(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を用いて、本発明によるエポキシ樹脂組成物及び電子部品装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)と、フェノール樹脂(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)とを含むエポキシ樹脂組成物であって、前記無機充填材(D)を前記エポキシ樹脂中に85質量%以上含み、前記無機充填材として球状アルミナ(D1)を前記エポキシ樹脂組成物中に70質量%以上含み、球状アルミナ(D1)として、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において、微粒側からの累積で50重量%となる平均粒子径D50が2μm以上55μm以下であり、窒素吸着法により測定した比表面積が1.0m
2/g以下であり、かつウラン、トリウム合計量が10ppb以下を特徴とする。また、本発明の電子部品装置は、上記エポキシ樹脂組成物の硬化物で素子が封止されていることを特徴とする。以下、本発明について詳細に説明する。
【0024】
まず、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物では、球状アルミナ(D1)として、レーザー回折散乱法((株)島津製作所製、SALD−7000)により測定した粒度分布において、微粒側からの累積で50重量%となる平均粒子径D50が2μm以上55μm以下であり、5μm以上45μm以下であることがより好ましく、10μm以上35μm以下であることが特に好ましい。平均粒子径D50が上記の範囲内の場合、樹脂組成物の流動性、ワイヤー流れ、連続成形性が良好である。
【0025】
球状アルミナ(D1)の比表面積の上限値は、窒素吸着法(BET法)により測定した比表面積が1.0m
2/g以下であるが、さらに0.8m
2/g以下であることがより好ましい。比表面積の上限値が上記の範囲内の場合、範囲外の場合と比べ、樹脂組成物の熱伝導率が比較的高くなる。この理由として、アルミナの比表面積が小さい、すなわち樹脂とアルミナとの界面の面積が小さくなるため、熱伝導が高くなると考えられる。また、球状アルミナ(D1)の比表面積の下限値は、0.05m
2/g以上があることが好ましく、0.1m
2/g以上であることがより好ましく、0.2m
2/g以上であることがさらに好ましい。球状アルミナ(D1)の比表面積の下限値が上記の範囲内の場合、樹脂組成物の流動性が良好であり、その成形性にボイドやバリが発生しにくくなり、パッケージの成形性が優れる。
【0026】
球状アルミナ(D1)の不純物成分として含まれるウラン、トリウム合計量が10ppb以下であることが好ましく、8ppb以下であることがより好ましく、5ppb以下であることが特に好ましい。ウラン、トリウムの定量方法としては、弗酸等の適切な処理液を用いて球状アルミナを溶解、除去した残渣水溶液をICP−MS(高周波誘導結合プラズマ質量分析)を用いて測定する。ウラン、トリウム合計量が上記の範囲である場合、本発明のエポキシ組成物で封止した電子部品装置の動作の信頼性が優れ、メモリー用半導体等の電子部品装置において誤作動を起こしにくくなる。
なお、球状アルミナを複数併用する場合は、複数の混合物の算術平均が本発明の平均粒子径D50、比表面積、ウラン、トリウム量となるように調製することができる。
【0027】
一般にアルミナの原料として、水酸化アルミニウム粉末、仮焼アルミナ粉砕物又は電融アルミナ粉砕物が挙げられるが、本発明の球状アルミナは、ウラン含有量が少ない水酸化アルミニウム粉末を原料として使用することが特徴である。
【0028】
水酸化アルミニウム粉末の製造方法として、特に限定されないが、一般的にバイヤー法が広く知られている。ボーキサイトを水酸化ナトリウムの220℃〜260℃の熱溶液で洗
浄し、ボーキサイトの含まれるアルミニウム成分が塩基により溶解され、アルミン酸ナトリウムに変換される。次に、アルミン酸ナトリウム以外の成分は固形の不純物として除去して、溶液を冷却することで水酸化アルミニウムとして析出する。その後、ボールミルを使用した粉砕機で処理することで水酸化アルミニウム粉末を得る。このとき、本発明における方法では、ウランおよびトリウムが塩基に不溶である特徴を考慮して、水酸化ナトリウムでの洗浄回数を2〜4回くり返し、ウラン及びトリウムを含む不純物を繰り返し除去することで、水酸化アルミニウムに含有するウラン量及びトリウム量を低減することができる。また、冷却時の温度を60〜80℃で5〜10時間かけて析出することで、得られる水酸化アルミニウムのNa含有量を低減できる。得られる水酸化ナトリウム粉末の特性として、レーザー回折散乱法((株)島津製作所製、SALD−7000)により測定した粒度分布において、微粒側からの累積で50重量%となる平均粒子径D50は0.5μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上30μm以下であることが好ましい。平均粒径が上記の範囲にある場合、水酸化アルミニウム粉末を溶融球状化した球状アルミナの球形度が良好になる。また、水酸化アルミニウムに含まれるウラン量は10ppb以下であることが好ましく、下限値は低ければ低い程好ましいが、通常0.01ppb以上となる。ウラン量がこの範囲にある場合、球状化して得られる球状アルミナに含まれるウラン量が少なくなる。またトリウム量についても前記ウラン量と同様の範囲内であると好ましい。
【0029】
本発明の球状アルミナの製造は、上記の方法で得られる水酸化アルミニウム粉末を使用することが特徴である。溶融球状化の方法として、粉体供給装置、火炎バーナー、溶融帯、冷却帯、粉末回収装置及び吸引ファンから構成される設備を用いて処理した。球状化の概要として、供給装置から原料を供給して、キャリアガスにてバーナーを通して火炎中に噴射する。火炎中で溶融された原料は溶融帯と冷却帯を通過して、球状化する。得られた球状化物を排ガスと共に粉体回収装置に搬送して捕集する。火炎の形成は、水素、天然ガス、アセチレンガス、プロパンガス、ブタン等の可燃性ガスと、空気、酸素等の助燃ガスを、炉体に設定された火炎バーナーから噴射して行う。火炎温度は1800℃以上2300℃以下に保持することが好ましい。火炎温度が1800℃より低いと、生成する球状アルミナ粒子の球形度が悪くなる。火炎温度が2300℃よりも大きくなると、生成する球状アルミナ粒子同士が吸着しやすく、樹脂組成物した際に流動性が落ちる。原料粉末供給用のキャリアガスとしては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素等を使用することができる。
【0030】
エポキシ樹脂組成物における無機充填材(D)の含有量は、85質量%以上であり、より好ましくは87質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。含有量の下限値が上記の範囲内であると、得られるエポキシ樹脂で成形したパッケージ反りが良好になることに加え、吸湿量を抑えることや、強度の低下を低減することができる。また、エポキシ樹脂組成物中における無機充填材(D)の含有量の上限値は、エポキシ樹脂組成物の全量に対して、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは92質量%以下である。含有量の上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有するとともに、良好な成形性を備える。
【0031】
エポキシ樹脂組成物中における球状アルミナ(D1)の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物の全量に対して、70質量%以上であり、より好ましくは72質量%以上であり、さらに好ましくは75質量%以上である。含有量の下限値が上記範囲内であると、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導率が向上する。また、エポキシ樹脂組成物中における球状アルミナ(D1)の含有量の上限値は、無機充填材(D)の含有量の上限値と同じく、エポキシ樹脂組成物の全量に対して、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは92質量%以下である。含有量の上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有するとともに、良好な成形性を備える。なお、後述する、球状アルミナ(D1)や球状シリカ(E)以外の無機充填材(D)を用いる場合や
、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛などの無機系難燃剤を用いる場合には、これらの無機系難燃剤と上記無機充填材(D)の合計量を上記範囲内とすることが望ましい。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂(A)としては、特に限定されないが、例えばビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキルエポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキルエポキシ樹脂などのフェノールアラルキルエポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。エポキシ樹脂組成物としての耐湿信頼性の点から、イオン性不純物であるNa
+イオンやCl
−イオンが極力少ない方が好ましく、硬化性の点からエポキシ当量としては100g/eq以上500g/eq以下が好ましい。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物では、エポキシ樹脂(A)として、150℃におけるICI粘度が1.0poise以下であることが好ましく、0.8poise以下であることがより好ましく、0.5poise以下であることがさらに好ましい。ICI粘度が上記の範囲内にある場合、球状アルミナ(D1)を含む無機充填材の含有量を多くすることができるため、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導率を上げることができ、また、本発明のエポキシ樹脂組成物の流動性及び充填性が良好になる。なお、ICI粘度は、エム.エス.ティー.エンジニアリング(株)製ICIコーンプレート粘度計を使用して測定することができる。
【0034】
このような化合物として、例えば三菱化学(株)製YX4000、YL6121H、YL6810、YX8800、新日鐵化学(株)製YSLV−80XY、YSLV−50TE、YSLV−80DE、YSLV−120TE、DIC(株)製HP−4770などが挙げられる。これらの中でもYX4000が前記好ましい粘度となるため好ましい。さらに本発明においては、複数のエポキシ樹脂を使用する場合、使用するエポキシ樹脂の混合物において、粘度が前記好ましい範囲とすることもできる。
【0035】
エポキシ樹脂組成物中における全エポキシ樹脂(A)の配合量の下限値は、エポキシ樹脂組成物の全量に対して、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有する。また、エポキシ樹脂組成物中における全エポキシ樹脂(A)の配合量の上限値は、エポキシ樹脂組成物の全量に対して、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な耐半田性を有する。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物では、フェノール樹脂(B)として、フェノール性水酸基を一分子内に2個以上有する化合物ならば特に限定されないが、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂、トリスフェノールメタンノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等が例示される。中でもフェノール骨格を2個含む繰り返し単位構造を有するフェノール樹脂(B−1)(以下、「フェノール樹脂(B−1)」と称することがある。)、ヒドロキシナフタレン骨格を有するナフトール樹脂(B−2)(以下、「フェノール
樹脂(B−2)」と称することがある。)、ヒドロキシナフタレン骨格とフェノール骨格を有するナフトール/フェノール共縮合樹脂(B−3)(以下、「フェノール樹脂(B−3)と称することがある。)からなる群より選択される少なくとも1種のフェノール樹脂が好ましい。エポキシ樹脂(A)とこれらのフェノール樹脂とを組み合わせて用いることによる相乗効果により、樹脂組成物を、高流動性、高温保管特性及びパッケージ成形時の低反りのバランスに優れたものとすることができる。樹脂組成物の高温保管特性という観点からは、フェノール樹脂(B−1)が好ましく、パッケージ成形時の低反りという観点からはナフトール樹脂(B−2)が好ましく、高温保管特性とパッケージ成形時の低反りのバランスという観点からはナフトール/フェノール共縮合樹脂(B−3)が好ましい。エポキシ樹脂組成物に求められる特性に合わせて上記フェノール樹脂を選択することが好ましい。また、得られるエポキシ樹脂組成物の耐湿信頼性の観点と硬化性の観点から、上記フェノール樹脂系硬化剤の水酸基当量は、80〜400g/eqであることが好ましく、90〜210g/eqであることがより好ましい。エポキシ当量がこの範囲内にあると、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が高くなり、硬化物が高強度となりパッケージの反りを小さくすることが可能である。
【0037】
フェノール樹脂(B−1)の好ましい事例としては、フェノール類とアセチルアルデヒド類とを必須原料として、酸触媒で重合したものが好ましく、硬化性と耐熱性の観点から、下記一般式(1)で表されるフェノール樹脂(b1)がより好ましい。一般式(1)で表されるフェノール樹脂(b1)では、特にmの平均値は1以上10以下が好ましく、より好ましくは1以上3以下のものが連続成形性に優れるため特に好ましい。このような化合物としては、例えば、市販品として、明和化成(株)製MEH−7500、MEH−7500−3S、エア・ウォーター(株)製HE910−20等が挙げられる。
【0038】
【化1】
(一般式(1)において、R1は炭素数1〜6の炭化水素基又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。aは0〜4の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。mは1〜10の整数であり、nは0〜10の整数である。繰り返し数mで表される構造単位と繰り返し数nで表される構造単位は、それぞれが連続で並んでいても、お互いが交互に並んでいても、ランダムに並んでいてもよい。)
【0039】
ナフトール樹脂(B−2)としては、ヒドロキシナフタレン骨格もしくはジヒドロキシナフタレン骨格を有する構造であれば特に限定されるものではないが、樹脂組成物の流動性の観点からアラルキル構造を有する、下記一般式(2)で表される構造を有するナフトール樹脂(b2)が好ましい。
【0040】
【化2】
(一般式(2)中のXは、下記一般式(2A)、(2B)、または(2C)のいずれかで表される基を表す。R2は炭素数1〜6の炭化水素基又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。bは0〜6の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。rは1〜10の整数、tは1〜2の整数である。さらに、rが2以上の場合、2つ以上のXは、それぞれ互いに独立して、同一であっても異なっていてもよい。)
【0041】
【化3】
(一般式(2A)〜(2C)中のR3、R4及びR5は炭素数1〜6の炭化水素基又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。cは0〜4の整数であり、dは0〜6の整数である。eは0〜4の整数であり、お互いに同じであっても異なっていてもよい。)
【0042】
ここで、ナフトール樹脂(b2)の構造中のXは、高流動性の観点からは一般式(2A)で表されるフェニレン骨格を有するナフトール樹脂(b2A)が好ましい。ナフトール樹脂(b2A)は、例えば、市販品として、新日鐵化学(株)製SN−485、SN−170L、SN−375が挙げられる。また、耐燃性や耐熱性を向上させる観点からは一般式(2B)で表されるナフチレン骨格を有するナフトール樹脂(b2B)や一般式(2C)で表わされるビフェニレン骨格を有するナフトール樹脂(b2C)が好ましい。ナフトール樹脂(b2B)は、ナフトールとビスクロロメチルナフタレンを高温・窒素下で反応させることで得ることができる。ナフトール樹脂(b2C)は、ナフトールとビスクロロビフェニルを高温・窒素下で反応させることで得ることができる。
【0043】
フェノール/ナフトール共縮合樹脂(B−3)としては、フェノール骨格とナフトール骨格を同一分子中に有する構造であれば特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂組成物の高流動性の観点からアラルキル構造を有する、下記一般式(3)で表される構造を有するナフトール/フェノール共縮合樹脂(b3)が好ましい。このような化合物としては、例えば、市販品として、日本化薬(株)製KAYAHARD NHN、KAYAHARD CBN等が挙げられる。
【0044】
【化4】
(一般式(3)において、R6は炭素数1〜6の炭化水素基又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、R7は炭素数1〜6の炭化水素基又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。fは0〜3の整数、gは0〜4の整数である。p、qは互いに独立の0〜10の整数であり、p+q≧2である。繰り返し数pで表される構造単位と繰り返し数qで表される構造単位は、それぞれが連続で並んでいても、お互いが交互に並んでいても、ランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ず繰り返し数p+q−1で表わされる構造を有する。)
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記フェノール樹脂(B)を用いることによる効果が損なわれない範囲で、他の硬化剤を併用することができる。併用できる硬化剤としては、特に限定されないが、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤などを挙げることができる。
【0046】
前記重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソ
シアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0047】
前記触媒型の硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物;BF
3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0048】
縮合型の硬化剤としては、例えば、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂系硬化剤;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0049】
このような他の硬化剤を併用する場合において、フェノール骨格を2個含む繰り返し単位構造を有するフェノール樹脂(B−1)及びヒドロキシナフタレン骨格もしくはジヒドロキシナフタレン骨格を有するナフトール樹脂(B−2)及びナフトール樹脂(B−3)からなる群より選択される少なくとも1種のフェノール樹脂の配合割合としては、全硬化剤(B)に対して、50質量%以上、100質量%以下であることが好ましく、60質量%以上、100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上、100質量%以下であることが特に好ましい。配合割合が上記範囲内であると、エポキシ樹脂(A)との組み合わせによる相乗効果を得ることができる。
【0050】
エポキシ樹脂組成物中におけるフェノール樹脂(B)全体の配合量の下限値は、エポキシ樹脂組成物の全量に対して、好ましくは0.8質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有する。また、エポキシ樹脂組成物中におけるフェノール樹脂(B)全体の配合量の上限値は、エポキシ樹脂組成物の全量に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な耐半田性を有する。
【0051】
なお、本発明のフェノール樹脂(B)とエポキシ樹脂とは、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と、全フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が、0.8以上、1.3以下となるように配合することが好ましい。当量比が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物を成形する際、十分な硬化特性を得ることができる。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物では、硬化促進剤(C)を用いる。硬化促進剤(C)は、エポキシ樹脂(A)とフェノール樹脂(B)との架橋反応を促進する作用を有するほか、エポキシ樹脂組成物の硬化時の流動性と硬化性とのバランスを制御でき、さらには硬化物の硬化特性を変えることもできる。硬化促進剤(C)の具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物などのリン原子含有硬化促進剤;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾールなどの窒素原子含有硬化促進剤が挙げられ、これらのうち、リン原子含有硬化促進剤が好ましい硬化性を得ることができる。流動性と硬化性とのバランスの観点から、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物がより好ましい。流動性という点を重視する場合にはテトラ置換ホスホニウム化合物が特に好ましく、またエポキシ樹脂組成物の硬化物熱時低弾性率という点を重視する場合にはホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキ
ノン化合物との付加物が特に好ましく、また潜伏的硬化性という点を重視する場合にはホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。
【0053】
本発明のエポキシ樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィンなどの第1ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどの第2ホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなどの第3ホスフィンが挙げられる。
【0054】
本発明のエポキシ樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物などが挙げられる。
【0055】
【化5】
(ただし、上記一般式(4)において、Pはリン原子を表す。R8、R9、R10及びR11は芳香族基又はアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1〜3の整数、zは0〜3の整数であり、かつx=yである。)
【0056】
一般式(4)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(4)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(4)で表される化合物において、リン原子に結合するR8、R9、R10及びR11がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。本発明における前記フェノール類とは、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどの単環式フェノール類、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、アントラキノールなどの縮合多環式フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類、フェニルフェノール、ビフェノールなどの多環式フェノール類などが例示される。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(5)で表される化合物などが挙げられる。
【0058】
【化6】
(ただし、上記一般式(5)において、X1は炭素数1〜3のアルキル基、Y1はヒドロキシル基を表す。iは0〜5の整数であり、jは0〜4の整数である。)
【0059】
一般式(5)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0060】
本発明のエポキシ樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(6)で表される化合物などが挙げられる。
【0061】
【化7】
(ただし、上記一般式(6)において、Pはリン原子を表す。R12、R13及びR14は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R15、R16、R17及びR18は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R15とR16が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0062】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキ
シフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィンなどの芳香環に無置換又はアルキル基、アルコキシル基などの置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基などの置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR12、R13及びR14がフェニル基であり、かつR15、R16、R17及びR18が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物がエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低く維持できる点で好ましい。
【0063】
本発明のエポキシ樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(7)で表される化合物などが挙げられる。
【0064】
【化8】
(ただし、上記一般式(7)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R19、R20、R21及びR22は、それぞれ、芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中X2は、基Y2及びY3と結合する有機基である。式中X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X2、及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。)
【0065】
一般式(7)において、R19、R20、R21及びR22としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基などの置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0066】
また、一般式(7)において、X2は、Y2及びY3と結合する有機基である。同様に、X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基X2及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(7)中の−Y2−X2−Y3−、及び−Y4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、分子内にカルボキシル基、または水酸基を少なくとも2個有する有機酸が好ましく、さらには芳香環を構成する隣接する炭素にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物が好ましく、芳香環を構成する隣接する炭素に水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物がより好ましく、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオールおよびグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
また、一般式(7)中のZ1は、芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基などの脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基などの芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基などの反応性置換基などが挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が一般式(7)の熱安定性が向上するという点で、より好ましい。
【0067】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシランなどのシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレンなどのプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイドなどのテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0068】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる硬化促進剤(C)の配合割合は、全樹脂組成物中0.1質量%以上、1質量%以下であることが好ましい。硬化促進剤(C)の配合量が上記範囲内であると、充分な硬化性、流動性を得ることができる。
【0069】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(F)(以下、「化合物(F)」とも称する。)を用いることができる。化合物(F)は、これを用いることにより、フェノール樹脂(B)とエポキシ樹脂(A)との架橋反応を促進させる硬化促進剤(C)として、潜伏性を有しないリン原子含有硬化促進剤を用いた場合であっても、樹脂配合物の溶融混練中での反応を抑えることができ、安定してエポキシ樹脂組成物を得ることができる。また、化合物(F)は、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させる効果も有するものである。化合物(F)としては、下記一般式(8)で表される単環式化合物又は下記一般式(9)で表される多環式化合物などを用いることができ、これらの化合物は水酸基以外の置換基を有していてもよい。
【0070】
【化9】
(ただし、上記一般式(8)において、R23、R27はどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき、他方は水素原子、水酸基、又は水酸基以外の置換基である。R24、R25、及びR26は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。)
【0071】
【化10】
(ただし、上記一般式(9)において、R33、R34はどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。R28、R29、R30、R31及びR32は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。)
【0072】
一般式(8)で表される単環式化合物は、例えば、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル又はこれらの誘導体等が挙げられる。また、一般式(9)で表される多環式化合物は、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらのうち、流動性と硬化性との制御のしやすさから、芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物が好ましい。また、混練工程での揮発を考慮した場合、母核は低揮発性で秤量安定性の高いナフタレン環である化合物とすることがより好ましい。この場合、化合物(F)を、具体的には、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びその誘導体などのナフタレン環を有する化合物とすることができる。これらの化
合物(F)は1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0073】
化合物(F)の配合量は、全エポキシ樹脂組成物中に0.01質量%以上、1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.03質量%以上、0.8質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以上、0.5質量%以下である。化合物(F)の配合量の下限値が上記範囲内であると、エポキシ樹脂組成物の充分な低粘度化と流動性向上効果を得ることができる。また、化合物(F)の配合量の上限値が上記範囲内であると、エポキシ樹脂組成物の硬化性及び連続成形性の低下や半田リフロー温度でクラックを引き起こす恐れが少ない。
【0074】
本発明のエポキシ樹脂組成物では、球状アルミナ(D1)以外の無機充填材(D)を併用することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物に併用できる無機充填材としては、特に限定されないが、当該分野で一般的に用いられる無機充填材を使用することができる。例えば、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化アルミなどが挙げられる。無機充填材の粒径は、金型キャビティへの充填性の観点から、主として0.01μm以上、150μm以下であることが望ましい。また、樹脂組成物の充填時のバリの向上の観点から、球状シリカ(E)であることが好ましい。球状シリカ(E)の特性は限定されないが、最大粒径が100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることが特に好ましい。また、球状シリカ(E)の比表面積は1.0m
2/g以上であることが好ましく、2.0m
2/g以上であることが特に好ましい。最大粒径と比表面積の範囲が上記の場合、充填時のバリが改善される。前記好ましい例示の中でも、平均粒子径が、3μm以上50μ以下の球状シリカと平均粒子径が0.05μm以上3μm未満の球状シリカを併用することがより好ましい。
【0075】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂(A)と球状アルミナ(D)との密着性を向上させるため、カップリング剤(G)をさらに添加することができる。その例としては特に限定されないが、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシランなどが挙げられ、エポキシ樹脂(A)と球状アルミナ(D)との間で反応又は作用し、エポキシ樹脂(A)と無機充填材(D)の界面強度を向上させるものであればよい。また、カップリング剤(G)は、前述の化合物(F)と併用することで、樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させるという化合物(F)の効果を高めることもできるものである。
【0076】
エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0077】
また、アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。アミノシランの1級アミノ部位をケトン又はアルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。また、ウレイドシランとしては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。また、メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドの
ような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤など、が挙げられる。またこれらのシランカップリング剤は予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0078】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いることができるカップリング剤(G)の配合割合の下限値としては、全樹脂組成物中0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。カップリング剤(G)の配合割合の下限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂(A)と無機充填材(D)との界面強度が低下することがなく、電子部品装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、カップリング剤(G)の上限値としては、全樹脂組成物中1.0質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。カップリング剤(G)の配合割合の上限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂(A)と無機充填材(D)との界面強度が低下することがなく、電子部品装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、カップリング剤(G)の配合割合が上記範囲内であれば、樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することがなく、電子部品装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0079】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、耐燃性を向上させるため、無機難燃剤(H)をさらに添加することができる。その例としては、特に限定されるものではないが、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛などが挙げられる。これらの無機難燃剤(H)は、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0080】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いることができる無機難燃剤(H)を使用する場合の配合割合は、全樹脂組成物中0.5質量%以上、6.0質量%以下であることが好ましい。無機難燃剤(H)の配合割合が上記範囲内であると、硬化性や特性を損なうことなく、耐燃性を向上させる効果を得ることができる。
【0081】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、HAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)等の耐湿信頼性を向上させるため、イオン捕捉剤(J)をさらに添加することができる。イオン捕捉剤(J)としては例えば、ハイドロタルサイト類やマグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても構わない。これらのうちハイドロタルサイト類が好ましい。
【0082】
イオン捕捉剤(J)の配合量は、特に制限されないが、エポキシ樹脂組成物全体の0.05質量%以上、3質量%以下が好ましく、0.1質量%以上、1質量%以下がより好ましい。配合量が上記範囲内であると、充分なイオン補足作用を発揮し、耐湿信頼性を向上させる効果が得られるとともに、他の材料特性に対する悪影響も少ない。
【0083】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、トランスファー成形時の離型性を向上させるために離型剤(W)をさらに添加することができる。離型剤(W)としては、半導体封止材にて公知の離型剤を使用すればよいが、炭素数19個以上の主鎖骨格を有する離型剤が好ましく、このような好ましい事例として、酸化ポリオレフィン、酸化ポリオレフィンの誘導体、炭素数19以上の脂肪酸、炭素数19以上の脂肪酸の誘導体、無水マレイン酸とアルケンの共重合体、および無水マレイン酸とアルケンの共重合体のエステル化物からなる群より選択される少なくとも1種の離型剤を含むことが好ましい。このような好ましい離型剤を使用した場合は特に、エポキシ樹脂(A)と球状アルミナ(D1)とこれらの離
型剤とを組み合わせて用いることによる相乗効果により、樹脂組成物のパッケージ成形後の反り及び260℃での反りが小さく、優れたものとすることができる。この理由は不明だが、上記の離型剤を使用することで、エポキシ樹脂組成物中の無機充填材の分散性が向上するためではないかと考えられる。
【0084】
離型剤(W)は1種類を単独で用いても2種類以上を併用しても良い。離型剤の配合割合の下限値としては、全樹脂組成物中0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。離型剤の配合割合の下限値が上記範囲内であれば、成形時に金型から硬化物を離型させることができる。また、離型剤の配合割合の上限値としては、全樹脂組成物中1.0質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。離型剤の配合割合の上限値が上記範囲内であれば、成形品表面に離型剤が染み出すことによる汚れを抑制することができる。
【0085】
本発明のエポキシ樹脂組成物では、前述した成分以外に、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタンなどの着色剤;シリコーンオイル、シリコーンゴムなどの低応力添加剤;燐酸エステル、ホスファゼンなどの非無機系難燃剤などの添加剤を適宜配合してもよい。
【0086】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、硬化促進剤(C)及び無機充填材(D)、ならびに上述のその他の成分などを、例えば、ミキサーなどを用いて常温で均一に混合する。
【0087】
その後、必要に応じて、加熱ロール、ニーダー又は押出機などの混練機を用いて溶融混練し、続いて必要に応じて冷却、粉砕することにより、所望の分散度や流動性などに調整することができる。
【0088】
次に、本発明の電子部品装置について説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて電子部品装置を製造する方法としては、例えば、素子を搭載したリードフレーム又は回路基板などを金型キャビティ内に設置した後、エポキシ樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールドなどの成形方法で成形、硬化させることにより、この素子を封止する方法が挙げられる。
【0089】
本発明の電子部品装置の半導体素子は、動作を始めてから素子自身の温度が上昇して一定になった際、半導体素子とエポキシ樹脂組成物の硬化物との接触面の温度が100〜150℃となることを特徴とする。封止される半導体素子の種類としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
また、本発明の電子部品装置の半導体素子は、高配線化、多配線化したものにも適用できること特徴とする。例えば、高配線化したメモリー用途の半導体素子や、複数の半導体素子を混載したシステムインパッケージ(SiP)には、α線と発熱の2つの問題の対策をしなければならず、これを解決するために、本発明のエポキシ樹脂組成物の使用ができる。
【0091】
得られる電子部品装置の形態としては、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ
(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップサイズ・パッケージ(CSP)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
エポキシ樹脂組成物のトランスファーモールドなどの成形方法により素子が封止された電子部品装置は、そのまま、あるいは80℃から200℃程度の温度で、10分から10時間程度の時間をかけてこの樹脂組成物を硬化させた後、電子機器などに搭載される。本発明の樹脂組成物の硬化物は、プローブ法熱伝導率法による熱伝導率が3.0W/m・K以上であることが好ましく、3.5W/m・K以上であることがより好ましい。上限は特にない。樹脂組成物の硬化物の熱伝導率が上記の範囲内の場合、この樹脂組成物で成形された電子部品装置の半導体素子から発熱がパッケージ外部に十分に拡散され、安定して電子部品装置が動作する。
【0093】
また、本発明の樹脂組成物の硬化物のα線量は、α線カウンターを用いて測定する。測定方法として、120mm×140mm×2mmの試験片をα線カウンターで60時間カウント数を計測して、20時間から60時間のカウント数の変化量(CPH/cm
2)を測定した。α線量が0.005CPH/cm
2以下であることが好ましく、0.003CPH/cm
2以下であることがより好ましい。樹脂組成物の硬化物から放出されるα線量が上記の範囲内の場合、この樹脂組成物で成形された電子部品装置は長期使用においても半導体素子の誤作動が起こりくい。
【0094】
図1は、本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いた電子部品装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して素子1が固定されている。素子1の電極パッドとリードフレーム5との間は金線4によって接続されている。素子1は、エポキシ樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
【0095】
図2は、本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いた片面封止型の電子部品装置の一例について、断面構造を示した図である。基板8の表面に、ソルダーレジスト7の層が形成された積層体のソルダーレジスト7上にダイボンド材硬化体2を介して素子1を固定する。尚、素子と基板との導通をとるため、電極パッドが露出するよう、電極パッド上のソルダーレジスト7は、現像法により除去されている。従って、
図2の電子部品装置は、素子1の電極パッドと基板8上の電極パッドとの間は金線4によって接続する設計となっている。エポキシ樹脂組成物を成形し、エポキシ樹脂組成物の硬化体6を形成することによって、基板8の素子1が搭載された片面側のみが封止された電子部品装置を得ることができる。基板8上の電極パッドは基板8上の非封止面側の半田ボール9と内部で接合されている。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。以下に記載の各成分の配合量は、特に記載しない限り、質量部とする。
【0097】
エポキシ樹脂(A)は、以下のエポキシ樹脂1〜4を使用した。
【0098】
エポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製YX4000K:エポキシ当量185g/eq、融点107℃、150℃におけるICI粘度0.1dPa・sec)。
【0099】
エポキシ樹脂2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製YL6810:エポキシ当量190g/eq、融点80℃、150℃におけるICI粘度0.1dPa・sec)。
【0100】
エポキシ樹脂3:フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC−2000:エポキシ当量238g/eq、軟化点52℃、150℃におけるICI粘度1.2dPa・sec)。
【0101】
エポキシ樹脂4:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製E−1032H60:エポキシ当量171g/eq、軟化点59℃、150℃におけるICI粘度1.3dPa・sec)。
【0102】
フェノール樹脂(B)は、以下のフェノール樹脂1〜3を使用した。
【0103】
フェノール樹脂1:トリフェニルメタン型フェノール樹脂(明和化成(株)製MEH−7500:水酸基当量97g/eq、軟化点110℃、150℃におけるICI粘度5.8dPa・sec)。
【0104】
フェノール樹脂2:ホルムアルデヒドで変性したトリフェニルメタン型フェノール樹脂(エア・ウォーター(株)製HE910−20:水酸基当量101g/eq、軟化点88℃、150℃におけるICI粘度1.5dPa・sec)。
【0105】
フェノール樹脂3:フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型フェノール樹脂(新日鐵化学(株)製SN−485:水酸基当量210g/eq、軟化点87℃、150℃におけるICI粘度1.8dPa・sec)。
【0106】
硬化促進剤(C)は、以下の硬化促進剤1、2を使用した。
硬化促進剤1:下記式(10)で表される硬化促進剤
【化11】
【0107】
硬化促進剤2:下記式(11)で表される硬化促進剤
【化12】
【0108】
球状アルミナ(D1)は、以下の球状アルミナ1〜5を使用した。球状アルミナの平均粒径は(株)島津製作所製のレーザー回折散乱装置SALD−7000(レーザー波長405nm)により測定した。球状アルミナの比表面積はJIS R 1626−1996
ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法に準じて、窒素を吸質として用い、BET1点法により測定した。U量及びTh量は、球状アルミナをフッ化水素に溶解して主成分を揮発させた後、残存物を硝酸に溶解し、遠心分離機で処理した上澄み液をセイコーインスツルメンツ(株)製の誘導結合プラズマ質量分析(ICP− MS)装置SPQ−9000を用いて測定した。
【0109】
球状アルミナ1:日本軽金属(株)製水酸化アルミニウムBE043(平均粒径3.0μm、比表面積3.1m
2/g、U量1ppb、Th量1ppb未満)を粉体供給装置、バーナー、溶融帯、冷却帯、粉体回収装置及び吸引ファンから構成される火炎内処理設備を使用して、可燃性ガスと助燃ガスから形成された2000℃以上の高温火炎中に約10kg/hの速度で供給して、溶融球状化した。得られた球状アルミナを75μmの篩で粗大粒子をカットすることで球状アルミナ1(平均粒径20.5μm、比表面積0.5m
2/g、U量4ppb、Th量1ppb未満)を得た。
【0110】
球状アルミナ2:球状アルミナ1を53μmの篩を通すことで、球状アルミナ2(平均粒径16.5μm、比表面積0.8m
2/g、U量5ppb、Th量1ppb未満)を得た。
【0111】
球状アルミナ3:球状アルミナ1と同様な方法で、2100℃以上の高温火炎中に水酸化アルミニウム(平均粒径5.0μm、比表面積0.1m
2/g、U量1ppb未満、Th量1ppb未満)を約3kg/hの速度で供給して、溶融球状化することで、球状アルミナ3(平均粒径71.1μm、比表面積0.1m
2/g、U量3ppb、Th量1ppb)を得た。
【0112】
球状アルミナ4:球状アルミナ1と同様な方法で、2000℃以上の高温火炎中に水酸化アルミニウム(平均粒径3.0μm、比表面積0.1m
2/g、U量1ppb未満、Th量1ppb未満)を約15kg/hの速度で供給して、溶融球状化した。得られた球状アルミナを53μmの篩で粗大粒子をカットすることで球状アルミナ4(平均粒径12.3μm、比表面積2.0m
2/g、U量7ppb、Th量1ppb未満)を得た。
【0113】
球状アルミナ5:昭和電工(株)製球状アルミナCB−A40と球状アルミナCB−P05を半量ずつ混合した球状アルミナ5(平均粒径21.2μm、比表面積0.5m
2/g、U量50ppb、Th量7ppb)を使用した。
【0114】
球状シリカ(E)は、以下の球状シリカを使用した。
球状シリカ1:電気化学工業(株)製溶融球状シリカFB−105X(平均粒径10.4μm、比表面積2.9m
2/g、U量1ppb未満、Th量1ppb未満)。
球状シリカ2:アドマテックス(株)製合成球状シリカSO−E2(平均粒径0.5μm、比表面積6.0m
2/g、U量1ppb未満、Th量1ppb未満)。
【0115】
カップリング剤(G)は、以下のシランカップリング剤1〜3を使用した。
シランカップリング剤1:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−803)
シランカップリング剤2:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−403)
シランカップリング剤3:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信
越化学工業(株)製、KBM−573)
【0116】
着色剤は、三菱化学(株)製のカーボンブラック(MA600)を使用した。
【0117】
離型剤(W)は、以下の離型剤1〜7を使用した。
【0118】
離型剤1:カルナバワックス(日興ファイン(株)製ニッコウカルナバ、融点83℃)。
【0119】
離型剤2:酸化ポリエチレンワックス(クラリアントジャパン(株)製リコワックスPED191、軟化点120℃)。
【0120】
離型剤3:ウレタン変性酸化ポリエチレンワックス(日本精蝋(株)製NSP−6010P、軟化点73℃)。
【0121】
離型剤4:1−オクタコセン、1−トリアコンテン、1−テトラコンテン、1−ペンタコンテン、1−ヘキサコンテン等の混合物と無水マレイン酸との共重合物(三菱化学(株)製ダイヤカルナ(登録商標)30)300g、ステアリルアルコール(東京化成工業(株)製)141gを100℃で溶解させ、トリフルオロメタンスルホン酸(東京化成製)の10%水溶液5gを滴下して160℃で8時間反応させた後、減圧下160℃で2時間反応を行うことにより436gの離型剤4、軟化点55℃を得た。
【0122】
離型剤5:モンタン酸エステル(クラリアントジャパン(株)製リコルブWE4、融点79℃)。
なお、離型剤1〜5は炭素数19以上の離型剤である。
【0123】
離型剤6:ステアリン酸(日油(株)製SR−サクラ、軟化点59℃)。
【0124】
離型剤7:ラウリン酸アミド(東京化成工業(株)製Lauramide、融点99℃)。
離型剤6、7は炭素数18以下の離型剤である。
【0125】
(実施例1)
以下の成分をミキサーにて常温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、その後冷却し、次いで粉砕して、エポキシ樹脂組成物を得た。
エポキシ樹脂1 6.0質量部
フェノール樹脂1 3.0質量部
球状アルミナ1 80.0質量部
球状シリカ1 5.0質量部
球状シリカ2 5.0質量部
硬化促進剤1 0.4質量部
シランカップリング剤1 0.1質量部
シランカップリング剤2 0.05質量部
シランカップリング剤3 0.05質量部
着色剤 0.3質量部
離型剤1 0.1質量部
得られたエポキシ樹脂組成物を、以下の項目について評価した。評価結果を表1に示す。
【0126】
スパイラルフロー:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製KTS−15)を用いて、ANSI/ASTM D 3123−72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件にて上記で得ら
れたエポキシ樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcmである。スパイラルフロー値は70cm以上であれば、良好な成形性を得ることができる。
【0127】
熱伝導率:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間2分で直径40mm、厚さ30mmの成形品を成形し、175℃、4時間で後硬化し、得られた成形品の熱伝導率を熱伝導率計(京都電子工業社製QTM−500)で測定した。単位はW/m・K。
【0128】
パッケージ反り量:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9
MPa、硬化時間90秒で、35□BGAパッケージ(厚さ0.56mmBT樹脂基板
、チップサイズ10mm×10mm×厚さ0.35mm、金ワイヤー径25μm、パッケージサイズ32mm×32mm、封止樹脂の厚さ1.17mm)を成形し、175℃、4時間で後硬化した。室温まで冷却後、パッケージのゲートから対角線方向に、表面粗さ計を用いて高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値をパッケージ反り量とした。単位はμmである。また、260℃でのパッケージ反りは、260℃熱板の上にパッケージを置き、パッケージの表面温度が260℃±10℃まで上昇した後、室温時と同様な操作でパッケージ反り量を測定した。
【0129】
ワイヤー流れ量:パッケージ反り量を測定する際に成形した35□BGAパッケージを軟X線透視装置(ソフテックス(株)製PRO−TEST100)で観察し、金ワイヤーの流れ率を(流れ量)/(金ワイヤー長)の比率で求めた。
【0130】
α線量:コンプレッション成形で金型温度175℃、硬化時間2分で試験片(140mm
×120mm、厚さ0.2mm)を成形した。得られた試験片6枚(計1008cm
2
)を用いて低レベルα 線測定装置LACS−4000M(印加電圧1.9KV、PR−
10ガス(アルゴン:メタン=9:1)100m/分、有効計数時間88h)でα線量を測定し、0.005CPH/cm
2以下を○、0.005CPH/cm
2を超えるものを×と判定した。
【0131】
実施例2〜
12、参考例13〜14、実施例15〜16、比較例1〜6
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を製造し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示した。
【0132】
【表1】
【0133】
実施例1〜
12、15〜16は、優れた流動性(スパイラルフロー)、ワイヤー流れ、室温時かつ260℃でのパッケージ反り、熱伝導率及び低α線量の特性が得られた。
特に実施例1〜12はエポキシ樹脂粘度、無機充填材量、球状アルミナ量、離型剤種等が好ましい組合せであり、より優れた特性が発現した。
【0134】
一方、比較例1では平均粒径が大きい球状アルミナ使用しているため、流動性とワイヤー流れが悪い結果となった。比較例2では比表面積が大きい球状アルミナ、すなわち細かい粒子が多いため、樹脂硬化物内の熱拡散の効率が悪くなり、熱伝導率が落ちる結果となった。また、細かい粒子同士が凝集しやすいため、粘度が上昇及びワイヤー流れが悪化する結果となった。さらに、細かい粒子が多いため、樹脂の弾性率が下がり、パッケージ反りも悪い結果となった。比較例3ではウラン含有量の多い球状アルミナを使用しているため、樹脂硬化物からのα線量が多い結果となった。
【0135】
比較例4では2種類の球状アルミナを併用しているが、混合した球状アルミナの比表面積は比較例2よりも小さいため、流動性、ワイヤー流れ、熱伝導率の特性は優れるが、パッケージ反りが悪くなる結果となった。この理由は比較例2と同様に細かい粒子が多くなり、球状アルミナの比表面積の算術平均が1.0m
2/gを超えるため、パッケージ反りが悪化したと考えられる。
【0136】
比較例5は無機充填材(D)の配合量が82質量部と少ないため、パッケージ反り及び熱伝導率が大きく劣る結果となった。
【0137】
比較例6は球状アルミナ(D1)の配合量を68質量部と少ないものであり、パッケージ反り及び熱伝導率が悪い結果となった。
【0138】
上記の結果の通り、本願発明のエポキシ樹脂組成物では、流動性(スパイラルフロー)、ワイヤー流れ、室温時かつ260℃でのパッケージ反り、熱伝導率及びα線量が優れる結果が得られるものであり、従来の技術水準から期待できる範疇を超えた顕著な効果となっている。
すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された電子部品装置は発熱量が大きく、かつα線の影響を受け易い1チップデバイスや発熱量の大きいロジック系の素子とα線の影響を受け易いメモリーが混載された優れた電子部品装置であった。