特許第5983006号(P5983006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983006
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】セラミック電子部品及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/232 20060101AFI20160818BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   H01G4/12 352
   H01G4/12 361
   H01G4/30 301B
   H01G4/30 301F
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-106820(P2012-106820)
(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公開番号】特開2013-235928(P2013-235928A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 和生
(72)【発明者】
【氏名】藤本 力
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−243078(JP,A)
【文献】 特開2003−109838(JP,A)
【文献】 特開2012−023322(JP,A)
【文献】 特開2007−266175(JP,A)
【文献】 特開昭57−010947(JP,A)
【文献】 特開2012−134498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/12
H01G 4/232
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田を用いて実装されるセラミック電子部品であって、
第1及び第2の主面並びに第1〜第4の側面を有するセラミック素体と、
前記セラミック素体の前記第1〜第4の側面のいずれかの少なくとも一部を覆い、前記第1の主面に至る第1の外部電極と、
前記セラミック素体の前記第1〜第4の側面のいずれかの少なくとも一部を覆い、前記第1の主面に至る第2の外部電極と、
前記第1の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の上に配されており、前記第1の外部電極の前記第1の主面の上に位置する部分の少なくとも一部を露出させる第1の保護層と、
前記第2の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の上に配されており、前記第2の外部電極の前記第1の主面の上に位置する部分の少なくとも一部を露出させる第2の保護層と、
を備え、
前記第1の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の前記第1の保護層側の表層が、前記半田よりも融点が高い材料により構成されており、
前記第2の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の前記第2の保護層側の表層が、前記半田よりも融点が高い材料により構成されており、
前記第1の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の前記第1の保護層側の表層がAuを含み、
前記第2の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の前記第2の保護層側の表層がAuを含む、セラミック電子部品。
【請求項2】
第1及び第2の主面並びに第1〜第4の側面を有するセラミック素体と、
前記セラミック素体の前記第1〜第4の側面のいずれかの少なくとも一部を覆い、前記第1の主面に至る第1の外部電極と、
前記セラミック素体の前記第1〜第4の側面のいずれかの少なくとも一部を覆い、前記第1の主面に至る第2の外部電極と、
前記第1の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の上に配されており、前記第1の外部電極の前記第1の主面の上に位置する部分の少なくとも一部を露出させる第1の保護層と、
前記第2の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の上に配されており、前記第2の外部電極の前記第1の主面の上に位置する部分の少なくとも一部を露出させる第2の保護層と、
を備え、
前記第1の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の前記第1の保護層側の表層の融点が260℃以上であり、
前記第2の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の前記第2の保護層側の表層の融点が260℃以上であり、
前記第1の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の前記第1の保護層側の表層がAuを含み、
前記第2の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の前記第2の保護層側の表層がAuを含む、セラミック電子部品。
【請求項3】
前記第1の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の前記第1の保護層側の表層の融点が300℃以上であり、
前記第2の外部電極の前記第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の前記第2の保護層側の表層の融点が300℃以上である、請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記第1及び第2の保護層は、前記半田と合金化しない材料により構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記第1の保護層の前記半田の融液に対する濡れ性が、前記第1の外部電極の前記半田の融液に対する濡れ性よりも低く、
前記第2の保護層の前記半田の融液に対する濡れ性が、前記第2の外部電極の前記半田の融液に対する濡れ性よりも低い、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記第1及び第2の保護層が、樹脂により構成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記第1及び第2の保護層が、無機酸化物により構成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記第1及び第2の保護層が、酸化ニッケルを含む、請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記セラミック素体内に配されており、前記第1及び第2の外部電極の一方に接続されている、前記第1の主面に平行な内部電極をさらに備える、請求項1〜のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記セラミック素体内に前記内部電極とセラミック層を介して対向するように配されている別の内部電極をさらに備える、請求項に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記セラミック素体が、強誘電体セラミックスを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項12】
前記セラミック素体が、チタン酸バリウムを含む、請求項11に記載のセラミック電子部品。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のセラミック電子部品と、
前記セラミック電子部品が実装された基板と、
前記基板と、前記セラミック電子部品の前記第1の外部電極とを接合している半田と、
を備える、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品及びそれを備える電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばモバイル通信端末などの種々の電子装置に、セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品が用いられている。例えば、一対の電極が誘電体セラミック層を介して対向しているセラミック電子部品においては、電圧印加時に、セラミック層の電界誘起歪みに起因してセラミック電子部品が変形する。このセラミック電子部品の変形に起因して、セラミック電子部品が実装された基板が振動し、音が生じる場合がある。この現象は、「鳴き」と呼ばれる。特にPWM方式による調光回路などに用いられるコンデンサであって、シャント接続に用いられるセラミックコンデンサでは、鳴きが生じやすい。
【0003】
鳴きが生じると、セラミック電子部品が搭載された電子装置の使用者等に不快感を与えることから、特許文献1などにおいて、鳴きを抑制し得る技術が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−71106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、鳴きをさらに抑制したいという要望が高まってきている。
【0006】
本発明は、鳴きを抑制し得るセラミック電子部品を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1のセラミック電子部品は、半田を用いて実装されるセラミック電子部品である。本発明に係る第1のセラミック電子部品は、セラミック素体と、第1の外部電極と、第2の外部電極と、第1の保護層と、第2の保護層とを備える。セラミック素体は、第1及び第2の主面並びに第1〜第4の側面を有する。第1の外部電極は、セラミック素体の第1〜第4の側面のいずれかの少なくとも一部を覆っている。第1の外部電極は、第1の主面に至る。第2の外部電極は、セラミック素体の第1〜第4の側面のいずれかの少なくとも一部を覆っている。第2の外部電極は、第1の主面に至る。第1の保護層は、第1の外部電極の第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の上に配されている。第1の保護層は、第1の外部電極の第1の主面の上に位置する部分の少なくとも一部を露出させている。第2の保護層は、第2の外部電極の第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の上に配されている。第2の保護層は、第2の外部電極の第1の主面の上に位置する部分の少なくとも一部を露出させている。第1の外部電極の第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の第1の保護層側の表層が、半田よりも融点が高い材料により構成されている。第2の外部電極の第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の第2の保護層側の表層が、半田よりも融点が高い材料により構成されている。
【0008】
本発明に係る第2のセラミック電子部品は、セラミック素体と、第1の外部電極と、第2の外部電極と、第1の保護層と、第2の保護層とを備える。セラミック素体は、第1及び第2の主面並びに第1〜第4の側面を有する。第1の外部電極は、セラミック素体の第1〜第4の側面のいずれかの少なくとも一部を覆っている。第1の外部電極は、第1の主面に至る。第2の外部電極は、セラミック素体の第1〜第4の側面のいずれかの少なくとも一部を覆っている。第2の外部電極は、第1の主面に至る。第1の保護層は、第1の外部電極の第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の上に配されている。第1の保護層は、第1の外部電極の第1の主面の上に位置する部分の少なくとも一部を露出させている。第2の保護層は、第2の外部電極の第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の上に配されている。第2の保護層は、第2の外部電極の第1の主面の上に位置する部分の少なくとも一部を露出させている。第1の外部電極の第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の第1の保護層側の表層の融点が260℃以上である。第2の外部電極の第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の第2の保護層側の表層の融点が260℃以上である。
【0009】
本発明に係る第2のセラミック電子部品のある特定の局面では、第1の外部電極の第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の第1の保護層側の表層の融点が300℃以上である。第2の外部電極の第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の第2の保護層側の表層の融点が300℃以上である。
【0010】
本発明に係る第1及び第2のセラミック電子部品のそれぞれのある特定の局面では、第1及び第2の保護層は、半田と合金化しない材料により構成されている。
【0011】
本発明に係る第1及び第2のセラミック電子部品のそれぞれの別の特定の局面では、第1の保護層の半田の融液に対する濡れ性が、第1の外部電極の半田の融液に対する濡れ性よりも低い。第2の保護層の半田の融液に対する濡れ性が、第2の外部電極の半田の融液に対する濡れ性よりも低い。
【0012】
本発明に係る第1及び第2のセラミック電子部品のそれぞれの他の特定の局面では、第1及び第2の保護層が、樹脂により構成されている。
【0013】
本発明に係る第1及び第2のセラミック電子部品のそれぞれのさらに他の特定の局面では、第1及び第2の保護層が、無機酸化物により構成されている。
【0014】
本発明に係る第1及び第2のセラミック電子部品のそれぞれのさらに別の特定の局面では、第1及び第2の保護層が、酸化ニッケルを含む。
【0015】
本発明に係る第1及び第2のセラミック電子部品のそれぞれのまた他の特定の局面では、第1の外部電極の第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の第1の保護層側の表層がAuを含む。第2の外部電極の第1〜第4の側面のいずれかの上に位置する部分の第2の保護層側の表層がAuを含む。
【0016】
本発明に係る第1及び第2のセラミック電子部品のそれぞれのまた別の特定の局面では、セラミック電子部品は、セラミック素体内に配されており、第1及び第2の外部電極の一方に接続されている、第1の主面に平行な内部電極をさらに備える。
【0017】
本発明に係る第1及び第2のセラミック電子部品のそれぞれのさらにまた他の特定の局面では、セラミック電子部品は、セラミック素体内に内部電極とセラミック層を介して対向するように配されている別の内部電極をさらに備える。
【0018】
本発明に係る第1及び第2のセラミック電子部品のそれぞれのさらにまた別の特定の局面では、セラミック素体が、強誘電体セラミックスを含む。
【0019】
本発明に係る第1及び第2のセラミック電子部品のそれぞれのまたさらに他の特定の局面では、セラミック素体が、チタン酸バリウムを含む。
【0020】
本発明に係る電子装置は、本発明に係る第1または第2のセラミック電子部品と、基板と、半田とを備える。基板には、セラミック電子部品が実装されている。半田は、基板と、セラミック電子部品の第1の外部電極とを接合している。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、鳴きを抑制し得るセラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るセラミック電子部品の長さ方向及び厚み方向に沿った略図的断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るセラミック電子部品の幅方向及び厚み方向に沿った略図的断面図である。
図3】本発明の一実施形態における電子装置の一部分の長さ方向及び厚み方向に沿った略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0024】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0025】
図1は、本実施形態に係るセラミック電子部品の長さ方向及び厚み方向に沿った略図的断面図である。図2は、本実施形態に係るセラミック電子部品の幅方向及び厚み方向に沿った略図的断面図である。
【0026】
図1及び図2に示されるように、セラミック電子部品1は、セラミック素体10を備えている。セラミック素体10は、略直方体状である。セラミック素体10は、長さ方向L及び幅方向Wに沿って延びる第1及び第2の主面10a、10bと、長さ方向L及び厚み方向Tに沿って延びる第3及び第4の側面10c、10d(図2を参照)と、幅方向W及び厚み方向Tに沿って延びる第1及び第2の側面10e、10f(図1を参照)とを有する。
【0027】
なお、「略直方体」には、角部や稜線部が面取りされた直方体や、角部や稜線部が丸められた直方体が含まれるものとする。
【0028】
セラミック素体10は、適宜のセラミック材料により構成することができる。セラミック素体10は、例えば、強誘電体セラミックスを含んでいることが好ましい。強誘電体セラミックスの具体例としては、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。セラミック素体10には、適宜のセラミック材料に加えて、例えば、Mn化合物、Co化合物、希土類化合物、Si化合物などの副成分を適宜添加されていてもよい。
【0029】
図1及び図2に示されるように、セラミック素体10の内部には、第1及び第2の内部電極11,12が設けられている。第1及び第2の内部電極11,12は、それぞれ、長さ方向L及び幅方向Wに沿って設けられている。すなわち、第1及び第2の内部電極11,12は、それぞれ、第1及び第2の主面10a、10bと平行に設けられている。第1及び第2の内部電極11,12は、厚み方向Tにおいてセラミック層10gを介して対向している。
【0030】
第1の内部電極11は、第1の側面10eに引き出されている。第1の内部電極11は、第1の側面10eから長さ方向Lに沿って延びている。第1の内部電極11は、第2の側面10f並びに第3及び第4の側面10c、10dには引き出されていない。
【0031】
第2の内部電極12は、第2の側面10fに引き出されている。第2の内部電極12は、第2の側面10fから長さ方向Lに沿って延びている。第2の内部電極12は、第1の側面10e並びに第3及び第4の側面10c、10dには引き出されていない。
【0032】
第1及び第2の内部電極11,12は、それぞれ、適宜の導電材料により構成することができる。具体的には、第1及び第2の内部電極11,12は、それぞれ、Ni,Cu,Ag,Pd,Au,Pt,Snなどの少なくとも一種により構成することができる。
【0033】
第1の内部電極11は、図1に示される第1の外部電極13に接続されている。第1の外部電極13は、第1の側面10eの少なくとも一部を覆い、第1の主面10aに至っている。すなわち、第1の外部電極13は、第1の側面10eの実質的に全体を覆う第1の部分13aと、第1の主面10aの上に設けられた第2の部分13bとを有する。第1の外部電極13は、第2の主面10b上に設けられた第3の部分13cをさらに有する。なお、第1の外部電極13は、第3及び第4の側面10c、10dのそれぞれの上にも設けられていてもよい。
【0034】
第2の内部電極12は、第2の外部電極14に接続されている。第2の外部電極14は、第2の側面10fの少なくとも一部を覆い、第1の主面10aに至っている。すなわち、第2の外部電極14は、第2の側面10fの実質的に全体を覆う第1の部分14aと、第1の主面10aの上に設けられた第2の部分14bとを有する。第2の外部電極14は、第2の主面10bの上に設けられた第3の部分14cをさらに有する。なお、第2の外部電極14は、第3及び第4の側面10c、10dのそれぞれの上にも設けられていてもよい。
【0035】
第1の外部電極13の上には、第1の保護層15aが設けられている。第1の保護層15aは、第1の外部電極13の第1の部分13aの上に配されており、第2及び第3の部分13b、13cのそれぞれの少なくとも一部を露出させている。具体的には、本実施形態では、第1の保護層15aは、第1の部分13aの上に設けられている。第1の保護層15aは、第1の部分13aの厚み方向Tにおける中央部を少なくとも覆っている。第1の保護層15aは、第1の部分13aと稜線部及び角部の上に設けられていてもよい。
【0036】
第2の外部電極14の上には、第2の保護層15bが設けられている。第2の保護層15bは、第2の外部電極14の第1の部分14aの上に配されており、第2及び第3の部分14b、14cのそれぞれの少なくとも一部を露出させている。具体的には、本実施形態では、第2の保護層15bは、第1の部分14aのみの上に設けられている。第2の保護層15bは、第1の部分14aの厚み方向Tにおける中央部を少なくとも覆っている。
【0037】
図3に、セラミック電子部品1を備える電子装置2の一部分の長さ方向及び厚み方向に沿った略図的断面図を示す。
【0038】
電子装置2は、セラミック電子部品1が実装された基板17を備える。セラミック電子部品1と基板17とは、半田16a、16bにより接合されている。具体的には、半田16aは、セラミック電子部品1の第1の外部電極13と、基板17に設けられた電極パッド17aとを接合している。半田16bは、セラミック電子部品1の第2の外部電極14と、基板17に設けられた電極パッド17bとを接合している。半田16a、16bは、第1または第2の外部電極13,14の保護層15a、15bにより覆われている部分には接合されていない。
【0039】
セラミック電子部品1では、外部電極13,14の側面10e、10fの上に設けられている第1の部分13a、14aの少なくとも一部の上に保護層15a、15bが設けられている。外部電極13,14の保護層15a、15bにより覆われた部分には、半田16a、16bは接合されない。また、外部電極13,14の側面10e、10fの上に位置する部分の保護層15a、15b側の表層が、半田16a、16bよりも融点が高い材料により構成されている。すなわち、外部電極13,14の側面10e、10fの上に位置する部分の保護層15a、15b側の表層の融点が半田16a、16bの融点よりも高い。このため、半田16a、16bによる接合時に、外部電極13,14の側面10e、10fの上に位置する部分の保護層15a、15b側の表層が融解しにくいので、保護層15a、15bと第1の部分13a、14aとの間に半田が侵入しにくい。従って、セラミック電子部品1の主として伸縮する厚み方向Tにおける中央部に半田が接合されていないので、セラミック電子部品1の伸縮が半田を介して基板に伝達しにくく、鳴きが生じにくい。
【0040】
この効果を、以下の実験により実際に確認した。
【0041】
まず、外部電極の表層がSnめっき膜により構成されており、保護層が設けられていないセラミック電子部品が半田により基板上に実装された電子装置(比較例1)と、アルキド樹脂からなる保護層が設けられていること以外は比較例1に係る電子装置と実質的に同様の構成を有する電子装置(比較例2)と、外部電極の表層がAuめっき膜により構成されていること以外は比較例2に係る電子装置と実質的に同様の構成を有する電子装置(実施例)を各5つずつ作製した。
【0042】
実施例及び比較例1,2のそれぞれについて作製した電子部品のそれぞれの鳴きの音量を測定し、平均値を求めた。その結果、保護膜が設けられていない比較例1に係る電子装置では、鳴きの平均音量は、76.2dBであった。保護膜が設けられているものの、外部電極の表層がSnめっき膜により構成されている比較例2に係る電子装置では、鳴きの平均音量は、68.4dBであった。保護膜が設けられており、かつ、外部電極の表層がAuめっき膜により構成されている実施例に係る電子装置では、鳴きの平均音量は、62.5dBであった。以上の結果から、保護膜を設け、外部電極の保護膜側の表層が高い融点を有する場合に、鳴きを抑制できることが分かる。
【0043】
鳴きをより効果的に抑制する観点からは、外部電極13,14の側面10e、10fの上に位置する部分の保護層15a、15b側の表層の融点が半田16a、16bの融点よりも40℃以上高いことが好ましい。外部電極13,14の側面10e、10fの上に位置する部分の保護層15a、15b側の表層の融点は、260℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。外部電極13,14の側面10e、10fの上に位置する部分の保護層15a、15b側の表層は、Auを含むことが好ましく、実質的にAuからなることがより好ましい。
【0044】
具体的には、本実施形態では、外部電極13,14は、第1の電極層13A,14Aと、最外層を構成している第2の電極層13B,14Bとを有する。第2の電極層13B,14Bが、AuまたはAu合金からなるめっき膜により構成されている。このため、半田融液に対して溶解しにくく、かつ半田16a、16bと第2の電極層13B,14Bとの接合強度も高い。第1の電極層13A,14Aは、例えば、Au,Cu,Niなどの少なくとも一種の金属により構成されている。第1の電極層13A,14Aは、導電性ペーストの焼き付け層により構成されていてもよいし、めっき膜により構成されていてもよい。
【0045】
保護層15a、15bは、半田融液に侵食されにくい材料からなることが好ましい。具体的には、保護層15a、15bは、半田16a、16bと合金化しない材料により構成されていることが好ましい。保護層15a、15bは、半田16a、16bの融液に対する濡れ性が外部電極13,14の最外層の半田16a、16bの融液に対する濡れ性よりも低いことが好ましい。従って、保護層15a、15bは、例えば樹脂や無機酸化物により構成されていることが好ましい。保護層15a、15bの構成材料として好ましく用いられる樹脂の具体例としては、例えば、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。保護層15a、15bの構成材料として好ましく用いられる無機酸化物の具体例としては、例えば、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化亜鉛等が挙げられる。保護層15a、15bを無機酸化物により構成する場合は、外部電極13,14の表層を酸化させることにより保護層15a、15bを形成してもよい。
【0046】
なお、半田融液に対する濡れ性は、濡れ性を評価しようとする部材と同じ材料からなる膜を基板上に形成し、その膜の上に配した半田融液の液滴を硬化させた後に、半田硬化物と膜との接触角を測定することにより評価することができる。接触角が小さいほど濡れ性が高く、接触角が大きいほど濡れ性が低い。
【0047】
なお、本実施形態では、第1の外部電極13が第1の側面10e上に設けられており、第2の外部電極14が第2の側面10f上に設けられている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、第1及び第2の外部電極が、同じ側面の上に設けられていてもよいし、隣り合う側面の上に設けられていてもよい。
【0048】
また、セラミック電子部品は、複数の素子部を有していてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…セラミック電子部品
2…電子装置
10…セラミック素体
10a…第1の主面
10b…第2の主面
10c…第3の側面
10d…第4の側面
10e…第1の側面
10f…第2の側面
10g…セラミック層
11…第1の内部電極
12…第2の内部電極
13…第1の外部電極
14…第2の外部電極
13A,14A…第1の電極層
13B,14B…第2の電極層
13a、14a…第1の部分
13b、14b…第2の部分
13c、14c…第3の部分
15a…第1の保護層
15b…第2の保護層
16a、16b…半田
17…基板
17a、17b…電極パッド
図1
図2
図3