(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。また、本明細書において「任意の数A〜任意の数B」なる記載は、数A及び数Aより大きい範囲であって、数B及び数Bより小さい範囲を意味する。
本発明の光学用粘着剤は、重量平均分子量が20万〜200万の粘着性樹脂(A)と、顔料(B)と、分散剤(C)と、硬化剤(D)とを含むものである。
【0014】
粘着性樹脂(A)は、粘着性を有する樹脂(polymer)であることが必要である。具体的には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エラストマー系樹脂(例えば、ゴム系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂等)等が好ましい。これらの樹脂の中でも粘着物性の調整の容易さからアクリル系樹脂が好ましい。
【0015】
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、20万〜200万が好ましく、20万〜150万がより好ましく、40万〜150万がさらに好ましい。重量平均分子量が20万以下であると粘着剤層の凝集力が不十分となり、例えば液晶パネルから光学フィルムを再剥離(リワーク)する際に糊残りが発生する恐れがあり好ましくない。また、重量平均分子量を200万以下とすることにより、粘着剤層の凝集力と粘着力を良好に保つことができる。重量平均分子量が20万〜150万であることで、環境耐性と粘着力が得やすくなる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値であり、後述する実施例の測定法により求めた値を示している。
【0016】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−60℃〜0℃が好ましく、−60〜−20℃がより好ましい。Tgが−60℃〜0℃になることで高い粘着力が得やすくなる。なお、アクリル系樹脂のTgは、モノマーのホモポリマーのTgをFOXの式に代入して求めた理論値である。ホモポリマーTgは、ポリマーハンドブックによる。
【0017】
アクリル系樹脂は、モノマーを重合することで得ることが好ましい。重合方法は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等が好ましいが、重合制御の容易さから溶液重合が好ましい。前記モノマーとしては、アクリル系モノマー、芳香族系モノマー、その他のビニル系モノマーを用いることが好ましい。アクリル系樹脂中、アクリル系モノマーの割合は、50mol%〜100mol%とすることが好ましい。
【0018】
アクリル系モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸エステルや、カルボキシル基含有モノマーや、カルボキシル基以外の極性基含有モノマーが好ましい。
【0019】
上記(メタ)アクリル酸エステルは、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)エタクリル酸メチル、(メタ)メタクリル酸ブチル、(メタ)メタクリル酸ヘキシル、(メタ)メタクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)メタクリル酸イソデシル、(メタ)メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。アクリル系モノマーは単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、例えば(メタ)アクリル酸メチルは、アクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルを包含することを意味する。
【0020】
上記カルボキシル基含有モノマーは、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル酸、β − カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ブチル等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記カルボキシル基以外の極性基含有モノマーは、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリルアミド、置換アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリルアミド等の窒素含有単量体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体などが挙げられる。これらの単量体は単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、カルボキシル基以外の極性基含有モノマーを用いた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、高温・高湿環下でも透明電極層の腐食が起こりにくくなるため、より好ましい。
【0022】
上記芳香族系モノマーは、特に限定されないが、例えばスチレン、α−メチルスチレンが挙げられる。上記その他のビニル系モノマーは、アクリル系モノマーと芳香族系モノマー以外のモノマーであり、特に限定されないが、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルが挙げられる。芳香族モノマー、その他のビニルモノマーは、それぞれ独立に単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
顔料(B)は、粘着性樹脂(A)及び分散剤(C)とともに混合することで色調補正機能を有しながら、長期間高温・高湿環境に晒される場合でも高い粘着力および顔料(B)の分散性を維持する役割を担う。
【0024】
上記顔料(B)は、使用するディスプレイの色調を調整できるような補色関係にある顔料を選択すれば良く、特に限定されない。顔料(B)は、公知の無機系顔料、有機系顔料などが好ましい。顔料(B)の添加量は、粘着性樹脂(A)に対して0.00001〜0.1重量部の範囲とすることが好ましい。0.00001重量部以上〜0.1重量部以下とすることにより、光透過率・粘着力のバランスを保ちつつ、ディスプレイ等に使用する場合に色補正機能を効果的に発揮させることができる。顔料(B)の添加量は、補正するフィルム等に応じて適宜設計すればよい。
【0025】
無機系顔料としては、例えば酸化チタン系顔料、酸化鉄系顔料などの金属酸化物系顔料、クロム酸塩系顔料、硫化物系顔料、ケイ酸塩40系顔料、炭酸塩系顔料、フェロシアン化合物などが挙げられる。
【0026】
有機系顔料としては、例えば、アゾ系顔料、アントラキノン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、ぺリレン・ぺリノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリノン系顔料、ピロール系顔料、フタロシアニン系顔料、アニリンブラック系顔料、カーボンブラック系顔料などが挙げられる。顔料(B)は、単独または複数を適宜使用することで色調を補正することが好ましい。
【0027】
また、顔料(B)は、有機系や無機系の化合物により表面を被覆した顔料を使用することも好ましい。表面被覆により顔料(B)の分散安定性をより向上できる。
【0028】
分散剤(C)は、粘着剤中に顔料(B)を良好に分散するために使用する。分散剤(C)を使用しないと、微細な顔料(B)を使用したとしても、粘着性樹脂と配合するときに、凝集する場合が多い。この分散剤(C)は、例えば界面活性剤や、同時に使用する顔料に置換基を導入した顔料誘導体や、樹脂分散剤などが好ましい。分散剤(C)の添加量は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で特に限定されないが、顔料(B)100重量部に対して、分散剤(C)を10〜1,000重量部使用するのが好ましく、10重量部〜450重量部がより好ましく、10重量部〜200重量部がさらに好ましい。分散剤(C)を10重量部〜1000重量部使用することで顔料分散性をより向上できる。また、環境耐性と透明性がより向上するので好ましい。
【0029】
上記界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系非イオン性界面活性剤、シリコン系非イオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、四級アミン塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。界面活性剤は単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上記樹脂分散剤は、例えばポリアミド系樹脂、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特に調整等の容易さからアクリル系樹脂が好ましい。
【0031】
上記樹脂分散剤は、その重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、1,000〜30,000がより好ましい。重量平均分子量が1,000〜100,000の範囲であることで顔料(B)の分散性をより向上できる。
【0032】
上記樹脂分散剤は、その酸価が10〜300mgKOH/gであることが好ましく、50〜250mgKOH/gがより好ましい。酸価が10〜300mgKOH/gの範囲であることで顔料分散性をより向上できる。
【0033】
相溶性の観点から、例えば粘着性樹脂(A)にアクリル系樹脂を用いる場合は、分散剤(C)もアクリル系樹脂であることが好ましく、分散剤(C)で用いるアクリル系樹脂の合成に使用するモノマーは、粘着性樹脂(A)のアクリル系樹脂を合成する際に例示したモノマーを使用できる。
【0034】
また、顔料(B)は、分散剤(C)と混合した顔料分散体を調製してから粘着性樹脂(A)と配合することで、顔料(B)をより微細に分散できる。
【0035】
この顔料分散体の製造には、有機溶媒を用いることが好ましい。具体的には、例えば、顔料(B)と分散剤(C)との分散性の観点から、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−n− アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられる。有機溶媒は、単独にもしくは混合して用いることができる。
【0036】
顔料(B)の分散方法は、特に限定はなく、例えばサンドミル、ボールミル、ビーズミル、3本ロールミル、高速度衝撃ミルなどを公知の装置を使用できる。また、メディアを使用する場合は、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズなどを使用できる。
【0037】
顔料分散体は、その平均粒子径(d50)を1〜500nmとすることが好ましく、1〜300nmとすることがより好ましく、1〜100nmがさらに好ましい。またその平均粒子径(d90)は、50〜650nmがより好ましく、50〜200nmがさらに好ましい。平均粒子径(d50)が1〜500nmであることで粘着剤層中に顔料(B)を均一に分散しやすくなる。これにより、粘着剤層は透明性がより良好になり、凝集力も良好であるためより高い粘着力が得やすくなる。さらに、単に透明電極の色調を補正するのみならず、長期間、高温高湿環境に晒された後も、上記の特性を維持することが可能になる。また、平均粒子径(d50)を1〜500nmとし、かつ平均粒子径(d90)を50〜650nmとすることにより、前記特性をより向上できる。なお、平均粒子径(d50)とは、体積平均粒度分布における50%通過粒子径であり、平均粒子径(d90)とは、体積平均粒度分布における90%通過粒子径のことであり、これらの平均粒子径は、光散乱法で上記粒径範囲が測定可能なレーザー回折・散乱式粒度分析計(日機装社製、MT−3300)等によって測定することができる。
【0038】
光学用粘着剤は、硬化剤(D)を含む。硬化反応により粘着剤層に凝集力が得られることで粘着力が得やすくなる。
【0039】
硬化剤(D)としては、粘着性樹脂(A)の官能基に対して、反応可能な官能基を有する化合物を使用できる。具体的には、例えば粘着性樹脂(A)が水酸基を有する場合は、ポリイソシアネート化合物等が好ましく、粘着性樹脂(A)がカルボキシル基を有する場合は、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、エポキシ化合物等が好ましい。他の硬化剤として、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー等を任意に使用ができる。
【0040】
硬化剤(D)の使用量は、粘着性樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましく、0.1〜8重量部がさらに好ましい。硬化剤(D)を、粘着性樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜20重量部使用することで、十分な粘着剤層の凝集力をより向上でき、環境耐性がより向上できる。
【0041】
また、光学用粘着剤は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤を用いることで、基材への密着性をより向上できる。その結果、高温高湿熱環境での耐久性をより向上できる。
【0042】
このシランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、粘着剤成分との相溶性がよく、かつ光透過性を有するものが好ましく、透明なものがより好ましい。このようなシランカップリング剤の添加量は、粘着性樹脂(A)100重量部に対し、0.001〜10重量部の範囲が好ましく、特には0.005〜5重量部の範囲が好ましい。シランカップリング剤を、粘着性樹脂(A)100重量部に対し、0.001〜10重量部使用することで粘着剤層と被着体との粘着力をより向上できる。
【0043】
前記シランカップリング剤は、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は、単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明の光学用粘着剤には、本発明の目的を損なわない範囲で、粘着剤等に一般的に使用されている各種添加剤、例えば粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、カップリング剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、リン酸エステルなどを添加することができる。
【0045】
光学用粘着剤は、粘着性樹脂(A)と、顔料(B)と、分散剤(C)を配合し、前述の分散方法で分散することで製造できる。硬化剤(D)は使用する直前に配合することが好ましい。また、顔料(B)と分散剤(C)を予備分散して顔料分散体を製造した場合は、粘着性樹脂(A)と、顔料分散体を混合することで製造できる。また、粘着性樹脂(A)と顔料分散体を混合する際は、粘着剤と顔料分散体に使用される溶媒が異なるため、ソルベントショックによって、一次粒子同士の凝集が起こる場合がある。そのような観点から、光学用粘着剤の平均粒子径(d50)は、10〜650nmが好ましい。光学用粘着剤の平均粒子径(d50)は、前記光散乱法で測定できる。
【0046】
本発明の光学用粘着剤は、透明な部材の色調を調整するために使用することが好ましいく、LCDの色調を調整する用途として好適である。とりわけ、タッチパネルの透明電極と他の部材とを貼り合わせるために使用する用途に好適である。透明電極層は多少着色がある場合があるため本発明の光学用粘着剤をタッチパネルに使用することで色調補正をしながら、長期間高温・高湿環境(以下環境耐性という)に晒される場合でも高い粘着力および顔料の分散性の維持できる。しかも、他の色補正用部材を必要としないため、その厚みを従来よりも薄くすることができる。
【0047】
本発明の光学用粘着シートは、例えば、上記のような材料を配合した光学用粘着剤を剥離ライナー上、または基材上へ塗工することで形成できる。本発明の光学用粘着シートは、少なくとも粘着剤層を有するものである。
【0048】
ここで光学用粘着シートは、基材の片面に当該粘着剤層が形成された片面粘着テープや、基材の両面もしくはどちらか一方だけに当該粘着剤層が形成された両面テープを含む。または、2枚の剥離ライナー間に粘着剤層が形成されたいわゆるキャスト粘着テープであってもよい。なお、本発明において粘着シートと、粘着テープまたは粘着フィルムは同義語である。
【0049】
このようにして形成された粘着剤層の可視光帯域(380〜780nm)における全光線透過率は、当該粘着剤層の厚さが50μmであるとき、80%以上、100%未満が好ましく、82%以上とすることがより好ましい。全光線透過率が80%以上、100%未満であることで透明性をより向上できる。
【0050】
光学用粘着シートの粘着剤層に含まれる顔料(B)は、最小単位である一次粒子と、それらが複数個集まった二次粒子が混在した状態で存在している。そして、その一次粒子径の平均粒子径は1〜500nmが好ましく、1〜300nmがより好ましい。分散剤(C)を使用することで、粘着剤層に分散した顔料(B)を一次粒子により近づけることができるため、光学用粘着シートの透明性が向上する。なお、顔料(B)の粘着剤層中の平均粒子径は、電子顕微鏡写真や光学顕微鏡写真の拡大画像(例えば、千倍〜1万倍)から一次粒子の大きさを直接計測する一般的な方法で行った。具体的には、20個〜50個の粒子をサンプリングして、その短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とした。
【0051】
また、一般的に色調補正を行う対象がインジウム酸化物(ITO)フィルムの場合、当該粘着剤層は、粘着剤層の厚さを50μmにしたときのCIE1976L*a*b*表色系により規定される色度が、a*が−2.0以上であり、b*が−3.0以上0.0以下であることが好ましい。ここで、a*は正の値で絶対値が大きいほど赤色が強く、負の値で絶対値が大きいほど緑色が強くなる。また、b*は正の値で絶対値が大きいほど黄色が強く、負の値で絶対値が大きいほど青色が強くなる。この数値範囲内になることで、色調補正機能をより向上できるが、色調補正する対象によってはこの限りではない。
【0052】
粘着剤層の厚みは、2〜1,000μmが好ましく、5〜500μmがより好ましく、10〜300μmがさらに好ましい。粘着剤層は単層でも、2層以上の積層いずれの形態でもよい。この粘着剤層の形成方法は、特に限定されないが、好適な例として塗工により形成する方法が挙げられる。塗工には、コンマコーター、ダイコーターロールコーター、グラビアコーター等の公知の塗工機を用いることができる。
【0053】
前記剥離ライナーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムまたはプラスチックシートに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布し剥離層を設けたものなどが挙げられる。この剥離ライナーの厚さについては特に制限はないが20〜150μm程度である。
【0054】
本発明において、基材は特に制限はされないが、例えばプラスチックフィルムや、反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板などの各種光学フィルムが挙げられる。前記プラスチックフィルムとしては、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンフィルム等が挙げられる。上記記載の基材の厚さは特に制限されないが、10〜2,000μmが好ましい。
【0055】
本発明の光学用粘着シートの被着体は、特に制限されないが、アクリル、ポリカーボネート、ガラスまたはポリエチレンテレフタレートなどが好ましく、透明電極層を有するものがより好ましい。また、本発明の光学用粘着シートは、透明電極が使用されるタッチパネルをはじめ、電子ペーパー、液晶パネル、プラズマディスプレイパネルなど、高品位が要求されるようなディスプレイ等の積層体として使用することが好ましい。
[実施例]
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、実施例中、「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」をそれぞれ示すものとする。また、「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0057】
<粘着性樹脂(A)の合成例A−1>
攪拌機、還流冷却機、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、窒素雰囲気下にてn−ブチルアクリレート99.0部と、2−ヒドロキシルエチルアクリレート1.0部の合計量のうちの50%、及び重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリルを適量、溶剤として酢酸エチルを反応槽に仕込み、前記合計量の残りの50%と適量の酢酸エチルを滴下槽に仕込んだ。次いで、加熱を開始して反応槽内での反応開始を確認してから、還流下、滴下管の内容物、及び適量の2,2’−アゾビスイソブチルニトリルの酢酸エチル希釈液を滴下した。滴下終了後、還流状態を維持したまま5時間反応を行った。反応終了後、冷却し、適量の酢酸エチルを添加することで、アクリル系樹脂である粘着性樹脂(A)の合成例A−1を得た。得られた合成例A−1の粘着剤樹脂(A)の重量平均分子量は50万、不揮発分は40%、粘度は3,200mPa・sであった。なお、重量平均分子量は、昭和電工社製「GPC101」(使用カラム「ShodexKF−806L、KF−804L、KF−802を連結した」、溶剤:テトラヒドロフラン(THF)、測定温度:40℃)を用いて測定した。
【0058】
<粘着性樹脂(A)の合成例A−2〜A−5>
合成例A−1と同様の方法で、使用するモノマー比率、重合開始剤量を調整することで、表1に示す粘着性樹脂である合成例A−2〜A−5を得た。
【0060】
<樹脂分散剤溶液C−1の合成>
攪拌機、還流冷却機、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、下記モノマー、適量の2,2'−アゾビスイソブチロニトリル及びシクロヘキサノン450部を入れ、反応装置に窒素ガスを注入しながら加熱を行い、液温80℃で下記モノマー及び重合開始剤の混合物を1時間かけて滴下して重合反応を行った。
メタクリル酸:20.0部
メチルメタクリレート:10.0部
n−ブチルメタクリレート:55.0部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート:15.0部
2,2'−アゾビスイソブチロニトリル:4.0部
滴下終了後、さらに3時間反応させた後、適量の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを適量のシクロヘキサノンで溶解した溶液を添加し、さらに1時間反応を継続した後、冷却した。室温まで冷却した後、溶液の不揮発分が20%になるようにシクロヘキサノンを添加することで重量平均分子量が15,300、
酸価148のアクリル系樹脂の樹脂分散剤溶液C−1を得た。
【0061】
<樹脂分散剤溶液C−2〜C−9の合成>
樹脂分散剤溶液C−1と同様の方法で、使用するモノマー比率、重合開始剤量を調整することで、表2に示す樹脂分散剤溶液C−2〜C−9を得た。なお、樹脂分散剤溶液は分散剤(C)である。
【0063】
<顔料分散体の製造例1>
下記に示す混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで分散した後、濾過し、不揮発成分が20%の顔料分散体(製造例1)を得た。
青色顔料(フタロシアニン系顔料:C.I.Pigment Blue15:6(トーヨーカラー社製「リオノール ブルーE」):11.0部
樹脂分散剤溶液C−1:45.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC):44.0部
得られた顔料分散体1の平均分散粒径をダイナミック光散乱光度計DLS−700(大塚電子社製)を用いて測定した。顔料分散体1の平均粒子径(d50)は50nmであった。
【0064】
<顔料分散体の製造例2〜9>
製造例1と同様の方法で、使用する樹脂分散剤溶液(分散剤(C))を調整することで、表3に示す顔料分散体(製造例2〜9)を得た。
【0065】
製造例1と同様の方法で、使用する分散剤(C)をアルキルスルホコハク酸塩(花王社製「ペレックスOT−P」)に変更し、表3に示す顔料分散体(製造例10)を得た。
【0066】
製造例1と同様の方法で、使用する分散剤(C)をポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬社製「プライサーフA208F」)に変更することで、表3に示す顔料分散体(製造例11)を得た。
【0067】
<顔料分散体の製造例12>
下記に示す混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)で3時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し、不揮発成分が20%の顔料分散体(製造例12)を得た。
赤色顔料(アントラキノン系赤色顔料:C.I.ピグメント レッド 177(チバ・ジャパン社製「クロモフタルレッド A2B」):11.0部
樹脂分散剤溶液C−1:45.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC):44.0部
その後、平均分散粒径をダイナミック光散乱光度計DLS−700(大塚電子社製)を用いて測定した。顔料分散体の平均粒子径(d50)は40nmであった。
【0068】
<顔料分散体の製造例13〜14>
製造例12と同様の方法で、使用する分散剤の種類および配合量を調整することで、表3に示す顔料分散体(製造例13〜14)を得た。
【0069】
<顔料分散体の経時安定性の評価>
得られた顔料分散液を23℃で放置し、経時での安定性を確認し、次の基準で評価した。そして、経時安定性で分散液に変化が確認された製造例サンプルは、以後の評価を中止した。
◎:1週間放置後の分散液に変化がない。
○:1週間放置後の分散液に、僅かに増粘が確認されるが、実用上問題ない。
×:1週間放置後の分散液がゲル化、もしくは凝集物が生じた。
【0071】
<光学用粘着シートの作製>
<実施例1>
粘着性樹脂(A)として、合成例A−1の粘着性樹脂
溶液100部に対して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで100倍希釈した顔料分散体(製造例1)の溶液を0.8部、シランカップリング剤としてS−510(チッソ社製)を0.1部、硬化剤(D)としてキシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体を0.4部加え、よく攪拌し粘着剤を得た。その後、この粘着剤を厚さ75μmの剥離ライナー上に、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、100℃の熱風オーブンで2分間乾燥させた。そして、粘着剤層側に38μmの剥離ライナーを貼り合せ、この状態で室温にて7日間エージングさせ、光学用粘着シート1を得た。
【0072】
<実施例2〜12、14〜19、比較例1>
使用する顔料(B)と分散剤(C)を表4のように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜12、14〜19、比較例1に示すような光学用粘着シートを得た。
【0073】
<実施例13>
粘着性樹脂(A)として、合成例A−1の不揮発分100部に対して、青色顔料を0.0044部、分散剤(C)として顔料100重量部に対して樹脂分散剤溶液C−2
の不揮発分81.8重量部、次いでこの溶液に酢酸エチルを加えて、不揮発分が15.0%になるように調製した。そして、溶液を十分に攪拌した後に、ビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)で分散した後、濾過し、不揮発成分が15.0%の混合物を作製した。
得られた混合物を用いて、実施例1と同様にして、実施例13に示すような光学用粘着シートを得た。
【0074】
<実施例20〜21、比較例2〜3、参考例>
実施例13の配合から、表4の配合のように顔料(B)又は分散剤(C)を変更したこと(使用しないこと)以外は、実施例1と同様にして、比較例2〜3、参考例に示すような光学用粘着シートを得た。
【0075】
<比較例4>
実施例3において、粘着性樹脂(A)として合成例A−5を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例4に示すような光学用粘着シートを得た。
【0077】
<物性評価>
実施例、比較例、及び参考例で得られた光学用粘着シートを用いて、以下のような方法で評価を行った。特に記述が無い限り、評価は23℃−50%RHの恒温恒湿下で行った。結果を表5に示す。
【0078】
<粘着力>
得られた上記光学用粘着剤シートから剥離ライナーを剥がし、PETフィルム(東洋紡績社製、A−4300、厚さ100μm)に貼り合わせる。その後25mm幅、100mm長のサンプルを2つ切り出し、もう一方の剥離ライナーを剥がして(粘着剤層の厚さ50μm)、露出した粘着剤層をガラスに貼付した後、2kgロールで圧着し、23℃ 、相対湿度50%の環境下で24時間放置した後、引張試験機を用いて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力を測定する。
【0079】
得られた上記粘着剤シートから剥離ライナーを剥がし、PETフィルム(東洋紡績社製、A−4300、厚さ100μm)に貼り合わせた。その後25mm 幅、100mm 長のサイズに切り出し、もう一方の剥離ライナーを剥がして( 粘着剤層の厚さ50μm)、露出した粘着剤層をガラス板(厚さ1.1mm)に貼付した後、50℃雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけて、20分間保持し、粘着シートを十分にガラス板に密着させた試験試料を作製し、全光線透過率を測定した。
なお、測定には日本電色工業社製、Turbidimeter NDH5000Wを用いた。評価基準は以下の通りである。
<全光線透過率>
◎:全光線透過率が86%以上
○:全光線透過率が82%以上86%未満
△:全光線透過率が80%以上82%未満
×:全光線透過率が80%未満
【0080】
<L*、a*、b*の測定>
得られた上記粘着剤シートから剥離ライナーを剥がし、PETフィルム(東洋紡績社製、A−4300、厚さ100μm)に貼り合わせた。その後25mm幅、100mm長のサイズに切り出し、もう一方の剥離ライナーを剥がして(粘着剤層の厚さ50μm)、露出した粘着剤層をガラス板(厚さ1.1mm)に貼付した。そして、50℃雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけて、20分間保持し、粘着シートを十分にガラス板に密着させた試験試料を作製し、L*a*b*を測定した。なお、測定には日本電色工業社製、製分光式色彩計SE−20000を用いた。
また、この試料を85℃−90%RH環境下に240時間放置した後、再度L*a*b*を測定し、以下の基準で評価した。
<耐湿熱試験後のL*、a*、b*の測定>
◎ : Δa*、Δb*がともに0.2未満。
△ : Δa*、Δb*の一方もしくは両方が0.2以上0.4未満。
× : Δa*、Δb*の一方もしくは両方が0.4以上。
Δa*=|(経時試験前a*−経時試験後a*)|
Δb*=|(経時試験前b*−経時試験後b*)|
【0081】
<加熱加湿経時後の信頼性>
得られた上記粘着剤シートから剥離ライナーを剥がし、PETフィルム(東洋紡績社製、A−4300、厚さ100μm)に貼り合わせる。その後25mm幅、100mm長のサイズに切り出し、もう一方の剥離ライナーを剥がして(粘着剤層の厚さ50μm)、露出した粘着剤層をガラス板(厚さ1.1mm)に貼付した後、50℃雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけて、20分間保持し、粘着シートを十分にガラス板に密着させた試験試料を作製し、この試料を85℃−90%RH環境下に1,000時間放置した後、試料の外観を目視評価、及びL*a*b*を測定した。評価基準は以下の通りである。
<耐湿熱試験後の外観>
◎ : 気泡、及び浮きやはがれが確認されなかった。
○ : 気泡、及び浮きやはがれが一部確認されたが、実用上問題なかった。
△ : 気泡、及び浮きやはがれが多数確認された。実用上問題がある。
× : 気泡、及び浮きやはがれが全面に確認された。
【0082】
<加熱加湿経時後の白化>
得られた上記粘着剤シートから剥離ライナーを剥がし、ITOによる透明電極膜が形成されたフィルムのITO膜形成面に貼り合せた。その後25mm幅、80mm長のサイズに切り出し、もう一方の剥離ライナーを剥がして(粘着剤層の厚さ50μm)、露出した粘着剤層を、ガラス板(厚さ1.1mm)に貼り合せた。さらに50℃雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけて、20分間保持し、粘着シートを十分にガラス板に密着させた試験試料を作製した。
試料を85℃−90%RH環境下に1,000時間放置した後、23℃−50%環境下にて3時間冷却した試料のHAZEを測定した。
なお、測定には日本電色工業社製、Turbidimeter NDH5000Wを用いた。評価基準は以下の通りである。
◎ : HAZEが1.0未満
○ : HAZEが1.0以上2.0未満
△ : HAZEが2.0以上5.0未満
× : HAZEが5.0以上
【0084】
表5の結果から明らかなように、粘着剤に分散剤(C)を使用したことで粘着剤層において顔料(B)の微細な分散が可能になる。そして、長期間高温・高湿環境に晒された後でも、加熱加湿経時後の信頼性および加熱加湿経時後の白化の評価結果が良好であることから、それぞれ高い粘着力および透明性を維持していることがわかる。