特許第5983139号(P5983139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983139
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】眼鏡枠形状測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   G01B5/20 D
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-163009(P2012-163009)
(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2014-21069(P2014-21069A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴靖
(72)【発明者】
【氏名】田中 基司
(72)【発明者】
【氏名】柴田 良二
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−060326(JP,A)
【文献】 特開平08−043071(JP,A)
【文献】 特開2006−102846(JP,A)
【文献】 特開2000−321540(JP,A)
【文献】 NIDEK SATELLITE TRACER Model LT-900 OPERATOR'S MANUAL,2006年 3月,URL,http://www.shamirlens.co.uk/images/download/nidek_lt910_manual.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00− 5/30
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡フレームの左右リムを保持するフレーム保持手段と、眼鏡フレームのリムの溝に測定子を挿入し、測定子の移動を検知してリムの形状を測定する測定手段と、を備える眼鏡枠形状測定装置において、
左及び右の両リムが前記フレーム保持手段に保持された状態で左及び右の両リムの全周を測定するための第1トレースモードの第1測定開始信号を入力する第1測定開始信号入力手段と、
左及び右の一方の片リムが前記フレーム保持手段に保持された状態で前記片リムの全周を測定するための第2トレースモードの第2測定開始信号を入力する第2測定開始信号入力手段と、
左及び右の両リムが前記フレーム保持手段に保持された状態で左リムの鼻側部分と右リムの鼻側部分とを部分的に測定する第3トレースモードの第3測定開始信号を入力する第3測定開始信号入力手段と、
前記第1測定開始信号に基づいて左及び右の両リムの全周を前記測定手段に測定させ、前記第2測定開始信号に基づいて前記フレーム保持手段に保持された前記片リムの全周を前記測定手段に測定させ、前記第3測定開始信号に基づいて右リムの鼻側端を含む鼻側部分と左リムの鼻側端を含む鼻側部分とをそれぞれ前記測定手段に測定させる制御手段と、
を備えることを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項2】
請求項1の眼鏡枠形状測定装置において、前記第3トレースモードで得られた測定結果に基づき、又は前記第2トレースモード及び前記第3トレースモードで得られた測定結果に基づき、右リム形状と左リム形状との相互の位置関係データを求める演算手段を備えることを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項3】
請求項2の眼鏡枠形状測定装置において、前記演算手段は、前記相互の位置関係データとして、前記第3トレースモードで得られた測定結果に基づき、右リムの鼻側端と左リムの鼻側端との間の鼻幅データを求めるか、又は前記相互の位置関係データとして、前記第2トレースモード及び前記第3トレースモードで得られた測定結果に基づき、右リムの鼻側端と左リムの鼻側端との間の鼻幅データ及び左右リムの幾何中心間距離データの少なくとも一方のデータを求めることを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【請求項4】
請求項3の眼鏡枠形状測定装置において、前記演算手段は、前記第3トレースモードで得られた右リムの部分的なリム形状データに対して前記第2トレースモードで得られた右リムの全周の形状データを3次元的にマッチングさせる処理を行い、前記第3トレースモードで得られた左リムの部分的なリム形状データに対して前記第2トレースモードで得られた左リムの全周の形状データを3次元的にマッチングさせる処理を行い、眼鏡フレームを所定の方向から見たときの左右リムの幾何中心間距離データを求めることを特徴とする眼鏡枠形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼鏡フレームのリムの形状を測定する眼鏡枠形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡フレームの左右リムを保持するフレーム保持ユニットと、フレーム保持ユニットに保持された眼鏡フレームのリムの溝に測定子を挿入し、測定子の移動を検知してリムの形状を測定する測定ユニットと、を備える眼鏡枠形状測定装置が知られている(例えば、特許文献1参)。
【0003】
この種の装置においては、通常、左右リムの両方をフレーム保持ユニットによって保持させ、右リム及び左リムを連続的に測定する両リム支持トレースモードが使用される。両リム支持トレースモードでは、右リム及び左リムの形状の他、左リム形状と右リム形状の相互の位置関係データを得ることができる。この位置関係のデータとしては、左右リムの幾何中心間距離(FPD)、左リムの鼻側端と右リムの鼻側端との間の鼻幅(DBL)、フレーム(リム)の反り角、等のデータがある。眼鏡枠形状測定装置で得られたデータは、眼鏡レンズ周縁加工装置による眼鏡レンズの周縁加工の基礎データとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−314617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、サングラスフレームやスポーツフレーム等のように、フレーム(リム)の反り角の大きな高カーブフレームが増えてきている。このような高カーブフレームの左右リムを両リム支持トレースモードで順次自動的に測定しようとしても、フレーム(リム)の反り角が大きく、リムの溝の方向に対して測定子の先端が向く方向が大きく乖離すると、測定子がリムの溝から外れてしまい、測定に失敗することがある。また、測定ユニットで測定される動径方向に対して垂直な方向へのリムの変化が大きい場合には、測定許容範囲外となり、リムの全周の測定に失敗してしまう。両リム支持トレースモードでの測定に失敗した場合には、右リムのみをフレーム保持ユニットに保持させ、右リム(片リム)支持トレースモードで右リムの全周を測定し、また、左リムのみをフレーム保持ユニットに保持させ、左リム(片リム)支持トレースモードで左リムの全周を測定することにより、左右リムのそれぞれの三次元形状を測定することが行われる。
【0006】
しかし、片リム支持トレースモードでは、両リム支持トレースモードのように、左リム形状と右リム形状の位置関係のデータを得ることができない。この場合、その鼻幅(DBL)又は幾何中心間距離(FPD)を得るために、別途、操作者がノギス等の測定器具を使用して手作業で測定したり、フレームメーカで事前に得られているデータ(これはフレームに刻印されていたりする)を操作者が入力する必要がある。ノギス等の測定機具を使用することは手間であるし、正確でない。フレームに刻印された値は正確でないこと多い。操作者がフレームの反り角度を測定することは手間であるし、その測定結果も正確でない。
【0007】
本件発明は、上記従来技術に鑑み、高カーブフレームの場合にも、左リム形状と右リム形状の相互の位置関係データを得ることが可能な眼鏡枠形状測定装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 眼鏡フレームの左右リムを保持するフレーム保持手段と、眼鏡フレームのリムの溝に測定子を挿入し、測定子の移動を検知してリムの形状を測定する測定手段と、を備える眼鏡枠形状測定装置において、左及び右の両リムが前記フレーム保持手段に保持された状態で左及び右の両リムの全周を測定するための第1トレースモードの第1測定開始信号を入力する第1測定開始信号入力手段と、左及び右の一方の片リムが前記フレーム保持手段に保持された状態で前記片リムの全周を測定するための第2トレースモードの第2測定開始信号を入力する第2測定開始信号入力手段と、左及び右の両リムが前記フレーム保持手段に保持された状態で左リムの鼻側部分と右リムの鼻側部分とを部分的に測定する第3トレースモードの第3測定開始信号を入力する第3測定開始信号入力手段と、前記第1測定開始信号に基づいて左及び右の両リムの全周を前記測定手段に測定させ、前記第2測定開始信号に基づいて前記フレーム保持手段に保持された前記片リムの全周を前記測定手段に測定させ、前記第3測定開始信号に基づいて右リムの鼻側端を含む鼻側部分と左リムの鼻側端を含む鼻側部分とをそれぞれ前記測定手段に測定させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼鏡枠形状測定装置において、前記第3トレースモードで得られた測定結果に基づき、又は前記第2トレースモード及び前記第3トレースモードで得られた測定結果に基づき、右リム形状と左リム形状との相互の位置関係データを求める演算手段を備えることを特徴とする。
(3) (2)の眼鏡枠形状測定装置において、前記演算手段は、前記相互の位置関係データとして、前記第3トレースモードで得られた測定結果に基づき、右リムの鼻側端と左リムの鼻側端との間の鼻幅データを求めるか、又は前記相互の位置関係データとして、前記第2トレースモード及び前記第3トレースモードで得られた測定結果に基づき、右リムの鼻側端と左リムの鼻側端との間の鼻幅データ及び左右リムの幾何中心間距離データの少なくとも一方のデータを求めることを特徴とする。
(4) (3)の眼鏡枠形状測定装置において、前記演算手段は、前記第3トレースモードで得られた右リムの部分的なリム形状データに対して前記第2トレースモードで得られた右リムの全周の形状データを3次元的にマッチングさせる処理を行い、前記第3トレースモードで得られた左リムの部分的なリム形状データに対して前記第2トレースモードで得られた左リムの全周の形状データを3次元的にマッチングさせる処理を行い、眼鏡フレームを所定の方向から見たときの左右リムの幾何中心間距離データを求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、両リム支持状態では左右リムのそれぞれの全周を測定できない高カーブフレームの場合にも、左リム形状と右リム形状の相互の位置関係データを得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、眼鏡枠形状測定装置の外観略図である。眼鏡枠形状測定装置1は、眼鏡フレームFを所期する状態に保持するフレーム保持ユニット100と、フレーム保持ユニット100に保持された眼鏡フレームのリムの溝(ヤゲン溝)に測定子(スタイラス)281を挿入し、測定子281をリムの溝に沿って移動し、測定子の移動を検知することによりリムの三次元形状(玉型)を得る測定ユニット200と、を備える。
【0011】
装置1の筐体の後側には、タッチパネル式のディスプレイを持つパネル部3が配置されている。レンズの周縁加工に際し、パネル部3により玉型データに対するレンズのレイアウトデータ、レンズの加工条件等を入力することができる。装置1で得られたリムの三次元形状データ及びパネル部3で入力されたデータは、眼鏡レンズ周縁加工装置に送信される。
【0012】
装置1にはスイッチ部4が配置されている。スイッチ部4は、両リム支持トレースモードを設定するためのスイッチ4aと、右リム支持トレースモードを設定するためのスイッチ4bと、左リム支持トレースモードを設定するためのスイッチ4cと、鼻側部分トレースモードを設定するためのスイッチ4dと、を備える。両リム支持トレースモードは、左右の両方のリムの形状を連続的に測定するために設定される。右リム支持トレースモードは、右リムのみフレーム保持ユニット100に保持させ、右リムの形状のみを測定するために設定される。左リム支持トレースモードは、左リムのみフレーム保持ユニット100に保持させ、左リムの形状のみを測定するために設定される。鼻側部分トレースモードは、両リム支持トレースモードでは測定エラーとなる場合に、左右のリムの鼻幅を得るために、左右リムの鼻側の形状を部分的に測定するために設定される。これらのトレースモードの詳細は後述する。
【0013】
なお、各トレースモードを設定(選択)するためのスイッチは、パネル部3が持つタッチパネルのディスプレイ上に設けても良い。スイッチ4a、4b、4c及び4d(又はパネル部3)はそれぞれのモードの測定開始信号を入力するために使用され、スイッチ部4は各測定開始信号入力ユニットと兼ねる。また、右リム支持トレースモード及び左リム支持トレースモードは、左右リムの一方の片リムがフレーム保持ユニット100により保持された状態で、その片リムの全周を測定するための片リム支持トレースモードに含まれる。
【0014】
また、パネル部3の画面には、鼻側部分トレースモードの測定によって得られたデータと、片リム支持トレースモードの測定によって得られた左右リムの少なくとも一方のデータ(好ましくは、右リム支持トレースモード及び左リム支持トレースモードの測定によって得られた左右リムのデータ)と、をセットとして対応付けてメモリ51(図5参照)に記憶させるための指令信号を入力するためのスイッチ3aと、後述する「マッチング処理実行」の指令信号を入力するためのスイッチ3bと、が設けられている。
【0015】
なお、フレーム保持ユニット100、測定ユニット200、パネル部3及びスイッチ部4は、特開2000−314617号公報等と同じく、眼鏡レンズ周縁加工装置に組み込まれる構成としてもよい。
【0016】
図2は、眼鏡フレームFが保持された状態のフレーム保持ユニット100の上面図である。フレーム保持ユニット100の下側に測定ユニット200が備えられている。保持部ベース101上には、眼鏡フレームF(右リムRIR,左リムRIL)を所定状態に保持するための第1スライダー102、第2スライダー103が載置されている。第1スライダー102は、フレームFの左リムRIL及び右リムRIRの縦方向の上側に当接する面を持つ。第2スライダー103は、左リムRIL及び右リムRIRの縦方向の下側に当接する面を持つ。
【0017】
第1スライダー102及び第2スライダー103は、X方向の中心線FLを中心に2つのレール111上を対向して摺動可能に配置されていると共に、バネ113により常に両者の中心線FLに向かう方向に引っ張られている。
【0018】
第1スライダー102には、左リムRIL及び右リムRIRの上側(リムの上下とは、眼鏡装用時の縦方向の上下を言う)を保持するための保持機構として、リムの厚み方向(眼鏡装用時の前側及び後側)から左右リムをクランプするためのクランプピン230a,230bがそれぞれ2箇所に配置されている。同様に、第2スライダー103にも、左リムRIL及び右リムRIRの下側を保持するための保持機構として、リムの厚み方向からリムをクランプするためのクランプピン230a,230bがそれぞれ2箇所に配置されている。このフレーム保持ユニット100の構成は、例えば、特開2000−314617号公報等に記載された周知のものが使用できる。
【0019】
図3は、左リムRILの上側をクランプするために、第1スライダー102の左側に配置されたクランプ機構2300の概略構成図である。第1スライダー102の内部に、ベース板2301が配置されている。クランプピン230aは、第1アーム2303の先端に取り付けられている。第1アーム2303の中心部は、ベース板2301に対して回転軸2304により回転可能に保持されている。クランプピン230bは、第2アーム2305の先端に取り付けられている。第2アーム2305の中心部は、ベース板2301に対して回転軸2306により回転可能に保持されている。第1アーム2303及び第2アーム2305の間には、圧縮バネ2307が取り付けられている。圧縮バネ2307によって、2つのクランプピン230a及び230bの間隔が常に開く方向に付勢されている。また、第1アーム2303の中心部には、回転軸2304を中心にしたギヤ2309が形成されている。同様に、第2アーム2305の中心部には、回転軸2306を中心にしたギヤ2311が形成され、ギヤ2309はギヤ2311に噛み合わされている。
【0020】
第1アーム2303の後端には、バネ2313の一端が取り付けられている。バネ2313の他端にワイヤー2315が固定されている。ワイヤー2315は、ベース板2301に回転可能に取り付けられたプーリー2317を介して、駆動ユニット2320に接続されている。駆動ユニット2320は、ワイヤー2315を巻き取るためのシャフト2321と、シャフト2321を回転するためのモータ2322と、を有する。モータ2322の駆動により、ワイヤー2315が引っ張られると、第1アーム2303は回転軸2304を中心にして時計回りに回転される。このとき、ギヤ2309とギヤ2311が噛み合わされていることにより、第2アームは回転軸2306を中心にして反時計回りに回転される。これにより、2つのクランプピン230a及び230bが連動して閉じられ、リムRILが2つのクランプピン230a及び230bによってクランプされる。
【0021】
右リムRIRの上側をクランプするために、第1スライダー102の右側に配置されたクランプ機構は、上記のクランプ機構2300の左右を反転した構成である。また、左リムRIL及び右リムRIRの下側をクランプするために、第1スライダー102の左側及び右側の2箇所に配置されたクランプ機構は、第1スライダー102に配置されたクランプ機構2300に対して、縦方向が反転されたものと同じである。そのため、他のクランプ機構の説明は省略する。なお、モータ2322及びシャフト2321は、4箇所のクランプ機構2300にそれぞれ配置されている構成であっても良いが、4箇所のクランプ機構2300において共通で使用される構成であっても良い。何れの場合も、4箇所のクランプピン230a及び230bが同時に開閉されるように構成されている。
【0022】
次に、測定ユニット200の構成を簡単に説明する。図4A及び図4Bは測定ユニット200の概略構成図である。測定ユニット200は、測定子281をリムの溝に沿って移動するための移動ユニット210と、測定子281の移動位置を検知する検知ユニット285と、を備える。
【0023】
移動ユニット210は、この実施例では、水平方向(XY方向)に伸展した方形状の枠を持つベース部211と、リムRIL,RIRの溝に挿入される測定子281が上端に取り付けられた測定軸282を保持する測定子保持ユニット250と、を備え、測定子保持ユニット250をリムの動径方向(X及びY方向)と、動径方向に対して垂直な方向(Z方向)と、に移動させる。ベース部211は、フレーム保持ユニット100の下に配置されている。移動ユニット210は、さらに、測定子保持ユニット250をY方向に移動するY移動ユニット230と、Y移動ユニット230をX方向に移動するX移動ユニット240と、測定子保持ユニット250をZ方向に移動するZ移動ユニット220と、を有する。Y移動ユニット230は、Y方向に延びるガイドレールを備え、モータ235の駆動によりガイドレールに沿って測定子保持ユニット250をY方向に移動させる。X移動ユニット240は、X方向に延びるガイドレール241を備え、モータ245の駆動によってY移動ユニット230をX方向に移動させる。
【0024】
Z移動ユニット220は、Y移動ユニット230に取り付けられ、モータ225の駆動により、Z方向の延びるガイドレール221に沿って測定子保持ユニット250をZ方向に移動させる。両リムの測定時に、測定子保持ユニット250は、X移動ユニット240によって左リムRIL及び右リムRIRの両方を測定可能に、左右方向であるX方向に移動される。
【0025】
測定子保持ユニット250は、Z方向に延びる中心軸LOの軸回りに測定子軸282を回転する回転ユニット260を有する。回転ユニット260は、測定子軸282が取り付けられた回転ベース251と、回転ベース251を中心軸LOの軸回りに回転するモータ265を有する。また、測定子軸282は、測定子281の先端方向である横方向に移動可能(傾斜可能)に、回転ベース251に保持されている。なお、測定子保持ユニット250は、測定子281の先端をリムRIL(RIR)の溝に押し当てる測定圧を付与するための測定圧付与機構(図示を略す)を備える。
【0026】
測定ユニット200は、リムの溝に沿って移動される測定子281の位置を検知する検知ユニット285を備える。検知ユニット285は、検知器であるエンコーダ286及びエンコーダ288を備える。測定子281の動径方向の移動位置はエンコーダ286により検知される。また、測定子軸282はZ方向に移動可能に、回転ベース251に保持されている。測定子281のZ方向の移動位置はエンコーダ288により検知される。なお、本実施例では、エンコーダ286及びエンコーダ288は、測定子保持ユニット250に対する測定子281の動径方向及びZ方向の位置を検知するために利用されている。検知ユニット285は、測定子保持ユニット250の動径方向の移動位置を検知する検知器として、モータ245、モータ235及びモータ265の駆動情報を得る制御部50を含む。また、検知ユニット285は、測定子保持ユニット250のZ方向の移動位置を検知する検知器として、モータ225の駆動情報を得る制御部50を含む。
【0027】
制御部50は、エンコーダ286、288と、各モータ225、235、245、255、265と、に接続されている。また、制御部50は、4箇所に配置されたモータ2322、スイッチ部4、パネル部3、測定データを記憶するメモリ51、通信ユニット52等が接続されている。通信ユニット52は、外部コンピュータ又は眼鏡レンズ加工装置等の外部接続装置1000等に接続され、信号入力ユニット及びデータ出力ユニットの機能を兼ねる。制御部50は、検知ユニット285によって得られた左右リムのそれぞれの3次元形状に基づいて、両リムの幾何中心間距離FPD、鼻幅DBL(右リムの鼻側端と左リムの鼻側端との間の距離)、等の関連データを演算する機能を兼ねる演算部として機能する。
【0028】
次に、上記の構成を持つ装置の動作を説明する。
<両リム支持トレースモード>
初めに、両リム支持トレースモードが設定された場合を説明する。眼鏡フレームの反りが小さく、動径方向に垂直な方向のリムの距離(高さ)が測定許容範囲にあるフレームの場合には、通常、両リム支持トレースモードによる測定が可能である。この場合は、操作者は、スイッチ4aによって両リム支持トレースモードを設定する。両リム支持トレースモードでは、左右リムが連続的に測定されることにより、左右リムのそれぞれの三次元形状、左リムの幾何中心と右リムの幾何中心との距離FPD、左リムと右リムとの鼻側の距離である鼻幅DBL、左右のリムの反り角、等の左右リムの相互の位置関係データが得られる。
【0029】
図2のように、操作者は、眼鏡フレームFを第1スライダー102と第2スライダー103との間に挟み、図5のように、左リムRIL及び右リムRIRのそれぞれの上側及び下側をクランプピン230a,230bでクランプさせることにより、眼鏡フレームFをフレーム保持ユニット100に保持させる。
【0030】
フレーム保持ユニット100への眼鏡フレームFの保持完了後、スイッチ4aが押され、両リム支持トレースモードの測定開始信号が入力されると、制御部50は、測定ユニット200の駆動を制御し、右リム及び左リムの全周形状を測定ユニット200に測定させる。制御部50は、初めに右リムRIRの形状を測定するために、測定ユニット200の駆動を制御し、所定の初期位置に位置する測定子281を移動させ、リムRIRにおける所定の測定開始位置に挿入する。本実施例では、測定子281のXY方向の初期位置は、右リムRIR側の位置COR(図2参照)に設定されている。位置CORのX方向は、Y方向の中心である中心線FL上である。位置CORのY方向は、右リムRIRの下側をクランプするためのクランプピン230a,230bが配置された位置である。両リム支持トレースモードでは、例えば、左右リムの一方である右リムRIRの測定が初めに実行される。制御部50は、初期位置CORでは、測定子281の先端方向が右リムRIRの下側のクランプピン230a,230bに向くように回転ユニット260を回転させる。続いて、制御部50は、移動ユニット210の駆動を制御し、初期位置CORに置かれた測定子281がリムに接触するように測定子保持ユニット250(測定子281)をリム側に移動させる。測定子281がリムの溝に接触したことは、エンコーダ286によって検知される。
【0031】
制御部50は、右リムRIRの下側のクランプピン230a,230bに位置された測定子281を右リムRIRの溝に沿って移動させる。このときの測定子281の移動方向は、右リムRIRの耳側又は鼻側に向かう方向である。本装置の測定ユニット200の構成例では、リムの動径方向の測定時、制御部50は、測定開始後(測定済み)の動径情報に基づいてリムの未測定部分の動径変化を予測し、未測定部分の動径変化に沿って測定子281の先端が移動するように測定子保持ユニット250を移動させるXY位置を決定し、決定したXY位置に従って移動ユニット210の各モータの駆動を制御する。これにより、リムの変化に対して測定子281が滑らかに追従され、リムの動径を精度良く測定できる。また、リムの垂直方向の測定時、制御部50は測定開始後(測定済み)のZ方向情報に基づいてリムの未測定部分のZ位置変化を予測し、未測定部分のZ位置変化に沿って測定子281の先端が移動するように、測定子保持ユニット250を移動させるためのZ位置を決定し、Z移動ユニット220(モータ225)の駆動を制御する。これにより、Z方向の測定においても、リムの変化に対して測定子281が滑らかに追従され、リムのZ位置を精度良く測定できる。また、リムのZ位置が高くなるに従って、制御部50は、測定子軸282の傾斜角(測定子281の先端方向に対して反対方向の傾斜角)が大きくなるように、移動ユニット210を制御する。これにより、高カーブフレームの測定時に測定子281がリムのヤゲン溝から外れる可能性を低減して測定できる。
【0032】
右リムRIRの全周に沿って測定子281が移動されることにより、右リムRIRの3次元形状が検知ユニット285によって測定される。右リムRIRの動径方向のデータは、エンコーダ286の検知結果と、X移動ユニット240及びY移動ユニット230の駆動情報と、回転ベース251の回転情報と、に基づいて得られる。動径方向に対する垂直方向(Z方向)の位置データは、エンコーダ288の検知結果と、Z移動ユニット220の駆動情報と、に基づいて得られる。なお、測定子281の位置を検知する機構としては、動径方向及び垂直方向をそれぞれ検知する検知器を設けた構成であれば、本件の構成に限られない。
【0033】
右リムRIRの測定終了後、制御部50は、右リムRIRの溝から測定子281を離脱し、測定子281を初期位置CORに戻すように移動ユニット210の駆動を制御する。続いて、制御部50は、左リムRILの形状を測定するために、移動ユニット210の駆動を制御し、左リムRILの測定用に設定された初期位置COLに測定子281を移動する。そして、制御部50は、移動ユニット210の駆動を制御し、リムRILにおける所定の測定開始位置に測定子281を挿入する。左リムRILの測定開始位置は、クランプピン230a,230bの位置である。右リムRIRの測定時と同様に、制御部50は、リムRILの溝に挿入された測定子281がクランプピン230a,230bのクランプ位置から耳側に向かうように、左リムRILの溝に沿って移動させる。
【0034】
左リムRILの全周に沿って測定子281が移動されることにより、右リムRIRの測定と同様に、左リムRILの3次元形状が検知ユニット285によって測定される。
【0035】
図6は、両リム支持トレースモードで得られた測定結果の例である。図6において、F3DR1は検知ユニット285の検知結果に基づいて得られた右リムRIRの3次元形状データであり、F3DL1は左リムRILの3次元形状データである。FTR1は右リムRIRの2次元玉型(動径)データであり、FTL1は左リムRILの2次元玉型(動径)データであり、それぞれの動径をXYの直交軸データで表したものである。玉型データFTR1及びFTL1は、それぞれ3次元形状F3DR1及びF3DL1をフレームFの正面方向のXY平面に投影した形状でもある。
【0036】
右リムRIRの玉型FTR1において、X方向の耳側端(図6上の最も右側)の点をAR、X方向の鼻側端(図6上の最も左側)の点をBR、Y方向の上端の点をCR、Y方向の下端の点をDRとし、これらの点AR・BR・CR・DRの幾何中心(ボクシング中心)をFCRとする。この幾何中心FCRを通るX方向のラインをデータムラインDLとする。右リムRIRの三次元形状データF3DR1について、データムラインDL上に位置するX方向の鼻側及び耳側の点をそれぞれV1R及びV2Rとする。点V1Rと点V2Rを結ぶ線分をTARとし、線分TARとX軸方向とが成す角度αR1とする。この角度αR1が右リムRIRのフレーム反り角度として算出される。
【0037】
左リムRILについても、右リムRIRと同様な考え方の演算により、左リムRILの玉型FTL1における幾何中心FCL、左リムRILのフレーム反り角度αL1が算出される。なお、フレーム(リム)の反り角度としては、角度αR1と角度αL1との平均値α1として求めることができる。なお、図6において、点BLは、左リムRILの玉型FTL1において、X方向の鼻側端(図6上のFTL1の最も右側)の点である。その他の右リムRIRに対する左リムRILの同一要素には、右リムRIRに使用されている各符号の「R」を「L」に書き直し、その説明は省略する。
【0038】
幾何中心間距離FPDは、右リムRIRの中心FCRと左リムRILの中心FCLとのX方向の座標位置の差によって求められる。右リムRIRの測定基準位置(COR)と左リムRILの測定基準位置(COL)との位置関係によって、玉型FTR1と玉型FTL1との左右方向(X方向)の位置関係も求められる。また、右リムRIRの左リムRILとの鼻側の距離である鼻幅DBLは、玉型FTRの鼻側端の点BRと、玉型FTL1の鼻側端の点BLと、の間の距離として求められる。また、眼鏡レンズの加工データの基礎として使用するために、リムRIR及びRILのそれぞれの3次元形状データに基づいて右リムRIRの溝の3次元周長値FN3DR1、左リムRIRの溝の3次元周長値FN3DL1が制御部50によって求められる。
【0039】
求められた玉型データ(FTR1とFTL1の両方、又は一方)、幾何中心間距離FPD、フレーム反り角度α1(αR1、αL1)、鼻幅DBL、周長値のデータは、メモリ51に記憶される。これらのデータは、パネル部3のデータ転送スイッチの信号が入力されるか、又は通信ユニット52に接続された外部コンピュータ、眼鏡レンズ加工装置等の外部接続装置1000からのデータ転送の要求信号が入力されると、通信ユニット52から外部接続装置1000に出力される。通信ユニット52は、信号入力ユニット及びデータ出力ユニットの機能を有する。
【0040】
なお、測定ユニット200によって測定された玉型(FTR1、FTL1)は、眼鏡フレームFの右リム及び左リムを所定方向(例えば、正面方向)に投影したときの形状として得られる。眼鏡レンズの周縁加工として使用するときの玉型として、このままであっても良いが、好ましくは、X方向のフレームの反り角度(αR1、αL1)に応じて補正した形状データとする。例えば、制御部50は、右リムRIRの形状について、データムラインDL上の点V1RとV2Rとを結ぶ線分TARの垂直二等分線の方向を新たなz方向とし、右リムの3次元形状データF3DR1を新たなz方向に直交するxy平面に投影した形状として求め直す。これにより、眼鏡レンズの周縁加工の誤差が少なくなる。左リムRILについて同様である。さらに好ましくは、玉型形状を得る場合に、Y方向のフレームの反り角度に応じて補正した形状とする。その演算は、X方向のフレームの反り角度を考慮した補正と同様な方法で行える。
【0041】
次に、眼鏡フレームFが高カーブフレームであり、フレーム(リム)の反りが大きく、測定子がリムから外れてしまう場合、あるいは、動径方向に対して垂直な方向(Z方向)のリム位置が測定許容範囲から外れている場合、等における測定を説明する。眼鏡フレーム(リム)の反りが大きく、両リム支持トレースモードではリムの溝の反り方向と測定子の先端が向く角度が大きく乖離すると、測定子が溝から外れてしまう測定エラーとなる。また、両リム支持トレースモードではリムのZ方向の位置の変化が大きい場合には、測定許容範囲を外れて測定エラーとなる。このような測定エラーの場合には、右リム支持トレースモード、左リム支持トレースモードに加え、鼻側部分トレースモードの設定による測定を行う。鼻側部分トレースモードの測定を行う場合は、操作者はスイッチ3aを操作し、その後の鼻側部分トレースモード、右リム支持トレースモード及び左リム支持トレースモードの各測定データをセットとして対応付けてメモリ51に記憶させるための指定信号を入力する。
<鼻側部分トレースモード>
鼻側部分トレースモードについて説明する。操作者は、両リム支持トレースモードと同様に、眼鏡フレームFの左右リムをクランプピン230a,230bでクランプし、眼鏡フレームFの両リムが保持ユニット100によって保持された状態とする。鼻側部分トレースモードの場合も、眼鏡フレームFの左右リムの保持方法は、図5の両リム支持トレースモードと同様であるので、その図示は省略する。
【0042】
スイッチ4dによって鼻側部分トレースモードが設定され、その測定開始信号が入力されると、制御部50は、右リムRIRの鼻側端BR2を含む所定範囲の鼻側部分を部分的に測定ユニット200に測定させた後、続いて、左リムRILの鼻側端BL2を含む所定範囲の鼻側部分を部分的に測定ユニット200に測定させ、該測定によって得られた測定結果に基づき、左右リム形状の相互の位置関係データとして、左リムの鼻側端BR2と右リムの鼻側端BL2との間の鼻幅データDBLを求める。
【0043】
図7は、鼻側部分トレースモードで得られた測定結果の例である。図7において、実線で示されるF3DR2は右リムRIRの部分的な3次元形状データであり、実線で示されるF3DL2は左リムRILの部分的な3次元形状データである。実線で示されるFTR2は右リムRIRの部分的な2次元玉型(動径)データであり、実線で示されるFTL2は左リムRILの部分的な2次元玉型(動径)データである。図示の方法は、図6の場合と同様である。
【0044】
制御部50は、例えば、両リム支持トレースモードの場合と同様に、右リムRIRの下側のクランプピン230a,230bの位置を測定開始位置とするように、移動ユニット210の駆動を制御し、測定子281を測定開始位置PmR1に移動する。その後、制御部50は、測定子281が右リムRIRの鼻側に向かうように移動ユニット210の駆動を制御する。そして、測定開始位置PmR1に対して180度反対側の位置PmR2まで測定子281が移動したら、右リムRIRの測定を終了する。位置PmR1から180度反対側の位置PmR2までの間に鼻側端BR2が位置するので、鼻側端BR2を含む所定結果が得られる。
【0045】
右リムRIRの測定終了後、続いて、制御部50は、左リムRILの測定用に設定された初期位置COLに測定子281を移動した後、右リムRIRの下側のクランプピン230a,230bの位置PmL1を測定開始位置とするように、測定子281を測定開始位置PmL1に移動する。制御部50は、右リムRIRの測定時と同様に、測定子281が左リムRILの鼻側に向かうように移動ユニット210の駆動を制御し、位置PmR1に対して180度反対側の位置PmL2まで測定子281が移動し、左リムRILの測定を終了する。位置PmL1から位置PmL2までの間に鼻側端BL2が位置するので、鼻側端BL2を含む所定結果が得られる。
【0046】
以上により、鼻側端BR2を含む右リムRIRの所定範囲の鼻側部分と、鼻側端BL2を含む左リムRILの所定範囲の鼻側部分と、が測定される。両リム支持トレースモードでは測定エラーとなった高カーブのフレームFであっても、図7のような鼻側部分の範囲では、測定子281がリムの溝から外れることなく、Z方向のリムの変動も小さいため、高確率で測定可能にされる。なお、鼻側端BR2を含む鼻側部分の測定範囲は、所定の測定開始位置(PmR1,PmL1)から、それぞれ鼻側端BR2,BL2が得られるまでの範囲であっても良い。右リムの鼻側端BR2の位置は、右リムRIRの動径データFTR2の内で、X方向の変動が増加から減少に転じた点として得ることができる。左リムの鼻側端BL2の位置も同様な方法により得られる。
【0047】
右リムRIRの鼻側端BR2を含む鼻側部分の三次元形状データF3DR2と、左リムRILの鼻側端BL2を含む鼻側部分の三次元形状データF3DL2と、が得られると、この測定結果に基づいて鼻幅DBLが求められる。例えば、右リムRIRの測定時の初期位置CORと、左リムRILの測定時の初期位置COLと、は既知であるので、初期位置CORを基準にして三次元形状データF3DR2と、初期位置COLを基準にして三次元形状データF3DL2と、の位置関係が得られることにより、鼻幅DBLが得られる。鼻側部分トレースモードで得られた三次元形状データF3DR2、F3DL2及び鼻幅DBLのデータは、メモリ51に記憶される。
<片リム支持トレースモード>
両リム支持トレースモードでは測定エラーとなった場合には、右リムRIR及び左リムRILのそれぞれの3次元形状データ、玉型データ等を得るために、操作者は、片リム支持トレースモードを設定し、左右リムの少なくとも一方の全周の測定を行う。好ましくは、右リム支持トレースモード及び左リム支持トレースモードによって左右リムのそれぞれの全周の測定を行う。以下では、右リム支持トレースモード及び左リム支持トレースモードが設定された場合を説明する。
【0048】
右リム支持トレースモードの測定を開始するために、図8に示されるように、操作者は、眼鏡フレームFの左側のツル等を手で保持し、右リムRIRの左右方向ができるだけ水平になるように、右リムRIRを第1スライダー102と第2スライダー103との間に挟み、右リムRIRの上側及び下側を右リム用のクランプピン230a,230bでクランプさせる。この状態で、スイッチ4bによって右リム支持トレースモードの測定開始信号が入力されると、制御部50は、右リムRIRの全周形状を測定ユニット200に測定させる。右リムRIRの全周の形状が得られると、測定が終了される。測定動作は、両リム支持トレースモードによる右リムRIRの測定と同様であるので、その説明は省略する。
【0049】
右リム支持トレースモードの測定が終了したら、操作者は、フレームFを取り外し、今度は左リムRILの左右方向ができるだけ水平になるように、左リムRILを第1スライダー102と第2スライダー103との間に挟み、左リムRIRの上側及び下側を左リム用のクランプピン230a,230bでクランプさせる。この状態で、スイッチ4cによって左リム支持トレースモードの測定開始信号が入力されると、制御部50は、左リムRILの全周形状を測定ユニット200に測定させる。
【0050】
図9Aは、右リム支持トレースモードで得られた測定結果の例である。図9Aにおいて、F3DR3は右リムRIRの全周の3次元形状データであり、FTR3は3次元形状データF3DR3がXY平面に投影された2次元玉型(動径)データである。図9Bは、左リム支持トレースモードで得られた測定結果の例である。図9Bにおいて、F3DL3は左リムRILの全周の3次元形状データであり、FTL3は3次元形状データF3DL3がXY平面に投影された2次元玉型(動径)データである。図示の方法は、図6の場合と同様である。
【0051】
なお、片リム支持トレースモードでは、左右リムの一方の全周の形状データが得られた時点で測定を終了するように設定されている場合、得られた片方の形状データの左右を反転する処理(ミラー反転処理)によって、他方の形状データが得られる。この演算は制御部50によって行われる。
【0052】
鼻側部分トレースモード、片リム支持トレースモード(右リム支持トレースモード及び左リム支持トレースモード)の測定によって得られた各データは、初めに(又は、各モードの測定終了後に)スイッチ3aの信号が入力されていることにより、同じフレームFのデータのセットであるものとして対応付けられ、メモリ51に記憶される。
【0053】
なお、鼻側部分トレースモード、片リム支持トレースモードの測定実行の順番は何れで良い。
<3次元形状データのマッチング処理>
鼻側部分トレースモード、片リム支持トレースモードで得られたデータのマッチング処理を説明する。スイッチ3bによって「マッチング処理実行」の指令信号が入力されると(又は各モードの測定結果が得られたときに、制御部50が「マッチング処理実行」の指令信号を自動的に発して入力される構成であっても良い)、制御部50は、メモリ51にセットとして記憶されていた各モードの測定データを呼び出し、3次元的なデータのマッチング処理を行う。
【0054】
制御部50は、鼻側部分トレースモードで得られた右リムの部分的な三次元形状データF3DR2を基準にして、片リム支持トレースモードで得られた右リムの三次元形状データF3DR3がマッチングするようにデータF3DR3を移動する演算を行う。同様に、制御部50は、鼻側部分トレースモードで得られた左リムの部分的な三次元形状データF3DL2を基準にして、片リム支持トレースモードで得られた左リムの三次元形状データF3DL3がマッチングするようにデータF3DL3を移動する演算を行う。
【0055】
図10は、マッチング処理の演算例の説明図である。まず、右リムRIRのマッチング処理を説明する。制御部50は、鼻側部分トレースモードで得られた三次元形状データF3DR2の鼻側端BR2の位置を基準にし、右リムRIRの三次元形状データF3DR3における鼻側端BR3の位置が鼻側端BR2の位置に一致するように、三次元形状データF3DR3の全体を移動する。次に、制御部50は、鼻側端BR2の位置に一致させた鼻側端BR3を基準にして、三次元形状データF3DR3をZ方向に任意の角度回転し、そのときの部分的な三次元形状データF3DR2とデータF3DR3とのZ方向の差ΔZRnを、データF3DR2における動径の測定点毎(例えば、初期位置CORを基準にして0.36度毎の測定点)に求める。そして、各点の差ΔZRnの総和が最小となるように、Z方向へのデータF3DR3の回転角度を変えていく。差ΔZRnの総和が最小になったときのデータF3DR3を、マッチング処理後の右リムRIRの三次元形状データF3DR4としてメモリ51に記憶する。
【0056】
三次元形状データF3DR4を求めるに当たっては、好ましくは、部分的なデータF3DR2に対してXY方向におけるマッチング処理を行うことが好ましい。この場合、三次元形状データF3DR3の動径データの差ΔXYRnを求め、各点での差ΔXYRnが最小となるようにデータF3DR3を移動させることにより、三次元形状データF3DR4を求める。
【0057】
左リムRILのマッチング処理についても右リムRIRの場合と同様な方法で行える。すなわち、制御部50は、鼻側部分トレースモードで得られた三次元形状データF3DL2の鼻側端BL2の位置を基準にし、左リムRILの三次元形状データF3DL3における鼻側端BL3の位置が鼻側端BL2の位置に一致するように、三次元形状データF3DL3の全体を移動する。そして、制御部50は、鼻側端BL2の位置に一致させた鼻側端BL3を基準にして、三次元形状データF3DL3をZ方向に回転することにより、部分的なデータF3DL2にデータF3DL3をできるだけマッチングさせ、そのときのデータF3DL3を、マッチング処理後の左リムRILの三次元形状データF3DL4としてメモリ51に記憶する。好ましくは、XY方向におけるマッチング処理を行うことによって、三次元形状データF3DL4を求める。
【0058】
なお、3次元形状データのマッチング処理においては、三次元形状データF3DR3及びF3DL3をY方向に回転する処理を含めると、より一層的確なマッチング処理が行える。その処理は、Z方向の回転の場合と同様に行える。
【0059】
図11は、マッチング処理によって再構築された右リムRIR及び左リムRILのそれぞれの三次元形状データF3DR4及びF3DL4を示す図である。三次元形状データF3DR4及びF3DL4は、図6と同じく、両リム支持トレースモードでの測定結果として見なすことできる。図11において、FTR4は三次元形状データF3DR4をXY平面に投影した2次元玉型(動径)データであり、FTL4は三次元形状データF3DL4をXY平面(所定方向の面)に投影した2次元玉型(動径)データである。
【0060】
両リム支持トレースモードでの測定に相当する三次元形状データF3DR4及びF3DL4が得られれば、通常の両リム支持トレースモードと同様に、三次元形状データF3DR4及びF3DL4に基づき、右リムRIRの反り角度αR4、左リムの反り角度αL4、左右リムの幾何中心間距離FPDがそれぞれ求められる。
【0061】
すなわち、玉型FTR4の幾何中心(ボクシング中心)をFCRとし、幾何中心FCRを通るX方向のラインをデータムラインDLとする。そして、三次元形状データF3DR4について、データムラインDL上に位置するX方向の鼻側の点V1R4と、X方向の耳側の点V2R4と、を結ぶ線分をTAR4とする。線分TAR4とX軸方向とが成す角度αR4が右リムRIRの反り角度として求められる。同じく、玉型FTL4の幾何中心FCLを通るX方向のラインをデータムラインDLとし、三次元形状データF3DL4について、データムラインDL上に位置するX方向の鼻側の点V1L4と、X方向の耳側の点V2L4と、を結ぶ線分をTAL4とする。線分TAL4とX軸方向とが成す角度αL4が左リムRILの反り角度として求められる。フレームFの反り角度は、角度αR4とαL4との平均の反り角度α4として求めても良い。また、鼻側部分トレースモードではフレーム保持ユニット100によって左右リムが均等に保持されている状態であれば、フレームFの反り角度としては、右リムRIRの反り角度αR4及び左リムRILの反り角度αL4の少なくとも一方を求めれば良い。一方のみ反り角度を求めた場合には、他方の反り角度は同じとして見なせば良い。
【0062】
また、幾何中心間距離FPDは、図11上の幾何中心FCRとFCLの間の距離として求められる。なお、鼻幅DBLは、鼻側部分トレースモードの測定結果から得られるが、再構築された三次元形状データF3DR4の鼻側端BR4と、三次元形状データF3DL4の鼻側端BL4と、の間の距離としも求めても良い。なお、左右リムの相互の位置関係データとしての鼻幅DBL及び幾何中心間距離FPDは、眼鏡レンズの周縁加工に際してのレイアウト(玉型に対する眼鏡レンズの光学中心位置の位置関係)を行うために利用される。このためには鼻幅DBL又は幾何中心間距離FPDの一方があれば良いので、制御部50はDBL及びFPDの少なくとも一方を求めることでも良い。
【0063】
また、三次元形状データF3DR4に基づいて右リムRIRの溝の3次元周長値FN3DR4が求められ、三次元形状データF3DL4に基づいて左リムRILの溝の3次元周長値FN3DL4が求められる。
【0064】
各トレースモードの実行及びマッチング処理の実行によって得られた左右リムの相互の位置関係データであるDBL、FPD、反り角度α4(αR4、αL4)、3次元周長値FN3DR4,FN3DL4等はメモリ51に同一フレームのデータとしてセットにして記憶される。そして、パネル部3等によってデータ転送の指令信号が入力されると、同一フレームのデータとしてセットにしてメモリ51に記憶されていたデータは、通信ユニット52から外部接続装置1000に出力される。
【0065】
上記の説明は、好ましい実施例に過ぎず、各種の変容が可能である。例えば、3次元形状データのマッチング処理については、外部接続装置1000で実行されることでも良い。この場合、制御部50は、メモリ51に同一フレームのデータとして記憶された,鼻側部分トレースモードの測定によって得られたデータと、片リム支持トレースモードの測定によって得られた少なくとも左右リムの一方のデータと、をセットとして通信ユニット52から外部接続装置1000に出力すれば良い。左右リムの一方のデータが出力された場合には、その一方のデータの左右を反転処理することにより、他方のデータを得れば良い(例えば、右リムのデータが出力された場合には、右リムのデータを左右反転して左リムのデータを得る)。この場合も、鼻側部分トレースモードの測定によって得られたデータが出力データに含まれていることにより、外部接続装置1000側で左リム形状と右リム形状の相互の位置関係データを得ることが可能になる。
【0066】
また、フレーム(リム)の反り角度を別途得るようにすれば、必ずしも3次元形状データのマッチング処理は必要無い。例えば、フレーム(リム)の反り角度は、特開2007−233009号公報に記載された技術を使用して得ることができる。その技術は、例えば、パネル3(ディスプレイ)の画面上にフレーム(リム)の反り角度を測定するための指標(角度メモリ)を表示し、操作者が画面上にフレーム(リム)を置いて目視でフレームの反り角度を読み取り、読み取った反り角度をパネル3の所定のスイッチで本装置1に入力するものである。そして、入力された反り角度に基づいて右リム支持トレースモード及び左リム支持トレースモードの測定によってそれぞれ得られた3次元形状データF3DR3及びF3DR3を正面方向のXY平面に投影することにより、二次元玉型FTR3,FTL3を求めることができる。鼻側部分トレースモードの測定によって得られた鼻幅DBLのデータがあれば、鼻幅DBLと二次元玉型FTR3,FTL3とによって、幾何中心間距離FPDが求められる。
【0067】
また、フレームの反り角度が別途入力されている場合には、鼻側部分トレースモードの測定によって得られた鼻幅DBLのデータと、これとセットで管理されてメモリ51に記憶された3次元形状データF3DR3及びF3DR3と、を通信ユニット52から外部接続装置1000側に出力しても良い。この場合は、外部接続装置1000側で二次元玉型FTR3,FTL3、幾何中心間距離FPD等が求められる。
【0068】
また、鼻側部分トレースモードの測定の必要性を操作者が判断するのでは無く、制御部50が判断しても良い。すなわち、両リム支持トレースモードの測定を開始し、その測定が前述のような要因等によって測定エラーとなった場合には、制御部50が鼻側部分トレースモードの測定実施を促すメッセージをパネル3の画面に表示させる。さらに、鼻側部分トレースモードの測定終了後には、制御部50が片リム支持トレースモード(好ましくは、右リム支持トレースモード及び左リム支持トレースモード)の測定実施を促すメッセージをパネル3の画面に表示させる。これにより、測定に不慣れな操作者であってもスムーズに対応できる。
【0069】
またさらに、両リム支持トレースモードの測定実施が測定エラーとなった場合には、フレームの左右リムがフレーム保持ユニット100に保持された状態で、制御部50が自動的に鼻側部分トレースモードの測定開始信号を発し(入力し)、そのまま鼻側部分トレースモードの測定を実行するようにすると、操作者の手間が省けて都合が良い。鼻側部分トレースモードの測定終了後には、制御部50が片リム支持トレースモードの測定実施を促すメッセージをパネル3の画面に表示させる。
【0070】
また、鼻幅DBL及び幾何中心間距離FPDの表現形式としては、それぞれ左右を中心にした片側の値として演算され、出力される場合も含まれる。例えば、鼻幅DBLについては、右リム及び左リムの左右中心を基準とした値で、1/2DBLとして表現される。
【0071】
以上のように、本件発明は種々の変容が可能であり、これらも本件発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】眼鏡枠形状測定装置の外観略図である。
図2】フレーム保持ユニットの上面図である
図3】リムをクランプするためのクランプ機構の概略構成図である。
図4A】測定ユニットの概略構成図である。
図4B】測定ユニットの概略構成図である。
図5】両リム支持トレースモードで、フレームFをフレーム保持ユニットに保持させた状態を示す図である。
図6】両リム支持トレースモードで得られた測定結果の例である
図7】鼻側部分トレースモードで得られた測定結果の例である。
図8】片リム支持トレースモードで、フレームFをフレーム保持ユニットに保持させた状態を示す図である。
図9A】右リム支持トレースモードで得られた測定結果の例である。
図9B】左リム支持トレースモードで得られた測定結果の例である。
図10】マッチング処理の演算例の説明図である。
図11】マッチング処理によって再構築された右リム及び左リムのそれぞれの三次元形状データを示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 眼鏡枠形状測定装置
3 パネル部
4 スイッチ部
50 制御部
51 メモリ
52 通信ユニット
100フレーム保持ユニット
200 測定ユニット
281 測定子
285 検知ユニット
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11