(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(ハイブリッド車両の説明)
本発明の実施形態を、ハイブリッド車両に具体化し図面を参照して以下に説明する。なお、
図1において、実線による矢印は、各装置間をつなぐ油圧配管を示しており、破線による矢印は、制御用の信号線を示している。また、本実施形態においては、ハイブリッド車両用駆動装置1のエンジン10側を前側とし、自動変速装置5側を後側とする。
【0015】
図1に示すように、車両のエンジン10と電動モータ20とは、クラッチ装置40を介して直列に接続されている。クラッチ装置40は、エンジン10と電動モータ20との間を断続している。また、電動モータ20には、車両の自動変速装置5が直列に接続されており、自動変速装置5には、図示しない車両の駆動輪が接続されている。
【0016】
自動変速装置5は、変速機5a及びトルクコンバータ5bからなり、トルクコンバータ5bの出力が、変速機5aの入力軸(図略)に入力される。電動モータ20とトルクコンバータ5bとは、トルクコンバータ5bの入力軸であるタービンシャフト16を介して回転連結されている。
【0017】
図1に示すエンジン10は、炭化水素系の燃料により出力を発生させる通常の内燃機関である。電動モータ20は、これに限定されるものではないが、ブラシレスDCモータであり、自動変速装置5は、通常の遊星歯車式自動変速装置である。また、クラッチ装置40は、普段はエンジン10と電動モータ20との間を接続しているノーマルクローズタイプの湿式多板クラッチ装置である。
【0018】
(ハイブリッド車両用駆動装置の説明)
次に本発明に係るハイブリッド車両用駆動装置1について、
図2に基づき詳細に説明する。ハイブリッド車両用駆動装置1は、上述したクラッチ装置40及び電動モータ20が、ケース30内に収納されて構成されたものである。また、ハイブリッド車両用駆動装置1は、入力軸41、インプットハブ42、及びアウトプットハブ26を有している。インプットハブ42及びアウトプットハブ26もまた、ケース30内に収納されている。なお、以下の説明において、回転軸とは、入力軸41、インプットハブ42、アウトプットハブ26、及びロータ21に共通の回転軸である。
【0019】
ケース30は、前側側壁部31、後側側壁部32、及び外周壁部33とから構成されている。なお、前側側壁部31及び外周壁部33は、軽量なアルミニウム合金で構成されている一方で、後側側壁部32は、耐摩耗性に優れ剛性が高い鋳鉄等の鉄系金属等の耐摩耗材で構成されている。
【0020】
前側側壁部31は、略円板形状であり、その中心に、ケース30の内側(後方)に突出する略円筒形状の第1軸支部31aが形成されている。また前側側壁部31の外周部の後方には、上下方向に接合面31bが形成されている。
【0021】
後側側壁部32は、略円板形状であり、前側側壁部31と対向して配設されている。後側側壁部32の中心には、ケース30の内側(前方)に突出する略円筒形状の第2軸支部32aが形成されている。第2軸支部32aの基端(後方端)には、内周側に延在する円環板状のポンプ壁部32bが形成されている。
【0022】
外周壁部33は、略円筒形状でありケース30の外周部を形成している円筒部33aと、この円筒部33aの後部から径方向内側に延在する円環板状の側壁部33bとから構成されている。円筒部33aの前方には、接合面33cが形成されていて、この接合面33cが前側側壁部31の接合面31bと密接している。そして、前側側壁部31の外周部及び円筒部33aの前部が、これらの周方向に複数配設されたボルト34やナット35によって締結され、前側側壁部31と外周壁部33が接合されている。また、後側側壁部32の外周部及び側壁部33bの内周部が、これらの周方向に複数配設されたボルト36によって締結され、後側側壁部32と外周壁部33が接合されている。
【0023】
入力軸41は、前方側(エンジン10側)に形成された軸部41aと、軸部41aの後部と接続し、後方に突出する円筒部41bと、円筒部41bの後端から外周側(上下方向)に延在するフランジ状の接合部41cとから構成されている。なお、軸部41a、円筒部41b、及び接合部41cは、互いに同軸に形成されている。入力軸41の軸部41aは、フライホイール(図略)、及び回転振動を吸収するためのダンパ(図略)を介してエンジン10の出力軸(図略)に回転連結されている。
【0024】
インプットハブ42は、略円筒状の第1筒部42aと、第1筒部42aの前方であって且つ外周側に形成された第2筒部42bと、第2筒部42bの後方であって外周側に形成された第3筒部42cと、第1筒部42aの前端、第2筒部42bの後端及び第3筒部42cの前端を接続する接続部42dとから構成されている。なお、第1筒部42a、第2筒部42b、及び第3筒部42cは、互いに同軸に形成されている。第1筒部42aの後端は、入力軸41の接合部41cの外周部と接合されて、入力軸41とインプットハブ42が一体となっている。このような構造により、インプットハブ42は、エンジン20の出力軸(図略)に回転連結されている。
【0025】
前側側壁部31の第1軸支部31aの基部(前部)の外周面には、第1軸受81の内輪81bが嵌合されて、第1軸受81が第1軸支部31aに取り付けられている。本実施形態では、第1軸受81、後述する第2軸受82、及び第3軸受83は、深溝タイプのボールベアリングである。インプットハブ42の第2筒部42bの内周面には第1軸受81の外輪81aが嵌合されて、インプットハブ42が前側側壁部31に回転可能に軸支されている。入力軸41の軸部41aが、第1軸支部31a内に挿通して、前側側壁部31から前方に突出している。このような構造により、インプットハブ42と一体に接合された入力軸41が、前側側壁部31に回転可能に軸支されている。
【0026】
第1軸支部31aの内周面には、軸部41aの基部の外周面と全周に渡って接触するシール部材85が嵌合して取り付けられている。
図2に示すように、シール部材85は、回転軸方向に関して第1軸受81が設けられている位置の内径側に配設され、ケース30内の漏出を防止している。また、入力軸41の円筒部41bの外周面と第1軸支部31aの内周面との間には、軸部41aをケース30に軸支する第4軸受86が取り付けられている。なお、第4軸受86は、ニードルベアリングである。このように、第4軸受86として、厚さが薄いニードルベアリングを用いることにより、ハイブリッド車両用駆動装置1が半径方向に大型化してしまうことを防止しつつ、第4軸受86によって入力軸41及びインプットハブ42の半径方向の荷重が確実に支持される。
【0027】
第1軸支部31aの後端と径方向に延在する接合部41cとの間には、ケース30に対して軸部41aと一体のインプットハブ42の相対回転を許容し、入力軸41の前方側の動きを規制する第5軸受87が、第4軸受86に対して直交する径方向に配設されている。また、接合部41cと後述の第1接続部26cとの間には、入力軸41の後方側(タービンシャフト16側)への軸方向の動きを規制する第6軸受88が、第4軸受86に対して直交する径方向に配設されている。なお、第5軸受87及び第6軸受88は、ニードルベアリングである。このように、第5軸受87及び第6軸受88として、厚さが薄いニードルベアリングを用いることにより、ハイブリッド車両用駆動装置1が前後方向に大型化してしまうことを防止しつつ、第5軸受87及び第6軸受88によって入力軸41及びインプットハブ42の軸線方向の荷重が確実に支持される。
【0028】
第3筒部42cの外周部には、円環状のクラッチプレート43が複数前後方向移動可能であって且つ周方向移動不能(一体回転可能)に取り付けられている。
【0029】
アウトプットハブ26は、内周面に内スプライン26fが形成された略円筒形状の第4筒部26aと、この第4筒部26aの外周側に略円筒形状に形成された第5筒部26bと、第4筒部26aの中間部と第5筒部26b中間部を接続する第1接続部26cと、第5筒部26bの外周側に略円筒形状に形成された第6筒部26dと、第5筒部26bの後端と第6筒部26dの後端を接続する第2接続部26eと、から構成されている。なお、第1接続部26cは、外周側から内周側に向かって、前方から後方側に位置するように傾斜している。
【0030】
後側側壁部32の第2軸支部32aの内周面には、第2軸受82の外輪82aが嵌合されて、第2軸受82が第2軸支部32aに取り付けられている。そして、アウトプットハブ26の第4筒部26aの後方側の外周面に、第2軸受82の内輪82bが嵌合されて、アウトプットハブ26が、第2軸受82によって、回転可能に後側側壁部32に軸支されている。なお、第2軸受82の外輪82aの側面は、ポンプ壁部32bの内側壁に当接されるとともに、第2軸支部32aの内周面に嵌合するCリング89によって、回転軸方向の位置が位置決めされている。
【0031】
アウトプットハブ26の第5筒部26bの前方側の内周面には、第3軸受83の外輪83aが嵌合し、インプットハブ42の第1筒部42aの外周面には、第3軸受83の内輪83bが嵌合している。このような構造により、インプットハブ42は、第1軸受81、第3軸受83、及び第4軸受86によって軸支され、アウトプットハブ26は、第2軸受82及び第3軸受83によって軸支されている。言い換えると、インプットハブ42とアウトプットハブ26は、第3軸受83によって、互いに回転支持されている。勿論、インプットハブ42とアウトプットハブ26は、第3軸受83を介して相対回転可能になっている。
【0032】
第6筒部26dの先端側の内周部には、複数の円環状のクラッチプレート44が複数前後方向移動可能であって且つ周方向移動不能(一体回転可能)に取り付けられている。なお、クラッチプレート44とクラッチプレート43は、交互に配設されて、互いに対向している。そして、クラッチプレート43とクラッチプレート44とが、回転軸方向に押付けられると、クラッチプレート43とクラッチプレート44とが係合され、これによりインプットハブ42とアウトプットハブ26とが回転連結されて、エンジン10の出力軸と自動変速装置5の入力軸とが一体回転される。
【0033】
タービンシャフト16は、前方に外スプライン16cが形成された軸部16aと、軸部16aの後端に形成された連結部16bとから構成されている。軸部16aは第4筒部26aに挿通し、内スプライン26fと外スプライン16cがスプライン嵌合して、タービンシャフト16とアウトプットハブ26が一体回転するようになっている。なお、連結部16bは、トルクコンバータ5bのフロントカバー(図略)に連結される。
【0034】
なお、第4筒部26aと軸部16aの前部は、入力軸41の円筒部41b内に挿通している。また、インプットハブ42の第1筒部42a及び入力軸41の円筒部41bの後部が、アウトプットハブ26の第4筒部26aと第5筒部26bとの間の空間に挿通している。更に、アウトプットハブ26の第5筒部26bの前部が、インプットハブ42の第1筒部42aと第2筒部42bとの間の空間に挿通している。言い換えると、第5筒部26bの前部が第1筒部42aの外周側に位置している。このように、上述した各部材がハイブリッド車両用駆動装置1の径方向に重なり合って配置されているので、ハイブリッド車両用駆動装置1の回転軸方向幅寸法が短縮されている。
【0035】
次にクラッチ装置40について説明する。クラッチ装置40は、インプットハブ42とアウトプットハブ26を断接するものであり、上述した複数のクラッチプレート43、44、ピストン部材45、コイルスプリング46、及びストッパー部材47とから構成されている。
【0036】
ストッパー部材47は、円環形状であり、アウトプットハブ26の第5筒部26bの外周面に径方向に延出するように固定されている。ピストン部材45は、円環状の基部45aと、基部45aの外周部から前方に突出する押圧部45bとから構成されている。基部45aが、ストッパー部材47と、第2接続部26eとの間に形成される空間に収納され、押圧部45bが、ストッパー部材47の外周面と第6筒部26dの内周面との間から前方に突出し、ピストン部材45が前後方向移動可能に配設されている。
【0037】
コイルスプリング46は、基部45aと第2接続部26eとの間に形成される空間に配設されていて、ピストン部材45を前方に付勢している。これにより、クラッチプレート43とクラッチプレート44とが押圧されて、クラッチプレート43とクラッチプレート44とが回転連結(係合)される。一方で、ストッパー部材47とピストン部材45の基部45aとの間に形成される空間である圧力室PCに、オイルポンプ60が発生させた油圧が加わると、ピストン部材45が後方に移動して、クラッチプレート43とクラッチプレート44の回転連結が解除される。
【0038】
次に電動モータ20について説明する。電動モータ20は、電動モータ20は、ロータ21及びステータ22を有していて、外周壁部33の円筒部33aの内周側に配設されている。
【0039】
ロータ21は、後で詳述するステータ22が発生する回転磁界と鎖交することによって、回転トルクを発生する部材である。ロータ21は、アウトプットハブ26の第6筒部26dの外周部に固定されていて、アウトプットハブ26と一体に回転する。このような構造により、ロータ21は、後述するステータ22の内周側に相対回転可能に配設されている。ロータ21は、ロータコア21a、マグネット21b、及び保持部材21cを有している。
【0040】
ロータコア21aは、磁路の一部を構成するとともに、マグネット21bが収容される円環状の部材である。ロータコア21aは、円環状の珪素鋼板が積層されて構成されている。ロータコア21aには、軸方向(前後方向)に貫通する貫通孔21dが、周方向に複数形成されている。
【0041】
マグネット21bは、磁束を発生する棒状の部材である。マグネット21bは、ロータコア21aの貫通孔21dに収容されている。マグネット21bは、ロータコア21aの外周面に、周方向交互に異なる磁極が形成されるように、板厚方向に着磁されている。
【0042】
保持部材21cは、貫通孔21dに収容されたマグネット21bを保持するとともに、ロータコア21aをアウトプットハブ26の第6筒部26dに固定するための円環状の部材である。
【0043】
ステータ22は、電流が流れることによって、回転磁界を発生する部材である。ステータ22は、ステータコア22a、ボビン22b、及びコイル22cを有している。ステータ22は、円環状であり、外周壁部33の円筒部33aの内周面に固定され、ロータ21の外周側に配設されている。
【0044】
ステータコア22aは、磁路の一部を構成するとともに、コイル22cが巻回される部材である。ステータコア22aは、複数のコア22dと、ステータリング22eとから構成されている。コア22dは、略T時形状の珪素鋼板を積層して構成される部材である。ステータリング22eは、磁性体からなる略円筒形状の部材である。ステータコア22aは、円環状に配置した複数のコア22dを、ステータリング22eに圧入又は接着固定等して構成されている。なお、ステータリング22eは、外周壁部33の円筒部33aの内周面にボルト等によって固定されている。
【0045】
ボビン22bは、コイル22cとステータコア22aとの間を絶縁するための樹脂で構成された部材である。ボビン22bは、ステータコア22aの両側周面を覆うように配設されている。
【0046】
コイル22cは、電流が流れることで回転磁界が発生する、線材で構成された部材である。コイル22cは、ボビン22bに巻回され、U相コイル、V相コイル、W相コイルからなり、これらをY結線して構成されている。コイル22cはコントローラ70と電気的に接続されており、コントローラ70は、各種状態を検出するいずれも図示しない各センサ(車速センサ、スロットル開度センサ、シフト位置センサ等)からの信号に基づいてコイル22cへの通電量、或いはコイル22cの非通電を制御している。
【0047】
次に、
図2及び
図3に基づいて、オイルポンプ60について説明する。
図3に示すように、オイルポンプ60は、後側側壁部32のポンプ壁部32b、インナーロータ61、アウターロータ62、及びケーシング63とから構成されている。インナーロータ61、及びアウターロータ62、ケーシング63は、耐摩耗性に優れた鉄系金属である鋳鉄等で構成されている。
【0048】
図3の(A)に示すように、ポンプ壁部32bの外側(後側)には、上下方向に密接面32fが形成されている。密接面32fに板状のケーシング63が密接して、ケーシング63が後側側壁部32に取り付けられている。密接面32fとケーシング63との間には、扁平円柱形状の空間であるアウター収納部32cが形成されている。本実施形態では、ポンプ壁部32bの後端には、断面円形状を有し円柱形状の空間であり、後方に開口するアウター収納部32cが凹陥形成されていて、ケーシング63がアウター収納部32cを閉塞している。なお、ポンプ壁部32bとケーシング63の両方を凹陥させて、アウター収納部を形成しても差し支え無く、ケーシング63側にアウター収納部を形成しても差し支え無い。
【0049】
図3の(A)に示すように、ケーシング63の中央には、挿通孔63aが連通形成されている。この挿通孔63aに、タービンシャフト16の軸部16aが挿通している。
【0050】
図3に示すように、アウター収納部32c内には、アウターロータ62が回転可能に取り付けられている。アウターロータ62は、断面円形状を有する扁平な円柱形状であり、中心に空間である内歯62aが形成されている。内歯62a内には、インナーロータ61が回転可能に配設されている。インナーロータ61は、リング状であり、外縁に外歯61aが形成されている。内歯62a及び外歯61aは、複数のトロコイド曲線によって構成されている。外歯61aの歯数は、内歯62aの歯数よりも少なくなっている。外歯61aと内歯62aは噛合している。なお、アウターロータ62の回転中心は、インナーロータ61の回転中心に対して偏心している。
【0051】
インナーロータ61の中心には、内スプライン61bが形成されている。内スプライン61bは、タービンシャフト16の軸部16aの後部に形成された外スプライン16cとスプライン嵌合している。このような構造により、インナーロータ61は、タービンシャフト16と一体回転する。
【0052】
ポンプ壁部32bには、アウター収納部32cに連通する吸入ポート32dが形成されている。ケーシング63には、アウター収納部32cに連通する吐出ポート63bが形成されている。
【0053】
図3の(A)に示すように、ケーシング63の挿通孔63aの内周面には、軸部16aの後部の外周面と全周に渡って当接し、オイルの外部への漏出を防止するシール部材64が取り付けられている。
【0054】
タービンシャフト16(アウトプットハブ26)が回転すると、インナーロータ61が回転し、外歯61aと内歯62aで噛合しているアウターロータ62も回転する。すると、外歯61aと内歯62aとの間に形成される空間が、吸入ポート32dから吐出ポート63bに順次移動し、吸入ポート32dから吐出ポート63bにオイルが送給される。
【0055】
図1に示すように、クラッチ装置40の圧力室PCには、油圧通路77によって電磁弁50が接続されている。油圧通路77には、減圧弁75が設けられている。そして、電磁弁50は、リザーバ76(本実施形態では、ケース30内下部、
図2示)と、リザーバ通路78で接続されている。電磁弁50にはオイルポンプ60の吐出ポート63bが接続されている。電磁弁50は、油圧通路77及びリザーバ通路78のいずれかを選択して、吐出ポート63bと接続する。電磁弁50が吐出ポート63bと油圧通路77を接続すると、オイルポンプ60によって圧送されるオイルが減圧弁75により調圧された後、圧力室PCに供給される。電磁弁50が、吐出ポート63bとリザーバ通路78を接続すると、圧力室PCの油圧が抜ける。
【0056】
図1に示すように、コントローラ70は、エンジン10、電動モータ20、及び電磁弁50と、電気的に接続されている。また、アクセル開度センサ(図略)、車速センサ(図略)、ブレーキセンサ(図略)、及び自動変速装置5のシフトスイッチ(図略)と、電気的に接続されている。
【0057】
次に、ハイブリッド車両用駆動装置1の動作について説明する。コントローラ70は、アクセル開度センサ等の検出結果に基づいてエンジン10、電動モータ20、及び電磁弁50を制御する。エンジン10の駆動力によって走行する場合、コントローラ70は、
図2に示す圧力室PCに油圧が加わらないように電磁弁50を制御する。コイルスプリング46は、ピストン部材45を前方に押圧している。そのため、クラッチプレート44がクラッチプレート43に押圧され、インプットハブ42とアウトプットハブ26が回転連結される。コントローラ70は、所定の駆動力を出力するようにエンジン10を制御する。エンジン10の駆動力は、入力軸41、インプットハブ42、アウトプットハブ26、及びタービンシャフト16を介して自動変速装置5に伝達される。自動変速装置5に伝達されたエンジン10の駆動力は、駆動輪に伝達され、車両がエンジン10の駆動力によって走行する。このとき、電動モータ20は、エンジン10の駆動力によって回転し、発電機として機能する。
【0058】
なお、インプットハブ42とアウトプットハブ26が回転連結されている際に、電動モータ20の駆動力の駆動力も加えて、車両がエンジン10及び電動モータ20の両方の駆動力で走行することもできる。この際には、コントローラ70は、圧力室PCに油圧が加わらないように電磁弁50を制御するとともに、エンジン10及び電動モータ20がそれぞれ所定の駆動力を発生するように、エンジン10及び電動モータ20を制御する。
【0059】
一方、電動モータ20の駆動力のみによって走行する場合、コントローラ70は、圧力室PCに所定の油圧が加わるように、電磁弁50を制御する。圧力室PCに油圧が加わると、ピストン部材45がコイルスプリング46の押圧力に抗して後方に移動する。それ伴って、クラッチプレート44がクラッチプレート43から離れ、インプットハブ42とアウトプットハブ26の連結が解除される。コントローラ70は、所定の駆動力を出力するように電動モータ20を制御する。電動モータ20の駆動力は、アウトプットハブ26及びタービンシャフト16を介して自動変速装置5に伝達される。自動変速装置5に伝達された電動モータ20の駆動力は、駆動輪に伝達され、車両が電動モータ20の駆動力によって走行する。
【0060】
ブレーキセンサが、ブレーキペダル(図略)が踏まれたことを検知した場合には、コントローラ70は、圧力室PCに所定の油圧が加わるように、電磁弁50を制御し、インプットハブ42とアウトプットハブ26の連結を解除し、エンジン10を電動モータ20から切り離したうえで、電動モータ20で発電させて、回生制動力を発生させる。このように、車軸から伝達される回転がエンジン10に伝達されないので、車両の運動エネルギーが、エンジン10の回転に伴う回転抵抗により減少すること無く、電動モータ20で回生される。
【0061】
(本実施形態の効果の説明)
以下に、
図4を用いて、従来のハイブリッド車両用駆動装置100について、本実施形態のハイブリッド車両用駆動装置1と異なる点について説明し、次いで、本実施形態のハイブリッド車両用駆動装置1の効果を説明する。なお、
図4に示す従来のハイブリッド車両用駆動装置100において、本実施形態のハイブリッド車両用駆動装置1と同様機能を有する部分について、
図2の符号に100を加算した符号を付して、一部その説明を省略する。
【0062】
図4に示すように、従来のハイブリッド車両用駆動装置100では、アウトプットハブ126は、後側側壁部132に取り付けられた複列のアンギュラベアリング182によって、軸支されている。
【0063】
一方で、
図2に示すように、本実施形態のハイブリッド車両用駆動装置100では、アウトプットハブ26の回転軸方向後部が、後側側壁部32に取り付けられた第2軸受82によって軸支され、アウトプットハブ26の回転軸方向前部が、インプットハブ42に嵌合された第3軸受83によって軸支されている。このように、アウトプットハブ26が、回転軸方向に離間する第2軸受82と第3軸受83によって軸支されている。このため、従来のようにアウトプットハブ126が単一のアンギュラベアリング182によって片持ち支持された構造と比べて(
図4示)、本実施形態では、アウトプットハブ26が、回転軸方向に離間する2つの軸受82、83によって両側支持されているので、アウトプットハブ26がケース30に剛性高く軸支され、アウトプットハブ26の芯ブレを抑制することができる。また、アウトプットハブ26が高速回転したとしても、アウトプットハブ26の芯ブレを抑制することができるため、最高回転数が高いエンジン10にも対応することができる。更に、アウトプットハブ26の芯ブレを抑制することができるため、ステータ22とロータ21の離間距離を短縮することができ、電動モータ20の効率を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、上述したように、アウトプットハブ26が2つの軸受82、83によって両側支持されている構造(
図2示)であるので、アウトプットハブ26の回転軸方向後部を軸支する第2軸受82を、従来のように幅寸法が大きい複列のアンギュラベアリング182(
図4示)ではなく、幅寸法が小さい単列の軸受82としても、アウトプットハブ26の芯ブレを抑制することができる。このため、複列のアンギュラベアリング182から単列の軸受82に変更することにより、ベアリングの幅寸法が減少したスペースにオイルポンプ60を設けることができ、ハイブリッド車両用駆動装置1の幅寸法が大きくなることなく、ハイブリッド車両用駆動装置1にオイルポンプ60を設けることができる。
【0065】
また、本実施形態によると、インプットハブ42には、円筒形状の第1筒部42a(インプット側軸受嵌合部)が形成され、アウトプットハブ26には、第1筒部42aと回転軸方向に少なくとも同一位置に円筒形状の第5筒部26b(アウトプット側軸受嵌合部)が形成され、第1筒部42aと第5筒部26bとの間に第3軸受83が嵌合されている。このように、第1筒部42aと第5筒部26bが径方向に重なっている部分に第3軸受83が嵌合されているので、インプットハブ42とアウトプットハブ26が、互いに強固に回転支持される。このため、アウトプットハブ26の芯ブレをより抑制することができる。また、第1筒部42aと第5筒部26bが径方向に重なって配設されているので、ハイブリッド車両用駆動装置1の幅寸法を縮小させることができる。
【0066】
従来では、
図4に示すように、外周壁部133と後側側壁部132が軽量なアルミニウム合金で一体に構成されている。一方で、本実施形態では、外周壁部33と後側側壁部32が別体で構成され、外周壁部33が軽量なアルミニウム合金で構成され、後側側壁部32が耐摩耗性に優れる鋳鉄(鉄系金属)等の耐摩耗材料で構成されている。そして、後側側壁部32の外側の中央部には、ポンプ壁部32bが形成され、ポンプ壁部32bを、アウトプットハブ26(タービンシャフト16)の回転によりオイルを送給するオイルポンプ60のケーシングの一部としている。このため、少なくとも、ポンプ壁部32bをケーシングの一部としたケーシングの幅寸法分だけ、オイルポンプ60の幅寸法を短縮することができる。また、ポンプ壁部32b(後側側壁部132)は、鋳鉄等の鉄系金属等の耐摩耗材で構成されているので、インナーロータ61やアウターロータ62が回転しても、オイルポンプ60のケーシングの一部としての役割を果たすポンプ壁部32bの摩耗が防止される。
【0067】
また、後側側壁部132を鋳鉄で構成した副次的効果として、鋳鉄はアルミニウム合金と比べて曲げ強度が強いので、後側側壁部132に取り付けられた第2軸受82に軸支されたアウトプットハブ26の芯ブレが抑制される。
【0068】
図4に示すように、従来のハイブリッド車両用駆動装置100では、入力軸141の前部が、エンジンのケース(図略)に取り付けられたベアリング183によって軸支され、入力軸141の後部が、前側側壁部131に取り付けられたベアリング181によって軸支されている。そして、インプットハブ142は、入力軸141の後端に一体に形成されている。
【0069】
一方で、
図2に示すように、本実施形態のハイブリッド車両用駆動装置1では、入力軸41の後端にインプットハブ42が接続され、インプットハブ42の回転軸方向前部が、第1軸支部31aに取り付けられた第1軸受81に軸支されるとともに、インプットハブ42の回転軸方向後部が、アウトプットハブ26に嵌合された第3軸受83及び第1軸支部31aの内周側に配設された第4軸受86によって軸支されている。このため、従来のように、入力軸141の前後部が、それぞれ2つのベアリング183、181によって軸支された構造(
図4示)と比較し、エンジンのケース(図略)に取り付けられたベアリング183を廃止することができる。
【0070】
図4に示すように、従来のハイブリッド車両用駆動装置100では、ケース130内のオイルの漏出を防止するために入力軸141の外周面と全周に渡って接触するシール部材185は、入力軸141の後部を軸支するベアリング181の回転軸方向前方側に隣接して配設されている。
【0071】
一方で、
図2に示すように、本実施形態のハイブリッド車両用駆動装置100では、第1軸受81の内輪81bは、前側側壁部31に形成された円筒形状の軸支部31aの外周面に嵌合され、軸支部31aの内周面には、入力軸41の外周面と全周に渡って接触するシール部材85が取り付けられている。このように、第1軸受81とシール部材85をそれぞれ、軸支部31aを挟んで軸支部31aの外周面と内周面に配設したので、第1軸受81とシール部材85を回転軸方向に関して同一位置又は近接した位置に配置することができる。このため、従来のように、ベアリング181とシール部材185を並列に配置する構造(
図4示)と比較して、ハイブリッド車両用駆動装置1の回転軸方向の幅寸法を短縮することができる。
【0072】
なお、
図2に示した実施形態では、インプットハブ42の第1筒部42aの外周側に、アウトプットハブ26の第5筒部26bが配設されている。しかし、アウトプットハブ26の第5筒部26bの外周側に、インプットハブ42の第1筒部42aが配設され、第1筒部42aと第5筒部26aとの間に第3軸受83bが嵌合されている実施形態であっても差し支え無い。
【0073】
本実施形態では、後側側壁部32は、耐摩耗材として鋳鉄等の鉄系金属で構成されている。しかし、耐摩耗材としてチタン等を用いても差し支え無い。或いは、後側側壁部32を軽量なアルミニウム合金等の軽金属で構成し、アウター収納部32cの内壁面に、メッキ処理や窒化処理等により硬質な表面処理層を形成して、アウター収納部32cの内壁面の耐摩耗性を向上させた構造としても差し支え無い。
【0074】
また、以上説明した実施形態では、自動変速装置5は、遊星歯車式であるが、無段変速機(CVT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)、オートメーテッド・マニュアルトランスミッション(AMT)等を搭載した車両にも、本発明の技術思想が適用可能なことは言うまでもない。