(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷済画像を光学的に読み取って得られる値(例えば、測色値)と、色材の使用量と、の間の対応関係は、一般的には、非線形である。従って、非線形な対応関係を用いて、色材の使用量を適切な量に制御することは困難であった。
【0005】
本発明の主な利点は、色材の使用量の制御を容易に行うことができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
印刷された画像を用いて得られる光学測定値を取得する取得部と、
前記光学測定値と、予め決められた基準値と、の間のズレを表すズレ量を決定する第1決定部と、
前記ズレ量を用いて、印刷時の色材の使用量を制御する制御値を決定する第2決定部と、
を備え、
前記光学測定値と、前記第1決定部によって決定される前記ズレ量と、の間の対応関係は、
所定の色材を使用して印刷された画像を用いて得られる二つの前記光学測定値にて構成される第1光学測定値ペアに、二つの前記ズレ量にて構成される第1ズレ量ペアを対応付け、
前記所定の色材を使用して印刷された画像を用いて得られる二つの前記光学測定値であって、少なくとも一つの前記光学測定値が前記第1光学測定値ペアを構成するいずれの前記光学測定値とも異なる二つの前記光学測定値にて構成される第2光学測定値ペアに、二つの前記ズレ量であって、少なくとも一つの前記ズレ量が前記第1ズレ量ペアを構成するいずれのズレ量とも異なる二つの前記ズレ量にて構成される第2ズレ量ペアを対応付け、
前記第1光学測定値ペアの差分は、前記第2光学測定値ペアの差分と異なり、
前記第1ズレ量ペアの差分は、前記第2ズレ量ペアの差分と同じであるように、
構成されている、制御装置。
この構成によれば、色材の使用量の変化に対する光学測定値の変化が非線形であっても、適切なズレ量を決定でき、光学測定値を用いた制御値の決定が、ズレ量を介して行われるので、色材の使用量の制御を容易に行うことができる。
【0008】
[適用例2]
適用例1に記載の制御装置であって、
前記第1決定部と前記第2決定部とのうちの少なくとも一方は、前記画像を印刷した印刷部の前記画像が印刷された時の温度を用いて、前記決定を行う、制御装置。
この構成によれば、印刷部の温度に依存して色材の使用量が変化する場合に、色材の使用量の制御を、その温度に応じて適切に行うことができる。
【0009】
[適用例3]
適用例2に記載の制御装置であって、
前記第2決定部は、前記温度と前記ズレ量とを用いて、前記制御値を決定する、制御装置。
この構成によれば、非線形の関係性を抑制したズレ量を用いることで、温度に応じた色材の使用量の制御を、簡易な手法で適切に行うことができる。
【0010】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれかに記載の制御装置であって、
前記取得部は、互いに異なるN個(Nは2以上の整数)の画像から得られるN個の光学測定値を取得し、
前記第1決定部は、前記N個の光学測定値を用いて、1つの前記ズレ量を決定する、
制御装置。
この構成によれば、複数の光学測定値に含まれる測定誤差の影響が抑制された、適切なズレ量を決定できる。
【0011】
[適用例5]
適用例4に記載の制御装置であって、
前記第1決定部は、前記N個の光学測定値を用いてN個のズレ量候補を決定し、前記N個のズレ量候補を平均化することによって、前記1つのズレ量を決定する、制御装置。
この構成によれば、N個の光学測定値から、より適切に、ズレ量を決定できる。
【0012】
[適用例6]
適用例1ないし5のいずれかに記載の制御装置であって、
前記取得部は、
第1色材を使用して印刷された画像を用いて得られる前記光学測定値である第1色材測定値と、
前記第1色材とは色材の種類が異なる第2色材を使用して印刷された画像を用いて得られる前記光学測定値である第2色材測定値と、
を取得し、
前記第1決定部は、前記第1色材測定値を用いて前記ズレ量を決定し、前記第2決定部は、前記第1色材測定値を用いて決定された前記ズレ量を用いて、前記第1色材用の前記制御値を決定し、
前記第1決定部は、前記第2色材測定値を用いて前記ズレ量を決定し、前記第2決定部は、前記第2色材測定値を用いて決定された前記ズレ量を用いて、前記第2色材用の前記制御値を決定する、
制御装置。
この構成によれば、印刷に第1色材と第2色材とが使用される場合に、第1色材用の制御値と第2色材用の制御値とのそれぞれを、適切に決定できる。
【0013】
[適用例7]
適用例6に記載の制御装置であって、
前記第1色材は、顔料を用いた色材であり、
前記第2色材は、染料を用いた色材である、
制御装置。
この構成によれば、顔料を用いた第1色材用の制御値と、染料を用いた第2色材用の制御値とのそれぞれを、適切に決定できる。
【0014】
[適用例8]
適用例1ないし7のいずれかに記載の制御装置であって、
前記印刷された前記画像は、マゼンタ色の色材を使用して印刷されたマゼンタ画像を含み、
前記光学測定値は、前記マゼンタ画像を用いて得られる、グリーン色成分の強度を表す値を含む、
制御装置。
この構成によれば、光学測定値が、マゼンタ画像の色と補色の関係にあるグリーン色成分の強度を表す値を含むので、印刷された画像の濃度の小さい変化を適切に反映した光学測定値を得ることができる。
【0015】
[適用例9]
適用例1ないし8のいずれかに記載の制御装置であって、
前記取得部は、
第1サイズのドットを使用して印刷された画像を用いて得られる前記光学測定値である第1サイズ測定値と、
前記第1サイズとは異なる第2サイズのドットを使用して印刷された画像を用いて得られる前記光学測定値である第2サイズ測定値と、
を取得し、
前記第1決定部は、前記第1サイズ測定値を用いて前記ズレ量を決定し、前記第2決定部は、前記第1サイズ測定値を用いて決定された前記ズレ量を用いて、前記第1サイズ用の前記制御値を決定し、
前記第1決定部は、前記第2サイズ測定値を用いて前記ズレ量を決定し、前記第2決定部は、前記第2サイズ測定値を用いて決定された前記ズレ量を用いて、前記第2サイズ用の前記制御値を決定する、
制御装置。
この構成によれば、印刷に第1サイズのドットと第2サイズのドットとが使用される場合に、第1サイズのドットのための制御値と第2サイズのドットのための制御値とのそれぞれを、適切に決定できる。
【0016】
[適用例10]
適用例1ないし9のいずれかに記載の制御装置であって、
前記制御値は、ハーフトーン処理に関連する値を補正するための値である、制御装置。
この構成によれば、ハーフトーン処理に関連する値を、光学測定値から得られる適切な制御値を用いて、補正することができる。
【0017】
[適用例11]
適用例1ないし10のいずれかに記載の制御装置であって、
前記第1光学測定値ペアと前記第2光学測定値ペアとを構成する複数の前記光学測定値は、前記所定の色材の目標使用量が所定量に設定された場合の、前記所定の色材が実際に使用される使用量に応じて異なる複数の前記光学測定値である、制御装置。
この構成によれば、所定の色材の目標使用量(所定量)と実際の使用量との間の光学測定値の変化が非線形であっても、適切なズレ量を決定できる。
【0018】
[適用例12]
適用例1ないし11のいずれかに記載の制御装置であって、さらに、
前記印刷された画像を光学的に読み取ることによって前記光学測定値を生成する読取部を含む、制御装置。
この構成によれば、光学測定値を容易に得ることができる。
【0019】
[適用例13]
適用例1ないし適用例12のいずれかに記載の制御装置であって、さらに、
前記画像を印刷する印刷部を含む、制御装置。
この構成によれば、光学測定値を得るために用いられる画像を容易に得ることができる。
【0020】
[適用例14]
適用例13に記載の制御装置であって、さらに、
前記画像の印刷時の前記印刷部の温度を測定する温度センサを含む、制御装置。
この構成によれば、印刷部の温度を容易に得ることができる。
【0021】
[適用例15]
印刷された画像を用いて得られる光学測定値を取得する取得機能と、
前記光学測定値と、予め決められた基準値と、の間のズレを表すズレ量を決定する第1決定機能と、
前記ズレ量を用いて、印刷時の色材の使用量を制御する制御値を決定する第2決定機能と、
をコンピュータに実現させ、
前記光学測定値と、前記第1決定部によって決定される前記ズレ量と、の間の対応関係は、
所定の色材を使用して印刷された画像を用いて得られる二つの前記光学測定値にて構成される第1光学測定値ペアに、二つの前記ズレ量にて構成される第1ズレ量ペアを対応付け、
前記所定の色材を使用して印刷された画像を用いて得られる二つの前記光学測定値であって、少なくとも一つの前記光学測定値が前記第1光学測定値ペアを構成するいずれの前記光学測定値とも異なる二つの前記光学測定値にて構成される第2光学測定値ペアに、二つの前記ズレ量であって、少なくとも一つの前記ズレ量が前記第1ズレ量ペアを構成するいずれのズレ量とも異なる二つの前記ズレ量にて構成される第2ズレ量ペアを対応付け、
前記第1光学測定値ペアの差分は、前記第2光学測定値ペアの差分と異なり、
前記第1ズレ量ペアの差分は、前記第2ズレ量ペアの差分と同じであるように、
構成されている、プログラム。
【0022】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、制御方法および制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
A.第1実施例:
A1.装置構成:
図1は、本発明の一実施例としての複合機を示す説明図である。この複合機100は、複合機100の全体を制御するCPU110と、DRAM等の揮発性記憶装置120と、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置130と、読取部160と、印刷部170と、温度センサ175と、他の装置と通信するためのインタフェース180(例えば、ネットワークインタフェースや、USBインタフェース)と、を含んでいる。
【0025】
読取部160は、いわゆるスキャナである。読取部160は、図示しない光学センサ(例えば、CIS(Contact Image Sensor))を有しており、読取対象物(例えば、印刷物)を、光学的に読み取って、読取対象物を表す画像データ(以下、「スキャンデータ」とも呼ぶ)を生成する。
【0026】
印刷部170は、いわゆるインクジェット式のプリンタである。印刷部170は、印刷ヘッドを含み、印刷ヘッドには、インク滴を吐出する複数のノズルが、インク毎に設けられている(図示省略)。本実施例では、印刷部170は、シアンとマゼンタとイエロとブラックとの4種類のインク(色材)を用いて、画像を印刷する。シアンとマゼンタとイエロの3つのインクは、染料を用いたインクであり、ブラックインクは顔料を用いたインクである。シアンとマゼンタとイエロのインクの間では、色材の成分は異なっているが(シアン、マゼンタ、イエロ)、色材の種類は同じである(染料)。3つの染料インク(シアンとマゼンタとイエロ)と、ブラックインクと、の間では、色材の成分も異なり、色材の種類も異なっている。また、温度センサ175は、印刷部170の温度を測定する。温度センサ175は、例えば、印刷部170の印刷ヘッドに固定されている。
【0027】
不揮発性記憶装置130は、第1プログラム131と、第2プログラム132と、ズレ量テーブル134と、補正値テーブル136と、補正値Cc、Cm、Cy、Ck(「制御値Cc、Cm、Cy、Ck」とも呼ぶ)と、濃度変換対応関係Gc、Gm、Gy、Gkと、ドット階調値テーブル137と、マトリクスMXと、温度調整情報138と、を格納している。なお、補正値Cc、Cm、Cy、Ckと濃度変換対応関係Gc、Gm、Gy、Gkとの符号中の、小文字のc、m、y、kは、それぞれシアンとマゼンタとイエロとブラックとの4種類のインクに対応している。従って、補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、それぞれシアンとマゼンタとイエロとブラックとの4種類のインクに対応した補正値を表し、濃度変換対応関係Gc、Gm、Gy、Gkは、それぞれシアンとマゼンタとイエロとブラックとの4種類のインクに対応した濃度変換対応関係であることを表している。これらの情報のうちの、補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、後述する処理によって生成され、他の情報は、予め(例えば、複合機100の出荷時に)、不揮発性記憶装置130に格納されている。
【0028】
CPU110は、第1プログラム131を実行することによって、制御処理部200として機能し、第2プログラム132を実行することによって、画像処理部300として機能する。制御処理部200は、印刷時のインク使用量を補正するための補正値Cc〜Ckを決定する。画像処理部300は、補正値Cc〜Ckを用いて、画像を印刷するための印刷データを生成する。図示するように、制御処理部200は、測定値取得部210と、第1決定部220と、第2決定部230と、カラーパッチ出力部240と、を含んでいる。画像処理部300は、補正値取得部310と、補正部320と、印刷データ生成部330と、データ出力部340と、を含んでいる。これらの処理部の機能については、後述する。
【0029】
A2.補正値(制御値)の決定:
図2は、補正値Cc〜Ckを決定する処理のフローチャートである。
図3は、補正値Cc〜Ckの決定処理の概略図である。制御処理部200は、ユーザの指示に応じて、
図2の処理を開始する。ユーザの指示は、図示しない操作部(例えば、ボタンやタッチパネル)を介して、複合機100に入力され得る。
【0030】
図2の最初のステップS100は、カラーパッチの印刷処理である。
図3には、印刷されるカラーパッチCPの一例が示されている。カラーパッチCPは、バーコードBCと、12個のパッチPmS1、PmM1、PmL1、PmS2、PmM2、PmL2、PkS1、PkM1、PkL1、PkS2、PkM2、PkL2と、を含んでいる。バーコードBCは、カラーパッチCPの印刷時の印刷部170の温度を含む種々の情報を表している。各パッチは、1つのインクを用いて印刷されており、1つのパッチ内では、濃度は均等である。なお、12個のパッチは、それぞれパッチ画像の一例である。
【0031】
ステップS100では、カラーパッチ出力部240(
図1)は、先ず、温度センサ175から、温度を表す情報を取得し、取得した温度を表すバーコードBCの画像データを生成する。そして、カラーパッチ出力部240は、バーコードBCを表す画像データと、12個のパッチを表す所定の画像データと、を用いることによって、カラーパッチCPを表す印刷データを生成する。カラーパッチ出力部240は、生成した印刷データを、印刷部170に出力する。印刷部170は、受信した印刷データに従って、カラーパッチCPを印刷する。通常は、温度を表す情報の取得からカラーパッチCPの印刷までの間に、温度が大きく変化することはないので、バーコードBCによって表される温度は、カラーパッチCPの印刷時の温度として利用可能である。
【0032】
図3に示す12個のパッチは、インクの種類と、インク使用量と、ドットサイズとの、互いに異なる12個の組み合わせに、それぞれ対応している。インクの種類は、マゼンタインク(m)とブラックインク(k)との2つから選択される。インク使用量は、20%と30%との2つから選択される。インク使用量は、ドットの記録率によって表されており、100%の記録率は、全ての画素にドットを記録することを意味している。ドット記録率は、濃度を表すパラメータでもある。従って、インク使用量は濃度を表している、ということができる。ドットサイズは、大(L)と中(M)と小(S)との3つから選択される。
【0033】
12個のパッチのそれぞれの構成は、パッチに付された符号に含まれる文字よって、識別可能である。
1)インクの種類: 「m」=マゼンタインク、「k」=ブラックインク
2)ドットサイズ: 「S」=小ドット、「M」=中ドット、「L」=大トッド
3)インク使用量: 「1」=20%、「2」=30%
12個のパッチは、パッチ毎に予め決められた位置(印刷媒体上の位置)に、それぞれ印刷される。
【0034】
ドットサイズは、印刷媒体上に記録される1つのドットのインク量と相関がある(以下、1つのドットのインク量を「ドットインク量」と呼ぶ)。印刷部170は、大、中、小のドットサイズ(ドットインク量)が、それぞれ、予め決められた大、中、小の基準ドットサイズ(基準ドットインク量)となることを想定して、構成されている。印刷データは、ドットサイズが基準ドットサイズであることを想定して決定されたドットパターン(ドット形成状態)を表している。すなわち、印刷データは、基準ドットサイズに基づく、インク使用量(単位面積当たりのインク使用量)を表している。以下、基準ドットサイズに基づくインク使用量を「基準インク使用量」とも呼ぶ。
【0035】
実際のドットインク量は、基準ドットインク量とは異なり得る。この原因としては、例えば、インクタンクと印刷ヘッドとを結ぶインクの流路(図示省略)や、印刷ヘッドを駆動する電源(図示省略)等の種々の部材の製造誤差が、挙げられる。実際のドットインク量が基準ドットインク量と異なり得るので、単位面積当たりの実際のインク使用量は、印刷データによって想定されている基準インク使用量とは、異なり得る。後述するように、補正値Cc〜Ckは、そのような個体差を低減することが可能である。
【0036】
図2の次のステップS105では、測定値取得部210(
図1)は、印刷されたカラーパッチCPを、読取部160に、スキャンさせる。具体的には、ユーザは、印刷されたカラーパッチCPを読取部160にセットする。次に、ユーザの指示に応じて、測定値取得部210は、読取部160に、スキャンを開始させる。読取部160は、バーコードBCと12個のパッチとを含むカラーパッチCPを光学的に読み取って、スキャンデータを生成する。スキャンデータは、マトリクス状に配置された複数の画素のそれぞれの色を表している。本実施例では、各画素の色は、赤Rと緑Gと青Bとの色値(例えば、256段階の値)で表されている。次のステップS107では、測定値取得部210は、スキャンデータを、読取部160から取得する。
【0037】
次のステップS110では、測定値取得部210(
図1)は、複数のパッチの複数のインク(ここでは、マゼンタとブラック)の中から、後述する補正値を決定し不揮発性記憶装置130に格納する処理(S145、S150)が未処理である1つの未処理のインクを、処理対象のインクとして選択する(以下「対象インク」とも呼ぶ)。
【0038】
次のステップS112では、測定値取得部210は、S110で選択した対象インクを用いて印刷された複数のパッチの複数のドットサイズ(ここでは、大、中、小)の中から、後述するズレ量を決定する処理(S125)が未処理である1つの未処理のサイズを、処理対象のサイズとして選択する(以下「対象サイズ」とも呼ぶ)。
【0039】
次のステップS115では、測定値取得部210は、S110で選択した対象インクを用い、S112で選択された対象サイズにて印刷された複数のパッチの複数の濃度(ここでは、20%と30%)の中から、後述するズレ量を決定する処理(S125)が未処理である1つの未処理の濃度を、処理対象の濃度として選択する(以下「対象濃度」とも呼ぶ)。
【0040】
以下、ステップS110、S112、S115で選択された対象インクと対象サイズと対象濃度との組み合わせに対応付けられたパッチを「対象パッチ」とも呼ぶ。
【0041】
次のステップS120では、測定値取得部210は、キャリブレーションデータを用いて、対象パッチの光学的な読み取り結果を表す値(「スキャン値」と呼ぶ)を決定する。先ず、測定値取得部210は、スキャンデータの複数の画素の中から、対象パッチを表す複数の画素を選択する。選択される画素は、パッチ毎に予め定められた選択範囲SA(
図3)内の画素である。選択範囲SAは、パッチの縁部分を除いた残りの部分(内部分)をカバーしている。また、選択範囲SAの大きさは、パッチの印刷に用いられるインクを吐出する複数のノズルが配置された領域(印刷ヘッド上の領域)の大きさよりも大きいことが好ましい。こうすれば、複数のノズル間のインク吐出量のバラツキが、スキャン値に影響を与える可能性を、低減できる。
【0042】
次に、測定値取得部210は、選択された複数の画素の特定の色値(「処理色値」と呼ぶ)の平均値を算出する。処理色値としては、対象インクの色(「対象インク色」と呼ぶ)の補色の色値が用いられる。例えば、対象インク色がマゼンタ色である場合には、緑色の色値が用いられる。対象インク色がブラックである場合には、任意の色の色値を採用可能である(本実施例では、青色の色値が用いられる)。
【0043】
次に、測定値取得部210は、算出された平均値に対して、キャリブレーションデータを用いた補正を行うことによって、スキャン値を決定する。キャリブレーションデータは、補正前の値と補正後の値との対応関係を定めるデータであり、読取部160の特性に応じて、予め決められている。なお、少なくとも一部の処理色値に関して、キャリブレーションデータを用いた補正が省略されてもよい。また、選択範囲SA内の複数の画素の処理色値から得られる1つの値としては、平均値に限らず、複数の画素の処理色値の関数で表される種々の値を採用可能である(例えば、平均値、最頻値、中央値(メディアン)、最大値、最小値等の統計量)。
【0044】
図3には、12個のパッチに対応付けられた12個のスキャン値SgS1、SgM1、SgL1、SgS2、SgM2、SgL2、SbS1、SbM1、SbL1、SbS2、SbM2、SbL2が示されている。12個のスキャン値と12個のパッチとの対応関係は、スキャン値に付された符号に含まれる文字によって、識別可能である。
1)色成分 :「g」=緑(マゼンタのパッチ)、「b」=青(ブラックのパッチ)
2)ドットサイズ:「S」=小ドット、「M」=中ドット、「L」=大トッド
3)インク使用量:「1」=20%、「2」=30%
なお、スキャン値は、パッチを光学的に読み取ることによって得られる値であるので、光学測定値と呼ぶことができる。
【0045】
図2の次のステップS125では、第1決定部220(
図1)は、ズレ量テーブル134を参照して、スキャン値から、ズレ量を決定する。
図4は、ズレ量テーブル134の一例を示す概略図である。ズレ量テーブル134は、スキャン値とズレ量との間の対応関係を定めている。本実施例では、ズレ量テーブル134は、12個のパッチに対応する12個の対応関係134a〜134lを、定めている。図中では、マゼンタインクのパッチに対応付けられた6つの対応関係134a〜134fの詳細が示され、ブラックインクのパッチに対応付けられた6つの対応関係134g〜134lの詳細は、図示が省略されている。以下、マゼンタインクのための対応関係134a〜134fを参照して、スキャン値とズレ量との関係を説明する。
【0046】
図中では、符号134a〜134fで示された列の最上行には、パッチを特定する情報が示されている。文字「m」は、マゼンタインクを示し、文字「S(小)」「M(中)」「L(大)」は、ドットサイズを示し、「20%」「30%」は、インク使用量を示している。また、
図4の例では、1つのパッチのための対応関係は、11組のスキャン値とズレ量との組み合わせによって、定められている。符号134a〜134fで示された列に記載された数値が、スキャン値を示している。符号Vgで示された列が、ズレ量Vgを示している。
図4の例では、11個のズレ量Vgは、−5から+5までの整数である。1つのスキャン値には、同じ行の1つのズレ量Vgが、対応付けられている。定めの無いスキャン値に関しては、補間によって、小数を含んだ値としてズレ量が決定される。スキャン値が、11個のスキャン値の最大値よりも大きい場合には、最大値に対応付けられたズレ量が採用される(ここでは、+5)。スキャン値が、11個のスキャン値の最小値よりも小さい場合には、最小値に対応付けられたズレ量が採用される(ここでは、−5)。
【0047】
ゼロのズレ量Vg0は、スキャン値と予め決められた基準値との間の差分がゼロであることを、示している。すなわち、ゼロのズレ量Vg0に対応付けられたスキャン値は、スキャン値の基準値に相当する(「基準スキャン値」と呼ぶ)。基準スキャン値がスキャン値として得られる場合には、実際のドットインク量は、基準ドットインク量に相当し、単位面積当たりの実際のインク使用量は、印刷データによって想定される基準インク使用量に相当する。従って、ゼロのズレ量Vg0は、インク使用量の補正が不要であることを、示している。
【0048】
正のズレ量Vgに対応付けられたスキャン値は、ゼロのズレ量Vgに対応付けられたスキャン値よりも、大きい。スキャン値が大きいことは、画像が明るい、すなわち、実際のインク使用量が基準インク使用量よりも少ないことを示している。従って、正のズレ量Vgは、インク使用量を増大することが好ましいことを、示している。また、ズレ量Vgが大きいほど、インク使用量の増大量を大きくすることが好ましい。
【0049】
一方、負のズレ量Vgに対応付けられたスキャン値は、ゼロのズレ量Vgに対応付けられたスキャン値よりも、小さい。スキャン値が小さいことは、画像が暗い、すなわち、インク使用量が基準インク使用量よりも多いことを示している。従って、負のズレ量Vgは、インク使用量を減らすことが好ましいことを、示している。また、ズレ量Vgが小さいほど(ズレ量Vgの絶対値が大きいほど)、インク使用量の低減量を大きくすることが好ましい。
【0050】
なお、一般的には、インク使用量の変化量に対するスキャン値の変化量の割合は、一定ではなく、インク使用量に応じて変化する(すなわち、インク使用量とスキャン値との間の関係は、非線形である)。従って、スキャン値を用いて、直接的に、インク使用量を補正する場合には、その非線形な対応関係に基づく補正が要求されるので、適切な補正が難しい。そこで、本実施例では、スキャン値を用いて直接的にインク使用量を補正する代わりに、スキャン値を用いて、スキャン値と予め決められた基準値との間のズレを表すズレ量Vgが、決定される。特に、本実施例では、ズレ量Vgは、実際のインク使用量に対するインク使用量差分(基準インク使用量−実際のインク使用量)の割合に対して、おおよそ線形に変化するように、決定される。以下、「実際のインク使用量に対するインク使用量差分(基準インク使用量−実際のインク使用量)の割合」を、「差分割合」とも呼ぶ。差分割合は、実際のインク使用量に対する好ましい補正量の割合を示している。このような差分割合に対しておおよそ線形に変化するようなズレ量Vgを用いてインク使用量を補正するための補正値を決定すれば、スキャン値を用いて直接的に、補正値を決定する、または、インク使用量を補正する場合と比べて、容易に適切なインク使用量を実現できる(詳細は後述)。
【0051】
上述のようなズレ量Vgを実現する対応関係134a〜134fは、実験的に決定可能である。例えば、ドット記録率が互いに少しずつ異なる複数のパッチを印刷する。そして、それらのパッチのスキャン値を取得する。以上により、ドット記録率とスキャン値との間の対応関係が得られる。ドット記録率は、単位面積当たりのインク使用量と同等であるので、上記対応関係から、実際のインク使用量とスキャン値との間の対応関係を特定することができる。特定された対応関係を用いることによって、差分割合に対しておおよそ線形に変化するズレ量Vgと、そのズレ量Vgに対応するスキャン値と、の対応関係を決定することができる。
【0052】
なお、ゼロのズレ量Vg0に対応付けられる基準スキャン値は、好ましい印刷結果が得られるように、任意に決定可能である。例えば、基準となる複合機100を用いて印刷されたパッチのスキャン値を、基準スキャン値として採用可能である。また、複数の対応関係134a〜134f(複数のパッチ)の間では、基準スキャン値が異なり得る。この場合、ズレ量Vgとして、単純なインク使用量差分(例えば、基準インク使用量−実際のインク使用量)を表す値ではなく、差分割合に対しておおよそ線形に変化する値を採用することが好ましい。ズレ量Vgが、このような相対的な値(差分割合)を表す場合には、ズレ量Vgを、適切に、複数のパッチに共通に利用することができる。例えば、複数のパッチのそれぞれから、おおよそ同じズレ量Vgに対応付けられたスキャン値が得られるように、スキャン値とズレ量Vgとの間の対応関係が、決定される。そのような対応関係は、実験的に、決定される。
【0053】
差分割合に対しておおよそ線形に変化するズレ量Vgを実現する対応関係134a〜134fは、通常は、以下に説明する特徴を有している。
図4には、第1対応関係134aによって定められた、基準スキャン値S0と、第1スキャン値Spと、第2スキャン値Smと、が示されている(Sp>S0>Sm)。基準スキャン値S0には、ゼロのズレ量Vg0が対応付けられ、第1スキャン値Spには、第1ズレ量Vgpが対応付けられ、第2スキャン値Smには、第2ズレ量Vgmが対応付けられている。ここで、基準と第1のスキャン値S0、Spを、第1スキャン値ペアSP1と呼び、基準と第2のスキャン値S0、Smを、第2スキャン値ペアSP2と呼ぶ。第1スキャン値ペアSP1には、2つのズレ量Vg0、Vgpが対応付けられている(第1ズレ量ペアVP1と呼ぶ)。第2スキャン値ペアSP2には、2つのズレ量Vg0、Vgmが対応付けられている(第2ズレ量ペアVP2と呼ぶ)。
【0054】
ここで、第1スキャン値ペアSP1の差分SD1は「9」であり、第2スキャン値ペアSP2の差分SD2は「8」であり、2つの差分SD1、SD2は、互いに異なっている。一方、第1ズレ量ペアVP1の差分VD1は「5」であり、第2ズレ量ペアVP2の差分VD2は「5」であり、2つの差分VD1、VD2は、同じである。差分が異なる2つのスキャン値ペアSP1、SP2には、差分が同じである2つのズレ量ペアVP1、VP2が、対応付けられている。このように、スキャン値とズレ量Vgとの間の対応関係は、非線形である。このような非線形な対応関係を採用することによって、差分割合に対しておおよそ線形に変化するズレ量Vgを実現できる。
【0055】
以上、1つのスキャン値S0を共有する2つのスキャン値ペアSP1、SP2を用いて説明を行ったが、スキャン値を共有しない2つのスキャン値ペアについても、同様である。例えば、第1対応関係134aにおいて、「+1」と「+5」との2つのズレ量Vgに対応付けられたスキャン値のペア(149と157)の差分(8)は、「−1」と「−5」との2つのズレ量Vgに対応付けられたスキャン値のペア(147と140)の差分(7)と、異なり得る。
【0056】
他の対応関係134b〜134fについても、同様に、対応関係が定められている。ブラックインクのパッチのための対応関係134g〜134lについても、同様に、対応関係が定められている(スキャン値からズレ量Vbが決定される)。
【0057】
図3には、12個のスキャン値にそれぞれ対応付けられた12個のズレ量VgS1、VgM1、VgL1、VgS2、VgM2、VgL2、VbS1、VbM1、VbL1、VbS2、VbM2、VbL2が示されている。ズレ量に付された符号は、対応するスキャン値の符号の先頭の文字を「S」から「V」に置換して得られる符号である。
【0058】
図2の次のステップS130では、第1決定部220(
図1)は、対象インクと対象サイズとの現行の組み合わせに関して、全ての濃度の処理が終了したか否かを判定する。未処理の濃度が残っている場合には(S130:No)、第1決定部220は、処理を、ステップS115に戻す。全ての濃度の処理が終了している場合には(S130:Yes)、第1決定部220は、次のステップS132に移行する。
【0059】
ステップS132では、第1決定部220(
図1)は、現行の対象インクに関して、全てのドットサイズの処理が終了したか否かを判定する。未処理のサイズが残っている場合には(S132:No)、第1決定部220は、処理を、ステップS112に戻す。全てのサイズの処理が終了している場合には(S132:Yes)、第1決定部220は、次のステップS135に移行する。
【0060】
ステップS135では、第1決定部220は、対象インクの複数のズレ量(濃度とドットサイズとの組み合わせが互いに異なる複数のズレ量)から、1つのズレ量である処理ズレ量を決定する。本実施例では、第1決定部220は、複数のズレ量の平均値を、処理ズレ量として、算出する。
図3には、インク毎に算出された2個の処理ズレ量Vga、Vbaが示されている。第1処理ズレ量Vgaは、マゼンタ色のパッチから得られる6つのズレ量VgS1〜VgL2の平均値である。第2処理ズレ量Vbaは、ブラックのパッチから得られる6つのズレ量VbS1〜VbL2の平均値である。なお、処理ズレ量としては、対象インクの複数のズレ量の関数で表される種々の値を採用可能である(例えば、平均値、最頻値、中央値(メディアン)、最大値、最小値等の統計量)。いずれの場合も、第1決定部220は、複数のスキャン値SgS1〜SgL2を用いて1つの処理ズレ量Vgaを決定することによって、複数のスキャン値SgS1〜SgL2に含まれる測定誤差の影響が抑制された処理ズレ量Vgaを決定できる。特に、平均値を採用すれば、より適切に処理ズレ量Vgaを決定できる。第2処理ズレ量Vbaについて、同様である
【0061】
図2の次のステップS140では、第2決定部230(
図1)は、処理ズレ量を、温度に応じて調整する。先ず、第2決定部230は、スキャンデータ中のバーコードBC(
図3)を表す部分を解析することによって、温度Tpを特定する。次に、第2決定部230は、温度調整情報138を参照して、温度Tpに対応付けられた調整量VTpを特定する(
図5:後述)。そして、第2決定部230は、特定された調整量VTpを処理ズレ量に加算することによって、調整済の処理ズレ量を算出する。
図3には、第1処理ズレ量Vgaから算出された第1調整済処理ズレ量Vgbと、第2処理ズレ量Vbaから算出された第2調整済処理ズレ量Vbbと、が示されている。
【0062】
図5は、温度調整情報138の一例を示すグラフである。横軸は、温度Tpを示し、縦軸は、調整量VTpを示している。温度調整情報138は、温度Tpと調整量VTpとの対応関係を定める情報である(例えば、関数や、一次元ルックアップテーブル)。図示するように、第1温度T1以下の範囲では、調整量VTpは、−1であり、第2温度T2以上の範囲では、調整量VTpは、+1であり、第1温度T1以上、第2温度T2以下の範囲では、調整量VTpは、−1から+1まで温度Tpに比例して変化する。温度Tpが基準温度Tsである場合には、調整量VTpはゼロである。基準温度Tsは、複合機100の一般的な動作環境下における典型的な温度に設定される(例えば、摂氏25度)。調整量VTpが変化する温度範囲(T1〜T2)は、複合機100が適切に動作可能な温度範囲を含むように設定される(例えば、摂氏9度以上、摂氏41度以下)。
【0063】
図示するように、調整量VTpは、温度Tpが高いほど、大きくなるように、設定されている。この理由は、温度Tpが高いほど、インクの粘性率が小さくなるので、ドットインク量が多くなる(すなわち、単位面積当たりのインク使用量が多くなる)からである。例えば、温度Tpが基準温度Tsよりも高い環境下で、「−2」のズレ量Vg(
図4)が得られたと仮定する。同じ複合機100が、基準温度Tsの環境下に置かれた場合には、ノズルから吐出されるインク量が減少するので、「−2」よりも大きいズレ量Vgが得られると推定される。一方、温度Tpが基準温度Tsよりも低い環境下で、「+2」のズレ量Vgが得られたと仮定する。同じ複合機100が、基準温度Tsの環境下に置かれた場合には、インク量が増大するので、「+2」よりも小さいズレ量Vgが得られると推定される。即ち、調整量VTpは、基準温度Tsとは異なる温度環境下で得られた処理ズレ量を、基準温度Tsの温度環境下で得られると推定される処理ズレ量に調整するための、パラメータである。温度調整情報138は、種々の温度Tpの下で印刷されたパッチのスキャン値を評価する実験に基づいて、決定可能である。なお、印刷部170の構成によっては、温度Tpが高いほど、インク使用量が少なくなる場合もあり得る。このような場合には、温度Tpが高いほど、調整量VTpが小さくなるように、温度調整情報138が決定される。いずれの場合も、温度Tpと調整量VTpとの間の対応関係としては、比例関係に限らず、種々の関係(例えば、実験に基づく曲線で表される関係)を採用可能である。
【0064】
図2の次のステップS145では、第2決定部230(
図1)は、補正値テーブル136を参照して、調整済の処理ズレ量から、補正値を決定する。
図6は、補正値テーブル136の一例を示す概略図である。補正値テーブル136は、調整済処理ズレ量と補正値との間の対応関係を定めている。本実施例では、補正値テーブル136は、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの4つのインクのための4つの対応関係136c、136m、136y、136kを定めている。3つの対応関係136c、136m、136yは、共通の第1調整済処理ズレ量Vgbから、シアン補正値Cc、マゼンタ補正値Cm、イエロ補正値Cyを、それぞれ特定する(
図3)。ブラックのための対応関係136kは、第2調整済処理ズレ量Vbbから、ブラック補正値Ckを、特定する(
図3)。
図6の例では、1つのインクのための対応関係は、11組のズレ量と補正値との組み合わせによって、定められている。定めの無いズレ量に関しては、補間によって、小数を含んだ値として補正値が決定される。
【0065】
後述するように、補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、補正前のインク使用量に対する補正後のインク使用量の割合と相関を有する指標である。調整済処理ズレ量Vgb、Vbbがゼロである場合には、補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、いずれも「1」である。「1」の補正値は、インク使用量の補正が不要であること(補正量がゼロであること)を示している。「1」の補正値を用いた補正後のインク使用量は、補正前のインク使用量と、同じである(詳細は、後述)。
【0066】
調整済処理ズレ量Vgb、Vbbがゼロ以上の範囲(第1範囲VRp)では、補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、調整済処理ズレ量Vgb、Vbbに正比例する。調整済処理ズレ量Vgb、Vbbがゼロ以下の範囲(第2範囲VRm)でも、補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、調整済処理ズレ量Vgb、Vbbに正比例する。
図4で説明したように、ズレ量Vg、Vbは、差分割合に対しておおよそ線形に変化するように、決定されている。従って、ズレ量Vg、Vbを用いて決定された調整済処理ズレ量Vgb、Vbbに比例する補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、実際のインク使用量に対する基準インク使用量の割合と、相関を有している。従って、補正値Cc、Cm、Cy、Ckに従ってインク使用量を補正すれば、適切なインク使用量(基準インク使用量)を容易に実現できる。
【0067】
なお、調整済処理ズレ量Vgb、Vbbの変化に対する補正値Cc、Cm、Cy、Ckの変化の傾きは、調整済処理ズレ量Vgb、Vbbがゼロ以上の範囲(第1範囲VRp)と、調整済処理ズレ量Vgb、Vbbがゼロ以下の範囲(第2範囲VRm)と、の間で異なっている。この理由は、インク使用量が多い場合と、インク使用量が少ない場合と、の間で、インク使用量の変化に対するスキャン値の変化の割合が異なっているからである。本実施例では、第1範囲VRpでは、第2範囲VRmと比べて、傾きが急である。すなわち、ズレ量Vgb、Vbbの絶対値が同じ場合に、第1範囲VRpでは、第2範囲VRmと比べて、補正値を用いた補正によるインク使用量の変化が大きい。
【0068】
調整済処理ズレ量Vgb、Vbbと、補正値Cc、Cm、Cy、Ckとの好ましい対応関係は、種々の補正値から得られる種々の補正結果(補正後の印刷結果)を評価する実験に基づいて、決定可能である。インクの特性や、読取部160の特性によっては、第1範囲VRpでは、第2範囲VRmと比べて、傾きが緩やかになり得る。
【0069】
また、
図6の例では、シアンとマゼンタとイエロとの間で、同じ調整済処理ズレ量Vgbに対応付けられる補正値が同じである。ただし、少なくとも一部の調整済処理ズレ量Vgbに関して、少なくとも2つのインクの間で、補正値が異なっていても良い。
【0070】
以上のように第2決定部230は、温度Tpと、処理ズレ量とを用いて、補正値を決定する。
図2の次のステップS150では、第2決定部230(
図1)は、決定した補正値を、不揮発性記憶装置130に格納する。
【0071】
次のステップS155では、第2決定部230は、全てのインクの処理が終了したか否かを判定する。未処理のインクが残っている場合には(S155:No)、第2決定部230は、処理を、ステップS110に戻す。全てのインクの処理が終了している場合には(S155:Yes)、第2決定部230は、
図2の処理を終了する。以上の処理により、全てのインクの補正値Cc、Cm、Cy、Ckが、不揮発性記憶装置130に格納される。
【0072】
A3.印刷データの生成:
図7は、印刷処理のフローチャートである。この印刷処理では、上述の補正値Cc、Cm、Cy、Ck(
図1)に従って、インク使用量が補正される。画像処理部300は、ユーザの指示に応じて、
図7の処理を開始する。
【0073】
最初のステップS200では、補正値取得部310(
図1)は、補正値Cc、Cm、Cy、Ckを取得する。本実施例では、補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、不揮発性記憶装置130から、取得される。
【0074】
次のステップS205では、補正部320は、印刷に利用可能な複数のインク(ここでは、シアンインクとマゼンタインクとイエロインクとブラックインク)の中から、後述するドット階調値の補正(S215)が未処理である1つの未処理のインクを、対象インクとして選択する。
【0075】
次のステップS210では、補正部320は、対象インクの補正値を用いて、対象インクの濃度変換対応関係を補正する。濃度変換対応関係Gc、Gm、Gy、Gkは、印刷に利用される複数のインク(ここでは、シアンC、マゼンタM、イエロY、ブラックK)のそれぞれの濃度(階調値)を変換する処理で用いられる(
図7:S236)。
【0076】
図8は、濃度変換対応関係の一例を示すグラフであり、シアンインクのための濃度変換対応関係Gcと、マゼンタインクのための濃度変換対応関係Gmと、イエロインクのための濃度変換対応関係Gyと、ブラックインクのための濃度変換対応関係Gkと、を含んでいる。
図8には、シアンインクのための濃度変換対応関係Gcの詳細が示され、他の濃度変換対応関係Gm、Gy、Gkの詳細については、図示が省略されている。以下、シアンインクのための濃度変換対応関係Gcを参照して、説明する。このグラフの横軸は、入力値Vicを示し、縦軸は、出力値Vocを示している。図示された基準対応関係F0は、印刷部170の特性に応じて予め決められた対応関係である。基準対応関係F0に従えば、入力値Vicが大きいほど、出力値Vocは大きい。シアン補正値Ccが「1」である場合には、この基準対応関係F0が、調整されずに、そのまま用いられる。シアン補正値Ccが1よりも大きい場合には、基準対応関係F0よりも出力値Vocが大きくなるように、対応関係が補正される(例えば、第1対応関係Fp)。シアン補正値Ccが1よりも小さい場合には、基準対応関係F0よりも出力値Vocが小さくなるように、対応関係が補正される(例えば、第2対応関係Fm)。対応関係の補正は、例えば、基準対応関係F0の出力値Vocに、シアン補正値Ccを乗じることによって、行われる。
【0077】
基準対応関係F0は、以下のように構成されている。すなわち、入力値Vicが、取り得る範囲の最大値Vimax(例えば、255)である場合には、出力値Voc1は、出力値Vocが取り得る範囲の最大値Vomax(例えば、255)よりも小さい。従って、シアン補正値Ccが1よりも大きい場合に、入力値Vicが大きい範囲においても、出力値Vocを大きくすることができる(例えば、第1対応関係Fp)。
【0078】
シアン補正値Ccが1よりも大きい場合には、補正後の出力値Vocが、出力値Vocの許容範囲の最大値Vomaxを超える可能性がある。この場合には、補正部320は、最大値Vomaxを超えた出力値Vocを、最大値Vomaxに再設定する(第3対応関係Fpc。第3値Vic3以上の範囲では、出力値Vocが、最大値Vomaxに再設定されている)。これにより、画像処理に不具合が生じることを抑制できる。
【0079】
また、本実施例では、入力値Vicが第1値Vic1以下の範囲(明るい範囲)では、出力値Vocは調整されない。これにより、明るい範囲が不自然に調整される可能性を低減できる。また、入力値Vicの変化に対して出力値Vocがステップ状に変化することを避けるために、第1値Vic1と第2値Vic2(Vic2>Vic1)の間で出力値Vocが連続するように、第1値Vic1と第2値Vic2との間の出力値Vocが修正される(例えば、グラフ上の直線によって出力値Vocが修正される)。
【0080】
補正前の基準対応関係F0と、補正済の対応関係とは、例えば、1次元ルックアップテーブルによって、定められる。
【0081】
以上、シアン色のための濃度変換対応関係Gcについて説明したが、他のインクのための濃度変換対応関係Gm、Gy、Gkについても、同様に、インクに対応付けられた補正値Cm、Cy、Ckを用いて、補正される。
【0082】
図7の次のステップS215では、補正部320(
図1)は、ドット階調値テーブル137を参照し、対象インクの補正値を用いて、対象インクのドット階調値を補正する。
図9は、ドット階調値テーブル137の一例を示すグラフである。ドット階調値テーブル137は、シアン用テーブル137cと、マゼンタ用テーブル137mと、イエロ用テーブル137yと、ブラック用テーブル137kと、を含んでいる。
図9には、シアン用テーブル137cの詳細が示され、他のテーブル137m、137y、137kの詳細については、図示が省略されている。以下、シアン用テーブル137cを参照して、説明する。
【0083】
図9のグラフは、シアン補正値Ccと、ドット階調値QdLc、QdMc、QdScとの関係の一例を示している。横軸は、シアン補正値Ccを示し、縦軸は、ドット階調値を示している。ドット階調値QdLc、QdMc、QdScは、後述するハーフトーン処理(S245)で用いられる。大ドット階調値QdLcは、大ドットに対応付けられ、中ドット階調値QdMcは、中ドットに対応付けられ、小ドット階調値QdScは、小ドットに対応付けられている。詳細は後述するが、本実施例のハーフトーン処理では、いわゆる誤差拡散法に従って、画素毎のドット形成状態(ドットパターン)が決定される。このハーフトーン処理では、1つの画素位置にドットが形成されることによって、そのドットに対応付けられたドット階調値が、その画素位置で表現されることとして、種々の階調値に応じたドットパターンが決定される。通常は、複数の画素位置にドットを形成することによって、全体として、印刷すべき階調値の色が表現される。ここで、ドット階調値が小さいほど、印刷すべき階調値を実現するために必要なドット数が多くなる。従って、ドット階調値を小さくすることによって、ドット数が増大する。この結果、単位面積当たりのインク使用量が、増大する。逆に、ドット階調値を大きくすることによって、ドット数が減少し、単位面積当たりのインク使用量が減少する。
【0084】
図9に示すように、大ドット階調値QdLcは、中ドット階調値QdMcよりも大きく、中ドット階調値QdMcは、小ドット階調値QdScよりも大きい。また、シアン補正値Ccが大きいほど、ドット階調値QdLc、QdMc、QdScは小さい。具体的には、ドット階調値QdLc、QdMc、QdScは、シアン補正値Ccに対して、反比例する。シアン補正値Ccが1よりも大きい場合には、シアン補正値Ccが1である場合と比べて、単位面積当たりのインク使用量を増大することができる。一方、シアン補正値Ccが1よりも小さい場合には、シアン補正値Ccが1である場合と比べて、単位面積当たりのインク使用量を低減できる。
【0085】
図中の最大階調値Qin_maxは、ハーフトーン処理の入力値(シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックのそれぞれの階調値)が取り得る範囲の最大値である(例えば、255)。一般的なハーフトーン処理(誤差拡散法)では、最大のドットのドット階調値を、最大階調値Qin_max以上に設定することが好ましい。この理由は、以下の通りである。最大のドットのドット階調値が、最大階調値Qin_maxよりも小さいと仮定する。ここで、最大階調値Qin_maxの色を印刷する場合に、最大のドットのドット記録率を100%に設定したとしても、誤差が蓄積されて、過剰なドットが形成され得る。
【0086】
そこで、本実施例では、シアン補正値Ccが「1」である場合(ゼロの補正量を表す場合)の大ドット階調値QdLcは、最大階調値Qin_maxよりも大きい。従って、シアン補正値Ccが1よりも大きい場合に、大ドット階調値QdLcを小さくすることによって、インク使用量を増大させることができる。なお、シアン補正値Ccが大きい場合に、調整後の大ドット階調値QdLcが最大階調値Qin_maxよりも小さくなる可能性がある。この場合には、補正部320は、最大階調値Qin_maxよりも小さい大ドット階調値QdLcを、最大階調値Qin_maxに再設定する(図中では、第1値Cc1以上の範囲では、大ドット階調値QdLcが、最大階調値Qin_maxに再設定されている)。
【0087】
また、本実施例では、シアン補正値Ccの変化に対するドット階調値の変化の割合は、ドットサイズ毎に異なっている。例えば、
図9では、ドットサイズが大きいほど、補正値Ccの変化に対するドット階調値の変化の割合が大きい。従って、大きいドットのドット数が積極的に調整されるので、インク使用量を適切に補正することができる。
【0088】
以上、シアン用テーブル137cについて説明したが、他のインクのためのテーブル137m、137y、137kについても、同様に、インクに対応付けられた補正値Cm、Cy、Ckに応じて、ドット階調値が補正される。なお、各テーブル137c、137m、137y、137kは、一次元ルックアップテーブルである。ただし、対応関係を定める他の情報(例えば、演算式)を採用してもよい。
【0089】
図7の次のステップS220では、補正部320(
図1)は、全てのインクに対して濃度変換対応関係とドット階調値との補正が終了したか否かを判定する。未処理のインクが残っている場合には(S220:No)、補正部320は、処理を、ステップS205に戻す。全てのインクに対して濃度変換対応関係とドット階調値との補正が終了している場合(S220:Yes)、補正部320は、処理を、ステップS225に移行させる。
【0090】
ステップS225では、印刷データ生成部330は、印刷のために入力された入力画像データ(例えば、ユーザによって指定されたJPEGデータ)を、印刷用の処理解像度のビットマップデータに変換する(ラスタライズ)。生成されるビットマップデータは、例えば、赤(R)と緑(G)と青(B)との3つの色成分の階調値(例えば、256階調)で複数の画素のそれぞれの色を表している。
【0091】
次のステップS232では、印刷データ生成部330は、ビットマップデータの色空間変換を行う。本実施例では、画素毎に、赤(R)と緑(G)と青(B)の階調値が、複数のインクのそれぞれの階調値(ここでは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)のそれぞれの階調値)に、変換される。RGBとCMYKとの間の対応関係は、予め決定されている。
【0092】
次のステップS234では、印刷データ生成部330は、印刷に利用可能な複数のインクから、後述するハーフトーン処理(S245)が未処理である1つの未処理のインクを、対象インクとして選択する。
【0093】
次のステップS236では、印刷データ生成部330は、対象インクの濃度変換を行う。具体的には、対象インクの階調値が、ステップS210で補正済の濃度変換対応関係に従って、変換される。この結果、対象インクの階調値は、対象インクの補正値に従って、変換される。
【0094】
なお、ステップS232の色空間変換と、ステップS236の濃度変換と、の全体は、未処理の色を処理済の色に変換する処理である。従って、ステップS232、236の全体は、色変換処理CCと呼ぶことができる。
【0095】
次のステップS240では、補正部320は、ハーフトーン処理の入力値(対象インクの階調値)を、補正する。
図7のステップS240には、補正に用いられる演算式が記載されている。値Qinx(「x」は、c(シアン)、m(マゼンタ)、y(イエロ)、k(ブラック)のいずれか)は、補正後の階調値である。値Vox(「x」は、c、m、y、kのいずれか)は、補正前の階調値である(ステップS236による変換済の階調値である)。Qin_maxは、ハーフトーン処理に受け入れられ得る最大の入力値である。関数min(A,B)は、値Aと値Bとのうちの小さい値を返す関数である。
【0096】
例えば、シアンの補正済階調値Qincは、シアンの補正前階調値Vocに、シアン補正値Ccを乗算することによって、算出される。シアン補正値Ccが1である場合には、補正済階調値Qincは、補正前の階調値Vocと同じである。シアン補正値Ccが1よりも大きい場合には、補正済階調値Qincは、補正前の階調値Vocよりも大きくなる。シアン補正値Ccが1よりも小さい場合には、補正済階調値Qincは、補正前の階調値Vocよりも小さくなる。このように、補正済階調値Qincは、シアン補正値Ccに応じて、適切に、補正される。なお、補正済階調値Qincが最大階調値Qin_maxを超える場合には、補正済階調値Qincは最大階調値Qin_maxに設定される。従って、ハーフトーン処理に不具合が生じる可能性を低減できる。他のインクの階調値に関しても、同様に、補正が行われる。
【0097】
なお、本実施例では、
図8で説明した濃度変換の出力値Vocの最大値Vomaxは、
図9で説明したハーフトーン処理の入力階調値Qinの最大階調値Qin_maxと、同じである。
図8で説明したように、シアン補正値Ccが「1」である(ゼロの補正量を表す)場合には、濃度変換の出力値Vocは、最大値Vomaxよりも小さい。すなわち、ハーフトーン処理の入力値Vocは、最大階調値Qin_maxよりも小さい。従って、ステップS240では、シアン補正値Ccが「1」よりも大きい場合に、補正済階調値Qincを、補正前の階調値よりも大きくすることができる。他のインクの入力値についても、同様である。
【0098】
次のステップS245では、印刷データ生成部330は、ハーフトーン処理を行う。
図10は、ハーフトーン処理の概略図であり、
図11は、ハーフトーン処理のフローチャートである。以下、
図11の手順に沿って説明する。
【0099】
ステップ500では、先ず、印刷データ生成部330(
図1)は、誤差マトリクスMXと誤差バッファEBとを用いて、処理対象の印刷画素(注目画素)の誤差値Etを算出する。後述するように、誤差バッファEBは、各画素における濃度誤差(階調の誤差値)を格納している。誤差マトリクスMXは、注目画素の周辺の所定の相対位置に配置された画素に、ゼロより大きい重みを割り当てている(例えば、「Jarvis, Judice & Ninke」のマトリクス)。
図10の誤差マトリクスMXでは、記号「+」が注目画素を表し、周辺の画素に重みa〜lが割り当てられている。重みa〜lの合計は1である。印刷データ生成部330は、この重みに従って、周辺の画素の誤差値の重み付き和を、注目画素の誤差値Etとして算出する。次に、印刷データ生成部330は、誤差値Etと注目画素の階調値(以下、入力階調値Qinとも呼ぶ。例えば、シアンの階調値)との和を、対象階調値Qaとして算出する。
【0100】
続くステップS510〜S540では、印刷データ生成部330は、対象階調値Qaと、3つの閾値ThL、ThM、ThSと、の間の大小関係に基づいて、注目画素のドット形成状態を決定する。本実施例では、入力階調値Qinは、0〜255の256段階で表される。大ドット閾値ThLは、大ドットを出力するための閾値である(例えば、170)。中ドット閾値ThMは、中ドットを出力するための閾値である(例えば、84)。小ドット閾値ThSは、小ドットを出力するための閾値である(例えば、ゼロ)。
【0101】
印刷データ生成部330は、以下のように、ドット形成状態(ドットサイズ)を決定する。
A)対象階調値Qa>大ドット閾値ThL(S510:Yes):ドット形成状態=「大ドット」(S515)
B)対象階調値Qaが大ドット閾値ThL以下であり、かつ、対象階調値Qa>中ドット閾値ThM(S510:No、かつ、S520:Yes):ドット形成状態=「中ドット」(S525)
C)対象階調値Qaが中ドット閾値ThM以下であり、かつ、対象階調値Qa>小ドット閾値ThS(S520:No、かつ、S530:Yes):ドット形成状態=「小ドット」(S535)
D)対象階調値Qaが小ドット閾値ThS以下である(S530:No):ドット形成状態=「ドット無し」(S540)
【0102】
ドット形成状態の決定の次のステップS550では、印刷データ生成部330は、決定されたドット形成状態(ドットサイズ)に対応付けられた階調値(ドット階調値Qdと呼ぶ)を取得(変換)する。取得されるドット階調値は、
図7のステップS215、
図9で説明した、補正済の値である。なお、ドット形成状態=「ドット無し」の場合には、ドット階調値はゼロである。
【0103】
次のステップS570では、印刷データ生成部330は、注目誤差値Eaを算出する。注目誤差値Eaは、以下の式で表される。
注目誤差値Ea=対象階調値Qa−ドット階調値Qd
印刷データ生成部330は、算出した注目誤差値Eaを、注目画素の誤差値として、誤差バッファEBに登録する。なお、このように登録した注目誤差値Eaを、S500の処理において、別の注目画素に対応する周辺の画素の誤差値として使用する。
【0104】
以上のように、印刷データ生成部330は、インク毎に、各印刷画素のドット形成状態を決定する。なお、ステップS550、S570では、補正済のドット階調値が用いられる。ドット階調値は可変値であるが、ハーフトーン処理の手続きは、変更されない。従って、ハーフトーン処理の内容を複雑にせずに、インク使用量(印刷結果)を適切に制御できる。また、印刷に利用される3つのドットサイズのそれぞれのドット階調値が、補正されるので、複数のドットサイズを利用する場合に、インク使用量(印刷結果)を適切に制御できる。
【0105】
図7の次のステップS250では、印刷データ生成部330は、全てのインクに対してハーフトーン処理が終了したか否かを判定する。未処理のインクが残っている場合には(S250:No)、印刷データ生成部330は、ステップS234に移行する。全てのインクに対してハーフトーン処理が終了している場合(S250:Yes)、印刷データ生成部330は、ステップS255に移行する。
【0106】
ステップS255では、印刷データ生成部330は、ハーフトーン処理の結果(
図11のS515、S525、S535、S540にて決定された各画素のドット形成状態)を用いて、印刷データを生成する。印刷データは、ハーフトーン処理の結果を表す、印刷部170によって解釈可能な形式のデータである。
【0107】
次のステップS260では、データ出力部340(
図1)は、生成された印刷データを出力する。本実施例では、印刷データは、印刷部170に出力される。次のステップS290では、印刷部170は、受信した印刷データを利用して、画像を印刷する。
【0108】
以上のように、本実施例では、測定値取得部210(
図1)は、印刷された画像(
図3:パッチPmS1〜PkL2)を光学的に読み取ることによって得られるスキャン値(
図3:スキャン値SgS1〜SbL2)を取得する。第1決定部220は、スキャン値を用いることによって、スキャン値と、基準スキャン値とのズレを表すズレ量(
図3:Vga、Vba)を決定する。そして、第2決定部230は、ズレ量を用いて、インクの使用量を制御する制御値(
図3:補正値(制御値)Cc〜Ck)を決定する。このように、スキャン値を用いた制御値の決定が、ズレ量を介して行われるので、インクの使用量の制御を容易に行うことができる。
【0109】
特に、本実施例では、
図4、
図6で説明したように、第1決定部220は、ズレ量(特に、パッチ毎に得られるズレ量VgS1〜VbL2)を、差分割合に対しておおよそ線形に変化するように、決定する。従って、ズレ量と、インク使用量を制御するための制御値(
図3:補正値Cc〜Ck)との間の対応関係を、容易に決定することができる。そして、補正部320は、ズレ量に応じて決定された制御値(補正値)を用いて、適切なインク使用量を容易に実現できる。例えば、
図5で説明したように、第2決定部230は、温度Tpに基づく調整を、1つのパラメータ(第1処理ズレ量Vga)に対して行うことによって、濃度とドットサイズとの種々の組み合わせに適した制御値を、容易に決定できる。また、
図8で説明したように、補正部320は、制御値(補正値Cc〜Ck)を用いることによって、濃度変換前の階調値と濃度変換後の階調値との対応関係を、適切に補正することができる。また、
図9で説明したように、補正部320は、制御値(補正値Cc〜Ck)を用いてドット階調値を補正することによって、濃度とドットサイズとの種々の組み合わせに適したハーフトーン処理を実現できる。また、
図7のステップS240で説明したように、補正部320は、制御値(補正値Cc〜Ck)を用いることによって、ハーフトーン処理の入力値を、適切に補正することができる。
【0110】
また、補正値Cc〜Ckを用いることによって適切なインク使用量を実現できるので、印刷部170を設計する場合には、ドットインク量の正確度には大きな製造誤差を許容することができる。従って、印刷部170の設計の自由度を向上できる。例えば、ドットインク量とドットの記録位置との安定性に注力して、印刷ヘッドの駆動信号を開発することができる。
【0111】
また、
図5で説明したように、第2決定部230は、処理ズレ量Vga、Vbaと、カラーパッチCPが印刷された時の印刷部170の温度Tpと、を用いて、調整済処理ズレ量Vgb、Vbbを決定する。従って、インク使用量が温度に応じて変化する場合に、補正値Cc〜Ckの決定を、温度に応じて適切に行うことができる。
【0112】
また、
図3に示すように、第1決定部220は、6個のマゼンタインクのパッチPmS1〜PmL2から得られる6個のスキャン値SgS1〜SgL2を用いて、1つの処理ズレ量Vgaを決定している。従って、スキャン値に含まれるエラーの影響が抑制された、適切なズレ量を決定できる。特に、本実施例では、第1決定部220は、6個のスキャン値SgS1〜SgL2を用いて6個のズレ量の候補VgS1〜VgL2を決定し、それらの候補を平均化することによって、1つの処理ズレ量Vgaを決定している。従って、6個のスキャン値を適切に反映した処理ズレ量Vgaを決定できる。なお、1つのズレ量の決定に利用されるパッチの総数としては、6に限らず、N個(Nは2以上の整数)を採用可能である。N個のパッチの間では、インクが共通であり、かつ、濃度とドットサイズとの組み合わせが互いに異なることが好ましい。
【0113】
また、
図3に示すように、マゼンタインクのためのマゼンタ補正値Cmと、ブラックインクのためのブラック補正値Ckとは、独立に、各インクのパッチから決定されるので、各インクに適した補正値を決定できる。そして、
図7で説明したように、マゼンタインクのための補正対象値(
図8の出力値、
図9のドット階調値、
図7のステップS240の入力値)は、マゼンタインクのためのマゼンタ補正値Cmを用いて補正され、同様に、ブラックインクのための補正対象値は、ブラックインクのためのブラック補正値Ckを用いて補正される。従って、それらのインクを印刷に用いる場合に、印刷結果を適切に制御できる。
【0114】
特に、マゼンタインクは染料を用いたインクであり、ブラックインクは顔料を用いたインクである。このように色材の種類が異なる2つのインクのそれぞれの補正値が、独立に決定されるので、色材の種類に拘わらずに、適切な補正値を決定できる。
【0115】
また、
図3で説明したように、マゼンタインクを使用して印刷されたパッチPmS1〜PmL2から得られるスキャン値は、マゼンタインクの色と補色の関係にある緑色の色値(すなわち、グリーン色成分の強度を表す値)によって表されている。従って、パッチの濃度(実際のインク量)の小さい変化を適切に反映したスキャン値を得ることができる。また、緑色は、他の色と比べて、人の比視感度が相対的に高いので、緑色の色値を用いれば、人の視覚に適した補正値を決定できる。
【0116】
また、
図7で説明したように、補正部320による補正(印刷データ生成のための補正)は、印刷されたパッチ画像(パッチ)を用いて得られる補正値Cc〜Ckを用いて行われる(S200、S210、S215、S240)。従って、印刷データ(印刷結果)を適切に制御することができる。
【0117】
また、印刷部170に出力される印刷データの生成を制御するための補正値Cc〜Ckは、同じ印刷部170によって印刷されたカラーパッチCPに含まれるパッチ画像(パッチ)を用いて決定されている。従って、印刷部170に出力される印刷データの生成の制御に、印刷部170に適した補正値Cc〜Ckを、用いることができる。
【0118】
B.第2実施例:
図12、
図13は、第2実施例における処理の概略図である。
図12は、補正値の決定処理を示し、
図13は、ドット階調値の補正処理を示している。第2実施例では、第1実施例と同じ複合機100(
図1)が、用いられる(ハードウェア構成は、第1実施例と同じである)。第2実施例では、補正値は、ドットサイズ毎に、決定される。そして、ドットサイズ毎に決定された補正値に従って、ドット階調値が調整される。
【0119】
図12は、
図3と同様の概略図を示している。
図12では、
図3の構成と同じ構成には、同じ符号が付されており、その説明を省略する。第1実施例(
図2、
図3)との差異は、ステップS135、S140、S145が、ステップS135a、S140a、S145aに、それぞれ置換されている点だけである。他のステップは、第1実施例と同じである。以下、ステップS135a、S140a、S145aについて説明し、他のステップの説明を省略する。
【0120】
ステップS135aでは、第1決定部220(
図1)は、対象インクと対象サイズとは共通し、濃度が互いに異なる複数のズレ量から、1つの処理ズレ量を決定する(複数のズレ量から処理ズレ量を算出する方法は、第1実施例と同じ)。
図3には、インクとドットサイズとの組み合わせ毎に算出された6個の処理ズレ量VgSa、VgMa、VgLa、VbSa、VbMa、VbLaが示されている。処理ズレ量の符号には、ドットサイズを示す文字(S(小)、M(中)、L(大)のいずれか)が、含まれている。例えば、マゼンタインクの中ドットのための処理ズレ量VgMaは、マゼンタインクと中ドットとの組み合わせに対応付けられた2つのズレ量VgM1、VgM2を用いて、決定される(本実施例では、平均値)。他の処理ズレ量も、同様に、決定される。
【0121】
次のステップS140aでは、第2決定部230は、6個の処理ズレ量VgSa、VgMa、VgLa、VbSa、VbMa、VbLaのそれぞれを、温度に応じて調整する。調整方法は、第1実施例のステップS140の方法と同じである。この結果、6個の調整済処理ズレ量VgSb、VgMb、VgLb、VbSb、VbMb、VbLbが、決定される。
【0122】
次のステップS145aでは、第2決定部230は、調整済処理ズレ量から、補正値を決定する。補正値は、インクとドットサイズとの組み合わせ毎に、決定される。
図12には、決定された12個の補正値CSc〜CLkが示されている。補正値の符号には、ドットサイズを示す文字(S(小)、M(中)、L(大)のいずれか)と、インクを示す文字(c(シアン)、m(マゼンタ)、y(イエロ)、k(ブラック)のいずれか)と、が含まれている。調整済処理ズレ量と補正値との対応関係としては、
図6で説明した補正値テーブル136が用いられる。上述したように、この対応関係は、インク毎に決定されている。インクが共通し、ドットサイズが互いに異なる複数の補正値の決定には、共通の対応関係が用いられる。例えば、シアンのドットのための3つの補正値CSc、CMc、CLcの決定には、シアン用の対応関係136cが用いられる。
【0123】
以上のように、第2実施例では、ドットサイズ毎に、互いに異なるパッチを用いて補正値が決定されるので、各ドットサイズに適した補正値を、決定できる。画像処理部300(
図1)は、ドットサイズ毎に決定された補正値を用いて、印刷データを生成する。印刷処理の手順は、
図7に示す第1実施例と同じである。
【0124】
図13は、ドット階調値テーブル137Bの一例を示すグラフである。このドット階調値テーブル137Bは、
図9のドット階調値テーブル137の代わりに、用いられる。
図13には、シアン用テーブル137Bcの詳細が示され、他のインク用のテーブル137Bm、137By、137Bkの詳細については、図示が省略されている。
【0125】
図13に示すように、第2実施例では、ドット毎のドット階調値QdSc、QdMc、QdLcは、ドット毎の補正値CSc、CMc、CLcを用いて、それぞれ調整される。補正値とドット階調値との間の対応関係は、
図9の対応関係において、シアン補正値Ccをドットサイズ毎の補正値CSc、CMc、CLcに置換して得られる対応関係と同等である。他のインクの対応関係も、同様に、決定されている。
【0126】
このように、補正部320は、ドットサイズ毎のドット階調値を、ドットサイズ毎の補正値を用いて、それぞれ補正する。従って、インク使用量(印刷結果)を、適切に制御できる。なお、補正値テーブル136(
図6)は、インクとドットサイズとの組み合わせ毎に、調整済処理ズレ量と補正値との間の対応関係を定めてもよい。
【0127】
なお、
図7に示すフローチャートでは、ステップS210と、ステップS240とで、複数のドットサイズに共通な補正値Cc、Cm、Cy、Ckが用いられている。第2実施例では、第2決定部230は、ドットサイズ毎に決定された複数の補正値(インクが共通する複数の補正値)を用いて、1つにインクに対応する1つの補正値を決定し、決定された補正値を、上記の補正値Cc、Cm、Cy、Ckの代わりに提供する。例えば、シアンのための3つの補正値CSc、CMc、CLcの平均値が、上記の補正値Ccの代わりに提供される。なお、1つの補正値としては、複数の補正値の関数で表される種々の値を採用可能である(例えば、平均値、最頻値、中央値(メディアン)、最大値、最小値等の統計量)。また、第2実施例においても、第2決定部230は、
図3と同じ手順に従って、インク毎の補正値Cc、Cm、Cy、Ckを決定してもよい。
【0128】
C.第3実施例:
図14〜
図16は、第3実施例における補正処理の概略図である。上記各実施例では、インク毎に補正値が決定され(
図2:S145)、インク毎に種々の値が補正されている(
図7:S210、S215、S240)。第3実施例では、複数のインクに共通な補正値が決定され、複数のインクに共通な補正が行われる。第3実施例では、第1実施例と同じ複合機100(
図1)が用いられる(ハードウェア構成は、第1実施例と同じである)。補正値の決定は、
図2と同じ手順に従って決定される。ただし、ステップS145では、第2決定部230は、シアン補正値Ccとイエロ補正値Cyとを決定せずに、マゼンタ補正値Cmとブラック補正値Ckとを決定する。他のステップの処理は、第1実施例と同じである。印刷処理は、
図7と同じ手順に従って進行する。ただし、ステップS210、S215、S236、S240は、以下に説明するように、変更される。
【0129】
図14は、第3実施例で用いられる濃度変換対応関係を示している。図示するように、マゼンタ用の濃度変換対応関係Gmとブラック用の濃度変換対応関係Gkとが用いられ、シアン用の濃度変換対応関係Gcと、イエロ用の濃度変換対応関係Gyとは、省略される。
図7のステップS210では、補正部320は、マゼンタインクのパッチを用いて決定されたマゼンタ補正値Cmを用いてマゼンタ用の濃度変換対応関係Gmを補正し、ブラックインクのパッチを用いて決定されたブラック補正値Ckを用いてブラック用の濃度変換対応関係Gkを補正する。
図7のステップS236では、印刷データ生成部330は、マゼンタ補正値Cmを用いて補正されたマゼンタ用の濃度変換対応関係Gmを、マゼンタの階調値に加えて、シアンの階調値とイエロの階調値とにも適用する。
【0130】
図15は、第3実施例で用いられるドット階調値テーブル137Dを示している。図示するように、ドット階調値テーブル137Dは、マゼンタ用テーブル137mとブラック用テーブル137kとを含んでおり、シアン用テーブル137cとイエロ用テーブル137yとは、省略されている。
図7のステップS215では、補正部320は、マゼンタインクのパッチを用いて決定されたマゼンタ補正値Cmを用いて、マゼンタ用テーブル137mを参照して、マゼンタ用のドット階調値を補正し、ブラックインクのパッチを用いて決定されたブラック補正値Ckを用いて、ブラック用テーブル137kを参照して、ブラック用のドット階調値を補正する。
図7のステップS245(
図11のステップS550)では、印刷データ生成部330は、マゼンタ補正値Cmを用いて補正されたマゼンタ用のドット階調値を、マゼンタのハーフトーン処理に加えて、シアンのハーフトーン処理とイエロのハーフトーン処理とにも適用する。
【0131】
図16は、第3実施例におけるハーフトーン入力値の補正(ステップS240)を示す概略図である。
図7のステップS240との差異は、シアンの補正済階調値Qincとイエロの補正済階調値Qinyとの算出に、マゼンタ補正値Cmが用いられている点だけである。このように、補正部320は、シアンとマゼンタとイエロの補正済階調値Qinc、Qinm、Qinyを算出する場合に、マゼンタインクのパッチを用いて決定されたマゼンタ補正値Cmを用いて、補正前階調値Voc、Vom、Voyを補正する。
【0132】
以上のように、第3実施例では、印刷データ生成部330は、マゼンタインクとは異なるシアン色を示し、かつ、マゼンタインクと同じ種類(染料)のインクであるシアンインクのための処理に、マゼンタ補正値Cmを用いて補正された値(例えば、
図14の濃度変換対応関係Gmの出力値、
図15のドット階調値、
図16の補正済階調値)を用いる。イエロインクについても、シアンインクと同様である。従って、処理を簡素化することができる。また、同じ補正値が適用される複数のインクは、種類が同じインクである(染料)。従って、種類が互いに異なる複数のインクに同じ補正値が適用される場合と比べて、印刷結果を適切に制御できる。
【0133】
なお、
図14の実施例において、シアン用の濃度変換対応関係Gcとイエロ用の濃度変換対応関係Gyとを、省略せずに、
図7のステップS236に適用してもよい。同様に、
図15の実施例において、シアン用テーブル137cとイエロ用テーブル137yとを省略せずに、
図7のステップS245に適用してもよい。いずれの場合も、補正部320は、マゼンタ補正値Cmを用いて、それらのパラメータGc、Gy、137c、137yを補正すればよい。この場合も、印刷データ生成部330は、マゼンタ補正値Cmで補正された値を用いて、シアンとイエロとのための処理を行っている、ということができる。なお、共通に適用される補正値としては、マゼンタ補正値Cmに限らず、他のインクの補正値(例えば、シアン補正値Cc)を採用してもよい。
【0134】
D.第4実施例:
図17は、第4実施例における画像処理システム900のブロック図である。画像処理システム900は、ネットワークNTと、ネットワークNTを介して互いに接続された画像処理装置100bと複合機500と、を含んでいる。
図17では、
図1の構成と同じ構成には、同じ符号が付されており、その説明を省略する。
【0135】
複合機500は、制御装置510と、揮発性記憶装置520と、不揮発性記憶装置530と、読取部160と、印刷部170と、温度センサ175と、ネットワークNTとの接続のためのインタフェース580と、を備えている。
【0136】
不揮発性記憶装置530には、予め(例えば、複合機500の出荷時に)、補正値Cc、Cm、Cy、Ckが、格納されている。補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、
図2、
図3で説明した方法に従って、印刷部170に適合するように、決定されている。
【0137】
制御装置510は、複合機500の全体を制御する制御回路である。制御装置510は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。制御装置510は、印刷制御部512と、読取制御部514と、データ処理部516と、を含んでいる。印刷制御部512は、インタフェース580を介して印刷データを受信し、受信した印刷データに従って印刷部170を制御することによって、印刷を行う。読取制御部514は、読取部160を制御してスキャンデータを生成する。データ処理部516は、インタフェース580を介して、データの送受信を行う。
【0138】
画像処理装置100bは、例えば、汎用のコンピュータである。画像処理装置100bは、画像処理装置100bの全体を制御するCPU110bと、揮発性記憶装置120bと、不揮発性記憶装置130bと、ネットワークNTとの接続のためのインタフェース180bと、を含んでいる。不揮発性記憶装置130bは、第2プログラム132と、補正値Cc〜Ckと、濃度変換対応関係Gc、Gm、Gy、Gkと、ドット階調値テーブル137と、マトリクスMXと、を格納している。後述するように、補正値Cc〜Ckは、複合機500から取得された情報である。他の情報は、予め(例えば、第2プログラム132のインストール時に)、不揮発性記憶装置130bに格納されている。
【0139】
CPU110bは、第2プログラム132を実行することによって、画像処理部300として機能する。画像処理部300は、上述の実施例と同様に、
図7の手順に従って、印刷処理を行う。ただし、ステップS200、S260は、以下のように修正され、ステップS290は実行されない(ステップS290に相当する処理は、複合機500によって実行される)。
【0140】
ステップS200では、補正値取得部310は、複合機500から、補正値Cc、Cm、Cy、Ckを取得する。補正値取得部310は、複合機500に、要求を送信する。複合機500のデータ処理部516は、要求に応じて、補正値Cc〜Ckを、画像処理装置100bに送信する。補正値取得部310は、受信した補正値Cc〜Ckを、不揮発性記憶装置130bに格納する。なお、補正値取得部310は、一旦、不揮発性記憶装置130bに補正値Cc〜Ckを格納すれば、次回以降の印刷処理では、ステップS200をスキップしてもよい。
【0141】
ステップS260では、データ出力部340は、印刷データを、複合機500に出力することで、画像処理装置100bでの処理が終了する。その後、複合機500では、印刷制御部512が、受信した印刷データを用いて、印刷を行う。
【0142】
以上のように、印刷部170を含む装置(複合機500)に接続された別の装置(画像処理装置100b)が、補正値Cc〜Ckを用いて印刷データを生成してもよい。
【0143】
E.第5実施例:
図18は、第5実施例における画像処理システム910のブロック図である。画像処理システム910は、ネットワークNTと、ネットワークNTを介して互いに接続された制御装置100cと複合機500と、を含んでいる。複合機500は、
図17の複合機500と、同じである。
図18では、
図1、
図17の構成と同じ構成には、同じ符号が付されており、その説明を省略する。
【0144】
制御装置100cは、例えば、汎用のコンピュータである。制御装置100cは、制御装置100cの全体を制御するCPU110cと、揮発性記憶装置120cと、不揮発性記憶装置130cと、ネットワークNTとの接続のためのインタフェース180cと、を含んでいる。不揮発性記憶装置130cは、第1プログラム131と、ズレ量テーブル134と、補正値テーブル136と、補正値Cc〜Ckと、温度調整情報138と、を格納している。後述するように、補正値Cc〜Ckは、制御装置100cによって生成される。他の情報は、予め(例えば、第1プログラム131のインストール時に)、不揮発性記憶装置130cに格納されている。
【0145】
CPU110cは、第1プログラム131を実行することによって、制御処理部200として機能する。制御処理部200は、上述の実施例と同様に、
図2の手順に従って、補正値Cc〜Ckを決定する。ただし、ステップS100〜S107、S150は、以下のように、修正される。
【0146】
ステップS100では、カラーパッチ出力部240は、複合機500に、温度情報を要求する。複合機500のデータ処理部516は、受信した要求に応じて、温度センサ175から温度を表す情報を取得し、取得した情報を、制御装置100cに出力する。カラーパッチ出力部240は、受信した情報を用いて、カラーパッチCPを表す印刷データを生成し、生成した印刷データを、複合機500に出力する。複合機500の印刷制御部512は、受信した印刷データに従って、カラーパッチCPを印刷する。
【0147】
次のステップS105では、測定値取得部210は、複合機500に指示を出力することによって、読取部160に、カラーパッチCPをスキャンさせる。先ず、ユーザは、カラーパッチCPを読取部160にセットする。次に、測定値取得部210は、ユーザの指示に応じて、複合機500に、スキャン開始コマンドを出力する。複合機500の読取制御部514は、受信したコマンドに従って、スキャンを開始して、スキャンデータを生成する。次のステップS107では、測定値取得部210は、スキャンデータを、複合機500(読取部160)から取得する。
【0148】
ステップS150では、第2決定部230は、決定した補正値を、複合機500に出力する。複合機500のデータ処理部516は、受信した補正値を、不揮発性記憶装置530に格納する。格納された補正値は、
図17の実施例のように、画像処理装置100bによって利用され得る。
【0149】
以上のように、印刷部170を含む装置(複合機500)に接続された別の装置(制御装置100c)が、補正値Cc〜Ckを決定してもよい。なお、カラーパッチCPは、印刷部170を含む装置(複合機500)とは別の装置に設けられた読取部によって、読み取られても良い。この場合も、測定値取得部210は、カラーパッチCPを読み取った読取部から、スキャンデータを取得すればよい。
【0150】
F.変形例:
(1)第1決定部220によって決定されるズレ量(ズレ量Vga、Vba)としては、
図4で説明した値に限らず、スキャン値と基準スキャン値との間のズレを表す種々の値を採用可能である。いずれの場合も、スキャン値から決定されるズレ量が、種々のインク使用量に適した補正を実現できることが好ましい。このような補正を実現するための補正値の決定を容易にするように、スキャン値とズレ量との対応関係(以下「スキャン−ズレ関係」と呼ぶ)が決定されることが好ましい。そのようなスキャン−ズレ関係は、印刷部170の特性と、パッチを読み取る読取部の特性と、に依存して、種々に変化し得る。例えば、ズレ量が、差分割合に対して非線形である場合もあり得る。いずれの場合も、種々のインク使用量と、それらのインク使用量のパッチから得られるスキャン値と、の対応関係を評価する実験に基づいて、スキャン−ズレ関係を決定することができる。また、そのように決定されたスキャン−ズレ関係は、
図4のスキャン値ペアSP1、SP2を用いて説明した特徴を有している可能性が高い。換言すれば、そのような特徴を有するスキャン−ズレ関係を採用すれば、種々のインク使用量に適した補正を容易に実現できる。ただし、そのような特徴を有していないスキャン−ズレ関係を採用してもよい。また、第1決定部220は、温度Tpを用いて、温度調整済のズレ量を決定してもよい。
【0151】
(2)補正値を用いる補正の対象としては、種々の値を採用可能である。上述の実施例では、ハーフトーン処理に関連する値(
図7のステップS215で説明したドット階調値と、ステップS240で説明した入力値)と、色変換で用いられるパラメータ値(
図7のステップS210で説明した濃度変換対応関係の出力値)とが、補正値を用いて補正される。これらの3つの補正対象から任意に選択された1つの値、または、2つの値を、補正対象として採用してもよい。なお、この場合、選択されない1つの値、または、2つの値を補正する処理(
図7のステップS210、S215、S240のうち、選択されない1つ、または2つの処理)を省略してもよい。また、それらの値とは異なる他の値を、補正対象として採用してもよい。例えば、
図7のステップS232で用いられるRGBとCMYKとの間の対応関係(出力色値)を、補正対象として採用してもよい。また、ハーフトーン処理としては、ディザマトリクスを用いる処理を採用してもよい。この場合には、ディザマトリクスによって規定される閾値を、補正対象として採用してもよい。
【0152】
(3)複数のドットサイズと、それぞれのドットサイズ毎の規定のドットインク量と、の対応関係を規定するドットインク量設定が、複数定められている場合がある。例えば、ユーザが、印刷媒体の種類と印刷解像度とを選択することで、複数のドットインク量設定中から一のドットインク量設定が決定されることがある。このとき、補正値の決定と、補正値を用いた補正とは、ドットインク量設定毎に、独立に行われることが好ましい。こうすれば、複数のドットインク量設定が利用可能な場合に、各ドットインク量設定に適した補正を行うことができる。例えば、
図4のズレ量テーブル134と、
図6の補正値テーブル136と、
図8の濃度変換対応関係Gc〜Gk(特に、補正値が「1」である場合の対応関係)と、
図7のステップS232で用いられるRGBとCMYKとの間の対応関係とは、ドットインク量設定毎に、準備されていることが好ましい。
【0153】
(4)印刷に利用可能なインクとしては、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの4つに限らず、任意の成分(特に色成分)、任意の種類、任意の数のインクを採用可能である。例えば、水性インクと油性インクとの2つの種類のインクを採用してもよい。複数のインクを利用可能な場合には、第1インクのパッチから得られる第1スキャン値を用いて第1ズレ量が決定され、第1ズレ量を用いて第1インク用の補正値(制御値)が決定され、さらに、第2インクのパッチから得られる第2スキャン値を用いて第2ズレ量が決定され、第2ズレ量を用いて第2インク用の補正値(制御値)が決定されることが好ましい。そして、第1インクに対応付けられた補正対象値が、第1インク用の補正値を用いて補正され、第2インクに対応付けられた補正対象値が、第2インク用の補正値を用いて補正されることが好ましい。一般的には、印刷に利用可能な複数のインクのそれぞれのパッチを用いて、インク毎に独立に、補正値を決定することが好ましい。この代わりに、1つのインクのパッチを用いて、全てのインクのそれぞれの補正値を決定してもよい。
【0154】
(5)ドットサイズの総数としては、3に限らず、任意の数を採用可能である。例えば、「小ドット、中ドット、大ドット、特大ドット」の4つを採用してもよい。また、ドットサイズの総数として、「1」を採用してもよい。複数のドットサイズを利用可能な場合には、第1サイズのドットで印刷されたパッチから得られる第1スキャン値を用いて第1ズレ量が決定され、第1ズレ量を用いて第1サイズ用の補正値(制御値)が決定され、さらに、第2サイズのドットで印刷されたパッチから得られる第2スキャン値を用いて第2ズレ量が決定され、第2ズレ量を用いて第2サイズ用の補正値(制御値)が決定されることが、好ましい。また、印刷に利用可能な複数のドットサイズのうちの1つのドットサイズのパッチを用いて、全てのドットサイズのそれぞれの補正値を決定してもよい。
【0155】
(6)
図1、
図18に示す実施例において、温度を表す情報(例えば、バーコードBC(
図3))をカラーパッチCPに記録する代わりに、第2決定部230は、カラーパッチCPの印刷時に、温度センサ175から、温度を表す情報を取得してもよい(
図2:S100)。そして、
図2のステップS140では、第2決定部230は、取得済の温度を用いて、処理ズレ量を調整すればよい。
【0156】
(7)印刷部170としては、インクジェット式のプリンタに限らず、他の形式のプリンタを採用可能である。例えば、色材としてトナーを用いる、いわゆるレーザプリンタを採用可能である。
【0157】
(8)ネットワークを介して互いに通信可能な複数の装置(例えば、コンピュータ)が、制御処理部200の機能を一部ずつ分担して、全体として、制御処理部200の機能を提供してもよい(これらの装置を備えるシステムが制御装置に対応する)。同様に、ネットワークを介して互いに通信可能な複数の装置(例えば、コンピュータ)が、画像処理部300の機能を一部ずつ分担して、全体として、画像処理部300の機能を提供してもよい(これらの装置を備える画像処理装置に対応する)。
【0158】
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、
図1の制御処理部200の機能を、論理回路を有する専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
【0159】
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含んでいる。
【0160】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。