特許第5983165号(P5983165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983165
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】ロープ材の固定構造とこれを用いた柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   E01F7/04
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-175812(P2012-175812)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-34788(P2014-34788A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228785
【氏名又は名称】日本サミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(72)【発明者】
【氏名】中村 佐智夫
(72)【発明者】
【氏名】安部 雅詩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−130021(JP,U)
【文献】 特開昭54−141945(JP,A)
【文献】 実開平06−032796(JP,U)
【文献】 実開昭60−190804(JP,U)
【文献】 特開平08−246425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/00〜 7/04
E01F 3/00〜 8/02
E01F 9/00〜 11/00
B25B 1/00〜 11/02
E04H 17/00〜 17/26
F16G 11/00〜 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定部にロープ材の途中を固定するロープ材の固定構造において、
前記ロープ材の途中の一側に沿うと共に所定の間隙を置いて前記被固定部に設けた対をなす固定側部材と、前記所定の間隙より外形が大きい移動側部材とを備え、前記対をなす固定側部材の前記間隙から前記ロープ材の途中を一側に引き出すと共に捩じって交差部を有する輪部を形成し、この輪部を前記移動側部材に掛装し、前記ロープ材を張設したことを特徴とするロープ材の固定構造。
【請求項2】
前記固定側部材と移動側部材の外面が円形であることを特徴とする請求項1記載のロープ材の固定構造。
【請求項3】
前記固定側部材と移動側部材の直径が同一であることを特徴とする請求項記載のロープ材の固定構造。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の固定構造を備え、前記被固定部が支柱であり、前記ロープ材が前記支柱間に張設した横ロープ材であることを特徴とする柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープ材の固定構造とこれを用いた柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロープ材の途中を固定する構造として、被固定部たる中間支柱の前部に連結部を設け、この連結部に固定用ロープ材の略中央を固定し、この固定用ロープ材の両側を前記横ロープ材の途中に固定し、この固定に複数のクリップを用いる固定構造(例えば特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−52404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の固定構造では、ロープ材の端部を被固定部にそれぞれ固定する必要がなく、ロープ材の途中を被固定部に固定することにより、ロープ材を被固定部で分離することなく連続して配置することができる。
【0005】
しかし、上記従来技術では、複数のクリップにより固定用ロープ材に横ロープ材の途中を固定するため、固定作業が煩雑となり、また、複数の被固定部に固定し、ロープ材の張力を調整するためなどする場合、一旦、固定してしまうと、固定解除に手間が掛かるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上述した問題点に鑑み、ロープ材の途中を簡便に固定することができるロープ材の固定構造とこれを用いた柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、被固定部にロープ材の途中を固定するロープ材の固定構造において、前記ロープ材の途中の一側に沿うと共に所定の間隙を置いて前記被固定部に設けた対をなす固定側部材と、前記所定の間隙より外形が大きい移動側部材とを備え、前記対をなす固定側部材の前記間隙から前記ロープ材の途中を一側に引き出すと共に捩じって交差部を有する輪部を形成し、この輪部を前記移動側部材に掛装し、前記ロープ材を張設したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項に係る発明は、前記固定側部材と移動側部材の外面が円形であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項に係る発明は、前記固定側部材と移動側部材の直径が同一であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項に係る発明は、請求項1〜のいずれか1項に記載の固定構造を備え、前記被固定部が支柱であり、前記ロープ材が前記支柱間に張設した横ロープ材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の構成によれば、ロープ材を張設すると、移動側部材が他側に移動し、両側の固定側部材と移動側部材の間の2箇所でロープ材が挟み付けられ、ロープ材の途中が被固定部に固定される。
【0012】
また、本発明の請求項の構成によれば、交差部により輪部が移動側部材を締め付ける力が発生し、固定力が向上する。
【0013】
また、本発明の請求項の構成によれば、ロープ材を無理なく挟んで固定することができる。
【0014】
また、本発明の請求項の構成によれば、両側の固定側部材と移動側部材との間の2箇所でロープ材が均一に挟み付けられる。
【0015】
また、本発明の請求項の構成によれば、柵の中間の支柱に、横ロープ材の途中を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の参考例1を示す固定構造の正面説明図である。
図2】同上、防護柵の正面図である。
図3】同上、固定構造を示し、図3(A)は正面図、図3(B)は側面図である。
図4】本発明の参考例2を示す固定構造であり、図4(A)は正面図、図4(B)は側面図である。
図5】本発明の実施例を示す固定構造の正面説明図である。
図6】同上、図6(A)は正面図、図6(B)は側面図である。
図7】本発明の実施例を示す固定構造であり、図7(A)は正面図、図7(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規なロープ材の固定構造とこれを用いた柵を採用することにより、従来にないロープ材の固定構造とこれを用いた柵が得られ、そのロープ材の固定構造とこれを用いた柵について記述する。
【0018】
以下、図面を参照して、本発明のロープ材の固定構造とこれを用いた柵たる防護柵の実施例1について説明する。尚、柵としては、雪崩や落石に対する防護柵や、雪崩に対する予防柵などが例示される。
[参考例1
【0019】
図1図3に示すように、設定場所である斜面下部の地面1に複数の支柱2A,2,2,2Aを立設する。尚、端末支柱2A,2Aの間に、単数又は複数の中間支柱2,2が配置されている。前記支柱2,2Aは、H型鋼,コンクリート柱,鋼管あるいはコンクリート充填鋼管などからなり、この例では鋼管を用い、その下端を前記地面1に建て込んで固定している。また、前記横ロープ材3の両端は前記端末支柱2Aに固定されている。
【0020】
前記支柱2A,2,2,2A間には横ロープ材3,3が上下多段に設けられている。また、支柱2A,2,2,2Aの間は網体たる金網4により遮蔽されている。
【0021】
被固定部たる前記支柱2には、前記横ロープ材3を固定する固定構造11が設けられている。この固定構造11は、支柱2の前面で左右に所定の間隙Kを置いて対をなす固定側部材12,12を該支柱2に固定しており、この固定側部材12は、硬質材料からなる断面円形な円柱体により構成されている。尚、間隙Kは、固定側部材12,12の外周面12A,12Aの間隔である。
【0022】
また、固定構造11は、くさび部材たる移動側部材13を備え、この移動側部材13は、金属などの硬質材料からなる断面円形の円柱体により構成され、被固定部たる支柱2には固定されていない。この例では、前記固定側部材12と移動側部材13の直径Dは同一であり、前記横ロープ材3の直径dの10倍以上である。また、固定側部材12と移動側部材13の軸心は支柱2の前後方向に配置されている。
【0023】
そして、前記横ロープ材3の途中を固定側部材12,12の上部に掛け渡す。こうすると、横ロープ材3の一側(下側)に固定側部材12,12が沿う。その横ロープ材3の途中を間隙Kから下側に引き出して略U字形の輪部3Wを形成し、この輪部3W内に前記移動側部材13を挿入して横ロープ材3の他側(上側)に該移動側部材13を掛装する。
【0024】
各中間支柱2,2において、横ロープ材3の途中を移動側部材13に掛装した後、中央側の中間支柱2箇所から横ロープ材3を張設し、横ロープ材3の両端を端末支柱2A,2Aに連結する。この場合、横ロープ材3を両側に引っ張るようにして張設すると、移動側部材13が上方(他側)に移動し、図1の実線に示すように、両側の固定側部材12,12の外周面12A,12Aと移動側部材13の外周面13Aとの間の2箇所で横ロープ材3が挟み付けられて固定される。
【0025】
これにより固定構造11を設けた全ての中間の支柱2において、横ロープ材3の途中を固定することができる。
【0026】
このように本参考例では、被固定部たる支柱2にロープ材たる横ロープ材3の途中を固定する横ロープ材3の固定構造において、横ロープ材3の途中の一側に沿うと共に所定の間隙Kを置いて支柱2に設けた対をなす固定側部材12,12と、所定の間隙Kより外形たる直径Dが大きい移動側部材13とを備え、対をなす固定側部材12,12の間隙Kから横ロープ材3の途中を他側に引き出して輪部3Wを形成し、この輪部3Wを移動側部材13に掛装し、横ロープ材3を張設したから、横ロープ材3を張設すると、移動側部材13が一側に移動し、両側の固定側部材12,12と移動側部材13のとの間の2箇所で横ロープ材3が挟み付けられ、横ロープ材3の途中が支柱2に固定される。
【0027】
また、このように本参考例では、請求項に対応して、固定側部材12と移動側部材13の外面が円形であるから、横ロープ材3を無理なく均一に挟み付けて固定することができる。
【0028】
また、このように本参考例では、請求項に対応して、固定側部材12と移動側部材13の直径Dが同一であるから、両側の固定側部材12,12と移動側部材13との間の2箇所で横ロープ材3が均一に圧接される。この場合、固定側部材12,12の外周面12A,12Aと移動側部材13,13の外周面13A,13Aにより横ロープ材3が2箇所で圧縮力を受けて固定される。
【0029】
また、このように本参考例では、請求項に対応して、請求項1〜のいずれか1項に記載の固定構造11を備え、被固定部が支柱2であり、ロープ材が支柱2,2間に張設した横ロープ材3であるから、防護柵の中間の支柱2に、横ロープ材3の途中を固定することができる。
【0030】
また、参考例上の効果として、前記固定側部材12と移動側部材13の直径Dは、前記横ロープ材3の直径dの10倍以上であるから、固定側部材12と移動側部材13に掛装した横ロープ材3に無理な力が加わず、安定した固定状態が得られる。また、支柱2には固定側部材12,12を固定するだけであるから、構造簡易にして横ロープ材3の途中を固定することができる。さらに、前記固定側部材12と移動側部材13の直径Dを略同一とし、固定側部材12,12の中心間隔を、該固定側部材12の直径Dに横ロープ材3の直径dの2倍を加えた寸法にすれば、固定状態で、右の固定側部材12と移動側部材13の圧縮力の方向Fとの左の固定側部材12と移動側部材13の圧縮力の方向F´とがなす角度θは略60度となり、均一な圧縮固定状態を得ることができる。この場合、横ロープ材3の引っ張りに対して、良好な圧縮力を得るには、角度θは60度〜120度が好ましく、図1では角度θが90度の場合を図示している。
[参考例2
【0031】
図4は、本発明の参考例2を示し、上記参考例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、固定側部材12と移動側部材13の軸心を支柱2の上下方向に配置している。具体的には、支柱2の前面に支持部たる載置台14を設け、この載置台14の水平な支持面たる載置面15に前記固定側部材12,12を立設状態で固定する。前記固定側部材12,12は横ロープ材3の張設方向である左右方向に前記間隙Kを置いて配置され、それら固定側部材12,12の前側に横ロープ材3の途中を沿わせ、その間隙Kから横ロープ材3の途中を前側に引き出して輪部3Wを形成し、この輪部3Wに軸心を上下方向にした前記移動側部材13を挿入して掛装する。尚、移動側部材13は載置面15に固定されておらず、載置面15に摺動する。
【0032】
そして、参考例1と同様に横ロープ材3を張設すると、移動側部材13が後方に移動し、両側の固定側部材12,12の外周面12A,12Aと移動側部材13の外周面13Aとの間の2箇所で横ロープ材3が挟み付けられて固定される。
【0033】
このように本参考例では、横ロープ材3の途中の一側たる前側に沿うと共に所定の間隙Kを置いて支柱2に設けた対をなす固定側部材12,12と、所定の間隙Kより外形たる直径Dが大きい移動側部材13とを備え、対をなす固定側部材12,12の間隙Kから横ロープ材3の途中を前側に引き出して輪部3Wを形成し、この輪部3Wを移動側部材13に掛装し、横ロープ材3を張設したから、上記参考例1と同様な作用・効果を奏する。
【0034】
また、参考例上の効果として、載置面15に固定側部材12,12を固定し、移動側部材13は載置面15に載置するだけであるから、構造簡易にして横ロープ材3の途中を固定することができる。
【実施例1】
【0035】
図5及び図6は、本発明の実施例を示し、上記各参考例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、実施例1において、輪部3Wの上部(基端)には輪部3Wを180度捩じることにより横ロープ材3が交差する交差部3Kを設けている。
【0036】
このように本実施例では、請求項に対応して、被固定部たる支柱2にロープ材たる横ロープ材3の途中を固定するロープ材の固定構造において、横ロープ材3の途中の一側に沿うと共に所定の間隙Kを置いて支柱2に設けた対をなす固定側部材12,12と、所定の間隙Kより外形たる直径Dが大きい移動側部材13とを備え、対をなす固定側部材12,12の間隙Kから横ロープ材3の途中を他側に引き出すと共に捩じって交差部3Kを有する輪部3Wを形成し、この輪部3Wを移動側部材13に掛装し、横ロープ材3を張設したから、横ロープ材3を張設すると、移動側部材13が一側に移動し、両側の固定側部材12,12と移動側部材13のとの間の2箇所で横ロープ材3が挟み付けられ、横ロープ材3の途中が支柱2に固定され、交差部3Kにより輪部3Wが移動側部材13を締め付ける力が発生し、固定力が向上する。
【実施例2】
【0037】
図7は、本発明の実施例を示し、上記各参考例及び実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、参考例2において、輪部3Wの上部(基端)には輪部3Wを180度捩じることにより横ロープ材3が交差する交差部3Kを設けている。
【0038】
このように本実施例でも上記各参考例及び実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0039】
尚、本発明は、本参考例及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、固定構造は柵以外でも各種のものに使用可能である。また、ロープ材は、ワイヤーロープ以外でも樹脂製のロープ材など各種のものを用いることができる。また、固定側部材と移動側部材の断面は円形以外でも、三角形、四角形、五角形などの多角形でもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 地面(設置場所)
2 支柱(被固定部)
3 横ロープ材(ロープ材)
3W 輪部
3K 交差部
11 固定構造
12 固定側部材
13 移動側部材
K 間隙
D 直径
d 直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7