(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の移動体システムによれば、平面標識の鏡面反射面と平面標識の背後の壁面との間で検出用光の反射態様が大きく異なる場合には、検出用光を用いて平面標識を精度よく検出することができる。
【0006】
しかしながら、平面標識を、例えば、ガラス張り(又は鏡張り)の通路等に配設すると、平面標識の鏡面反射面と背後の壁面との間で検出用光の反射態様が異ならなくなるため、該平面標識を検出できなくなるおそれがある。また、この移動体システムでは、移動経路に平面標識と似た反射態様を示す物体、例えば、壁に貼られたミラー群や凸凹調の壁自体等が存在する場合には、平面標識と誤って認識してしまうおそれもある。一方、上述したような環境を避けて標識を設置しようとすると、標識の設置場所が制限され、場合によっては、自律移動ができなくなるおそれもある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、標識の設置自由度が高く、標識がどのような環境の移動経路に設置されたとしても、移動経路に設置された標識を確実に判別して検知でき、適確に自律移動を行うことが可能な自律移動装置、自律移動方法、標識、及び、自律移動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る自律移動装置は、移動経路の障害物の配置を示した環境地図、及び、該移動経路に設置された標識の環境地図上の配置を記憶する記憶手段と、検出波を所定角度毎に走査して射出するとともに、物体によって反射された反射波を検出できた場合には、該物体との距離を含む検出情報を走査角度毎に出力し、反射波を検出できない場合には、非検出情報を走査角度毎に出力する物体検出手段と、物体検出手段から出力される検出情報に基づいて、自機周辺の局所地図を作成する局所地図作成手段と、局所地図作成手段により作成された局所地図と記憶手段に記憶されている環境地図とを照合して自己位置を推定する自己位置推定手段と、物体検出手段から出力される検出情報と非検出情報の出力パターンに基づいて、標識を検知する標識検知手段とを備え、標識検知手段が、複数の検出情報からなる検出情報群と複数の非検出情報からなる非検出情報群とが交互に所定回数繰り返して出現し、該非検出情報群に含まれる非検出情報数が第1の所定の範囲内であり、かつ、該検出情報群に含まれる検出情報数が第2の所定の範囲内である場合に標識であると判定し、自己位置推定手段が、標識検知手段により標識が検知された場合に、記憶手段に記憶されている当該標識の環境地図上の配置に基づいて、推定した自己位置を修正することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る自律移動方法は、移動経路の障害物の配置を示した環境地図、及び、該移動経路に設置された標識の環境地図上の配置を記憶する記憶ステップと、検出波を所定角度毎に走査して射出するとともに、物体によって反射された反射波を検出できた場合には、該物体との距離を含む検出情報を走査角度毎に出力し、反射波を検出できない場合には、非検出情報を走査角度毎に出力する物体検出ステップと、物体検出ステップにおいて出力される検出情報に基づいて、自機周辺の局所地図を作成する局所地図作成ステップと、局所地図作成ステップにおいて作成された局所地図と記憶ステップにおいて記憶された環境地図とを照合して自己位置を推定する自己位置推定ステップと、物体検出ステップにおいて出力される検出情報と非検出情報の出力パターンに基づいて、標識を検知する標識検知ステップとを備え、標識検知ステップでは、複数の検出情報からなる検出情報群と複数の非検出情報からなる非検出情報群とが交互に所定回数繰り返して出現し、該非検出情報群に含まれる非検出情報数が第1の所定の範囲内であり、かつ、該検出情報群に含まれる検出情報数が第2の所定の範囲内である場合に標識であると判定し、自己位置推定ステップでは、標識検知ステップにおいて標識が検知された場合に、記憶ステップにおいて記憶された当該標識の環境地図上の配置に基づいて、推定した自己位置を修正することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る自律移動装置、又は自律移動方法によれば、検出情報と非検出情報の出力パターンに基づいて、標識が検知される。より詳細には、複数の検出情報群と複数の非検出情報群とが交互に所定回数繰り返して出現し、複数の非検出情報群それぞれに含まれる非検出情報の数が第1の所定の範囲内であり、かつ、複数の検出情報群それぞれに含まれる検出情報の数が第2の所定の範囲内である場合に標識であると判定される。すなわち、一定数の連続する検出情報と一定数の連続する非検出情報が複数回繰り返して出現するというユニークな出力パターンが得られた場合に被検出物が標識であると判定される。よって、例えば、ガラス張り(又は鏡張り)の通路等に標識を配設した場合であっても、該標識を検知することができる。また、標識を、例えば、壁に貼られたミラー群や凸凹調の壁自体等と明確に区別して認識することができる。その結果、標識の設置自由度が高く、標識がどのような環境の移動経路に設置されたとしても、移動経路に設置された標識を確実に判別して検知でき、適確に自律移動を行うことが可能となる。
【0011】
本発明に係る自律移動装置では、標識検知手段が、複数の検出情報群を構成する検出情報に含まれる物体との距離が遠いほど、第1の所定の範囲を狭くすることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る自律移動方法では、標識検知ステップにおいて、複数の検出情報群を構成する検出情報に含まれる物体との距離が遠いほど、第1の所定の範囲を狭くすることが好ましい。
【0013】
ところで、移動経路を移動しながら標識を検知する場合、自機の移動に伴い、自機と標識との距離及び角度が変化する。よって、1つの非検出情報群に含まれる非検出情報の数は、自機の移動に伴って変化する。本発明に係る自律移動装置、又は自律移動方法によれば、検出情報に含まれる距離が遠いほど、すなわち、自機と標識との距離が遠いほど、第1の所定の範囲が狭くされる。そのため、標識の誤検知を低減することが可能となる。
【0014】
本発明に係る自律移動装置は、移動経路の障害物の配置を示した環境地図、及び、該移動経路に設置された標識の環境地図上の配置を記憶する記憶手段と、検出波を所定角度毎に走査して射出するとともに、物体によって反射された反射波を検出できた場合には、該物体との距離を含む検出情報を走査角度毎に出力し、反射波を検出できない場合には、非検出情報を走査角度毎に出力する物体検出手段と、物体検出手段から出力される検出情報に基づいて、自機周辺の局所地図を作成する局所地図作成手段と、局所地図作成手段により作成された局所地図と記憶手段に記憶されている環境地図とを照合して自己位置を推定する自己位置推定手段と、物体検出手段から出力される検出情報と非検出情報の出力パターンに基づいて、標識を検知する標識検知手段とを備え、標識検知手段が、複数の検出情報からなる検出情報群と複数の非検出情報からなる非検出情報群とが交互に所定回数繰り返して出現し、該非検出情報群に対応する非検出領域の幅が第5の所定の範囲内であり、かつ、該検出情報群に対応する検出領域の幅が第6の所定の範囲内である場合に標識であると判定し、自己位置推定手段が、標識検知手段により標識が検知された場合に、記憶手段に記憶されている当該標識の環境地図上の配置に基づいて、推定した自己位置を修正することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る自律移動方法は、移動経路の障害物の配置を示した環境地図、及び、該移動経路に設置された標識の環境地図上の配置を記憶する記憶ステップと、検出波を所定角度毎に走査して射出するとともに、物体によって反射された反射波を検出できた場合には、該物体との距離を含む検出情報を走査角度毎に出力し、反射波を検出できない場合には、非検出情報を走査角度毎に出力する物体検出ステップと、物体検出ステップにおいて出力される検出情報に基づいて、自機周辺の局所地図を作成する局所地図作成ステップと、局所地図作成ステップにおいて作成された局所地図と前記記憶ステップにおいて記憶された環境地図とを照合して自己位置を推定する自己位置推定ステップと、物体検出ステップにおいて出力される検出情報と非検出情報の出力パターンに基づいて、標識を検知する標識検知ステップと、を備え、標識検知ステップでは、複数の検出情報からなる検出情報群と複数の非検出情報からなる非検出情報群とが交互に所定回数繰り返して出現し、該非検出情報群に対応する非検出領域の幅が第5の所定の範囲内であり、かつ、該検出情報群に対応する検出領域の幅が第6の所定の範囲内である場合に標識であると判定し、自己位置推定ステップでは、標識検知ステップにおいて標識が検知された場合に、記憶ステップにおいて記憶された当該標識の環境地図上の配置に基づいて、推定した自己位置を修正することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る自律移動装置、又は自律移動方法によれば、検出情報と非検出情報の出力パターンに基づいて、標識が検知される。より詳細には、複数の検出情報群と複数の非検出情報群とが交互に所定回数繰り返して出現し、複数の非検出情報群それぞれに対応する非検出領域の幅が第5の所定の範囲内であり、かつ、複数の検出情報群それぞれに対応する検出領域の幅が第6の所定の範囲内である場合に標識であると判定される。すなわち、一定幅の検出領域と一定幅の非検出領域が複数回繰り返して出現するというユニークな出力パターンが得られた場合に被検出物が標識であると判定される。よって、例えば、ガラス張り(又は鏡張り)の通路等に標識を配設した場合であっても、該標識を検知することができる。また、標識を、例えば、壁に貼られたミラー群や凸凹調の壁自体等と明確に区別して認識することができる。その結果、標識の設置自由度が高く、標識がどのような環境の移動経路に設置されたとしても、移動経路に設置された標識を確実に判別して検知でき、適確に自律移動を行うことが可能となる。
【0017】
本発明に係る自律移動装置は、移動経路の障害物の配置を示した環境地図、及び、該移動経路に設置された標識の環境地図上の配置を記憶する記憶手段と、検出光を所定角度毎に走査して射出するとともに、物体によって反射された反射光を受光して、該物体との距離、及び反射光の受光強度を含む検出情報を走査角度毎に出力する物体検出手段と、物体検出手段から出力される検出情報に基づいて、自機周辺の局所地図を作成する局所地図作成手段と、局所地図作成手段により作成された局所地図と記憶手段に記憶されている環境地図とを照合して自己位置を推定する自己位置推定手段と、物体検出手段から出力される検出情報に含まれる反射光の受光強度の強弱パターンに基づいて、標識を検知する標識検知手段とを備え、標識検知手段が、検出情報に含まれる反射光の受光強度が所定値よりも高い複数の検出情報からなる高強度検出情報群と、該受光強度が所定値よりも低い複数の検出情報からなる低強度検出情報群とが交互に所定回数繰り返して出現し、該高強度検出情報群に含まれる検出情報数が第3の所定の範囲内であり、かつ、該低強度検出情報群に含まれる検出情報数が第4の所定の範囲内である場合に標識であると判定し、自己位置推定手段が、標識検知手段により標識が検知された場合に、記憶手段に記憶されている当該標識の環境地図上の配置に基づいて、推定した自己位置を修正することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る自律移動方法は、移動経路の障害物の配置を示した環境地図、及び、該移動経路に設置された標識の環境地図上の配置を記憶する記憶ステップと、検出光を所定角度毎に走査して射出するとともに、物体によって反射された反射光を受光して、該物体との距離、及び反射光の受光強度を含む検出情報を走査角度毎に出力する物体検出ステップと、物体検出ステップにおいて出力される検出情報に基づいて、自機周辺の局所地図を作成する局所地図作成ステップと、局所地図作成ステップにおいて作成された局所地図と記憶ステップにおいて記憶された環境地図とを照合して自己位置を推定する自己位置推定ステップと、物体検出ステップにおいて出力される検出情報に含まれる反射光の受光強度の強弱パターンに基づいて、標識を検知する標識検知ステップとを備え、標識検知ステップにおいて、検出情報に含まれる反射光の受光強度が所定値よりも高い複数の検出情報からなる高強度検出情報群と、該受光強度が所定値よりも低い複数の検出情報からなる低強度検出情報群とが交互に所定回数繰り返して出現し、該高強度検出情報群に含まれる検出情報数が第3の所定の範囲内であり、かつ、該低強度検出情報群に含まれる検出情報数が第4の所定の範囲内である場合に標識であると判定し、自己位置推定ステップでは、標識検知ステップにおいて標識が検知された場合に、記憶ステップにおいて記憶されている当該標識の環境地図上の配置に基づいて、推定した自己位置を修正することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る自律移動装置、又は自律移動方法によれば、出力された検出情報に含まれる反射光の受光強度の強弱パターンに基づいて、標識が検知される。より詳細には、検出情報に含まれる、反射光の受光強度が所定値よりも高い複数の検出情報(高強度検出情報)からなる高強度検出情報群と、該受光強度が所定値よりも低い複数の検出情報(低強度検出情報)からなる低強度検出情報群とが交互に所定回数繰り返して出現し、該複数の高強度検出情報群それぞれに含まれる検出情報(高強度検出情報)の数が第3の所定の範囲内であり、かつ、複数の低強度検出情報群それぞれに含まれる検出情報(低強度検出情報)の数が第4の所定の範囲内である場合に標識であると判定される。すなわち、一定数の連続する高強度検出情報と一定数の連続する低強度検出情報が複数回繰り返して出現するというユニークな出力パターンが得られた場合に被検出物が標識であると判定される。よって、例えば、ガラス張り(又は鏡張り)の通路等に標識を配設した場合であっても、該標識を検知することができる。また、標識を、例えば、壁に貼られたミラー群や凸凹調の壁自体等と明確に区別して認識することができる。その結果、標識の設置自由度が高く、標識がどのような環境の移動経路に設置されたとしても、移動経路に設置された標識を確実に判別して検知でき、適確に自律移動を行うことが可能となる。
【0020】
本発明に係る自律移動装置は、移動経路の障害物の配置を示した環境地図、及び、該移動経路に設置された標識の環境地図上の配置を記憶する記憶手段と、検出光を所定角度毎に走査して射出するとともに、物体によって反射された反射光を受光して、該物体との距離、及び反射光の受光強度を含む検出情報を走査角度毎に出力する物体検出手段と、物体検出手段から出力される検出情報に基づいて、自機周辺の局所地図を作成する局所地図作成手段と、局所地図作成手段により作成された局所地図と記憶手段に記憶されている環境地図とを照合して自己位置を推定する自己位置推定手段と、物体検出手段から出力される検出情報に含まれる反射光の受光強度の強弱パターンに基づいて、標識を検知する標識検知手段とを備え、標識検知手段が、検出情報に含まれる反射光の受光強度が所定値よりも高い複数の検出情報からなる高強度検出情報群と、該受光強度が所定値よりも低い複数の検出情報からなる低強度検出情報群とが交互に所定回数繰り返して出現し、該高強度検出情報群に対応する高強度検出領域の幅が第7の所定の範囲内であり、かつ、該低強度検出情報群に対応する低強度検出領域の幅が第8の所定の範囲内である場合に標識であると判定し、自己位置推定手段が、標識検知手段により標識が検知された場合に、記憶手段に記憶されている当該標識の環境地図上の配置に基づいて、推定した自己位置を修正することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る自律移動方法は、移動経路の障害物の配置を示した環境地図、及び、該移動経路に設置された標識の環境地図上の配置を記憶する記憶ステップと、検出光を所定角度毎に走査して射出するとともに、物体によって反射された反射光を受光して、該物体との距離、及び反射光の受光強度を含む検出情報を走査角度毎に出力する物体検出ステップと、物体検出ステップにおいて出力される検出情報に基づいて、自機周辺の局所地図を作成する局所地図作成ステップと、局所地図作成ステップにおいて作成された局所地図と記憶ステップにおいて記憶された環境地図とを照合して自己位置を推定する自己位置推定ステップと、物体検出ステップにおいて出力される検出情報に含まれる反射光の受光強度の強弱パターンに基づいて、標識を検知する標識検知ステップとを備え、標識検知ステップでは、検出情報に含まれる反射光の受光強度が所定値よりも高い複数の検出情報からなる高強度検出情報群と、該受光強度が所定値よりも低い複数の検出情報からなる低強度検出情報群とが交互に所定回数繰り返して出現し、該高強度検出情報群に対応する高強度検出領域の幅が第7の所定の範囲内であり、かつ、該低強度検出情報群に対応する低強度検出領域の幅が第8の所定の範囲内である場合に標識であると判定し、自己位置推定ステップでは、標識検知ステップにおいて標識が検知された場合に、記憶ステップにおいて記憶された当該標識の環境地図上の配置に基づいて、推定した自己位置を修正することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る自律移動装置、又は自律移動方法によれば、出力された検出情報に含まれる反射光の受光強度の強弱パターンに基づいて、標識が検知される。より詳細には、検出情報に含まれる、反射光の受光強度が所定値よりも高い複数の検出情報(高強度検出情報)からなる高強度検出情報群と、該受光強度が所定値よりも低い複数の検出情報(低強度検出情報)からなる低強度検出情報群とが交互に所定回数繰り返して出現し、該複数の高強度検出情報群それぞれに対応する高強度検出領域の幅が第7の所定の範囲内であり、かつ、複数の低強度検出情報群それぞれに対応する低強度検出領域の幅が第8の所定の範囲内である場合に標識であると判定される。すなわち、一定幅の高強度検出領域と一定幅の低強度検出領域が複数回繰り返して出現するというユニークな出力パターンが得られた場合に被検出物が標識であると判定される。よって、例えば、ガラス張り(又は鏡張り)の通路等に標識を配設した場合であっても、該標識を検知することができる。また、標識を、例えば、壁に貼られたミラー群や凸凹調の壁自体等と明確に区別して認識することができる。その結果、標識の設置自由度が高く、標識がどのような環境の移動経路に設置されたとしても、移動経路に設置された標識を確実に判別して検知でき、適確に自律移動を行うことが可能となる。
【0023】
本発明に係る自律移動装置では、上記物体検出手段がレーザレンジファインダであることが好ましい。
【0024】
レーザレンジファインダは、角度方向、距離方向共に高い解像度と測定精度を持ち、かつ、高速に物体との距離を計測することができる。よって、物体検出手段としてレーザレンジファインダを用いることにより、周囲に存在する物体との角度及び距離を高精度かつ高速に測定することができる。
【0025】
本発明に係る自律移動装置では、標識検知手段が、同一の被検知物体について標識であると複数回判定した場合に、当該被検知物体が標識であると確定することが好ましい。このようにすれば、標識の誤検知をより確実に防止することが可能となる。
【0026】
本発明に係る自律移動装置では、記憶手段が、標識の環境地図上の配置を環境地図とは異なるレイヤーに記憶することが好ましい。
【0027】
このようにすれば、標識の配置(設置場所)が変更された場合に、標識の配置が記憶されたレイヤーのみを修正すればよく、環境地図自体を変更する必要がないため、標識の配置変更に対して柔軟に対応することができるとともに、作業効率を向上させることが可能となる。
【0028】
本発明に係る標識は、複数の拡散反射部材と、複数の鏡面反射部材とが、交互に配列されていることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る標識によれば、拡散反射部材に入射した検出波(検出光)は、該拡散反射部材で拡散反射され、検出波(検出光)の入射方向、例えば、自律移動装置の物体検出手段(レーザレンジファインダ)の方向に戻る。一方、鏡面反射部材に入射した検出波(検出光)は、略直角に入射されない限り、自律移動装置の物体検出手段(レーザレンジファインダ)に戻らない。よって、複数の拡散反射部材と、複数の鏡面反射部材とが、自律移動装置から出力される検出波(検出光)の走査方向に沿って交互に並ぶように当該標識を設置することにより、自律移動装置において、一定数の連続する検出情報(又は一定幅の検出領域)と一定数の連続する非検出情報(又は一定幅の非検出領域)が複数回繰り返して出現するというユニークな出力パターンを得ることが可能となる。
【0030】
本発明に係る標識は、上記配列の方向に沿って切断した鏡面反射部材の断面が円弧状に形成されていることが好ましい。
【0031】
このようにすれば、検出波(検出光)が直角に近い角度で入射される場合の反射角をより大きくすることができる。よって、鏡面反射部材に入射した検出波(検出光)を、自律移動装置の物体検出手段(レーザレンジファインダ)により戻りにくくすることが可能となる。
【0032】
本発明に係る標識は、複数の拡散反射部材と、複数の吸光部材とが、交互に配列されていることを特徴とする。
【0033】
本発明に係る標識によれば、拡散反射部材に入射した検出波(検出光)は、該拡散反射部材で拡散反射され、検出波(検出光)の入射方向、例えば、自律移動装置の物体検出手段(レーザレンジファインダ)の方向に戻る。一方、吸光部材に入射した検出波(検出光)は、該部材に吸収されるため、自律移動装置の物体検出手段(レーザレンジファインダ)に戻らない。よって、複数の拡散反射部材と、複数の吸光部材とが、自律移動装置から出力される検出波(検出光)の走査方向に沿って交互に並ぶように当該標識を設置することにより、自律移動装置において、一定数の連続する高強度検出情報(又は一定幅の高強度検出領域)と一定数の連続する低強度検出情報(又は一定幅の低強度検出領域)が複数回繰り返して出現するというユニークな出力パターンを得ることが可能となる。
【0034】
本発明に係る標識は、拡散反射部材及び吸光部材が、薄板状に形成されていることが好ましい。
【0035】
このようにすれば、標識の厚みを薄くすることができるため、標識の設置自由度を向上させることができ、また、自律移動装置の移動経路を広く取ることが可能となる。
【0036】
本発明に係る自律移動システムは、上記いずれかの自律移動装置と、上記いずれかの標識とを備えることを特徴とする。
【0037】
本発明に係る自律移動システムによれば、上記いずれかの自律移動装置、及び上記いずれかの標識を備えているため、上述したように、標識の設置自由度が高く、標識がどのような環境の移動経路に設置されたとしても、移動経路に設置された標識を確実に判別して検知でき、適確に自律移動を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、標識の設置自由度が高く、標識がどのような環境の移動経路に設置されたとしても、移動経路に設置された標識を確実に判別して検知でき、適確に自律移動を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0041】
(第1実施形態)
まず、
図1及び
図2を併せて用いて、第1実施形態に係る自律移動システム1、及び、該自律移動システム1を構成する自律移動装置3並びに標識(マーク)5の構成について説明する。
図1は、自律移動システム1、及び、該自律移動システム1を構成する自律移動装置3の構成を示すブロック図であり、
図2は標識5の構成を示す図である。自律移動システム1は、移動経路に沿って自律して移動する自律移動装置3、及び移動経路に設置される標識5を備えて構成される。以下、それぞれについて詳細に説明する。
【0042】
自律移動装置3は、ユーザの遠隔操作に従って自機が誘導されているときにSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を用いて移動経路の環境地図(障害物が存在する領域と存在しない領域を表したグリッドマップ)を作成するとともに、誘導されて所定の設定ポイントに到達したときに、そのときの実際の自己位置を環境地図上の設定ポイントの位置座標として登録する機能を有する(本機能を実行するモードを「据付モード」と呼ぶ)。また、自律移動装置3は、据付モードを実行しているときに、移動経路に設置された標識5の位置座標を、ユーザの指示により、又はプログラムにより自動的に登録する機能も有している。後者の機能によると、SLAMにより環境地図を作成した場合には、環境地図が歪んだ座標系で作成されることがあるが、この歪んだ座標系で標識5の位置を登録することができる。さらに、自律移動装置3は、作成されて記憶されている環境地図上の設定ポイントを利用して移動経路を計画するとともに、移動経路に設置された標識5を検知しつつ、計画された移動経路に沿ってスタート地点からゴール地点まで自律して移動する機能を有する(本機能を実行するモードを「搬送モード」と呼ぶ)。
【0043】
そのため、自律移動装置3は、その下部に電動モータ12及び該電動モータ12により駆動されるオムニホイール13が設けられた本体10と、周囲に存在する物体(例えば壁や障害物等)との距離を計測するレーザレンジファインダ20と、自律移動装置3を誘導するとともに設定ポイントを登録するジョイスティック21とを備えている。また、自律移動装置3は、据付モードにおける環境地図の作成、及び、搬送モードにおける移動経路の計画並びに該移動経路に沿った自律移動を統合的に司る電子制御装置30を備えている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0044】
本体10は、例えば略有底円筒状に形成された金属製のフレームであり、この本体10に、上述したレーザレンジファインダ20、及び電子制御装置30等が取り付けられている。なお、本体10の形状は略有底円筒状に限られない。本体10の下部には、4つの電動モータ12が十字状に配置されて取り付けられている。4つの電動モータ12のそれぞれの駆動軸12Aにはオムニホイール13が装着されている。すなわち、4つのオムニホイール13は、同一円周上に周方向に沿って90°ずつ間隔を空けて取り付けられている。
【0045】
オムニホイール13は、電動モータ12の駆動軸12Aを中心にして回転する2枚のホイール14と、各ホイール14の外周に電動モータ12の駆動軸12Aと直交する軸を中心として回転可能に設けられた6個のフリーローラ15とを有する車輪であり、全方向に移動可能としたものである。なお、2枚のホイール14は位相を30°ずらして取り付けられている。このような構成を有するため、電動モータ12が駆動されてホイール14が回転すると、6個のフリーローラ15はホイール14と一体となって回転する。一方、接地しているフリーローラ15が回転することにより、オムニホイール13は、そのホイール14の回転軸に平行な方向にも移動することができる。そのため、4つの電動モータ12を独立して制御し、4つのオムニホイール13のそれぞれの回転方向及び回転速度を個別に調節することより、自律移動装置3を任意の方向(全方向)に移動させることができる。
【0046】
4つの電動モータ12それぞれの駆動軸12Aには、該駆動軸12Aの回転角度(すなわち駆動量あるいは回転量)を検出するエンコーダ16が取り付けられている。各エンコーダ16は、電子制御装置30と接続されており、検出した各電動モータ12の回転角度を電子制御装置30に出力する。電子制御装置30は、入力された各電動モータ12の回転角度から、自律移動装置3の移動量を演算する。
【0047】
ここで、
図3、
図4を併せて参照しつつ、電動モータ12の回転角度、すなわちオムニホイール13の車輪移動量から自機の移動量(移動距離)を求める方法について説明する。
図3は、自律移動装置3の移動量及び回転量と、各オムニホイール13の車輪移動量との関係を説明するための図である。また、
図4は、自律移動装置3の移動量及び回転量と、各オムニホイール13の車輪移動量との関係式を示す図である。
【0048】
図3に示されるように、4つのオムニホイール13の中心位置から各オムニホイール13までの距離をLとし、オムニホイール13の傾き角をαとする。なお、本実施形態において傾き角αは45°に設定されている。ここで、電動モータ12の回転角度から求められる各オムニホイール13の車輪移動量をci(i=0〜3)とすると、自律移動装置3の移動量の各成分(dx,dy)と回転角φは、
図4の(1)式により求められる。また、上記(1)式から求められた自律移動装置3の移動量の各成分(dx,dy)を(2)式に代入することにより、自律移動装置3の移動量Sが求められる。
【0049】
図1に戻り、レーザレンジファインダ20は、自機の正面方向(前方)を向くようにして自律移動装置3の前部に取り付けられている。レーザレンジファインダ20は、レーザ(検出波)を射出するとともに、射出したレーザを回転ミラーで反射させることで、自律移動装置3の周囲を中心角240°の扇状に水平方向に走査する。すなわち、レーザレンジファインダ20は、レーザを所定角度毎に走査して射出する。そして、レーザレンジファインダ20は、例えば壁や標識5、障害物等の物体で反射されて戻ってきたレーザ(反射波)を検出し、レーザの射出角度、及びレーザを射出してから物体で反射されて戻ってくるまでの時間(伝播時間)に基づいて、物体との角度及び距離を検出する。
【0050】
より詳細には、レーザレンジファインダ20は、物体によって反射されたレーザ(反射波)を検出できた場合には、走査角度に対応させて、物体との距離を示すデータ(例えば20〜4095d)を含む検出情報を出力する。一方、レーザ(反射波)を検出できない(すなわち反射波が返ってこない)場合には、レーザレンジファインダ20は、非検出情報(エラーコード、例えば0〜19d)を走査角度に対応させて出力する。すなわち、レーザレンジファインダ20は、特許請求の範囲に記載の物体検出手段として機能する。なお、レーザレンジファインダ20は、電子制御装置30と接続されており、検出した周囲の物体との検出情報(角度・距離情報)、及び非検出情報を電子制御装置30に出力する。
【0051】
ここで、本実施形態を構成する標識5について説明する。
図2は、上段から順に標識5の正面図、平面図、及び、レーザレンジファインダ20の出力(検出情報又は非検出情報)を示す。標識5は、横幅が例えば300mmの矩形の板状の拡散反射部材51に3つの鏡面反射部材52が等間隔に取り付けられて構成されている。すなわち、正面視した場合に、4つの拡散反射部材(領域)51と、3つの鏡面反射部材(領域)52とが、交互に配置されている。
【0052】
鏡面反射部材52は、
図2の中段に示されるように、鏡面素材を、横断面が円弧状(半円状)になるように形成した半円筒状の部材である。標識5は、例えば、レーザレンジファインダ20のレーザの走査方向(水平方向)に沿って、拡散反射部材51と鏡面反射部材52とが交互に並ぶように、移動経路の壁面等に設置される。
【0053】
レーザレンジファインダ20から射出されたレーザが、拡散反射部材51に入射した場合には、レーザが拡散反射されて、反射光がレーザレンジファインダ20に返る。そのため、この場合、レーザレンジファインダ20からは、正常データn(検出情報)が出力される。一方、レーザレンジファインダ20から射出されたレーザが、鏡面反射部材52に入射した場合には、直角に入射した場合を除いて、反射光がレーザレンジファインダ20に返らない。そのため、このとき、レーザレンジファインダ20からは、エラーコードe(非検出情報)が出力される。
【0054】
よって、レーザレンジファインダ20からのレーザが水平方向に走査されて標識5に入射した場合、レーザレンジファインダ20からは、
図2の下段に示されるように、複数(
図2の例では4つ)の検出情報群(正常データn・・・n)51aと、複数(
図2の例では3つ)の非検出情報群(エラーコードe・・e)52aとが交互に所定回数(
図2の例では3回)繰り返して出現する。すなわち、拡散反射部材51、鏡面反射部材52それぞれの幅(長さ)及び水平方向(レーザの走査方向)の配置に応じたユニークな出力パターンを得ることができる。
【0055】
図1に戻り説明を続ける。ジョイスティック21は、ユーザの遠隔操作に従って自律移動装置1を誘導して移動させるための入力装置であり、自律移動装置3を誘導するための方向を指示する棒状のレバー22、環境地図上の設定ポイントを登録するための登録スイッチ23等を有している。ユーザは、ジョイスティック21のレバー22を操作することにより、自律移動装置3に対して移動方向を指示し、自律移動装置3を誘導することができる。また、ユーザは、自律移動装置3を誘導しつつ、所定の設定ポイント(例えば、スタート地点候補、目標通過地点候補、ゴール地点候補)に到達したときに、登録スイッチ23を押下げることにより、そのときの自己位置を設定ポイントの位置座標として登録することができる。さらにユーザは、設定ポイントの属性情報(例えば、エレベータ前、会議室前、非常階段前等)を登録するように教示することができる。なお、ジョイスティック21は、電子制御装置30と接続されており、誘導制御(方向指示)信号、及び設定ポイント登録信号を電子制御装置30に出力する。
【0056】
電子制御装置30は、自律移動装置3の制御を統合的に司るものである。電子制御装置30は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM、及び、その記憶内容が保持されるバックアップRAM等から構成されている。また、電子制御装置30は、レーザレンジファインダ20、ジョイスティック21とマイクロプロセッサとを電気的に接続するインターフェイス回路、及び電動モータ12を駆動するドライバ回路等も備えている。
【0057】
電子制御装置30は、据付モードを実行することによりSLAMを用いて移動経路の環境地図を作成するとともに、環境地図上の標識5及び設定ポイントの位置座標を登録する。また、電子制御装置30は、搬送モードを実行することにより、設定ポイントを例えばゴール候補として移動経路を計画するとともに、標識5を検知して自己位置を修正しつつ、計画された移動経路に沿ってスタート地点からゴール地点まで自律して移動するように電動モータ12を制御する。そのため、電子制御装置30は、局所地図作成部31、自己位置推定部32、環境地図作成部33、記憶部34、経路計画部35、走行制御部36、センサ情報取得部37、障害物回避制御部38、及び標識検知部39等を備えている。なお、これらの各部は、上述したハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構築される。
【0058】
局所地図作成部31は、レーザレンジファインダ20からセンサ情報取得部37を介して読み込まれた周囲の物体との角度・距離情報(検出情報)に基づいて、レーザレンジファインダ20を原点にした自機周辺(レーザレンジファインダ20の検知可能範囲内)の局所地図を作成する。すなわち、局所地図作成部31は、特許請求の範囲に記載の局所地図作成手段として機能する。
【0059】
標識検知部39は、レーザレンジファインダ20からセンサ情報取得部37を介して出力される検出情報と非検出情報の出力パターンに基づいて、標識5を検知する。すなわち、標識検知部39は、特許請求の範囲に記載の標識検知手段として機能する。より具体的には、標識検知部39は、
図2の下段に示されるように、複数(
図2では4つ)の検出情報群51aと複数(
図2では3つ)の非検出情報群52aとが交互に所定回数(
図2では3回)繰り返して出現し、該複数の非検出情報群52aそれぞれに含まれる非検出情報の数(鏡面反射部材52の幅に比例し、大まかな幅を示すデータ)が第1の所定の範囲内であり、かつ、該複数の検出情報群51aそれぞれに含まれる検出情報の数(拡散反射部材51の幅に比例し、大まかな幅を示すデータ)が第2の所定の範囲内である場合に被検出物が標識5であると判定する。
【0060】
なお、第1の所定の範囲は、鏡面反射部材52の水平方向の幅(長さ)等に応じて設定され、第2の所定の範囲は、拡散反射部材51の水平方向の幅等に応じて設定される。また、第1の所定の範囲及び第2の所定の範囲それぞれは、複数の検出情報群51aを構成する検出情報に含まれる物体との距離が離れているほど、狭くなるように設定される。なお、第1の所定の範囲及び第2の所定の範囲それぞれは、物体との距離に加え、該物体との角度に応じて変更されるようにしてもよい。ここで、標識検知部39は、同一の被検知物について、標識5であると複数回(例えば3回程度)判定した場合に、当該対象が標識5であると確定する。
【0061】
ところで、標識検知部39は、複数(
図2では4つ)の検出情報群51aと複数(
図2では3つ)の非検出情報群52aとが交互に所定回数(
図2では3回)繰り返して出現し、該複数の非検出情報群52aそれぞれに対応した非検出領域の幅(すなわち鏡面反射部材52の幅)が第5の所定の範囲内であり、かつ、該複数の検出情報群51aそれぞれに対応した検出領域の幅(すなわち拡散反射部材51の幅)が第6の所定の範囲内である場合に被検出物が標識5であると判定してもよい。なお、第5の所定の範囲は、鏡面反射部材52の水平方向の幅(長さ)に応じて設定され、第6の所定の範囲は、拡散反射部材51の水平方向の幅に応じて設定される。
【0062】
ここで、
図2及び
図12を併せて用いて、拡散反射部材51、鏡面反射部材52それぞれの幅(長さ)Ld,Lsの求め方について説明する。まず、拡散反射部材51の幅Ldは、検出情報群51aの両端の正常データnの検出情報、すなわち、エラーコードeから切り替わった直後の正常データnの検出情報(角度θ1・距離情報R1)、及びエラーコードeに切り替わる直前の正常データnの検出情報(角度θ2・距離情報R2)に基づいて、次式(3)から求められる。なお、「θ=θ2−θ1」である。
Ld(Ls)=√{(R1cosθ)
2+(R2−R2sinθ)
2} ・・・(3)
【0063】
また、鏡面反射部材52の幅Lsは、非検出情報群52aの両端のエラーコードeと隣り合う正常データnの検出情報、すなわち、エラーコードeに切り替わる直前の正常データnの検出情報(角度θ1・距離情報R1)、及びエラーコードeから切り替わった直後の正常データnの検出情報(角度θ2・距離情報R2)に基づいて、上式(3)により求められる。
【0064】
自己位置推定部32は、各エンコーダ16から読み込まれた各電動モータ12の回転角度に応じて算出された自機の移動量を考慮して、環境地図の座標系(絶対座標系)に座標変換した局所地図と、環境地図とを照合し、その結果に基づいて自己位置を推定する。すなわち、自己位置推定部32は、特許請求の範囲に記載の自己位置推定手段として機能する。また、自己位置推定部32は、ジョイスティック21(登録スイッチ23)から設定ポイント登録信号が入力されたときに、そのときの自己位置を環境地図上の設定ポイントの位置座標として記憶部34に登録する。
【0065】
さらに、自己位置推定部32は、搬送モードにおいて、標識検知部39により標識5が検知された場合に、記憶部34に記憶されている環境地図上の標識5の位置に基づいて、推定した自己位置を修正する。
【0066】
環境地図作成部33は、誘導移動時(据付モード実行時)に、SLAMを利用して、移動空間(領域)の環境地図を作成する。環境地図は、自律移動装置3の移動領域のグリッドマップであり、壁面等の固定物(物体)の位置が記録されている。ここで、グリッドマップは、水平面を所定の大きさ(例えば1cm×1cm)のセル(以下「単位グリッド」又は単に「グリッド」という)で分割した平面からからなる地図であり、単位グリッド毎に物体があるか否かを示す物体存在確率情報が与えられている。
【0067】
ここで、環境地図の作成方法をより具体的に説明すると、環境地図作成部33は、まず、局所地図作成部31から局所地図を取得するとともに、自己位置推定部32から環境地図上の自己位置を取得する。次に、環境地図作成部33は、レーザレンジファインダ20を原点にした局所地図を、環境地図上の自己位置に基づいて、レーザレンジファインダ20を原点にした座標系を自己位置をもとに環境地図の座標系(以下「絶対座標系」という)に座標変換することにより、局所地図(以下、座標変換された局所地図を「局所地図@絶対座標系」という)を環境地図に投影する。そして、環境地図作成部33は、自律移動装置3が誘導されて移動している間中この処理を繰り返して実行し、局所地図@絶対座標系を環境地図に順次足し込んで行く(継ぎ足してゆく)ことにより移動空間(領域)全体の環境地図を作成する。なお、環境地図作成部33は、自律移動時(搬送モード実行時)には、環境地図の作成・更新を停止する。
【0068】
記憶部34は、例えば、上述したバックアップRAM等で構成されており、環境地図作成部33により作成された移動経路(領域)の障害物の配置を示した環境地図を記憶する。また、記憶部34は、設定ポイントの位置座標、及び後述する経路計画部35で計画される移動経路情報等を記憶する記憶領域を有しており、これらの情報も記憶する。また、記憶部34は、該移動経路に設置された標識5の環境地図上の配置を記憶する。その際に、記憶部34は、標識5の環境地図上の配置を環境地図とは異なるレイヤーに記憶する。さらに、記憶部34は、標識5の配置に加え、被検出物体が標識5か否かを判定するためのデータ、すなわち、上述した、レーザレンジファインダ20の出力パターン、及び検出情報並びに非検出情報それぞれの連続数(第1の所定の範囲、第2の所定の範囲)も記憶している。すなわち、記憶部34は、特許請求の範囲に記載の記憶手段として機能する。なお、記憶部34は、SRAMやEEPROM等であってもよい。
【0069】
経路計画部35は、自機の自己位置とユーザが選択した設定ポイント(記憶部34に記憶されている環境地図上の設定ポイント(例えば、スタート地点、目標通過地点、ゴール地点))間を接続することにより自律移動装置3の移動経路を計画する。なお、設定ポイントをゴール地点として移動経路を計画する場合、自己位置が把握できているため、必ずしも設定ポイント同士を接続する必要はない。より詳細には、経路計画部35は、例えば、まず、環境地図に含まれる障害物領域の輪郭を、Minkowski和を利用して、自機の半径だけ拡張して拡張障害物領域を作成し、該拡張障害物領域を除く領域を、障害物と接触することなく移動することができる移動可能領域として抽出する。次に、経路計画部35は、Hilditchの細線化法を利用して、抽出した移動可能領域を細線化する。そして、経路計画部35は、細線化された移動可能領域の中から、A*アルゴリズム(Aスター・アルゴリズム)を利用して、設定ポイント(スタート地点、目標通過地点、ゴール地点)間をつなぐ最短経路を探索することにより移動経路を計画する。
【0070】
走行制御部36は、据付モード実行時に、ジョイスティック21(レバー22)から入力される誘導制御(方向指示)信号(すなわちユーザの操作)に従って自律移動装置3が移動する(誘導される)ように電動モータ12を駆動する。一方、走行制御部36は、搬送モード実行時に、障害物を回避しながら計画された移動経路に沿って自機をゴール地点まで自律移動させるように電動モータ12を制御する。
【0071】
ここで、本実施形態では、搬送モード実行時に、障害物を回避しながら移動経路に沿って自機をゴール地点まで自律移動させる制御方法として仮想ポテンシャル法を採用した。この仮想ポテンシャル法は、ゴール地点に対する仮想的な引力ポテンシャル場と、回避すべき障害物に対する仮想的な斥力ポテンシャル場とを作成して重ね合わせることで、障害物との接触を回避しつつゴール地点へ向かう方法である。より具体的には、走行制御部36は、まず、自己位置に基づいてゴール地点へ向かうための仮想引力を計算する。一方、障害物回避制御部38により、自己位置、移動速度、及び障害物の位置並びに速度に基づいて、障害物を回避するための仮想斥力が算出される。続いて、走行制御部36は、得られた仮想引力と、仮想斥力とをベクトル合成することにより仮想力ベクトルを計算する。そして、走行制御部36は、得られた仮想力ベクトルに応じて電動モータ12(オムニホイール13)を駆動することにより、障害物を回避しつつゴール地点へ移動するように自機の走行をコントロールする。
【0072】
次に、
図5〜
図8を併せて用いて自律移動装置3の動作について説明する。
図5は、自律移動装置3による据付処理(据付モード)の処理手順を示すフローチャートであり、
図6は、据付処理に含まれる標識環境地図(マーカグローバルマップ)作成処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7は、自律移動装置3による搬送処理(搬送モード)の処理手順を示すフローチャートであり、
図8は、搬送処理に含まれる標識(マーカ)5による自己位置推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5〜
図8に示される各処理は、主として電子制御装置30によって行われるものであり、ユーザからの操作によって起動され、実行される。なお、
図5,6に示される据付処理は、
図7,8に示される搬送処理に先立って実行される。
【0073】
始めに、
図5,6に示される据付処理(据付モード)の処理手順について説明する。ステップS100では、標識(マーカ)5の環境地図上の座標(マーカグローバル座標)を格納するマーカマップファイルの作成処理等を含むイニシャル処理が実行される。
【0074】
次に、ステップS102では、レーザレンジファインダ20により取得された検出情報、すなわち周囲の物体との角度・距離情報、並びに非検出情報、及びエンコーダ16により検出された各電動モータ12の回転角度が読み込まれる。
【0075】
続くステップS104では、ステップS102で読み込まれた周囲の物体との角度・距離情報に基づいてレーザレンジファインダ20を原点とする局所地図(ローカルマップ)が生成されるとともに、各電動モータ12の回転角度に基づいて自機の移動量が演算される。
【0076】
ステップS106では、ステップS104において生成された局所地図(ローカルマップ)及び自機の移動量から、ベイズフィルタを用いて確率的に自己位置が推定される。また、ステップS106では、レーザレンジファインダ20から読み込まれた検出情報(正常データn)と非検出情報(エラーコードe)の並び順に基づいて、標識5が抽出される。さらに、ステップS106では、レーザレンジファインダ20を原点とした座標系における標識5の座標(マーカローカル座標)が算出される。
【0077】
続いて、ステップS108では、ステップS104で生成されたローカルマップが、レーザレンジファインダ20を原点にした座標系からグローバルマップの座標系に自己位置にあわせて座標変換され、グローバルマップに投影されることにより、周囲環境全体のグローバルマップが生成又は更新される。また、ステップS108では、標識5の環境地図上の座標(マーカグローバル座標)を保持するマーカグローバルマップの更新処理が実行される。ここで、このマーカグローバルマップの更新処理について、
図6を参照しつつ説明する。
【0078】
ステップS1080では、マーカローカルマップの作成(すなわちマーカローカル座標の算出)ができたか否かについての判断が行われる。ここで、マーカローカルマップの作成ができなかった場合には、
図5のステップS110に処理が移行する。一方、マーカローカルマップの作成ができたときには、ステップS1082に処理が移行する。
【0079】
ステップS1082では、マーカグローバルマップの座標計算が行われる。すなわち、マーカローカルマップ座標と自己位置座標とから、マーカグローバル座標が算出される。
【0080】
続いて、ステップS1084では、標識(マーカ)検索が行われる。すなわち、算出されたマーカグローバル座標と、既に登録済みのマーカグローバル座標とが比較され、近くに標識5があるか否かが検索される。そして、標識5がある場合には、最も近くの標識5のマーカIDが取得される。
【0081】
続くステップS1086では、ステップS1084での標識(マーカ)検索結果に基づいて、近くに標識5が有るか否かについての判断が行われる。ここで、近くに標識5がない場合には、ステップS1088に処理が移行する。一方、近くに標識5がある場合にはステップS1090に処理が移行する。
【0082】
ステップS1088では、検出された標識5がマーカ座標格納領域に新規に登録される。その後、
図5のステップS110に処理が移行する。
【0083】
一方、ステップS1090では、検出された標識5が、既に登録されている標識5と統合される。ここで、標識5の統合は、双方のマーカグローバル座標を加算し、加算回数で除算(平均処理)することにより行われる。その後、
図5に示されるステップS110に処理が移行する。
【0084】
図5に戻り、ステップS110では、ユーザからの環境地図作成終了指示が受け付けられたか否かについての判断が行われる。ここで、環境地図作成終了指示が受け付けられていない場合には、ステップS102に処理が移行し、環境地図作成終了指示が受け付けられるまで、上述したステップS102〜ステップS108の処理が繰り返し実行される。一方、環境地図作成終了指示が受け付けられたときには、ステップS112において、作成された環境地図等が記憶され、据付処理が終了する。
【0085】
続いて、自律移動装置3による搬送処理(自律移動装置3が自律的に障害物を避けながら目的地まで移動する搬送モード)の処理手順について説明する。ステップS200では、標識(マーカ)5の環境地図上の座標(マーカグローバル座標)が格納されたマーカマップファイルのロード処理を含むイニシャル処理(初期化処理)が実行される。
【0086】
次に、ステップS202では、レーザレンジファインダ20により取得された検出情報、すなわち周囲の物体との角度・距離情報、並びに非検出情報、及びエンコーダ16により検出された各電動モータ12の回転角度が読み込まれる。
【0087】
続くステップS204では、ステップS202で読み込まれた周囲の物体との角度・距離情報に基づいてレーザレンジファインダ20を原点とするローカルマップが生成されるとともに、各電動モータ12の回転角度に基づいて自機の移動量が演算される。
【0088】
ステップS206では、ステップS204において生成されたローカルマップ及び自機の移動量から、ベイズフィルタを用いて確率的に自己位置が推定される。また、ステップS206では、レーザレンジファインダ20から読み込まれた検出情報(正常データn)と非検出情報(エラーコードe)の並び順に基づいて、標識5が抽出される。さらに、ステップS206では、レーザレンジファインダ20を原点とした座標系における標識5の座標(マーカローカル座標)が算出される。そして、ステップS206では、レーザレンジファインダ20の出力データから算出されたマーカローカルマップと自己位置近傍にある標識5のグローバル座標(マーカグローバル座標)に基づいて自己位置が修正される。ここで、この標識5による自己位置修正処理について、
図8を参照しつつ説明する。
【0089】
ステップS2060では、マーカグローバル座標とマーカローカル座標とから求められた自己位置(自己位置補正情報)の加算回数が所定回数M(例えば3回)以上であるか否かについての判断が行われる。ここで、自己位置補正情報の加算回数が所定回数M以上である場合には、ステップS2062に処理が移行する。一方、自己位置補正情報の加算回数が所定回数M未満のときには、ステップS2066に処理が移行する。
【0090】
ステップS2062では、加算された自己位置補正情報の平均値が算出され、自己位置補正情報が反映される(すなわち自己位置が修正される)。そして、ステップS2064において、自己位置補正情報がクリアされた後、
図7のステップS208に処理が移行する。
【0091】
一方、ステップS2066では、標識(マーカ)検索が行われる。すなわち、近くに標識5があるか否かが検索され、標識5がある場合には、最も近くの標識5のマーカIDが取得される。
【0092】
ステップS2068では、ステップS2066の検索結果に基づいて、近くに標識5が有るか否かについての判断が行われる。ここで、近くに標識5がない場合には、ステップS2064において、自己位置補正情報がクリアされた後、
図7のステップS208に処理が移行する。一方、近くに標識5がある場合にはステップS2070に処理が移行する。
【0093】
ステップS2070では、マーカローカルマップの作成(すなわちマーカローカル座標の算出)ができたか否かについての判断が行われる。ここで、マーカローカルマップの作成ができなかった場合には、
図7のステップS208に処理が移行する。一方、マーカローカルマップの作成ができたときには、ステップS2072に処理が移行する。
【0094】
ステップS2072では、自己位置の座標計算が行われる。すなわち、マーカローカル座標とマーカグローバル座標とから、レーザレンジファインダ20を中心とする自己位置補正情報が算出される。
【0095】
続いて、ステップS2074では、ステップS2072で求められた自己位置補正情報が加算されるとともに、自己位置補正加算回数がインクリメントされる。その後、
図7のステップS210に処理が移行する。
【0096】
図7に戻り、ステップS210では、自機がゴール地点に到着したか否かについての判断が行われる。ここで、自機がゴール地点に到着していない場合には、ステップS202に処理が移行し、ゴール地点に到着するまで、上述したステップS202〜ステップS208の処理が繰り返し実行される。一方、自機がゴール地点に到着したときには、ステップS212において終了処理が実行された後、搬送処理が終了する。
【0097】
ここで、標識5を検知するとともに、検知した標識5の配置に基づいて自己位置を修正できることを確認するため、自律移動装置3の初期位置(スタート位置)をずらしてゴール位置まで自律移動させる実験を行った。ここで、本実施形態に係る自律移動システム1の効果を確認するために用いた移動経路を
図9に示す。
図9に示されるように、標識5を、通路100の曲がり角110の手前2mの位置に1つ設置した。また、据付時に登録した基準スタート位置200は、標識5より10m手前(曲がり角110から12m手前)に設定した。さらに、ゴール位置210は、通路100(曲がり角110)を左に曲がって左前方4mの位置に設定した。
【0098】
そして、スタート位置を、据付時に登録した基準スタート位置200に対して、±2000mm、±500mmずらし、標識5が設置されている場合と、設置されていない場合とについて、自律移動装置3がゴール位置210にたどり着いたと判断して停止した位置のゴール位置210に対する誤差を測定した。
【0099】
まず、スタート位置を±2000mmずらした場合の実験結果について説明する。
(1)スタート位置(x,y)を(2000,0)mmにずらした場合、標識5が有るときには、ゴール位置210に対する誤差(x,y)は、(5,0)mmとなった。
(2)スタート位置(x,y)を(2000,0)mmにずらした場合、標識5が無いときには、ゴール位置210に対する誤差(x,y)は、(2200,−20)mmとなった。
(3)スタート位置(x,y)を(−2000,0)mmにずらした場合、標識5が有るときには、ゴール位置210に対する誤差(x,y)は、(−10,−40)mmとなった。
(4)スタート位置(x,y)を(−2000,0)mmにずらした場合、標識5が無いときには、ゴール位置210まで到達することができなかった。
上記実験結果から、標識5が設置されている場合には、該標識5を検知するとともに、標識5が無いときには修正できない大きなずれを修正できることが確認された。
【0100】
次に、スタート位置を±500mmずらした場合の実験結果について説明する。
(1)スタート位置(x,y)を(500,0)mmにずらした場合、標識5が無いときには、ゴール位置210に対する誤差(x,y)は、(−15,−10)mmとなった。
(2)スタート位置(x,y)を(−500,0)mmにずらした場合、標識5が無いときには、ゴール位置210に対する誤差(x,y)は、(−15,0)mmとなった。
【0101】
上記実験結果から、±500mm以下のずれは、標識5が無くても、デッドレコニングとSLAMにより修正可能であることが確認された。デッドレコニングによる累積誤差が500mmを超えるまでに標識5を検知することができれば、SLAMで自己位置を修正できる。よって、デッドレコニングの誤差を例えば2%とした場合には、累積誤差が500mmを超える25mまでは標識5が不要となる。
【0102】
本実施形態に係る自律移動装置3によれば、検出情報(正常データn)と非検出情報(エラーコードe)の出力パターンに基づいて、標識5が検知される。より詳細には、複数の検出情報群51aと複数の非検出情報群52aとが交互に所定回数繰り返して出現し、複数の非検出情報群52aそれぞれに含まれる非検出情報数が第1の所定の範囲内であり、かつ、複数の検出情報群51aそれぞれに含まれる検出情報数が第2の所定の範囲内である場合に標識5であると判定される。すなわち、一定数の連続する検出情報と一定数の連続する非検出情報が複数回繰り返して出現するというユニークな出力パターンが得られた場合に被検出物が標識5であると判定される。よって、例えば、ガラス張り(又は鏡張り)の通路等に標識5を配設した場合であっても、該標識5を検知することができる。また、標識5を、例えば、壁に貼られたミラー群や凸凹調の壁自体等と明確に区別して認識することができる。その結果、標識5の設置自由度が高く、標識5がどのような環境の移動経路に設置されたとしても、移動経路に設置された標識5を確実に判別して検知でき、適確に自律移動を行うことが可能となる。
【0103】
本実施形態に係る自律移動装置3によれば、検出情報(正常データn)に含まれる距離が遠いほど、すなわち、自機と標識5との距離が遠いほど、第1の所定の範囲が狭く設定される。そのため、標識5の誤検知を低減することが可能となる。
【0104】
また、本実施形態に係る自律移動装置3によれば、複数の検出情報群51aと複数の非検出情報群52aとが交互に所定回数繰り返して出現し、複数の非検出情報群52aそれぞれに対応する非検出領域(すなわち鏡面反射部材52の幅)の幅が第5の所定の範囲内であり、かつ、複数の検出情報群51aそれぞれに対応する検出領域の幅(すなわち拡散反射部材51の幅)が第6の所定の範囲内である場合に標識5であると判定することもできる。すなわち、一定幅の検出領域と一定幅の非検出領域が複数回繰り返して出現するというユニークな出力パターンが得られた場合に被検出物が標識5であると判定される。よって、この場合にも、標識5の設置自由度が高く、標識5がどのような環境の移動経路に設置されたとしても、移動経路に設置された標識5を確実に判別して検知することが可能となる。
【0105】
本実施形態に係る自律移動装置3によれば、センサとしてレーザレンジファインダ20を用いることにより、周囲に存在する物体との角度及び距離を高精度かつ高速に測定することができる。
【0106】
本実施形態に係る自律移動装置3によれば、同一の被検知物体について、標識5であると複数回判定された場合に、当該被検知物体が標識5であると確定されるため標識5の誤検知をより確実に防止することが可能となる。
【0107】
本実施形態に係る自律移動装置3によれば、標識5の環境地図上の配置が環境地図とは異なるレイヤーに記憶される。よって、標識5の配置(設置場所)が変更された場合に、標識5の配置が記憶されたレイヤーのみを修正すればよく、環境地図自体を変更する必要がないため、標識5の配置変更に対して柔軟に対応することができるとともに、作業効率を向上させることが可能となる。
【0108】
本実施形態に係る標識5によれば、拡散反射部材51に入射したレーザは、該拡散反射部材51で拡散反射され、レーザの入射方向、すなわち、自律移動装置3のレーザレンジファインダ20の方向に戻る。一方、鏡面反射部材52に入射したレーザは、略直角に入射されない限り、自律移動装置3のレーザレンジファインダ20に戻らない。よって、複数の拡散反射部材51と、複数の鏡面反射部材52とが、自律移動装置3から出力されるレーザの走査方向に沿って交互に並ぶように当該標識5を設置することにより、自律移動装置3において、一定数の連続する検出情報(正常データn)(又は一定幅の検出領域)と一定数の連続する非検出情報(エラーコードe)(又は一定幅の非検出領域)が複数回繰り返して出現するというユニークな出力パターンを得ることが可能となる。
【0109】
本実施形態に係る標識5によれば、鏡面反射部材52の横断面が円弧状に形成されているため、レーザが直角に近い角度で入射される場合の反射角をより大きくすることができる。よって、鏡面反射部材52に入射したレーザを、自律移動装置3のレーザレンジファインダ20により戻りにくくすることが可能となる。
【0110】
本実施形態に係る自律移動システム1によれば、上記自律移動装置3、及び標識5を備えているため、上述したように、標識5の設置自由度が高く、標識5がどのような環境の移動経路に設置されたとしても、移動経路に設置された標識5を確実に判別して検知でき、適確に自律移動を行うことが可能となる。
【0111】
ところで、上述した搬送モードで自律移動を行っているときに、現実の移動環境においては、例えば、カートや該カートを運搬する人等の移動障害物が自律移動装置3と標識5との間に存在することが起こり得る。このような場合、移動障害物によって標識5が遮蔽されることにより、自律移動装置3が標識5を検知することができずに自己位置を見失うといった問題が生じるおそれがある。この問題に対処するために、経路計画部35は、環境地図のみならず標識環境地図をも参照して、標識5が設置されている通路等では、自律移動装置3が標識5の近くを通るように移動経路を設定することが好ましい。このようにすれば、自律移動装置3が標識5の近くを移動するようになるため、移動障害物が自律移動装置3と標識5との間を通行することを防止できる。よって、自律移動装置3が移動障害物によって標識5を検知できずに自己位置を見失うといった問題を解消することができる。
【0112】
また、搬送モードで自律移動装置3が標識5の設置された通路等を移動しているときに人等の移動障害物を避ける場合、走行制御部36は、自機を標識5に近づく方向に回避させることが好ましい。このようにすれば、移動中に標識5を検知できずに自己位置を見失うリスクをより低減することができる。さらに、走行制御部36は、自機が標識5の近くを移動しているときに、進行方向に移動障害物を認識した場合、自機をその場に一時停止させ、音声又は表示等の手段により、移動障害物に対して標識5の近くから離れるように指示する構成としてもよい。このようにすれば、移動中に標識5を検知できずに自己位置を見失う頻度をより小さくすることができる。
【0113】
一方、標識5を完全には検知できなかったが、標識5の一部と思われるパターンが検知された場合、自機と移動又は固定障害物との相対位置関係によって標識5が遮蔽されていることも考えられる。そのため、このような場合には、環境地図、標識環境地図、及びレーザレンジファインダ20の検出情報等に基づいて、標識5が遮蔽されない位置を一時的な目的地として設定し、該目的地に向かう経路計画及び/又は走行制御に切り替える構成としてもよい。このようにすれば、標識5を検知できずに自己位置を見失う頻度をさらに低減することができる。
【0114】
(第2実施形態)
続いて、
図10及び
図11併せて用いて、第2実施形態に係る自律移動システム2、及び、該自律移動システム2を構成する自律移動装置4並びに標識(マーク)6の構成について説明する。
図10は、自律移動システム2、及び、該自律移動システム2を構成する自律移動装置4の構成を示すブロック図であり、
図11は標識6の構成を示す図である。なお、
図10において第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。自律移動システム2は、移動経路に沿って自律して移動する自律移動装置4、及び、移動経路に設置される標識6を備えて構成される。
【0115】
自律移動装置4は、上述したレーザレンジファインダ20に代えて、受光強度を出力するレーザレンジファインダ24を備えている点で自律移動装置3と異なっている。また、自律移動装置4は、上述した電子制御装置30に代えて、電子制御装置40を備えている点で自律移動装置3と異なっている。この電子制御装置40は、上述した標識検知部39に代えて、受光強度パターンに基づいて標識を検知する標識検知部49を備えている点で電子制御装置30と異なっている。以下、これらの自律移動装置3と異なる構成要素について詳細に説明する。なお、その他の構成については、自律移動装置3と同一または同等であるので、ここでは説明を省略する。
【0116】
レーザレンジファインダ24は、レーザ(検出光)を所定角度毎に走査して射出するとともに、物体によって反射されたレーザ(反射光)を受光できた場合には、走査角度に対応させて、物体との距離、及び反射光の受光強度を含む検出情報を出力する。すなわち、レーザレンジファインダ24も、特許請求の範囲に記載の物体検出手段として機能する。なお、その他の構成は上述したレーザレンジファインダ20と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する
【0117】
ここで、本実施形態を構成する標識6について説明する。
図11は、上段から順に標識6の正面図、及び、レーザレンジファインダ24の出力(受光強度)を示す。標識6は、横幅が例えば500mmの矩形の板状に形成されている。標識6は、正面視した場合に、複数(
図11の例では3つ)の拡散反射部材61と、複数(
図11の例では4つ)の吸光(遮光)部材62とが、交互に配置されている。
【0118】
拡散反射部材61及び吸光部材62は、薄板状に形成されている。標識6は、例えば、レーザレンジファインダ24のレーザの走査方向(水平方向)に沿って、拡散反射部材(領域)61と吸光部材(領域)62とが交互に並ぶように、移動経路の壁面等に設置される。
【0119】
レーザレンジファインダ24から射出されたレーザが、拡散反射部材61に入射した場合には、レーザが拡散反射されて、レーザレンジファインダ24に返る。そのため、この場合、レーザレンジファインダ24からは、高い受光強度データが出力される。一方、レーザレンジファインダ20から射出されたレーザが、吸光部材62に入射した場合には、レーザが吸収され、レーザレンジファインダ24に返る反射光の強度が低下する。そのため、このとき、レーザレンジファインダ20からは、低い受光強度データが出力される。
【0120】
よって、レーザレンジファインダ24からのレーザが水平方向に走査されて標識6に入射した場合、レーザレンジファインダ24からは、
図11の下段に示されるように、受光強度の強弱に応じた出力パターン、すなわち、受光強度が高い複数(
図11の例では3つ)の検出情報群(高強度検出情報群)と、受光強度が低い複数(
図11の例では4つ)の検出情報群(低強度検出情報群)とが交互に所定回数(本実施形態(
図7)の例では3回)繰り返して出現する。すなわち、拡散反射部材61、吸光部材62それぞれの幅(長さ)及び水平方向(レーザの走査方向)の配置に応じたユニークな出力パターンを得ることができる。
【0121】
図10に戻り説明を続けると、標識検知部49は、レーザレンジファインダ24からセンサ情報取得部37を介して出力される検出情報に含まれる反射光の受光強度の強弱パターンに基づいて、標識6を検知する。すなわち、標識検知部49も、特許請求の範囲に記載の標識検知手段として機能する。より具体的には、標識検知部49は、
図11の下段に示されるように、検出情報に含まれる反射光の受光強度が所定値よりも高い複数(
図11では3つ)の検出情報からなる高強度検出情報群61aと、該受光強度が所定値よりも低い複数(
図11では4つ)の検出情報からなる低強度検出情報群62aとが交互に所定回数(
図11では3回)繰り返して出現し、該複数の高強度検出情報群61aそれぞれに含まれる検出情報数(拡散反射部材61の幅に比例し、大まかな幅を示すデータ)が第3の所定の範囲内であり、かつ、複数の低強度検出情報群62aそれぞれに含まれる検出情報数(吸光部材62の幅に比例し、大まかな幅を示すデータ)が第4の所定の範囲内である場合に、被検出物が標識6であると判定する。
【0122】
なお、第3の所定の範囲は、拡散反射部材61の幅(長さ)等に応じて設定され、第4の所定の範囲は、吸光部材62の幅(長さ)等に応じて設定される。また、第3の所定の範囲及び第4の所定の範囲それぞれは、複数の高強度検出情報群61aを構成する検出情報に含まれる、物体との距離が離れているほど、狭くなるように設定される。
【0123】
ところで、標識検知部49は、検出情報に含まれる反射光の受光強度が所定値よりも高い複数(
図11では3つ)の検出情報からなる高強度検出情報群61aと、該受光強度が所定値よりも低い複数(
図11では4つ)の検出情報からなる低強度検出情報群62aとが交互に所定回数(
図11では3回)繰り返して出現し、該複数の高強度検出情報群61aそれぞれに対応した高強度検出領域の幅(すなわち拡散反射部材61の幅)が第7の所定の範囲内であり、かつ、複数の低強度検出情報群62aそれぞれに対応した低強度検出領域の幅(すなわち吸光部材62の幅)が第8の所定の範囲内である場合に被検出物が標識6であると判定してもよい。なお、第7の所定の範囲は、拡散反射部材61の水平方向の幅(長さ)に応じて設定され、第8の所定の範囲は、拡散反射部材61の水平方向の幅に応じて設定される。
【0124】
なお、拡散反射部材61及び吸光部材62それぞれの幅は、上述した、拡散反射部材51、鏡面反射部材52の幅と同様の考え方で求めることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0125】
自律移動装置4の動作については、標識6の検知処理(上述したステップS104及びS204)のみが異なる。その他の処理は、上述した自律移動装置3における処理と同一又は同様であるので、ここでは、詳細な説明を省略する。また、
図6の検知方法(処理)は、上述した通りであるので、ここでは、重複する説明を省略する。
【0126】
本実施形態に係る自律移動装置4によれば、出力された検出情報に含まれる反射光の受光強度の強弱パターンに基づいて、標識6が検知される。より詳細には、検出情報に含まれる反射光の受光強度が所定値よりも高い複数の検出情報(高強度検出情報)からなる高強度検出情報群61aと、該受光強度が所定値よりも低い複数の検出情報(低強度検出情報)からなる低強度検出情報群62aとが交互に所定回数繰り返して出現し、該複数の高強度検出情報群61aそれぞれに含まれる検出情報(高強度検出情報)の数が第3の所定の範囲内であり、かつ、複数の低強度検出情報群62aそれぞれに含まれる検出情報(低強度検出情報)の数が第4の所定の範囲内である場合に標識6であると判定される。すなわち、一定数の連続する高強度検出情報と一定数の連続する低強度検出情報が複数回繰り返して出現するというユニークな出力パターンが得られた場合に、被検出物が標識6であると判定される。よって、例えば、ガラス張り(又は鏡張り)の通路等に標識6を配設した場合であっても、該標識6を検知することができる。また、標識6を、例えば、壁に貼られたミラー群や凸凹調の壁自体等と明確に区別して認識することができる。その結果、標識6の設置自由度が高く、標識6がどのような環境の移動経路に設置されたとしても、移動経路に設置された標識6を確実に判別して検知でき、適確に自律移動を行うことが可能となる。
【0127】
また、本実施形態に係る自律移動装置4によれば、検出情報に含まれる、反射光の受光強度が所定値よりも高い複数の検出情報(高強度検出情報)からなる高強度検出情報群61aと、該受光強度が所定値よりも低い複数の検出情報(低強度検出情報)からなる低強度検出情報群62aとが交互に所定回数繰り返して出現し、該複数の高強度検出情報群61aそれぞれに対応する高強度検出領域の幅(すなわち拡散反射部材61の幅)が第6の所定の範囲内であり、かつ、複数の低強度検出情報群62aそれぞれに対応する低強度検出領域の幅(すなわち吸光部材62の幅)が第7の所定の範囲内である場合に標識6であると判定することもできる。すなわち、一定幅の高強度検出領域と一定幅の低強度検出領域が複数回繰り返して出現するというユニークな出力パターンが得られた場合に被検出物が標識6であると判定される。よって、この場合にも、標識6の設置自由度が高く、標識6がどのような環境の移動経路に設置されたとしても、移動経路に設置された標識6を確実に判別して検知することが可能となる。
【0128】
本実施形態に係る標識6よれば、拡散反射部材61に入射したレーザは、該拡散反射部材61で拡散反射され、レーザの入射方向、すなわち、自律移動装置4のレーザレンジファインダ24の方向に戻る。一方、吸光部材62に入射したレーザは、該吸光部材62に吸収されるため、自律移動装置4のレーザレンジファインダ24に戻る反射光の強度が低下する。よって、複数の拡散反射部材61と、複数の吸光部材62とが、自律移動装置4から出力されるレーザの走査方向に沿って交互に並ぶように当該標識6を設置することにより、自律移動装置4において、一定数の連続する高強度検出情報(又は一定幅の高強度検出領域)と一定数の連続する低強度検出情報(又は一定幅の低強度検出領域)が複数回繰り返して出現するというユニークな出力パターンを得ることが可能となる。
【0129】
本実施形態に係る標識6によれば、拡散反射部材61及び吸光部材62が、薄板状に形成されている。よって、標識6の厚みを薄くすることができるため、標識6の設置自由度が向上するとともに、自律移動装置4の移動経路を広く取ることが可能となる。
【0130】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態(標識5)では、複数の鏡面反射部材52を等間隔に配置したが、不等間隔に配置してもよい。このようにすれば、複数の標識5が移動経路に設置されている場合に、各標識5の鏡面反射部材52の配置間隔(配置パターン)を検出することにより個々の標識5を区別することも可能となる。同様に、標識6では、拡散反射部材61(又は吸光部材62)を等間隔に配置したが、不等間隔に配置してもよい。この場合も、複数の標識6が移動経路に設置されている場合に、各標識6の拡散反射部材61(又は吸光部材62)の配置間隔(配置パターン)を検出することにより個々の標識6を区別することが可能となる。また、鏡面反射部材52や拡散反射部材61(又は吸光部材62)の数、形状、幅(長さ)等は、上記実施形態には限られない。
【0131】
上記実施形態では、標識5を検知する際に、非検出情報(エラーコードe)の連続数及び検出情報(正常データn)の連続数に基づいて判定・検知したが、鏡面反射部材52及び/又は拡散反射部材51の実際の幅(長さ)等を求め、その結果に基づいて、標識5であるか否かを判定する構成とすることもできる。なお、標識6についても同様の手法を用いて判定・検知することができる。
【0132】
上記実施形態では、レーザレンジファインダ20,24を用いて標識5,6を検知したが、例えば、ステレオカメラを用いたパターン認識等により、標識5,6を検知する構成とすることもできる。
【0133】
上記実施形態では、自律移動システム1,2として、自律移動装置3と標識5、又は、自律移動装置4と標識6を組み合わせて用いたが、自律移動装置3と標識6、又は、自律移動装置4と標識5を組合せて用いてもよい。