特許第5983207号(P5983207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983207
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】ポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/78 20060101AFI20160818BHJP
   C08G 63/16 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   C08G63/78
   C08G63/16
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-196544(P2012-196544)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-12806(P2014-12806A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-128433(P2012-128433)
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川口 高明
(72)【発明者】
【氏名】東島 道夫
(72)【発明者】
【氏名】川辺 雅之
(72)【発明者】
【氏名】木村 寿
(72)【発明者】
【氏名】矢次 豊
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−228677(JP,A)
【文献】 特開2000−191761(JP,A)
【文献】 特開2006−002046(JP,A)
【文献】 特開2007−009154(JP,A)
【文献】 特表平08−508011(JP,A)
【文献】 特開2000−239366(JP,A)
【文献】 特開2000−239367(JP,A)
【文献】 特開平10−147636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00−64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを原料とし、少なくともスラリー化工程、エステル化工程、重縮合工程のいずれかと、エチレングリコールの精製工程を有するポリエステルの製造方法であって、
該エチレングリコールの精製工程が、エチレングリコールを蒸留塔により蒸留し、エチレングリコールを塔頂に留出させて回収する方法を含み、該エチレングリコールの精製工程を経由したエチレングリコールを該ジオール成分の一部として使用し、該ジオール成分が下記計算式(I)を満たすことを特徴とする、ポリエステルの製造方法。
0.01≦q≦34 (I)
但し、q=a+b+2c
a:前記エチレングリコールに対する下記式(1)で表される化合物の含有量(モルppm)
b:前記エチレングリコールに対する下記式(2)で表される化合物の含有量(モルppm)
c:前記エチレングリコールに対する下記式(3)で表される化合物の含有量(モルppm)
【化1】
【請求項2】
前記ポリエステルの製造方法がエステル化工程を有し、前記エチレングリコールの精製工程を経由したエチレングリコールを前記エステル化工程に添加する請求項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項3】
前記ポリエステルの製造方法が前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分を混合するスラリー化工程を有し、前記エチレングリコールの精製工程を経由したエチレングリコールの一部を前記スラリー化工程に添加する請求項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項4】
前記重縮合工程が重縮合反応触媒を用いるものであって、該重縮合反応触媒がチタン化合物を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項5】
前記ポリエステルの製造方法がエステル化工程及び重縮合工程を有し、前記重縮合反応触媒を、前記エステル化工程で得られるポリエステルオリゴマーを前記重縮合工程へ移送する配管中に添加する、請求項に記載のポリステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルを製造する方法に関する。また、ポリエステルを製造する過程で留出されるエチレングリコールを再利用する際、精製して再利用するエチレングリコールの量を制御することにより、色調が安定したポリエステルを経済的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、機械的強度、化学的安定性など、その優れた性質の故に、広く種々の分野、例えば、衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用などの各種フィルムやシート、ボトルやエンジニアリングプラスチック等の成形物などの分野で使用されている。中でも、ポリエチレンテレフタレートは、ガスバリヤ性、衛生性などに優れ、比較的安価で軽量であるために、各種食品、飲料包装容器として幅広く使用され、その応用分野はますます拡大している。
【0003】
一般にポリエステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分を原料として、エステル化反応により生成する水や、原料であるジオール成分の一部を留出させながら、低重合反応物を得た後、得られたオリゴマーを重縮合触媒の存在下、重縮合反応により、ジオール成分と水とを留出させながら、重縮合反応物であるポリエステルを得る方法により製造されている。通常、ポリエステルの重縮合は、200℃以上の高温下で行われるため、熱分解により好ましくない黄着色を惹起することが知られている。特に、チタン化合物を触媒とし、原料であるジオールとしてエチレングリコールを用いて製造したポリエステルは、強く黄着色することが知られている。
【0004】
前記の様な好ましくない着色を防止するために、リン化合物を添加する方法が知られている(例えば特許文献1)。また、コバルト化合物やトナー等の調色剤を添加してポリエステルの黄味を抑える方法も知られている(例えば特許文献2)。一方、チタン触媒についても、チタン三核触媒を使用することで着色を抑制することが知られている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−256452号公報
【特許文献2】特開2005−23203号公報
【特許文献3】特開2004−43716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リン化合物の添加では十分な色調改良が図れない上、チタン化合物を触媒とした場合には重縮合活性が低下するという問題があった。また、コバルト化合物やトナー等の調色剤を添加してポリエステルの黄味を抑える方法では、ポリエステルのくすみを増大させる問題があった。更に、コバルト化合物の添加は重金属による環境影響が懸念され、トナーの添加は水や原料のジオールへのトナーの溶解度が小さいため、ポリエステルの製造工程に高精度で添加するのが難しいという問題があった。また、文献3記載のチタン三核触媒は、触媒の製造工程が複雑であり、生産コストがかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、ポリエステルを製造する際の着色を防止し、色調が良好なポリエステルを得る、ポリエステルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題の解決に向けて鋭意検討した結果、原料として用いるエチレングリコール中の特定の化合物の含有量を規定することで、色調が良好なポリエステルを製造することが可能となることを見出し、本発明に至った。また、当該特定化合物の量を、例えば、精製して再利用するエチレングリコールの量を制御することにより特定の含有量とすることで、色調が安定なポリエステルを経済的に製造することが可能となることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
【0009】
[1]ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを原料とし、少なくともスラリー化工程、エステル化工程、重縮合工程のいずれかと、エチレングリコールの精製工程を有するポリエステルの製造方法であって、該エチレングリコールの精製工程が、エチレングリコールを蒸留塔により蒸留し、エチレングリコールを塔頂に留出させて回収する方法を含み、該エチレングリコールの精製工程を経由したエチレングリコールを該ジオール成分の一部として使用し、該ジオール成分が下記計算式(I)を満たすことを特徴とする、ポリエステルの製造方法。
0.01≦q≦34 (I)
但し、q=a+b+2c
a:前記エチレングリコールに対する下記式(1)で表される化合物の含有量(モルppm)
b:前記エチレングリコールに対する下記式(2)で表される化合物の含有量(モルppm)
c:前記エチレングリコールに対する下記式(3)で表される化合物の含有量(モルppm)
【0010】
【化1】
【0011】
]前記ポリエステルの製造方法がエステル化工程を有し、前記エチレングリコールの精製工程を経由したエチレングリコールを前記エステル化工程に添加する[]に記載のポリエステルの製造方法。
]前記ポリエステルの製造方法が前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分を混合するスラリー化工程を有し、前記エチレングリコールの精製工程を経由したエチレングリコールの一部を前記スラリー化工程に添加する[]に記載のポリエステルの製造方法。
]前記重縮合工程が重縮合反応触媒を用いるものであって、該重縮合反応触媒がチタン化合物を含有する、[1]〜[]のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
]前記ポリエステルの製造方法がエステル化工程及び重縮合工程を有し、前記重縮合反応触媒を、前記エステル化工程で得られるポリエステルオリゴマーを前記重縮合工程へ移送する配管中に添加する、[]に記載のポリステルの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリエステルを製造する際の着色を防止し、色調が良好なポリエステルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の製造方法を実施するための、ポリエステルの製造装置の全体フローの一例である。
図2】本発明の好ましい態様におけるポリエステルの製造装置の全体フローの一例である。
図3】本発明の好ましい態様におけるポリエステルの製造装置の全体フローの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成を説明するが、これらは代表的な例示であり、これらに限定されるものではない。
本発明は、ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを原料とするポリエステルの製造方法であって、前記エチレングリコールに対する特定化合物の含有量が、特定の範囲であるエチレングリコールを用いる、ポリエステルの製造方法に係るものである。
【0015】
<原料>
(ジカルボン酸成分)
本発明のジカルボン酸成分は、ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を含有するものである。より具体的には、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び/又はそれらのエステル形成性誘導体を含有するものであって、脂肪族ジカルボン酸の炭化水素基部分は脂環式構造であっても分岐構造を有していても構わない。
【0016】
芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を用いる場合、反応性や経済性の観点から、好ましくは芳香族環の数が4以下のジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体が用いられ、より好ましくは芳香族環の数が2以下のジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体が用いられる。具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等及びこれらのエステル形成性誘導体が用いられる。
【0017】
脂肪族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を用いる場合、反応性や経済性の観点から、好ましくは炭素数が2以上以下18以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体、又は炭素数が4以上10以下の脂環式ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体が用いられ、より好ましくは炭素数が2以上10以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体が用いられる。より具体的には、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、及び、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、等及びこれらのエステル形成性誘導体が用いられる。
【0018】
前記芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸がエステル形成性誘導体である場合、該エステルを構成するアルコールとしては、炭素数1から4のアルコールが挙げられる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコールとのジエステルが好ましく用いられる。
【0019】
本発明のジカルボン酸成分において、上記のジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体は、複数種のものを併用しても構わない。
なかでも本発明のポリエステルの製造方法を好ましく適用できるポリエステルにおいては、テレフタル酸及び/又はテレフタル酸エステル、若しくは、ナフタレンジカルボン酸及び/又はナフタレンジカルボン酸エステルを主成分とするものが好ましい。ここで「主成分」とは、テレフタル酸及び/又はテレフタル酸エステル、若しくは、ナフタレンジカルボン酸及び/又はナフタレンジカルボン酸エステルが、ジカルボン酸成分中の全ジカルボン酸に対して85モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上を占めることを意味する。
【0020】
(ジオール成分)
本発明のジオール成分は、エチレングリコールを主成分とするものであって、下記式(1)〜(3)で表される化合物(以下、「アセタール化合物」と記載する場合がある)を含有し、それぞれの該エチレングリコールに対する含有量をa、b、cモルppmとしたとき、a+b+2cで表される値qが、0.01モルppm以上34モルppm以下である。
【0021】
【化2】
【0022】
本発明のジオール成分は、エチレングリコール、アセタール化合物以外にその他のジオール化合物を含有していて構わない。その他のジオール化合物としては、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール;及び、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール;並びに、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物等のポリエーテル;等が挙げられる。これらのその他のジオール化合物は、複数種のものを併用しても構わない。
【0023】
本発明のジオール成分において、エチレングリコールを主成分とするとは、エチレングリコールが全ジオール成分の85モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上を占めることを意味する。エチレングリコールの割合が前記下限以上であれば、得られるポリエステルの成形体としての機械的強度、ガスバリア性、及び耐熱性の点で優位である。
【0024】
前記アセタール化合物のエチレングリコールに対する含有量(a、b、c)とは、ジオール成分中の純エチレングリコールの含有量(モル)に対する各アセタールの含有量(モル)の比のことであり、汎用ガスクロマトグラフィーを用い、以下のように算出される値である。ここで、「純エチレングリコール」とは純物質としてのエチレングリコールのことである。
即ち、本発明において、汎用ガスクロマトグラフィーを用い、例えば、ポリエチレングリコールカラム、検出器温度210℃、フレームイオンディテクター(FID)、感度補正あり、の条件で前記ジオール成分を測定し、純エチレングリコールと前記アセタール化合物を定量して、下記計算式に従って前記アセタール化合物の含有量(a、b、c)を求めることができる。
【0025】
なお、当該保持時間と各アセタール化合物の対応は、GCMS(ガスクロマトグラフィーを直結した質量分析装置)を使用し、電子イオン化法(EI)、及び化学イオン化法(CI)により同定できる。
エチレングリコール中のジエチレングリコールの感度に対して、炭素数、および、官能基による感度の補正を施し、ジエチレングリコールに対するFID相対質量感度0.95を用いる。ジエチレングリコールの濃度は標品により定量する。得られる濃度より、化学式(1)〜(3)の化合物の質量濃度を、現代化学シリーズ11 クロマトグラフィー(第3版)東京化学同人、p111、表7.7 (1981)に記載される、以下の表1のFID相対質量感度補正を行って算出する。
【0026】
【表1】
【0027】
上記の方法で算出された、各アセタール化合物の質量濃度から、下記[式A]、[式B]、[式C]により、ジオール成分中の、エチレングリコールに対する各アセタール化合物の含有量のモル比(a、b、c)を算出し、モルppm単位で表示する。
[式A] a = (式(1)で表される化合物の質量濃度/148.16)/(純エチレングリコールの質量濃度/62.07)
[式B] b = (式(2)で表される化合物の質量濃度/148.16)/(純エチレングリコールの質量濃度/62.07)
[式C] c = (式(3)で表される化合物の質量濃度/120.10)/(純エチレングリコールの質量濃度/62.07)
【0028】
本発明者らの検討によれば、前記アセタール化合物の加水分解等により生成するグリコールアルデヒド及び/又はジエチレングリコールアルデヒドが、本発明の製造方法により得られるポリエステルの黄着色要因となる。また、式(1)の化合物1分子からは1分子のグリコールアルデヒドが生成し、式(2)の化合物1分子からは1分子のジエチレングリコールアルデヒドが生成し、式(3)の化合物1分子からは2分子のグリコールアルデヒドが生成する。このため、黄着色への影響度を勘案し、本発明の製造方法においては、ポリエステル製造工程の中で、原料のエチレングリコールが含有するそれぞれのアセタール化合物の量(a、b、c)から算出される値qを、特定の値に制御することにより前記課題を達成することができる。
【0029】
なお、本発明におけるジオール成分中のエチレングリコールは、本発明のポリエステル製造方法の各工程に供給するエチレングリコールのことであり、原料として各工程に持ち込まれるエチレングリコールと、後述の精製工程を経て各工程に持ち込まれるエチレングリコールの和である。ここで、エステル化工程及び/又は重縮合工程から留出し、分離塔を経て塔底から得られるエチレングリコールを主たる成分とする塔底液のうち、スラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合反応槽に直接供給される塔底液は本願請求項1に述べるポリエステルの原料としてのエチレングリコールには含めない。
又、前記ポリエステル製造方法の各工程とは、具体的には、スラリー化工程、エステル化工程、重縮合工程である。
【0030】
本発明において、「qの値が本発明の規定を満たす範囲」とは、本発明のポリエステルの製造方法において、エチレングリコールを供給する全ての工程で、エチレングリコール中の(a+b+2c)を求め、各工程のエチレングリコール供給量を重みとした加重平均値qが、下記式(I)を満たすことを意味する。
0.01≦q≦34 (I)
本発明において、qの値の上限は34モルppm以下であり、32ppm以下が好ましく、30ppm以下がより好ましく、25ppm以下が更に好ましく、20ppm以下が特に好ましい。qの値が34モルppmを超える場合、得られるポリエステルの黄着色が増大することがあるため、好ましくない。一方、ポリエステルの黄着色を低減しながら経済性を高めるという観点から、qの値の下限は0.01モルppm以上であり、0.5モルppm以上であることが好ましい。qの値を0.01モルppm未満とするには、高純度のエチレングリコールを得るための精製設備とエネルギーを必要とし、経済性の面で不利であり製造方法として好ましくない。前記qの値が本発明の規定を満たす範囲に制御する方法については後述する。
【0031】
(その他の共重合成分)
本発明のポリエステルの製造方法により製造するポリエステルは、3官能以上の化合物、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸などのポリカルボン酸及びこれらの無水物;トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオール等のポリオール;及びリンゴ酸、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸;等を、得られるポリエステルの物性を調整する等の目的により必要に応じて共重合成分として使用してもよい。
【0032】
<ポリエステルの製造方法>
本発明のポリエステルの製造方法は、少なくともスラリー化工程、エステル化工程、重縮合工程、又は前記エチレングリコールの精製工程のいずれかを有する。製造に用いる原料は、如何なる方法によりエステル化工程又は重縮合工程を行う反応槽に供給しても構わず、直接反応槽に投入したり、インラインミキサーなどで原料を混合しながら直接反応槽に投入したりすることも可能であるが、固体原料を取り扱いやすくするためにスラリー化工程を有することが好ましい。また、原料として用いるエチレングリコールの供給安定化のため、エチレングリコール供給工程を有することが好ましく、更には本発明におけるqの値を制御するためにエチレングリコール精製工程を有することが好ましい。
尚、本発明のポリエステルの製造方法は、反応方式が回分式や半回分式でもよいし、連続式であってもよい。更には、これらを組み合わせた方式であってもよいが、連続式であることが好ましい。
【0033】
本発明のポリエステルの製造方法における、ポリエステルの製造装置の全体フローの一例を図1に示す。この例では、ジカルボン酸成分とジオール成分とを原料として、エステル化反応及び/又はエステル交換反応を行うエステル化工程、エステル化工程で得られたエステル化物を溶融重縮合する重縮合工程を経て、溶融重縮合させることにより、ポリエステルが製造される。本発明における好ましい態様としては、ジカルボン酸成分とジオール成分とを、スラリー調製槽に投入して攪拌・混合するスラリー化工程を経て原料スラリーを得る。得られた該原料スラリーをエステル化反応槽で減圧下〜加圧下、加熱下で、過剰に仕込んだジオールや反応によって生ずる水などを留出させつつエステル化反応させるエステル化工程を経て、ポリエステル低分子量体(以下、オリゴマーと略記することがある)を得る。得られたオリゴマーを、フィルターを介して接続された重縮合反応槽に移送し、重縮合触媒を使用して、減圧下、加熱下で、過剰に仕込んだジオールや反応によって生ずる水などを留出させつつ溶融重縮合反応させる重縮合工程を経てポリエステルを得る。
【0034】
(q値の制御方法)
原料エチレングリコールの前記q値を規定範囲内に制御する方法としては、ポリエステル製造工程から回収した、前記(a+b+2c)の値が本発明の規定する範囲より高いエチレングリコール(以下、再生エチレングリコールと称することがある)を、エチレングリコール精製工程を経由して、そのまま原料エチレングリコールとして使用する方法;前記再生エチレングリコールと、前記(a+b+2c)の値が本発明の規定する範囲内のエチレングリコール(以下、高純度エチレングリコールと称することがある)を混合して、qの値を本発明の規定する範囲内とする方法;前記qが規定範囲内に保たれるように前記再生エチレングリコールの一部を使用し、残りを廃棄する方法;等が例示できる。この時、前記高純度エチレングリコールとしては、後述の方法で精製したエチレングリコールであっても良く、原料として受け入れたエチレングリコールであっても良い。ここで、「原料として受け入れたエチレングリコール」とは、本発明の製造方法に用いる原料のエチレングリコールのうち、まだ、本発明の製造方法を行う各工程に供給されたことがないエチレングリコールのことである。
尚、上記の混合に際しては、前記再生エチレングリコールと、前記高純度エチレングリコールとの混合比を制御することによってqの値を制御することが好ましく、ポリエステルの連続製造法においては、前記再生エチレングリコールの流量と、前記高純度エチレングリコールの流量を制御しながら混合する方法が好ましく用いられる。
【0035】
前記の各種方法によって低く抑えられたエチレングリコールの(a+b+2c)の値を本発明の規定する範囲内に維持する方法としては、該エチレングリコールを、空気や太陽光への暴露を避けるため、窒素等の不活性ガス雰囲気下でステンレス製容器に密閉保管する方法が例示できる。
【0036】
又、(a+b+2c)の値が特定範囲のエチレングリコールをポリエステルの製造工程で用いる方法としては、該エチレングリコールを原料としてスラリーを調製する方法;該エチレングリコールをエステル化工程で使用する方法が例示できる。
中でも、エチレングリコールの精製工程を経由したエチレングリコールをエステル化工程に添加する方法、及び/又は上記精製工程を経由したエチレングリコールの一部をスラリー化工程に添加する方法が特に好ましい。
【0037】
エチレングリコールの各種精製方法としては、蒸留塔を用いて高沸点成分である前記アセタール化合物を蒸留分離して精製する方法;アセタール化合物と親和性の高い化合物を用いて、前記アセタール化合物を吸着分離して精製する方法;が例示できる。
【0038】
本発明のポリエステルの製造方法においては、原料エチレングリコールに対する式(1)〜(3)で表される化合物の含有量をそれぞれa、b、cモルppmとしたとき、各工程の(a+b+2c)を求め、それぞれの工程のエチレングリコール供給量を重みとした加重平均値qが、前記特定範囲にあることを満たす限り、上記方法に限らず、エステル化工程及び/又は重縮合工程から留出させた留出物は、そのまま、原料の一部としてスラリー化工程などに用いてもよいし、原料成分以外の成分を蒸留分離してから、原料の一部として用いても構わない。また、上記留出物を、エステル化工程に直接添加してもよい。特に、エチレングリコール精製工程を経由させ、エチレングリコール供給工程で用いることが好ましい。
【0039】
(エステル化工程)
エステル化工程は、エステル化反応槽を用いて、ジカルボン酸成分とジオール成分とを原料として、エステル化反応及び/又はエステル交換反応を行う工程である。より具体的には、原料となるジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応槽で減圧下〜加圧下、加熱下で、過剰に仕込んだジオール成分や反応によって生ずる水などを留出させつつエステル化反応させて、ポリエステル低分子量体であるオリゴマーを得る。
【0040】
エステル化工程を行うエステル化反応槽は、通常、温度を制御するための熱媒体ジャケットを具備するものを用いるが、温度制御を容易にするため、エステル化反応槽内部に熱媒体コイルを具備することが好ましい。また、外部に、オリゴマーを循環させ、熱交換器で加熱するライン(外部循環ライン)を有していてもよい。エステル化反応槽は、攪拌装置を具備してもよく、攪拌翼としてはアンカー翼、パドル翼、ファウドラー翼など従前知られるものを利用することができる。また、留出成分を反応槽に戻す還流冷却器を具備していても構わない。また、留出成分を反応槽に戻す還流冷却器を具備していてもよく、本発明においては、熱負荷を削減する目的で、留出成分を反応槽に戻す方法が好ましく用いられる。
【0041】
本発明において、エステル化反応の温度は通常240〜305℃で行われ、エステル交換反応の温度は通常130〜250℃で行われる。特に、テレフタル酸とエチレングリコールとを原料としてポリエチレンテレフタレートを製造する場合、エステル化反応は、通常エステル化反応槽内部を250℃以上305℃以下の範囲に制御して行われ、好ましくは255℃以上290℃以下の範囲で行われる。
また、エステル化反応及び/又はエステル交換反応における反応槽内部の圧力は、通常100kPaA(Aは絶対圧力であることを示す、以下同様)以上500kPaA以下の範囲に制御して行われ、好ましくは105kPaA以上300kPaA以下の範囲で行われる。
【0042】
エステル化反応に要する時間は、得られるオリゴマーのエステル化率を測定しその範囲を一定にするように調整されるが、通常1時間以上8時間以下である。エステル化工程を連続式で行う場合、エステル化反応槽での平均滞留時間をエステル化反応に要する時間とみなす。なお、連続式で行う場合の平均滞留時間とは、エステル化反応槽に保有するオリゴマーの質量を、連続的に供給されるオリゴマー質量流量で、除した時間と定義する。
また、エステル化率を一定の範囲に調整するために、ジオール成分を、エステル化反応槽へ添加しても良い。
【0043】
(重縮合工程)
重縮合工程を行う重縮合反応槽は、通常、温度を制御するための熱媒体ジャケットを具備するものを用いるが、温度制御を容易にするため、重縮合反応槽内部に熱媒体コイルを具備してもよい。重縮合反応槽は、通常、鉛直又は水平方向を中心線とする攪拌装置を具備する。攪拌翼としては、鉛直方向を中心線とする攪拌装置の場合、アンカー翼、パドル翼、ファウドラー翼など、水平方向を中心線とする攪拌装置の場合、メガネ翼、車輪翼など、それぞれ、従前知られるものを利用することができる。
【0044】
本発明のポリエステルの製造方法において、重縮合反応における反応槽内部の温度は250〜305℃が好ましい。特に、テレフタル酸とエチレングリコールとを原料としてポリエチレンテレフタレートを製造する場合、重縮合反応は、通常重縮合反応槽内部を260℃以上305℃以下の範囲に制御して行われ、好ましくは265℃以上290℃以下の範囲で行われる。また、重縮合反応槽内部の圧力は、通常0.01kPaA以上100kPaA以下の範囲に制御して行われ、好ましくは0.05kPaA以上5kPaA以下の範囲で行われる。
重縮合反応に要する時間は、得られるポリエステルの溶融粘度や固有粘度を測定しその範囲を一定にするように調整されるが、通常2時間以上8時間以下である。重縮合工程を連続式で行う場合、重縮合反応槽での平均滞留時間を重縮合反応に要する時間とみなす。なお、連続式で行う場合の平均滞留時間とは、重縮合反応槽に保有するポリエステルの質量を、連続的に供給されるポリエステルの質量流量で除した時間と定義する。
【0045】
(重縮合反応触媒)
本発明のポリエステルの製造方法に用いられる重縮合反応では、反応を促進させるために重縮合反応触媒を用いることが好ましい。この場合用いる重縮合反応触媒としては特に制限されず、公知の触媒を用いることができる。例えば、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等のゲルマニウム化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、メトキシアンチモン等のアンチモン化合物、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム等のチタン化合物等が用いられる。これらの化合物は、複数種のものを併用しても構わない。なかでも、本発明のポリエステルの製造方法においては、チタン化合物を使用することが、重縮合反応活性が高いため好ましい。触媒使用量は、得られるポリエステルに対して、チタン原子として通常1〜400質量ppm、好ましくは1〜150質量ppm、更に好ましくは1〜80質量ppm、より好ましくは1〜20質量ppmである。
【0046】
なお、重縮合触媒として用いられる前記の各化合物は、エステル化工程におけるエステル化反応触媒として用いても構わない。
本発明のポリエステルの製造方法に用いられる重縮合反応触媒の添加方法としては特に制限されず、例えば、スラリー化工程に添加する方法、エステル化工程に添加する方法、重縮合工程に添加する方法、及び、各工程間の移送配管に添加する方法が用いられる。特に、本発明のポリエステルの製造方法が連続式の場合は、スラリー化工程から重縮合工程の直近手前の移送配管までの間に添加する方法が、好ましく用いられる。また、特に、重縮合触媒としてチタン化合物を用いる場合は、エステル化工程が複数のエステル化反応槽からなる場合には、より下流側のエステル化反応槽に添加する方法が好ましく、更に、エステル化工程で得られるポリエステルオリゴマーを重縮合工程へ移送する配管中に添加する方法が、特に好ましく用いられる。
【0047】
また、正リン酸、正リン酸アルキルエステル、エチルアシッドホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート、亜リン酸、亜リン酸アルキルエステル等のリン化合物を安定剤として用いることができる。その使用量は、得られるポリエステルプレポリマーに対して1〜1000質量ppmとなる量とするのが好ましく、2〜200質量ppmとなる量とするのが特に好ましい。
【0048】
更に、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における「第1族元素」及び/又は「第2族元素」(以下、単に「1族金属化合物」、「2族金属化合物」と表記する。)の金属化合物を前記重縮合反応触媒と共に、助触媒として使用することもできる。1族金属化合物としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、2族金属化合物としては、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、炭酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0049】
(エチレングリコール供給工程)
本発明のポリエステルの製造方法においては、エチレングリコール供給工程とは、原料として受け入れたエチレングリコール、エステル化工程及び/又は重縮合工程から留出して得られたエチレングリコール、並びに、後記のエチレングリコール精製工程で精製されたエチレングリコールを混合、貯蔵し、スラリー化工程、エステル化工程、及び/又は、重縮合工程に供給する工程である。
ここで、エステル化工程及び/又は重縮合工程から留出し、分離塔を経て塔底から得られるエチレングリコールを主たる成分とする塔底液のうち、スラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合反応槽に直接供給される塔底液は本願請求項1に述べるポリエステルの原料としてのエチレングリコールには含めない。
【0050】
エチレングリコール供給工程は、通常、エチレングリコールを保持するタンクとそれに配管で接続されたポンプからなり、必要に応じ、流量計やフィルターを備える。エチレングリコールを保持するタンクは、通常、気相部を有しない浮き屋根式タンクか、気相部を有するコーンルーフ型等の固定屋根式タンクである。気相部を有するタンクの場合は、好ましくは、窒素シール状態とし、気相部分の酸素濃度を0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下とする。
【0051】
(エチレングリコール精製工程)
また、本発明のポリエステルの製造方法においては、エチレングリコール精製工程とは、原料として受け入れたエチレングリコールや、エステル化工程、及び/又は、重縮合工程で留出された留出液から、ろ過、蒸留、吸着等の方法により不純物を分離し、エチレングリコールを精製回収する工程である。
【0052】
これらの精製方法は、単独で用いてもよいし、適宜、組み合わせて用いてもよい。なかでも、濾過と蒸留とを組み合わせた方法が好ましい。具体的には、まず、金属フィルターや濾布等で、エチレングリコール中の固形不純物を除去し、その後、蒸留塔にて、エチレングリコールの沸点以上に加熱し、必要に応じて還流を掛けながら、高沸点の不純物等を塔底から抜き出して分離し、エチレングリコールを塔頂に留出させて回収する方法である。このようなエチレングリコール精製工程を用いることで、エチレングリコール中に含まれる前記アセタール化合物を効率よく分離できるため、特に好ましい。なお、エチレングリコール精製工程は、更に、別個の蒸留塔にて、エチレングリコール中の低沸点の不純物等を塔頂に留出させて分離し、エチレングリコールを塔底から抜き出して回収する方法を含んでもよい。特に、前記の低沸点の不純物等を塔頂に留出させて分離させる方法を含む場合、水の存在下でエチレングリコールを加熱することで、エチレングリコールに含まれるアセタール化合物をグリコールアルデヒド及びジエチレングリコールアルデヒドとエチレングリコールに変成させ、生成したアルデヒドを留出させて分離することが可能であるため、一層好ましい。
【0053】
このようにして精製されたエチレングリコールは、通常、エチレングリコール供給工程を経由させ、単独で、及び/又は、原料として受け入れたエチレングリコールと混合させて、本発明のポリエステルの製造方法の原料として用いられる。なお、エチレングリコール供給工程には、qの値が本発明の規定を満たす範囲で、エステル化工程及び/又は重縮合工程から留出して得られたエチレングリコールを主成分とする留出液を精製せずに用いてもよい。
【0054】
(製造装置の材質)
本発明のポリエステルの製造方法に用いる装置の材質は、原料であるジカルボン酸成分やジオール成分だけでなく、添加する触媒、助剤、安定剤、更には、エステル化反応や熱分解により生成する化合物やこれらの混合物も含めた物質に対する耐食性を考慮して選定することが好ましい。なかでもステンレス鋼が好ましく、モリブデン含有ステンレス鋼が特に好ましい。具体的には例えば、日本工業規格にて規定されているステンレス鋼のうち、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS317L、SUS410、SUS430等が好ましく用いられる。
【0055】
(後工程)
溶融重縮合反応で得られたポリエステルは、溶融重縮合反応槽に少なくとも配管、ギヤポンプ、フィルターのいずれか又はそれらを組み合わせて接続されたダイヘッドに供給し、ダイの先端に設けられた複数のダイホールから、ストランド状に吐出される。吐出されたポリエステルは、例えばストランドカッターなどで粒子化される。粒子化されたポリエステルは、そのまま、成形材料として用いてもよい。または、更に、固体状態で熱処理を行い、所定の固有粘度まで固相重縮合した後、成形材料として用いてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。次に、以下の実施例に用いた各種測定法について示す。
【0057】
(式(1)〜(3)の化合物の定量)
エチレングリコール供給工程、重縮合工程の分離塔の塔底液、又はエチレングリコールの精製工程から、エチレングリコール液試料を採取した。この試料をガスクロマトグラフィーを用い、下記条件で純エチレングリコールとアセタール化合物の質量濃度を測定した。
【0058】
[ガスクロマトグラフィーの条件]
ガスクロマトグラフィー:Agilent technologies 6890N
検出器:フレームイオンディテクター(FID)
分析カラム:Agilent J&W GCカラム DB−WAX
カラム内径:0.25mm
カラム長:30m
カラム膜厚:0.25μm
昇温条件:100℃(2分)→10℃/分→250℃(8分)
注入口温度:270℃
検出器温度:270℃
キャリアーガス:ヘリウム 1mL/分
注入モード:スプリット 10:1
サンプル注入量:1μL
保持時間:
ジエチレングリコール:8.6分
化学式1の構造を有する化合物:11.7分
化学式2の構造を有する化合物:11.8分
化学式3の構造を有する化合物:13.8分
【0059】
なお、当該保持時間と各アセタール化合物の対応は、GCMSを使用し、電子イオン化法(EI)、及び化学イオン化法(CI)により同定した。
ガスクロマトグラフィーの測定で得られた、エチレングリコール中のジエチレングリコールの感度に対して、炭素数、および、官能基による感度の補正を施した。エチレングリコールの濃度は標品の定量により同様に求めた。
上記の方法で算出された、各アセタール化合物の質量濃度から、前記[式A]、[式B]、[式C]により、前記試料中の、エチレングリコールの含有量に対する各アセタール化合物の含有量のモル比a、b、c(モルppm)を算出した。
【0060】
(エステル化率)
粉砕した試料0.5gをビーカーに精秤しベンジルアルコール40mLを加えて撹拌しながら、200℃に加熱して完全に溶解させた。室温まで放冷した後、自動滴定装置(平沼産業 COM−1600)を用いて、0.1Nのメタノール性水酸化カリウム溶液で滴定を行った。その結果をもとに、以下の式(1)に従ってカルボキシル末端量を求めた。更に、得られたカルボキシル末端量を用いて、以下の式(2)に従ってエステル化率を計算した。
カルボキシル末端量(当量/樹脂グラム)=0.1×A×f×1000/W …(1)
A:中和に要した0.1Nのメタノール性水酸化カリウム溶液量(mL)
F:0.1Nメタノール性水酸化カリウム溶液の力価
W:試料の重量(g)
エステル化率(%)=(1000−カルボキシル末端量)/100 …(2)
【0061】
(固有粘度(IV)の測定)
ポリエステル樹脂試料0.25gをフェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合液を溶媒として、濃度(c)を1.0g/dLとして、110℃で30分間溶解させた後、ウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃で測定を行い、溶媒の通過時間(t)と溶液の通過時間(t)から次式より溶媒との相対粘度(ηrel)を求め、
ηrel = t/t
相対粘度から次式より比粘度(ηsp)を求めた。
ηsp = ηrel−1
さらに比粘度を濃度(c)で除して、濃度(c)が1.0g/dLにおける還元粘度(ηsp/c)を求めた。
同じく濃度(c)を0.5g/dL、0.2g/dL、0.1g/dLとしたときについてもそれぞれの還元粘度を求め、これらの値より、濃度(c)を0に外挿して固有粘度(IV)(dL/g)を求めた。
【0062】
(色調)
ポリエステル樹脂試料を、内径30mm、深さ12mmの円柱状の粉体測色用セルに充填し、測色色差計(日本電色工業社製「ZE−2000」)を使用し、JIS Z8730の参考例1に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標b値を、反射法により測定セルを90℃ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
【0063】
(末端カルボキシル基(AV))
試料を粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mLを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mLを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込ながら攪拌下に、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。又、ブランクとして試料を使用せずに同様の操作を実施し、以下の式(3)によって末端カルボキシル基量を算出した。
末端カルボキシル基量(当量/樹脂トン)=(A-B)×0.1×f/W…(3)
A:滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)
B:ブランクでの滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)
W:試料の量(g)
f:0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価
【0064】
尚、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、乾燥窒素ガスを吹き込みながら、試験管にメタノール5mLを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液を指示薬として1〜 2滴加え、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4mLで変色点まで滴定し、次いで、力価既知の0.1Nの塩酸水溶液を標準液として0.2mL採取して加え、再度、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定し、以下の式(4)によって力価(f)を算出した。
力価(f)=0.1Nの塩酸水溶液の力価×0.1Nの塩酸水溶液の採取量(μL)/0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μL)…(4)
【0065】
参考例1
図2に示すポリエステルの製造フローにしたがって、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、ポリエステルの製造を連続的に行った。即ち、エチレングリコール供給工程として、窒素シールされたコーンルーフ型エチレングリコール貯槽1(槽内面の材質はSUS304)を用い、スラリー化工程として、撹拌機、ジカルボン酸仕込み配管及びジオール仕込み配管を具備するスラリー調製槽2と、撹拌機を具備するスラリー貯槽3とを用い、エステル化工程として、撹拌機、分離塔、原料受入れ口、触媒仕込み配管、反応物移送配管を具備する完全混合型第一エステル化反応槽4と、撹拌機、分離塔、原料受入れ口、触媒仕込み配管、反応物移送配管を具備する完全混合型第二エステル化反応槽5を用い、重縮合工程として、撹拌機、分離塔、オリゴマー受入れ口、触媒仕込み配管を具備する完全混合型第一溶融重縮合反応槽6と、撹拌機、分離塔、ポリマー受入れ口、ポリマー抜き出し口を具備するプラグフロー型第二融重縮合反応槽7及び第三溶融重縮合反応槽8を用い、ポリエステルの製造を連続的に行った。ここで、エチレングリコール貯槽1、スラリー調製槽2、スラリー貯槽3、第一エステル化反応槽4、第二エステル化反応槽5、第一溶融重縮合反応槽6、第二溶融重縮合反応槽7、第三溶融重縮合反応槽8は、この順に配管で接続されており、各反応槽は熱媒が流れるジャケットを具備するものを用いた。また、反応により得られるポリエステルは、第三溶融重縮合反応槽8から、ポリマーフィルターを経由させてダイプレートからストランド状に取り出し、水冷しながら、ペレタイザーを用いて粒子化した。
【0066】
スラリー化工程は、スラリー調製槽2とスラリー貯槽3にて行った。テレフタル酸260質量部と、表2に示す組成の原料として受け入れたエチレングリコール116質量部とをスラリー調製槽2に供給し、更に、得られるポリエステルに対して、リンとしての添加量が7質量ppmとなるようにエチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液を添加し、撹拌・混合してスラリーを調製した。スラリー調製槽2で得られるスラリーを、3時間毎にスラリー貯槽3に移送し、エステル化工程で用いるスラリーとした。
【0067】
エステル化工程は、第一エステル化反応槽4及び第二エステル化反応槽5にて行った。
第一エステル化反応槽4では、前記スラリーを、スラリー貯槽3から第一エステル化反応槽4へ125質量部/時にて連続的に供給し、また、後記の、第一エステル化反応槽4の分離塔9から抜き出したエチレングリコールを主成分とする塔底液を原料エチレングリコールとして連続的に供給し、温度270℃、圧力244kPaA、平均滞留時間2.0〜2.5時間にて、エチレングリコール及び水等の副生物を留出させながら行った。第一エステル化反応槽4におけるエステル化率は89%であった。
【0068】
第一エステル化反応槽4の分離塔9では、温度190℃、圧力244kPaAにて、水等の低沸点成分を除去し、液面が略一定となるよう、塔底からエチレングリコールを主成分とする塔底液を抜き出した。この塔底液は、系外に4.4質量部/時で連続的に送液し、第二エステル化反応槽5に1.9質量部/時で、第一エステル化反応槽4に残りを、それぞれ原料エチレングリコールとして連続的に供給した。
【0069】
第二エステル化反応槽5には、第一エステル化反応槽4で得るオリゴマーを、配管を経由させて連続的に供給し、前記の第一エステル化反応槽4の分離塔9から抜き出したエチレングリコールを連続的に供給し、また、後記の第二エステル化反応槽5の分離塔10から抜き出したエチレングリコールを主成分とする塔底液を連続的に供給し、また、表2に示す組成の原料エチレングリコールとして受け入れたエチレングリコール1質量部を連続的に供給し、温度266℃、圧力106kPaA、平均滞留時間1.6〜2.0時間にて、エチレングリコール及び水等の副生物を留出させながらエステル化反応を行った。
【0070】
第二エステル化反応槽5の分離塔10では、温度190℃、圧力106kPaAにて、水等の低沸点成分を除去し、液面が略一定となるよう、塔底からエチレングリコールを主成分とする塔底液を抜き出した。この塔底液は全量、第二エステル化反応槽10に連続的に供給した。
第二エステル化反応槽10におけるエステル化率は96%であった。
第二エステル化反応槽10で得るオリゴマーを重縮合工程へ移送する配管中に、得られるポリエステルに対して、マグネシウムとしての添加量が11質量ppmとなるように酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を連続的に添加した。また、得られるポリエステルに対して、チタンとしての添加量が5質量ppmとなるようにテトラブトキシチタンのエチレングリコール溶液を連続的に添加した。
【0071】
重縮合工程は、第一溶融重縮合反応槽6、第二溶融重縮合反応槽7、及び、第三溶融重縮合反応槽8にて行った。重縮合工程の反応条件は、第一段溶融重縮合反応槽が268℃、3.5kPaA、平均滞留時間1時間であり、第二段溶融重縮合反応槽が276℃、0.6kPaA、平均滞留時間1時間、第三段溶融重縮合反応槽は277℃、0.3kPaA、平均滞留時間1時間であった。第二エステル化反応槽5で得るオリゴマーに、前記のとおり酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液とテトラブトキシチタンのエチレングリコール溶液とを添加した液を、第一溶融重縮合反応槽6に供給し、引き続き、第二溶融重縮合反応槽7、及び、第三溶融重縮合反応槽8に移送した。得られたポリエステルは、第三溶融重縮合反応槽8から、ポリマーフィルターを経由させてダイプレートからストランド状に取り出し、水冷しながら、ペレタイザーを用いて、質量が20〜26mg/粒の、ポリエステルの粒子とした。このポリエステル粒子の固有粘度IVは0.63dL/g、末端カルボキシル基量AVは22eq/t、色座標b値は2.2であった。得られたポリエステルの粒子は、透明性に優れ、ほぼ無色であった。
【0072】
スラリー調製工程、及び第二エステル化反応槽に供給されたエチレングリコール中のa,b,c、および(a+b+2c)について各エチレングリコール供給量を重みとした加重平均から求められたq値を、表2に示す。
【0073】
[実施例
図3に示すポリエステルの製造装置にて、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、ポリエステルの製造を連続的に行った。即ち、エチレングリコール供給工程として、窒素シールされたコーンルーフ型エチレングリコール貯槽1(槽内面の材質はSUS304)を用い、エチレングリコール精製工程として、エチレングリコール中の低沸点の不純物等を塔頂に留出させて分離するエチレングリコール初留塔12と、エチレングリコール中の高沸点の不純物等を塔底に分離するエチレングリコール精留塔13を用い、スラリー化工程として、撹拌機、ジカルボン酸仕込み配管及びジオール仕込み配管を具備するスラリー調製槽2を用い、エステル化工程として、撹拌機、原料受入れ口、触媒仕込み配管、反応物移送配管を具備する完全混合型第一エステル化反応槽4と、撹拌機、原料受入れ口、触媒仕込み配管、反応物移送配管を具備する完全混合型第二エステル化反応槽5と、分離塔11を用い、重縮合工程として、撹拌機、分離塔、オリゴマー受入れ口、触媒仕込み配管を具備する完全混合型第一溶融重縮合反応槽6と、撹拌機、分離塔、ポリマー受入れ口、ポリマー抜き出し口を具備するプラグフロー型第二重縮合反応槽7及び第三溶融重縮合反応槽8を用い、ポリエステルの製造を連続的に行った。ここで、エチレングリコール貯槽1、スラリー調製槽2、第一エステル化反応槽4、第二エステル化反応槽5、第一溶融重縮合反応槽6、第二溶融重縮合反応槽7、第
三溶融重縮合反応槽8は、この順に配管で接続されており、各反応槽は熱媒が流れるジャケットを具備するものを用いた。また、反応により得られるポリエステルは、第三溶融重縮合反応槽8から、ポリマーフィルターを経由させてダイプレートからストランド状に取り出し、水冷しながら、ペレタイザーを用いて粒子化した。
【0074】
スラリー化工程は、スラリー調製槽2にて行った。スラリー調製槽2に、テレフタル酸を56質量部/時にて連続的に供給し、表2に示す組成の原料として受け入れたエチレングリコールを13質量部/時にて連続的に供給し、表2に示す組成のエチレングリコール精製工程で精製されたエチレングリコールを6質量部/時にて連続的に供給し、後記のエステル化工程の分離塔11の塔底から抜き出されたエチレングリコールを主成分とする液を連続的にスラリー調製槽2に供給した。更に、得られるポリエステルに対して、リンとしての添加量が7質量ppmとなるようにエチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液を添加し、撹拌・混合してスラリーを調製した。このスラリーをエステル化工程で用いるスラリーとした。
【0075】
エステル化工程は、第一エステル化反応槽4及び第二エステル化反応槽5にて行った。 第一エステル化反応槽4では、前記スラリーを、スラリー調製槽2から第一エステル化反応槽4へ85質量部/時にて連続的に供給し、温度263℃、圧力225kPaA、平均滞留時間4.5〜5.0時間にて、エチレングリコール及び水等の副生物を留出させながらエステル化反応を行った。第一エステル化反応槽4におけるエステル化率は89%であった。
第二エステル化反応槽5では、第一エステル化反応槽4で得られるオリゴマーを、配管を経由させて連続的に供給し、また、表2に示す組成の原料として受け入れたエチレングリコール1質量部/時を連続的に供給し、表2に示す組成の、エチレングリコール精製工程で精製されたエチレングリコールを1質量部/時にて連続的に供給し、温度260℃、圧力106kPaA、平均滞留時間2時間にて、エチレングリコール及び水等の副生物を留出させながら行った。
エステル化工程の分離塔11では、温度145℃、圧力16kPaAにて水等の低沸点成分を除去し、液面が略一定となるよう、塔底からエチレングリコールを主成分とする塔底液を抜き出した。この塔底液は、全量、スラリー調製槽2に連続的に送液した。
第二エステル化反応槽5におけるエステル化率は96%であった。
第二エステル化反応槽5で得るオリゴマーを重縮合工程へ移送する配管中に、得られるポリエステルに対して、マグネシウムとしての添加量が11質量ppmとなるように酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を連続的に添加した。また、得られるポリエステルに対して、チタンとしての添加量が5質量ppmとなるようにテトラブトキシチタンのエチレングリコール溶液を連続的に添加した。
【0076】
重縮合工程は、第一溶融重縮合反応槽6、第二溶融重縮合反応槽7、及び、第三溶融重縮合反応槽8にて行った。重縮合工程の反応条件は、第一段溶融重縮合反応槽が273℃、2.7kPaA、平均滞留時間1時間であり、第二段溶融重縮合反応槽が276℃、0.24kPaA、平均滞留時間1時間、第三段溶融重縮合反応槽は278℃、0.1kPaA、平均滞留時間1時間であった。第二エステル化反応槽5で得るオリゴマーに、前記のとおり酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液とテトラブトキシチタンのエチレングリコール溶液とを添加した液を、第一溶融重縮合反応槽6に供給し、引き続き、第二融重縮合反応槽7及び、第三溶融重縮合反応槽8に移送した。第一、第二、第三重縮合反応槽の分離塔(図示せず)の塔底からエチレングリコールを主成分とする塔底液を抜き出して、留出エチレングリコール液貯槽1’に、連続的に送液した。
【0077】
留出エチレングリコール液貯槽1’の液中a、b、c、および(a+b+2c)の値を、表3に示す。留出エチレングリコール液貯槽1’の液は、全量エチレングリコール精製工程に送液された。エチレングリコール精製工程は、エチレングリコール初留塔12、エチレングリコール精留塔13にて行った。まず、エチレングリコール初留塔12にて、温度200℃、圧力101kPaAにて、水等の低沸点成分を除去し、液面が略一定となるよう、塔底からエチレングリコールを主成分とする塔底液を抜き出した。この塔底液は全量、エチレングリコール精留塔13に連続的に供給し、170℃、圧力10kPaAにて、エチレングリコールを塔頂に留出させて回収した。回収したエチレングリコールは、エチレングリコール貯槽1へ連続的に送液した。エチレングリコール精留塔13の塔頂液中のa、b、c、および(a+b+2c)の値を、表3に示す。
【0078】
得られたポリエステルは、第三溶融重縮合反応槽8から、ポリマーフィルターを経由させてダイプレートからストランド状に取り出し、水冷しながら、ペレタイザーを用いて、質量が22〜28mg/粒の、ポリエステルの粒子とした。このポリエステル粒子の固有粘度IVは0.63dL/g、末端カルボキシル基量AVは27eq/t、色座標b値は2.2であった。
得られたポリエステルの粒子は、透明性に優れ、ほぼ無色であった。また、参考例1で得られるポリエステルの粒子に比べ、黄色みは薄かった。
【0079】
スラリー調製工程及び第二エステル化反応槽に供給されたエチレングリコール中のa、b、c、および各工程の(a+b+2c)の加重平均から求められたq値を、表2に示す。
【0080】
[比較例1]
原料エチレングリコールを表2に示すエチレングリコールに変更し、また、エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム、及びテトラブトキシチタンそれぞれのエチレングリコール溶液を調製するのに用いるエチレングリコールを、表2記載の原料として受け入れたエチレングリコールに変更した以外は参考例1と同様にして、ポリエステルの粒子を得た。
【0081】
スラリー調製工程、及び第二エステル化工程に供給されたエチレングリコール中のa、b、c、および各工程における(a+b+2c)の加重平均から求められたq値を、表2に示す。
【0082】
得られたポリエステル粒子の固有粘度IVは0.63dL/g、末端カルボキシル基量
AVは20eq/t、色座標b値は4.5であった。得られたポリエステルの粒子は、透
明性には優れるが、参考例1で得られるポリエステルの粒子に比べ、やや黄色に着色していた。
【0083】
表2に示すように、qの値が本発明の規定を満たす参考例1及び実施例1では、色調が
良好であったが、qの値が本発明の規定より高い比較例1では、色調が悪くなった。
【0084】
【表2】



【0085】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、ポリエステルを製造する際の着色を防止することができるため、色調が良好なポリエステルを得ることができる。
【符号の説明】
【0087】
1: エチレングリコール貯槽
1’:留出エチレングリコール液貯槽
2: スラリー調製槽
3: スラリー貯槽
4: 第一エステル化反応槽
5: 第二エステル化反応槽
6: 第一溶融重縮合反応槽
7: 第二溶融重縮合反応槽
8: 第三溶融重縮合反応槽
9: 第一分離塔
10: 第二分離塔
11:分離塔
12:エチレングリコール初留塔
13:エチレングリコール精留塔
図1
図2
図3