特許第5982952号(P5982952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982952
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】塗布膜形成装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20160818BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20160818BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20160818BHJP
   B05C 9/10 20060101ALI20160818BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160818BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20160818BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   H05B33/10
   B05C5/00 101
   B05C11/10
   B05C9/10
   H05B33/14 A
   H05B33/12 B
   H05B33/22 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-77881(P2012-77881)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-206865(P2013-206865A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】小谷 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】宮本 慎一
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−048915(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/084816(WO,A1)
【文献】 特開2004−327357(JP,A)
【文献】 特開2012−038739(JP,A)
【文献】 特開2003−217842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁に囲まれる領域を画素領域とし、一方向である主走査方向と主走査方向と直交する方向である副走査方向とに前記画素領域が並ぶ基板を用い、
前記基板に向けて液柱状のインクを切れ目なく吐出するノズルと、
前記ノズルと前記基板とを相対的に前記主走査方向に動かす主走査部と、
前記基板の上で前記副走査方向に前記ノズルを動かす副走査部と、
前記副走査部と前記主走査部とを交互に駆動する制御部と、
前記インクを圧送するタンクと、
前記タンクから圧送される前記インクの流量を制御して前記ノズルに供給する流量制御弁と、
前記タンクと前記流量制御弁との間の配管に設置された冷却器と、
前記基板を支持するステージと、
前記基板上の雰囲気温度よりも低く、且つ、大気圧下でインクが乾燥可能な温度を目標乾燥温度とし、前記インクの温度を前記目標乾燥温度に調整する温度調整部と、を備え
前記温度調整部は、前記冷却器によって前記配管の温度を調整するとともに、前記タンク、前記ノズル、および、前記ステージの温度を調整することで前記インクの温度を前記目標乾燥温度に調整する
ことを特徴とする塗布膜形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、基板に向けて切れ目なく液柱状のインクを吐出することで塗布膜を形成する塗布膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子における発光層等の機能層を液体から形成する装置としてインクジェット装置が知られている。インクジェット装置は、インクを微小な液滴として吐出するノズルを備えて、機能層の形成材料が含まれる液滴を機能層が形成される部位に吐出する。しかしながら、インクジェット装置では、微小な液滴が間欠的に吐出されるため、微細な液膜を形成することが可能であるとは言え、インクの乾燥によるノズルの目詰まりが不可避な問題となっている。そこで、液柱状のインクを吐出するノズルを備えて、該ノズルと基板とを相対的に移動させながらインクを塗布することにより、基板上に塗布膜を形成する塗布膜形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−75640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の塗布膜形成装置では、インクの流動性を得るためにインクジェット装置と比べて沸点の低い溶媒が用いられる。こうしたインクによって形成された塗布膜は、インクジェット装置に比べて乾燥速度が速くなり、塗布されたインクが流動する前に乾燥することとなる。このため、画素領域内に塗布されたインクが平坦になる前に、インクの乾燥が始まり、画素領域の中央での膜厚が画素領域の端における膜厚よりも厚くなる傾向がある。一方で、有機EL素子の素子構造には、画素領域の中央の膜厚と画素領域の端における膜厚とが等しくなる膜厚の分布や、画素領域の中央の膜厚が画素領域の端における膜厚よりも薄くなる膜厚の分が望まれる場合が少なくない。こうした場合には、所望の素子特性を得るために、機能層以外の層における膜厚分布の調整が余儀なくされている。それゆえに、液柱状のインクを切れ目なく吐出することで画素領域に塗布膜を形成する塗布膜形成装置では、画素領域に形成される塗布膜の膜厚分布の仕様を変更する機能が求められている。
【0005】
本開示の技術は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、画素領域に形成される塗布膜における膜厚分布の仕様を変更できる塗布膜形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
本開示の塗布膜形成装置の一態様は、隔壁に囲まれる領域を画素領域とし、一方向である主走査方向と主走査方向と直交する方向である副走査方向とに前記画素領域が並ぶ基板を用い、前記基板に向けて液柱状のインクを切れ目なく吐出するノズルと、前記ノズルと前記基板とを相対的に前記主走査方向に動かす主走査部と、前記基板の上で前記副走査方向に前記ノズルを動かす副走査部と、前記副走査部と前記主走査部とを交互に駆動する制
御部と、前記インクを圧送するタンクと、前記タンクから圧送される前記インクの流量を制御して前記ノズルに供給する流量制御弁と、前記タンクと前記流量制御弁との間の配管に設置された冷却器と、前記基板を支持するステージと、前記基板上の雰囲気温度よりも低く、且つ、大気圧下でインクが乾燥可能な温度を目標乾燥温度とし、前記インクの温度を前記目標乾燥温度に調整する温度調整部と、を備え、前記温度調整部は、前記冷却器によって前記配管の温度を調整するとともに、前記タンク、前記ノズル、および、前記ステージの温度を調整することで前記インクの温度を前記目標乾燥温度に調整する
【0007】
同構成によれば、温度調整部がインクの温度を基板上の雰囲気温度よりも低い目標乾燥温度に調整する。このため、インクの温度を目標乾燥温度に調整することで、インクの乾燥を従来よりも遅らせることができるので、乾燥時間を制御することで膜厚分布の仕様を変更できる。
【0009】
また、同構成によれば、温度調整部がタンクの温度を調整することでインクの温度を目標乾燥温度に調整する。このため、温度調整部によって温度調整されたインクがタンクから供給されるので、流量を安定させることができる。
【0011】
また、同構成によれば、温度調整部は、タンクと流量制御弁との間におけるインクの温度を目標乾燥温度に調整するので、温度変化後のインクが流量制御弁を通過することで温度調整部による流量の変化を受けずにインクを基板に吐出することができる。
【0013】
また、同構成によれば、温度調整部がステージの温度を調整することでインクの温度を目標乾燥温度に調整する。このため、インクが塗布される基板と接するステージを温度調整することで、インクの温度を的確に調整することができる。
【0014】
また、同構成によれば、温度調整部がノズルの温度を調整することでインクの温度を目標乾燥温度に調整する。このため、インクが塗布される直前のノズルを温度調整することで、インクの温度を的確に調整することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、画素領域に形成される塗布膜の膜厚分布の仕様を変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示における一実施形態の塗布膜形成装置の概略構成を示す斜視図。
図2】同塗布膜形成装置の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の塗布膜形成装置を具体化した一実施形態を図1及び図2に従って説明する。本実施形態では、有機EL素子の発光層となる塗布膜を塗布膜形成装置によって形成する。有機EL素子は、R(赤)G(緑)B(青)の各色の発光層のうち、同じ色の発光層を一列に並べた構成を有している。
【0018】
図1に示されるように、塗布膜形成装置10は、液柱状のインクを吐出することで塗布膜を形成する。本実施形態では、特定色を発光する有機発光材料を低分子溶媒に溶解又は分散させたインクを用いる。このインクでは、沸点の低い溶媒を使用する。
【0019】
塗布膜形成装置10は、主走査方向に延びる2つのステージガイド11a,11bが主走査方向と直交する方向である副走査方向に併設されている。これらステージガイド11a,11bには、基板13の載置されるステージ12が、ステージガイド11a,11bに沿って主走査方向に往復動可能に搭載されている。ステージ12は、ステージモータMs(図2参照)の駆動力によってステージガイド11a,11bに沿って主走査方向に往動及び復動する。2つのステージガイド11a,11bとステージモータMsとによって主走査部34が構成されている。
【0020】
塗布膜形成装置10は、副走査方向に延びる副走査ガイド16が設けられている。副走査ガイド16には、副走査ガイド16に沿って移動するノズルヘッド17取り付けられている。ノズルヘッド17は、副走査モータMa(図2参照)の駆動力によって副走査ガイド16に沿って副走査方向に往動及び復動する。副走査ガイド16と副走査モータMaによって副走査部35が構成されている。ノズルヘッド17に設けられたノズルからは、液柱状のインクが下方に向かって吐出される。
【0021】
基板13は、例えば、ガラス基板等の透光性の基板であって、複数のパネルが切り出されるマザー基板である。基板13の上面には、パネルとなる領域である複数のパネル領域Pを有している。基板13上において、主走査方向に並ぶ3つのパネル領域Pからなる1列分のパネル領域Pが副走査方向に2つ並べられて、合計6つのパネル領域Pが配置されている。パネル領域Pの各々には、隔壁14に囲まれる画素領域として、主走査方向に延びる赤色用画素領域Prと、主走査方向に延びる緑色用画素領域Pgと、主走査方向に延びる青色用画素領域Pbとが、この順に繰り返して副走査方向に形成されている。赤色用画素領域Prとは、複数の赤色用画素が主走査方向に並べられる領域である。緑色用画素領域Pgとは、緑色用画素が主走査方向に並べられる領域である。青色用画素領域Pbとは、青色用画素が主走査方向に並べられる領域である。
【0022】
各色のノズルには、加圧タンク20から互いに異なる色のインクが供給される。加圧タンク20では、タンク内に窒素等のガスが送り込まれることにより、タンク内のインクが供給口から圧送される。加圧タンク20の供給口には、脱気タンク21が接続されている。脱気タンク21では、インクがタンクに一旦溜められて、タンク底部からインクが流出される。これにより、タンク内に溜められたインク中の気体が液面上に排出されて、インクの脱気が行われる。その結果、ノズルに供給されるインクに気泡が含まれることが抑えられるため、ノズルから吐出されるインクの性状の安定性を高めることができる。
【0023】
脱気タンク21には、流路を流れるインクの流量を計測する流量計22が接続されている。流量計22には、流路を流れるインクの流量を制御する流量制御弁23が接続されている。流量計22にノズルヘッド17が接続されている。すなわち、加圧タンク20からノズルヘッド17へ供給されるインクの流量は、流量制御弁23の開閉によって制御されるとともに流量計22にて計測される。流量制御弁23の開度は、流量計22の計測値に応じて、該流量計22の計測値が所定の値となるように制御される。
【0024】
次に、塗布膜形成装置10の電気的な構成について、図2を参照して説明する。塗布膜形成装置10は、中央処理装置(CPU)、不揮発性メモリ(ROM)、及び揮発性メモリ(RAM)を有する制御装置30を備えている。
【0025】
図2に示されるように、制御装置30は、塗布を行うための塗布プログラムや塗布条件を記憶する記憶部31を備えている。制御装置30は、ノズルに供給されるインクの流量を制御する流量制御部32と、ステージ12及びノズルヘッド17の動作を制御する駆動制御部33と、インクの温度を調整する温度制御部40とを備えている。なお、温度制御部40が温度調整部として機能する。
【0026】
制御装置30には、各種のボタンやタッチパネル等から構成される操作部60が接続されている。操作部60は、基板13に関する情報である基板情報や塗布条件に関する情報である塗布情報、インクの温度に関する温度情報を制御装置30に出力する。
【0027】
基板情報は、基板13におけるパネル領域Pの配置、画素列の幅や数、各ノズルヘッド17の塗布前の位置である初期位置等である。塗布情報は、ステージ12の走査量や走査速度、ノズルヘッド17の走査量や走査速度に関する情報、ノズルヘッド17から吐出されるインクの流量に関する情報等である。
【0028】
流量制御部32には、目標値と流量計22から入力される計測値とに基づいて、計測値が目標値となるように流量制御弁23の開度を算出し、算出された開度に応じた開度信号を生成してその開度信号を流量制御弁23へ出力する。流量制御弁23は、開度信号に応じた開度で弁体を駆動して、ノズルヘッド17のノズルに供給されるインクの流量を制御する。
【0029】
駆動制御部33には、位置検出部15が接続されている。位置検出部15は、例えばCCDカメラ等から構成されて、基板13に設けられたアライメントマークを検出したか否かを示す検出情報を駆動制御部33に出力する。
【0030】
駆動制御部33は、入力された基板情報と塗布情報とに基づいて、主走査におけるステージ12の移動量と、副走査におけるノズルヘッド17の移動量とを算出する。駆動制御部33は、算出した移動量に基づく駆動電流を生成し、その駆動電流をステージモータMsに出力することによって主走査部34を駆動する。ステージモータMsは、駆動制御部33から入力される駆動電流によって駆動されてステージ12の主走査を行う。
【0031】
駆動制御部33は、算出したノズルヘッド17の副走査における移動量に基づく駆動電流を生成し、その駆動電流を副走査モータMaに出力することによって副走査部35を駆動する。副走査モータMaは、駆動制御部33から入力される駆動電流によって駆動されて、ノズルヘッド17を副走査方向に移動させて副走査を行う。
【0032】
駆動制御部33は、塗布プログラムに従って、副走査モータMaの駆動を実行する。また、駆動制御部33は、ステージモータMsと副走査モータMaとに交互に制御信号を出力し、主走査と副走査とを交互に実行する。すなわち、駆動制御部33は、主走査部34と副走査部35とを交互に駆動する。
【0033】
塗布膜形成装置10の加圧タンク20と流量制御弁23とは、インクの圧送される配管によって連結され、その配管の途中には、配管中のインクを冷却する配管冷却器41が設置されている。配管冷却器41は、脱気タンク21と流量計22との間の配管に設置されている。配管冷却器41には、配管冷却器41が設置された配管の温度を測定する配管温度測定器51が設けられている。
【0034】
温度制御部40には、配管温度測定器51が接続されている。配管温度測定器51は、測定した配管の温度情報を温度制御部40に出力する。温度制御部40は、入力された温度情報に基づいてインクを目標乾燥温度に調整するべく、配管冷却器41によって配管を冷却させる。
【0035】
ここで、目標乾燥温度とは、基板13上の雰囲気温度よりも低い温度のことである。例えば、塗布膜形成装置10の設置される施設内の室温が20℃に管理されている場合には、目標乾燥温度は、20℃よりも低い温度であって、且つ、大気圧下においてインクの乾燥が進む温度である。
【0036】
こうした目標乾燥温度は、上述した温度の範囲のうちから、画素領域に形成される塗布膜の膜厚分布の仕様に応じて適宜設定される。例えば、平坦な膜厚分布が仕様として設定される場合には、目標乾燥温度のインクが大気圧下で流動して自身で形状を決定できる程度の温度、すなわち、レベリング性が十分に発現される程度の温度に目標乾燥温度は設定される。また、画素領域の中央で凹状となる膜厚分布が仕様として設定される場合には、目標乾燥温度のインクが乾燥の過程で隔壁14に這い上がる程度の温度に目標乾燥温度は設定される。なお、配管の冷却温度に対するインクの温度は予め計測され、インクの温度が設定されると配管の冷却温度が定まる。記憶部31には、インクの各設定温度に対する配管の冷却温度が記憶されている。温度制御部40は、インクの設定温度に基づいて配管冷却器41の温度を設定し、インクを設定温度に冷却する。
【0037】
次に、上記の塗布膜形成装置10の動作を説明する。
塗布膜形成装置10は、主走査部34を駆動させることでステージ12を塗布開始位置まで往動させると、副走査部35を駆動させることでノズルヘッド17を副走査ガイド16に沿って副走査方向に移動させて、ノズルヘッド17を初期位置に移動させる。
【0038】
塗布膜形成装置10は、ステージ12に基板13が設置されると、配管冷却器41による配管の冷却を開始させる。温度制御部40は、インクを塗布している間、配管冷却器41によって配管を冷却させることでインクを目標乾燥温度に調整し続ける。
【0039】
塗布膜形成装置10は、ノズルヘッド17が初期位置に配置されると、パネル領域Pへのインクの塗布が開始される。そして、塗布膜形成装置10は、ステージ12が塗布開始位置から塗布完了位置に向けて主走査方向へ所定量動かされる主走査と、ノズルヘッド17が副走査方向へ動かされる副走査とを交互に繰り返して、パネル領域Pへのインクの塗布を行う。
【0040】
目標乾燥温度に調整されたインクは、基板13のパネル領域Pに塗布されて基板13上の雰囲気温度まで徐々に昇温される。この際に、目標乾燥温度に調整されたインクは、目標乾燥温度の蒸気圧に応じた量で徐々に乾燥を進める。そして、インクの乾燥が目標乾燥温度から開始されるから、インクの乾燥が雰囲気温度から開始される場合よりもインクの乾燥が遅れる。よって、乾燥時間を制御することで塗布膜における膜厚分布の仕様を変更できる。
【0041】
塗布膜形成装置10は、パネル領域Pへのインクの塗布が終了すると、ステージ12を塗布完了位置まで移動する。そして、塗布膜形成装置10は、塗布完了位置にて基板13を回収する。
【0042】
これにより、配管冷却器41によって目標乾燥温度に調整されたインクが基板13に塗布されるので、インクの乾燥を従来よりも遅らせることができ、乾燥時間を制御することで塗布膜における膜厚分布の仕様を変更できる。
【0043】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)温度制御部40がインクの温度を基板13上の雰囲気温度よりも低い目標乾燥温度に調整する。このため、インクの乾燥が雰囲気温度から開始される場合に比べて、乾燥の進行を遅らせることができる。結果として、こうした乾燥の進行の調整によって、塗布膜の膜厚分布の仕様を変更することが可能となる。
【0044】
(2)温度制御部40が加圧タンク20と流量制御弁23との間でインクの温度を目標乾燥温度に調整する。すなわち、目標乾燥温度に調整されたインクが流量制御弁23を通過する。それゆえに、インクの流量が温度制御部40で変る場合であっても、こうした流量の変動は流量制御弁23の流量の制御によって抑えられる。結果として、インクの流量が温度制御部40で変動する場合であっても、基板13に吐出されるインクの流量を所望の値に調整することが可能となる。
【0045】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、温度制御部40が配管を冷却することでインクを目標乾燥温度に調整したが、配管に限らず、例えば、加圧タンク20、ノズル、ステージ12等の他の部分を冷却することでインクを冷却してもよい。なお、温度制御部40は、これらの少なくとも1つを選択して冷却させることでインクを目標乾燥温度に調整する。
【0046】
例えば、図2に示されるように、加圧タンク20を冷却する場合には、加圧タンク20の容器を覆うタンク冷却器42が設置されている。タンク冷却器42には、加圧タンク20の容器の温度を測定するタンク温度測定器52が設けられている。温度制御部40は、入力された温度情報に基づいてインクを目標乾燥温度に調整するべく、タンク冷却器42によってタンクを冷却させる。このようにすれば、温度変化後のインクが流量制御弁23を通過することで冷却による流量の変化を受けずにインクを基板13に吐出することができる。
【0047】
また、図2に示されるように、ノズルを冷却する場合には、ノズルにノズル冷却器43が設置されている。ノズル冷却器43には、ノズルの温度を測定するノズル温度測定器53が設けられている。温度制御部40は、入力された温度情報に基づいてインクを目標乾燥温度に調整するべく、ノズル冷却器43によってノズルを冷却させる。このようにすれば、インクが塗布される直前のノズルを温度調整することで、インクの温度を的確に調整することができる。
【0048】
また、図2に示されるように、ステージ12を冷却する場合には、ステージ12の底面にステージ冷却器44が設置されている。ステージ冷却器44には、ステージ12の温度を測定するステージ温度測定器54が設けられている。温度制御部40は、入力された温度情報に基づいてインクを目標乾燥温度に調整するべく、ステージ冷却器44によってステージ12を冷却させる。このようにすれば、インクが塗布される基板13と接するステージ12を温度調整することで、インクの温度を的確に調整することができる。
【0049】
・上記実施形態では、主走査方向に3つのパネル領域を並べたパネル列を副走査方向に2つ並べたが、主走査方向に並ぶパネル領域の数量と、副走査方向に並ぶパネル列の数量は任意に変更可能である。
【0050】
・上記実施形態では、ノズルヘッド17に各色3つのノズルを搭載したが、各色2つのノズルを搭載してもよく、各色4つ以上のノズルを搭載してもよい。
・上記実施形態では、ノズルヘッド17に搭載された副走査方向に並んだノズルを主走査方向へ斜めに配置したが、ノズルを副走査方向に一直線に並べてノズルヘッド17に配置してもよい。
【0051】
・上記構成において、脱気タンク21は、流量計22とノズルヘッド17との間に設けてもよい。また、ノズルヘッド17から吐出されるインクに含まれる気泡がインクの性状に影響を与えない程度であれば、脱気タンク21を設けなくてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、主走査方向と副走査方向を直交させたが、主走査方向と副走査方向のなす角を0°以外であれば任意に設定してもよい。
・上記実施形態では、塗布膜として有機EL素子の発光層を形成したが、これに代えて、正孔輸送層等の有機EL素子における他の機能層を形成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…塗布膜形成装置、11a,11b…ステージガイド、12…ステージ、13…基板、14…隔壁、15…位置検出部、16…副走査ガイド、17…ノズルヘッド、20…加圧タンク、21…脱気タンク、22…流量計、23…流量制御弁、30…制御装置、31…記憶部、32…流量制御部、33…駆動制御部、34…主走査部、35…副走査部、40…温度制御部、41…配管冷却器、42…タンク冷却器、43…ノズル冷却器、44…ステージ冷却器、51…配管温度測定器、52…タンク温度測定器、53…ノズル温度測定器、54…ステージ温度測定器、60…操作部、Ma…副走査モータ、Ms…ステージモータ、P…パネル領域、Pr…赤色画素領域、Pg…緑色画素領域、Pb…青色画素領域。
図1
図2