(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
糸が走行する糸道に対して第1方向から光を投光する第1投光部と、前記第1方向において前記第1投光部に対向して配置された第1受光部と、前記第1受光部とは異なる位置であって前記第1投光部と前記第1受光部とを結んだ直線上とは異なる位置に配置された第2受光部と、を有する検出部と、
前記第1投光部によって投光され前記第1受光部によって受光された第1の光の検出信号を増幅し、増幅された第1の信号を出力する第1増幅部と、
前記第1投光部によって投光され前記第2受光部によって受光された第2の光の検出信号を増幅し、増幅された第2の信号を出力する第2増幅部と、
前記第1増幅部における増幅率および前記第2増幅部における増幅率を調整する場合には、前記第1の信号に基づいて前記第1増幅部における増幅率の調整である第1調整処理を行い、その後に、前記第2の信号に基づいて前記第2増幅部における増幅率の調整である第2調整処理を行う制御部と、を備える、糸斑信号検出装置。
前記制御部は、前記第1投光部の発光のための制御値を調整して第1の光のゼロ点補正を行った後、前記第1調整処理を行う、請求項1または2に記載の糸斑信号検出装置。
前記制御部は、前記第1投光部および前記第2投光部の少なくとも一方の発光のための制御値を調整して第1の光のゼロ点補正を行った後、前記第1調整処理を行う、請求項2に記載の糸斑信号検出装置。
前記制御部は、前記第1投光部の発光のための制御値を調整して第1の光のゼロ点補正を行った後、当該ゼロ点補正において調整した制御値で前記第1調整処理および前記第2調整処理を行う、請求項1から6のいずれか一項に記載の糸斑信号検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1に示されるように、紡績ユニット(糸巻取機)1は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る装置である。紡績ユニット1には、糸Yの生成経路に沿って上流側から順に、ドラフト装置(給糸装置)2、紡績装置(給糸装置)3、糸送り装置4、糸欠点検出装置5、糸継装置(糸欠点除去装置)6及び巻取装置7が設けられている。
【0020】
このような紡績ユニット1は、複数並設されて、紡績機を構成する。その場合、糸継装置6は、複数の紡績ユニット1間を移動可能とされ、糸Yが切断された紡績ユニット1において糸継動作を行う。つまり、糸継装置6は、複数の紡績ユニット1によって共有されることになる。但し、糸継装置6を各紡績ユニット1に設けることも可能である。
【0021】
ドラフト装置2は、バックローラ対8、サードローラ対9、エプロンベルト11が架けられたミドルローラ対12、及びフロントローラ対13を有している。ドラフト装置2は、ケンス14に収容されたスライバSを各ローラ対8,9,12,13によって延伸して繊維束Fを生成する。
【0022】
紡績装置3は、ドラフト装置2によって生成された繊維束Fにエアーの旋回流によって撚りを与えて糸Yを生成する空気紡績装置である。より詳細には(ただし、図示省略)、紡績装置3は、紡績室、繊維案内部、旋回流発生ノズル及び中空ガイド軸体を有している。繊維案内部は、ドラフト装置2によって生成された繊維束Fを紡績室内に案内する。旋回流発生ノズルは、紡績室内に旋回流を発生させることで、紡績室内に案内された繊維束Fの繊維端を反転させつつ旋回させる。中空ガイド軸体は、紡績された糸Yを紡績室内から紡績装置3の外部に案内する。
【0023】
糸送り装置4は、デリベリローラ15及びニップローラ16を有している。糸送り装置4は、紡績装置3によって生成された糸Yを一対のローラ15,16でニップして巻取装置7に送り出す。
【0024】
糸欠点検出装置(糸斑信号検出装置)5は、ヤーンクリアラと称される装置であり、紡績装置3と巻取装置7との間において、糸斑信号を検出することにより、糸道Ya(
図3参照)を走行する糸Yの糸欠点を検出する。紡績ユニット1は、検出した糸欠点が所定条件を満たしたときに糸Yを切断する機能を有している。
【0025】
糸継装置6は、サクションパイプ17、サクションマウス18及びスプライサ19を有している。サクションパイプ17は、回動可能に支持されており、紡績装置3側の糸Yの糸端を捕捉してスプライサ19に案内する。サクションマウス18は、回動可能に支持されており、巻取装置7側の糸Yの糸端を捕捉してスプライサ19に案内する。スプライサ19は、サクションパイプ17及びサクションマウス18によって案内された糸端同士の糸継ぎを行う。
【0026】
巻取装置7は、糸YをパッケージPに巻き取る装置であり、クレードルアーム21、巻取ドラム22及びトラバース装置23を有している。クレードルアーム21は、パッケージPを回転可能に支持しつつ、パッケージPの表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。巻取ドラム22は、クレードルアーム21によって接触させられたパッケージPを回転させる。トラバース装置23は、巻取ドラム22によって回転させられているパッケージPに対して糸Yを所定幅で綾振りする。なお、
図1では、紡績ユニット1は、チーズ形状のパッケージPを巻き取るように図示されているが、コーン形状のパッケージPを巻き取ることも可能である。紡績ユニット1が巻き取るパッケージPの形状は特に限定されない。
【0027】
図2に示されるように、糸欠点検出装置5は、糸欠点検出部5a及び切断部5bを有している。糸欠点検出部5aは、2軸の光源を有する光学式のセンサであり、走行する糸Yに向けて投光した光を受光することにより糸斑を検出する。糸欠点検出部5aは、走行する糸Yの太さを示す信号を制御装置24に出力する。切断部5bは、制御装置24が糸欠点検出部5aから入力された信号に基づいて糸欠点を除去すべきと判断した場合に、糸Yを切断する。
【0028】
制御装置24は、紡績ユニット1の全体を制御する装置であり、中央処理装置25、ROM26、RAM27及びハードディスク28を有している。制御装置24には、表示装置31及び入力装置32が接続されている。表示装置31は、オペレータに各種情報を表示する。入力装置32は、オペレータが紡績ユニット1に各種指示を与えるための例えば操作ボタンである。なお、制御装置24は、各紡績ユニット1に設けられていても良いし、複数の紡績ユニット1から構成されるグループ毎に1つの制御装置24を設けても良く、更には紡績機が備える全ての紡績ユニット1に対して1つの制御装置24を設けても良い。
【0029】
以下、糸欠点検出装置5の糸欠点検出部5aについて詳細に説明する。
図3は、糸欠点検出部5aのブロック図である。糸欠点検出部5aは、第1方向D1から糸道Yaに対して光を投光する第1LED(第1投光部)41と、第1方向D1に略直交する第2方向D2から糸道Yaに対して光を投光する第2LED(第2投光部)42とを備えている。なお、第1方向および第2方向は、互いに略直交する場合に限られず、直角以外の所定の角度をなすように互いに交差していてもよい。糸欠点検出部5aは、第1方向D1において第1LED41に対向して配置された第1PD(第1受光部)43と、第2方向D2において第2LED42に対向して配置された第2PD(第2受光部)44とを備えている。第1LED41と第1PD43との間、および、第2LED42と第2PD44との間には、走行する糸Yが配置されている。これらの第1LED41、第2LED42、第1PD43、及び第2PD44を有して、糸欠点検出部5aの検出部40が構成されている。このように、糸欠点検出装置5の糸欠点検出部5aは、2軸の光源および2軸の受光素子を有している。なお、LEDは、光源としての発光ダイオード(Light Emitting Diode)であり、PDは受光素子としてのフォトダイオード(Photodiode)である。
【0030】
検出部40において、第1LED41および第2LED42は糸Yに対して異なる方向から光を照射(すなわち投光)する。第1PD43は、第1LED41から照射されて糸Yによって一部が遮られた透過光(第1の光)と、第2LED42から照射されて糸Yで反射した反射光(第2の光)とを受光する。第2PD44は、第2LED42から照射されて糸Yによって一部が遮られた透過光(第1の光)と、第1LED41から照射されて糸Yで反射した反射光(第2の光)とを受光する。このように、糸欠点検出部5aでは、第1LED41および第2LED42のそれぞれは、透過光用の光源と反射光用の光源とを兼ねている。第1PD43および第2PD44のそれぞれは、透過光の受光部と反射光の受光部とを兼ねている。すなわち、1つ受光部が、透過光の受光に用いられる一方、反射光の受光にも用いられる。
【0031】
さらに、糸欠点検出部5aは、増幅器46及び47、スイッチング素子48aから48d、ハイパスフィルタ回路49aから49d、サンプルホールド回路50aから50d、増幅回路51aから51d、加算器52a及び52b、発信器53、時分割回路54、駆動回路56a及び56b、及びマイクロコンピュータ(制御部)60を有している。以下、マイクロコンピュータをマイコンと称する。
【0032】
マイコン60は、時分割回路54を制御する機能を有している。マイコン60は、時分割回路54を制御して、発信器53の出力パルスを分割し、駆動回路56a、スイッチング素子48a及び48d、サンプルホールド回路50a及び50dを同時に駆動する。さらに、マイコン60は、時分割回路54を制御して、その駆動と交互するようにして、駆動回路56b、スイッチング素子48b及び48c、サンプルホールド回路50b及び50cを同時に駆動する。
【0033】
より具体的には、まず駆動回路56aが駆動され、第2LED42から糸Yに向けて光が照射される。第2PD44は、糸Yを透過した透過光を受光し、受光量に応じた信号を透過光の検出信号として出力する。第1PD43は、糸Yにより反射した反射光を受光し、受光量に応じた信号を反射光の検出信号として出力する。このとき、スイッチング素子48a及び48dは閉じられている(スイッチング素子48b及び48cは開かれている)。第2PD44の透過受光量に係る検出信号は、ハイパスフィルタ回路49aを経てサンプルホールド回路50aに保持される。第1PD43の反射受光量に係る検出信号は、ハイパスフィルタ回路49dを経てサンプルホールド回路50dに保持される。
【0034】
次に、駆動回路56bが駆動され、第1LED41から糸Yに向けて光が照射される。第1PD43は、糸Yを透過した透過光を受光し、受光量に応じた信号を透過光の検出信号として出力する。第2PD44は、糸Yにより反射した反射光を受光し、受光量に応じた信号を反射光の検出信号として出力する。このとき、スイッチング素子48b及び48cは閉じられている(スイッチング素子48a及び48dは開かれている)。第1PD43の透過受光量に係る検出信号は、ハイパスフィルタ回路49bを経てサンプルホールド回路50bに保持される。第2PD44の反射受光量に係る検出信号はハイパスフィルタ回路49cを経てサンプルホールド回路50cに保持される。
【0035】
サンプルホールド回路50aに保持された信号は、増幅回路51aによって増幅され、サンプルホールド回路50bに保持された信号は、増幅回路51bによって増幅される。そして、増幅された信号は加算器52aで加算され、透過信号(第1の信号)Fとして出力される。一方、サンプルホールド回路50cに保持された信号は、増幅回路51cによって増幅され、サンプルホールド回路50dに保持された信号は、増幅回路51dによって増幅される。そして、増幅された信号は加算器52bで加算され、反射信号(第2の信号)Rとして出力される。ここで、透過信号Fは糸1の太さ信号に相当し、反射信号Rは異物混入の有無を示す信号に相当する。
【0036】
増幅回路51a、増幅回路51b、および加算器52aによって、透過光用増幅部(第1増幅部)57aが構成されている。すなわち、この透過光用増幅部57aは、第1LED41によって投光され糸Yを介して第1PD43によって受光された透過光の検出信号を増幅すると共に、第2LED42によって投光され糸Yを介して第2PD44によって受光された透過光の検出信号を増幅し、増幅された透過信号Fをマイコン60に出力する。また、増幅回路51c、増幅回路51d、および加算器52bによって、反射光用増幅部(第2増幅部)57bが構成されている。すなわち、この反射光用増幅部57bは、第1LED41によって投光され糸Yを介して第2PD44によって受光された反射光の検出信号を増幅すると共に、第2LED42によって投光され糸Yを介して第1PD43によって受光された反射光の検出信号を増幅し、増幅された反射信号Rをマイコン60に出力する。
【0037】
マイコン60は、透過光用増幅部57aから出力された透過信号Fおよび反射光用増幅部57bから出力された反射信号Rをそれぞれ入力する。そして、マイコン60は、糸Yを介して得られる透過信号F及び反射信号Rに基づいて糸Yの糸斑信号を検出する。マイコン60は、透過光用増幅部57aから出力された透過信号Fおよび反射光用増幅部57bから出力された反射信号Rをアナログデジタル変換するためのADC61を有している。
【0038】
糸欠点検出部5aでは、第1LED41、第2LED42、各スイッチング素子48aから48dおよび各サンプルホールド回路50aから50dを時分割回路54の出力パルスに同期させて駆動することにより、外部から侵入する光や他方の光源による影響が防止されている。さらに、1つの検出部40で、糸Yの太さ及び糸Yの異物混入に対する監視を行うことができ、より確実な太さ検出および異物検出が可能になっている。特に、糸欠点検出部5aによれば、光源が1つしか無く1方向からしか糸の太さを検出しないクリアラと比較して、糸Yの扁平欠陥の見逃しが少ないといった特長がある。また、時分割回路54により、2方向からの入力信号をマイコン60に交互に入力することによって、糸欠点検出部5a全体として連続した太さの監視および異物監視を実現することができる。
【0039】
本実施形態の糸欠点検出装置5の糸欠点検出部5aにおけるマイコン60は、透過信号Fに基づいて透過光用増幅部57aにおける増幅率を調整する機能、すなわち透過光のゲイン調整機能を有する。また、マイコン60は、反射信号Rに基づいて反射光用増幅部57bにおける増幅率を調整する機能、すなわち反射光のゲイン調整機能を有する。さらに、マイコン60は、反射光用増幅部57bの増幅回路51c及び51dのそれぞれにバイアス電圧を印加すると共に、これらのバイアス電圧を調整する機能を有する。また、マイコン60は、駆動回路56aおよび駆動回路56bを制御することにより、第1LED41および第2LED42のそれぞれに印加する駆動電圧(発光のための制御値)を調整する機能を有する。マイコン60は、増幅回路51c及び51dのそれぞれに印加するバイアス電圧をデジタルアナログ変換により生成するためのDAC62を有している。また、マイコン60は、駆動回路56a及び56bのそれぞれに印加する制御電圧をデジタルアナログ変換により生成するためのDAC63を有している。
【0040】
以下、マイコン60によって実行されるゲイン調整処理(検出部40のゲイン調整方法)について説明する。
図4は、糸欠点検出部5aのマイコン60におけるゲイン調整処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4に示されるように、マイコン60は、透過光用増幅部57aにおける増幅率および反射光用増幅部57bにおける増幅率を調整する場合には、まず、透過光用増幅部57aにおける増幅率を調整する。すなわち、透過光のゲインを調整する(ステップS1)。そして、透過光のゲインを調整した後に、反射光用増幅部57bにおける増幅率を調整する。すなわち、反射光のゲインを調整する(ステップS2)。マイコン60によるこれらのゲイン調整処理は、オペレータの操作に応じて適時に実行することができる。たとえば、これらのゲイン調整処理は、糸欠点検出装置5の設置時に実行されてもよいし、パッケージPの巻き取り開始前に実行されてもよい。なお、糸欠点検出装置5あるいは紡績ユニット1の工場出荷時に実行されてもよい。
【0041】
以下のゲイン調整処理では、所定の光反射率を有する色の第1ゲージ(第1色の線状体)と、第1ゲージの光反射率とは異なる反射率を有する色の第2ゲージ(第2色の線状体)とが標準ゲージとして用意される。第1ゲージと第2ゲージは、所定の太さを有しており、糸Yの走行位置と同じ位置に挿入(配置)可能である。第1ゲージの色(第1色)は、たとえば、糸Yに近い色である。第2ゲージの色(第2色)は、たとえば、糸Yに含まれうる異物に近い色である。
【0042】
図5は、透過光のゲイン調整処理の処理手順を示すフローチャートであり、
図6は、オペレータの操作および表示ランプ点灯パターンを併記したチャートである。オペレータに操作を促すための表示ランプは、オペレータが視認できるよう、たとえば制御装置24に設けられている。但し、表示ランプは、糸欠点検出装置5に設けても良く、オペレータが視認できる位置であれば、特に限定されない。また、
図6(
図9でも同様)の「オペレータの操作」において、「B」は操作ボタンが押されることを意味し、「1」は第1ゲージが糸道Yaに挿入されることを意味し、「2」は第2ゲージが糸道Yaに挿入されることを意味し、破線の丸印は何もゲージが挿入されていないことを意味する。
【0043】
まず、ゲイン調整待機状態のマイコン60に対し、オペレータにより操作ボタンが押され、これによってゲイン調整処理が開始する。次に、
図5に示されるように、マイコン60は、ゼロ点補正を行う(ステップS11)。このゼロ点補正とは、糸道Yaに何も配置されていない場合の透過信号Fに応じた電圧(出力値)が予め定められた電圧となるように、第1LED41および第2LED42に印加する駆動電圧を調整する処理である。具体的には、マイコン60は、透過信号Fに応じた電圧がゼロ点電圧V
0となるように駆動電圧を調整する(
図7(a)および(b)参照)。なお、電圧がV
0となるように調整するにあたり、実際に測定される電圧とゼロ点電圧V
0との偏差が所定の差以内に収まっていることを条件とすることができる(後述するステップS18参照)。この点は、以下に説明する他の電圧調整に関しても同様である。
【0044】
次に、マイコン60は、初期値を設定し、ゲージ無しでの電圧(ゼロ点電圧)を取得する(ステップS12)。次に、マイコン60は、ゲージ無しでの傾き計算処理を行う(ステップS13)。ここでは、マイコン60は、糸道Yaに何も配置されていない状態で、ゲイン設定値すなわち透過光用増幅部57aにおける増幅率を変化させ、各増幅率に応じた透過信号Fの出力電圧を記憶する。このように、糸道Yaに何もない状態で増幅率を変化させることにより、ゼロ点がゲインに応じてどのように変化するかを予測することができる。次に、マイコン60は、オペレータに対して「第2ゲージ要求」を意味する点灯パターンにて表示ランプを点灯させる。
【0045】
次に、オペレータにより操作ボタンが押されると、マイコン60は、第2ゲージが挿入されたことを検出した後、ゲイン調整を行う(ステップS14;第1調整処理)。ここでは、マイコン60は、第2ゲージが糸道Yaに配置された際の透過信号Fに応じた電圧が予め定められた基準電圧(第1基準出力値)V
a(電圧V
1は電圧の実測値)となるように、透過光用増幅部57aにおける増幅率を変化させ、増幅率G
aとする。ここで、
図7(a)に示されるように、V
a=V
1−V
0が成り立っている。このゲイン調整においては、ステップS13で記憶した、ゲージ無しの場合の各増幅率に応じた透過信号Fの出力電圧を参照して増幅率G
aを決めることが望ましい。これによって、透過光のゲイン調整の精度が向上する。
【0046】
なお、
図7(a)では、糸Yが太いときの電圧が大きくなるように、透過信号Fに応じた電圧は反転されているため、透過光の受光量が大きいほど透過信号Fの出力電圧は低くなり、透過光の受光量が小さいほど透過信号Fの出力電圧は高くなる。次に、マイコン60は、オペレータに対して「ゲージ無し要求」を意味する点灯パターンにて表示ランプを点灯させる。
【0047】
次に、オペレータにより操作ボタンが押されると、マイコン60は、第2ゲージが抜き取られたことを検出した後、ゼロ点補正を行う(ステップS15)。ここでの処理は、上述したステップS11での処理と同様である。次に、オペレータに対して「第2ゲージ要求」を意味する点灯パターンにて表示ランプを点灯させる。
【0048】
次に、オペレータにより操作ボタンが押されると、マイコン60は、第2ゲージが挿入されたことを検出した後、第2ゲージ挿入時の電圧(ゲージ電圧)を取得する(ステップS16)。次に、マイコン60は、オペレータに対して「ゲージ無し要求」を意味する点灯パターンにて表示ランプを点灯させる。
【0049】
次に、オペレータにより操作ボタンが押されると、マイコン60は、第2ゲージが抜き取られたことを検出した後、ゲージ無しでの電圧(ゼロ点電圧)を取得する(ステップS17)。次に、マイコン60は、V
1とV
0との差(V
1-V
0)が目標の範囲内であるか否かを判断する(ステップS18;合格判定処理)。V
1とV
0との差が目標の範囲内である場合(ステップS18:YES)、マイコン60は、オペレータに対し合格である旨を報知し(ステップS19)、透過光のゲイン調整処理を終了する。一方、V
1とV
0との差が目標の範囲外である場合(ステップS18:NO)、マイコン60は、オペレータに対し不合格である旨を報知し(ステップS20)、ステップS11の処理に戻る。
【0050】
以上一連の処理により、透過光すなわち透過信号Fのゲイン調整が行われる。なお、上記したステップS15からS17の処理は、ゲイン調整の精度を高めるために行われる処理である。なお、ステップS15からS17の処理を省略することもできる。
【0051】
図8は、反射光のゲイン調整処理の処理手順を示すフローチャートであり、
図9は、オペレータの操作および表示ランプ点灯パターンを併記したチャートである。
【0052】
まず、マイコン60は、バイアス調整を行う(ステップS21)。このバイアス調整とは、糸道Yaに何も配置されていない場合の反射信号Rに応じた電圧(出力値)が予め定められた電圧となるように電圧を調整する処理であり、反射光のゼロ点調整に相当する。具体的には、マイコン60は、反射信号Rに応じた電圧がゼロ点電圧V
2となるように駆動電圧を調整する(
図10(a)および(b)参照)。次に、マイコン60は、オペレータに対して「第1ゲージ要求」を意味する点灯パターンにて表示ランプを点灯させる。
【0053】
次に、オペレータにより操作ボタンが押されると、マイコン60は、第1ゲージが挿入されたことを検出した後、第1ゲージを用いての傾き計算処理を行う(ステップS22)。ここでは、マイコン60は、糸道Yaに第1ゲージが配置された状態で、ゲイン設定値すなわち反射光用増幅部57bにおける増幅率を変化させ、各増幅率に応じた反射信号Rの出力電圧を記憶する。このように、糸道Yaに第1ゲージが配置された状態で増幅率を変化させることにより、第1ゲージの挿入時における出力信号(反射信号R)がゲインに応じてどのように変化するかを予測することができる。次に、マイコン60は、オペレータに対して「第2ゲージ要求」を意味する点灯パターンにて表示ランプを点灯させる。
【0054】
オペレータにより操作ボタンが押されると、マイコン60は、反射信号Rに基づいて、第2ゲージが挿入されたか否かを判断する(ステップS23)。第2ゲージが挿入されていないと判断すると(ステップS23:NO)、マイコン60は、ゲージ入れ間違いの報知を行い(ステップS24)、ステップS23の処理に戻る。これらのステップS23及びS24の処理は、ゲージ入れ間違い検出処理に相当する。この処理によって、ゲージの入れ間違いのみならず、ゲージの入れ忘れ若しくはゲージの抜き忘れを判定することもできる。また、ゲージ入れ間違い処理を他のゲージの挿入及び/又は抜き取りタイミングで行うようにしてもよいし、同様の処理を透過光のゲイン調整で行ってもよい。
【0055】
ステップS23で第2ゲージが挿入されたと判断すると(ステップS23:YES)、マイコン60は、ゲイン調整を行う(ステップS25;第2調整処理)。ここでは、マイコン60は、第1ゲージが糸道Yaに配置された際の反射信号Rに応じた電圧と、第2ゲージが糸道Yaに配置された際の反射信号Rに応じた電圧との電位差ΔVが予め定められた基準電位差(第2基準出力値)V
bとなるように、反射光用増幅部57bにおける増幅率を変化させ、増幅率G
bとする(
図10(a)および(b)参照)。このゲイン調整においては、ステップS22で記憶した、第1ゲージを挿入した場合の各増幅率に応じた反射信号Rの出力電圧を参照して、増幅率G
bを決めることが望ましい。これによって、反射光のゲイン調整の精度が向上する。次に、マイコン60は、オペレータに対して「ゲージ無し要求」を意味する点灯パターンにて表示ランプを点灯させる。
【0056】
オペレータにより操作ボタンが押されると、マイコン60は、第2ゲージが抜き取られたことを検出した後、バイアス調整を行う(ステップS26)。ここでの処理は、上述したステップS21での処理と同様である。次に、オペレータに対して「第2ゲージ要求」を意味する点灯パターンにて表示ランプを点灯させる。
【0057】
オペレータにより操作ボタンが押されると、マイコン60は、第2ゲージが挿入されたことを検出した後、第2ゲージ挿入時の電圧(第2ゲージ電圧)を取得する(ステップS27)。次に、マイコン60は、オペレータに対して「第1ゲージ要求」を意味する点灯パターンにて表示ランプを点灯させる。
【0058】
オペレータにより操作ボタンが押されると、マイコン60は、第1ゲージが挿入されたことを検出した後、第1ゲージ挿入時の電圧(第1ゲージ電圧)を取得する(ステップS28)。次に、マイコン60は、オペレータに対して「ゲージ無し要求」を意味する点灯パターンにて表示ランプを点灯させる。
【0059】
オペレータにより操作ボタンが押されると、マイコン60は、第1ゲージが抜き取られたことを検出した後、ゲージ無しでの電圧(ゼロ点電圧)を取得する(ステップS29)。次に、マイコン60は、第1ゲージが糸道Yaに配置された際の反射信号Rに応じた電圧と、第2ゲージが糸道Yaに配置された際の反射信号Rに応じた電圧との電位差ΔVが目標の範囲内であるか否かを判断する(ステップS30;合格判定処理)。電位差ΔVが目標の範囲内である場合(ステップS30:YES)、マイコン60は、オペレータに対し合格である旨を報知し(ステップS31)、反射光のゲイン調整処理を終了する。一方、電位差ΔVが目標の範囲外である場合(ステップS30:NO)、マイコン60は、オペレータに対し不合格である旨を報知し(ステップS31)、ステップS21の処理に戻る。
【0060】
以上一連の処理により、反射光すなわち反射信号Rのゲイン調整が行われる。なお、上記したステップS26からステップS29の処理は、ゲイン調整の精度を高めるために行われる処理である。なお、ステップS26からステップS29の処理を省略することもできる。
【0061】
本実施形態に係る糸欠点検出装置5、紡績ユニット1、および糸欠点検出装置5の検出部40のゲイン調整方法によれば、マイコン60によって、透過光用増幅部57aにおける増幅率および反射光用増幅部57bにおける増幅率が調整される際、透過信号Fに基づいて透過光用増幅部57aにおける増幅率が調整され、その後に、反射信号Rに基づいて反射光用増幅部57bにおける増幅率が調整される。反射光用増幅部57bにおける増幅率が調整されるのは、透過光用増幅部57aにおける増幅率が調整された後である。第1LED41あるいは第2LED42の光量は既に調整済みであり、第1LED41あるいは第2LED42の光量は一定となっている(
図7(a)および(b)参照)。これにより、反射信号Rのゲインが意図せずに変わってしまうことが防止される。したがって、検出部40が2軸の光源を有する場合において、検出部40のゲインを精度よく調整することができる。
【0062】
糸欠点検出装置5のように、1つの受光部が、透過光の受光に用いられる一方、反射光の受光にも用いられる。第1LED41あるいは第2LED42の光量が変化すると、透過信号Fだけでなく反射信号Rも影響を受けることになる。また、第1LED41あるいは第2LED42の光量が変化する要因としてゼロ点補正があるが、透過光のゼロ点補正を行う際に第1LED41あるいは第2LED42の光量も変化するため、同時に反射光の光量の変化してしまう。また、ゼロ点補正が完了した時の第1LED41あるいは第2LED42の光量は、透過光用増幅部57aのゲインにも依存する。透過光用増幅部57aの感度が良くなればそれだけ必要な光量が少なくて済むためである。このような特性を有する糸欠点検出装置5においても、上記したようなマイコン60によるゲイン調整処理およびゲイン調整方法によれば、反射信号Rのゲインが意図せずに変わってしまうことが防止され、ゲイン調整の精度が高められる。
【0063】
第2ゲージを用いて、透過信号Fに応じた電圧が基準電圧V
aとなるように、透過光用増幅部57aにおける増幅率が調整され、その後、第1ゲージおよび第2ゲージを用いて、各反射信号Rに応じた電圧同士間の電位差ΔVが基準電位差V
bとなるように、反射光用増幅部57bにおける増幅率が調整される。このように、第1ゲージおよび第2ゲージを用いることにより、検出部40のゲイン調整の精度がより一層向上する。
図10(a)に示されるように、第1ゲージおよび第2ゲージは、ゲイン設定値の変化に対してそれぞれ所定の傾きを有するが、第1LED41あるいは第2LED42の光量が変わると、これらの出力電圧がオフセットする。オフセットする量は、第1ゲージおよび第2ゲージで(ゲージの色によって)異なるが、本実施形態によれば、反射信号Rのゲイン調整時には光量が一定になっているため、ゲイン調整の精度が低下することが防止される。
【0064】
透過光のゼロ点補正により、第1LED41および第2LED42の光量が一定になる。よって、透過信号Fのゲイン調整および反射信号Rのゲイン調整の双方の精度が向上する。
【0065】
また、反射光のゼロ点補正(バイアス調整)により、反射信号Rに応じた電圧がオフセットする(
図10(b)参照)。この時点では、第1LED41あるいは第2LED42の光量は既に調整されているため、第1LED41あるいは第2LED42の光量は一定となっている。よって、反射信号Rのゲイン調整の精度がより一層向上する。
【0066】
反射信号Rにおけるゼロ点補正(バイアス調整)も、透過光のゲイン調整を終えてから行われるため、ゼロ点補正およびゲイン調整の精度が一層向上する。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の糸巻取機は、紡績機を構成する紡績ユニットに限定されず、自動ワインダを構成するワインダユニット等、その他の糸巻取機であってもよい。また、本発明の糸斑信号検出装置は、自動ワインダのクリアラ、あるいはその他の糸巻取機のクリアラであってもよい。
【0068】
上述した紡績ユニット1では、糸を供給する給糸装置がドラフト装置2及び紡績装置3によって構成されていたが、本発明の給糸装置は、糸が巻き付けられたボビンから糸を供給するように構成された装置等、その他の給糸装置であってもよい。
【0069】
本発明の糸巻取機は、上述した紡績ユニット1のように、表示装置を備えていてもよいし、別途、パソコン等の表示装置が接続されるものであってもよい。
【0070】
本発明の糸巻取機が紡績ユニットである場合、デリベリローラ及びニップローラによって紡績装置から糸を引き出すものに限定されず、紡績装置の下流側において糸を貯留する糸貯留ローラによって紡績装置から糸を引き出すものであってもよい。更に、糸欠点を検出した場合における糸の切断は、糸欠点検出装置が有する切断部以外のカッターや、紡績装置における旋回流の停止によって実施されてもよい。
【0071】
本発明の糸斑信号検出装置では、透過光用増幅部のゲイン調整において、第2ゲージに代えて第1ゲージを用いてもよい。また、所定の太さを有する第1ゲージおよび第2ゲージとは異なる別のゲージを用いてもよい。また、投光部(LED)の種類に応じて、異なる色のゲージを用いて透過光用増幅部のゲイン調整を行うこともできる。
【0072】
本発明の糸斑信号検出装置では、反射光用増幅部のゲイン調整において、糸道Yaに何も挿入しない場合と、第1または第2ゲージを挿入した場合とにおける出力電圧に基づいてゲイン調整を行ってもよい。
【0073】
図6および
図9に記載の表示ランプの色は、あくまでも一例である。表示ランプの点灯パターンを所定のパターンにすることによってオペレータに報知する以外にも、表示装置にメッセージを表示しても良い。
【0074】
検出部は、2つの投光部を有する場合に限られない。いずれか一方の投光部を省略し、1つの投光部のみを設けてもよい。この場合、検出部は、糸道に対して所定の方向から光を投光する投光部と、その所定の方向において投光部に対向する透過光用受光部と、透過光用受光部とは異なる位置に配置された反射光用受光部とを有する。反射光用受光部は1つ又は複数設けることができる。たとえば、2つの反射光用受光部を設ける場合には、2つの反射光用受光部を、反射光を受光可能な異なる位置に配置する。この場合、2つの反射光用受光部を、投光部および透過光用受光部を結んだ直線(又は当該直線を含む平面)に対して対称に配置してもよい。
【0075】
反射光用増幅部とは別に、独立してバイアス調整部を設けてもよい。駆動電圧を制御値とする場合に限られず、投光部に供給する電流を制御値としてもよい。電圧を出力値とする場合に限られず、電流を出力値としてもよい。
【0076】
光源の種類(投光部)はLEDに限られず、その他の小型光源であっても良い。小型光源としては、小型白熱電球(豆電球)、ハロゲン電球、キセノンチューブ等がある。受光部は、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、CdSセル等であっても良い。