特許第5983036号(P5983036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5983036ルーフパネルの取付構造及びその取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983036
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】ルーフパネルの取付構造及びその取付方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   B62D25/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-121820(P2012-121820)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-244923(P2013-244923A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 邦泰
(72)【発明者】
【氏名】川副 裕典
(72)【発明者】
【氏名】橋本 周
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−247259(JP,A)
【文献】 特開2010−264827(JP,A)
【文献】 特開2009−184568(JP,A)
【文献】 特開2005−161909(JP,A)
【文献】 特開2007−168566(JP,A)
【文献】 特表2008−528382(JP,A)
【文献】 特開2013−189098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディサイドインナとルーフサイドレールレインフォースとボディサイドアウタパネルにより閉断面を構成するルーフサイドレールと、ルーフ部を構成するルーフパネルとを備え、車幅方向両側に車両前後方向に延在する両ルーフサイドレール間にルーフパネルが載せられて結合されたルーフパネルの取付構造において、
前記ルーフパネルの車幅方向外側縁部は、車体内側下方へ円弧状に屈曲する外縁フランジ部とされ、
前記ボディサイドアウタパネルの車幅方向内側縁部は、前記ルーフサイドレールレインフォースと結合される内縁フランジ部と、この内縁フランジ部から起立して車両外側に傾斜し車両高さ方向で頂部となる傾斜面部とを有した構造とされ、
車両外側に傾斜する前記傾斜面部に対して前記外縁フランジ部が点接触で結合されている
ことを特徴とするルーフパネルの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のルーフパネルの取付構造であって、
前記傾斜面部には、前記外縁フランジ部が点接触する接点より車両上方に傾斜面部と異なる角度で車両幅方向内側に曲がる折れ曲部が形成されている
ことを特徴とするルーフパネルの取付構造。
【請求項3】
請求項1に記載のルーフパネルの取付構造であって、
前記傾斜面部には、前記外縁フランジ部が点接触する接点より車両上方に傾斜面部と異なる角度で車両幅方向内側に曲がる折れ曲部が複数形成されている
ことを特徴とするルーフパネルの取付構造。
【請求項4】
ボディサイドインナとルーフサイドレールレインフォースとボディサイドアウタパネルにより閉断面を構成するルーフサイドレールと、ルーフ部を構成するルーフパネルとを備え、車幅方向両側に車両前後方向に延在する両ルーフサイドレール間にルーフパネルを載せて結合するルーフパネルの取付方法において、
前記ルーフパネルの車幅方向外側縁部を車体内側下方へ円弧状に屈曲した外縁フランジ部とし、
前記ボディサイドアウタパネルの車幅方向内側縁部を、前記ルーフサイドレールレインフォースと結合される内縁フランジ部と、この内縁フランジ部から起立して車両外側に傾斜し車両高さ方向で頂部となる傾斜面部とを有した構造として、
前記両ルーフサイドレール間に前記ルーフパネルを載せ、車両外側に傾斜する前記傾斜面部に対して前記外縁フランジ部を点接触させてルーフサイドレールとルーフパネルとを結合する
ことを特徴とするルーフパネルの取付方法。
【請求項5】
請求項に記載のルーフパネルの取付方法であって、
前記ルーフサイドレールとルーフパネルとの結合をプラズマブレージング溶接で行う
ことを特徴とするルーフパネルの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフパネルの取付構造及びその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ルーフサイドレール間にルーフパネルが結合された構造が開示されている。この例では、ルーフパネルの車幅方向外側縁部を車両内側に向くようにコ字状に形成し、ルーフサイドレールレインフォースに結合されるボディサイドアウタパネルの内縁フランジ部から起立して車両内側に傾斜する傾斜面部に、前記ルーフパネルのコ字状をなす外縁フランジ部を接触させて結合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第1232936A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この構造では、ボディサイドアウタパネルの傾斜面部が車両内側に傾いているため、ルーフパネルの車幅方向寸法がばらついて大きくなると、ルーフサイドレール間にルーフパネルを嵌合できず固定不可能となる。
【0005】
また、この構造では、ボディサイドアウタパネルの内縁フランジ部にルーフパネルのコ字状とした外縁フランジ部が車両高さ方向で重なるようにして接触する構造であるため、両者のフランジ部の面精度が悪い場合はボディサイドアウタパネルに対し、ルーフパネルの相対的位置がばらつき、ルーフパネルをボディサイドアウタパネルに固定できなくなる恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、ルーフパネルの車幅方向寸法がばらついて大きく又は小さくなった場合でもルーフサイドレール間にルーフパネルを載せることができ、且つルーフパネルをルーフサイドレール間に結合することができるルーフパネルの取付構造及びその取付方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のルーフパネルの取付構造にあっては、ルーフパネルの車幅方向外側縁部を車体内側下方へ円弧状に屈曲する外縁フランジ部とし、ボディサイドアウタパネルの車幅方向内側縁部を、ルーフサイドレールレインフォースと結合される内縁フランジ部と、この内縁フランジ部から起立して車両外側に傾斜し車両高さ方向で頂部となる傾斜面部とを有した構造として、車両外側に傾斜する傾斜面部に対して外縁フランジ部が点接触で結合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のルーフパネルの取付構造によれば、ボディサイドアウタパネルの車幅方向内側縁部を車両外側に傾斜させた傾斜面部としているので、ルーフパネルの車幅方向寸法がばらついても、所定寸法よりも大きい時には傾斜面部の上方位置に小さい時には下方位置にルーフパネルを載せることができる。また、ルーフパネルの車幅方向外側縁部を車体内側下方へ円弧状に屈曲する外縁フランジ部としたので、この外縁フランジ部が傾斜面部に対して車両上方からルーフパネルが落とし込まれると傾斜面に沿って下方へずり落ちある位置で停止する。その停止した位置では、外縁フランジ部が傾斜面部に対して点接触で接することになる。したがって、本発明によれば、ルーフパネルの車幅方向寸法がばらついて大きく又は小さくなった場合でもルーフサイドレール間にルーフパネルを載せることができ、且つルーフパネルをルーフサイドレール間に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明が適用される車体の一例を示す斜視図である。
図2図2は本発明のルーフパネルの取付構造の一例を示す図1のA−A線断面図である。
図3図3は本発明で使用するプラズマブレージング溶接装置の一例を示す斜視図である。
図4図4はルーフパネルとボディサイドアウタパネルをプラズマブレージング溶接するトーチの拡大図である。
図5図5はボディサイドアウタパネルの傾斜面部に折れ曲部を形成した例を示す図1のA−A線に対応する断面図である。
図6図6はボディサイドアウタパネルの傾斜面部に折れ曲部を複数形成した例を示す図1のA−A線に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明が適用される車体の一例を示す斜視図である。図1中、矢印Xは車両前後方向、矢印Yは車幅方向、矢印Zは車両高さ方向を示している。図2図1のA−A線断面図である。
【0011】
車体1のルーフ部2は、ルーフパネル3で構成されている。ルーフパネル3は、車幅方向Y両側に車両前後方向Xに延在する両ルーフサイドレール4間に載せられて結合された構造となっている。
【0012】
ルーフパネル3は、ルーフ部2を構成する。このルーフパネル3の車幅方向外側縁部は、車体内側下方へ円弧状に屈曲する外縁フランジ部5とされている。外縁フランジ部5は、円弧状に折れ曲がる円弧部5aと、その円弧部5aの先端から車体内側下方へ延びる延在部5bとで形成されている。
【0013】
ルーフサイドレール4は、ボディサイドインナ6とルーフサイドレールレインフォース7とボディサイドアウタパネル8により閉断面を構成している。ボディサイドインナ6は、ルーフサイドレール4の車体内側部を構成し、ルーフサイドレールレインフォース7に対して溶接される外縁フランジ部6a及び内縁フランジ部6bを有している。ルーフサイドレールレインフォース7は、ボディサイドインナ6とボディサイドアウタパネル8との間に設けられている。
【0014】
ボディサイドアウタパネル8は、ルーフサイドレール4の車体外側部を構成し、ルーフサイドレールレインフォース7と溶接される内縁フランジ部8aと、この内縁フランジ部8aから起立して車両外側に傾斜し車両高さ方向Zで頂部9となる傾斜面部8bと、頂部9から車幅方向外側下方へ緩やかにカーブする表面部8cと、この表面部8cから車両内側下方へ傾斜するドアシール部8dと、ドアシール部8dの下端に設けられてルーフサイドレールレインフォース7の外側フランジ部7aと溶接される外側フランジ部8eとから形成されている。
【0015】
ルーフパネル3は、両ルーフサイドレール4、4間に載せられて前記傾斜面部8bに対して外縁フランジ部5が点接触で結合されている。ルーフパネル3とボディサイドアウタパネル8は、傾斜面部8bと外縁フランジ部5とが点接触した接点S位置よりも少し上の部位がブレージング溶接されて両者が固定されている。図3には、プラズマブレージング溶接装置の一例を示し、図4にはその溶接装置のトーチ部分の拡大図を示す。
【0016】
プラズマブレージング溶接装置10は、プラズマを噴射するトーチ11と、溶材であるワイヤを供給するワイヤー供給装置12とを有している。ワイヤー供給装置12からトーチ11の先端に供給されたワイヤは、トーチ11から噴射されるプラズマによって溶け、円弧部5aと傾斜面部8b間を連結させるようにブレージングされて結合部13を形成する。このプラズマブレージング溶接により、ルーフパネル3は、両ルーフサイドレール4、4に対して結合(固定)される。
【0017】
ルーフパネル3を車体1に取り付けるには、両ルーフサイドレール4間にルーフパネル3を車両上方から載せる。この時、ボディサイドアウタパネル8の傾斜面部8bは車両外側に傾斜されているので、車体両側の傾斜面部8b、8b間の間口が車両高さ方向Zにおいて上から下に向かって次第に大から小となっている。このため、ルーフパネル3の車幅方向寸法が所定(基準)寸法に対して大きくても小さくても両ルーフサイドレール4、4間にルーフパネル3を載せることができる。
【0018】
例えば、ルーフパネル3が所定寸法よりも大である場合は、ルーフパネル3が所定寸法である時の接触位置よりも外縁フランジ部5が傾斜面部8bに対して上方位置で接触する。一方、ルーフパネル3が所定寸法よりも小である場合は、ルーフパネル3が所定寸法である時の接触位置よりも外縁フランジ部5が傾斜面部8bに対して下方位置で接触する。このように、ルーフパネル3が製造工程で車幅方向寸法がばらついて基準値より大きく又は小さくなった場合でも、ルーフサイドレール4、4間にルーフパネル3を載せることができ、且つルーフパネル3をルーフサイドレール4、4間に結合することができる。
【0019】
また、ルーフパネル3の車幅方向外側縁部が車体内側下方へ円弧状に屈曲する外縁フランジ部5とされているため、車両外側に傾斜するボディサイドアウタパネル8の傾斜面部8bに対して嵌合するのではなく点接触することになる。このため、ルーフパネル3を、両ルーフサイドレール4、4間に載せても載置状態が安定する。また、ルーフパネル3がルーフサイドレール4、4間に載置された状態では、ルーフパネル3の外縁フランジ部5のうち延在部5bがボディサイドアウタパネル8の内縁フランジ部8aに接触しないようになっている。
【0020】
ルーフパネル3を両ルーフサイドレール4、4間に載置させた後、ルーフサイドレール4とルーフパネル3とをプラズマブレージング溶接装置10を使用して、プラズマブレージング溶接する。この結果、ルーフパネル3の円弧部5aとボディサイドアウタパネル8の傾斜面部8b間がブレージングされて結合部13が形成されることで、ルーフパネル3と両ルーフサイドレール4が結合(固定)される。
【0021】
本実施形態のルーフパネルの取付構造によれば、ボディサイドアウタパネル8の車幅方向内側縁部を車両外側に傾斜させた傾斜面部8bとしているので、ルーフパネル3の車幅方向寸法がばらついても、所定(基準)寸法よりも大きい時には傾斜面部8bの上方位置に小さい時には下方位置にと何れにしてもルーフパネル3を載せることができる。
【0022】
また、本実施形態のルーフパネルの取付構造によれば、ルーフパネル3の車幅方向外側縁部を車体内側下方へ円弧状に屈曲する外縁フランジ部5としたので、この外縁フランジ部5が傾斜面部8bに対して車両上方からルーフパネル3が落とし込まれると傾斜面に沿って下方へずり落ちある位置で停止する。その停止した位置では、外縁フランジ部5が傾斜面部8bに対して点接触で結合されることになる。したがって、本発明によれば、ルーフパネル3の車幅方向寸法がばらついて大きく又は小さくなった場合でもルーフサイドレール4、4間にルーフパネル3を載せることができ、且つルーフパネル3をルーフサイドレール4間に結合することができる。
【0023】
本実施形態のルーフパネルの取付構造によれば、ルーフサイドレール4とルーフパネル3との結合をブレージング溶接で結合したので、両者の母材を溶かすことなく結合でき、溶接後の寸法精度のバラツキが生じ難い。特に、プラズマブレージング溶接では、ワイヤの溶融を安定させることができ、ブレージング溶接を綺麗に行うことができる。
【0024】
以上、本発明を適用した具体的な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、図5に示すように、ボディサイドアウタパネル8の傾斜面部8bに、ルーフパネル3の外縁フランジ部5が点接触する接点Sより車両上方に車両幅方向内側に曲がる折れ曲部14を形成してもよい。
【0025】
折れ曲部14は、接点Sから頂部9の間で傾斜面部8bと異なる角度で車両幅方向内側に曲がるように傾斜している。この折れ曲部14が形成されることで、ルーフパネル3からボディサイドアウタパネル8の頂部9を乗り越えてサイドドア(図示は省略する)に到達する雨滴の流れを止めることができる。つまり、この折れ曲部14がダムの堰き止め壁として機能し、ルーフパネル3からサイドドアへと流れようとする雨滴を堰き止める。
【0026】
この他、図6に示すように、ボディサイドアウタパネル8の傾斜面部8bに、ルーフパネル3の外縁フランジ部5が点接触する接点Sより車両上方に傾斜面部8bと異なる角度で車幅方向内側に曲がる折れ曲部14、15を複数形成してもよい。図6では、1つ目の折れ曲部14の先端に2つの折れ曲部15を形成することで、これら2つの折れ曲部14、15が全体としてくの字状とされている。
【0027】
こうすることで、サイドドアへ流れようとする雨滴の堰き止め効果の他に、車幅方向外側からの視点でボディサイドアウタパネル8の頂部9で影が出来て、ブレージング溶接された結合部13が見え難くなり、見栄えが良くなる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、ルーフパネルをルーフサイドレール間に取り付けるルーフパネルの取付構造に利用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 車体
3 ルーフパネル
4 ルーフサイドレール
5 外縁フランジ部(外側縁部)
5a 外側フランジ部の円弧部
5b 外側フランジ部の延在部
6 ボディサイドインナ
7 ルーフサイドレールレインフォース
8 ボディサイドアウタパネル
8a ルーフサイドレールレインフォースと結合される内縁フランジ部
9 頂点
10 プラズマブレージング溶接装置
13 結合部
14、15 折れ曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6