特許第5983126号(P5983126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5983126アクチュエータユニット及びこれを備えた車両用操舵装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983126
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】アクチュエータユニット及びこれを備えた車両用操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20160818BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   B62D5/04
   F16H1/16 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-159657(P2012-159657)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-19292(P2014-19292A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】冨田 健仁
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−117049(JP,A)
【文献】 特開2005−088821(JP,A)
【文献】 特開2012−086799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
F16H 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータに軸継手を介して傾動可能に連結されるウォーム軸及び該ウォーム軸と噛合するウォームホイールを有するウォーム減速機と、前記ウォーム減速機を収容するハウジングと、前記ウォーム軸における前記モータに連結される一端部と反対側の他端部を前記ウォームホイール側に付勢する付勢手段と、を備えたアクチュエータユニットにおいて、
前記付勢手段は、前記ウォーム軸を常に前記ウォームホイール側に付勢する主付勢部と、前記ウォーム軸が前記ウォームホイールから離間するように傾動したときに該ウォーム軸を前記ウォームホイール側に付勢する補助付勢部と、を備え、
前記主付勢部は、前記他端部の外周に配置される円弧状の主円弧部、前記主円弧部の周方向端部から径方向外側に屈曲する主屈曲部、及び前記主屈曲部の先端から周方向に延びる主板バネ部を有し、
前記補助付勢部は、前記主円弧部との間に軸方向に間隔を空けて並置される円弧状の補助円弧部、前記補助円弧部の周方向端部から径方向外側に屈曲する補助屈曲部、及び前記補助屈曲部の先端から周方向に延びる補助板バネ部を有し、
前記ハウジングの内周面には、前記主板バネ部と径方向において対向する位置に該主板バネ部が収容される主凹部、及び前記補助板バネ部と径方向において対向する位置に該補助板バネ部が収容されるとともに前記主凹部よりも深い補助凹部が形成されたことを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項2】
モータと、前記モータに軸継手を介して傾動可能に連結されるウォーム軸及び該ウォーム軸と噛合するウォームホイールを有するウォーム減速機と、前記ウォーム減速機を収容するハウジングと、前記ウォーム軸における前記モータに連結される一端部と反対側の他端部を前記ウォームホイール側に付勢する付勢手段と、を備えたアクチュエータユニットにおいて、
前記付勢手段は、前記ウォーム軸を常に前記ウォームホイール側に付勢する主付勢部と、前記ウォーム軸が前記ウォームホイールから離間するように傾動したときに該ウォーム軸を前記ウォームホイール側に付勢する補助付勢部と、を備え、
前記主付勢部は、前記他端部の外周に配置される円弧状の主円弧部、前記主円弧部の周方向端部から径方向外側に屈曲する主屈曲部、及び前記主屈曲部の先端から周方向に延びる主板バネ部を有し、
前記補助付勢部は、前記主円弧部との間に軸方向に間隔を空けて並置される円弧状の補助円弧部、前記補助円弧部の周方向端部から径方向外側に屈曲する補助屈曲部、及び前記補助屈曲部の先端から周方向に延びる補助板バネ部を有し、
前記他端部の外周には、前記主屈曲部が常に接触するとともに、前記ウォーム軸が前記ウォームホイールから離間するように傾動したときに前記補助屈曲部が接触する切欠き部を有する外周部材が設けられたことを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアクチュエータユニットにより、ステアリング操作を補助するためのアシスト力を発生させることを特徴とする車両用操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータユニット及びこれを備えた車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの回転をウォーム軸及びウォームホイールを噛合してなるウォーム減速機により減速して出力するアクチュエータユニットがある。こうしたアクチュエータユニットは、例えば車両用操舵装置において運転者のステアリング操作を補助するためのアシスト力を発生させる操舵力補助装置として用いられている。
【0003】
ところで、上記のようなアクチュエータユニットが設けられた車両用操舵装置では、ウォーム減速機のバックラッシュに起因して、例えば操舵方向の切り替え時に歯打ち音が発生することがある。そこで、この種のアクチュエータユニットには、ウォーム軸の一端をモータ軸に対して傾動可能に連結するとともに、その他端を付勢してウォームホイールに近接するように該ウォーム軸を傾動させることにより、バックラッシュを除去するようにしたものがある。そして、こうしたウォーム軸を傾動させる付勢部材としては、例えばウォーム軸の他端を回転可能に支持する軸受の外周を囲繞するように湾曲した湾曲板バネが用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−203154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ウォーム軸及びウォームホイールには、その噛み合いによって互いに離間する方向の反力がそれぞれ作用する。そのため、例えば逆入力応力の印加等によりウォーム減速機に衝撃的なトルクが作用した場合には、付勢部材の付勢力に抗して瞬間的にウォーム軸がウォームホイールから離間するように傾動することがある。その結果、例えばウォーム軸がそのハウジングの内面に接触することで打音が発生する虞がある。
【0006】
そこで、付勢部材の弾性係数(バネ定数)を予め大きく設定することでウォーム軸がウォームホイールから離間したときに生じる付勢力を大きくし、打音の発生を抑制することが考えられる。しかし、ウォーム軸やウォームホイール等には寸法ばらつきが存在することから、製造される個体毎にこれらウォーム軸とウォームホイールとの間の軸間距離にばらつきが生じるため、付勢部材の組み付け時(初期)の変形量にもばらつきが生じる。したがって、付勢部材の弾性係数を大きくすると、付勢部材の付勢力が大きくばらつき、ウォーム軸とウォームホイールとの噛み合い摩擦がばらついてしまう。その結果、製造されるアクチュエータユニットの個体間での出力特性が安定せず、ひいては車両用操舵装置の操舵フィーリングに影響を及ぼす虞があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、異音の発生を抑制しつつ、ウォーム軸とウォームホイールとの噛み合い摩擦のばらつきを低減できるアクチュエータユニット及びこれを備えた車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項に記載の発明は、モータと、前記モータに軸継手を介して傾動可能に連結されるウォーム軸及び該ウォーム軸と噛合するウォームホイールを有するウォーム減速機と、前記ウォーム減速機を収容するハウジングと、前記ウォーム軸における前記モータに連結される一端部と反対側の他端部を前記ウォームホイール側に付勢する付勢手段と、を備えたアクチュエータユニットにおいて、前記付勢手段は、前記ウォーム軸を常に前記ウォームホイール側に付勢する主付勢部と、前記ウォーム軸が前記ウォームホイールから離間するように傾動したときに該ウォーム軸を前記ウォームホイール側に付勢する補助付勢部と、を備え、前記主付勢部は、前記他端部の外周に配置される円弧状の主円弧部、前記主円弧部の周方向端部から径方向外側に屈曲する主屈曲部、及び前記主屈曲部の先端から周方向に延びる主板バネ部を有し、前記補助付勢部は、前記主円弧部との間に軸方向に間隔を空けて並置される円弧状の補助円弧部、前記補助円弧部の周方向端部から径方向外側に屈曲する補助屈曲部、及び前記補助屈曲部の先端から周方向に延びる補助板バネ部を有し、前記ハウジングの内周面には、前記主板バネ部と径方向において対向する位置に該主板バネ部が収容される主凹部、及び前記補助板バネ部と径方向において対向する位置に該補助板バネ部が収容されるとともに前記主凹部よりも深い補助凹部が形成されたことを要旨とする。
【0011】
上記構成では、例えば逆入力応力の印加等によりウォーム減速機に衝撃的なトルクが作用してウォーム軸がウォームホイールから離間すると、該ウォーム軸は主付勢部及び補助付勢部の双方によってウォームホイール側に付勢されるようになる。そのため、主付勢部の弾性係数が低くても、補助付勢部によってウォーム軸の傾動が抑えられることで、ウォーム軸がハウジングに接触して打音が発生することを十分に抑制できる。つまり、常にウォーム軸を付勢する主付勢部の弾性係数を低くしつつ、異音が発生することを十分に抑制できる。そして、主付勢部の弾性係数を低く設定することで、ウォーム軸やウォームホイール等の寸法ばらつきに起因して主付勢部の組み付け時の変形量が個体毎に変化してもその付勢力がばらつき難くなり、ウォーム軸とウォームホイールとの噛み合い摩擦のばらつきを低減できる。これにより、アクチュエータユニットの出力特性が製造される個体毎にばらつくことを低減できる。
また、上記構成によれば、補助凹部が主凹部よりも深く形成されるため、主付勢部と補助付勢部とを同一形状としつつ、ウォーム軸がウォームホイールから離間するように傾動したときにのみ補助付勢部が該ウォーム軸を付勢する構成とすることが可能になる。そのため、付勢部材の形状が複雑化することを防いでコストの増大を抑制できる。
【0012】
上記目的を達成するため、請求項に記載の発明は、モータと、前記モータに軸継手を介して傾動可能に連結されるウォーム軸及び該ウォーム軸と噛合するウォームホイールを有するウォーム減速機と、前記ウォーム減速機を収容するハウジングと、前記ウォーム軸における前記モータに連結される一端部と反対側の他端部を前記ウォームホイール側に付勢する付勢手段と、を備えたアクチュエータユニットにおいて、前記付勢手段は、前記ウォーム軸を常に前記ウォームホイール側に付勢する主付勢部と、前記ウォーム軸が前記ウォームホイールから離間するように傾動したときに該ウォーム軸を前記ウォームホイール側に付勢する補助付勢部と、を備え、前記主付勢部は、前記他端部の外周に配置される円弧状の主円弧部、前記主円弧部の周方向端部から径方向外側に屈曲する主屈曲部、及び前記主屈曲部の先端から周方向に延びる主板バネ部を有し、記補助付勢部は、前記主円弧部との間に軸方向に間隔を空けて並置される円弧状の補助円弧部、前記補助円弧部の周方向端部から径方向外側に屈曲する補助屈曲部、及び前記補助屈曲部の先端から周方向に延びる補助板バネ部を有し、前記他端部の外周には、前記主屈曲部が常に接触するとともに、前記ウォーム軸が前記ウォームホイールから離間するように傾動したときに前記補助屈曲部が接触する切欠き部を有する外周部材が設けられたことを要旨とする。
【0013】
上記構成では、例えば逆入力応力の印加等によりウォーム減速機に衝撃的なトルクが作用してウォーム軸がウォームホイールから離間すると、該ウォーム軸は主付勢部及び補助付勢部の双方によってウォームホイール側に付勢されるようになる。そのため、主付勢部の弾性係数が低くても、補助付勢部によってウォーム軸の傾動が抑えられることで、ウォーム軸がハウジングに接触して打音が発生することを十分に抑制できる。つまり、常にウォーム軸を付勢する主付勢部の弾性係数を低くしつつ、異音が発生することを十分に抑制できる。そして、主付勢部の弾性係数を低く設定することで、ウォーム軸やウォームホイール等の寸法ばらつきに起因して主付勢部の組み付け時の変形量が個体毎に変化してもその付勢力がばらつき難くなり、ウォーム軸とウォームホイールとの噛み合い摩擦のばらつきを低減できる。これにより、アクチュエータユニットの出力特性が製造される個体毎にばらつくことを低減できる。
また、上記構成によれば、ウォーム軸の傾動に応じて補助屈曲部が接触するような切欠き部を有する外周部材が設けられるため、主付勢部と補助付勢部とを同一形状としつつ、ウォーム軸がウォームホイールから離間するように傾動したときにのみ補助付勢部が該ウォーム軸を付勢する構成とすることが可能になる。そのため、付勢部材の形状が複雑化することを防いでコストの増大を抑制できる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のアクチュエータユニットにより、ステアリング操作を補助するためのアシスト力を発生させる車両用操舵装置であることを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、異音の発生を十分に抑制しつつ、アクチュエータユニットの出力特性が製造される個体毎にばらつくことを低減できるため、操舵フィーリング及び静粛性に優れた車両用操舵装置を提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、異音の発生を抑制しつつ、ウォーム軸とウォームホイールとの噛み合い摩擦のばらつきを低減できるアクチュエータユニット及びこれを備えた車両用操舵装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の車両用操舵装置の概略構成図。
図2】第1実施形態の操舵力補助装置の部分断面図。
図3】第1実施形態の付勢部材の斜視図。
図4】第1実施形態における主付勢部近傍のウォーム軸の軸方向と直交する断面図(図2のA−A断面図)。
図5】第1実施形態における補助付勢部近傍のウォーム軸の軸方向と直交する断面図(図2のB−B断面図)。
図6】第2実施形態の操舵力補助装置の部分断面図。
図7】第2実施形態における主付勢部近傍のウォーム軸の軸方向と直交する断面図(図6のC−C断面図)。
図8】第2実施形態における補助付勢部近傍のウォーム軸の軸方向と直交する断面図(図6のD−D断面図)。
図9】別例の操舵力補助装置の部分断面図。
図10】別例の操舵力補助装置の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両用操舵装置1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、ステアリングシャフト3は、コラム軸8、中間軸9、及びピニオン軸10を連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、ラック軸5の両端に連結されたタイロッド11を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪12の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0019】
また、車両用操舵装置1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するアクチュエータユニットとしての操舵力補助装置21を備えている。操舵力補助装置21は、駆動源となるモータ22と、モータ22に連結されたウォーム軸24及びコラム軸8に連結されたウォームホイール25を噛合してなるウォーム減速機26とを備えている。つまり、本実施形態の車両用操舵装置1は、所謂コラムアシスト型の電動パワーステアリング装置として構成されている。そして、車両用操舵装置1は、モータ22の回転をウォーム減速機26により減速してコラム軸8に伝達することによって、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与する構成になっている。
【0020】
次に、操舵力補助装置の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、操舵力補助装置21は、ウォーム減速機26を収容するハウジング31を備えている。ハウジング31は、ウォーム軸24が収容されるウォーム軸収容部32、及び同ウォーム軸収容部32に連続して形成されるとともにウォームホイール25が収容されるウォームホイール収容部33を有している。ウォーム軸収容部32は、ウォーム軸24の軸方向(図2における左右方向)に延びる円柱状の空間であり、その一端側(図2における右側)は、モータ22が固定されるモータ固定孔34に連通している。また、ウォーム軸収容部32の他端側(図2における左側)は外部に開口しており、エンドカバー35によって閉塞されている。
【0021】
モータ22は、ハウジング31に貫設されたコラム軸8(ステアリングシャフト3)の軸方向に対して、そのモータ軸36の軸方向が直交するようにモータ固定孔34に固定されている。そして、モータ軸36に連結されたウォーム軸24は、その両端がハウジング31内に設けられた第1及び第2の軸受37,38により回転可能に支持されるとともに、ステアリングシャフト3に連結されたウォームホイール25に噛合されている。これにより、モータ22の回転は、ウォーム軸24及びウォームホイール25により減速されてコラム軸8に伝達されるようになっている。なお、本実施形態では、第1及び第2の軸受37,38には、ボール軸受が採用されている。
【0022】
ここで、本実施形態の操舵力補助装置21には、ウォーム減速機26を構成するウォーム軸24とウォームホイール25との間の軸間距離を調整してバックラッシュを除去するバックラッシュ調整機構が組み込まれている。すなわち、ウォーム軸24は、その一端部(図2における右側端部)24aが軸継手41によりモータ軸36に対して傾動可能に連結されるとともに、その他端部(図2における左側端部)24bが付勢手段としての付勢部材42によりウォームホイール25に近接する方向(図2における略下方向)に付勢されている。
【0023】
詳述すると、ウォーム軸24の一端部24aを支持する第1の軸受37は、その内部隙間が比較的大きく設定されており、ウォーム軸24の一端部24aの傾動が許容されている。そして、第1の軸受37は、固定部材44によってウォーム軸収容部32内に固定されている。一方、ウォーム軸24の他端部24bを支持する第2の軸受38は、その径方向へ移動可能に設けられている。具体的には、ウォーム軸収容部32における他端側の開口部45は、その内径が第2の軸受38の外径よりも大きく形成されている。そして、第2の軸受38は、エンドカバー35との間に間隔を空けて開口部45内に配置されることで径方向へ移動可能に設けられている。このようにウォーム軸24は、第1及び第2の軸受37,38によってモータ軸36に対する傾動が許容された状態で回転可能に支持されている。
【0024】
軸継手41は、互いに対向する方向に突出する複数の係合爪46a,47aを有する一対の継体(ヨーク)46,47と、これら継体46,47間に介在される弾性体48とを備えている。そして、軸継手41は、継体46,47間で弾性体48が圧縮されることにより、各継体46,47に接続されたウォーム軸24及びモータ軸36間の傾動を許容しつつトルク伝達可能な構成となっている。
【0025】
図2及び図3に示すように、付勢部材42は、ウォーム軸24を常にウォームホイール25側に付勢する主付勢部51と、ウォーム軸24がウォームホイール25から離間するように傾動したときにウォーム軸24をウォームホイール25側に付勢する補助付勢部52とを備えている。
【0026】
さらに詳述すると、図4に示すように、主付勢部51は、第2の軸受38の外輪に略沿って延びるとともにウォームホイール25と反対側(図4における上側)の一部が切り欠かれた円弧状の主円弧部53、主円弧部53の周方向両端部からそれぞれ径方向外側に屈曲する主屈曲部54、及び主屈曲部54の先端から周方向の中央側にそれぞれ延びる主板バネ部55を有している。なお、主付勢部51は、第2の軸受38(他端部24b)の中心に関して対象な形状とされている。また、主付勢部51(主板バネ部55)の弾性係数は、付勢部材42の組み付け時にウォーム軸24とウォームホイール25との間のバックラッシュを除去できる範囲内において比較的低めに設定されている。
【0027】
図5に示すように、補助付勢部52は、第2の軸受38の外輪に略沿って延びるとともにウォームホイール25と反対側(図5における上側)の一部が切り欠かれた円弧状の補助円弧部56、補助円弧部56の周方向両端部からそれぞれ径方向外側に屈曲する補助屈曲部57、及び補助屈曲部57の先端からそれぞれ周方向の中央側に延びる補助板バネ部58を有している。なお、補助付勢部52は、第2の軸受38の中心に関して対象な形状とされるとともに、主付勢部51と同一形状とされている。また、図2及び図3に示すように、付勢部材42は、第2の軸受38のウォームホイール25側の略半分を覆うとともに、主付勢部51と補助付勢部52とを連結する半円弧状の連結部59を有している。これにより、主付勢部51と補助付勢部52とは、これらの間に軸方向に間隔を空けて一体的に形成されている。なお、図3に示すように、付勢部材42には、第2の軸受38の端面に係止する複数の係止爪60が補助円弧部56と一体的に形成されている。
【0028】
図2及び図4に示すように、開口部45の内周面には、ウォームホイール25と反対側で、主付勢部51と径方向において対向する位置に主板バネ部55を収容する主凹部61が形成されている。主凹部61は、断面略四角形状に形成されている。そして、主凹部61の深さは、逆入力応力等の印加によってウォーム軸24がウォームホイール25から離間するように傾動していない組み付け時の状態で、その底面61aに主板バネ部55が接触して弾性変形するように設定されている。これにより、主付勢部51は、ウォーム軸24を常にウォームホイール25側に付勢するようになっている。詳しくは、主付勢部51において、主円弧部53の周方向両端部は主板バネ部55が弾性変形する際の支点となっている。そして、主付勢部51は、各主板バネ部55で発生した付勢力(弾性力)が主に主円弧部53の周方向両端部を介して他端部24bに伝達されることにより、該他端部24bを付勢する。
【0029】
また、図2及び図5に示すように、開口部45の内周面には、ウォームホイール25と反対側で、補助付勢部52と径方向において対向する位置に補助板バネ部58を収容する補助凹部62が形成されている。補助凹部62は、上記主凹部61に連続して形成されるとともに断面略四角形状に形成されている。そして、補助凹部62の深さは、組み付け時の状態ではその底面62aに補助板バネ部58が当接せず、ウォーム軸24がウォームホイール25から離間するように傾動したときに接触して弾性変形するように設定されている。つまり、補助凹部62は、主凹部61よりも深く形成されている。これにより、補助付勢部52は、ウォーム軸24がウォームホイール25から離間するように傾動したときにウォーム軸24をウォームホイール25側に付勢するようになっている。換言すると、補助付勢部52は、ウォーム軸24とウォームホイール25との間にバックラッシュが生じたときにウォーム軸24を付勢するようになっている。なお、補助付勢部52は、主付勢部51と同様に、各補助板バネ部58で発生した弾性力が主に補助円弧部56の周方向両端部を介して他端部24bに伝達されることにより、該他端部24bを付勢する。
【0030】
次に、本実施形態の車両用操舵装置(操舵力補助装置)の作用について説明する。
ウォーム軸24がウォームホイール25から離間するように傾動していない組み付け時(初期)の状態においては、ウォーム軸24は、付勢部材42の主付勢部51によってその他端部24bが第2の軸受38を介してウォームホイール25側に付勢される。これにより、ウォーム軸24はウォームホイール25に近接するように傾動し、バックラッシュが除去される。ここで、例えば縁石衝突等により転舵輪12に逆入力応力が印加され、ウォームホイール25との噛み合い反力によってウォーム軸24がウォームホイール25から離間ように傾動すると、主板バネ部55の変形量が増加するとともに、補助板バネ部58が補助凹部62の底面62aに接触して弾性変形する。これにより、ウォーム軸24は、主付勢部51及び補助付勢部52の双方によってウォームホイール25側に付勢されるようになり、ハウジング31の開口部45に接触して打音が発生することが十分に抑制される。
【0031】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)付勢部材42に、ウォーム軸24がウォームホイール25から離間するように傾動したときにウォーム軸24を付勢する補助付勢部52を設けたため、ウォーム軸24を常に付勢する主付勢部51の弾性係数を低く設定しても、逆入力応力の印加時等に打音が発生することを十分に抑制できる。つまり、主付勢部51の弾性係数を低くしつつ、異音が発生することを十分に抑制できる。そして、主付勢部51の弾性係数を低く設定することで、ウォーム軸やウォームホイール25等の寸法ばらつきに起因して主付勢部51(主板バネ部55)の組み付け時の変形量が個体毎に変化してもその付勢力がばらつき難くなり、ウォーム軸24とウォームホイール25との噛み合い摩擦のばらつきを低減できる。これにより、異音の発生を十分に抑制しつつ、操舵力補助装置21の出力特性が製造される個体毎にばらつくことを低減できるため、操舵フィーリング及び静粛性に優れた車両用操舵装置1を提供できる。
【0032】
(2)補助凹部62を主凹部61よりも深く形成したため、主付勢部51と補助付勢部52とを同一形状としつつ、ウォーム軸24がウォームホイール25から離間するように傾動したときにのみ補助付勢部52(補助板バネ部58)がウォーム軸24を付勢する構成とすることが可能になる。そのため、付勢部材42の形状が複雑化することを防いでコストの増大を抑制できる。
【0033】
(3)主付勢部51と補助付勢部52とを一体的に形成したため、部品点数の増加を防いでコストの増大を抑制できる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図6に示すように、第2の軸受38の外輪の外周には、外周部材としての略円筒状のスリーブ71が嵌合されている。スリーブ71の外周面には、ウォーム軸24の他端側に開口する円環状の切欠き部72が形成されている。そして、図7に示すように、組み付け時の状態で付勢部材42の主円弧部53は、その全体がスリーブ71の外周に接触している。一方、図8に示すように、補助円弧部56は、切欠き部72の外周に配置されることでスリーブ71と非接触となっている。
【0035】
また、本実施形態では、主凹部61の深さと補助凹部62の深さとが等しく設定されている。これにより、組み付け時の状態で、主板バネ部55が主凹部61の底面61aに接触して弾性変形するとともに、補助板バネ部58が補助凹部62の底面62aに接触して弾性変形している。ここで、上記のように付勢部材42の主円弧部53(の周方向端部)は、スリーブ71の外周面に常に接触しているため、主板バネ部55で発生した付勢力はスリーブ71を介して他端部24bに伝達されている。つまり、主付勢部51は常に他端部24bを付勢している。一方、補助円弧部56は、組み付け時の状態では、スリーブ71に接触していないため、補助板バネ部58で発生した付勢力は、他端部24bに伝達されないようになっている。つまり、補助付勢部52は、組み付け時の状態では、他端部24bを付勢しないようになっている。
【0036】
次に、本実施形態の車両用操舵装置(操舵力補助装置)の作用について説明する。
ウォーム軸24がウォームホイール25から離間するように傾動していない組み付け時の状態においては、ウォーム軸24は、上記第1実施形態と同様に、付勢部材42の主付勢部51によってその他端部24bが第2の軸受38を介してウォームホイール25側に付勢される。これにより、ウォーム軸24はウォームホイール25に近接するように傾動し、バックラッシュが除去される。ここで、ウォームホイール25との噛み合い反力によってウォーム軸24がウォームホイール25から離間ように傾動すると、主板バネ部55の変形量が増加するとともに、切欠き部72の底面72aが補助円弧部56の周方向端部に接触し、補助板バネ部58の付勢力がスリーブ71を介して他端部24bに伝達される。これにより、ウォーム軸24は、主付勢部51及び補助付勢部52の双方によってウォームホイール25側に付勢されるようになり、ハウジング31の開口部45に接触して打音が発生することが十分に抑制される。
【0037】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(3)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(4)ウォーム軸24の傾動に応じて補助屈曲部57が接触するような切欠き部72を有するスリーブ71を第2の軸受38の外周に設けたため、主付勢部51と補助付勢部52とを同一形状としつつ、ウォーム軸24がウォームホイール25から離間するように傾動したときにのみ補助付勢部52(補助板バネ部58)がウォーム軸24を付勢する構成とすることが可能になる。そのため、付勢部材42の形状が複雑化することを防いでコストの増大を抑制できる。
【0038】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記各実施形態では、主付勢部51と補助付勢部52とを同一形状としたが、主付勢部51の形状と補助付勢部52の形状とが異なっていてもよく、例えば補助屈曲部57の径方向の長さを主屈曲部54の径方向の長さよりも短く形成してもよい。この場合には、例えば上記第1実施形態において主凹部61の深さと補助凹部62の深さとを等しく形成しても、ウォーム軸24がウォームホイール25から離間するように傾動したときにのみ各補助付勢部52がウォーム軸24を付勢する構成とすることができる。
【0039】
・上記各実施形態において、主円弧部53の周方向一端部又は他端部にのみ主屈曲部54及び主板バネ部55を形成してもよい。同様に、補助円弧部56の周方向一端部又は他端部にのみ補助屈曲部57及び補助板バネ部58を形成してもよい。
【0040】
・上記各実施形態において、付勢部材42に複数の補助付勢部52を軸方向に間隔を空けて設け、これら補助付勢部52がウォーム軸24の傾動量に応じて順次、ウォーム軸24をウォームホイール25側に付勢するようにしてもよい。
【0041】
・上記各実施形態では、主付勢部51と補助付勢部52とを一体的に形成したが、これに限らず、付勢部材42に連結部59を設けず、主付勢部51と補助付勢部52とを別体としてもよい。図9に示す例では、開口部45内には、主付勢部51によって構成される第1付勢部材81と、この第1付勢部材81とは別体で補助付勢部52によって構成される第2付勢部材82とが収容されている。この例では、第1及び第2付勢部材81,82によって付勢手段が構成されている。また、第1付勢部材81の主円弧部53と第2付勢部材82の補助円弧部56との間にこれらが軸方向において重なることを防止するための環状のスペーサ83が設けられている。なお、スペーサ83に代えて、開口部45の内周面に第1付勢部材81と第2付勢部材82との間に配置される突起を形成してもよい。
【0042】
・上記第1実施形態では、付勢手段としての付勢部材42を、第2の軸受38を囲繞するように湾曲した湾曲板バネにより構成したが、これに限らず、例えば複数のコイルバネやゴム等の弾性体により構成してもよい。図10に示す例では、開口部45内には、一端が主凹部61の底面61aに接触するとともに他端が第2の軸受38の外輪に接触するコイルバネ等の第1付勢部材84と、一端が補助凹部62の底面62aに接触するとともに他端が第2の軸受38の外輪との間に間隔を空けて配置されるコイルバネ等の第2付勢部材85とが収容されている。この例では、第1付勢部材84が、ウォーム軸24を常に付勢する主付勢部に相当するとともに、第2付勢部材85が、ウォーム軸24がウォームホイール25から離間するように傾動したときにウォーム軸24を付勢する補助付勢部に相当し、これら第1及び第2付勢部材84,85によって付勢手段が構成されている。同様に、上記第2実施形態において、付勢手段をコイルバネやゴム等の弾性体により構成してもよい。
【0043】
・上記第2実施形態において、第2の軸受38の外輪の外周にスリーブ71を嵌合せず、該外輪の外周面にスリーブ71と同様の切欠き部を形成してもよい。なお、この場合には、外輪が外周部材に相当する。また、切欠き部72の形状が円環状以外の円弧状等であってもよいことは言うまでもない。
【0044】
・上記各実施形態では、本発明のアクチュエータユニットを車両用操舵装置に搭載されてアシスト力を発生させる操舵力補助装置に適用したが、これに限らず、他の用途に用いられる駆動源に適用してもよい。
【0045】
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)前記主付勢部と前記補助付勢部とは、一体的に形成されたことを特徴とする。上記構成によれば、部品点数の増加を防いでコストの増大を抑制できる。
【符号の説明】
【0046】
1…車両用操舵装置、21…操舵力補助装置、22…モータ、24…ウォーム軸、24a…一端部、24b…他端部、25…ウォームホイール、26…ウォーム減速機、31…ハウジング、36…モータ軸、37…第1の軸受、38…第2の軸受、41…軸継手、42…付勢部材、51…主付勢部、52…補助付勢部、53…主円弧部、54…主屈曲部、55…主板バネ部、56…補助円弧部、57…補助屈曲部、58…補助板バネ部、59…連結部、61…主凹部、62…補助凹部、71…スリーブ、72…切欠き部、81,84…第1付勢部材、82,85…第2付勢部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10