特許第5983168号(P5983168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5983168フェールセーフ装置及びフェールセーフシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983168
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】フェールセーフ装置及びフェールセーフシステム
(51)【国際特許分類】
   G05B 9/02 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   G05B9/02 E
【請求項の数】19
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-177355(P2012-177355)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-35693(P2014-35693A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】直井 孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一朗
(72)【発明者】
【氏名】森 寛之
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 正義
(72)【発明者】
【氏名】服部 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】前田 登
【審査官】 川東 孝至
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−192648(JP,A)
【文献】 特開2001−273001(JP,A)
【文献】 特開平07−084602(JP,A)
【文献】 特開平05−269816(JP,A)
【文献】 特開2006−007892(JP,A)
【文献】 特開2010−285111(JP,A)
【文献】 再公表特許第2006/120757(JP,A1)
【文献】 特開2010−076536(JP,A)
【文献】 特開昭52−152035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 9/00− 9/05
B60R 16/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、前記電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電流、及び前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで前記電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、
前記センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、
前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、前記電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、
前記電子装置とは独立して設けられ、
前記閾値判定部は、複数の閾値が設定されており、
前記フェールセーフ部は、前記閾値判定部で前記複数の閾値のどの閾値以上であると判定したかに応じて、前記フェールセーフ処理の種類及び度合いのいずれかを変更することを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項2】
車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、前記電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電流、及び前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで前記電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、
前記センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、
前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、前記電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、
前記電子装置とは独立して設けられ、
前記閾値判定部及び前記フェールセーフ部は、外来の電磁波ノイズを遮蔽するシールド部材(103、104)によってシールドされていることを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記閾値判定部及び前記フェールセーフ部は、外来の電磁波ノイズを遮蔽するシールド部材(103、104)によってシールドされていることを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記閾値判定部及び前記フェールセーフ部を、絶縁層と配線層とが交互に積層されるとともに外皮層(104)及び積層方向の直列接続ビア(103)がシールドの機能を果たす多層回路基板内に内蔵し、前記外皮層及び積層方向の直列接続ビアを、前記閾値判定部及び前記フェールセーフ部のシールド部材として用いることを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項5】
車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、前記電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電流、及び前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで前記電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、
前記センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、
前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、前記電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、
前記電子装置とは独立して設けられ、
前記フェールセーフ部は、前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、前記車両のユーザに警告を行う警告装置(5)に、前記警告を行わせる制御信号を出力するフェールセーフ処理を行うことを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記フェールセーフ部は、前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、前記車両のユーザに警告を行う警告装置(5)に、前記警告を行わせる制御信号を出力するフェールセーフ処理を行うことを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
前記フェールセーフ部は、前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、情報を記録する記録装置(2、7)に、閾値以上と判定した当該外来ノイズに関する記録を行うフェールセーフ処理を行うことを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項において、
前記フェールセーフ部は、前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、情報を記録する記録装置(2、7)に、閾値以上と判定した当該外来ノイズに関する記録と、当該外来ノイズを検出した位置を示す位置情報、及び当該外来ノイズを検出した時刻を示す時刻情報のうちの少なくともいずれかの記録とを行うフェールセーフ処理を行うことを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項9】
車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、前記電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電流、及び前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで前記電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、
前記センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、
前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、前記電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、
前記電子装置とは独立して設けられ、
前記フェールセーフ部は、前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、前記車両の挙動を制御する挙動制御装置(6)に、前記車両の停車、減速、及び停車後の再発進の一時禁止のいずれかを行わせる制御信号を出力するフェールセーフ処理を行うことを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記フェールセーフ部は、前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、情報を記録する記録装置(2、7)に、閾値以上と判定した当該外来ノイズに関する記録を行うフェールセーフ処理を行うことを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項11】
請求項9において、
前記フェールセーフ部は、前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、情報を記録する記録装置(2、7)に、閾値以上と判定した当該外来ノイズに関する記録と、当該外来ノイズを検出した位置を示す位置情報、及び当該外来ノイズを検出した時刻を示す時刻情報のうちの少なくともいずれかの記録とを行うフェールセーフ処理を行うことを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項において、
前記フェールセーフ部は、前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、前記車両の挙動を制御する挙動制御装置(6)に、前記車両の停車、減速、及び停車後の再発進の一時禁止のいずれかを行わせる制御信号を出力するフェールセーフ処理を行うことを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項13】
車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、前記電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電流、及び前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで前記電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、
前記センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、
前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、前記電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、
前記電子装置とは独立して設けられ、
前記フェールセーフ部は、前記車両の衝突時に情報を記録するドライブレコーダの一部であって、前記車両の衝突時に情報を記録する場合に、衝突時若しくは衝突前後の所定期間に前記センサ部で検出した外来ノイズの状態についての情報を記録することを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項において、
前記フェールセーフ部は、前記車両の衝突時に情報を記録するドライブレコーダの一部であって、前記車両の衝突時に情報を記録する場合に、衝突時若しくは衝突前後の所定期間に前記センサ部で検出した外来ノイズの状態についての情報を記録することを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項15】
車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、前記電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電流、及び前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで前記電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、
前記センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、
前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、前記電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、
前記電子装置とは独立して設けられ、
前記外来ノイズを検出するための検出対象が異なる前記センサ部を複数備えるものであって、
前記閾値判定部は、複数の前記センサ部での外来ノイズの検出結果をもとに、外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定することを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項において、
前記外来ノイズを検出するための検出対象が異なる前記センサ部を複数備えるものであって、
前記閾値判定部は、複数の前記センサ部での外来ノイズの検出結果をもとに、外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定することを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項17】
請求項15又は16において、
前記閾値判定部は、
前記電流若しくは前記電圧を検出することで前記電子装置に対する外来ノイズを検出する前記センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であった場合でも、前記電界若しくは前記磁界を検出することで前記電子装置に対する外来ノイズを検出する前記センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上でなかった場合には、外来ノイズが閾値以上でないと判定することを特徴とするフェールセーフ装置。
【請求項18】
車両に搭載される車載システム(101)と、
センタ(10)とを含み、
前記車載システムは、
請求項1〜17のいずれか1項に記載のフェールセーフ装置と、
前記車両の現在位置を検出する位置検出器(8)と、
センタと通信を行う車両側通信装置(9)とを備え、
前記センタは、
前記車両と通信を行うセンタ側通信装置(41)を備え、
車載システムは、フェールセーフ装置の前記閾値判定部での判定結果と、位置検出器で検出した、前記判定結果が得られた時点の車両の現在位置とを対応付けて、車両側通信装置からセンタに送信し、
センタは、複数台の車両の車載システムから得た前記判定結果と前記判定結果が得られた時点の車両の現在位置との情報をもとに、前記外来ノイズが前記閾値以上であった地点を電子地図上の位置に対応付け、前記対応付けを行った電子地図上の位置についての情報をセンタ側通信装置から前記車両へ配信することを特徴とするフェールセーフシステム。
【請求項19】
車両に搭載される車載システム(101)と、
センタ(10)とを含み、
前記車載システムは、
車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、前記電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電流、及び前記電子装置に入力若しくは前記電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで前記電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、
前記センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、
前記閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、前記電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、前記電子装置とは独立して設けられるフェールセーフ装置と、
前記車両の現在位置を検出する位置検出器(8)と、
センタと通信を行う車両側通信装置(9)とを備え、
前記センタは、
前記車両と通信を行うセンタ側通信装置(41)を備え、
車載システムは、フェールセーフ装置の前記閾値判定部での判定結果と、位置検出器で検出した、前記判定結果が得られた時点の車両の現在位置とを対応付けて、車両側通信装置からセンタに送信し、
センタは、複数台の車両の車載システムから得た前記判定結果と前記判定結果が得られた時点の車両の現在位置との情報をもとに、前記外来ノイズが前記閾値以上であった地点を電子地図上の位置に対応付け、前記対応付けを行った電子地図上の位置についての情報をセンタ側通信装置から前記車両へ配信することを特徴とするフェールセーフシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェールセーフ装置及びフェールセーフシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁波等の外部からのノイズによる電子装置への悪影響を防止するために、ノイズをシールドする導電性金属からなるシールドケース内に電子装置の電子回路を配置する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、6つのシールド面からなる箱形状にシールド構造が形成され、電子部品が実装された金属基板をシールド構造の1面とするとともに、その金属板に相対するシールド面をマザー基板の一部が構成し、他の4つのシールド面を導電性材料からなる枠形状のシールド枠が構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−27304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、シールド面によって外部からのノイズをシールドし切れなかった場合に、外部からのノイズの影響によって電子回路が誤動作してしまうおそれがあった。よって、その電子回路を備える電子装置にも誤動作が生じ、その電子装置を利用するユーザに不具合が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、外部からのノイズの影響によって電子装置の誤動作が生じ易い場合でも、その電子装置の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることを可能にするフェールセーフ装置及びフェールセーフシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
フェールセーフ装置に係る第1の発明は、車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電流、及び電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、電子装置とは独立して設けられ、閾値判定部は、複数の閾値が設定されており、フェールセーフ部は、閾値判定部で複数の閾値のどの閾値以上であると判定したかに応じて、フェールセーフ処理の種類及び度合いのいずれかを変更することを特徴としている。
フェールセーフ装置に係る第2の発明は、車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電流、及び電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、電子装置とは独立して設けられ、閾値判定部及びフェールセーフ部は、外来の電磁波ノイズを遮蔽するシールド部材(103、104)によってシールドされていることを特徴としている。
フェールセーフ装置に係る第3の発明は、車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電流、及び電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、電子装置とは独立して設けられ、フェールセーフ部は、閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、車両のユーザに警告を行う警告装置(5)に、警告を行わせる制御信号を出力するフェールセーフ処理を行うことを特徴としている。
フェールセーフ装置に係る第4の発明は、車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電流、及び電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、電子装置とは独立して設けられ、フェールセーフ部は、閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、車両の挙動を制御する挙動制御装置(6)に、車両の停車、減速、及び停車後の再発進の一時禁止のいずれかを行わせる制御信号を出力するフェールセーフ処理を行うことを特徴としている
ェールセーフ装置に係る第の発明は、車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電流、及び電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、電子装置とは独立して設けられ、フェールセーフ部は、車両の衝突時に情報を記録するドライブレコーダの一部であって、車両の衝突時に情報を記録する場合に、衝突時若しくは衝突前後の所定期間にセンサ部で検出した外来ノイズの状態についての情報を記録することを特徴としている。
フェールセーフ装置に係る第の発明は、車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電流、及び電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、電子装置とは独立して設けられ、外来ノイズを検出するための検出対象が異なるセンサ部を複数備えるものであって、閾値判定部は、複数のセンサ部での外来ノイズの検出結果をもとに、外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定することを特徴としている。
また、フェールセーフシステムに係る第の発明は、車両に搭載される車載システム(101)と、センタ(10)とを含み、車載システムは、第1〜第の発明のいずれかのフェールセーフ装置と、車両の現在位置を検出する位置検出器(8)と、センタと通信を行う車両側通信装置(9)とを備え、センタは、車両と通信を行うセンタ側通信装置(41)を備え、車載システムは、フェールセーフ装置の閾値判定部での判定結果と、位置検出器で検出した、判定結果が得られた時点の車両の現在位置とを対応付けて、車両側通信装置からセンタに送信し、センタは、複数台の車両の車載システムから得た判定結果と判定結果が得られた時点の車両の現在位置との情報をもとに外来ノイズが閾値以上であった地点を電子地図上の位置に対応付け、対応付けを行った電子地図上の位置についての情報をセンタ側通信装置から車両へ配信することを特徴としている。
フェールセーフシステムに係る第の発明は、車両に搭載される車載システム(101)と、センタ(10)とを含み、車載システムは、車両に搭載される電子装置(2、3)にかかる電界、電子装置にかかる磁界、信号線(21)と電源線とグランド線とのいずれかを介して電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電流、及び電子装置に入力若しくは電子装置から出力される電圧のいずれかを検出することで電子装置に対する外来ノイズを検出するセンサ部(11a、11b、11c)と、センサ部で検出した外来ノイズが閾値以上であるか否かを判定する閾値判定部(13a、13b、13c)と、閾値判定部で外来ノイズが閾値以上であると判定した場合に、電子装置の誤動作に対応するための処理であるフェールセーフ処理を行うフェールセーフ部(13a、13b、13c)とを備え、電子装置とは独立して設けられるフェールセーフ装置と、車両の現在位置を検出する位置検出器(8)と、センタと通信を行う車両側通信装置(9)とを備え、センタは、車両と通信を行うセンタ側通信装置(41)を備え、車載システムは、フェールセーフ装置の閾値判定部での判定結果と、位置検出器で検出した、判定結果が得られた時点の車両の現在位置とを対応付けて、車両側通信装置からセンタに送信し、センタは、複数台の車両の車載システムから得た判定結果と判定結果が得られた時点の車両の現在位置との情報をもとに、外来ノイズが閾値以上であった地点を電子地図上の位置に対応付け、対応付けを行った電子地図上の位置についての情報をセンタ側通信装置から車両へ配信することを特徴としている。
【0008】
これによれば、外来ノイズが閾値以上であった場合に、電子装置の誤動作に対応するためのフェールセーフ処理をフェールセーフ部で行うので、外来ノイズの影響によって電子装置の誤動作が生じ易い状況となった場合でも、電子装置の誤動作に対応するための処理が行われることになる。従って、フェールセーフ処理によって電子装置の誤動作が生じないようにしたり、電子装置の誤動作が生じた場合にその誤動作によるユーザの不具合を低減したりすることが可能になる。その結果、外部からのノイズの影響によって電子装置の誤動作が生じ易い場合でも、その電子装置の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車載システム100の概略的な構成の一例を示す図である。
図2】ECU用フェールセーフ装置1aの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】電流センサをノイズ検出センサ11aに適用した場合の一例を示す模式図である。
図4】(a)〜(c)は、電界センサをノイズ検出センサ11aに適用した場合の一例を示す模式図である。
図5】(a)及び(b)は、磁界センサをノイズ検出センサ11aに適用した場合の例を示す模式図である。
図6】電圧センサをノイズ検出センサ11aに適用した場合の一例を示す模式図である。
図7】センサ信号処理回路14aの具体例を示す回路図である。
図8】(a)は、ノイズ検出センサ11aとセンサ信号処理回路14aとを内蔵したPALAP基板を示す上面図であって、(b)は図8(a)のII−II線断面図である。
図9】センサ用フェールセーフ装置1bの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図10】車両用フェールセーフ装置1cの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図11】フェールセーフシステム200の概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0013】
(実施形態1)
図1に示す車載システム100は、車両に搭載されるものであって、ECU用フェールセーフ装置1a、センサ用フェールセーフ装置1b、車両用フェールセーフ装置1cを含んでいる。また、ECU用フェールセーフ装置1aはECU2に設けられており、センサ用フェールセーフ装置1bはセンサ3に設けられている。
【0014】
ECU2は、車両を制御するための電子制御装置(Electronic ControlUnit)である。センサ3は、ECU2での制御に用いる車両の挙動や状態に関する情報を検出するセンサである。ECU2及びセンサ3のいずれについても、電子回路及び当該電子回路と外部の信号線とを接続するコネクタを備えているものとする。
【0015】
なお、本実施形態の例においては、ECU2及びセンサ3は、CAN(controller areanetwork)などの通信プロトコルに準拠した車載LAN4で各々接続されているものとして説明を行う。本実施形態では、便宜上、車載LAN4に接続される電子装置として、ECU2及びセンサ3のみを示しているが、車載LAN4には他の車載の電子装置も接続されているものとする。
【0016】
まず、ECU用フェールセーフ装置1aの構成について図2を用いて説明する。ECU用フェールセーフ装置1aは、図2に示すように、ノイズ検出センサ11a、ノイズ定量化回路12、機器制御信号出力回路13aからなっている。また、ノイズ定量化回路12及び機器制御信号出力回路13aがセンサ信号処理回路14aを構成している。
【0017】
ノイズ検出センサ11aは、例えば前述のコネクタを介してECU2に供給される電流を検出する電流センサである。ノイズ検出センサ11aが請求項のセンサ部に相当する。ここで、図3を用いて、電流センサをノイズ検出センサ11aに適用した場合の例を示す。
【0018】
電流センサとしては、例えば公知のロゴスキーコイルからなる電流センサを用いる構成とすればよく、図3では、ロゴスキーコイルからなる電流センサを用いた場合の例を示す。ECU2の外部の信号線21からコネクタ22を介してECU2の基板23上の配線に供給される交流電流は、ノイズ検出センサ11aとしてのロゴスキーコイルで検出される。そして、ロゴスキーコイルで検出された交流電流は、ノイズ定量化回路12に出力される。
【0019】
また、ノイズ検出センサ11aは、前述の電流センサに限らず、ECU2にかかる電界(言い換えるとECU2周辺の空間の電界)を検出する電界センサ、ECU2にかかる磁界(言い換えるとECU2周辺の空間の磁界)を検出する磁界センサ、コネクタを介してECU2に供給される電圧を検出する電圧センサなどであってもよい。
【0020】
なお、電流センサや電圧センサは、信号線21からコネクタを介してECU2に供給される電流や電圧を検出するものに限らず、電源線からECU2に供給(入力)される電流や電圧を検出するものであってもよいし、ECU2からグランド(GND)線に出力される電流や電圧を検出するものであってもよい。
【0021】
電界センサとしては、公知のモノポールアンテナやダイポールアンテナやEOプローブ等を用いる構成とすればよい。ここで、図4(a)〜図4(c)を用いて、電界センサをノイズ検出センサ11aに適用した場合の例を示す。図4(a)はECU2の基板23の上面を示す模式図、図4(b)は図4(a)のA矢視図、図4(c)はECU2の基板23の下面を示す模式図である。なお、図4(a)〜図4(c)では、電界成分を検出するモノポールアンテナを電界センサとして用いた場合の例を示す。
【0022】
モノポールアンテナとしてのノイズ検出センサ11aは、ECU2の基板23の配線パターン(図4(a)のB参照)によってセンサ信号処理回路14aに接続されるように実装されている。詳しくは、モノポールアンテナは、基板23の上面に突出するように、下面から上面に貫通して設けられており、基板23の下面のべたGND(図4(c)の斜線部参照)にはんだ(図4(b)のC参照)によって固定されている。モノポールアンテナのアンテナエレメントは、強電界を検知しさえすればよいので、10mm程度とすればよい。モノポールアンテナで検出された電界成分(電界成分信号波)は、ノイズ定量化回路12に出力される。
【0023】
磁界センサとしては、公知のループアンテナ(例えばシールデッドループアンテナ)やMR素子を用いる構成とすればよい。ここで、図5(a)及び図5(b)を用いて、磁界センサをノイズ検出センサ11aに適用した場合の例を示す。図5(a)はECU2の基板23の上面を示す模式図、図5(b)はECU2の基板23の下面を示す模式図である。なお、図5(a)及び図5(b)では、磁界成分を検出するループアンテナを磁界センサとして用いた場合の例を示す。
【0024】
ループアンテナとしてのノイズ検出センサ11aは、ECU2の基板23の配線パターンとして実装されている。また、この配線パターンはセンサ信号処理回路14aに接続されるよう設けられている(図5(a)参照)。基板23の下面には、べたGND(図5(b)の斜線部参照)が設けられているが、ループアンテナの下面については、GNDが存在すると渦電流で磁界が打ち消されるため、GNDが設けられていない。ループアンテナは、強電界を検知しさえすればよいので、ループ径は10mm程度とすればよい。ループアンテナで検出された磁界成分(磁界成分信号波)は、ノイズ定量化回路12に出力される。
【0025】
例えば、電圧センサとしては、公知の電圧測定回路を用いる構成とすればよい。電圧測定回路としては、例えば後述の図7に示すノイズ定量化回路12を用いる構成とすればよい。ここで、図6を用いて、電圧センサをノイズ検出センサ11aに適用した場合の例を示す。図6では、電圧測定回路を電圧センサとして用いた場合の例を示す。ノイズ検出センサ11aとしての電圧測定回路は、ECU2の外部の信号線21からコネクタ22を介してECU2の基板23上の配線に供給される電圧を検出する。電圧測定回路で検出された交流電圧は、ノイズ定量化回路12に出力される。
【0026】
上述したように、ノイズ検出センサ11aとしては、電流センサ、電圧センサ、電界センサ、磁界センサといった各種のセンサを用いることができるが、本実施形態では、ロゴスキーコイルからなる電流センサを用いる場合を例に挙げて以降の説明を行う。
【0027】
図2に戻って、ノイズ定量化回路12は、ノイズ検出センサ11aから出力された交流信号(本例では交流電流)を、交流信号の強度に応じた直流信号(本例では直流電流)に変換する。一例としては、図7に示すような、抵抗(図7のR3、R4参照)とダイオード(図7のD1参照)とコンデンサ(図7のC2参照)とからなる簡単な回路によって行う構成とすればよい。なお、図7中のTP1及びTP2は、ロゴスキーコイルと接続する端子を示している。
【0028】
なお、ノイズ検出センサ11aとして電圧センサを用いた場合には、ノイズ検出センサ11aで検出した交流電圧を、ノイズ定量化回路12で直流電圧に変換することになる。また、ノイズ検出センサ11aとして電界センサを用いた場合には、ノイズ検出センサ11aで検出した電界成分を、ノイズ定量化回路12で位相成分を除いた振幅成分に変換することになる。さらに、ノイズ検出センサ11aとして磁界センサを用いた場合には、ノイズ検出センサ11aで検出した磁界成分を、ノイズ定量化回路12で位相成分を除いた振幅成分に変換することになる。
【0029】
ノイズ定量化回路12は、ダイオードとキャパシタ(コンデンサ)とからなる半波整流回路であってもよいし、AD変換回路と演算回路とを備え、AD変換回路でのAD変換の後、演算回路での演算によって直流信号に変換する構成であってもよい。
【0030】
機器制御信号出力回路13aは、ノイズ定量化回路12で変換された直流信号を、その直流信号の強度に応じた信号に変換する。具体的には、直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、ユーザへの警告を行わせる制御信号を報知デバイス5に出力するフェールセーフ処理を行う。機器制御信号出力回路13aが請求項の閾値判定部及びフェールセーフ部に相当する。
【0031】
ここで言うところの所定の閾値は、任意に設定可能な値であって、ECU2やセンサ3やその他の電子装置が誤動作することが知られているノイズ強度に応じた直流信号の値を設定する構成とすればよい。また、フェールセーフ処理とは、ECU2やセンサ3等の車載の電子装置の誤動作に対応するための処理である。
【0032】
一例としては、図7に示すような、抵抗(図7のR1、R2参照)とダイオード(図7のD2参照)とコンデンサ(図7のC1参照)とコンパレータ(図7のOP1)からなる簡単な回路によって行う構成とすればよい。
【0033】
なお、本実施形態では、機器制御信号出力回路13aとして、図7に示すような簡単な回路を用いる場合を例に挙げて以降の説明を行うが、機器制御信号出力回路13aとしてマイクロコンピュータ(MPU)を用いる構成としてもよい。また、ECU2のMPUが機器制御信号出力回路13aとして機能する構成としてもよい。
【0034】
また、ノイズ定量化回路12を、前述したようにAD変換回路と演算回路とで構成した場合に、機器制御信号出力回路13aでの前述の閾値判定も当該演算回路で行う構成としてもよい。
【0035】
ユーザへの警告を行わせる制御信号が入力された報知デバイス5では、この制御信号に従ってユーザへの警告を行う。報知デバイス5としては、例えば表示装置や音声出力装置やLED等の照明装置やステアリングや座席等に設けられた振動発生装置などを用いることができる。この報知デバイス5が請求項の警告装置に相当する。
【0036】
表示装置の場合には、テキストや画像の表示によって、ECU2が担う機能やECU2からの信号をもとに実行される機能に不具合が生じる可能性やその不具合への対処方法を知らせる警告を行ったり、外来ノイズが大きいことを示す警告を行ったりすればよい。音声出力装置の場合には、音声によって上述したような警告を行えばよい。照明装置の場合には、点灯によって警告を行えばよい。振動発生装置の場合には、振動を発生させることで警告を行えばよい。
【0037】
これによれば、ユーザが警告を受けることができるので、外来ノイズの影響によってECU2の誤動作が生じ易い場合に、その誤動作に備えた対処をユーザがとることが可能になり、誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。
【0038】
本実施形態では、機器制御信号出力回路13aから、ユーザへの警告を行わせる制御信号を報知デバイス5に出力する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、機器制御信号出力回路13aが、ECU2のEEPROM等の電気的に書き換え可能な不揮発性メモリに当該強度を出力して記録する構成としてもよい。直流信号の強度を記録する場合には、当該強度の直流信号を検出したときのタイムスタンプ(つまり、時刻情報)も記録する構成とすればよい。なお、ECU2の上記不揮発性メモリが請求項の記録装置に相当する。
【0039】
また、直流信号の強度を記録する場合に、時刻情報とともに、若しくは時刻情報に代えて、図示しない位置検出器で検出した、当該強度の直流信号を検出したときの自車の位置情報も記録する構成としてもよい。
【0040】
これによれば、所定の閾値を超えた場合の直流信号の強度を記録することができるので、外来ノイズの影響によってECU2の誤動作が実際に生じた場合に、その記録をもとに誤動作の原因を解析することができる。よって、誤動作が生じた場合にも、誤動作の原因を探る手間がかかる不具合を抑えることが可能になる。よって、ECU2の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。
【0041】
また、直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、ECU2が誤動作をしている可能性があることを示す信号(以下、フェール信号)を車載LAN4に出力させる制御信号を、機器制御信号出力回路13aがECU2のMPUに出力することで、フェール信号を出力する構成としてもよい。フェール信号は、例えば直流信号の強度(つまり、外来ノイズ)が所定の閾値を超えていることを示す信号とすればよい。また、直流信号の強度が所定の閾値を超えていない場合に、直流信号の強度(つまり、外来ノイズ)が所定の閾値を超えていないことを示す信号を車載LAN4に出力させる制御信号を、機器制御信号出力回路13aがECU2のMPUに出力する構成としてもよい。
【0042】
これによれば、車載LAN4に接続されるECU2以外のECU(以下、他ECU)が、ECU2のフェール信号を受け取ることができる。よって、ECU2からの信号を用いて制御を行う他ECUが当該フェール信号を受け取った場合に、ECU2からの信号を用いた制御を行わなかったり、ECU2からの信号を用いない制御に切り替えたりすることで、ECU2の誤動作による不具合を抑えることが可能になる。その結果、ECU2の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。
【0043】
他にも、直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、ECU2から車載LAN4への信号の出力を停止させる制御信号を、機器制御信号出力回路13aがECU2のMPUに出力することで、ECU2から車載LAN4への信号の出力を停止する構成としてもよい。
【0044】
これによれば、外来ノイズの影響によってECU2の誤動作が生じ易い場合に、ECU2から車載LAN4への信号の出力を停止するので、ECU2からの信号を用いて制御を行う他ECUでのECU2の誤動作による不具合を抑えることが可能になる。その結果、ECU2の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。
【0045】
また、直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、ECU2から車載LAN4への信号の送出方法を、外来ノイズの影響をより受けにくい送出方法に変更させる制御信号を、機器制御信号出力回路13aがECU2のMPUに出力することで、送出方法を変更する構成としてもよい。
【0046】
外来ノイズの影響をより受けにくい送出方法への変更としては、例えば外来ノイズを埋もれさせるように出力アップしたり、外来ノイズ以外の周波数に変換したり、アイドル時間を長くしたり、通信速度を落としたりすることが挙げられる。
【0047】
これによれば、ECU2から車載LAN4へ出力する信号が外来ノイズの影響を受け易い場合に、外来ノイズの影響をより受けにくい送出方法に変更させるので、ECU2からの信号を用いて制御を行う他ECUでのECU2の誤動作による不具合を抑えることが可能になる。その結果、ECU2の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。
【0048】
さらに、直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、ECU2の外部からの信号を用いずに制御を行うモードに切り替えさせる制御信号を、機器制御信号出力回路13aがECU2のMPUに出力することで、ECU2の外部からの信号を用いずにECU2で制御を行わせる構成としてもよい。この場合、ECU2は、外部から入力される信号を用いて制御を行うモードと外部から入力される信号を用いずに制御を行うモードとの切り替えが可能なものとする。
【0049】
これによれば、外来ノイズの影響によって、外部から入力される信号に異常が生じていた場合に、ECU2の外部からの信号を用いずにECU2で制御を行わせるモードに切り替えるので、異常が生じた外部からの信号を用いることによる不具合を抑えることが可能になる。その結果、ECU2の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。
【0050】
他にも、ECU2がジカ線で接続されたセンサ等の電子装置から入力されるアナログ信号を用いて制御を行っている場合であって、且つ、直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、このアナログ信号に対して、外来ノイズによる影響を低減する加工を行わせる制御信号を、機器制御信号出力回路13aがECU2のMPUに出力することで、当該加工を行う構成としてもよい。
【0051】
外来ノイズによる影響を低減する加工としては、例えば逐次入力されてくるアナログ信号を移動平均する等の平均化、リトライ、異常値を除外するためのフィルタリングなどが挙げられる
これによれば、外来ノイズの影響によって、外部から入力されるアナログ信号に異常が生じていた場合に、外来ノイズによる影響を低減する加工を行うので、異常が生じた外部からのアナログ信号を用いることによる不具合を抑えることが可能になる。その結果、ECU2の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。
【0052】
また、ノイズ定量化回路12及び機器制御信号出力回路13aからなるセンサ信号処理回路14aは、外来の電磁波ノイズを遮蔽するシールド部材によってシールドされていることが好ましい。シールド部材としては、金属等の導電性の材料を用いればよく、例えばシールド部材でセンサ信号処理回路14aを囲うなどしてシールドすればよい。
【0053】
特に、センサ信号処理回路14aを、多層回路基板であるPALAP(登録商標)基板内に内蔵し、PALAP基板の外皮層及び積層方向の直列接続ビアを、センサ信号処理回路14aのシールド部材として用いることが好ましい。また、内蔵可能である場合には、ノイズ検出センサ11aも上述のPALAP基板内に内蔵することが好ましい。なお、PALAP基板とは、PALAP(Patterned PrepregLay Up Process)として知られる周知の一括熱プレスにて製造された多層回路基板である。
【0054】
ここで、図8(a)及び図8(b)を用いて、上述のPALAP基板内に、ロゴスキーコイルとしてのノイズ検出センサ11aとセンサ信号処理回路14aとを内蔵した構造についての説明を行う。図8(a)は、当該構造をしたPALAP基板を示す上面図であって、図8(b)は、図8(a)のII−II線断面図である。
【0055】
図8(b)では、便宜上、詳細な構造の図示は省略しているが、上記PALAP基板は、熱可塑性樹脂の基材からなる絶縁層と、当該基材に配線パターンが形成された配線層とが交互に積層されて、周知の一括熱プレスにて作製されている。具体的には、ロゴスキーコイルとしてのノイズ検出センサ11aやセンサ信号処理回路14aも上記配線層から構成されており、一括熱プレスにてPALAP基板が作製されることで、PALAP基板に内蔵されるようになっている。
【0056】
PALAP基板の上面と下面の外皮層104は、GNDとなっており、この外皮層104が、ノイズ検出センサ11aやセンサ信号処理回路14aにとっての、PALAP基板の積層方向からの外来の電磁波ノイズに対してのシールド部材として機能する。
【0057】
また、PALAP基板の積層方向には金属が充填された直列接続ビア103が設けられている。この直列接続ビア103は、ノイズ検出センサ11aやセンサ信号処理回路14aの、上記積層方向と直交する方向の外周を囲うように設けられているものとする。これにより、直列接続ビア103が、ノイズ検出センサ11aやセンサ信号処理回路14aにとっての、上記積層方向と直交する方向からの外来の電磁波ノイズに対してのシールド部材として機能する。
【0058】
以上の構成によれば、ノイズ検出センサ11aやセンサ信号処理回路14aがシールド部材によって外来の電磁波ノイズからシールドされるので、外来の電磁波ノイズによるノイズ検出センサ11aでの誤検出やセンサ信号処理回路14aの誤動作を防ぐことができる。
【0059】
ECUの筐体としては、軽量化のために金属ではなく樹脂が用いられるようになってきている。そのため、外来の電磁波ノイズ等の外来ノイズによるECUの誤動作に対応する手段として、ECU全体を金属で覆うシールド部材を採用することを避けたいという要求がある。
【0060】
これに対して、実施形態1の構成によれば、ノイズ検出センサ11aで検出した直流信号の強度が閾値以上(つまり、外来ノイズが閾値以上)であった場合に、電子装置の誤動作に対応するためのフェールセーフ処理を行うことで、ECU2の誤動作に対応することができるので、ECU2全体を金属で覆うシールド部材を採用しなくても、ECU2の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。また、シールド部材を用いる場合にも、前述したように、ノイズ検出センサ11aやセンサ信号処理回路14aをシールドするシールド部材を用いるだけに限定することができる。
【0061】
続いて、センサ用フェールセーフ装置1bの構成について図9を用いて説明する。センサ用フェールセーフ装置1bは、図9に示すように、ノイズ検出センサ11b、ノイズ定量化回路12、機器制御信号出力回路13bからなっている。また、ノイズ定量化回路12及び機器制御信号出力回路13bがセンサ信号処理回路14bを構成している。
【0062】
ノイズ検出センサ11bは、前述のノイズ検出センサ11aと同様のものである。ノイズ検出センサ11bは、前述の電流センサ、電界センサ、磁界センサ、電圧センサのいずれであってもよい。ノイズ検出センサ11bが請求項のセンサ部に相当する。
【0063】
センサ用フェールセーフ装置1bのノイズ定量化回路12は、ECU用フェールセーフ装置1aのノイズ定量化回路12と同様のものである。センサ用フェールセーフ装置1bの機器制御信号出力回路13bは、例えば図7に示す機器制御信号出力回路13aと同様の構成をしている。
【0064】
機器制御信号出力回路13bは、ノイズ定量化回路12で変換された直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、センサ3から車載LAN4への信号の出力を停止させる制御信号を、機器制御信号出力回路13aがセンサ3のコントローラ31に出力することで、センサ3から車載LAN4への信号の出力を停止する。
【0065】
これによれば、外来ノイズの影響によってセンサ3の誤動作が生じ易い場合に、センサ3から車載LAN4への信号の出力を停止するので、センサ3からの信号を用いて制御を行うECUでのセンサ3の誤動作による不具合を抑えることが可能になる。その結果、センサ3の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。
【0066】
また、機器制御信号出力回路13bは、直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、機器制御信号出力回路13aの場合と同様にして、ユーザへの警告を行わせる制御信号を報知デバイス5に出力したり、センサ3が誤動作をしている可能性があることを示すフェール信号を出力したり、外来ノイズの影響をより受けにくい送出方法に変更する構成としてもよい。
【0067】
なお、機器制御信号出力回路13aの場合と異なる点は、制御信号の出力先が、ECU2のMPUからセンサ3のコントローラ31になる点である。効果については、ECU2の誤動作の代わりに、センサ3の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる点を除けば同様である。
【0068】
また、センサ信号処理回路14bについても、前述したセンサ信号処理回路14aと同様にして、外来の電磁波ノイズを遮蔽するシールド部材によってシールドされていることが好ましい。
【0069】
次に、車両用フェールセーフ装置1cの構成について図10を用いて説明する。車両用フェールセーフ装置1cは、図10に示すように、ノイズ検出センサ11c、ノイズ定量化回路12、機器制御信号出力回路13cからなっている。また、ノイズ定量化回路12及び機器制御信号出力回路13cがセンサ信号処理回路14cを構成している。
【0070】
ノイズ検出センサ11cは、前述のノイズ検出センサ11aと同様のものである。ノイズ検出センサ11cは、前述の電流センサ、電界センサ、磁界センサ、電圧センサのいずれであってもよい。ノイズ検出センサ11cが請求項のセンサ部に相当する。
【0071】
車両用フェールセーフ装置1cのノイズ定量化回路12は、ECU用フェールセーフ装置1aのノイズ定量化回路12と同様のものである。車両用フェールセーフ装置1cの機器制御信号出力回路13cは、例えば図7に示す機器制御信号出力回路13aと同様の構成をしている。
【0072】
機器制御信号出力回路13cは、ノイズ定量化回路12で変換された直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、車両の減速や停車や停車後の再発進の一時禁止を行わせる制御信号を、車両の挙動を制御する挙動制御ECU6に出力する。挙動制御ECU6が請求項の挙動制御装置に相当する。
【0073】
挙動制御ECU6としては、車両に制動力を印加するブレーキアクチュエータを制御するVSC_ECUやブレーキECU等がある。挙動制御ECU6としてVSC_ECUやブレーキECUを用いる場合には、機器制御信号出力回路13cから入力される制御信号に従ってブレーキアクチュエータを制御し、車両の減速や停車を行わせる構成とすればよい。
【0074】
また、挙動制御ECU6としては、スロットルアクチュエータを制御するENG_ECUも用いることができる。挙動制御ECU6としてENG_ECUを用いる場合には、機器制御信号出力回路13cから入力される制御信号に従ってスロットルアクチュエータを制御してエンジンブレーキを発生させることで減速を行う構成とすればよい。
【0075】
他にも、挙動制御ECU6としては、車両の始動を禁止するイモビECUがある。挙動制御ECU6としてイモビECUを用いる場合には、機器制御信号出力回路13cから入力される制御信号に従って車両の始動を一時的に禁止する構成とすればよい。再発進の一時禁止は、所定時間としてもよいし、ノイズ定量化回路12で変換された直流信号の強度が所定の閾値を下回るまでとしてもよい。
【0076】
これによれば、外来ノイズの影響によって、車載の電子装置が誤動作し易い状況にある場合に、車両を減速させたり、停車させたり、停車後の再発進を一時禁止したりするので、車載の電子装置が誤動作する前に停車したり、車載の電子装置が誤動作した場合に迅速に停車したりすることが可能になる。その結果、車載の電子装置の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。
【0077】
さらに、直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、機器制御信号出力回路13cが、情報を記録する記録装置7に当該強度を出力して記録する構成としてもよい。直流信号の強度を記録する場合には、当該強度の直流信号を検出したときのタイムスタンプ(つまり、時刻情報)も記録する構成とすればよい。記録装置7は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリであるものとする。
【0078】
また、直流信号の強度を記録する場合に、時刻情報とともに、若しくは時刻情報に代えて、図示しない位置検出器で検出した、当該強度の直流信号を検出したときの自車の位置情報も記録する構成としてもよい。
【0079】
これによれば、所定の閾値を超えた場合の直流信号の強度を記録することができるので、外来ノイズの影響によって車載の電子装置の誤動作が実際に生じた場合に、その記録をもとに誤動作の原因を解析することができる。よって、誤動作が生じた場合にも、誤動作の原因を探る手間がかかる不具合を抑えることが可能になる。よって、車載の電子装置の誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。
【0080】
他にも、機器制御信号出力回路13bは、直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、ユーザへの警告を行わせる制御信号を報知デバイス5に出力する構成としてもよい。ユーザへの警告を行わせる制御信号が入力された報知デバイス5では、この制御信号に従ってユーザへの警告を行う。
【0081】
報知デバイス5が表示装置の場合には、テキストや画像の表示によって、外来ノイズによって車両の機能に不具合が生じる可能性を知らせる警告や減速や停車を促す警告を行ったり、外来ノイズが大きいことを示す警告を行ったりすればよい。音声出力装置の場合には、音声によって上述したような警告を行えばよい。照明装置の場合には、点灯によって警告を行えばよいし、振動発生装置の場合には、振動を発生させることで警告を行えばよい。
【0082】
これによれば、ユーザが警告を受けることができるので、外来ノイズの影響によって車載の電子装置の誤動作が生じ易い場合に、その誤動作に備えた対処をユーザがとることが可能になり、誤動作によるユーザの不具合を生じにくくすることが可能になる。
【0083】
なお、センサ信号処理回路14cについても、前述したセンサ信号処理回路14aと同様にして、外来の電磁波ノイズを遮蔽するシールド部材によってシールドされていることが好ましい。
【0084】
また、本発明を車両の衝突時に情報を記録する周知のドライブレコーダに適用する構成としてもよい。例えば、車両用フェールセーフ装置1cをドライブレコーダに組み込む。そして、車両の衝突時においてドライブレコーダのメモリに、衝突時点や衝突時点の前後の所定期間のカメラ映像や車速等のデータを記録する際に、当該衝突時点や当該所定期間にノイズ検出センサ11cで検出した外来ノイズやノイズ定量化回路12で変換された直流信号の強度についての情報も、当該メモリに記録する構成とすればよい。これによれば、車両の衝突時の外来ノイズの状態を容易に知ることが可能になる。
【0085】
また、機器制御信号出力回路13a・13bが、直流信号(電流センサで検出した電流、電圧センサで検出した電圧に限る)の強度が所定の閾値を超えた場合に、ノイズ検出センサ11a・11bで検出した交流信号と逆位相(例えば同振幅逆位相)の信号を車載LAN4に出力することで外来ノイズの影響を抑える構成としてもよい。なお、ここで言うところの交流信号は、電流センサとしてのノイズ検出センサ11a・11bで検出した交流電流、電圧センサとしてのノイズ検出センサ11a・11bで検出した交流電圧に限る。
【0086】
本実施形態では、閾値判定に用いる閾値が1つの構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、複数段階の閾値を閾値判定に用いる構成としてもよい。この場合、外来ノイズの強度に応じてECU2やセンサ3等の電子装置の誤動作の度合いが異なることを想定して、誤動作の度合いが変わると想定される強度ごとに閾値を設定することが好ましい。そして、複数段階の閾値のどの大きさの閾値を超えたかに応じて、出力する制御信号も変更することが好ましい。
【0087】
一例として、2段階の閾値があった場合に、1つ目の閾値を超えたところで、ユーザへの警告を行わせる制御信号を報知デバイス5に出力し、1つ目よりも大きな2つ目の閾値を超えたところで、車両の減速や停車や停車後の再発進の一時禁止を行わせる制御信号を挙動制御ECU6に出力する構成などとすればよい。なお、上述の例のように複数段階の閾値のどの大きさの閾値を超えたかに応じて、フェールセーフ処理の種類を変更する構成に限らず、警告の音量を変更するなどフェールセーフ処理の度合いを変更する構成としてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、ECU用フェールセーフ装置1a、センサ用フェールセーフ装置1b、車両用フェールセーフ装置1cにおいて、外来ノイズを検出するためのセンサを1つ備える構成を示したが、必ずしもこれに限らない。
【0089】
例えば、外来ノイズを検出するための検出対象が異なる4種のセンサ(つまり、電界センサ、磁界センサ、電流センサ、電圧センサ)のうちの2種以上のセンサを、ECU用フェールセーフ装置1a、センサ用フェールセーフ装置1b、車両用フェールセーフ装置1cに備える構成としてもよい。そして、この2種以上のセンサでの各々の検出結果をもとにして、外来ノイズの検出精度や閾値判定の判定精度を向上させる構成としてもよい。
【0090】
センサは、空間のノイズを検出する電界センサ・磁界センサと、信号線等の線から入力されるノイズを検出する電流センサ・電圧センサとの2つに分類されるが、電流センサ・電圧センサを用いる場合には、外来ノイズの他にも車内のECUやモータ等のノイズが混じる可能性がある。従って、電界センサや磁界センサと電流センサや電圧センサとの両方を用い、電界センサや磁界センサで検出した外来ノイズは低いのにもかかわらず、電流センサや電圧センサで検出した外来ノイズが大きくなった場合には、車内のノイズ源の影響と判断して、外来ノイズのレベルは低いと判断する構成とすればよい。
【0091】
一例として、電流センサや電圧センサで検出した外来ノイズが、前述の閾値判定の電流センサや電圧センサについての閾値以上であった場合でも、電界センサや磁界センサで検出した外来ノイズが、前述の閾値判定の電界センサや磁界センサについての閾値以上でなかった場合には、外来ノイズが閾値以上でないと判定し、以降の処理を前述したのと同様にして行う構成とすればよい。
【0092】
他にも、本実施形態では、閾値判定を行って、閾値を超えた場合に制御信号を出力する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、機器制御信号出力回路13a・13b・13cにおいて、ノイズ定量化回路12から出力される信号(アナログ信号とする)の大きさに応じた強度で、フェールセーフ処理を行う構成としてもよい。
【0093】
一例としては、ノイズ定量化回路12から出力されるアナログ信号が大きくなるほど、報知デバイス5としての音声出力装置から出力する警告の音量を増加させたり、報知デバイス5としての振動発生装置から発生させる振動の周期を短くしたりするなどすればよい。よって、ノイズ定量化回路12が請求項のノイズ対応出力部に相当する。
【0094】
(実施形態2)
本発明は上述の実施形態1に限定されるものではなく、次の実施形態2も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、実施形態2について図面を用いて説明を行う。図11に示すように、フェールセーフシステム200は、センタ10と、複数の車両の各車両に搭載された車載システム101とを含む。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
センタ10は、サーバから構成されており、センタ側通信装置41、センタ側制御装置42、及び地図データベース(DB)43を備えている。なお、センタ10は、1つのサーバからなるものであってもよいし、複数のサーバからなっているものであってもよい。
【0096】
センタ側通信装置41は、無線基地局やインターネット等の通信網を介して、車両側通信装置9との間で通信を行う。センタ側制御装置42は、CPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。そして、ROM等に記憶されたプログラムに従って、各種の処理を行う。また、地図DB43には、電子地図データが格納されている。
【0097】
続いて、車載システム101は、車両用フェールセーフ装置1c、位置検出器8、及び車両側通信装置9を含んでいる。本実施形態では、一例として車両用フェールセーフ装置1cを含む構成を示すが、必ずしもこれに限らず、車両用フェールセーフ装置1cの代わりにECUフェールセーフ装置1aやセンサ用フェールセーフ装置1bを用いる構成としてもよい。
【0098】
位置検出器8は、地磁気を検出する地磁気センサ、自車両の鉛直方向周りの角速度を検出するジャイロスコープ、自車両の移動距離を検出する距離センサ、および衛星からの電波に基づいて車両の現在位置を検出するGPS(global positioning system)のためのGPS受信機といった各センサから得られる情報をもとに、自車の現在位置の検出を逐次(例えば100msecごとに)行う。また、位置検出器8は、検出した現在位置情報を車両側通信装置9に出力する。なお、自車の現在位置は、座標(緯度・経度)で表すものとすればよい。
【0099】
これらのセンサは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、各センサの精度によっては位置検出器8を上述した内の一部で構成してもよいし、上述した以外のセンサを用いる構成としてもよい。
【0100】
車両側通信装置9は、無線基地局やインターネット等の通信網を介して、センタ側通信装置41との間で通信を行う。車両側通信装置9は、携帯電話網を利用してテレマティクス通信を行うDCM(data communication module)等の通信モジュールであってもよいし、ETC(登録商標)システム等で用いられる狭域通信(DSRC)や、VICS(登録商標)等で用いられる電波ビーコンおよび光ビーコンの技術を用いるものであってもよい。他にも、700MHz帯の電波や5.9GHz帯の電波を利用するものであってもよい。
【0101】
次に、フェールセーフシステム200における全体の処理の流れについて説明を行う。まず、車載システム101では、車両用フェールセーフ装置1cの機器制御信号出力回路13cにおいて、ノイズ定量化回路12で変換された直流信号の強度が所定の閾値を超えた場合に、例えばこの直流信号の強度の情報(つまり、外来ノイズの強度の情報)を車両側通信装置9に出力する。
【0102】
車両用フェールセーフ装置1cから直流信号の強度の情報が入力された車両側通信装置9では、例えば同時期に位置検出器8から入力された車両の現在位置情報と、当該直流信号の強度の情報とを紐付けて(対応付けて)センタ側通信装置41に送信する。紐付けされて車両側通信装置9からセンタ側通信装置41に送信される直流信号の強度の情報及び車両の現在位置情報を、以下では外来ノイズ発生データと呼ぶ。
【0103】
外来ノイズ発生データを受信したセンタ側通信装置41は、受信した外来ノイズ発生データをセンタ側制御装置42に送る。センタ側制御装置42は、地図DB43に格納されている電子地図データと、受信した外来ノイズ発生データとをもとに、外来ノイズ発生データに含まれる車両の現在位置情報が示す地点を電子地図上にマッピングする。つまり、外来ノイズの強度が閾値以上であった地点を電子地図上の位置に対応付ける。上記マッピングを行った電子地図データについては、地図DB43に格納する。
【0104】
センタ10では、複数の車両の車載システム101から送信される外来ノイズ発生データについて、電子地図上に上記マッピングを行うことで、複数の車両の外来ノイズ発生データを集積してマッピングすることになる。そして、センタ10のセンタ側制御装置42は、例えば上記マッピングを行った電子地図データを、センタ側通信装置41から各車両の車両側通信装置9に向けて配信する。
【0105】
上記マッピングは、外来ノイズ発生データに含まれる車両の現在位置情報が示す地点(以下、ノイズ検出地点)を電子地図上に対応付けるだけに限らないものとする。例えば、ノイズ検出地点を中心とした所定の半径の円を重畳表示させる構成としてもよい。さらに、この円の色相や彩度や明度を、外来ノイズ発生データに含まれる直流信号の強度の情報が示す強度に応じて複数段階に変化させる構成としてもよい。
【0106】
また、ノイズ検出地点が含まれる電子地図上のメッシュを特定の色付けして強調表示する構成としてもよい。さらに、このメッシュの色相や彩度や明度を、外来ノイズ発生データに含まれる直流信号の強度の情報が示す強度に応じて複数段階に変化させる構成としてもよい。
【0107】
他にも、電子地図上のメッシュ内のノイズ検出地点の密度に応じて、メッシュの色相や彩度や明度を複数段階に変化させる構成としてもよい。
【0108】
これによれば、上記マッピングを行った電子地図データの配信を受けた車両において、例えばナビゲーション装置等のディスプレイに、外来ノイズの強度が閾値以上であった地点を示す電子地図を表示させることが可能になる。よって、自車が走行したことのない経路における外来ノイズの強度が大きい地点を乗員が予測することができ、外来ノイズの強度が大きいと推測される地点を避けて走行することが可能になる。
【0109】
また、上記マッピングした電子地図データをセンタ側通信装置41から配信するのではなく、センタ10で集積した、外来ノイズの強度が閾値以上であった地点の座標を各車両に配信する構成としてもよい。
【0110】
この場合でも、上記座標の配信を受けた車両において、例えばナビゲーション装置等のディスプレイに、外来ノイズの強度が閾値以上であった地点を示す電子地図を表示させることが可能になる。よって、自車が走行したことのない経路における外来ノイズの強度が大きい地点を乗員が予測することができ、外来ノイズの強度が大きいと推測される地点を避けて走行することが可能になる。
【0111】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
1a ECU用フェールセーフ装置(フェールセーフ装置)、1b センサ用フェールセーフ装置(フェールセーフ装置)、1c 車両用フェールセーフ装置(フェールセーフ装置)、2 ECU(電子装置)、3 センサ(電子装置)、11a・11b・11c ノイズ検出センサ(センサ部)、12 ノイズ定量化回路12(ノイズ対応出力部)、13a・13b・13c 機器制御信号出力回路(閾値判定部、フェールセーフ部)、21 信号線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11