特許第5983002号(P5983002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983002
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20160818BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   G03G15/20 555
   G03G21/00 380
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-104740(P2012-104740)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-231910(P2013-231910A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085187
【弁理士】
【氏名又は名称】井島 藤治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−201947(JP,A)
【文献】 特開2009−031580(JP,A)
【文献】 特開2006−189691(JP,A)
【文献】 特開2006−011011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに応じたトナー像を用紙に転写する画像形成部と、
熱源からの熱によって前記トナー像を前記用紙に定着させる定着部と、
前記画像形成部の画像形成を制御すると共に前記定着部の定着温度を制御する制御部と、
仕様内の用紙に対する定着温度である第1定着温度の温度範囲が下限値と上限値とを含み、前記上限値より高温の定着温度である第2定着温度を前記定着温度とする設定を受け付ける受付部と、
を備え、
前記制御部は、前記受付部が前記第2定着温度の設定を受け付けた場合に、前記第2定着温度での定着を一定の条件下で実行する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
設定の入力を受け付けると共に各種情報表示を行う操作表示部を備え、
前記制御部は、前記操作表示部を介して前記第2定着温度の設定を受け付ける際に、前記操作表示部において前記第2定着温度により生じる影響を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
画像データに応じたトナー像を用紙に転写する画像形成部と、
熱源からの熱によって前記トナー像を前記用紙に定着させる定着部と、
前記画像形成部の画像形成を制御すると共に前記定着部の定着温度を制御する制御部と、
設定の入力を受け付けると共に各種情報表示を行う操作表示部と、
を備え、
前記制御部は、前記定着部に対して設定されている、仕様内の用紙に対する定着温度である第1定着温度の温度範囲が下限値と上限値とを含み、前記上限値より高温の定着温度である第2定着温度での定着を一定の条件下で実行し、
前記操作表示部を介して前記第2定着温度の設定を受け付ける際に、前記操作表示部において前記第2定着温度により生じる影響を表示する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
設定の入力を受け付けると共に各種情報表示を行う操作表示部を備え、
前記制御部は、
前記第2定着温度の定着が終了した後の画像形成の設定を受け付ける際、又は、前記第2定着温度の定着が終了した後に実行される画像形成の際に、それまで第2定着温度による定着が行われていたことを前記操作表示部に表示する、
ことを特徴とする請求項1−3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像データに応じたトナー像を用紙に転写する画像形成部と、
熱源からの熱によって前記トナー像を前記用紙に定着させる定着部と、
前記画像形成部の画像形成を制御すると共に前記定着部の定着温度を制御する制御部と、
設定の入力を受け付けると共に各種情報表示を行う操作表示部と、
を備え、
前記制御部は、前記定着部に対して設定されている、仕様内の用紙に対する定着温度である第1定着温度の温度範囲が下限値と上限値とを含み、前記上限値より高温の定着温度である第2定着温度での定着を一定の条件下で実行し、
前記第2定着温度の定着が終了した後の画像形成の設定を受け付ける際、又は、前記第2定着温度の定着が終了した後に実行される画像形成の際に、それまで前記第2定着温度による定着が行われていたことを前記操作表示部に表示する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記一定の条件として、画像形成される前記用紙の枚数若しくは画像形成される時間のいずれかが予め定められた条件を超えた場合に、前記第2定着温度の設定を解除する、
ことを特徴とする請求項1−5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記定着部内の機内温度が予め定められた所定の値以上である場合には、前記第2定着温度による定着を開始しない、
ことを特徴とする請求項1−6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2定着温度による定着が終了してから所定時間が経過するまでは、次の第2定着温度による定着を実行しない、
ことを特徴とする請求項1−7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2定着温度が、画像形成装置に起因する定着上限温度、もしくは用紙に起因する定着上限温度を超えるか否かを判断し、
前記画像形成装置に起因する定着上限温度、もしくは前記用紙に起因する定着上限温度を前記第2定着温度が超えない場合における前記一定の条件としての、少なくとも画像形成時間や画像形成枚数は、前記画像形成装置に起因する定着上限温度、もしくは前記用紙に起因する定着上限温度を前記第2定着温度が超える場合よりも、緩い制限であることを特徴とする請求項1−8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式によって用紙上に形成されたトナー像を熱により定着させる定着部を有する画像形成装置における定着動作の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成装置では、回転する感光体ドラムや感光体ベルトの像担持体上にトナー像を形成し、形成されたトナー像を直接或いは間接に用紙上に転写し、さらにトナー像を用紙上に定着させて画像を形成することが行われている。
【0003】
この画像形成にあたっては、用紙上に静電的に転写されたトナー像を、定着ローラによる熱と圧力とによって用紙上に安定した状態で定着させるようにしている。
【0004】
また、この定着では想定される用紙の種類に応じて安定した定着が行えるように、予め設定された温度範囲で定着ローラを加熱するように制御している。
【0005】
なお、この種の定着装置を備えた画像形成装置については、以下の特許文献1などに提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−64919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の特許文献1では、予め設定された定着温度の範囲内で、(低い定着温度)/(高い定着温度)の2段階に分ける。そして、生産性を優先する場合には低い定着温度に達したら画像の出力を開始可能に制御する。一方、画像品質を優先する場合には高い定着温度に達してから画像の出力を開始可能に制御する。このようにすることで、一定の幅を有する定着温度の範囲内において、生産性と品質とを両立させるものである。
【0008】
なお、画像形成装置では、使用が想定される各種の用紙(仕様内の用紙)に対して安定して長時間の画像形成を実行しても問題の無いように定着温度の範囲が定められている。
【0009】
しかし、想定の範囲外の厚み、表面加工状態、塗工状態といった仕様外の用紙が使用されることで、定着が十分に行われないこともある。例えば、想定外の厚みや表面加工状態などになっている用紙の場合、定着ローラの熱が用紙表面のトナーに十分に伝わらず、定着が適正に行われない可能性がある。
【0010】
しかし、このような場合には、従来の画像形成装置、あるいは、特許文献1記載の画像形成装置でも、対処することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、仕様外の用紙に対しても適切な定着をすることが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決する本願発明は、以下に述べる通りである。
【0013】
この画像形成装置では、画像データに応じたトナー像を用紙に転写する画像形成部と、熱源からの熱によって前記トナー像を前記用紙に定着させる定着部と、前記定着部の温度を検知する温度センサと、前記画像形成部の画像形成を制御すると共に前記温度センサの検知結果に基づいて前記定着部の定着温度を制御する制御部と、仕様内の用紙に対する定着温度である第1定着温度の温度範囲が下限値と上限値とを含み、前記上限値より高温の定着温度である第2定着温度を前記定着温度とする設定を受け付ける受付部と、を備え、前記制御部は、前記受付部が前記第2定着温度の設定を受け付けた場合に、前記第2定着温度での定着を一定の条件下で実行する、ことを特徴とする。
また、この画像形成装置では、画像データに応じたトナー像を用紙に転写する画像形成部と、熱源からの熱によって前記トナー像を前記用紙に定着させる定着部と、前記画像形成部の画像形成を制御すると共に前記定着部の定着温度を制御する制御部と、設定の入力を受け付けると共に各種情報表示を行う操作表示部と、を備え、前記制御部は、前記定着部に対して設定されている、仕様内の用紙に対する定着温度である第1定着温度の温度範囲が下限値と上限値とを含み、前記上限値より高温の定着温度である第2定着温度での定着を一定の条件下で実行し、前記操作表示部を介して前記第2定着温度の設定を受け付ける際に、前記操作表示部において前記第2定着温度により生じる影響を表示する、ことを特徴とする。
また、この画像形成装置では、画像データに応じたトナー像を用紙に転写する画像形成部と、熱源からの熱によって前記トナー像を前記用紙に定着させる定着部と、前記画像形成部の画像形成を制御すると共に前記定着部の定着温度を制御する制御部と、設定の入力を受け付けると共に各種情報表示を行う操作表示部と、を備え、前記制御部は、前記定着部に対して設定されている、仕様内の用紙に対する定着温度である第1定着温度の温度範囲が下限値と上限値とを含み、前記上限値より高温の定着温度である第2定着温度での定着を一定の条件下で実行し、前記第2定着温度の定着が終了した後の画像形成の設定を受け付ける際、又は、前記第2定着温度の定着が終了した後に実行される画像形成の際に、それまで前記第2定着温度による定着が行われていたことを前記操作表示部に表示する、ことを特徴とする。
【0014】
また、以上の画像形成装置において、前記制御部は、前記一定の条件として、画像形成される前記用紙の枚数若しくは画像形成される時間のいずれかが予め定められた条件を超えた場合に、前記第2定着温度の設定を解除する、ことを特徴とする。
【0015】
また、以上の画像形成装置において、前記制御部は、前記定着部内の機内温度が予め定められた所定の値以上である場合には、前記第2定着温度による定着を開始しない、ことを特徴とする。
【0016】
また、以上の画像形成装置において、前記制御部は、前記第2定着温度による定着が終了してから所定時間が経過するまでは、次の第2定着温度による定着を実行しない、ことを特徴とする。
【0017】
また、以上の画像形成装置において、設定の入力を受け付けると共に各種情報表示を行う操作表示部を備え、前記制御部は、前記操作表示部を介して前記第2定着温度の設定を受け付ける際に、前記操作表示部において前記第2定着温度により生じる影響を表示する、ことを特徴とする。
【0018】
また、以上の画像形成装置において、設定の入力を受け付けると共に各種情報表示を行う操作表示部を備え、前記制御部は、前記第2定着温度の定着が終了した後の画像形成の設定を受け付ける際、又は、前記第2定着温度の定着が終了した後に実行される画像形成の際に、それまで第2定着温度による定着が行われていたことを前記操作表示部に表示する、ことを特徴とする。
また、以上の画像形成装置において、前記制御部は、前記第2定着温度が、画像形成装置に起因する定着上限温度、もしくは用紙に起因する定着上限温度を超えるか否かを判断し、前記画像形成装置に起因する定着上限温度、もしくは前記用紙に起因する定着上限温度を前記第2定着温度が超えない場合における前記一定の条件としての、少なくとも画像形成時間や画像形成枚数は、前記画像形成装置に起因する定着上限温度、もしくは前記用紙に起因する定着上限温度を前記第2定着温度が超える場合よりも、緩い制限であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上の発明によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0020】
この画像形成装置では、画像形成の際に熱源からの熱によってトナー像を用紙に定着させる際に、定着部に対して設定されている定着温度の上限より高温の定着温度である第2定着温度での定着を、一定の条件下で実行するため、想定の範囲外の厚み、表面加工状態、塗工状態といった仕様外の用紙が使用される場合に、仕様外の用紙に対しても適切な定着をすることが可能になる。
【0021】
また、一定の条件として、画像形成される用紙の枚数若しくは画像形成される時間のいずれかが予め定められた条件を超えた場合に、第2定着温度の設定を解除するため、通常の定着温度の範囲を超える第2定着温度であっても、装置に悪影響を与えることがなく、安定した動作が可能になる。
【0022】
また、制御部は、定着部内の機内温度が予め定められた所定の値以上である場合には、第2定着温度による定着を開始しないため、装置に悪影響を与えない状況において第2定着温度の動作が可能になる。
【0023】
また、第2定着温度による定着が終了してから所定時間が経過するまでは、次の第2定着温度による定着を実行しないため、装置に悪影響を与えない状況において第2定着温度の動作が可能になる。
【0024】
また、操作表示部を介して第2定着温度の設定を受け付ける際に、第2定着温度により生じる影響を表示するため、予想される影響を告知した状態で第2定着温度の動作が可能になる。
【0025】
また、第2定着温度の定着が終了した後の画像形成の設定を受け付ける際、又は、第2定着温度の定着が終了した後に実行される画像形成の際に、それまで第2定着温度による定着が行われていたことを表示するため、予想される影響を告知した状態で第2定着温度の動作が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態の概略構成を示す構成図である。
図2】本発明の実施形態の動作を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態における操作表示部の表示状態を示す説明図である。
図4】本発明の実施形態における操作表示部の表示状態を示す説明図である。
図5】本発明の実施形態における操作表示部の表示状態を示す説明図である。
図6】本発明の実施形態における操作表示部の表示状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の画像形成装置を実施するための形態(実施形態)を詳細に説明する。
【0028】
〔構成〕
ここで、第一実施形態の電子写真方式の画像形成装置100の構成を、図1に基づいて詳細に説明する。なお、画像形成装置100として既知であって、本実施形態の特徴的な動作や制御に直接に関係しない一般的な部分についての説明は省略してある。
【0029】
図1に示す画像形成装置100は、各部を制御する制御部101と、操作者が各種操作入力を行うと共に各種表示を行う操作表示部105、ジョブデータや各種データを記憶する記憶部110、原稿を読み取って画像データを生成するスキャナ120、画像形成すべき画像データに所定の画像処理を施す画像処理部130、画像データに基づいて用紙上に画像を形成するプリントエンジン140、を備えて構成されている。
【0030】
ここで、制御部101は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。ここで、CPUは、RAMの所定領域をワークエリアとし、ROMに記憶されている各種プログラムを実行して、画像形成装置100の各部を統括的に制御する。また、制御部101は、後述するように、フローチャートに示される第2定着温度に関する制御を実行する。
【0031】
ここで、操作表示部105は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイスを備え、入力される各種指示信号を制御部101に送信する。また、操作表示部105は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等の表示手段を備え、制御部101から入力される各種画像データを表示する。なお、この操作表示部は操作部と表示部が別であってもよいが、表示されたアイコン、キー、あるいはボタンを押下するタッチパネルが一般的であるため、以下の実施形態ではタッチパネル形式の操作表示部105であるとして説明を行う。
【0032】
また、記憶部110は、データの書き込み、消去、読み出しが自在に行えるHDD(Hard Disc Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置であり、固定的に設けたものであってもよいし、また、着脱自在に設けたものであってもよい。この記憶部110は、登録済みの一又は複数のジョブを含むジョブデータ(処理済み、処理中のジョブや、未処理のジョブを含む。)を格納する。さらに、記憶部110は、部品交換時調整制御のため、各部品の交換日や、各部品の関連についての情報を記憶している。
【0033】
プリントエンジン140は、電子写真方式などによって帯電〜露光(潜像形成)〜現像〜転写といったプロセスを経て画像データに応じたトナー像を用紙上に転写する画像形成部142と、用紙上に転写されたトナー像を定着ローラによる熱と圧力とによって用紙上に安定した状態で定着させる定着部144と、を備えて構成される。
【0034】
ここで、定着部144内の定着ローラを加熱する熱源としては、ハロゲンヒータや、IHヒータなど各種の熱源を用いることが可能である。また、定着部144の構造や定着の原理については周知のものであるため、詳細な説明は省略する。
【0035】
なお、プリントエンジン140内の機内温度や定着部144内の機内温度、あるいは、定着部144内の定着ローラ等の温度は、図示されない温度センサにより検知され、検知結果は制御部101に通知される。
【0036】
〔前提条件〕
以下、定着温度に関連して、本実施形態の前提条件を説明する。なお、ここで定着温度とは、定着部144内で定着を実行する部材である定着ローラの表面温度を意味している。
【0037】
・装置に起因する定着上限温度Tmachine:
定着温度がTmachineを超えると、定着部144の故障などの不具合が発生する場合がある。装置による固定値である。
【0038】
・用紙に起因する定着上限温度Tpaper:
定着温度がTpaperを超えると、用紙あるいは用紙上の画像に不具合が発生する場合がある。用紙の紙種により定まる。
【0039】
・通常の定着温度(第1定着温度)T1:
使用が想定される各種の用紙(仕様内の用紙)に対して安定して長時間の画像形成を実行しても問題の無いように定められる、従来から一般的な通常の定着温度。定着温度T1の下限値はT1minであり、定着温度T1の上限値はT1maxである。なおT1maxは、Tmachine又はTpaperのいずれか低い方を超えないように定められる。
【0040】
・通常(T1min〜T1max)より高い定着温度(第2定着温度)T2:
仕様外の用紙に対して、一時的に画像形成が可能であり、従来から一般的な通常の定着温度より高い定着温度。第2定着温度T2の上限値はT2maxである。なおT2maxは、画像形成時間や画像形成枚数などの一定の制限された条件のもとで、画像形成装置に不具合が出ない範囲で設定する。ここでいう画像形成装置の不具合とは、定着器の故障(定着ローラのゴムがはがれるなど)、機内温度上昇による現像器のトナーの溶解、各種センサの故障、など修理やメンテナンスを必要とする状況を意味している。
【0041】
なお、以上のT1とT2との関係を纏めると、
T1mini<T1<T1max<T2<T2max,
と表現することができる。
【0042】
また、制御部101は、
・一定の条件下で、第2定着温度T2を設定する,
・一定の条件として、画像形成される前記用紙の枚数若しくは画像形成される時間のいずれかが予め定められた条件を超えた場合に、第2定着温度T2の設定を解除する,
・定着部144内の機内温度が予め定められた所定の値以上である場合には、第2定着温度T2による定着を開始しない,
・第2定着温度T2による定着が終了してから、所定時間が経過するまでは、次の第2定着温度T2による定着を実行しない,
・第2定着温度T2の設定を受け付ける際に、操作表示部105において第2定着温度T2により生じる可能性のある影響を表示する,
・第2定着温度T2の定着が終了した後の画像形成の設定を受け付ける際、又は、第2定着温度T2の定着が終了した後に実行される画像形成の際に、それまで第2定着温度T2による定着が行われていたことを、操作表示部105に表示する,
といった制御を行う。
【0043】
〔動作〕
以下、図2のフローチャートと、図3以降の画面説明図とを参照して、本実施形態の画像形成装置の動作を説明する。ここでは、仕様外の用紙に対して第2定着温度T2で定着を行う場合の動作について説明する。
【0044】
制御部101は、待ち受け時には操作表示部105に設定画面1050A(図3参照)を表示している。仕様外の用紙で画像形成を行おうとするオペレータは、この設定画面1050Aにおいて、用紙設定のキー1050a1をポインティングデバイス等によりクリックする。
【0045】
この操作表示部105において設定画面1050Aから用紙設定の操作を受けた制御部101は、図4の用紙設定についての設定画面1050Bを操作表示部105に表示する。この用紙設定の設定画面1050Bにより、各トレイ毎に、用紙種類、プロファイル名、用紙サイズ、坪量、色、パンチ穴有無、表裏画像形成位置調整、などの設定が可能である。
【0046】
図4の設定画面1050Bの場合には、トレイ1についての設定の例を示している。ここで、用紙種類は、普通紙、上質紙、カラー用紙、塗工紙(塗工紙GL、塗工紙ML、塗工紙GO、塗工紙MO)、などを選択できる。また、用紙サイズとしては、定型サイズであれば、トレイに載置することで自動検知が可能である。坪量としては、用紙種類に応じて設定できる範囲が定まる。プロセス調整としては、紙種や坪量に応じて、第1定着温度T1についての温度設定の範囲が定まる。
【0047】
なお、この実施形態では、仕様外の用紙については通常の定着温度より高温な第2定着温度T2での定着が可能であり、仕様内の用紙については通常の第1定着温度T1の定着になる。
【0048】
そこで、図4の1050b1に示す「高温定着モード」の設定項目について、通常の用紙では初期値で「なし」となっているものを、仕様外の用紙の場合には、図4の1050b2に示すように「あり」と変更する(図2中のステップS100)。
【0049】
この設定画面1050Bにおいて用紙設定が完了した場合には、オペレータは設定画面1050Bの右下の「OK」をクリックすることにより、用紙プロファイル名毎に保存され、今後は用紙プロファイル名を参照して取り扱うことが可能になる。
【0050】
また、設定画面1050Bにおいて用紙設定が完了した場合には、制御部101は、操作表示部105の表示を設定画面1050Bから設定画面1050Aに戻す。
【0051】
そして、オペレータが、図3の設定画面1050Aの右下の「高温定着モード設定」のキー1050a2をカーソル1050a3でクリックすると、制御部101は、高温定着モードの設定が「あり」と設定された用紙について、図5に示す高温定着モード設定画面1050Cを操作表示部105の表示画面として表示する。オペレータは、この高温定着モード設定画面1050Cを介して、第2定着温度T2の詳細な設定を行う(図2中のステップS101)。
【0052】
ここで、オペレータは、高温定着モードの設定として、第2定着温度T2で定着を行う予定の紙種の選択を行う(図2中のステップS102、図5の1050c1)。
【0053】
図5の設定画面1050Cの例では、普通紙と塗工紙とを選択肢として表示しているが、紙種の選択肢として、上質紙/中質紙、塗工紙の塗工種類などを増やしても良い。また、仕様外あるいは想定外の用紙のため、新規紙種の選択肢を設けるようにしてもよい。
【0054】
この紙種の設定の情報を受けた制御部101は、該当する紙種に対応する最大坪量での第1定着温度T1の上限値T1maxと、第2定着温度T2としてT1に対して何度上昇させられるかを表示する。なおここでは、第2定着温度T2の上限値T2maxと第1定着温度T1の上限値T1maxとの差分を、調整範囲として表示している(図5中の1050c2)。
【0055】
なお、図4の高温定着モードの設定項目1050b1を設けない場合には、仕様内であって高温定着モードが不要な用紙については、図5の第2定着温度T2の調整範囲1050c2を0℃と表示するようにしてもよい。
【0056】
オペレータは、この調整範囲を参照して、高温定着モードとして実際に何度上昇させるかを設定する(図2中のステップS103)。図5の場合には、調整範囲:+20℃である場合に、+10℃と設定している(図5中の1050c3)。
【0057】
なお、制御部101は、高温定着モード設定画面1050Cにおいて第2定着温度T2の設定を受け付ける際に、第1定着温度T1より高い第2定着温度T2によって生じる可能性のある影響、例えば、画質の低下、光沢むら、用紙カール、高温オフセット(溶融トナーの定着ローラへの付着)、分離不良、などを、オペレータに対して重要事項として表示する(図5中の1050c4)。なお、ここで表示する影響としては、重要度に応じて表示を変えても良い。
【0058】
そして、高温定着モードとして実際に何度上昇させるかを設定したオペレータは、OKボタン(図5中の1050c5)を押下して操作を確定する(図2中のステップS104でYES)。なお、設定された温度が調整範囲を超える場合には、制御部101は、OKボタンを非アクティブ状態にして、設定された値(図5中の1050c3)を0に戻し、オペレータの操作をやり直させる(図2中のステップS104でNO、ステップS102)。
【0059】
ここで、制御部101は、第2定着温度T2が定着上限温度Tmachine以上であるかを判断する(図2中のステップS105)。
【0060】
第2定着温度T2が定着上限温度Tmachine以上であると(図2中のステップS105でYES)、定着部144内の故障などの不具合が発生する場合がある。このため、制御部101は、不具合が発生しない範囲の一定の条件として、画像形成される用紙の枚数と画像形成時間について制限された状態の条件を定める(図2中のステップS106)。例えば、用紙枚数150枚以内、または、画像形成5分間のいずれか少ない方を超えると、制御部101は、第2定着温T2を解除するといった厳しい制限とする。
【0061】
また、第2定着温度T2が定着上限温度Tmachine以上ではない場合(図2中のステップS105でNO)、定着部144内の故障などの不具合が発生する恐れは小さい。但し、通常の第1定着温度T1よりは高温であるため、制御部101は、長時間連続した状態を避けるための一定の条件として、画像形成される用紙の枚数と画像形成時間について緩く制限された状態の条件を定める(図2中のステップS107)。例えば、用紙枚数500枚以内、または、画像形成30分間のいずれか少ない方を超えると、制御部101は、第2定着温T2を解除するといった緩い制限とする。なお、第1定着温度T1の決定時にマージンを大きく取っているような場合には、ステップS107の緩い制限として、実際には制限無しとしても良い。
【0062】
なお、以上のステップS105ではTmachineを判断基準としたが、Tpagerを判断基準として制限を決定するようにしてもよい。
【0063】
また、以上の第2定着温度T2による一定の条件の制限としては、ステップS103で定めた値に応じて制御部101が演算により算出することが望ましい。例えば、T2≧Tmachineの場合であっても、1℃だけ超えた場合と、10℃超えた場合とでは、定着部144に与える影響は異なるため、予想される影響に応じて制限を替えることが望ましい。
【0064】
このようにして第2定着温度T2が決定されるに伴って第2定着温度T2実行時の制限が決定されると、制御部101は、その制限の内容を高温定着モード設定画面1050Dとして制限の内容を表示してオペレータに通知する(図6中の1050d1)。
【0065】
そして、この高温定着モード設定画面1050Dにおいて、「はい」ボタン(図6中の1050d2)を押下することでオペレータは高温定着モードを開始することが出来る(図2中のステップS108でYES)。
【0066】
なお、この高温定着モード開始時において、制御部101は、温度センサの検知結果を参照して、定着部144内が正常温度範囲である場合に(図2中のステップS109でYES)、高温定着モードを起動する(図2中のステップS110)。
【0067】
すなわち、定着部144内が予め定められた所定の値以上の高温である場合には(図2中のステップS109でNO)、定着部144内での熱ストレスの連続した蓄積を防止するため、高温定着モードを実行せずに、定着部144内の機内温度が正常範囲に低下するまで待機する。
【0068】
ここで、操作表示部105を介してオペレータにより画像形成ジョブの設定あるいは入力が行われる(図2中のステップS111)。このとき、制御部101は、入力される画像形成ジョブの設定が以上の制限の範囲に収まるか否かを判断する(図2中のステップS112)。
【0069】
入力される画像形成ジョブの設定が以上の制限の範囲に収まらない場合(図2中のステップS112でNO)、制御部101は、制限範囲内の部分のみを実行するかを操作表示部105の設定画面(図示せず)を介してオペレータに対して問い合わせる(図2中のステップS113)。
【0070】
入力される画像形成ジョブの設定が以上の制限の範囲に収まらず(図2中のステップS112でNO)、制限範囲内の部分のみを実行することにもオペレータが同意しない場合(図2中のステップS113でNO)、制御部101は、ジョブ入力(図2中のステップS111)に戻る。入力される画像形成ジョブの設定が以上の制限の範囲に収まらない(図2中のステップS112でNO)が、制限範囲内の部分のみを実行することにオペレータが同意した場合(図2中のステップS113でYES)、制御部101は制限範囲内で画像形成枚数の設定を行う(図2中のステップS114)。
【0071】
入力される画像形成ジョブの設定が以上の制限の範囲に収まる場合(図2中のステップS112でYES)、あるいは、制限範囲内で画像形成枚数の設定を行う(図2中のステップS114)場合、制御部101は、温度センサの検知結果を参照しつつ熱源を駆動し、定着部144内の定着ローラが第2定着温度T2に達したかを確認する(図2中のステップS115)。
【0072】
温度センサの検知結果を参照しつつ熱源を駆動することで、定着部144内の定着ローラが第2定着温度T2に達した場合に、制御部101は、入力された画像形成ジョブを実行し、画像処理部130での画像処理、画像形成部142での画像形成(用紙上へのトナー像の形成)、定着部144での定着(用紙上のトナー像の定着)、を実行する(図2中のステップS116)。
【0073】
実行したジョブが完了した場合、あるいは、実行中のジョブが画像形成時間などで制限に到達した場合(図2中のステップS117でYES)、制御部101は、高温定着モードを終了(第2定着温度T2の設定を解除)し、定着部144内の定着ローラを第1定着温度T1に戻すよう制御する(図2中のステップS118)。なお、制御部101は、ステップS112〜S114で制限範囲内に収めるように画像形成を開始しているものの、画像形成時間などが予想より掛かって超過した場合には、このステップS117が該当する。
【0074】
なお、この場合は、第2定着温度T2から第1定着温度T1によって画像形成を続行してもよいが、オペレータの希望により画像形成そのものを停止するように制御してもよい。
【0075】
この後、制御部101は、定着部144の熱によるストレスの影響を軽減するため、あるいは、定着部144の熱によるストレスの蓄積を予防するため、高温定着モードを終了してから一定時間が経過するまでは、再び高温定着モードを実行することを禁止する(図2中のステップS119)。なお、この一定時間としては、第2定着温度T2に応じて定めることが望ましい。
【0076】
また、制御部101は、第2定着温度T2の定着が終了した後の画像形成の設定を受け付ける際、又は、第2定着温度T2の定着が終了した後に実行される画像形成の際に、それまで第2定着温度T2による高温の定着が行われていたことを、操作表示部105の表示画面に参照情報として表示してもよい。この場合には、定着部144が通常の第1定着温度T1よりも高温になっている、あるいは、なっていたことにより、予想される影響を操作表示部105の表示画面で告知することも望ましい。
【0077】
以上の実施形態の画像形成装置では、定着部144に対して設定されている通常の第1定着温度T1の上限を超える第2定着温度T2を、一定の条件下で実行するため、想定の範囲外の厚み、表面加工状態、塗工状態といった仕様外の用紙が使用される場合に、仕様外の用紙に対しても適切な定着をすることが可能になる。
【0078】
また、一定の条件として、画像形成される用紙の枚数若しくは画像形成される時間のいずれかが予め定められた条件を超えた場合に、第2定着温度T2の設定を解除するため、通常の第1定着温度T1の範囲を超える第2定着温度T2であっても、装置に悪影響を与えることがなく、安定した動作が可能になる。
【0079】
また、制御部101は、定着部144内の機内温度が予め定められた所定の値以上である場合には、第2定着温度T2による定着を開始しないため、装置各部に悪影響を与えない状況において第2定着温度T2の動作が可能になる。
【0080】
また、第2定着温度T2による定着が終了してから所定時間が経過するまでは、次の第2定着温度T2による定着を実行しないため、装置各部に悪影響を与えない状況において第2定着温度T2の動作が可能になる。
【0081】
また、操作表示部105を介して第2定着温度T2の設定を受け付ける際に、第2定着温度T2により生じる影響を表示するため、予想される影響をオペレータに対して告知した状態で第2定着温度T2の動作が可能になる。
【0082】
また、第2定着温度T2の定着が終了した後の画像形成の設定を受け付ける際、又は、第2定着温度T2の定着が終了した後に実行される画像形成の際に、それまで第2定着温度T2による定着が行われていたことを表示するため、予想される影響をオペレータに対して告知した状態で第2定着温度T2の動作が可能になる。
【0083】
〔その他の実施形態〕
なお、図1では画像形成装置100として通常の定着部144を想定して説明したが、これに限定されず、第1定着部と第2定着部との2つの定着部を備える構成の場合にも、本実施形態を適用することが可能である。
【0084】
また、画像形成装置100に対して外付けの定着器による画像形成システムにおいても、本実施形態を適用することが可能である。
【0085】
また、画像形成装置としては、モノクロ画像形成装置、カラー画像形成装置のいずれであっても、本実施形態を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
100 画像形成装置
101 制御部
110 記憶部
120 スキャナ
130 画像処理部
140 プリントエンジン
142 画像形成部
144 定着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6