特許第5983148号(P5983148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5983148磁石積層体の製造方法および磁石積層システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983148
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】磁石積層体の製造方法および磁石積層システム
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20160818BHJP
   H01F 7/02 20060101ALI20160818BHJP
   H02K 1/27 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   H01F41/02 G
   H01F7/02 E
   H02K1/27 501A
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-165916(P2012-165916)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-27100(P2014-27100A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 悟
(72)【発明者】
【氏名】池田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】松苗 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】迫 道大
(72)【発明者】
【氏名】古屋 崇
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−233346(JP,A)
【文献】 特開2011−78268(JP,A)
【文献】 特開2012−125075(JP,A)
【文献】 特開昭62−244256(JP,A)
【文献】 特開2003−267550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/00−7/02、41/00−41/04
H02K 1/17、1/27、15/00−15/16
B65G 57/00−57/32、60/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石片が積層された構成を有する磁石積層体の製造方法であって、
積層される前の未着磁の一の前記磁石片につき、他の前記磁石片に積層されたとき当該磁石片同士が並ぶ高さ方向と直交する方向に離隔する両端部における、前記高さ方向の大きさを検出する検出工程と、
当該検出工程後、前記一の磁石片を少なくとも一つの他の未着磁の前記磁石片に積層する積層工程と、を有し、
当該積層工程において、前記一の磁石片の前記両端部のうち前記検出工程で検出される前記高さ方向の大きさが小さい一方の端部は、前記少なくとも一つの他の未着磁の磁石片における、前記高さ方向と直交する方向に離隔した両端部のうちの前記高さ方向の大きさが大きい端部の上に配置され、かつ、
前記一の磁石片の前記両端部のうち前記検出工程で検出される前記高さ方向の大きさが大きい他方の端部は、前記少なくとも一つの他の未着磁の磁石片における前記両端部のうち、前記高さ方向の大きさが小さい端部の上に配置される、磁石積層体の製造方法。
【請求項2】
前記検出工程において、前記高さ方向から見た前記一の磁石片の反りの方向が検出され、
前記積層工程において、前記一の磁石片は、前記反りの方向を前記少なくとも一つの他の未着磁の磁石片の前記高さ方向から見た反りの方向に揃えられて積層される、請求項1に記載の磁石積層体の製造方法。
【請求項3】
前記積層工程後、前記磁石積層体における前記高さ方向の端部を機械加工によって除去する加工工程を有する、請求項1または請求項2に記載の磁石積層体の製造方法。
【請求項4】
前記加工工程において、複数の前記磁石積層体の前記端部が同時に除去される、請求項3に記載の磁石積層体の製造方法。
【請求項5】
前記積層工程において、前記一の磁石片および前記少なくとも一つの他の未着磁の磁石片のうちの少なくとも一方における当該磁石片同士が重なり合う面に接着剤が塗布され、
前記積層工程後、前記磁石積層体を前記高さ方向から押圧しつつ加熱して前記磁石片同士を接着する接着工程を有する、請求項1〜請求項4のうちのいずれか1つに記載の磁石積層体の製造方法。
【請求項6】
未着磁の一の磁石片を少なくとも一つの他の未着磁の磁石片に積層する積層装置と、
積層される前の未着磁の一の前記磁石片につき、他の前記磁石片に積層されたとき当該磁石片同士が並ぶ高さ方向と直交する方向に離隔する両端部における、前記高さ方向の大きさを検出する検出部と、
前記積層装置および前記検出部に電気的に接続する制御部と、を有し、
当該制御部は、前記一の磁石片の前記両端部のうち前記検出部によって検出される前記高さ方向の大きさが小さい一方の端部が、前記少なくとも一つの他の未着磁の磁石片における、前記高さ方向と直交する方向に離隔した両端部のうちの前記高さ方向の大きさが大きい端部の上に配置され、かつ、
前記一の磁石片の前記両端部のうち前記検出部によって検出される前記高さ方向の大きさが大きい他方の端部が、前記少なくとも一つの他の未着磁の磁石片における前記両端部のうち、前記高さ方向の大きさが小さい端部の上に配置されるように、前記積層装置の動作を制御する、磁石積層システム。
【請求項7】
前記検出部は、前記高さ方向から見た前記一の磁石片の反りの方向を検出し、
前記制御部は、前記一の磁石片が前記反りの方向を前記少なくとも一つの他の未着磁の磁石片の前記高さ方向から見た反りの方向に揃えられて積層されるように、前記積層装置の動作を制御する、請求項6に記載の磁石積層システム。
【請求項8】
前記磁石片が積層した磁石積層体における前記高さ方向の端部を機械加工によって除去する加工部を有する、請求項6または請求項7に記載の磁石積層システム。
【請求項9】
前記加工部は複数の前記磁石積層体の前記端部を同時に除去する、請求項8に記載の磁石積層システム。
【請求項10】
前記一の磁石片および前記少なくとも一つの他の未着磁の磁石片のうちの少なくとも一方における当該磁石片同士が重なり合う面に接着剤を吐出する接着剤吐出部と、
前記磁石片が積層した磁石積層体を前記高さ方向から押圧する押圧部と、
前記磁石積層体を加熱する加熱部と、を有する、請求項6〜請求項9のうちのいずれか1つに記載の磁石積層システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石積層体の製造方法および磁石積層システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等の駆動用モータに用いられる内部磁石埋込型同期モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Moter)として、分割された複数の磁石片が積層されてロータコアに埋め込まれた例えば特許文献1に開示されているような構成を有するものがある。磁石片は、焼結、鍛造等の工程を経ただけの粗材のままでは寸法ばらつきが大きい。このため磁石片の表面に機械加工が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−252833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら複数の磁石片すべてに機械加工が施されるため歩留まりが悪く、故にコスト増加の要因となる。一方、機械加工なしの磁石片、または荒加工のみが施された磁石片が積層されることによって、歩留まり向上が期待できるが、寸法ばらつきが大きい。そのため磁石片を無作為に積層すると寸法誤差が偏って積み上がるまたは磁石片の間に隙間が生じて磁石積層体の高さが増加し、その結果、高さ公差を満たせず磁石片がロータコアからはみ出す虞がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、歩留まり向上およびロータコアからの磁石片のはみ出し防止を図り得る磁石積層体の製造方法および磁石積層システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の磁石積層体の製造方法は、積層される前の未着磁の一の磁石片につき、他の磁石片に積層されたとき磁石片同士が並ぶ高さ方向と直交する方向に離隔する両端部における、高さ方向の大きさを検出する検出工程を有する。また、本発明の磁石積層体の製造方法は、検出工程後、一の磁石片を少なくとも一つの他の未着磁の磁石片に積層する積層工程を有する。積層工程では、一の磁石片の前記両端部のうち検出工程で検出される高さ方向の大きさが小さい一方の端部が、前記少なくとも一つの他の未着磁の磁石片における、高さ方向と直交する方向に離隔した両端部のうちの高さ方向の大きさが大きい端部の上に配置される。また、積層工程では、一の磁石片の前記両端部のうち検出工程で検出される高さ方向の大きさが大きい他方の端部は、前記少なくとも一つの他の未着磁の磁石片における前記両端部のうち、高さ方向の大きさが小さい端部の上に配置される。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の磁石積層システムは、未着磁の一の磁石片を少なくとも一つの他の未着磁の磁石片に積層する積層装置を有する。本発明の磁石積層システムは、積層される前の未着磁の一の磁石片につき、他の磁石片に積層されたとき当該磁石片同士が並ぶ高さ方向と直交する方向に離隔する両端部における、前記高さ方向の大きさを検出する検出部を有する。本発明の磁石積層システムは、積層装置および検出部に電気的に接続する制御部を有する。制御部が積層装置の動作を制御することによって、一の磁石片の前記両端部のうち検出部によって検出される高さ方向の大きさが小さい一方の端部は、前記少なくとも一つの他の未着磁の磁石片における、高さ方向と直交する方向に離隔した両端部のうちの高さ方向の大きさが大きい端部の上に配置される。また、一の磁石片の前記両端部のうち検出部によって検出される高さ方向の大きさが大きい他方の端部は、前記少なくとも一つの他の未着磁の磁石片における前記両端部のうち、高さ方向の大きさが小さい端部の上に配置される。
【発明の効果】
【0008】
上記のような磁石積層体の製造方法および磁石積層システムによれば、磁石片は、磁石片が積層されて並ぶ高さ方向と直交する方向に離隔する両端部の配置が調整されながら積層される。このため、両端部のうちの一方の側で寸法誤差が大きく偏って積み上がることおよび磁石片同士の間に隙間が発生することが防止され、その結果、磁石片の積層高さの増加が抑制される。このように本発明によれば磁石片の機械加工によらず積層高さの増加を抑制でき、従って本発明は歩留まり向上およびロータコアからの磁石片のはみ出し防止を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の磁石積層システムの概略構成を示す図である。
図2図1の矢印IIから見た矢視図である。
図3】ピッキングロボットが磁石片を積層する際の様子を示す図である。
図4】磁石片の斜視図である。
図5】実施形態の磁石積層体の製造方法のフローチャートである。
図6】磁石片が積層される様子を示す図である。
図7】磁石片が積層される様子を示す図である。
図8】ピッキングロボットが磁石片の向きを調整する際の様子を示す図である。
図9図8の矢印IXから見た矢視図である。
図10】ピッキングロボットが磁石片の向きを調整する際の様子を示す図である。
図11】ピッキングロボットが磁石片の向きを調整する際の様子を示す図である。
図12】磁石片に接着剤を塗布する際の様子を示す図である。
図13】積層された磁石片がパンチによって押圧される様子を示す図である。
図14】接着剤が塗布された磁石積層体を示す図である。
図15】磁石積層体がロータコアのスロットに挿入される際の様子を示す図である。
図16図15の矢印XVIから見た矢視図である。
図17】磁石積層体の端部が研削される際の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる。
【0011】
図1および図2に示すように、実施形態のロータコア磁石積層システム100は、未着磁の磁石片10を積層するピッキングロボット110(積層装置)と、磁石片10を撮影するカメラ120、121(検出部)と、ピッキングロボット110およびカメラ120、121に電気的に接続する制御部130と、を含む。
【0012】
ロータコア磁石積層システム100は、接着剤を吐出するノズル140(接着剤吐出部)と、積層された磁石片10を押圧するパンチ150(押圧部)と、積層された磁石片10を加熱するヒータ160(加熱部)と、を含む。ロータコア磁石積層システム100は、積層された磁石片10を研削する円盤砥石170(加工部)を含む。
【0013】
ノズル140は、例えば接着剤を供給する圧送ポンプに接続する。パンチ150は、例えば油圧シリンダ等の付勢手段に接続する。ヒータ160は、例えば温風を吹きつけるまたは赤外線を照射することによって積層された磁石片10を加熱する。
【0014】
ピッキングロボット110は、磁石片10を着脱可能な吸盤112と、吸盤112が先端に備えられたロボットアーム111と、を有する。カメラ120はロボットアーム111の先端に備えられる。ピッキングロボット110は、ロボットアーム111を動かし、ベルトコンベア190によって搬送されてきた未着磁の磁石片10に吸盤112を押し付ける。吸盤112が磁石片10を吸着する。
【0015】
図3に示すように、ピッキングロボット110は、ロボットアーム111を動かし、磁石片10を収容可能な容器180へ吸着した磁石片10を搬送する。ピッキングロボット110は、容器180の上で磁石片10の吸着を解除して磁石片10を放す。吸盤112から離脱した磁石片10は容器180内に収まり積層される。容器180は、好ましくは金属製である。
【0016】
制御部130は、ロボットアーム111の動きおよび吸盤112による磁石片10の着脱を制御する。制御部130は、例えば、磁石片10と吸盤112との間を負圧にする真空ポンプおよび磁石片10と吸盤112との間の負圧状態を開放する開放弁を制御することによって、吸盤112による磁石片10の着脱を制御する。制御部130はカメラ120、121によって撮影される画像を処理する。制御部130は、例えばパーソナルコンピュータまたはエンジニアリングワークステーション等のコンピュータである。
【0017】
図4に示すように、磁石片10は薄肉形状を有する。厚み方向と直交する磁石片10の断面は略矩形形状を有する。この略矩形形状の断面の短辺を構成する端部11、12における、厚み方向と直交する方向の寸法L1、L2(両端部の高さ方向の大きさ)は、寸法誤差のため互いに異なる。磁石片10は反りを有する。磁石片10の反りによって、厚み方向と直交する略矩形形状の断面の長辺を構成する端部13は緩やかに湾曲している。
【0018】
次に実施形態のロータコア磁石積層体の製造方法について述べる。
【0019】
図5に示すように、実施形態のロータコア磁石積層体の製造方法は、磁性体の粉末を焼結する焼結工程と、焼結工程後、焼結された材料から各磁石片10を形成する磁石片形成工程と、を有する。
【0020】
ロータコア磁石積層体の製造方法は、磁石片形成工程後、磁石片10の寸法L1、L2を検出する検出工程と、検出工程後、検出結果に基づいて磁石片10を積層する積層工程と、を有する。検出工程および積層工程を繰り返すことによって所定の数の磁石片10が積層された後、ロータコア磁石積層体の製造方法は、積層した磁石片10同士を接着する接着工程を有する。
【0021】
検出工程および積層工程の繰り返しによる磁石片10の積層、ならびに接着工程による磁石片10同士の接着によって、磁石片10が積層した磁石積層体が作製される。これらの工程を繰り返して所定の数の磁石積層体が作製された後、ロータコア磁石積層体の製造方法は、磁石積層体を機械加工する加工工程を有する。
【0022】
焼結工程では、酸化鉄または希土類等の磁性体の粉末が押し固められたものが、真空焼結炉内において所定温度で所定時間焼結される。磁石片形成工程では、焼結された材料が分割されるとともに寸法精度を出すための加工が施されることによって各磁石片10が形成される。焼結された材料は、例えば超鋼円盤の外周にダイヤモンドチップが付着された工具等を用いた切断、または焼結された材料の表面に形成された溝に力を加えて破断するクラッキングによって分割される。分割された材料に例えば研削等の機械加工または型によって加圧するサイジングを施すことによって、磁石片10の寸法精度出しを行ってもよい。形成された各磁石片10は、ベルトコンベア190によってピッキングロボット110へ搬送される。
【0023】
また、寸法精度を出すための機械加工またはサイジングを施さず、焼結した材料を分割しただけの磁石片10をピッキングロボット110へ搬送してもよい。または、例えば分割した材料の一部の面だけで寸法精度を出す等の必要最低限の荒加工が施された磁石片10をピッキングロボット110へ搬送してもよい。
【0024】
検出工程では、カメラ120が、ベルトコンベア190に載せられた磁石片10を厚み方向から撮影する。制御部130は、カメラ120が撮影した磁石片10の画像から寸法L1、L2を算出する。制御部130は算出した各磁石片10の寸法L1、L2の大小を判別し、また寸法L1、L2を記憶する。
【0025】
検出工程では、カメラ121が、磁石片10を端部13に対向する方向から撮影する。制御部130は、カメラ121が撮影した画像から磁石片10の反りの方向を算出する。カメラ120、121および制御部130は、磁石片10の端部11、12の寸法L1、L2および磁石片10の反りの方向を検出する検出部を構成する。
【0026】
図6および図7に示すように、積層工程では、磁石片10は、端部13が重なり合いかつ一の磁石片10の端部11、12が他の磁石片10の端部11、12の上に配置されるように積層される。
【0027】
図6に示すように、容器180内に1つの磁石片10が既に収まっている場合、これから積層される一の磁石片10の両端部11、12のうち、小さい寸法L1を有する端部11は、容器180内の1つの他の磁石片10の両端部11、12のうちの大きい寸法L2を有する端部12の上に配置される。
【0028】
また、これから積層される一の磁石片10の両端部11、12のうち、大きい寸法L2を有する端部12は、容器180内の1つの他の磁石片10の両端部11、12のうちの小さい寸法L1を有する端部11の上に配置される。
【0029】
図7に示すように、容器180内に複数の磁石片10が既に積層されている場合、これから積層される一の磁石片10の両端部11、12のうち、小さい寸法L1を有する端部11は、複数の磁石片10が積層した磁石積層体14における高さ方向と直交する方向に離隔した両端部15、16のうちの高さ方向の寸法が大きい端部15の上に配置される。高さ方向とは、積層された磁石片10が並ぶ方向である。
【0030】
また、これから積層される一の磁石片10の両端部11、12のうち、大きい寸法L2を有する端部12は、磁石積層体14における両端部15、16のうちの高さ方向の寸法が小さい端部16の上に配置される。
【0031】
以上のような端部11、12の配置で磁石片10が積層されるように、制御部130は、検出した磁石片10の両端部11、12の寸法L1、L2に基づき、ピッキングロボット110の動きを制御する。
【0032】
例えば、図8に示すように、上記配置となるよう端部11、12の位置を変更するため、制御部130はピッキングロボット110を制御して磁石片10を180°回転させる。磁石片10を180°回転させる位置は、特に限定されず、図8のようにベルトコンベア190の上であってもよいし、容器180の上であってもよい。
【0033】
制御部130は、積層した磁石片10の両端部11、12の配置を記憶する。制御部130は、磁石積層体14の両端部15、16のそれぞれについて磁石片10の端部11、12の寸法L1、L2を足し合わせることによって、端部15の高さ方向の寸法L3、および端部16の高さ方向の寸法L4を算出する。制御部130は、両端部15、16の寸法L3、L4を比較しこれらの大小を判別する。
【0034】
本実施形態と異なり、例えば光を利用した従来公知の測距センサが、容器180内の1つの磁石片10の両端部11、12の寸法L1、L2、または磁石積層体14の両端部15、16の寸法L3、L4を計測してもよい。この場合、測距センサは、容器180の上から、磁石片10の両端部11、12または磁石積層体14の両端部15、16に向かって光を出射するとともに、そこから反射する光を受ける。
【0035】
図9に示すように、積層工程では、これから積層される磁石片10の反りの方向が容器180内の磁石片10の反りの方向に揃えられる。反りの方向とは、図9のような磁石片10の端部13に対向する方向から見た平面視において、湾曲した形状を有する端部13が突き出す(または凹む)方向である。反りの方向が揃えられて磁石片10が積層されるように、制御部130は、検出した磁石片10の反りの方向に基づきピッキングロボット110の動きを制御する。
【0036】
例えば、図10および図11に示すように、これから積層する磁石片10の反りの方向を容器180内の磁石片10の反りの方向に揃えるため、制御部130はロボットアーム111の動きを制御して反りの方向を反転させる。
【0037】
図12に示すように、積層工程では、ノズル140によって接着剤17が容器180内の磁石片10に塗布される。接着剤17は磁石片10の端部13(磁石片同士が重なり合う面)に塗布される。接着剤17は、好ましくは絶縁性を有する。接着剤17として従来公知のものを使用できる。
【0038】
所定の数の磁石片10が積層されると、制御部130はピッキングロボット110の積層動作を停止させる。制御部130は、積層した磁石片10の数を記憶している。作業者は磁石積層体14が収まった容器180をパンチ150の下へ移動させる。
【0039】
図13に示すように、接着工程では、パンチ150が高さ方向から磁石積層体14を押圧しつつ、容器180の外側からヒータ160が磁石積層体14を加熱する。加熱されたときの容器180の温度は例えば180℃である。接着剤17は磁石片10に溶着して磁石片10同士を接着する。
【0040】
接着工程後、作業者は、磁石積層体14を乾燥させて容器180から取り出す。その後、磁石積層体14に所定の磁力を印加することによって磁石積層体14を着磁してもよい。
【0041】
図14図16に示すように、作業者は、作製した磁石積層体14に接着剤18を塗布し、そして磁石積層体14をロータコア30のスロット32に挿入する。複数のスロット32の各々に磁石積層体14が挿入される。ロータコア30は、電磁鋼板31が複数積層された構成を有する。ロータコア30の中央に形成された軸穴33に治具34が挿入されている。
【0042】
図17に示すように、加工工程では、円盤砥石170が、スロット32からはみ出す磁石積層体14の高さ方向の端部を研削して除去する。円盤砥石170は、複数の磁石積層体14の高さ方向の端部を同時に除去する。モータ(不図示)が円盤砥石170を回転駆動する。
【0043】
本実施形態では、磁石積層体14の高さ方向の端部が研削によって除去されるが、本発明はこれに限定されない。磁石積層体14の高さ方向の端部は切断によって除去されてもよい。この場合、磁石積層体の高さ方向の端部を除去する加工部として、例えば超鋼円盤の外周にダイヤモンドチップが付着された工具が用いられる。また、磁石積層体14の高さ方向の寸法が公差を満たす場合、加工工程を省略してもよい。
【0044】
本実施形態の作用効果を述べる。
【0045】
磁石片10は、寸法の小さい端部11が他の一つの磁石片10の寸法の大きい端部12または磁石積層体14の寸法の大きい端部15の上に配置されるとともに、寸法の大きい端部12が他の一つの磁石片10の寸法の小さい端部11または磁石積層体14の寸法の小さい端部16の上に配置されて積層される。このため、例えば寸法の大きい端部12の上にさらに寸法の大きい端部12が配置される場合のように両端部11、12のうちの一方の側で寸法誤差が大きく偏って積み上がることおよび磁石片10同士の間に隙間が発生することが防止され、その結果、磁石片10の積層高さの増加が抑制される。このように本実施形態のロータコア磁石積層体の製造方法およびロータコア磁石積層システム100によれば磁石片10の機械加工によらず積層高さの増加を抑制でき、従って歩留まり向上およびロータコア30からの磁石片10のはみ出し防止を図り得る。
【0046】
磁石片10は他の磁石片10と反りの方向が揃えられて積層される。このため、反りの方向がばらばらの場合に比べ磁界の向きを統一でき、その結果、磁石積層体14の磁力を高めることができる。
【0047】
図17のように仮に磁石積層体14がスロット32からはみ出したとしても、本実施形態では円盤砥石170によって磁石積層体14の高さ方向の端部が除去される。このため磁石積層体14の高さ方向の寸法が公差に収まるように高い寸法精度で磁石片10を1つずつ機械加工する必要がなく、従って歩留まりが良い。
【0048】
また、円盤砥石170によって磁石積層体14の高さ方向の端部が除去されるため、各磁石片10の寸法公差が緩くても磁石積層体14は高さ方向の公差を満たすことができ、従って磁石片10の製造コストを低減できる。
【0049】
円盤砥石170によって複数の磁石積層体14の高さ方向の端部が同時に除去されるため、複数の磁石積層体14を効率良く加工できる。
【0050】
磁石積層体14がパンチ150によって押圧されつつヒータ160によって加熱されるため、磁石片10の間に塗布された接着剤17の厚さが薄くなる。また、パンチ150による押圧によって、磁石片10が、隣接する他の磁石片10の傾斜した端部13に沿って滑る。これらの結果、磁石積層体14の高さ方向の寸法が減少してスロット32からのはみ出しがなくなる、または、はみ出す部分が減る。このため円盤砥石170によって除去する磁石の量を減らすことができるので、歩留まりが向上する。また、磁石積層体14がパンチ150によって押圧されつつヒータ160によって加熱されるため、磁石片10の間の接触面の全体に接着剤17がまんべんなく広がり、また磁石片10同士の密着度が増す。従って磁石片10同士を強固に接着できる。
【0051】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。
【0052】
例えば、磁石片の形状は上記実施形態に限定されない。磁石片の形状は従来公知の他の形状であってもよい。また、磁石片または磁石積層体の両端部の大きさについて具体的な寸法が分からなくてもよく、これらの相対的な大小が分かればよい。
【0053】
また、上記実施形態では、積層工程および接着工程において磁石片10は容器180内で積層、接着されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、磁石片10はロータコア30のスロット32内で積層、接着されてもよい。また、上記実施形態では、磁石積層体14がスロット32に挿入される前に接着剤18が塗布されるが、磁石積層体14がスロット32に挿入された後、スロット32に接着剤18を注入してもよい。また、磁石積層体14とロータコア30とが固定できればよく、磁石積層体14がスロット32に挿入された後、接着剤18代わりに樹脂をスロット32に注入してもよい。
【0054】
また、磁石積層体の製造方法の各工程を作業者自らが手作業で実行してもよく、また産業用ロボット等によって自動的に実行してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 磁石片、
11、12 磁石片の両端部、
13 磁石片の端部(積層された磁石片同士が重なり合う面)、
14 磁石積層体、
15、16 磁石積層体の両端部
17 接着剤、
18 接着剤、
100 磁石積層システム、
110 ピッキングロボット(積層装置)、
111 ロボットアーム、
112 吸盤、
120、121 カメラ(検出部)、
130 制御部、
140 ノズル(接着剤吐出部)、
150 パンチ(押圧部)、
160 ヒータ(加熱部)、
170 円盤砥石(加工部)、
180 容器、
190 ベルトコンベア、
L1、L2、L3、L4 高さ方向の大きさ。
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