(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
(固体燃料乾燥装置100)
図1は、本実施形態にかかる固体燃料乾燥装置100の構成を説明するための図である。
図1に示すように、固体燃料乾燥装置100は、蒸気生成部110と、蒸気供給管120と、排出管122と、接触部130と、固液分離部140と、返送管150とを含んで構成される。なお、
図1中、液体の流れを実線の矢印で示し、気体(蒸気)の流れを破線の矢印で示す。
【0016】
蒸気生成部110は、水より沸点が低い水溶性溶媒の蒸気を生成する。本実施形態において、水より沸点が低い水溶性溶媒として、メタノールを例に挙げて説明するが、アセトン、エタノール等であってもよい。
【0017】
本実施形態において蒸気生成部110は、例えば、蒸留塔で構成され、本体112と、リボイラ114と、還流部116とを含んで構成される。なお、蒸気生成部110は、水より沸点が低い水溶性溶媒の蒸気を生成できればよく、
図1に示す構成に限らず、本体112内が多段構造の蒸留塔であっても、本体112に充填材が充填されている蒸留塔であってもよい。蒸気生成部110を構成する各機能部を、固体燃料乾燥装置100の運転開始時と、運転中とに分けて説明する。
【0018】
固体燃料乾燥装置100の運転開始時において、本体112は、液体のメタノールを貯留する。リボイラ114は、本体112に貯留された液体のメタノールを外部に取り出し加熱し、メタノールの蒸気を生成して、本体112に返送する。還流部116は、運転開始時には稼働させない。
【0019】
固体燃料乾燥装置100の運転中において、本体112は、後述する混合液(メタノールと水の混合液)を貯留する。リボイラ114は、本体112に貯留された混合液を外部に取り出し加熱し、メタノールの蒸気と水蒸気との混合蒸気を生成して、本体112に返送する。還流部116は、混合蒸気を凝縮して、本体112に返送する。還流部116を備える構成により、本体112内において、凝縮した混合液と混合蒸気とを向流接触させることができ、メタノールと水の沸点の違いから、凝縮した混合液と接触した水蒸気が液化して鉛直下方に落下し、混合蒸気中のメタノールの純度を向上させる。こうして、蒸気生成部110において、混合液がメタノールの蒸気と水に分離(分留)されて、分留されたメタノールの蒸気は後述する蒸気供給管120へ送出され、水は排出管122から外部へ排出されることとなる。
【0020】
蒸気供給管120は、蒸気生成部110の上部と、接触部130の本体132とを接続する管であり、蒸気生成部110において生成されたメタノールの蒸気(以下、単に蒸気と称する)は蒸気供給管120を通過して本体132に供給される。
【0021】
接触部130は、蒸気と含水固体燃料とを接触させることで、当該含水固体燃料から水を除去する。具体的に説明すると、接触部130は、本体132と、本体132内に設けられた搬送部134とを含んで構成される。
【0022】
本体132は、円筒形状に形成され、その両端に導入口132aと、排出口132bが設けられている。搬送部134は、駆動部134aが、らせん型のスクリュー134bを回転し、回転軸の方向に含水固体燃料(または固体燃料)を送り出すスクリューフィーダであり、導入口132aから導入された含水固体燃料(
図1中、白丸で示す)を排出口132bまで搬送する。なお、導入口132aから導入される含水固体燃料は、室温(例えば、25℃)程度の温度である。
【0023】
また、上述したように、本体132には、蒸気供給管120が接続されており、蒸気供給管120を介して、蒸気が本体132内に導入される。なお、本体132における蒸気供給管120の接続位置は、排出口132bよりも導入口132a近傍がよい。
【0024】
このように、本体132に蒸気が供給されると、搬送部134によって、導入口132aから排出口132bへ搬送される間に、含水固体燃料は、蒸気と接触する(蒸気に曝される)ことになる。
【0025】
そうすると、下記(1)、(2)の理由から含水固体燃料から水が除去される。(1)蒸気は、含水固体燃料と比較して高温であるため、含水固体燃料に接触すると、凝縮してメタノール(液体)となる。そして、凝縮したメタノールに含水固体燃料中の水が溶解することで、含水固体燃料から水が除去される(含水固体燃料を脱水する)こととなる。
【0026】
(2)メタノールが凝縮する際に、潜熱が含水固体燃料へ付与されることとなる。そうすると含水固体燃料中の水の温度が上昇し、水が蒸発する。これにより、含水固体燃料中の水が除去されることとなる。
【0027】
このようにして、接触部130において、導入口132aから排出口132bに搬送されるにしたがって、含水固体燃料から水が除去され固体燃料となる(
図1中、グレーの丸から黒い丸で示す)。
【0028】
また、接触部130が搬送部134を含むことで、蒸気を接触させながら、含水固体燃料を移動させることができるため、含水固体燃料の脱水を連続的に行うことが可能となる。
【0029】
固液分離部140は、網、フィルター等で構成され、接触部130において蒸気を含水固体燃料に接触させることで得られたメタノールと水との混合液を、固体燃料(水が除去された含水固体燃料)から分離する。
【0030】
そして、固液分離部140において分離された混合液は、返送管150を通じて、蒸気生成部110の本体112に返送されることとなる。
【0031】
(固体燃料乾燥方法)
続いて、固体燃料乾燥装置100を用いた固体燃料乾燥方法について説明する。
図2は、固体燃料乾燥方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0032】
図2に示すように、蒸気生成部110は、蒸気を生成し(S200)、接触部130は、蒸気生成工程S200において生成された蒸気と含水固体燃料とを接触させて、含水固体燃料から水を除去し(S210)、固液分離部140は、固体燃料と混合液とを分離し(S220)、分離工程S220において分離された混合液を蒸気生成部110の本体112に返送する(S230)。
【0033】
以上説明したように、本実施形態にかかる固体燃料乾燥装置100およびこれを用いた固体燃料乾燥方法によれば、褐炭等の含水固体燃料に蒸気を接触させるだけといった簡易な構成で、含水固体燃料から水を除去することができる。つまり含水固体燃料を脱水(乾燥)することができる。
【0034】
また、液体よりも蒸気の方が、拡散性が高いため、従来の液体のメタノールに含水固体燃料を浸漬して乾燥させる技術と比較して、含水固体燃料の表面に効率よくメタノール(蒸気)を接触させることができる。したがって、少量の溶媒で効率よく含水固体燃料から水を除去することが可能となる。これにより、メタノール(水溶性溶媒)に要するコストを低減することができる。
【0035】
また、従来の液体のメタノールに含水固体燃料を浸漬して乾燥させる技術でも、浸漬後の水とメタノールの混合液を蒸留してメタノールを分留しているが、この場合、メタノールの蒸気を液体に凝縮しなければならないため、冷却器が必要であった。さらに、従来の液体のメタノールに含水固体燃料を浸漬して乾燥させる技術では、液体のメタノールを一時的に貯留するための貯留槽が必要であった。
【0036】
しかし、本実施形態にかかる固体燃料乾燥装置100は、蒸気生成部110においてメタノールを分留した後、凝縮せずに蒸気としてそのまま接触部130に送出するため、冷却器や貯留槽が不要となり、省スペース化を図ることが可能となる。
【0037】
(変形例1)
図3は、変形例1の固体燃料乾燥装置300の構成を説明するための図である。
図3に示すように、固体燃料乾燥装置300は、蒸気生成部110と、蒸気供給管120と、排出管122と、接触部330と、固液分離部140と、返送管150とを含んで構成される。なお、上述した固体燃料乾燥装置100における、蒸気生成部110、蒸気供給管120、排出管122、固液分離部140、返送管150については、実質的に機能が等しいので、同一の符号を付して重複説明を省略し、構成の異なる接触部330について詳述する。また、
図3中、液体の流れを実線の矢印で示し、気体(蒸気)の流れを破線の矢印で示す。
【0038】
接触部330は、円筒形状に形成された本体332と本体332を回転駆動する不図示の駆動部とを含んで構成される。本体332の両端には、本体部332に対して回動自在に設置された導入部332aと、本体部332に対して回動自在に設置された排出部332bとが設けられるとともに、本体332は、長軸が水平から予め定められた角度分傾いて設置される。そして、導入部332a、排出部332bが固定された状態で、駆動部が、本体332の長軸を回転軸として本体332を回転させる。
【0039】
これにより、本体332に蒸気が供給されると、導入部332aから排出部332bへ移動する間に、含水固体燃料は、蒸気と接触することになる。換言すれば、含水固体燃料は、蒸気と接触しながら移動することとなる。
【0040】
つまり、固体燃料乾燥装置300においても、接触部330が、蒸気を接触させながら、含水固体燃料を移動させることができるため、含水固体燃料の脱水を連続的に行うことが可能となる。
【0041】
(変形例2)
上述した固体燃料乾燥装置100は、接触部130において、含水固体燃料の搬送方向と、蒸気の流れの方向とが、実質的に同じ方向である構成について説明したが、接触部において含水固体燃料の搬送方向と、蒸気の流れの方向とが対向していてもよい。
【0042】
図4は、変形例2の固体燃料乾燥装置400の構成を説明するための図である。
図4に示すように、固体燃料乾燥装置400は、蒸気生成部110と、蒸気供給管420と、排出管122と、接触部130と、固体収容部440と、返送管450とを含んで構成される。なお、上述した固体燃料乾燥装置100における、蒸気生成部110、排出管122、接触部130については、実質的に機能が等しいので、同一の符号を付して重複説明を省略し、構成の異なる蒸気供給管420、固体収容部440、返送管450について詳述する。また、
図4中、液体の流れを実線の矢印で示し、気体(蒸気)の流れを破線の矢印で示す。
【0043】
蒸気供給管420は、蒸気生成部110の上部と、接触部130の本体132とを接続する管であり、蒸気生成部110において生成された蒸気は蒸気供給管120を通過して本体132に供給される。変形例2において、蒸気供給管420は、接触部130における搬送方向下流側(排出口132b側)に蒸気を供給する。
【0044】
固体収容部440は、接触部130の排出口132bから排出された固体燃料(水が除去された含水固体燃料)を収容する。ここで、後述するように、接触部130において蒸気を含水固体燃料に接触させることで得られたメタノールと水との混合液は、接触部130における搬送方向上流側から排出されるので、排出口132bから排出された固体燃料には、混合液がほとんど付着していない。
【0045】
返送管450は、接触部130に搬送方向上流側(導入口132a側)と蒸気生成部110の本体112とを接続する管であり、接触部130において蒸気を含水固体燃料に接触させることで得られたメタノールと水との混合液を本体112に返送する。
【0046】
つまり、固体燃料乾燥装置400では、接触部130において、含水固体燃料の搬送方向と、蒸気の流れの方向とが対向することとなる。
【0047】
以上説明したように、変形例2の固体燃料乾燥装置400においても、褐炭等の含水固体燃料に蒸気を接触させるだけといった簡易な構成で、含水固体燃料から水を除去することができる。つまり含水固体燃料を脱水(乾燥)することができる。
【0048】
(実施例)
実施例として、70℃〜80℃のメタノールの蒸気を0.75ml/分(液体換算)で120gの含水固体燃料に接触させた。つまり、200分間で150ml(液体換算)のメタノールの蒸気を含水固体燃料に接触させた。また、比較例として、室温(25℃程度)のメタノール150mlに120gの含水固体燃料を浸漬した。含水固体燃料として含水率が40%の褐炭を用いた。
【0049】
図5は、実施例と比較例の含水固体燃料中の含水率の時間変化を示すグラフである。
図5中、実施例を白丸および実線で示し、比較例を黒四角および破線で示す。
図5に示すように、比較例では、浸漬してから30分間で、含水率が40%から20%へ低下するものの、30分を経過してからは含水率の低下がほとんどみられず、100分以上浸漬しても含水率を18%程度までしか低下しなかった。
【0050】
液体浸漬による脱水(比較例)は、含水固体燃料中の水が液体の溶媒に拡散することによって為される。つまり、含水固体燃料における液体中の水の濃度と、液体の溶媒に溶解した水との濃度が実質的に等しくなると、含水固体燃料から液体の溶媒への水の拡散が停止してしまう。
図5を参照すると、比較例において、メタノールに浸漬してから30分間は、含水固体燃料の水がメタノールに拡散(溶解)するが、30分以上経過してからは含水率の低下がほとんど認められない。これは、メタノールに浸漬してから30分で、含水固体燃料における液体中の水の濃度と、メタノールに溶解した水との濃度が実質的に等しくなり(平衡に達し)、これ以上脱水が進行しないからであると考えられる。つまり、比較例における限界脱水率は、22%(40%−18%)ということになる。
【0051】
これに対し、実施例は、蒸気との接触を開始してから、急速に含水率を低下させることはできないものの、接触時間を長くすればするほど、含水率を低下させることができ、200分(150ml)接触させれば、含水率を8%程度まで減らすことができることが分かった。また、含水固体燃料の温度は、50℃〜60℃程度に維持されていた。
【0052】
なお、本実施例では、メタノールの蒸気の流量が0.75ml/分程度と小さいため、比較例と同様の脱水率を得るためには、比較例よりも長時間を要していた。しかし、メタノールの蒸気の流量を大きくすれば、比較例よりも短時間で比較例と同様の脱水率を得ることができる。
【0053】
以上の結果より、本実施形態にかかる含水固体燃料と蒸気とを接触させる技術(実施例)は、含水固体燃料を液体のメタノールに浸漬する従来の技術(比較例)と比較して、少量のメタノールで同程度の脱水を行うことができることが分かった。具体的に説明すると、
図5における実施例を示す実線と比較例を示す破線との交点(含水率約18%、約110分経過時)において、比較例では150mlのメタノールを必要とするのに対し、実施例では82.5ml(0.75ml×110分)のメタノールしか必要としない。
【0054】
また、実施例では、蒸気と含水固体燃料との接触時間を長くすればするほど、含水率を低下させることができる、つまり、含水率を18%以下(ここでは、8%)にすることができる。これは、比較例では、含水固体燃料を浸漬する液体の溶媒を交換しないが、実施例では、常に新しい(水を含まない)蒸気が含水固体燃料に接触することになるためである。つまり、実施例では、比較例よりも限界脱水率を32%(40%−8%)と向上することが可能となる。
【0055】
さらに、実施例において、含水固体燃料の温度が50℃〜60℃程度に維持されていることから、蒸気の潜熱が含水固体燃料に付与されたことが分かった。これにより、蒸気に付与された潜熱も含水率の低下に寄与していると考えられる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
例えば、上述した実施形態において、固体燃料乾燥装置100、300、400の運転開始時には還流部116を稼働させない構成を例に挙げて説明したが、固体燃料乾燥装置100、300の運転中と同様に運転開始時に還流部116を稼働してもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、蒸気を接触させながら、含水固体燃料を移動させることができる接触部130、330について説明したが、接触部は、蒸気と含水固体燃料とを接触できれば、必ずしも含水固体燃料を移動させる必要はない。
【0059】
なお、本明細書の固体燃料乾燥方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。