ26の出力に基づいて、用紙Pの搬送と同期したタイミングで駆動信号を出力する。
【0050】
画像データ記憶部142は、外部装置からの印刷信号に含まれる画像データを記憶する。画像データは、各吐出口108について、ドットサイズ(ゼロ、小、中、大の4段階のいずれか)やドット形成位置等を複数の印字周期にわたって示すものである。なお、1印字周期は、ヘッド1と用紙Pとが、用紙の搬送方向における印刷の解像度に対応した単位距離だけ相対移動するのに要する時間である。また、本実施形態では、ドットサイズの大、中、小は、吐出総量15pl、10pl、5plのインクでそれぞれ形成される。
【0051】
データ書込部143は、画像データ記憶部142に記憶された画像データを、ヘッド制御部144の駆動データ記憶部144aに書き込む。これにより、ヘッド制御部144は、画像データに基づいて、各アクチュエータの駆動を選択的に制御可能となる。
【0052】
判定部(出力手段)145は、印刷信号に基づく印刷が開始された後に、第1〜第3条件のいずれかが満たされているかを判定し、満たされたときにメンテナンス信号を出力する。第1条件は、「複数の用紙Pへの連続印刷中において印刷枚数(ページ単位で行われる印刷のページ数)が所定枚数に到達したか」である。これにより、印刷されたページ数が所定数に達するとメンテナンス信号が出力される。第1条件に対する判定は、カウント部157による通算印刷枚数の計数結果に基づく。所定枚数が計数されたとき、判定部145は第1条件の充足と判定し、カウント部157はカウント数をリセットする。なお、ここでいう連続印刷とは、一の印刷信号による複数の用紙P(複数ページ)に対する印刷、及び、複数の印刷信号(1ページへの印刷を実行する印刷信号)によって連続して行われる場合も含む。
【0053】
第2条件は、「連続印刷中において次回搬送される用紙Pが今回搬送された用紙P2よりも大きい用紙P1であるか」である。これにより、用紙Pの幅が小から大に変化するときにメンテナンス信号が出力される。第2条件に対する判定は、判定部145による連続した印刷信号間の比較結果に基づく。印刷信号には、用紙サイズを指示する情報が含まれる。今回より次回印刷時の用紙サイズが大きいとき、判定部145は第2条件の充足と判定し、カウント部157はカウント数をリセットする。
【0054】
第3条件は、「印刷信号に基づく印刷(1ページ以上)が終了しこの印刷信号に続く新たな印刷信号を受信していないか」である。このときは、判定部145が、印刷信号の受信状態で第3条件が満たされているか否かを判定する。これにより、印刷信号に基づいて印刷が終了するときにメンテナンス信号が出力される。第3条件が満たされていると判定されると、カウント部157はカウント数をリセットする。
【0055】
累積部(累積手段)148は、記憶部148aと、選択部148bとを有する。記憶部148aには、表1に示すように、温度及び湿度に対応した複数の乾燥指数が記憶されている。乾燥指数は、吐出口108における乾燥の進み具合に関する比率の形で表された大小関係であって、特定の温度及び湿度の範囲(例えば、温度範囲:25℃以上から33℃未満、及び湿度範囲:30%以上から60%未満)での乾燥の進み具合を基準とし、ここでの乾燥指数を「1」とした。複数の乾燥指数は、これを基準にして設定されている。例えば、温度範囲は5水準、湿度範囲は3水準が用意されている。具体的には、温度範囲の5水準とは、0℃以上から5℃未満、5℃以上から18℃未満、18℃以上から25℃未満、25℃以上から33℃未満、33℃以上である。湿度範囲の3水準とは、0%以上から30%未満、30%以上から60%未満、60%以上である。同じ水準の温度範囲において、湿度が低下すると、乾燥指数は増加する。同じ水準の湿度範囲において、温度が上昇すると、乾燥指数も増加する。また、温湿度範囲が異なっても、乾燥の進み具合が同等であれば、指数=1である。
【0056】
環境センサ29は、所定時間毎(例えば、1秒毎)に温度及び湿度を検出し、制御部100に出力する。選択部148bは、環境センサ29から検出信号が出力される度に、対応する乾燥指数を記憶部148aから選択する。この選択動作は、判定部145からメンテナンス信号が出力されるまで継続される。この間、累積部148は、選択された乾燥指数を累積し、累積乾燥指数として一時的に記憶する。累積乾燥指数は、排出量導出部146がインク排出量を導出した時点で、リセットされる。なお、選択部148bによる選択動作の開始は、印刷動作の開始時からである。より具体的には、吐出面1aがこれを被覆するキャップから解放されると、選択動作が始まる。
【0058】
排出量導出部(排出量導出手段)146は、記憶部146aと、選択部146bとを有する。記憶部146aには、累積乾燥指数と、これに対応したインク排出量が記憶されている。累積乾燥指数が所定量増加する毎に、1つのインク排出量が関連づけられている。選択部146bは、累積部148に記憶された累積乾燥指数に基づいて、記憶部146aから対応するインク排出量を選択する。排出量導出部146は、このインク排出量を、各吐出口108からのインク排出量として導出する。
【0059】
記憶部146aには、累積乾燥指数に加えて、補正乾燥指数、及びこれに対応したインク排出量が記憶されている。補正乾燥指数も、累積乾燥指数と同様に、所定量増加する毎に、1つのインク排出量が関連づけられている。補正乾燥指数は、用紙のサイズに関係し、サイズ拡大時に用いられる。サイズ拡大に際して、補正乾燥指数が直前の印字領域に対して適用され、累積乾燥指数がそれ以外の領域に対して適用される。これにより、切り替わった大サイズ用紙Pへの印字では、最初の用紙Pから、累積乾燥指数及び補正乾燥指数の適用領域間で、印字品質に差が生じない。なお、各領域は、領域決定部(後述)153により設定される。本実施の形態では、補正乾燥指数は、累積乾燥指数に対して所定の割合(例えば、50%)で小さく設定されている。判定部145がメンテナンス信号を出力したとき、選択部146bは、この信号に適応した累積乾燥指数や補正乾燥指数から、インク排出量を選択することになる。
【0060】
排出量導出部146は、選択部146bで選択された累積乾燥指数や補正乾燥指数から、判定部145での充足条件に合ったインク排出量を導出する。導出された排出量は、1つの吐出口からの排出量に相当する。第1及び第3条件の充足時は、累積乾燥指数に対応して、インク排出量が設定される。第2条件の充足時には、直前の印字領域に対応して補正乾燥指数が、それ以外の領域に対応して累積乾燥指数が、それぞれ採用される。さらに、各乾燥指数に対応して、インク排出量が導出される。
【0061】
メンテナンス制御部(制御手段)150は、データ作成部151と、排出量判定部158とを有する。データ作成部151は、吐出フラッシングデータの生成と書き込みを行う。データの書き込み先は、駆動データ記憶部144aである。データ作成部151は、排出データ作成部152と、領域決定部153とを有している。排出データ作成部152は、各部の協働により、吐出フラッシングデータを生成する。吐出フラッシングデータは、吐出口108毎の吐出フラッシング動作を指示する。これにより、ヘッド制御部144は、吐出フラッシングデータに基づいて、各アクチュエータの駆動制御が可能となる。なお、吐出フラッシングデータによる予備吐出(吐出フラッシング)は、搬送ベルト43上に行われる。また、予備吐出における吐出回数は、排出量導出部146の導出したインク排出量に基づいて設定され、各回の吐出には小ドット(液滴量5pl)が採用されている。本実施形態では、吐出フラッシングデータの書き込み段階で、データ作成部151によって、画像データとの合成データとして書き込まれる。この合成データが、駆動データとなる。
【0062】
領域決定部153は、
図7に示すように、ヘッド1の吐出面1aについて、用紙P2(B5サイズ)と対向する領域91と、対向しない領域92とを決定する。領域91内では、主走査方向に関して両端の吐出口108が、用紙P2における印字領域の両端縁と対向する。領域決定処理は、小さいサイズの用紙P2に対する印刷信号に基づく。本実施形態においては、吐出面1aで両端の吐出口108は、用紙P1の幅方向両端に対向する。つまり、ヘッド1は、縁なし全面印刷可能な最大用紙サイズが、A4サイズとなっている。
【0063】
ここで、排出データ作成部152は、充足された条件別に、吐出フラッシングデータを作成する。第1及び第3条件の充足時は、排出量導出部146の導出したインク排出量が全ての吐出口に割り当てられる。第2条件の充足時には、領域別の2つのインク排出量が、領域決定部153の決定結果に従って、各吐出口に割り当てられる。
【0064】
排出量判定部158は、排出量導出部146によって導出されたインクの総排出量が、所定量以下であるか否かを判定する。所定量以下の場合、メンテナンス制御部150は、データ作成部151が生成した吐出フラッシングデータを駆動データ記憶部144aに出力する。インク排出動作としては、吐出フラッシング動作が行われる。所定量を超える場合、メンテナンス制御部150は、吐出フラッシングデータの出力を破棄し、代わりにパージ及びワイピング動作を行うように、ポンプ38、ヘッド昇降機構33及びワイパユニット36を制御する。
【0065】
また、メンテナンス制御部150は、吐出フラッシング及びパージ動作のいずれかが行われた後に、搬送ベルト43のクリーニング動作を行う。このとき、メンテナンス制御部150は、移動機構37cを制御して、洗浄液塗布部材37a及びブレード37bを当接位置に移動させ、搬送機構40を制御して、搬送ベルト43を時計回りに走行させる。このとき、ベルトの走行速度は、印刷時の搬送速度より小さい。これにより、搬送ベルト43の外周面に洗浄液が均一に塗布され、外周面上のインクなどの異物が、洗浄液と共にブレード37bに確実に掻き取られる。
【0066】
次に、
図8を参照し、印刷実行時のメンテナンス動作について説明する。なお、
図8に示す動作フローの開始時における状態は、例えば、100枚の用紙P2の連続印刷を示す印刷信号を受信した状態である。この印刷信号に続いて、50枚の用紙P2の連続印刷が行われた後、50枚の用紙P1の連続印刷を示す新たな印刷信号を受信する場合の制御フローについて説明する。
【0067】
まず、データ書込部143により、画像データ記憶部142の画像デ−タが、駆動データ記憶部144aに書き込まれる(ステップF1)。次に、ステップF2においては、用紙P2への連続印刷が開始される。つまり、搬送制御部141が、第2給紙部17、搬送機構40及びガイド部10bを駆動する。これにより、用紙P2が、手差トレイ15から順次送り出されて、搬送機構40及びガイド部10bによって搬送される。そして、用紙P2に対する印刷処理が行われる。また、印刷の開始と同時に、カウント部157のカウント数がリセットされ、印刷の進行に伴ってカウント数が繰り上げられる。
【0068】
次に、ステップF3において、判定部145が、カウント部157のカウント数を参照して、印刷枚数が所定枚数(例えば、200枚)に達したか否かを判定する。これは、上述の第1条件に対する判定である。所定枚数に達した場合は、ステップF9に進む。所定枚数に達していない場合は、ステップF4に進む。なお、印刷信号が200枚以上の印刷を指示しておれば、印刷枚数が200枚に到達した時点でステップF9に進む。
【0069】
ステップF4においては、判定部145が、次回搬送される用紙が今回搬送される用紙よりも大きいか否かを判定する。上述の第2条件に対する判定である。例えば、用紙P1が次回搬送されるか否か判定する。用紙P1が次回搬送される場合は、ステップF9に進む。一方、引き続き用紙P2が搬送される場合は、ステップF5に進む。
【0070】
ステップF5においては、判定部145が、今回の印刷信号における印刷(100枚の用紙P2に対する印刷)が終了したか否かを判定する。印刷が終了していない場合は、ステップF6に進む。印刷が終了した場合は、ステップF8に進む。
【0071】
ステップF6においては、環境センサ29が温度・湿度を検出し、制御部100に出力する。なお、ステップF6の処理は、1秒毎に繰り返される。ステップF3〜ステップF5の処理は、ステップF6と同じ周期内で処理される。この環境センサ29の検出結果に基づいて、累積部148が、乾燥指数を累積する(ステップF7)。この後、ステップF3に戻る。
【0072】
ステップF8においては、判定部145が、新たな印刷信号を受信しているか否かを判定する。これは、上述の第3条件に対する判定である。新たな印刷信号を受信していない場合は、ステップF9に進む。新たな印刷信号を受信している場合は、ステップF1に戻る。このとき、データ書込部143により、新たな印刷信号における画像データが、駆動データ記憶部144aに書き込まれる。さらに、ステップF2に進み、引き続き連続印刷が継続される。この後、ステップF3〜ステップF7が繰り返され、最終的には、ステップF9に進む。
【0073】
ステップF9においては、判定部145からメンテナンス信号が出力される。出力内容は、上述の3条件の充足具合により異なり、第1及び第3条件の充足時(ステップF3及びステップF6からの移行時)は、印字領域に関係しないインク排出量の導出が指示される。具体的には、第1条件の充足時は、所定枚数の印刷完了に対応した排出量の導出が指示される。第3条件の充足時には、全ての印刷信号に対する処理完了時の印刷枚数に対応した排出量の導出が指示される。第2条件の充足時(ステップF4からの移行時)には、印字領域別のインク排出量の導出が指示される。いずれの場合も、カウント部157は、カウント数をリセットする。
【0074】
次に、ステップF10において、排出量導出部146が、累積部148による累積値に基づいて、インク排出量を導出する。このとき、累積部148は、乾燥指数の累積値をリセットする。この後、排出量判定部158が、導出されたインク排出量が所定量以下であるか否かを判定する(ステップ11)。インク排出量が所定量を超えるとき、排出量判定部158は、メンテナンス制御部150に吐出フラッシングデータの出力を破棄させ、ステップF12に進む。一方、インク排出量が所定量以下のとき、排出量判定部158は、メンテナンス制御部150の吐出フラッシングデータの出力をさせ、ステップ13に進む。
【0075】
ステップF12においては、パージ及びワイピング動作が行われる。このとき、印刷信号による連続印刷が終了していない場合(例えば、ステップF3及びステップF4からステップF9に進んできた場合)は、搬送制御部141が用紙Pの給紙を一時的に中断する。パージ及びワイピング動作は、メンテナンス制御部150によるポンプ38、ワイパ移動機構27、ヘッド昇降機構33の制御により、
図9(a)、(b)、(c)に示す順に行われる。
図9(a)において、ヘッド1は、印刷位置にあって、ポンプ38によりインクが圧送される。所定量のインクが、吐出面1aから搬送ベルト43上に排出(パージ動作)される。この後、
図9(b)に示すように、ヘッド1の払拭位置への移動と、これに続くワイパ36aの移動(ワイピング動作)が行われる。吐出面1aが、ワイパ36aにより払拭される。図中の矢印は、払拭方向を示す。払拭完了後、
図9(c)に示すように、ヘッド1の退避位置への上昇及び印刷位置への下降と、ワイパ36aの待機位置への戻りが行われる。ワイパ36aは、ヘッド1が退避位置にあるとき、待機位置に戻る。この後、ステップF14に進む。
【0076】
ステップF13においては、吐出フラッシング動作が行われる。このときも、印刷信号による連続印刷が終了していない場合は、搬送制御部141が用紙Pの給紙を一時的に中断する。ヘッド制御部144が、吐出フラッシングデータに基づいて、各アクチュエータを駆動し、すべての吐出口108から搬送ベルト43上にインク滴が吐出される(吐出フラッシング動作)。
【0077】
本実施形態においては、予備吐出の形態が、上述の3条件の充足具合により異なる。第1条件の充足時(ステップF3からの移行時)は、全ての吐出口108から同数のインク滴が吐出される。第3条件の充足時(ステップF6からの移行時)も、同様であるが、印刷枚数で調整された分、吐出されるインク滴数は第1条件充足時より少ない。第2条件の充足時(ステップF4からの移行時)には、印字領域別に吐出インク滴数が異なる。領域92に対応する吐出口108からは、領域91に対応する吐出口108よりも多く吐出される。この後、ステップF14に進む。
【0078】
本実施形態では、吐出フラッシング動作においても、連続印刷が終了していない場合は用紙搬送を中断しているが、搬送される用紙間に吐出フラッシングを行ってもよい。この場合、搬送ベルト43上の吐出フラッシング領域をはずして、用紙Pを搬送すればよい。こうすることで、用紙Pの裏面にインクが付着するのを抑制することが可能となる。また、この場合は、後述のステップF14は、連続印刷が終了してから行えばよい。
【0079】
ステップF14においては、搬送ベルト43の洗浄液による清浄化(クリーニング動作)が行われる。メンテナンス制御部150が、移動機構37cを制御して洗浄液塗布部材37a及びブレード37bを当接位置に移動させるとともに、搬送制御部141を介して搬送機構40を制御し、搬送ベルト43を走行させる。これにより、搬送ベルト43の外周面に洗浄液が塗布され、外周面上の排出インクが、洗浄液と共にブレード37bに掻き取られる。
【0080】
この後、ステップF15において、制御部100が、メンテナンス信号が出力された時点での印刷信号による印刷が完了しているか否かを判定する。印刷が途中、つまり、用紙搬送が中断されている場合はステップF16に進む。ステップF16において、用紙搬送を再開し、ステップF3に戻る。一方、印刷が完了している場合は制御フローが終了する。
【0081】
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ101によると、インク排出動作(パージ及び吐出フラッシング動作)による吐出口108のインク排出量は、印刷(画像記録)が開始されてからメンテナンス信号が出力される(インク排出動作を行う直前)までの温度及び湿度履歴が反映されたものとなる。このため、印刷信号に係る印刷開始前に予め設定されたインク排出量におけるよりも、インク排出動作を行う直前の周辺環境に応じたインク排出量となり、適切なインク排出動作を行うことが可能となる。この結果、吐出性能が安定し、画像品質の低下を抑制することが可能となる。
【0082】
また、吐出フラッシング動作においては、全ての吐出口108に対する予備吐出が行われる。印刷対象用紙Pのサイズが前後で拡大するときには、領域別にインク排出量が設定される。領域92では、領域91よりも排出量が多い。このとき、排出量の差は、環境センサ29が検出した温度及び湿度に基づくが、印刷枚数によっても調整される。この調整された排出量の差によって、用紙サイズが切り替わったとき、サイズの大きい用紙Pでの印字品質に対して、サイズ変更前での吐出の履歴の影響が抑制される。サイズ変更後であっても、用紙P内で、場所によらず印字品質が均一なものとなる。
【0083】
また、メンテナンス制御部150は、排出量判定部158の判定に基づいて、パージ動作及び吐出フラッシング動作のいずれかを選択する。つまり、排出量導出部146が導出したインク排出量が、所定量以下の場合は吐出フラッシング動作を行い、所定量を超える場合はパージ動作を行う。このため、吐出口108近傍のインクの乾燥が進んでいても、パージ動作によって確実に吐出口108からの吐出性能を回復させることが可能となる。
【0084】
また、ワイパユニット36を有していることで、パージ動作によって吐出面1aに付着したインクなどの異物をワイパ36aで払拭することが可能となる。このため、吐出面1aに異物が残存しなくなり、吐出口108からのインク吐出特性が安定する。
【0085】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、本実施形態においては、第1〜第3条件のいずれかが満たされたときに、メンテナンス信号が出力されているが、条件は1つだけでよく、単にその1つの条件だけが満たされたときに、メンテナンス信号が出力されてもよい。この場合、制御が簡単になる。また、吐出口108からのインク排出量は、排出量導出部146だけによって決められていてもよい。つまり、領域決定部153が設けられていなくてもよい。こうすれば、制御がさらに簡単になる。
【0086】
また、上述の実施形態のワイパ移動機構27においては、ワイパ36aを主走査方向に移動させているが、移動機構は、ヘッド1を移動させてもよいし、ワイパ36a及びヘッド1の両者を相対移動させてもよい。
【0087】
また、パージ動作の排出量は、排出量導出部146が導出した量であってもよいし、確実に吐出特性が回復可能であれば、導出された排出量と異なっていてもよい。もちろん、数段階の排出量を設定しておいて、導出された排出量を含む段階に割り振るとしてもよい。
【0088】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。