(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両端が閉じられ、側部に高圧入口を有する筒状の本体と、本体内側の側部に設けられ、筒軸方向の2箇所に出口を有する弁座と、この弁座上を筒軸方向に移動するピストンと、このピストンとともに移動して、前記高圧入口と前記出口との連通状態を切り換えるスライド弁とから構成される高圧三方弁と、
両端が閉じられた筒状の本体と、本体内側の側部に設けられ、筒軸方向の2箇所に入口を有するとともに、これら入口の間に低圧出口を有する弁座と、この弁座上を筒軸方向に移動するピストンと、このピストンとともに移動して、前記低圧出口と前記入口との連通状態を切り換えるスライド弁とから構成される低圧三方弁とを備え、
前記高圧三方弁の一方の前記出口と、前記低圧三方弁の一方の前記入口とを連通するとともに、前記高圧三方弁の他方の前記出口と、前記低圧三方弁の他方の前記入口とを連通し、
前記高圧三方弁の前記高圧入口の圧力と前記低圧三方弁の前記低圧出口の圧力との差圧により前記高圧三方弁のピストンを作動させるようにした電磁弁をさらに備え、
この電磁弁の高圧連通口を前記高圧入口に接続し、低圧連通口を前記低圧出口に接続し、他の二つの連通口を前記高圧三方弁の本体内部の両端に接続するとともに、
前記低圧三方弁の本体内部の両端を、それぞれ近い側の前記入口に接続したことを特徴とする四方弁。
前記高圧三方弁および前記低圧三方弁のピストンとスライド弁がそれぞれ同一形状の部材により構成され、筒状の本体と弁座とがそれぞれ前記高圧入口、前記出口、前記入口および前記低圧出口の有無の点で相違する類似形状の部材により構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の四方弁。
前記高圧三方弁の2箇所の前記出口に接続した2本の配管の中心間寸法と、前記低圧三方弁の2箇所の前記入口に接続した2本の配管の中心間寸法とを同一寸法に構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の四方弁。
前記高圧三方弁の2箇所の前記出口に接続した2本の配管の径を、前記低圧三方弁の2箇所の前記入口に接続した2本の配管の径よりも小径に構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の四方弁。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和装置等の冷凍サイクルに用いられる四方弁において、内部熱損失を低減することが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1には、
図12に示すように、複数の開閉弁1a(電磁弁)および逆止弁1bを用いて四方弁2を迂回する構成や、
図13に示すように、三方弁3を用いて低圧冷媒を四方弁2に流さないようにした構成が示されており、いずれも四方弁の内部熱損失を低減するようになっている。
【0003】
しかし、
図12の構成では、複数の電磁弁1a、逆止弁1bを要するので装置が大型化するとともに故障率が高くなり、制御や配管系統が複雑化してコスト高になるという問題がある。さらに、能力の大きなシステムでは電磁弁が大型化し、コストと搭載性が一層悪化するおそれがある。また、
図13の構成では、三方弁3と四方弁2とを繋ぐ配管の配置構成や弁本体間の位置関係が省スペース性を考慮したものではないため、配管使用量の増加や占有スペースの増大を招くおそれがある。
【0004】
特許文献2には、
図14に示すように、高圧三方弁4aと低圧三方弁4bとで四方弁を構成し、内部熱損失を低減することが示されている。しかし、この構成では、高圧三方弁4aと低圧三方弁4bとを繋ぐ配管の配置構成や弁本体間の位置関係が省スペース性を考慮したものではないため、配管使用量の増加や装置の大型化を招くおそれがある。
【0005】
特許文献3には、
図15に示すように、2つの筒状のボディ5a中に低熱伝導性のプラグ5bとピストン5cとを配置して2つの三方切換弁からなる四方弁を構成し、内部熱損失を低減することが示されている。しかし、この構成では、構造が複雑でコスト高となるとともに、低圧冷媒の弁通過箇所(
図15のA部分)が細い円環状の流路となり圧損が大きくなる。この圧損低減のためには大型化が必要となるので、コストや搭載性が悪化するおそれがある。また、三方切換弁を接続するパイプ6a、三方切換弁を動作するための三方電磁弁6b、チューブ6cの配置構成が省スペース性を考慮したものではないため、装置の大型化や配管接続の作業性の低下を招くおそれがある。さらに、高温の流体が流れるパイプからボディを介して低温の流体が流れるパイプに伝熱損失のおそれがある。
【0006】
一方、一つの筐体内に5つの流路入口を設けて流路の切換えを行うようにした弁アセンブリが知られている(例えば、特許文献4参照)。しかし、この弁アセンブリは、筐体内に複数の流路が近接配置される複雑な構造であることから、内部熱損失の低減が難しいうえ製造コストがかかるという問題がある。
【0007】
他方、筒状の本体内にピストンとドーム状のスライド弁が収納された四方弁が知られている(例えば、特許文献5〜7参照)。
図16に示すように、この四方弁の本体7aの上側の側部には1つの高圧入口管7bが、下側の側部には3つの低圧出口管7cが設けられている。ピストン8aは外部のパイロット弁8b(電磁弁)による差圧により本体内部を筒軸方向に移動するようになっており、ピストン8aに設けたドーム状のスライド弁8cが弁座8d上を移動することで高圧入口管と低圧出口管の連通状態を切り換えるようになっている。
【0008】
しかし、この構成では、高温高圧の冷媒が通過する部分と低温低圧の冷媒が通過する部分とが本体内に近接配置されることから、高温高圧の冷媒から低温低圧の冷媒へ熱が伝わり易く、内部熱損失が発生し易いという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る四方弁とそれを備えたヒートポンプ装置(空気調和装置を含む)の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
[四方弁]
まず、本発明に係る四方弁について説明する。
図1−1に示すように、本発明に係る四方弁100は、高圧三方弁10と低圧三方弁30とを備える。
【0023】
高圧三方弁10は、両端が閉じられ、側部に高圧入口管14(高圧入口)を有する筒状の本体12からなる。この本体内側の側部には、筒軸方向の2箇所に出口管16、18(出口)を有する弁座20が設けてあり、この弁座20上を筒軸方向に移動するピストン22a、22bと、ドーム状のスライド弁26が配置してある。
【0024】
ピストン22a、22bは連結板24で連結されている。また、スライド弁26は連結板24に設けた図示しない孔に固定され、ピストンおよび連結板とともに筒軸方向に移動して高圧入口管14と出口管16、18の連通状態を切り換えるようになっている。
【0025】
低圧三方弁30は、両端が閉じられた筒状の本体32からなる。この本体内側の側部には、筒軸方向の2箇所に入口管36、38(入口)を有するとともに、これら入口管36、38の間に低圧出口管34(低圧出口)を有する弁座40が設けてあり、この弁座40上を筒軸方向に移動するピストン42a、42bと、ドーム状のスライド弁46が配置してある。
【0026】
ピストン42a、42bは連結板44で連結されている。また、スライド弁46は連結板44に設けた図示しない孔に固定され、ピストンおよび連結板とともに筒軸方向に移動して低圧出口管34と入口管36、38の連通状態を切り換えるようになっている。このように、低圧三方弁30の本体内部は高圧三方弁10の本体内部の構造と同様な構造となっている。
【0027】
また、高圧三方弁10の出口管16と低圧三方弁30の入口管36は連通管50を介して連通してあり、高圧三方弁10の出口管18と低圧三方弁30の入口管38は連通管52を介して連通してある。なお、
図1−1の例では、図示しない室内熱交換器(蒸発器)出口側からの低圧低温の冷媒が入口管36から本体32の内部に入って、ドーム状のスライド弁46で流向が転換されて低圧出口管34から圧縮機の吸入口側(不図示)に出る一方、高圧三方弁10からの高圧高温の冷媒が連通管52、入口管38を経由して図示しない室外熱交換器(凝縮器)入口側へ出る場合が示してある。
【0028】
このように、本発明の四方弁100は、高圧三方弁10および低圧三方弁30の本体内部が同様の構造であることから、ピストン22a、22b、42a、42bとスライド弁26、46はそれぞれ同一形状の部材により構成することができ、部材の共通化が可能である。さらに、筒状の本体12、32と弁座20、40も類似形状の部材であり、それぞれ高圧入口管14と低圧出口管34を接続するための孔の有無の点で相違するだけである。このため、上記の特許文献5等の従来の四方弁の構成部品に小改造を施した部品を流用して構成することができる。したがって、本発明の四方弁は、従来品を流用可能な簡素な構成であることから、新たな製造ラインを増設することなく容易に製作でき、製造コストの抑制を図ることができる。
【0029】
また、本発明に係る四方弁100は、高圧三方弁10と低圧三方弁30の外部に設けたパイロット四方弁60(電磁弁)を備えている。このパイロット四方弁60は、高圧入口管14の圧力と低圧出口管34の圧力との差圧により高圧三方弁10のピストン22a、22bを作動させるためのものであり、流路切換部60aと電磁コイル60bとからなる。流路切換部60aは高圧連通口78aと低圧連通口78bと連通口78c、78dを有する。
【0030】
図1−1に示すように、高圧連通口78aはキャピラリ62を介して高圧入口管14(さらに本体内部の作動室R
2)に接続し、低圧連通口78bはキャピラリ64を介して低圧出口管34に接続し、他の二つの連通口78c、78dはキャピラリ66、68を介して高圧三方弁10の本体内部の両端のピストンに仕切られた作動室R
1、R
3にそれぞれ接続してある。また、低圧三方弁30の本体内部の両端のピストンに仕切られた作動室S
1、S
3は、それぞれ近い側の入口管36、38にキャピラリ70、72を介してそれぞれ接続してある。
【0031】
図1−1の四方弁100の構成において、低圧三方弁30のスライド弁46を切り換える場合には、パイロット四方弁60からキャピラリ66、68を通じて作動室R
1、R
3に高圧と低圧を送り込むことで高圧三方弁10のピストン22a、22bを作動させ、スライド弁26を動かして高圧三方弁10の連通状態を切り換える。そうすると、この差圧の変化が低圧三方弁30のピストン42a、42bに伝わってスライド弁46が移動し、低圧三方弁30の連通状態が切り換わる。
【0032】
より具体的には、高圧三方弁10の本体内部の高圧の冷媒が出口管18と連通管52を通じて低圧三方弁30の入口管38に導かれると、低圧三方弁30の本体内部の作動室S
2はこの高圧の冷媒で充満する。作動室S
2は作動室S
3とキャピラリ72で連通しているので、ピストン42bの右側に高圧の冷媒が入り、この高圧の冷媒でピストン42bが左方向に動く。このように、高圧三方弁10と低圧三方弁30のスライド弁26、46は一個の電磁弁で作動でき、電磁弁の数が少なくて済むのでコスト低減を図ることができる。
【0033】
なお、パイロット四方弁の代わりにパイロット三方弁を用いてもスライド弁26、46を作動させることができる。この場合には、高圧入口管14へのキャピラリ62による連通接続を行わないようにする。
【0034】
また、四方弁を切り換える際には、高圧三方弁10と低圧三方弁30の両端に殆ど同時に所定の差圧を作り出す必要があるが、上述のように四方弁の配管を流れる冷媒圧力を利用する構成の場合には、以下のような問題が考えられる。まず切り替え時の差圧が小さい状況や、低圧側の配管容積が高圧側に比べて大きい状況において、冷凍サイクルの差圧が低圧三方弁の切り換え動作に必要な所定の差圧よりも不足し、切り替え動作をスムーズに行えなくなるおそれがある。また、所定の差圧を形成するのに時間がかかると、低圧三方弁30の切り換え完了までに遅れが生じ、サイクル効率の低下に繋がる。また、切り替えに必要な所定の差圧を発生させるために圧縮機の回転数を上昇させたり、膨張弁を絞ったりすると、サイクルの効率が悪くなるおそれがある。このようなおそれがある場合には、弁の切り換え応答性を良くする観点から、
図1−1のキャピラリ70、72の代わりに
図1−2のキャピラリ70a、72aを用いて四方弁を構成することが望ましい。
【0035】
図1−2に示すように、キャピラリ70a、72aは、パイロット四方弁60の連通口78c、78dから高圧三方弁10の両端に接続するキャピラリ66、68から分岐して、低圧三方弁30の両端の作動室S
1、S
3に接続したものである。
図1−2の構成によれば、パイロット四方弁60からの圧力は高圧三方弁10と低圧三方弁30の各両端に殆ど同時に伝わり、必要な差圧をより確実に形成できるので、
図1−1の構成に比べて四方弁の切り換え動作性を向上することができる。
【0036】
また、
図1−1や
図1−2の四方弁100の構成においては、高圧三方弁10と低圧三方弁30の内部はそれぞれ高圧と低圧の冷媒が介在した状態となっている。より具体的には、高圧三方弁10の本体内部は、高圧入口管14から出口管18にかけて高圧の冷媒が流れており、出口管16内および弁座20とスライド弁26とに囲まれた領域には連通管50から導かれた低圧の冷媒が静止している。
【0037】
一方、低圧三方弁30の本体内部はこれとは逆に、入口管36と低圧出口管34とを低圧の冷媒が流れており、作動室S
2内と入口管38内に連通管52から導かれた高圧の冷媒が静止している。このように、高圧または低圧の冷媒の片方が各本体内部で静止していることから、熱が伝わりにくくなり、内部熱損失を低減することができる。
【0038】
上記の実施の形態において、高圧三方弁10の2箇所の出口管16、18の中心間寸法と、低圧三方弁30の2箇所の入口管36、38の中心間寸法とを同一寸法に構成すれば、連通管50、52の接続が容易となり、組み立て作業性が向上する。
【0039】
また、高圧三方弁10の高圧入口管14および出口管16、18を同一径および肉厚の配管で構成してもよい。このようにすれば、部材の共通化を図ることができ、製作コストをさらに抑制することができる。低圧三方弁30についても同様に、低圧出口管34および入口管36、38を同一径および肉厚の配管で構成することで製作コストを抑制することができる。
【0040】
このように、本発明の四方弁によれば、各三方弁内の高低圧の片方が静止冷媒となることで、熱交換による損失を低減でき、冷暖房効率を向上することができる。また、従来の四方弁部品を大幅に流用して組み立て可能な簡素な構成であることから、新たな製造ラインを増設することなく、低コストで製造することができる。また、一個の電磁弁で切換動作が可能であることから、コスト低減を図ることができる。さらに、配管系の簡素化、電磁コイル数の削減により、能力の大きなシステムでもコストアップを抑制でき、搭載スペースの小型化を図ることができる。
【0041】
[ヒートポンプ装置および空気調和装置]
次に、本発明に係るヒートポンプ装置およびヒートポンプ装置に属する空気調和装置について
図2−1または
図3−2を参照しながら説明する。ここで、
図2−1、
図2−2は、
図1−1の四方弁を用いた場合の冷房時、暖房時の図である。また、
図3−1、
図3−2は、
図1−2の四方弁を用いた場合の冷房時、暖房時の図である。
【0042】
(冷房時)
図2−1または
図3−1に示すように、本発明のヒートポンプ装置200および空気調和装置300は、四方弁100を介して圧縮機80、アキュムレータ82、室外熱交換器84(凝縮器)、膨張弁86、室内熱交換器88(蒸発器)を配管で接続した冷凍サイクルを有している。
【0043】
冷房時においては、
図2−1または
図3−1に示すように、パイロット四方弁60でキャピラリ62、68を連通させるとともに、キャピラリ64、66を連通させることでピストンを作動し、双方のスライド弁26、46を図中左側に移動させた状態となっている。
【0044】
この冷房時の回路構成において、圧縮機80の吐出口から出た高圧の冷媒は、四方弁100の高圧入口管14と出口管18と入口管38を通って室外熱交換器84に入る。そして、膨張弁86を介して室内熱交換器88から出る低圧の冷媒は、入口管36から低圧三方弁30の本体内部を通過し、低圧出口管34から出てアキュムレータ82を介して圧縮機80の吸入口に入る。この場合、高圧三方弁10の出口管16には低圧の静止冷媒が介在し、低圧三方弁30の本体内部の作動室S
2には高圧の静止冷媒が介在した状態となる。
【0045】
(暖房時)
また、暖房時においては、
図2−2または
図3−2に示すように、パイロット四方弁60でキャピラリ62、66を連通させるとともに、キャピラリ64、68を連通させることでピストンを作動し、双方のスライド弁26、46を図中右側に移動させた状態となっている。
【0046】
この暖房時の回路構成において、圧縮機80の吐出口から出た高圧の冷媒は、四方弁100の高圧入口管14と出口管16と入口管36を通って室内熱交換器88に入る。そして、膨張弁86を介して室外熱交換器84から出る低圧の冷媒は、入口管38から低圧三方弁30の本体内部を通過し、低圧出口管34から出てアキュムレータ82を介して圧縮機80の吸入口に入る。この場合、高圧三方弁10の出口管18には低圧の静止冷媒が介在し、低圧三方弁30の本体内部の作動室S
2には高圧の静止冷媒が介在した状態となる。
【0047】
このため、本発明のヒートポンプ装置200および空気調和装置300によれば、四方弁100によって内部熱損失の低減を図ることができる。
【0048】
[四方弁の配置レイアウト]
ところで、本発明の四方弁100は、高圧三方弁10と低圧三方弁30の本体12、32の筒軸方向を互いに略平行にし、その両端を略面一に揃えて近接配置したレイアウトとすることができる。
【0049】
例えば、
図4および
図5に示すように、高圧三方弁10と低圧三方弁30の本体12、32どうしを前後に並べて近接配置し、高圧三方弁10の下側に延びる出口管16、18に連通した連通管50、52を、低圧三方弁30の下側に延びる入口管36、38側に曲げて接続部54、56で繋げた配置レイアウトとしてもよい。この場合、互いの位置が上下に多少ずれた配置としても構わない。こうすることで、四方弁をコンパクトかつ断熱上有利な形態とすることができる。このため、上述したように内部熱損失の低減を図れると同時に、ヒートポンプ装置200や空気調和装置300などに対する搭載スペースの小型化(省スペース化)が図れる。また、配管使用量を抑制することもできる。
【0050】
こうした配置レイアウトにおいては、本体どうしを連結する連通管52等の長さが短いほど小型化(省スペース化)が図られる半面、低熱損失化を図ることが難しくなるので、熱損失低減効果を高めることが可能な最適な寸法が実際には要求される。そこで、
図5に示すように、低圧三方弁の連通管直管の径をD
Lとし、連通管直管に対する高圧三方弁の連通管配管の接続部から連通管直管の本体側接続端部までの高さをLとした場合において、四方弁の高圧の流れから低圧の流れの配管を通じた相対的な熱損失と、L/D
Lとの関係を試算すると、
図6の曲線図が得られる。
図6の下側にはこの試算条件が記載してある。
【0051】
この
図6に示すように、相対熱損失はLを長くしていくと低下するが、ある長さからほとんど変化しなくなることが判る。この場合、例えば、2D
L≦L≦20D
Lの区間Rを上記の省スペース化と低熱損失とを両立可能な範囲と考えることができ、上記の寸法を2D
L≦L≦20D
Lを満足するように設定すれば最適と考えられる。つまり、高さLを低圧三方弁の入口管38等の径D
Lの2〜20倍の範囲内とすればよい。なお、接続部のろう付け接合の作業性を考慮すれば、3〜5D
L≦L程度とすることがより望ましい。
【0052】
なお、四方弁の熱損失は外気温が低いほど大きくなる。
図7は、外気−20℃相当の相対熱損失とL/D
Lの関係(寒冷地条件)を例示したものであるが、この
図7に示すように、寒冷地(外気−20℃)において外気−7℃のL/D
L=20の場合と同等の相対熱損失とするためには、L/D
L=30程度が必要であることが判る。したがって、寒冷地で本発明の四方弁を用いる場合のL/D
Lについては、こうした特性に留意して設定する必要がある。
【0053】
上記の実施の形態において、高圧三方弁の出口管18等の径D
Hを、低圧三方弁の入口管38等の径D
Lよりも小径に構成すれば、さらに小型化を図ることができるとともに、高圧高温側の出口管18の伝熱面積が減るので、熱損失をより低減させることができる。
【0054】
また、この径D
Hを小さくすることと併せて、密度の高い冷媒のみが流れる高圧三方弁10を低圧三方弁30よりも小型化することによって、外気への放熱損失分を低減して熱損失の低減効果を高めつつ、小型化によるコスト低減が可能である。これは、特に寒冷地で使用するヒートポンプ装置に有効であり、四方弁の大きな放熱ロスを低減するために断熱材で四方弁全体を覆わなくて済むので、よりコスト低減につながる。また、これは能力の大きなシステムにおいても特に有効であり、低圧三方弁の低圧の圧力損失を下げるために配管径を大きく設定する場合に、高圧三方弁は必要以上に大きくしないようにするのが望ましい。
【0055】
なお、この径D
Hを小さくし過ぎると流速増加によって圧損が増加し、熱伝達率が上昇して熱損失が増大するおそれがあるので、ヒートポンプ装置への搭載スペース、使用する冷媒の圧力損失特性、ヒートポンプ装置を使用する気候条件(温暖地域、寒冷地域等)に応じて適切に設定することが望ましく、例えば、R410AやHFO系冷媒を使用する場合においては、0.3〜0.5D
L以上とすることが望ましい。
【0056】
また、上記の実施の形態において、本発明の四方弁100の配置レイアウトとしては
図4および
図5に示したレイアウトのほか種々な態様を考えることができるが、例えば、
図8に示すように、本体どうしを上下に配置したレイアウトとしてもよいし、
図9に示すように、本体どうしを前後に配置したレイアウトとしてもよい。
【0057】
また、パイロット四方弁60の配置についても、
図5に示すように高圧三方弁10の側面側に配置したレイアウトのほか種々の態様を考えることができるが、例えば、
図9に示すように、パイロット四方弁60を低圧三方弁30の本体32の上側に配置したレイアウトとしてもよい。
【0058】
ここで、
図9の配置レイアウトにおいては、高圧高温の冷媒が接続部54で曲がるようにして流れることからこの接続部54で低圧三方弁30側への熱伝達率が上昇するおそれがある。そこで、
図10に示すように、高圧三方弁10の連通管52に直管区間T(直管部)を設け、この直管区間Tに対して低圧三方弁30の入口管38を接続する。こうすることで、高圧高温の冷媒の流れは接続部54で曲がらなくなり、この接続部54の熱伝達率の上昇を抑制することができる。
【0059】
また、上記の実施の形態において、高圧三方弁と低圧三方弁は接続部54、56を介して接続されるので、ここを支点として各本体が揺動しやすい構造といえる。特に、本体上部にパイロット四方弁60が配置されるレイアウトの場合には、パイロット四方弁60の電磁コイルの重量が影響して振動が大きくなるおそれがある。そこで、
図11に示すように、本体どうしが近接した部分に断熱性の防振ゴムなどからなる防振部材90を挟んで、本体間を樹脂バンドなどの断熱性の固定部材94で巻回固定する。こうすることで、この振動を抑制することが可能となる。この場合、防振部材90を空気層92を封入した防振ゴムで構成すれば、本体にべた付けする場合に比べて本体間の伝熱が防げる。
【0060】
以上説明したように、本発明に係る四方弁によれば、両端が閉じられ、側部に高圧入口を有する筒状の本体と、本体内側の側部に設けられ、筒軸方向の2箇所に出口を有する弁座と、この弁座上を筒軸方向に移動するピストンと、このピストンとともに移動して、前記高圧入口と前記出口との連通状態を切り換えるスライド弁とから構成される高圧三方弁と、両端が閉じられた筒状の本体と、本体内側の側部に設けられ、筒軸方向の2箇所に入口を有するとともに、これら入口の間に低圧出口を有する弁座と、この弁座上を筒軸方向に移動するピストンと、このピストンとともに移動して、前記低圧出口と前記入口との連通状態を切り換えるスライド弁とから構成される低圧三方弁とを備え、前記高圧三方弁の一方の前記出口と、前記低圧三方弁の一方の前記入口とを連通するとともに、前記高圧三方弁の他方の前記出口と、前記低圧三方弁の他方の前記入口とを連通するので、熱損失の低減を図れると同時に、低コストで搭載スペースの小型化が図れる。
【0061】
また、本発明に係るヒートポンプ装置によれば、上記の四方弁を備え、この四方弁を介して圧縮機、室内熱交換器、膨張弁、室外熱交換器を配管で接続した冷凍サイクルを有するので、熱損失の低減を図れると同時に、四方弁の占有スペースが小さい低コストのヒートポンプ装置を提供することができる。