(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メインフレームの途中から後斜め上方に延出する左右一対のシートレールと、前記メインフレームの後端部から分岐して後斜め上方に延出して、前記シートレールと連結される左右一対のサブフレームとを備え、前記シートレール及び前記サブフレームにより囲まれたスペース内に収納室が配置されると共に、車体適所にキャニスタとバッテリが搭載される自動二輪車において、
前記キャニスタ及び前記バッテリは、前記車体側面視で少なくとも一部が相互に重なると共に、前記収納室の下方且つ前記メインフレーム及び前記サブフレームにより挟まれた範囲内に配置され、
前記収納室の底面の一部を下方に膨出して凸部を設け、この凸部空間内に前記バッテリを収納し、
前記キャニスタは前記凸部と車幅方向で隣接して、前記収納室の底面と前記サブフレームとにより挟まれた空間に配置されたことを特徴とする自動二輪車のキャニスタ配置構造。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の高まりに伴い、ガソリン中の有害物質が大気中に放出されないようにする法規制が厳しくなりつつある。このような規制をクリアする手段としてエバポシステムがある。このエバポシステムでは、ガソリンエンジンの燃料タンクで発生する蒸発ガス燃料(エバポガス)が大気中に放出するのを防ぐために、エバポガスをキャニスタの吸着剤に一時的に吸着させ、エンジンの運転状態に応じてキャニスタの大気孔から吸入する新気と伴に、吸着したエバポガスをエンジンの吸気管内にパージして燃焼させるようにしている。
【0003】
エバポシステムはその中心部品としてキャニスタを含み、中心部品となるキャニスタの配置構成は極めて重要である。とりわけ、着座シート下にユーティリティボックスを備えた、所謂アンダーボーンタイプの車体フレームを持つ車両において従来、次のようなキャニスタの配置手法が知られている。
【0004】
例えば、ユーティリティボックスの容量を大幅に減らす形で配置し、あるいはユーティリティボックスの外側にて車体フレームの外側に配置している。なお、この場合、艤装の内側になる。
また、ユーティリティボックスの下側にてキャニスタを水平に配置し、あるいはキャニスタをむき出しにする形で車体外に配置するもの等々が知られている。
【0005】
なお、この種のキャニスタ配置構造あるいは配置形式として、例えば特許文献1〜3等に開示されるものがある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明における自動二輪車のキャニスタ配置構造の好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明の適用例としての自動二輪車100の側面図である。先ず、
図1を用いて、自動二輪車100の全体構成について説明する。なお、
図1を含め、以下の説明で用いる図においては、必要に応じて車両の前方を矢印Frにより、車両の後方を矢印Rrによりそれぞれ示し、また、車両の側方右側を矢印Rにより、車両の側方左側を矢印Lによりそれぞれ示す。
【0016】
自動二輪車100は、鋼製あるいはアルミニウム合金製でなる車体フレームにより車体骨格を形成し、車体フレームに対する各種部品の艤装を経て構成される。車体フレームの構成例として例えば所謂アンダーボーンタイプでよく、その前上端部に結合するステアリングヘッドパイプ102から後斜め下方へ向けてメインフレーム101が延設され、このメインフレーム101の後部付近にシートレール103が結合する。エンジンを含むパワーユニット104は車体フレームにより車体の略中央部で支持される。
【0017】
ステアリングヘッドパイプ102は、フロントフォーク105を回動可能に支持し、フロントフォーク105の上端にはハンドルバー106が固定されると共に、その下端側には前輪107が回転可能に支持される。前輪107の上方はフロントフェンダ108により覆われる。パワーユニット104の後方には、ピボット軸109を介して上下動可能なスイングアーム110がメインフレーム101により支持され、スイングアーム110の後端部に後輪111が回転可能に支持される。スイングアーム110の後端部と車体フレーム側の間にはショックアブソーバ112が装着され、後輪111の上方にはライダーが着座するシート113が配置される。
【0018】
車両外観としては、各種車体カバーが車体フレーム等の適所に支持されて被着される。詳細図示は省略するが、レッグシールド等を含むフロントフレームカバー114は車両前面側を覆うと共にウィンカ等が実装される。リヤフレームカバー115はシート113の下方乃至車両後方側を覆うと共に、ウィンカやブレーキランプが実装される。後輪105の上方はリヤフェンダよって覆われる。
【0019】
図2〜
図4は、パワーユニット104及び車体フレーム組立体まわりを示している。
図2はその右側面図、
図3はその上面図、
図4は後述の収納室116(ユーティリティボックス)を取り外した状態の上面図である。メインフレーム101の後端部手前で左右一対のシートレール103が結合し、それぞれ後斜め上方へ延出する。シートレール103は
図4のように左右に膨出するように形成され、それらの間に収納室116を配置するためのスペースが形成される。シートレール103の後部103Aは略水平に延設され、シート113を支持するように構成される。シートレール103の後側には
図2のように左右一対のサブフレーム117が配設される。サブフレーム117は
図4のようにメインフレーム101の後端部に該メインフレーム101との間でY字状を呈するように結合し、後方へ拡開しつつ
図2のように後斜め上方へ延出し、シートレール103の後部103Aの前部付近に各々結合する。
【0020】
この例ではパワーユニット104は空冷式4サイクル単気筒エンジンを有し、このエンジンは主に、左右方向に水平配置されるクランクシャフトを回転自在に支持・収容するクランクケース118と、クランクケース118の前部に結合し、その軸線が略水平方向に設定されたシリンダもしくはシリンダブロック119と、シリンダ119の更に前部に結合するシリンダヘッド120及びシリンダヘッド120に蓋着するシリンダヘッドカバー121とを含んで構成される。クランクケース118は、メインフレーム101の後端部から下方へ延出するブラケット122によって支持される。
【0021】
ここで
図1を参照して、エンジンに混合気を供給する吸気系においてエンジン、より具体的にはシリンダヘッド120の上方にはメインフレーム101によりエアクリーナ123が支持される。このエアクリーナ123とシリンダヘッド120との間に形成される吸気通路の途中にスロットル装置124が配置される。スロットル装置124は、
図2に示されるスロットルボディ125内に形成される吸気通路を開閉するスロットルバルブを有する。スロットル装置124からはインテークパイプ126を介して、エンジンのインテークポートと接続される。インテークパイプ126にはインジェクタ127が装着され、インテークパイプ126内の吸気にインジェクタ127から燃料が噴射供給されることにより、エンジンに対して混合気が供給される。
【0022】
また、エンジンからの排気ガスを排気する排気系において、この例ではシリンダヘッド120の下部側にエキゾーストパイプ128(排気管)が結合する。なお、エキゾーストパイプ128は、シリンダヘッド120に形成されたエキゾーストポート129(
図2)に接続される。エンジン内で生成された燃焼ガスが排気ガスとして、エキゾーストポート129からエキゾーストパイプ128を通り、最終的にマフラ130(排気消音器)から排気される。
【0023】
上記の場合、
図2〜
図4等に示すようにシートレール103の主に後部103A上に燃料タンク131が搭載支持され、燃料タンク131とインジェクタ127の間は、シートレール103及びメインフレーム101に沿って配索された燃料ホース132により接続される。燃料タンク131からインジェクタ127へと供給された燃料は、所定タイミングでインテークパイプ126の吸気通路内へ噴射供給される。
【0024】
また、
図2に示されるようにシート113の下方には収納室116が配置され、この収納室116は前述のように一対のシートレール103の間に形成されるスペース内に配置される。収納室116は
図3のように平面視で概略カマボコ状もしくはドーム状を呈する上端開口部116aを持つ、概してバスケット型の有底構造を有し、この例では車幅方向で左方に偏倚してバッテリ133が収納される。また、収納室116の下側には後述するキャニスタ本体11が搭載される。
【0025】
図5は、本発明に係るエバポシステムの要部構成を示している。エバポシステム10において、エンジンの吸気系と燃料タンクとを連通する通気路を設け、この通気路の途中に、エバポガス(蒸発燃料)を吸着保持するキャニスタを介設し、キャニスタから適宜エバポガスを吸気系に供給するようになっている。
【0026】
具体的には
図5に示すように燃料タンク131とキャニスタ本体11の間はエバポガス排出管12を介して接続され、燃料タンク131内で気液分離されたエバポガスがキャニスタ本体11へ供給される。ここではキャニスタ本体11の詳細説明は省略するが、キャニスタ本体11とスロットルボディ125との間はパージ管13を介して接続され、またキャニスタ本体11とインテークパイプ126との間は負圧ホース14を介して接続される。なお、キャニスタ本体11は概して直方体状を呈する。
【0027】
次に、本実施形態におけるキャニスタ等の配置構造を具体的に説明する。
図6に示されるように収納室116の後部側にてその底面の一部を下方に膨出して凸部116bが形成され、この凸部116bの空間内にバッテリ133が収納される。なお、バッテリ133は概して直方体もしくは箱型状を呈し、その上面に電極133aが設けられている。キャニスタ本体11は
図6に示されるように凸部116bと車幅方向で右側に隣接して、
図7のように収納室116の底面116cとサブフレーム117とにより挟まれた空間内に配置される。更に
図8をも参照してキャニスタ本体11はメインフレーム101、シートレール103及びサブフレーム117全てに囲まれたスペース内に配設される。
【0028】
上記のように左右隣接配置されたキャニスタ本体11及びバッテリ133は、
図9のように車体側面視で少なくとも一部が相互に重なると共に、実質的に収納室116の下方且つメインフレーム101及びサブフレーム117により挟まれた範囲内に配置される。
図9からも分かるようにキャニスタ本体11及びバッテリ133は相互に略平行に、且つ後方に傾斜して、側面視でかなりの部分でオーバラップするように配置される。
【0029】
ここで、キャニスタ本体11は収納室116を利用し、これに固定することができる。例えば
図7に示したように収納室116の底面116cからブラケット15を延出し、このブラケット15でキャニスタ本体11を拘束して固定する。車体フレーム等に対して、キャニスタ取付用のブラケットを溶接する等の必要がないため、部品点数を削減しながらキャニスタ本体11を的確に固定可能となる。
なお、収納室116自体は、
図7等に示したように収納室116の外側に突設したブラケット116d等を介して、車体フレーム側(例えばシートレール103であってよい)に取付固定することができる。
【0030】
また、
図10及び
図11に示したようにシートレール103にブラケット16を取り付け、このブラケット16によりキャニスタ本体11を拘束して固定することもできる。
この場合には、キャニスタ本体11から切り離して、収納室116を単独で着脱できるため、例えば整備性の向上を図ることができる。
【0031】
上記のようにブラケット15あるいはブラケット16を介して固定されるキャニスタ本体11はバッテリ133と伴に、図示のようにそれぞれ長手方向を収納室116の底面116cと略平行にして配置されることになる。
【0032】
上記の場合、
図2を参照してキャニスタ本体11は側面視で、メインフレーム101、シートレール103及びサブフレーム117により形成される概略三角形の領域内に配置される。キャニスタ本体11から前方に導出されたパージ管13又は負圧ホース14はシートレール103の延長線に対して、側面視でメインフレーム101、より具体的には上述の三角形の下方で交差する。即ち、パージ管13及び負圧ホース14はキャニスタ本体11から前下がりに延出し、スロットルボディ125及びインテークパイプ126にそれぞれ接続される。
【0033】
上記構成において、既に説明したように収納室116の底面の一部に凸部116bが形成され(
図6)、この凸部116bの空間内にバッテリ133が収納される。そして、
図9のようにキャニスタ本体11及びバッテリ133が車体側面視で少なくとも一部が相互に重なるようにして、それらはメインフレーム101とサブフレーム117とにより挟まれた空間内に配置される。
【0034】
このような配置構成とすることで、キャニスタ本体11及びバッテリ133をできるだけ車両の中央に配置し、所謂マス集中化を図ることができる。このマス集中化により、例えば車両の走行安定性を向上することができる。また、キャニスタ本体11とバッテリ133とを車幅方向に並べて配置することで空間の有効利用が可能となり、車体のコンパクト化にも寄与することができる。
【0035】
また、キャニスタ本体11は
図12にも示されるように凸部116bと車幅方向で右側に隣接して、収納室116の底面116c及びサブフレーム117により挟まれた範囲内に配置される。この場合、
図12のように収納室116の主要部と凸部116bと間には両者を仕切る仕切り壁134が垂架される。キャニスタ本体11が配置される凸部116bの右側は、
図12の点線で示すような凹所135となり、このようにバッテリ133の隣の空間にキャニスタ本体11を配置することで収納室116の容量を大きく確保することができる。
【0036】
また、
図9に示されるようにキャニスタ本体11及びバッテリ133は、それぞれ長手方向を収納室116の底面116cと略平行にして配置される。ヘルメット200を収納室116に収納した際、
図9のようにキャニスタ本体11及びバッテリ133とヘルメット200とが略底面116cに沿って、同一方向に傾斜して配置される。このようにこれらを部材もしくは物品を方向性を持たせて収納することで、この点でも有効にコンパクト化を図ることができる。
【0037】
また、パージ管13又は負圧ホース14は、キャニスタの下方から略水平に配索される。
このように配索することで、パージ管13又は負圧ホース14にメインフレーム101を跨がずに前方に導出させることで、それらを有効に短縮化することが可能となる。
【0038】
更に、燃料タンク131は
図1等に示されるように、収納室116の後方に配置されることになるため、キャニスタ本体11は燃料タンク131とエンジン吸気系(スロットル装置124及びその周辺部材)との間に配置される。従って、キャニスタを燃料タンク131の下方に配置した場合に比べて、パージ管13及び負圧ホース14のそれぞれ長さを有効に短くすることが可能になる。
【0039】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
例えば、上記実施形態において収納室116において、車幅方向左側にバッテリ133を、右側にキャニスタ本体11を配置する例を説明したが、両者は左右逆にして配置することも可能である。