特許第5982893号(P5982893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5982893筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982893
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   E04G21/02 103Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-56059(P2012-56059)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-189793(P2013-189793A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】神代 泰道
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−145667(JP,A)
【文献】 特開2006−016805(JP,A)
【文献】 特開平08−001643(JP,A)
【文献】 特開平11−198127(JP,A)
【文献】 特開平05−052041(JP,A)
【文献】 特開2010−150832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材内にセメント系流動物を充填する方法であって、
前記筒状部材の筒軸方向に沿って移動体を移動しながら、前記移動体の噴射口から前記筒状部材の内周面に向けて潤滑用液体を噴射する潤滑用液体噴射工程と、
前記内周面に前記潤滑用液体が付着した前記筒状部材内に、前記セメント系流動物を充填するセメント系流動物充填工程と、を有し、
前記筒状部材の前記筒軸方向は鉛直方向を向いており、
前記移動体は、前記筒状部材の上端開口から前記筒状部材内に挿入された管部材の下端に設けられているとともに、前記管部材を引き上げ下げすることにより、前記移動体は前記筒軸方向に沿って上下に移動し、
前記管部材内を流下した前記潤滑用液体が前記移動体の前記噴射口から噴射され、
前記移動体を前記筒軸方向に移動する際に、前記移動体は、所定の下方位置と、該下方位置よりも上方に位置する上方位置との両者を通過し、
前記上方位置を通過する際の前記移動体の移動速度を、前記下方位置を通過する際の前記移動体の移動速度よりも遅くすることを特徴とする筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法。
【請求項2】
請求項1に記載の筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法であって、
前記噴射口は、前記潤滑用液体をホロコーン状のスプレーパターンで噴射することを特徴とする筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法であって、
前記移動体は、ガイド部材によって前記筒軸方向に移動可能に案内されていることを特徴とする筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法であって、
前記筒状部材は立設された鋼管柱であり、
前記セメント系流動物はコンクリートであり、
前記セメント系流動物充填工程では、前記鋼管柱の下部の圧入口から前記コンクリートを圧入することを特徴とする筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法。
【請求項5】
筒状部材内にセメント系流動物を充填する方法であって、
前記筒状部材の筒軸方向に沿って移動体を移動しながら、前記移動体の噴射口から前記筒状部材の内周面に向けて潤滑用液体を噴射する潤滑用液体噴射工程と、
前記内周面に前記潤滑用液体が付着した前記筒状部材内に、前記セメント系流動物を充填するセメント系流動物充填工程と、を有し、
前記筒状部材の外方に設けられた圧送機構によって前記管部材内の前記潤滑用液体は圧送され、
前記移動体を前記筒軸方向に移動する際に、前記移動体は、所定の下方位置と、該下方位置よりも上方に位置する上方位置との両者を通過し、
前記移動体が前記下方位置を通過する際の前記圧送機構の吐出圧力を、前記移動体が前記上方位置を通過する際の前記圧送機構の吐出圧力よりも小さくすることを特徴とする筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法であって、
前記潤滑用液体噴射工程では、前記移動体は前記筒軸方向に沿って往復移動をし、
少なくとも前記往復移動の往路及び復路の両者で前記潤滑用液体を噴射することを特徴とする筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CFT造の鋼管コンクリート柱の構築工事などで使用可能な筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CFT(コンクリート充填鋼管)造が知られている。このCFT造での鋼管コンクリート柱の構築は、鉛直に立設された鋼管柱内に、流動状態のコンクリートを下部の圧入口から圧入充填することでなされる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−150831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる圧入過程では、鋼管柱2内を順次上方へとコンクリート4が上昇していく(例えば図1)。しかし、その際には、鋼管柱2の乾燥した内周面2aにコンクリート4の水分やモルタル分が奪い取られるので、コンクリート4の天端部4uがガサつく等流動性を失い易く、また上昇時には内周面2aとの間に大きな摩擦抵抗を生じ、これらの結果、コンクリート4の閉塞が起き易い。
【0005】
ここで、鋼管柱2内にコンクリート4を閉塞無くスムーズに圧入する方法の一案として、コンクリート4の圧入前に、予め鋼管柱2の内周面2aに対して水湿し処理を施しておくことが考えられる。すなわち、鋼管柱2の内周面2aに潤滑用液体として水を付着させておくのである。そうすれば、この内周面2aに付着した水が、同内周面2aによるコンクリート4中の水分の奪取を抑制し、また、水の潤滑作用が、圧入時にコンクリート4との間で生じる摩擦抵抗を軽減し、その結果としてコンクリート4の閉塞が有効に防止される。
そして、この水湿しの具体的方法としては、例えば、鋼管柱2の上端開口2uから鋼管柱2内に水を投下することが考えられる。
【0006】
しかしながら、一般に鋼管柱2の全長は数十メートルにも及ぶことから、当該鋼管柱2の管軸方向に関して満遍なく水を内周面2aに付着させるのは困難である。また、鋼管柱2内には、補強用として、中央に貫通孔のあいた内ダイアフラム6,6…が設けられている場合が多く、かかる内ダイアフラム6に、投下した水が堰き止められる等して、内周面2aにおける下方部分への水の付着が妨げられる虞もある。
【0007】
更に、内周面2aへの付着を確実にする目的で大量に水を投入すると、内周面2aに付着し損ねた多量の水が、鋼管柱2の下部に落水して溜まるが、仮に、その状態のままコンクリート4を圧入・充填すると、コンクリート4の含水率が計画値よりも高くなるなど品質不良を起こす虞もある。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、鋼管柱などの筒状部材内に、コンクリートなどのセメント系流動物を充填する方法において、筒状部材の筒軸方向に関して満遍なく内周面に水などの潤滑用液体を付着させて、充填時のセメント系流動物の閉塞を有効に防止しながらも、その後に充填されるセメント系流動物の品質へ及ぼす潤滑用液体の悪影響を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
筒状部材内にセメント系流動物を充填する方法であって、
前記筒状部材の筒軸方向に沿って移動体を移動しながら、前記移動体の噴射口から前記筒状部材の内周面に向けて潤滑用液体を噴射する潤滑用液体噴射工程と、
前記内周面に前記潤滑用液体が付着した前記筒状部材内に、前記セメント系流動物を充填するセメント系流動物充填工程と、を有し、
前記筒状部材の前記筒軸方向は鉛直方向を向いており、
前記移動体は、前記筒状部材の上端開口から前記筒状部材内に挿入された管部材の下端に設けられているとともに、前記管部材を引き上げ下げすることにより、前記移動体は前記筒軸方向に沿って上下に移動し、
前記管部材内を流下した前記潤滑用液体が前記移動体の前記噴射口から噴射され、
前記移動体を前記筒軸方向に移動する際に、前記移動体は、所定の下方位置と、該下方位置よりも上方に位置する上方位置との両者を通過し、
前記上方位置を通過する際の前記移動体の移動速度を、前記下方位置を通過する際の前記移動体の移動速度よりも遅くすることを特徴とする筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法である。
【0010】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法であって、
前記噴射口は、前記潤滑用液体をホロコーン状のスプレーパターンで噴射することを特徴とする。
上記請求項2に示す発明によれば、スプレーパターンがホロコーン状、つまりスプレーパターンの三次元形状は中空コーン状であり、これにより筒状部材の断面上ではリング状のスプレーパターンが形成されるので、筒状部材の内周面の全周に亘って満遍なく且つ効率良く潤滑用液体を付着させることができる。
【0011】
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載の筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法であって、
前記移動体は、ガイド部材によって前記筒軸方向に移動可能に案内されていることを特徴とする。
上記請求項3に示す発明によれば、筒状部材の内周面に対する噴射口の相対位置関係(例えば、筒状部材の内周面と噴射口との間の距離)を、筒状部材におけるセメント系流動物の充填対象範囲の略全長に亘って一定に維持できるようになる。よって、同範囲の略全長に亘って筒状部材の内周面に潤滑用液体を安定して付着することが可能となる。
【0012】
請求項4に示す発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法であって、
前記筒状部材は立設された鋼管柱であり、
前記セメント系流動物はコンクリートであり、
前記セメント系流動物充填工程では、前記鋼管柱の下部の圧入口から前記コンクリートを圧入することを特徴とする。
上記請求項4に示す発明によれば、所謂CFT造によって鋼管コンクリート柱を構築する際に、鋼管柱内に圧入されるコンクリートの閉塞を確実に防止して、鋼管コンクリート柱を円滑且つ速やかに構築可能となる。すなわち、鋼管柱内へのコンクリートの圧入時には、鋼管柱の内周面に付着した潤滑用液体によって摩擦抵抗が低減され、これにより圧入時のコンクリートの閉塞を有効に防止可能となる。その結果、CFT造によって鋼管コンクリート柱を構築する際に、鋼管柱内でのコンクリートの閉塞を確実に防止することができる。
また、潤滑用液体を大量に噴射せずとも、鋼管柱におけるコンクリートの充填対象範囲の略全長に亘って内周面に潤滑用液体を付着可能なので、その後に充填されるコンクリートの含水率が計画値よりも高くなるといった品質不良を起こすことも防止される。
【0015】
かかる目的を達成するために請求項5に示す発明は、
筒状部材内にセメント系流動物を充填する方法であって、
前記筒状部材の筒軸方向に沿って移動体を移動しながら、前記移動体の噴射口から前記筒状部材の内周面に向けて潤滑用液体を噴射する潤滑用液体噴射工程と、
前記内周面に前記潤滑用液体が付着した前記筒状部材内に、前記セメント系流動物を充填するセメント系流動物充填工程と、を有し、
前記筒状部材の外方に設けられた圧送機構によって前記管部材内の前記潤滑用液体は圧送され、
前記移動体を前記筒軸方向に移動する際に、前記移動体は、所定の下方位置と、該下方位置よりも上方に位置する上方位置との両者を通過し、
前記移動体が前記下方位置を通過する際の前記圧送機構の吐出圧力を、前記移動体が前記上方位置を通過する際の前記圧送機構の吐出圧力よりも小さくすることを特徴とする。
上記請求項5に示す発明によれば、移動体が上下方向に移動する際に、管部材内の潤滑用液体の水頭圧の影響により、筒状部材の内周面における潤滑用液体の付着量が上方位置よりも下方位置の方が相対的に多くなってしまうことを有効に防ぐことができる。すなわち、上述の発明によれば、筒状部材の外方に設けられた圧送機構によって管部材内の潤滑用液体は噴射口へ向けて圧送され、そして、移動体が下方位置を通過する際の圧送機構の吐出圧力を、同移動体が上方位置を通過する際の吐出圧力よりも小さくする。よって、水頭圧による下方位置での噴射量過多を、同下方位置での吐出圧力の低下で相殺させることができて、その結果、上下方向に関して付着量に大きな偏り無く、筒状部材の内周面に潤滑用液体を付着させることができるようになる。
【0016】
請求項6に示す発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法であって、
前記潤滑用液体噴射工程では、前記移動体は前記筒軸方向に沿って往復移動をし、
少なくとも前記往復移動の往路及び復路の両者で前記潤滑用液体を噴射することを特徴とする。
上記請求項8に示す発明によれば、筒軸方向に沿って移動体が往路及び復路を移動する際に、それぞれの移動につき移動体の噴射口から潤滑用液体が噴射される。よって、筒状部材の内周面における潤滑用液体の付着量の偏りは平滑化される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鋼管柱などの筒状部材内に、コンクリートなどのセメント系流動物を充填する方法において、筒状部材の筒軸方向に関して満遍なく内周面に水などの潤滑用液体を付着させて、充填時のセメント系流動物の閉塞を有効に防止しながらも、その後に充填されるセメント系流動物の品質へ及ぼす潤滑用液体の悪影響を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一部の構成を破断して示す第1実施形態の概略側面図である。
図2】一部の構成を破断して示す水湿し処理の概略側面図である。
図3図3Aは、ホロコーンスプレーノズルのスプレーパターンの概略斜視図であり、図3Bは、フルコーンスプレーノズルのスプレーパターンの概略斜視図である。
図4】ガイド部材31の概略斜視図である。
図5図5Aは、ノズル21が水湿し対象範囲の下端位置Pdの近傍に位置している状態の概略斜視図であり、図5Bは、ノズル21が同範囲の上端位置Puの近傍に位置している状態の概略斜視図である。
図6図6A及び図6Bは、水道水の蛇口25とホース23との間にポンプ29を介挿した場合の概略側面図である。
図7】建設現場でコンクリート打設に使用されるコンクリート供給管14の説明図である。
図8】先送りモルタルの代わりにコンクリート供給管14に潤滑材を投入する様子を示す概略断面図である。
図9図9A及び図9Bは、それぞれ、コンクリート供給管14を破断して示す第2実施形態の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
===第1実施形態===
図1は、本発明に係る第1実施形態の概略側面図である。同図に示すように、この第1実施形態では、本発明に係る筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法を、鋼管コンクリート柱の構築工事に適用している。
【0021】
この鋼管コンクリート柱の構築工事では、施工現場に立設された鋼管柱2(筒状部材に相当)の下部から鋼管柱2の内部にコンクリート4(セメント系流動物に相当)を圧入して充填する。鋼管柱2は、構造物の柱部等として用いられるもので、例えば断面矩形状の角形鋼管や断面円形状の丸形鋼管などを本体2とする。鋼管柱2の内部には、当該鋼管柱2を補強する補強部材として内ダイアフラム6,6…が、鋼管柱2の高さ方向に間隔をあけて複数設置されており、これら内ダイアフラム6,6…は、それぞれ鋼管柱2の内周面2aに一体的に接合されている。
【0022】
鋼管柱2の下部には、鋼管柱2の内部にコンクリート4を圧入するための圧入口8が設けられている。圧入口8は、鋼管柱2を厚さ方向に貫通して開口形成されたもので、例えば、図1に示すように、鋼管柱2内に既に充填し終えた充填済みコンクリート10の上面10uよりも若干上方の位置に設けられる。圧入口8には、コンクリート圧送ポンプ12から延出されたコンクリート供給管14が接続される。そして、これらコンクリート圧送ポンプ12及びコンクリート供給管14を介して、アジテータトラック16のコンクリート4が上記圧入口8へと圧送され、これにより、コンクリート4が鋼管柱2の内部へ充填される(セメント系流動物充填工程に相当)。この充填に伴い、鋼管柱2内部のコンクリート4の天端部4uの高さたる充填高さHは徐々に増し、当該天端部4uが充填対象範囲の上端Puに達したら充填作業は終了する。
【0023】
ところで、このように鋼管柱2にコンクリート4を圧入充填している時に、コンクリート4が閉塞する場合がある。そして、この閉塞の原因は、既述のように、鋼管柱2の内周面2aにコンクリート4の水分やモルタル分が奪い取られることによる天端部4uのコンクリート4の流動性の損失や、鋼管柱2の内周面2aとの間に大きな摩擦抵抗にある。
【0024】
そこで、この第1実施形態では、かかる閉塞を防ぐべく、上記のコンクリート4の圧入充填作業(セメント系流動物充填工程に相当)に先んじて、予め鋼管柱2の内周面2aに、潤滑用液体として水を付着させるという水湿し処理を行っている(図2)。但し、このとき、鋼管柱2における充填対象範囲の全長(全高)は、数十メートルにも及ぶことから、かかる全長に亘って略均等に内周面2aに水を付着させることは一般に困難であるが、以下に説明するように、この第1実施形態に係る水湿し処理によれば、それも実現可能である。
【0025】
図2は、この水湿し処理(潤滑用液体噴射工程に相当)の概略側面図である。水湿し処理は、水湿し装置を用いて行う。水湿し装置は、鉛直方向を向いた鋼管柱2の管軸方向(筒軸方向に相当)に沿って同鋼管柱2の内部を上下方向に移動可能に設けられた移動体としてのノズル21と、このノズル21に水を供給すべく鋼管柱2の上端開口2uから同鋼管柱2の内部に挿入されて下端23dに上記ノズル21が連結された管部材としてのホース23と、ホース23を介してノズル21の上下移動を案内するガイド部材31と、を有している。
そして、この構成によれば、ノズル21は、鋼管柱2の管軸方向に沿って上下方向に充填対象範囲の略全長に亘って移動しながら水を噴射可能なので、充填対象範囲の略全長に亘って満遍なく内周面2aに水を付着させることができる。
また、内周面2aへの水の付着確度が高まるので、噴射水の総量を少なくできる。これにより、内周面2aに付着し損ねた水が、落水等して鋼管柱2の下部に溜まってなる残水量の低減も図れ、結果、この後に圧入充填されるコンクリート4の含水率が計画値よりも高くなるなどの品質不良も防ぐことができる。
【0026】
以下、水湿し装置の各構成21,23,31について説明する。
ノズル21は、例えばホロコーンスプレーノズルである。このノズル21は、噴射口としてのノズル孔を有し、その孔軸は管軸方向たる鉛直方向の下方を向いている。そして、当該ノズル孔から霧状の水を噴射(噴霧)して、図3Aの概略斜視図に示すような三次元形状が中空コーン形状(リングホロコーン形状)のスプレーパターンを形成し、これにより、鋼管柱2の断面上ではリング形状のスプレーパターンが形成される。よって、鋼管柱2の内周面2aの全周に亘って満遍なく水を付着させることが可能となる。また、中空コーン形状(鋼管柱2aの断面上ではリング形状)のため、鋼管柱2の管軸方向と略平行方向に噴射される水量は少なく、専ら鋼管柱2の内周面2aに向けて水が略テーパー放射状に噴射されるので、同内周面2aに付着し損ねる水の量を大幅に減らすことができる。
【0027】
かかるノズルの具体例としては、UniJet(商標)スプレーノズルの型式T6W(スプレーイング システムス ジャパン社製)等が挙げられる。
但し、適用可能なノズル21は何等上記に限らない。つまり、鋼管柱2の内周面2aの全周に亘って満遍なく水を付着可能なスプレーパターンのノズルであれば、他の形式のノズルを用いても良い。例えば、図3Bに示すようなスプレーパターンが円形や矩形のフルコーンスプレーノズルも使用可能である。但し、このノズルの場合には、図3Bに示すように、スプレーパターンとして、鋼管柱2の断面上において円形や矩形のパターンを形成し、そして、当該円形内の全面或いは矩形内の全面に向けて水を噴射するので、鋼管柱2の内周面2aに付着し損ねる水が、上述のホロコーンスプレーノズルよりも多くなる。そのため、望ましくはホロコーンスプレーノズルを用いると良い。
【0028】
図2のホース23は、ビニルホースやゴムホース等であり、コンクリート4の充填対象範囲の全長よりも十分長い長さを有する。そして、通常はリール23Rに巻かれており、リール23Rは、例えば鋼管柱2の上端開口2uの近傍位置に配されている。そして、ホース23の両管端23d,23uのうちの一方の管端23dには上記のノズル21が通水可能に連結され、他方の管端23uには、水道水の蛇口25が通水可能に連結され、これにより、当該ホース23を介してノズル21に水が供給される。
【0029】
なお、この例では、上述のように、当該ホース23はリール23Rに巻かれている。そのため、リール23Rを手動回転することで、ホース23の鋼管柱2内への挿入長さを増減変更可能であり、この挿入長さの増減を通して、ホース23の下端23dのノズル21は、鋼管柱2の管軸方向に沿って速やかに上下移動される。
【0030】
また、ホース23における蛇口25の近傍部分には、分岐部を介して圧力計27が接続されており、この圧力計27によって蛇口25の近傍部分の水圧を計測可能となっている。
【0031】
ガイド部材31は、図4の概略斜視図に示すように、鋼管柱2の上端開口2の位置においてホース23を摺動可能に支持する支持部材である。この例では、中央にホース23を通す空間を有した断面C字形状のホース支持部32と、ホース支持部32を片持ち状態で支持する棒状のアーム部33とを有し、このアーム部33の基端部33bが鋼管柱2の上端開口2の縁部2ueに固定されている。
【0032】
ホース支持部32は、断面C字形状の部分の内方にホース23を摺動可能に通すことにより、当該ホース23の位置を鋼管柱2の断面中心に位置決めする。これにより、ホース23の引き上げ下げによってノズル21を上下昇降する際に、同ノズル21は、鋼管柱2の断面中心を通る鉛直直線上を移動するように案内される。その結果、ノズル21は内ダイアフラム6の孔6h(図1)を円滑にすり抜けて当該内ダイアフラム6との干渉が未然に回避される。また、同断面中心を通る鉛直直線に沿って移動するようにノズル21は案内されているので、鋼管柱2の内周面2aに対するノズル孔の相対位置関係、すなわち、鋼管柱2の内周面2aとのノズル孔との間の距離は、充填対象範囲の略全長に亘って一定に維持される。よって、ノズル21のノズル孔を中心として放射状に均等噴射される水は、鋼管柱2の内周面2aの全周に亘って略均等に水を付着し得る状態を、充填対象範囲の略全長に亘って維持可能となる。
【0033】
このような構成の水湿し装置によれば、例えば、次のようにして水湿し処理が行われる。
先ず、準備作業として、ノズル21が鋼管柱2の外に出ている状態で、水道水の蛇口25を開けることによりホース23の全長に亘って通水し、また、これに併せてノズル21からの水の噴射状況を観察してノズル詰まりなどの不具合の有無をチェックする。
【0034】
次に、蛇口25を閉じて水の噴射を止めた状態で、ホース23をガイド部材31のC字状のホース支持部32にかけてノズル21を鋼管柱2の断面中心に位置決めし、しかる後に、図2に示すように、リール23Rからホース23を繰り出す等して、ノズル21を鋼管柱2内に引き下げていく。そして、図5Aに示すように、水湿しを行うべき水湿し対象範囲の下端位置Pd、つまりコンクリート4の充填対象範囲の下端位置Pdの近傍にノズル21を位置させる。
【0035】
そうしたら、水道水の蛇口25を開いて圧力計27の指示値が、例えば0.2MPa等の目標圧になっていることを確認後、リール23Rでホース23を巻き上げる等してノズル21を上方へ引き上げる。これにより、図5Aの状態から図5Bの状態へとノズル21は上方に移動しながら、鋼管柱2の内周面2aに向けて水を噴射し、同内周面2aには水が付着される。
【0036】
そして、水湿し対象範囲の上端位置Puたる充填対象範囲の上端位置Puの近傍にノズル21が到達したら、そのままノズル21を鋼管柱2の外まで引き出した後に、蛇口25を閉じて水湿し処理は終了となる。そして、上述のコンクリート4の圧入充填作業(セメント系流動物充填工程に相当)が行われる(図1)。
【0037】
ちなみに、上述のような下端位置Pdから上端位置Puまでという片道の水湿しだけでは、鋼管柱2の内周面2aの水の付着量にムラが出るなど付着が不十分と想定される場合には、上述の如き片道の水湿しを複数回繰り返しても良い。すなわち、図5Bのように上端位置Puの近傍にノズル21が到達したら、蛇口25を閉じて水の噴射を停止し、その停止状態で再度ノズル21を図5Aのように下端位置Pdの近傍まで引き下げ、以降、上述したようなノズル21を引き上げながらの水の噴射を繰り返し行っても良い。
【0038】
あるいは、片道だけで水の噴射を行うのではなく、ノズル21を上下に往復移動させる際に、その往路及び復路の両者で水の噴射を行っても良い。すなわち、図5Bに示すように、ノズル21が水湿し対象範囲の上端位置Puの近傍に到達した時点で、そのまま往路から復路へと折り返して、復路で水湿しを行っても良い。つまり、リール23Rからホース23を繰り出す等して、ノズル21を下方へ引き下げながら同ノズル21から鋼管柱2の内周面2aへ向けて水を噴射しても良い。そして、図5Aに示すように、ノズル21が水湿し対象範囲の下端位置Pdの近傍に到達したら、蛇口25を閉じて噴射を停止し、そのままノズル21を引き上げて鋼管柱2の外に取り出して水湿し処理は終了となる。あるいは、場合によっては、上述の往復移動での水の噴射を複数回繰り返した後に、ノズル21を鋼管柱2の外に取り出して水湿し処理を終了としても良く、このように繰り返せば、鋼管柱2の内周面2aにおいて水が付着していない未付着部分をほぼ皆無にすることができる。
【0039】
また、上述の例では、水湿し処理を片道だけで行う場合の例示として、或いは往復で行う場合の往路たる1パス目の例示として、ノズル21を引き上げながら水を噴射する場合を示していたが、何等これに限るものではなく、ノズル21を引き下げながら水を噴射しても良い。すなわち、図5Bに示すように、ノズル21を水湿し対象範囲の上端位置Puの近傍に位置させた状態を初期状態とし、この初期状態から蛇口25を開いて水を噴射し、しかる後に、リール23Rからホース23を繰り出す等してノズル21を引き下げながら、同ノズル21から鋼管柱2の内周面2aへ向けて水を噴射しても良い。
【0040】
更に、上述の例では、ノズル21の上下昇降を、リール23Rの手動回転によって、すなわち、作業者が人力でホース23をリール23Rから繰り出したり同リール23Rで巻き取ることによって、ノズル21の上下昇降を行っていたが、何等これに限るものではない。例えば、リール23Rに駆動源としてのモータ(不図示)を付設し、このモータによるリール23Rの回転動作によってノズル21の上下昇降を行っても良いし、更に言えば、鋼管柱2の上端開口2uの近傍に居る作業者が、リール23Rよりも鋼管柱2側の位置でホース23を直に手で持って引き上げ下げすることで、ノズル21を上下昇降させても良い。
【0041】
また、上述の例では、鋼管柱2の内周面2aに潤滑用液体として水を付着させていたが、コンクリート4の品質に悪影響を与えずに潤滑作用を奏する液体であれば、何等水に限らず、他の液体を用いることもできる。
【0042】
ところで、図5A及び図5Bのノズル21から噴射される水の毎時の噴射量(リッター/時)は、ノズル21に作用する水圧(MPa)に応じて変化する。ここで、上述のように水として水道水を用いた場合には、その蛇口25近傍の部分では水道水の供給水圧は水量によらず一定値であり、例えば0.2MPaである。ところが、ホース23の下端23dのノズル21に作用する水圧は、水道水の上記供給水圧の0.2MPaと、鋼管柱2内に挿入されたホース23の鉛直部分の水頭圧との加算値である。そのため、鋼管柱2におけるノズル21の高さ位置に応じて、ノズル21からの水の毎時の噴射量(リッター/時)は変化することになる。
【0043】
例えば、水湿し対象範囲における下方位置にノズル21が在る状態(図5A)と、この下方位置よりも上方に位置する上方位置にノズル21が在る状態(図5B)とを比較すると、下方位置の方が上方位置よりもノズル21に作用する水頭圧が大きくなるので、その水頭圧の差分だけ下方位置(図5A)の毎時の噴射量(リッター/時)は多くなる。
具体的数値例で言えば、水湿し対象範囲の全長が20mの場合には、図5Aのようにノズル21が水湿し対象範囲の下端位置Pdにある状態と図5Bのように上端位置Puにある状態との水頭圧差は、0.196MPa(=20(m)×0.098(MPa/m))となるが、この0.196MPaは、ほぼ水道水の供給水圧の0.2MPaと同レベルの大きなものであり、これにより、図5Aの下端位置Pdと図5Bの上端位置Puとでは噴射量が、約√2倍相違することになる。そして、かかる噴射量の相違は、鋼管柱2の内周面2aの水の付着ムラを通して、鋼管コンクリート柱の品質に悪影響を及ぼす虞がある。
【0044】
そのため、望ましくは、ノズル21の上下方向の移動速度(m/秒)を、水湿し対象範囲の全長に亘って一定速度にするよりは、当該移動速度をノズル21の高さ位置に応じて変化させると良い。例えば、図5Bのような上方位置を通過する際のノズル21の移動速度を、図5Aのような下方位置を通過する際のノズル21の移動速度(m/秒)よりも遅くすると良い。より具体的に言えば、水湿し対象範囲の下端位置Pdから上端位置Puへとノズル21が上昇するに従って、移動速度を略正比例関係で漸減するか、或いは、上端位置Puから下端位置Pdへとノズル21が下降するに従って、移動速度を略正比例関係で漸増すると良い。
そうすれば、噴射量に与える水頭圧の変化の影響が、移動速度の変更によって相殺されて、ノズル21の単位移動量当たりの水の噴射量(リッター/m)は、水湿し対象範囲の全長に亘って概ね一定にされる。そして、これにより、鋼管柱2の内周面2aの水の付着量みは、水湿し対象範囲の全長に亘って略均等化される。
【0045】
なお、上述では、ノズル21の移動速度の変更によって内周面2aの水の付着量の均等化を図っていたが、何らかの理由でノズル21の移動速度の変更が困難な場合、つまりノズル21の移動速度を一定速度にせざるを得ない場合には、次のようにしても、上述と同様の付着量の均等化効果を奏することができる。
【0046】
先ず、図6Aに示すように、水道の蛇口25とホース23との間に圧送機構としてポンプ29を介挿する。このポンプ29としては、その吐出圧力を変更可能な可変ポンプ29が使用される。そして、これにより、水道水の0.2MPaの一定の供給水圧を同ポンプ29によって、任意の圧力まで昇圧してホース23に供給可能となる。よって、ノズル21の高さ位置に応じてポンプ29の吐出圧力を増減変更すれば、ノズル21に作用する水圧を、ノズル21の高さ位置によらず略一定に維持できるようになる。
【0047】
例えば、図6Aのような下方位置を通過する際のポンプ29の吐出圧力を、図6Bのような上方位置を通過する際のポンプ29の吐出圧力よりも小さくすれば、ノズル21に作用する水圧を略一定に維持できる。より具体的には、図6A及び図6Bに示すように、水湿し対象範囲の下端位置Pdから上端位置Puへとノズル21が上昇するに従って、ポンプ29の吐出圧力を略正比例関係で漸増するか、或いは、上端位置Puから下端位置Pdへとノズル21が下降するに従って、ポンプ29の吐出圧力を略正比例関係で漸減すれば良い。
【0048】
そして、このようにしてノズル21に作用する水圧を、水湿し対象範囲の全長に亘って略一定に維持すれば、ノズル21からの水の毎時の噴射量(リッター/時)はノズル21の高さ位置によらず略一定となり、結果、ノズル21の移動速度が一定の条件下においても、鋼管柱2の内周面2aの水の付着量を略均等にすることができる。
【0049】
===第2実施形態===
図7乃至図9は、本発明の筒状部材内へのセメント系流動物の充填方法を、空のコンクリート供給管14(アジテータトラック16などのコンクリート貯留部16からコンクリート4を打設対象位置Aへ圧送して打設するための配管)へのコンクリート4の初期充填に適用した場合の説明図である。
【0050】
図7に示すように、一般に建設現場では、コンクリート4を貯留するアジテータトラック16の近傍位置にコンクリート圧送ポンプ12が配置され、コンクリート圧送ポンプ12の吐出口には、横引きのコンクリート供給管14(筒状部材に相当)が接続される。そして、かかるコンクリート供給管14を介してアジテータトラック16のコンクリート4(セメント系流動物に相当)が、型枠内などの適宜な打設対象位置Aまで圧送されて同位置Aに打設されるようになっている。
【0051】
一方、一般にかかるコンクリート4の圧送の前には、空のコンクリート供給管14の潤滑性を確保する目的で同管14に先送りモルタルを送り込んでいる。つまり、空のコンクリート供給管14にそのままコンクリート4を充填すると、第1実施形態で述べたのと同様に、コンクリ一ト4の水分やモルタル分がコンクリート供給管14の内周面14aに奪取されて、コンクリート供給管14内で閉塞が生じ易くなったり、セメントペーストやモルタルの少ないコンクリート4が打設対象位置Aに打設されたりする。そのため、これを防ぐべく、コンクリート供給管14によるコンクリート4の圧送前に、同管14に予め先送りモルタルを送り込んでいる。
【0052】
そして、かかる用途の先送りモルタルは、当然ながら使い捨てである。すなわち、先送りモルタルは打設対象位置Aには打設されずに、コンクリート供給管14の先端14eのところで取り出されて廃棄される。しかし、そうすると、コスト増やCO増を招くことになる。
そのため、最近では、先送りモルタルを用いずに、スリックパワー(商品名:株式会社ケミウスジャパン製)等の液状潤滑材を使用することが検討されている。そして、その場合には、例えば、図8に示すように、コンクリート供給管14の管壁部の上面に投入口14hを設け、この投入口14hからバケツ等で、潤滑材を同管14内に投入することが考えられる。しかしながら、この方法では、コンクリート供給管14の内周面14aの下半部14adに対しては潤滑材を付着させることができるが、上半部14auに付着させることが難しい。また、コンクリート供給管14の全長が長い場合もあって、その場合には、全長に亘って満遍なく潤滑材を内周面14aに付着させることは困難である。
【0053】
この点につき、かかるコンクリート供給管14に対して本発明の充填方法を適用すれば、潤滑材(潤滑用液体に相当)をコンクリート供給管14の内周面14aの全周且つ全長に亘って満遍なく付着させることが可能である。その結果、潤滑材を大量投入せずに済むため、その後に充填されるコンクリート4の品質へ及ぼす潤滑材の悪影響を有効に抑制可能となる。
【0054】
以下、本第2実施形態について詳説するが、以下の説明では、上述の第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明については省略する。
【0055】
図9Aに示すように、コンクリート供給管14は横引きされている。すなわち、その管軸方向は略水平方向に向けられている。よって、この場合には、上述の第1実施形態のような水頭圧の問題は無く、つまり、コンクリート供給管14内を移動するノズル21の管軸方向の移動速度は一定速度で良い。
【0056】
また、ノズル21は、例えばコンクリート供給管14内を管軸方向に移動可能な四輪の台車41(ガイド部材に相当)に搭載されて固定されている。そして、台車41が管軸方向に沿ってコンクリート供給管14の一方の管端部14esから他方の管端部14ebへと移動中に、ノズル21は、コンクリート供給管14の内周面14aに向けて潤滑材を噴射する。このノズル21も、第1実施形態と同様に、ホロコーンスプレーノズルやフルコーンスプレーノズル等が使用され、これにより、コンクリート供給管14の内周面14aの全周に亘って潤滑材を付着させることができる。
【0057】
なお、上述のスリックパワーの如き潤滑材に代えて、潤滑用液体として水を用いても良い。すなわち、コンクリート4の品質に悪影響を与えずに潤滑作用を奏する液体であれば、上述のスリックパワー以外の潤滑材も適用可能である。
【0058】
ノズル21への潤滑材の供給は、例えば、ノズル21に、一方端23e1が連結されたホース23により行われる。そして、その場合には、コンクリート供給管14内へホース23を押し込む力、あるいはホース23を引き出す力を駆動力として用いて、台車41は管軸方向に移動される。すなわち、ホース23の他方端23e2は、コンクリート供給管14の外に出ており、例えば、作業者がホース23の他方端23e2を押し引きすることにより台車41は移動する。
【0059】
また、図9Bに示すように、台車41を自走式としても良い。すなわち、台車41に、電池等のエネルギー源やモータ等の駆動源を搭載し、当該駆動源によって台車41が管軸方向に自走するように構成しても良い。そして、その場合には、望ましくは、潤滑材の貯留タンク43も台車41上に搭載して同タンク43からノズル21に潤滑材を供給すると良く、そのようにすれば、ホースレスにできて台車41の走行動作が安定する。更に、台車41の移動速度の調整や、ノズル21の噴射のON/OFF切り替え等の操作を無線で行えるようにすべく、台車41に受信部を搭載して、コンクリート供給管14の外に位置する送信部からの操作信号を受信させても良い。
【0060】
ちなみに、上述の第2実施形態では、コンクリート供給管14を横引きした場合を例示したが、コンクリート供給管14は縦引きの場合もあって、その場合には、第1実施形態で例示した方法(ノズル21をホース23で上下昇降しながら潤滑材を噴射する方法)を適用することができる。
【0061】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0062】
上述の第1実施形態では、図1に示すように、鋼管柱2内へのコンクリート4の圧送を、鋼管柱2の下部の圧入口8から行っていたが、何等これに限るものではない。例えば、鋼管柱2の上端開口2uからトレミー管を挿入し、同トレミー管の下端開口からコンクリート4を吐出して鋼管柱2内に充填しても良い。
【0063】
上述の実施形態では、セメント系流動物としてコンクリート4を例示したが、何等これに限るものではない。例えば、モルタルやセメントでも良い。
【0064】
上述の第2実施形態では、図7に示すように、コンクリート供給管14の一例として現場打設位置Aへコンクリート4を圧送する管を例示したが、何等これに限るもではない。例えば、図1に示す第1実施形態のコンクリート供給管14に対して、第2実施形態の充填方法を適用しても良い。
【0065】
上述の第1実施形態では、水湿し処理に水道水を使用したが、仮に施工現場で水道水を確保できない場合には、同施工現場に、水を貯留した貯水タンクと水中ポンプ等のポンプとを搬入すれば、水湿し処理を行うことができる。また、ポンプ用の電源を確保困難な場合には、ポンプとして手動ポンプを用意すれば、電源無しで水湿し処理を行うことができる。つまり、既述のホース23やノズル21、ガイド部材31に加えて、上記の貯水タンクやポンプを用意すれば、水湿し処理を、任意の場所で行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
2 鋼管柱(筒状部材)、2a 内周面、2u 上端開口、2ue 縁部、
4 コンクリート(セメント系流動物)、4u 天端部、
6 ダイアフラム、6h 孔、
8 圧入口、
10 充填済みコンクリート、10u 上面、
12 コンクリート圧送ポンプ、
14 コンクリート供給管(第2実施形態では筒状部材)、
14a 内周面、14ad 下半部、14au 上半部、
14e 先端、14eb 一方の管端部、14es 他方の管端部、14h 投入口、
16 アジテータトラック(コンクリート貯留部)、
21 ノズル(移動体)、23 ホース、23R リール、
23d 下端(管端)、23u 管端、23e1 一方端、23e2 他方端、
25 蛇口、27 圧力計、
29 ポンプ(圧送機構)、
31 ガイド部材、32 ホース支持部、33 アーム部、33b 基端部、
41 台車、43 貯留タンク、
A 打設対象位置、
Pd 下端位置、Pu 上端位置、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9