(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体装置では、周囲を絶縁膜で覆うことが一般的である。外部から加わる衝撃から半導体装置を保護するとともに、電気的な負荷が半導体に加わることを防止するためである。電極形成後に絶縁膜で半導体装置を覆うこととした場合には、絶縁膜から電極を露出させる必要がある。外部電源と導通をとるためである。
【0006】
電極を露出させるために、エッチングにより電極上の絶縁膜を除去することがある。しかし、この場合には、絶縁膜のみならず、その下層のAl層までエッチングにより除去されてしまうことがある。Al層が深く削られると、半導体と電極との接触抵抗が上昇してしまう。
【0007】
そのため、電極のAl層の上に、カバー層を形成することがある。カバー層として、例えば、電極の側からNi層、Au層を形成する場合が挙げられる。このカバー層により、エッチングによるAl層の除去を防止することができる。しかし、これでは、カバー層を形成するカバー層形成工程を別途実施する必要が生じ、工程数が多くなってしまう。
【0008】
本発明は、前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、エッチングに耐性のある電極を少ない工程で作成することを図ったIII 族窒化物系化合物半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様におけるIII 族窒化物系化合物半導体装置の製造方法は、III 族窒化物系化合物半導体から成る半導体層を形成する半導体形成工程と、半導体層に電極を形成する電極形成工程と、半導体層および電極の上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、を有する。また、電極形成工程は、半導体層に2層以上の金属層を形成する金属層形成工程と、金属層形成工程の後に熱処理を行う熱処理工程と、エッチング工程と、を有する。熱処理工程は、2層以上の金属層のうちの最表層の金属層の表面を露出させた状態で、酸素を含む雰囲気中で行うことにより、最表層の金属層をAl層とAl
2 O
3 層の2層とする酸化物層形成工程である。エッチング工程では、Cl
2 を用いて絶縁膜
の一部およびAl
2 O
3 層
の一部を除去してAl層
の一部を露出させる。
【0010】
このIII 族窒化物系化合物半導体装置の製造方法では、電極層の上にカバー層を形成することなく、エッチング耐性の高い電極を形成することができる。そのため、工程数を減らし、サイクルタイムを短いものとすることができる。もちろん、良好なオーミックコンタクトを得ることができる。
【0011】
第2の態様におけるIII 族窒化物系化合物半導体装置の製造方法では、酸化物層形成工程は、電極と半導体層との間の抵抗を小さくするためのオーミックアロイ工程をも兼ねている。酸化物層形成工程が通常行うオーミックアロイ工程を兼ねているので、別工程が増えることはない。
【0012】
第3の態様におけるIII 族窒化物系化合物半導体装置の製造方法の酸化物層形成工程では、雰囲気として窒素および酸素の混合ガスを用い、混合ガスにおける酸素濃度は、流量比で1%以上である。これにより、良好な酸化物層を形成することができる。
【0013】
第4の態様におけるIII 族窒化物系化合物半導体装置の製造方法では、酸化物層形成工程での熱処理温度は、500℃以上650℃以下である。熱処理温度は、それほど高くないため、形成した半導体の結晶が悪化するおそれがほとんどない。
【0014】
第5の態様におけるIII 族窒化物系化合物半導体装置の製造方法における金属層形成工程では、最表層の金属層の厚みを300nm以上1000nm以下の範囲内とする。良好なオーミックコンタクトが得られるからである。
【0015】
【0016】
第6の態様におけるIII 族窒化物系化合物半導体装置の製造方法の金属層形成工程では、n型半導体層の上に2層以上の金属層を形成する。より、良好なオーミックコンタクトが得られるからである。
【0017】
第7の態様におけるIII 族窒化物系化合物半導体装置は、基板と、基板に形成されたIII 族窒化物系化合物半導体から成る半導体層と、半導体層に形成された複数の電極と、半導体層および複数の電極のうちの少なくとも一部を覆う絶縁膜と、を有する。複数の電極のうちの少なくとも1つは、半導体層の上のTi層と、Ti層の上のAl層と、Al層の上のAl
2 O
3 層と、絶縁膜およびAl
2 O
3 層の厚みを貫通するとともにAl層を露出させる凹部と、凹部の箇所で露出するAl層と接触する導電部と、を有する。このIII 族窒化物系化合物半導体装置は、高い温度の熱処理工程を経ていないため、熱処理工程による半導体層の結晶性の悪化がほとんどない。
【0018】
【0019】
第8の態様におけるIII 族窒化物系化合物半導体装置では、最表層の金属層の厚みは300nm以上1000nm以下の範囲内である。
【0020】
第9の態様におけるIII 族窒化物系化合物半導体装置では、2層以上の金属層が、n型半導体層の上に形成されている。
【0021】
第10の態様におけるIII 族窒化物系化合物半導体装置では、n型半導体層におけるキャリア濃度が、1×10
16cm
-3以上1×10
20cm
-3以下の範囲内である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エッチングに耐性のある電極を少ない工程で作成することを図ったIII 族窒化物系化合物半導体装置およびその製造方法が提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、具体的な実施形態について、半導体装置を例に挙げて図を参照しつつ説明する。しかし、これらの実施形態に限定されるものではない。また、後述する各半導体装置の各層の積層構造および電極構造は、例示である。実施形態とは異なる積層構造であってももちろん構わない。そして、それぞれの図における各層の厚みは、概念的に示したものであり、実際の厚みを示しているわけではない。また、各図の凹凸形状については、理解しやすいように大きく描いてある。しかし、実際には、これらの凹凸形状は非常に微細な形状である。
【0025】
(第1の実施形態)
1.縦型構造の半導体装置
本実施形態に係るパワー素子100を
図1に示す。パワー素子100は、縦型構造の半導体装置である。パワー素子100は、
図1中の下側に示すように、ドレイン電極D1と、
図1中の上側に示すように、ゲート電極G1と、ソース電極S1とを有している。
【0026】
パワー素子100は、III 族窒化物系化合物半導体から成る複数の半導体層を有する。パワー素子100は、上記の電極の他に、
図1に示すように、基板110と、n型層120と、p型層130と、n型層140と、絶縁膜150と、を有している。n型層120は、基板110の側から順に、n
+ GaN層121と、n
- GaN層122と、を有している。
【0027】
基板110は、パワー素子100を支持して強度を高いものとするためのものである。また、パワー素子100を成長させるための成長基板をも兼ねている。基板110として、例えば、GaN基板を用いることができる。また、その他に、Si基板やSiC基板等の導電性基板を用いることができる。
【0028】
ソース電極S1は、n型層140とオーミック接触をしている。ソース電極S1は、n型層140の側からTi層と、そのTi層の上にAl層を形成したものである。また、その他のAl合金を用いることができる。また、MoもしくはMo化合物を用いてもよい。そして、TiもしくはTi化合物を用いてもよい。さらに、WもしくはW化合物を用いることもできる。
【0029】
ドレイン電極D1は、基板110とオーミック接触をしている。ドレイン電極D1は、基板110の側からTi層と、そのTi層の上にAl層を形成したものである。また、上記したソース電極S1に用いたその他の金属および化合物を用いてもよい。
【0030】
ゲート電極G1は、絶縁膜150の上であって、トレンチ160の箇所に形成されている。トレンチ160は、V字形状ではなく、矩形形状である。そのため、ゲート電極G1の断面形状も、矩形形状である。ゲート電極G1は、絶縁膜150の側からNi層と、そのNi層の上にAu層を形成したものである。また、Pd層、Au層の順に形成することとしてもよい。また、その他の金属および化合物を用いることができる。また、Alを用いることもできる。
【0031】
n
+ GaN層121のn型不純物濃度は、n
- GaN層122のn型不純物濃度よりも高い。n
+ GaN層121のn型不純物濃度は、1×10
18cm
-3〜1×10
20cm
-3程度である。n
- GaN層122のn型不純物濃度は、1×10
16cm
-3〜1×10
17cm
-3程度である。
【0032】
p型層130は、p型GaNから成る層である。p型層130のキャリア濃度は、1×10
18cm
-3〜1×10
20cm
-3程度である。n型層140は、n型GaNから成る層である。n型層140のキャリア濃度は、1×10
16cm
-3以上1×10
20cm
-3以下の範囲内である。
【0033】
絶縁膜150は、ゲート絶縁膜と保護膜とを兼ねているものである。絶縁膜150の材質はSiO
2 である。また、SiN
X 、Al
2 O
3 、HfO
2 、ZrO
2 、AlNなどを用いてもよい。
【0034】
2.半導体装置の電極
本実施形態のパワー素子100は、ソース電極S1の構造およびその製造方法に特徴を有している。
図2に示すように、ソース電極S1は、金属層S11と、金属層S12と、酸化物層S13と、絶縁膜S14(150)と、を有している。各層の形成順序は、n型層140から順に、金属層S11、金属層S12、酸化物層S13である。
【0035】
ソース電極S1には、凹部S15が形成されている。凹部S15は、絶縁膜S14および酸化物層S13の厚みを貫通し、金属層S12を部分的に露出させる非貫通孔である。そして、凹部S15には、導電部S16が形成されている。導電部S16は、ソース電極S1をパワー素子100の外部電源と導通させるためのものである。
【0036】
金属層S11は、ソース電極S1と好適に密着する第1の電極層である。金属層S11の材質は、例えば、Tiである。または、Vであってもよい。また、これら以外の材質のものであってもよい。金属層S11の厚みは、10nm以上100nm以下の範囲内である。
【0037】
金属層S12は、金属層S11の上に形成された第2の電極層である。金属層S12の材質は、例えば、Alである。また、これ以外の材質のものであってもよい。金属層S12の厚みは、300nm以上1000nm以下の範囲内である。
【0038】
酸化物層S13は、金属層S12の表面を覆うことで、金属層S12のエッチングを抑制するための層である。酸化物層S13の材質は、金属層S12の酸化物である。例えば、金属層S12がAlである場合には、酸化物層S13はAl
2 O
3 である。酸化物層S13は、後述するように、金属層S12を酸化することにより形成される。
【0039】
絶縁膜S14は、各半導体層およびソース電極S1を覆っている保護膜である。ただし、絶縁膜S14は、凹部S15の箇所のみ覆っていない。絶縁膜S14の材質は、例えば、SiO
2 である。絶縁膜S14の厚みは、200nm以上1000nm以下の範囲内である。
【0040】
3.電極の形成方法
続いて、電極の形成方法について説明する。この電極の形成方法は、前述した電極を形成するのに用いられる方法である。そして、後述する電極形成工程で実際に用いられることとなる。この電極形成工程は、2層以上の金属層を形成する金属層形成工程と、2層以上の金属層のうちの最表層の金属層の表面部分を酸化して酸化物層を形成する酸化物層形成工程と、を有する。
【0041】
3−1.金属層形成工程
3−1−1.第1の金属層形成工程
まず、露出しているn型層140の上に金属層S11を形成する。これにより、
図3に示すように、n型層140の上に金属層S11が形成される。
【0042】
3−1−2.第2の金属層形成工程
次に、金属層S11の上に金属層S12を形成する。これにより、
図4に示すように、金属層S11および金属層S12が、n型層140の側からこの順序で形成される。ここで、金属層S12は、2層以上の金属層のうちの最表層の金属層である。このとき、金属層S12の表面S12aは、露出している。ここで、表面S12aは、金属層S11に接触している面の反対側の面である。すなわち、表面S12aは、半導体層の側の反対側の面である。
【0043】
3−2.酸化物層形成工程(熱処理工程)
続いて、金属層形成工程の後に酸化物層形成工程を行う。具体的には、金属層S11、S12を形成したものに、酸素を含む雰囲気中で熱処理を行う。このときに、金属層S12の表面S12aを露出させた状態で行う。この熱処理により、金属層S12の表面部分が酸化される。これにより、
図5に示すような酸化物層S13が形成される。もちろん、この酸化物層S13の材質は、金属層S12の酸化物である。このように、1層であった金属層S12が、金属層S12および酸化物層S13の2層となる。
【0044】
この熱処理の条件を表1に示す。供給するガスとして、窒素および酸素の混合ガスを用いる。ここで、供給ガスにおける酸素濃度は、流量比で1%以上100%以下の範囲内である。ここで流量比とは、(供給する酸素の体積)/(供給する混合ガス全体の体積)のことである。ただし、この範囲に限らない。酸素濃度が少なければ、金属層S12の酸化処理を十分に行うことができない。酸素濃度が多ければ、金属層S12を酸化しすぎるおそれもある。また、パワー素子100の別の箇所が酸化するおそれがある。ただし、これは、処理時間との兼ね合いによる。また、基板温度は、500℃以上650℃以下の範囲内である。そして、処理時間は、5秒以上1000秒以下の範囲内である。これらは例示であり、これ以外の範囲の値を用いてもよい。
【0045】
[表1]
供給ガスの種類 窒素と酸素の混合ガス
供給ガスの混合比 酸素濃度 1%以上100%以下(流量比)
基板温度 500℃以上650℃以下
処理時間 5秒以上1000秒以下
【0046】
なお、この熱処理工程は、ソース電極S1とn型層140との間の接触抵抗を小さくするためのオーミックアロイ工程を兼ねている。
【0047】
4.半導体装置の製造方法
ここで、半導体装置の製造方法について説明する。
【0048】
4−1.半導体層形成工程
まず、有機金属気相成長法(MOCVD法)により、各半導体層の結晶をエピタキシャル成長させる半導体層形成工程を行う。具体的には、基板110に、n型層120と、p型層130と、n型層140とを、この順序で形成する。これにより、基板110に各半導体層の形成された積層体が形成される。
【0049】
4−2.凹凸形状形成工程
次に、エッチングにより、半導体層に凹凸形状を形成する。これにより、
図1に示した台形形状およびトレンチ160がストライプ状に形成される。このエッチングには、例えば、Cl
2 を用いることができる。または、SiCl
4 等の他のガスを用いてもよい。または、その他のドライエッチングもしくはウェットエッチングを用いてもよい。
【0050】
4−3.電極形成工程(ソース電極)
続いて、電極形成工程を行う。この工程において、前述した電極の形成方法を用いればよい。n型層140の上にソース電極S1を形成する。
【0051】
4−4.絶縁膜形成工程
次に、絶縁膜150を形成する。その形成箇所は、
図1の上側の面である。ドレイン電極D1を形成する側の面には、絶縁膜を形成しない。
【0052】
4−5.導電部形成工程
そして、Cl
2 を用いてエッチングを行う。エッチング対象箇所を除いてマスクで覆い、凹部15を形成する箇所にCl
2 ガスが供給されるようにする。これにより、絶縁膜S14および酸化物層S13の一部が除去されて、金属層S12の一部が露出される。その結果、凹部S15が形成される。そして、凹部S15に金属の層を形成し、
図2に示したような導通部S16を形成する。
【0053】
4−6.電極形成工程(ゲート電極、ドレイン電極)
次に、ゲート電極G1およびドレイン電極D1を形成する。
【0054】
4−7.洗浄工程
そして、最後にBHF溶液(NH
4 F/HF/H
2 0)を用いて、パワー素子100にウェットエッチングを実施する。これにより、パワー素子100の表面に残留している絶縁膜等を除去する。なお、BHF溶液の代わりに、DHF溶液(希フッ酸)やHCl溶液を用いてもよい。
【0055】
5.従来例との比較
従来におけるパワー素子の電極構造を
図6に例示する。従来のパワー素子400では、n型層410の上に、Ti層420、Al層430、Ni層440、Au層450がこの順序で形成されている。ここで、Ni層440、Au層450は、Al層430がエッチングにより除去されることを防止するためのカバー層である。このように従来では、本実施形態のパワー素子100に比べてNi層、Au層から成るカバー層を余分に設ける必要があった。すなわち、本実施形態では、カバー層を形成する工程を省略することができる。そのため本実施形態のパワー素子100の製造方法におけるサイクルタイムは、従来のパワー素子の製造方法の場合に比べて短い。
【0056】
6.実験内容
ここで、次の実施例および比較例の積層体について行った実験について説明する。積層体とは、基板に半導体層および電極を形成したものである。そして、後述する実施例の積層体と、比較例の積層体とで、次の実験を行った。
実験1) 熱処理工程後の電圧電流曲線
この実験において、GaN層と電極との間の電気抵抗の特性を調べれば良い。したがって、素子ではなく、後述するGaN基板に電極を形成した積層体について測定を行った。
【0057】
6−1.実施例の積層体(酸化物層形成工程有り)
図7に実施例の積層体500を示す。積層体500は、GaN基板510と、Ti層520と、Al層530と、Al
2 O
3 層540と、を有している。
【0058】
ここで、各層の厚みを次に示す。ただし、Al
2 O
3 層540の厚みは、酸化物層形成工程における基板温度等の種々の条件により変化するものである。なお、実施例では、酸化物層形成工程に相当する工程における酸素濃度は、流量比で10%とした。
Ti層 17.5nm
Al層 295nm
Al
2 O
3 層 5nm
【0059】
なお、酸化物層形成工程では、常圧下で酸素を0.2slm、窒素を2.0slm供給した。熱処理温度は550℃とした。熱処理時間を10分とした。
【0060】
6−2.比較例1の積層体(酸化物層形成工程無し)
図8に比較例の積層体600を示す。積層体600は、GaN基板610と、Ti層620と、Al層630と、を有している。比較例では、実施例から酸化物層形成工程に相当する工程を除去した工程により積層体600を作成したものである。そのため、積層体600にはAl
2 O
3 層はない。
【0061】
ただし、オーミック性を向上させるために、窒素ガスによる熱処理については行ってある。この熱処理は、実施例の酸化物層形成工程において、酸素ガスを混入させないこととしたものと同じ工程である。なお、各層の厚みは次のとおりである。
Ti層 17.5nm
Al層 300nm
【0062】
6−3.実験1の実験結果
続いて、実験結果について説明する。
図9は、実施例の積層体500における酸化物層形成工程後の電圧電流曲線である。ここで、端子間距離は5μmである。また、
図9の横軸は電圧であり、縦軸は電流である。電流は、電圧を1V印加したときの電流値を「1」として規格化してある。これらは、以下の図においても同様である。
図9に示すように、積層体500では、良好なオーミックコンタクトが得られている。
【0063】
図10は、実施例の積層体500における導電部形成工程後の電圧電流曲線である。
図10に示すように、実施例の積層体500に流れる電流は、
図9の場合とほとんど変わらない。つまり、酸化物層形成工程により、Al層530はほとんどエッチングされていない。そのため、GaN基板510と、Ti層520およびAl層530におけるオーミック性は、良好なままである。
【0064】
図11は、実施例の積層体500における洗浄工程後の電圧電流曲線である。
図11に示すように、実施例の積層体500に流れる電流は、
図9の場合とほとんど変わらない。このように、ウェットな環境下においてもオーミック性が良好に保たれることに変わりない。そして、製造工程にわたって、GaN基板510と、Ti層520およびAl層530におけるオーミック性は、良好なままであることを示している。
【0065】
図12は、比較例の積層体600における熱処理工程(オーミックアロイ工程)後の電圧電流曲線である。そして、この場合の電流値は、
図9の場合と同様である。また、オーミック性も良好である。
【0066】
図13は、比較例の積層体600における導電部形成工程後の電圧電流曲線である。
図13に示すように、比較例の積層体600に流れる電流は、
図12の場合に比べて半減している。これは、オーミックコンタクトのとれたAl層630がエッチングにより除去されすぎているためであると考えられる。そのため、GaN基板610と、Ti層620およびAl層630との間で接触抵抗が増していると考えられる。
【0067】
図14は、比較例の積層体600における洗浄工程後の電圧電流曲線である。洗浄工程後の積層体600の電流値(
図14参照)は、導電部形成工程後の積層体600の電流値(
図13参照)とほぼ同じである。
図14においても、
図13と同じように、比較例の積層体600に流れる電流は、
図12の場合に比べて半減している。
【0068】
以上説明したように、Al
2 O
3 層540を形成した積層体500のほうが積層体600に比べて、エッチング耐性は高い。つまり、熱処理工程において酸素ガスを混入させる酸化物層形成工程を行うとよい。また、その後の工程において、オーミックコンタクトが悪化するおそれがほとんどない。
【0069】
7.変形例
7−1.III 族窒化物系化合物半導体層
本実施形態では、半導体層は、GaNから成るものとした。しかし、AlGaNやInGaN、AlInGaN等、その他のIII 族窒化物系化合物半導体から成る層であってもよい。もちろん、これらのIII 族窒化物系化合物半導体から成る層が一部に含まれていてもよい。
【0070】
7−2.ドレイン電極およびゲート電極
本実施形態の電極の形成方法を、ソース電極S1に適用することとした。しかし、素子の構造により、
図2に示したような導電部を形成する場合には、ドレイン電極やゲート電極にも適用することができる。
【0071】
7−3.p型半導体層
本実施形態では、ソース電極S1をn型半導体層であるn型層140の上に形成することとした。しかし、p型半導体層の上に電極を形成する場合にも、もちろん適用することができる。
【0072】
7−4.金属層の積層数
本実施形態では、ソース電極S1を、Ti層から成る金属層S11と、Al層から成る金属層S12との2層構造とした。しかし、3層以上を積層してもよい。例えば、金属層S11を、n型層140の側からPd層、Ti層を順に形成した2層構造の金属層とする。この場合には、n型層140の側から順に、Pd層、Ti層、Al層が形成されることとなる。
【0073】
7−5.最表層の金属層
本実施形態では、最表層の金属層S12をAl層とした。しかし、その他に電極として用いることのできるものであれば、Al以外の金属を用いてもよい。その場合、酸素を含む雰囲気中で熱処理を施すことにより酸化物を形成する金属を用いることができる。
【0074】
8.まとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態のパワー素子100の製造方法では、n型層140に金属層S11、S12を形成し、金属層S12の表面S12aを酸化する。これにより、酸化物層S13を形成することとした。酸化物層S13の材質は、金属層S12の酸化物である。そのため、金属層S12のエッチング耐性を高めることができる。これにより、導通部S16を好適に形成することができる。つまり、ソース電極S1におけるオーミック特性を悪化させるおそれがほとんどない。また、カバー層を形成する必要がない。
【0075】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎない。したがって当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。本実施形態では、エピタキシャル成長の方法として、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いることとした。しかし、ハイドライド気相エピタキシー法(HVPE)などの気相成長法や、分子線エピタキシー法(MBE)、パルスドスパッタデポジション法(PSD)、そして、液相エピタキシー法などを用いてもよい。
【0076】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、横型構造のパワー素子200である。電極構造および電極の形成方法については、第1の実施形態と同様である。したがって、異なる箇所のみについて説明する。
【0077】
1.横型構造の半導体装置
パワー素子200を
図15に示す。パワー素子200は、基板210と、バッファ層220と、第1キャリア走行層230と、第2キャリア走行層240と、キャリア供給層250と、絶縁膜260と、ドレイン電極D2と、ソース電極S2と、ゲート電極G2と、を有している。
【0078】
基板210は、Si基板の他に、サファイア基板、SiC基板、ZnO基板、スピネル基板、GaN基板を用いることができる。バッファ層220として、AlNまたはGaNから成る層を形成する。また、バッファ層220は、必ずしも形成しなくともよい。
【0079】
第1キャリア走行層230は、ノンドープのGaNから成る層である。第2キャリア走行層240は、例えば、GaNから成る層である。キャリア供給層250は、例えば、AlGaNから成る層である。キャリア供給層250のキャリア濃度は、1×10
16cm
-3以上1×10
20cm
-3以下の範囲内である。
【0080】
第2キャリア走行層240と、キャリア供給層250とは、ヘテロ結合である。そして、キャリア供給層250のバンドギャップは、第2キャリア走行層240のバンドギャップよりも大きい。これらの条件を満たしていれば、その他のIII 族窒化物系化合物半導体を用いてもよい。
【0081】
例えば、第2キャリア走行層240にInGaNを用い、キャリア供給層250にGaNもしくはAlGaNを用いることができる。また、キャリア供給層250として、Siなどの不純物をドープしたn型層を用いてもよい。また、キャリア供給層250の上に、キャップ層を設けてもよい。また、第2キャリア走行層240の組成を、第1キャリア走行層230の組成と、同一組成としてもよい。もちろん、これらの組成が異なっていてもよい。
【0082】
電極構造は、
図2に示したとおりである。ただし、本実施形態では、キャリア供給層250の上に、ソース電極S2およびドレイン電極D2が形成されている。そして、ゲート電極G2は、凹部261に対面する箇所であって絶縁膜260の上に形成されている。
【0083】
2.半導体装置の製造方法
パワー素子200を製造する場合にも、基板210の上に半導体層を形成する(半導体層形成工程)。そして、マスクを用いて、凹部261を形成し、絶縁膜260を形成する。そして、ソース電極S2およびドレイン電極D2を、キャリア供給層250の上に形成する。そして、ゲート電極G2を、絶縁膜260の上に形成する(電極形成工程)。つまり、第1の実施形態と同様に、半導体形成工程および電極形成工程を有する。
【0084】
3.変形例
第2の実施形態においても、第1の実施形態で説明した全ての変形例を適用することができる。
【0085】
4.まとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態のパワー素子200の製造方法では、キャリア供給層250に金属層S11、S12を形成し、金属層S12の表面S12aを酸化する。これにより、酸化物層S13を形成することとした。酸化物層S13の材質は、金属層S12の酸化物である。そのため、金属層S12のエッチング耐性を高めることができる。これにより、導通部S16を好適に形成することができる。つまり、ソース電極S2におけるオーミック特性を悪化させるおそれがほとんどない。また、カバー層を形成する必要がない。
【0086】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎない。したがって当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。本実施形態では、エピタキシャル成長の方法として、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いることとした。しかし、ハイドライド気相エピタキシー法(HVPE)などの気相成長法や、分子線エピタキシー法(MBE)、パルスドスパッタデポジション法(PSD)、そして、液相エピタキシー法などを用いてもよい。
【0087】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、発光素子300である。電極構造および電極の形成方法については、第1の実施形態と同様である。したがって、異なる箇所のみについて説明する。
【0088】
1.発光素子
発光素子300を
図16により説明する。発光素子300は、フェイスアップ型の半導体発光素子である。発光素子300は、
図16に示すように、発光素子300は、基板310に、低温バッファ層320と、n型コンタクト層330と、n型ESD層340と、n型SL層350と、発光層360と、p型クラッド層370と、p型コンタクト層380とを有している。また、n型コンタクト層330には、n電極N3が形成されている。p型コンタクト層380には、p電極P3が形成されている。
【0089】
基板310として、サファイア、SiC、ZnO、Si、GaNなどを用いることができる。低温バッファ層320の材質は、例えばAlNやGaNである。
【0090】
n型コンタクト層330は、n型GaNから成る層である。n型コンタクト層330のキャリア濃度は、1×10
16cm
-3以上1×10
20cm
-3以下の範囲内である。
【0091】
n型ESD層340は、各半導体層の静電破壊を防止するための静電耐圧層である。n型ESD層40の構造は、ノンドープのGaNとSiドープのn型GaNの積層構造である。
【0092】
n型SL層350は、発光層360に加わる応力を緩和するための歪緩和層である。より具体的には、n型SL層350は、超格子構造を有するn型超格子層である。n型SL層350は、後述するように、InGaNと、GaNと、n型GaNとを積層した単位積層体を繰り返し積層したものである。
【0093】
発光層360は、電子と正孔とが再結合することで、光を発する発光層である。そのために、発光層360は、バンドギャップの小さい井戸層と、バンドギャップの大きい障壁層とが交互に形成されている多重量子井戸構造となっている。ここで、井戸層としてInGaNを用いるとともに、障壁層としてAlGaNを用いることができる。このように井戸層は、Inを含んでいる。また、障壁層としてAlInGaNを用いてもよい。
【0094】
p型クラッド層370は、p型InGaNから成る層と、p型AlGaNから成る層とを単位構造として、その単位構造を繰り返して形成した層である。もちろん、これ以外のものを用いてもよい。
【0095】
p型コンタクト層380は、Mgをドープしたp型GaNから成る層である。p型コンタクト層380の材質として、その他に、InGaNと、AlGaNと、AlInGaNとのうちのいずれか1つを用いてもよい。
【0096】
そして、p電極P3の材質は、例えば、ITOである。もちろん、これ以外の材質であってもよい。また、p電極P3の上に、パッド電極が形成されていてもよい。
【0097】
n電極N3は、
図2に示したように、n型コンタクト層330の上に、金属層S11および金属層S12が形成されている。そして、酸化物層S13が、金属層S13の上に形成されている。
【0098】
2.半導体装置の製造方法
発光素子300を製造する場合にも、基板310の上に半導体層を形成する(半導体層形成工程)。そして、p電極P3を形成し、n型コンタクト層330を露出させてn電極N3を形成する(電極形成工程)。つまり、第1の実施形態と同様に、半導体形成工程および電極形成工程を有する。
【0099】
3.変形例
第3の実施形態においても、第1の実施形態で説明した全ての変形例を適用することができる。
【0100】
4.まとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態の発光素子300の製造方法では、n型コンタクト層330に金属層S11、S12を形成し、金属層S12の表面S12aを酸化する。これにより、酸化物層S13を形成することとした。酸化物層S13の材質は、金属層S12の酸化物である。そのため、金属層S12のエッチング耐性を高めることができる。これにより、導通部S16を好適に形成することができる。つまり、n電極N3におけるオーミック特性を悪化させるおそれがほとんどない。また、カバー層を形成する必要がない。
【0101】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎない。したがって当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。本実施形態では、エピタキシャル成長の方法として、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いることとした。しかし、ハイドライド気相エピタキシー法(HVPE)などの気相成長法や、分子線エピタキシー法(MBE)、パルスドスパッタデポジション法(PSD)、そして、液相エピタキシー法などを用いてもよい。
【0102】
以上、第1の実施形態から第3の実施形態までにおいて、パワー素子100、200および発光素子300について説明した。しかし、パワー素子や発光素子に限らず、その他の半導体装置に適用することができる。