(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
感光体と、前記感光体を露光する露光部材と、前記感光体と前記露光部材との間の離間距離を所定距離に規制する距離規制部材とを備えた画像形成装置において、前記露光部材からの光量を補正する方法であって、
前記感光体は回転軸を有し、前記距離規制部材は前記感光体と当接する構成であり、
前記距離規制部材の摩耗により変化する前記離間距離を推定する推定工程と、
前記推定工程にて推定された前記離間距離に基づいて前記露光部材の光量を補正する補正量を決定する決定工程と、
前記決定工程にて決定された前記補正量で前記光量を補正する補正工程と、
前記感光体の回転動作に伴い値が変化するパラメータをカウントするカウント工程と、を含み、
前記決定工程において、前記カウント工程にてカウントされたカウント値から前記離間距離が推定される、露光部材の光量補正方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術文献の技術では、最初は正確に感光体上に結像させることができるものの、感光体と摺接するスペーサの磨耗により光学式ヘッドの位置決めの精度が低下し、画質の低下を招く虞があった。
【0005】
本発明は、感光体上への露光に起因する画質の低下を抑制する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される画像形成装置は、感光体と、前記感光体を露光する露光部材と、前記感光体と前記露光部材との間の離間距離を所定距離に規制する距離規制部材と、制御部とを備え、前記制御部は、前記距離規制部材の摩耗により変化する前記離間距離を推定して、推定された前記離間距離に基づいて前記露光部材の光量を補正する補正量を決定する決定処理と、前記決定処理にて決定された前記補正量で前記光量を補正する補正処理と、を実行する。
本構成によれば、距離規制部材の摩耗により変化する感光体と露光部材との間の離間距離を考慮して光量を補正するので、感光体上への露光に係る画質の低下を抑制できる。
【0007】
上記画像形成装置において、前記感光体は回転軸を有し、前記距離規制部材は、前記感光体と当接し、前記制御部は、前記感光体の回転動作に伴い値が変化するパラメータをカウントするカウント処理をさらに実行し、前記決定処理において、前記カウント処理にてカウントされたカウント値から前記離間距離を推定するようにしてもよい。
距離規制部材は、感光体と当接するため、感光体の回転動作に伴い摩耗し、それによって離間距離が変化することが考えられる。そのため、本構成によれば、感光体の回転動作に伴い値が変化するパラメータをカウントすることによって、感光体との当接により距離規制部材が摩耗するときの離間距離の変化を好適に推定することができる。そして、推定された離間距離の変化を補正量に反映させることによって、感光体上への露光に係る画質の低下を抑制できる。
【0008】
また、上記画像形成装置において、被記録媒体に画像を形成する画像形成部を備え、前記画像形成部は前記感光体を含み、前記パラメータは、前記画像形成部によって画像が形成された前記被記録媒体の枚数であるようにしてもよい。
距離規制部材の摩耗度は、画像が形成された被記録媒体の枚数、すなわち、印刷枚数に応じて増加する。そのため、本構成によれば、印刷枚数をカウントすることによって、そのカウント値を補正量に反映させることができる。
【0009】
また、上記画像形成装置において、本体フレームを備え、前記距離規制部材は、前記感光体に当接するローラと、該ローラを支持し、前記本体フレームに固定される固定部材とを有するようにしてもよい。
本構成によれば、スペーサが感光体に当接し、摺動する場合と比べ、距離規制部材の寿命が長く、交換する必要がなくなるため、装置本体フレームに距離規制部材を固定することができる。したがって、寿命の短いスペーサをカートリッジに設けて交換するようにする場合と比べ、カートリッジの小型化を図れる。
【0010】
また、上記画像形成装置において、前記制御部は、前記決定処理において前記離間距離を推定する際、前記カウント値の増加にしたがって、推定量の変化率を増加させるようにしてもよい。
距離規制部材のローラ直径は、摩耗に応じて小さくなるので、摩耗度合(ローラ直径方向肉厚の減少度)が加速していくが、本構成によれば、その加速に対応して離間距離を推定し、それにしたがって光量を補正できるので、画質の低下を好適に抑制できる。
【0011】
また、上記画像形成装置において、前記カウント値に対応した少なくとも二つの範囲が設定され、各範囲に対応した前記補正量が設定されるようにしてもよい。
本構成によれば、距離規制部材の摩耗度に応じた補正量を設定でき、補正量が的確化される。
【0012】
また、上記画像形成装置において、前記露光部材は、前記感光体をライン走査によって露光するものであり、各範囲に対応した前記補正量が、さらに、前記ライン走査における走査ラインに応じて設定されるようにしてもよい。
本構成によれば、カウント値に応じて設定される範囲、例えば、印刷枚数の所定範囲内において、さらに走査ラインに応じて、例えば、4ラインあるいは2ラインに応じて補正量が設定され、補正量がより細密化される。そのため、補正量がカウント値の範囲単位、例えば、印刷枚数の範囲単位によって段階的となる不都合を、低減することができる。
【0013】
また、上記画像形成装置において、前記距離規制部材の摩耗前の前記離間距離であって、前記離間距離の初期値である初期離間距離をDIとし、前記露光部材と前記露光部材の焦点との距離である作動距離をDwとすると、Dw<DI の関係を満たすように、前記初期離間距離が設定されているようにしてもよい。
本構成によれば、露光を露光部材から見て焦点位置よりも遠い所からスタートして、焦点位置よりも短い所で終わるので、露光部材の焦点深度範囲を有効に使用できるので、距離規制部材の使用寿命を長くできる。
【0014】
また、上記画像形成装置において、前記距離規制部材の摩耗後の前記離間距離であって、前記離間距離の最終値である最終離間距離をDEとすると、Dw−DE<DI−Dw の関係を満たすように、前記初期離間距離および前記最終離間距離が設定されるようにしてもよい。
露光部材と感光体との間隔(離間距離)が露光部材と露光部材の焦点との距離である作動距離からずれる場合、画質の低下は、使用される露光部材の光学特性に起因して、通常、同間隔が同作動距離より大きくなる場合よりも小さくなる場合の方が大きい。そのため、離間距離を同作動距離より大きく設定することによって、距離規制部材の摩耗によって画質がその限界に至るまでの時間を長くすることができる。すなわち、距離規制部材の使用寿命を長くできる。
【0015】
また、上記画像形成装置において、前記制御部は、前記決定処理において、前記距離規制部材の摩耗によって前記離間距離が前記作動距離と等しくなるまでは、前記カウント値が増加するほど光量を減らす前記補正量を決定し、その後、前記カウント値が増加するほど光量を増やす前記補正量を決定するようにしてもよい。
本構成によれば、作動距離と離間距離との差に係る画質の低下を補償するように、その差を考慮して補正量を決定するので、画質の低下を好適に抑制できる。
【0016】
また、上記画像形成装置において、前記距離規制部材は、前記感光体の長手方向の両端部に対応して二個設けられ、各距離規制部材の磨耗速度が異なる場合には、前記制御部は、前記決定処理において、各磨耗推定量に基づいて前記両端部間における前記離間距離を推定して、それに応じて前記補正量を決定するようにしてもよい。
本構成によれば、印加される機械的圧力の相違によって、各距離規制部材の磨耗量が違う場合であっても、両端部間における任意の位置での各離間距離を推定することによって、適正な補正量を決定できる。
【0017】
また、本明細書によって開示される露光部材の光量補正方法は、感光体と、前記感光体を露光する露光部材と、前記感光体と前記露光部材との間の離間距離を所定距離に規制する距離規制部材とを備えた画像形成装置において、前記露光部材からの光量を補正する方法であって、前記距離規制部材の摩耗により変化する前記離間距離を推定する推定工程と、前記推定工程にて推定された前記離間距離に基づいて前記露光部材の光量を補正する補正量を決定する決定工程と、前記決定工程にて決定された前記補正量で前記光量を補正する補正工程とを含む。
【0018】
上記方法において、光量補正方法において、前記感光体は回転軸を有し、前記距離規制部材は前記感光体と当接する構成であり、該方法は、前記感光体の回転動作に伴い値が変化するパラメータをカウントするカウント工程をさらに含み、前記決定工程において、前記カウント工程にてカウントされたカウント値から前記離間距離が推定されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、距離規制部材の摩耗により変化する離間距離を推定して、推定された離間距離に基づいて露光部材の光量を補正する補正量が決定される。そのため、距離規制部材の摩耗によって離間距離が変化する場合であっても、感光体上への露光に起因する画質の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
一実施形態について
図1から
図10を参照しつつ説明する。
1.カラープリンタの全体構成
図1は、一実施形態に係る電子写真方式のカラープリンタ1の要部を概略的に示す側断面図である。カラープリンタ1は、画像形成装置の一例である。カラープリンタ1は、
図1に示すように、その本体筐体10内に、用紙Sを供給する給紙部20、給紙された用紙Sに画像を形成する画像形成部30、画像が形成された用紙Sを排出する排紙部90、およびこれらの各部の動作を制御する制御装置100とを備える。
【0022】
なお、以下の説明において、方向は、カラープリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、
図1において、紙面に向かって左側を「前側」、紙面に向かって右側を「後側」とし、紙面に向かって奥側を「左側」、紙面に向かって手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。また、画像形成装置はカラープリンタ1に限られず、例えば、モノクロプリンタ、コピー機能およびFAX機能を有する複合機であってもよい。
【0023】
本体筐体10の上部には、開閉自在なアッパーカバー12が設けられている。アッパーカバー12の上面は、本体筐体10から排出された用紙(被記録媒体の一例)Sを蓄積する排紙トレイ13となっており、下方には露光部材の一例であるLEDユニット40が設けられている。LEDユニット40が有するプリントヘッドとしてのLEDプリントヘッド41の発光は、制御装置100および発光制御部110により制御される(
図5参照)。
【0024】
給紙部20は、本体筐体10内の下部に設けられ、本体筐体10に着脱自在に装着される給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Sを画像形成部30へ搬送する用紙供給機構22を主に備えている。用紙供給機構22は、給紙トレイ21の前側に設けられ、給紙ローラ23、分離ローラ24を主に備えている。
【0025】
このように構成される給紙部20では、給紙トレイ21内の用紙Sが、一枚ずつ分離されて上方へ送られ、搬送経路28を通って後向に方向転換され、画像形成部30に供給される。
【0026】
画像形成部30は、4つのLEDユニット40K〜40C、4つのプロセスカートリッジ50K〜50C、転写ユニット70、定着ユニット80とを含む。4つのLEDユニット40K,40Y,40M,40C、および4つのプロセスカートリッジ50K,50Y,50M,50Cは、ブラックK、イエローY、マゼンタM、シアンCの4色に対応する。
【0027】
各プロセスカートリッジ50K〜50Cは、アッパーカバー12と給紙部20との間で前後方向に並んで配置され、
図2に示すように、ドラムユニット51と、ドラムユニット51に対して着脱自在に装着される現像ユニット61とを含む。なお、各プロセスカートリッジ50K〜50Cは、現像ユニット61のトナー収容室66に収容されるトナーの色が相違するのみであり、構成は同一である。
【0028】
ドラムユニット51は、感光体の一例としての感光ドラム53と、スコロトロン型帯電器54とを含む。感光ドラム53は回転軸53Bを有し、回転軸53Bの回転に伴って回転する。
【0029】
現像ユニット61は、現像ローラ63、供給ローラ64、およびトナーを収容するトナー収容室66を有している。現像ユニット61がドラムユニット51に装着され、これにより、
図2に示されるように、上方から感光ドラム53を臨める露光穴55が形成される。露光穴55の下端にLEDプリントヘッド41を保持したLEDユニット40が挿入される。LEDユニット40の詳細は後述する。
【0030】
また、本体筐体10内には、各プロセスカートリッジ50を着脱自在に収容するカートリッジドロア15が設けられている。
【0031】
転写ユニット70は、
図1に示すように、給紙部20と各プロセスカートリッジ50との間に設けられ、駆動ローラ71、従動ローラ72、搬送ベルト73および転写ローラ74を含む。
【0032】
駆動ローラ71および従動ローラ72の間に搬送ベルト73が張設されている。搬送ベルト73は、その外側の面が各感光ドラム53に接している。また、搬送ベルト73の内側には、各感光ドラム53との間で搬送ベルト73を挟持する転写ローラ74が、各感光ドラム53に対向して4つ配置されている。転写ローラ74には、転写時に転写バイアスが印加される。
【0033】
定着ユニット80は、各プロセスカートリッジ50および転写ユニット70の奥側に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを含む。定着ユニット80の用紙搬送下流側には、用紙Sの排出を検知する排紙センサ26が設けられている。
【0034】
このように構成される画像形成部30では、まず、各感光ドラム53の表面(感光面)53Aが、スコロトロン型帯電器54により一様に帯電された後、各LEDプリントヘッド41から照射されるLED光により露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光ドラム53上に画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0035】
また、トナー収容室66内のトナーが、供給ローラ64の回転により現像ローラ63に供給され担持される。現像ローラ63上に担持されたトナーは、現像ローラ63が感光ドラム53に対向して接触するときに、感光ドラム53上に形成された静電潜像に供給される。これにより、感光ドラム53上でトナーが選択的に担持されて静電潜像が可視像化され、反転現像によりトナー像が形成される。
【0036】
次に、搬送ベルト73上に供給された用紙Sが各感光ドラム53と各転写ローラ74との間を通過することで、各感光ドラム53上に形成されたトナー像が用紙S上に転写される。そして、用紙Sが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、用紙S上に転写されたトナー像が熱定着される。熱定着された用紙Sは、排紙部90を介して、本体筐体10の外部に排出されて排紙トレイ13に蓄積される。
【0037】
2.LEDユニットの構成
LEDユニット40は、露光部材の一例であり、
図2および
図3に示されるように、LEDプリントヘッド41、フレーム部42、ローラ支持部材43、ガイドローラ44、および結合部45を含む。LEDユニット40は、感光ドラム53を、感光ドラム53の長手方向(軸方向)へのライン走査によって露光する。
【0038】
LEDプリントヘッド41は、
図3に示されるように、フレーム部42の下端において、例えば、2つのクリップ41Aにより取り付けられ、固定されている。
【0039】
ローラ支持部材43は、例えば、絶縁性の樹脂部材からなるフレーム部42の両端に、例えばネジ止めされている。ローラ支持部材43は、下端に、左右方向内側に向けて延びるローラシャフト43Aが設けられている。ローラシャフト43Aは、ガイドローラ44を回転可能に支持するシャフトである。
【0040】
ガイドローラ44は、距離規制部材およびローラの一例であり、略円筒形状のローラである。ガイドローラ44は、感光ドラム53とLEDプリントヘッド41との間の離間距離Dを所定距離に規制する。ガイドローラ44は、
図3に示すように、感光ドラム53の表面53Aに当接して転がることで、LEDユニット40と感光ドラム53の位置関係を規定、具体的にはLEDプリントヘッド41と表面53Aとの離間距離Dを規定するものである。ガイドローラ44を構成する材料は特に問わないが、感光ドラム53の表面53Aとの間で適度な摩擦係数を有し、耐摩耗性に優れた材料を使用するのが好ましい。例えば、ポリアミド系の樹脂を用いることができる。
【0041】
結合部45は、フレーム部42の両端に設けられ、突起部45Aを有する。突起部45Aは、アッパーカバー12が閉じられる際に、本体フレーム10に形成された係合部10Aと係合して、LEDユニット40を本体フレーム10に固定する。フレーム部42および結合部45は、固定部材を構成する。
【0042】
フレーム部42およびLEDプリントヘッド41は、例えば圧縮バネ(図示せず)により常時下向きに付勢されるようになる。
【0043】
このようなLEDユニット40は、
図2に示すように、接続リンク14AおよびLED取付部材14を介してアッパーカバー12に取り付けられている。
【0044】
各LEDユニット40は、アッパーカバー12に取り付けられた状態において、アッパーカバー12から下方に伸びている。LEDユニット40は、露光位置において、下端に設けられたガイドローラ44が感光ドラム53の表面53Aの上端付近に当接しており、これにより、表面53AとLEDヘッド41との距離Dが一定に保たれる。
【0045】
LEDプリントヘッド41は、用紙Sの搬送方向(前後方向)に直交する主走査方向(左右方向)に複数の発光素子(LED)Pを配置したものである。主走査方向は感光ドラム53の軸方向と等しい。LEDプリントヘッド41は、
図4に示されるように、回路基板41a、LEDアレイチップ41b、および屈折率分布型ロッドレンズアレイ41cを含む。詳しくは、回路基板41a上に、例えば20個のLEDアレイチップ41bが主走査方向に千鳥配置されている。各LEDアレイチップ41bは半導体プロセスにより、半導体基板上に、発光素子Pの一例であるLED(発光ダイオード)を複数形成したものである。LEDアレイチップ41bの光出力側に、単列の屈折率分布型ロッドレンズアレイ41cが設けられている。
【0046】
3.制御装置100と発光制御部110の説明
制御装置100はカラープリンタ1の全体を制御するものであり、CPUなどから構成される演算制御部100A、EEPROM100B、およびカウンタ100Cを含む。制御装置100は、制御部の一例であり、例えば、ASIC(特定用途向けIC)によって構成される。
【0047】
発光制御部110は、制御装置100と協働して、LEDプリントヘッド41の各発光素子Pを発光制御する。本実施形態では、発光制御部110は、制御装置100から、補正された発光データ(光量データ)を受け取り、補正された発光データに基づいて各発光素子Pの発光を制御する。発光制御部110は、
図3に示すようにRAM120、ASIC(特定用途向けIC)130、発振回路140を含む。発光制御部110には、4個のLEDプリントヘッド41K,41Y,41M,41Cが共通接続されており、発光制御部110は4個のLEDプリントヘッド41を一括して発光制御する。
【0048】
また、各LEDプリントヘッド41には、例えば、EEPROM43がそれぞれ設けられている。EEPROM43には、発光制御部110にて、各発光素子Pの発光制御を行うのに必要な発光データが書き込まれている。詳細には、EEPROM43には、各発光素子Pに対応した駆動信号データが格納されている。駆動信号データは、カラープリンタ1の画像形成時において、以下に説明する光量補正処理において読み出され、感光体の回転動作に伴い値が変化するパラメータ、例えば、印刷枚数に応じて補正される。ここでは、駆動信号データは、例えば、駆動時間の情報を含む。そして、駆動時間によって光量を調整する駆動信号が生成され、対応した駆動時間の間、駆動信号によって各発光素子Pが発光される。なお、感光体の回転動作に伴い値が変化するパラメータは、印刷枚数に限られず、感光体の累積回転数であってもよい。駆動信号データは、駆動時間に限られず、例えば、各発光素子Pの駆動電流値であってもよい。
【0049】
3.LEDユニットの光量補正
次に、
図6から
図10を参照して、LEDユニット40の光量補正処理について説明する。光量補正処理は、例えば、カラープリンタ1に対して印刷指示がなされた場合に、所定のプログラムにしたがって、制御装置100によって実行される。なお、これに限られず、光量補正処理は、例えば、発光制御部110によって実行されるようにしてもよい。この場合、発光制御部110が制御部の一例となる。
【0050】
図6に示されるように、通常、発光素子Pから発光されロッドレンズアレイ41cを介して形成される結像は、複数のロッドレンズによる複数の像が重なって形成される合成像である。結像状態CSは、ロッドレンズアレイ41cからの距離によって異なり、結像状態CSに応じて露光量も異なる。そのため、ロッドレンズアレイ41cと感光ドラム53の表面53Aとの離間距離Dが、LEDユニット40の作動距離Dw、詳しくはロッドレンズアレイ41cの端面からロッドレンズアレイ41cの焦点までの距離である作動距離Dwとずれる場合、所望の露光量を得るために発光素子Pからの発光量を補正する必要がある。なお、ここで、作動距離Dwは、露光部材と露光部材の焦点との距離に相当する。
その際、一般に、離間距離Dが作動距離Dwより短い場合と、離間距離Dが作動距離Dwより長い場合とにおいて、結像状態CSが異なるため(
図7参照)、各結像状態CSに応じて発光量を補正する必要がある。
【0051】
本実施形態では、
図6に示されるように、離間距離Dの作動距離Dwからのずれ量に応じて、作動距離Dw+200μm(デファーカス値)の結像状態CS1、作動距離Dw+100μmの結像状態CS2、作動距離Dwの結像状態CS3、作動距離Dw−100μmの結像状態CS4、作動距離Dw−200μmの結像状態CS5の5つの結像状態CS1〜CS5を例に、光量補正を説明する。
【0052】
図7(シミュレーション図)に示されるように、通常、離間距離Dが作動距離Dwより長い場合の方が、離間距離Dが作動距離Dwより短い場合と比べて、ビームスポットの分散が少ない。詳しくは、離間距離Dと作動距離Dwとの差(デファーカス値)が同一であっても、離間距離Dが作動距離Dwより長い場合の方が、離間距離Dが作動距離Dwより短い場合と比べて、ビームスポットの分散が少ない。すなわち、離間距離Dが作動距離Dwより長い場合の方が、LEDユニット40を有効に利用できる。
【0053】
そのため、本実施形態では、デファーカス値を+200μmとして、ガイドローラ44の摩耗前の初期離間距離が「Dw+200μm」とされる。すなわち、離間距離Dの初期値である初期離間距離をDIとすると、Dw<DIの関係を満たすように、初期離間距離DIが設定されている。この構成により、露光を、作動距離Dwよりも遠い所からスタートして、作動距離Dwよりも短い所で終わることによって、焦点深度を有効に使用できるので、ガイドローラ44の使用寿命を長くできる。
【0054】
ここで、初期離間距離DIは、感光ドラム53と各LEDプリントヘッド41との間の離間距離Dを所定距離に規制する距離規制部材、具体的には、使用するガイドローラ44の直径等によって設定される。ここでは、初期離間距離DI(Dw+200μm)が所定距離に相当する。
【0055】
さて、光量補正処理において、
図8に示されるように、まず、制御装置100は、排紙センサ26からの用紙検出信号に基づいて、カウンタ100Cによってカウントされている印刷枚数のカウント値を、カウンタ100Cから取得する(ステップS10)。ここで、印刷枚数は、画像形成部30によって画像が形成された用紙Sの枚数であり、感光体の回転動作に伴い値が変化するパラメータに相当する。
【0056】
次いで、制御装置100は、カウンタ100Cのカウント値から、ガイドローラ44の摩耗量を推定し、推定された摩耗量に基づいて、ガイドローラ44の摩耗により変化する離間距離Dを推定する(ステップS20)。ガイドローラ44の摩耗度は、画像が形成された用紙Sの枚数、すなわち、印刷枚数に応じて増加するため、印刷枚数をカウントすることによって、そのカウント値を補正量に反映させることができる。
【0057】
例えば、
図9に示されるように、印刷枚数が0枚〜25000枚の間(カウント値に対応した範囲に相当)は推定摩耗量を0μmとし、印刷枚数が25000枚〜35000枚の間は推定摩耗量を50μmとし、印刷枚数が35000枚〜50000枚の間は推定摩耗量を100μmとする。そして、推定摩耗量が0μmの場合は、離間距離Dは「Dw+200μm」と推定され、推定摩耗量が100μmの場合は、離間距離Dは「Dw+100μm」と推定され、推定摩耗量が200μmの場合は、離間距離Dは「Dw」と推定される。さらに、推定摩耗量が300μmの場合は、離間距離Dは「Dw−100μm」と推定され、推定摩耗量が400μmの場合は、離間距離Dは「Dw−200μm」と推定される。
【0058】
次いで、制御装置100は、推定された離間距離Dに基づいてLEDプリントヘッド41の光量を補正する補正量を決定する(ステップS30)。補正量の決定に際して、制御装置100は、例えば、
図9に示されるような光量補正テーブルを参照する。光量補正テーブルは、ガイドローラ44の各推定摩耗量、すなわち、推定離間距離Dと各発光素子Pの光量補正量(補正用データ)との対応を示すテーブルであり、例えば、EEPROM100B内に格納されている。その際、印刷枚数とガイドローラ44の摩耗量との関係は、例えば、予め実験・評価により取得し、取得された関係から印刷枚数の各範囲に応じた推定摩耗量が設定される。なお、光量補正テーブルは、各LEDプリントヘッド41に設けられるEEPROM43に格納されていてもよい。
【0059】
このように、本実施形態では、印刷枚数のカウント値に対応した六つ(少なくとも二つに相当)の範囲が設定され、各範囲に対応した補正量が設定される。そのため、ガイドローラ44の摩耗度に応じた補正量を設定でき、補正量が的確化される。
【0060】
また、
図9に示されるように、制御装置100は、各発光素子Pの補正量を、離間距離Dが「Dw+200μm」から作動距離Dwと等しくなるまでは、カウント値が増加するほど光量を減らす値に決定する。また、離間距離Dが作動距離Dwと等しくなった後は、制御装置100は、各発光素子Pの補正量を、カウント値が増加するほど光量を増やす値に決定する。
【0061】
すなわち、通常、離間距離Dと作動距離Dwとの差が大きくなるほど画質の低下が大きくなるため、作動距離Dwに係る画質の低下を補償するように、作動距離Dwを考慮して補正量が決定される。そのため、画質の低下を好適に抑制できる。
【0062】
次いで、制御装置100は、決定された補正量に基づいて、各発光素子Pの光量を補正し、補正光量データを生成し、補正光量データを発光制御部110に供給する。発光制御部110は、補正光量データに基づいて各発光素子Pの発光を制御する。
【0063】
4.光量補正データの補間方法
次に、
図10を参照して光量補正データの補間方法を説明する。
【0064】
4−1.
光量補正データを補間する際、まず、
図10に示される印刷枚数−摩耗推定量のグラフを用いて、補間したいデファーカス値(位置)に対する印刷枚数を算出する。なお、
図10のグラフは、印刷枚数と摩耗量とに関する実験等に基づいて作成される。
【0065】
4−2.
次に、算出した印刷枚数だけ印刷したら、それまで補正値テーブル内の単一の結像状態CSに対応したデータを用いていたのを、走査ライン毎に異なる結像状態CSに対応したデータを用いて印刷するようにする。
【0066】
具体的に示せば、例えば、
図9に示されるように、デファーカス値=150μmでは、デファーカス値=200μmと100μmとの中間であるため、印刷枚数が25000枚となった場合、1走査ライン毎に、結像状態CS1に対応したデータと結像状態CS2に対応したデータとを切替えながら印刷する。さらに、細かく、例えば、デファーカス値=175μmにおいて補正したい場合、例えば、4走査のうち1走査分を結像状態CS2に対応したデータで走査し、残り3走査分を結像状態CS1に対応したデータで走査するようにする。
【0067】
このような補間によって、各印刷枚数範囲に対応した補正量が、さらに、ライン走査における走査ラインに応じて設定されるようにしてもよい。この場合、カウント値に応じて設定される範囲、例えば、印刷枚数の所定範囲内において、さらに走査ラインに応じて、例えば、4ラインあるいは2ラインに応じて補正量が設定され、補正量がより細密化される。そのため、補正量がカウント値の範囲単位、例えば、印刷枚数の範囲単位によって段階的となる不都合を、低減することができる。
【0068】
4.実施形態の効果
本実施形態によれば、ガイドローラ44の摩耗により変化する感光ドラム53とLEDプリントヘッド41との間の離間距離Dを推定して、推定された離間距離Dに基づいてLEDプリントヘッド41の光量を補正する補正量が決定される。その補正量に基づいて発光素子Pの光量が補正される。そのため、ガイドローラ44が摩耗して離間距離Dが変化する場合であっても、感光ドラム53上への露光に係る画質の低下を抑制できる。
【0069】
その際、ガイドローラ44の摩耗量を推定するパラメータとして、用紙Sの印刷枚数が用いられ、印刷枚数のカウント値によってガイドローラ44の摩耗量、すなわち、離間距離Dが推定される。通常、ガイドローラ44の摩耗度は、画像が形成された用紙Sの枚数、すなわち、印刷枚数に応じて増加するため、印刷枚数をカウントすることによって、そのカウント値を光量の補正量に反映させることができる。
【0070】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0071】
(1)制御装置100(制御部)は、決定処理において離間距離Dを推定する際、カウント値の増加にしたがって、推定量の変化率を増加させるようにしてもよい。例えば、
図10に示されるように、印刷枚数30000枚における推定量の変化率ΔW1より印刷枚数40000枚における推定量の変化率ΔW2が大きくなるような推定曲線にしたがって摩擦量、すなわち、離間距離Dを推定するようにしてもよい。この場合、距離規制部材のローラ直径は、摩耗に応じて小さくなるので、摩耗度合(ローラ直径方向肉厚の減少度)が加速していくが、その加速に対応して離間距離を推定し、それにしたがって光量を補正できるので、画質の低下を好適に抑制できる。
【0072】
(2)ガイドローラ44の摩耗後の離間距離Dであって、離間距離Dの最終値である最終離間距離をDEとすると、Dw−DE<DI−Dw の関係を満たすように、初期離間距離DIおよび最終離間距離DEが設定されるようにしてもよい。
【0073】
通常、離間距離DがLEDプリントヘッド41の作動距離Dwとずれる場合、画質の低下は、使用される露光部材の光学特性に起因して、通常、離間距離Dが作動距離Dwより大きくなる場合よりも小さくなる場合の方が大きい(
図7参照)。そのため、離間距離Dを作動距離Dwより大きく設定することによって、ガイドローラ44の摩耗によって画質がその限界に至るまでの時間を長くすることができる。すなわち、ガイドローラ44の使用寿命を長くできる。
【0074】
(3)制御装置100(制御部)は、各ガイドローラ44の磨耗速度が異なる場合には、各磨耗推定量に基づいて両端部間における各離間距離Dを推定して、それに応じて、すなわち、推定された各離間距離Dに応じて光量の補正量を決定するようにしてもよい。この場合、印加される機械的圧力の相違によって、各ガイドローラ44の磨耗量が違う場合であっても、両端部間での離間距離Dを推定することによって、各発光素子Pに対して適正な補正量を決定できる。
また、この場合、磨耗速度(磨耗量)は予め実験・評価により得るようにする。そして、その実験・評価の結果から、パラメータ(印刷枚数)が変わった時の磨耗量を、推定するようにする。そして、磨耗推定量の補間については、二つの距離規制部材間で行うようにする。