特許第5983232号(P5983232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983232
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】車両の変速操作装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   B60K20/02 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-208493(P2012-208493)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-61811(P2014-61811A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】岩永 文昭
(72)【発明者】
【氏名】稲田 仁
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−155908(JP,A)
【文献】 特開2012−179995(JP,A)
【文献】 実開昭61−081429(JP,U)
【文献】 特開2003−127694(JP,A)
【文献】 特開2004−065108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機のシフトポジションを設定するレバー部材と、
前記レバー部材の移動範囲を規制するガイド部材と、
前記ガイド部材及び前記レバー部材の揺動中心を収容するアッパーパートと、
前記アッパーパートとは別体に形成され、車両に固定されるとともに前記アッパーパートを保持するロアパートと、を備え
前記ガイド部材の表裏を貫通し、車両前後方向及び車幅方向のそれぞれに沿った部位を含む階段状の長孔として形成されるとともに、車両前後方向に線対称の形状を有するゲート部を備えるとともに、
前記アッパーパートが、二回回転対称性を持った外形を有する
ことを特徴とする、車両の変速操作装置。
【請求項2】
前記ゲート部が、車両前後方向に延在する縦孔部と、前記縦孔部の端部から車幅方向に延在する横孔部とを有するとともに、
前記レバー部材に固定されたディテントロッドと、
前記ディテントロッドの先端に当接する位置に配置されたディテントパネルと、
前記ディテントパネルに刻設され、前記レバー部材が前記ゲート部に沿って移動するように前記ディテントロッドの先端を案内する溝部と、
前記溝部上に凹設され、前記縦孔部の後端に前記レバー部材が位置する状態で前記ディテントロッドの先端に係合する係合穴と、を備えた
ことを特徴とする、請求項記載の車両の変速操作装置。
【請求項3】
前記ゲート部の端部に充填され、前記レバー部材の可動範囲に制限を加える制限部材を備えた
ことを特徴とする、請求項記載の車両の変速操作装置。
【請求項4】
前記ディテントパネルが、前記ゲート部の端部に対応する位置での前記ディテントロッドの可動範囲を規制する規制部を有する
ことを特徴とする、請求項2又は3記載の車両の変速操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される変速機のシフトレンジを設定するための変速操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車室内には、変速機で選択されるシフトレンジ(シフトポジション)を設定するための変速操作装置が設けられている。変速操作装置には、シフトレバー,チェンジレバー,セレクトレバー等と呼ばれるレバー部材が設けられ、このレバー部材に対する運転手の操作入力が変速機へと伝達されて、変速機のシフトレンジが制御される。
【0003】
機械式の変速操作装置では、レバー部材と変速機との間がリンク機構やシフトケーブルで連結され、レバー部材への操作入力が変速機へと物理的に伝達される。一方、シフトバイワイヤ式の変速操作装置では、リンク機構やシフトケーブルの代わりに、レバー部材の操作状態を検出するセンサーや信号線(ワイヤー)が設けられ、操作入力に対応する情報が電気的に変速機へと伝達される。
【0004】
レバー部材の可動範囲は、ゲートプレートによって制限される。このゲートプレートには、レバー部材の可動範囲に対応する形状の開口部が形成され、レバー部材はこの開口部の内側に挿通される。このような開口部は「シフトゲート」と呼ばれ、その形状は「ゲートパターン」と呼ばれる。
【0005】
従来、自動変速機の変速操作装置において、ゲートパターンを直線状に形成したものが知られている。すなわち、シフトゲートの最奥部(最上部)にPレンジが設定され、手前に向かってRレンジ,Nレンジ,走行レンジ(Dレンジや低速段相当レンジ)等が設定されたものである(例えば、特許文献1,2参照)。
【0006】
このような直線状のシフトゲートを備えた変速操作装置には、走行中の誤操作によってPレンジやRレンジを選択してしまうことがないように、レバー部材の移動を拘束するロック機構が搭載される。ロック機構は、例えばレバー部材の側面に設けられるロック解除用のボタンを押し込むことで拘束を解除するように形成される。したがって、PレンジやRレンジを選択する際には、ボタンを押し込みながらレバー部材を傾動させるという煩雑な操作が求められる。
【0007】
一方、このような解除操作の煩わしさを解消すべく、ロック機構を廃してゲートパターンを階段状に設定したものも知られている(例えば、特許文献3参照)。この場合、レバー部材の操作位置が任意のシフトポジションに到達した時点で、次のシフトポジションへの操作方向が変化することになる。したがって、運転手が誤操作しにくく、走行中に誤ってPレンジやRレンジを選択してしまうこともない。このような階段状のシフトゲートは、スタッガードゲート(staggered gate)と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3691681号公報
【特許文献2】特開2007-308091号公報
【特許文献3】特開2012-76529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、車両の基本仕様が同一であっても、仕向け先の法規や慣習に応じて、右ハンドル仕様の車両と左ハンドル仕様の車両とが製造されることがある。このような二つの仕様に対して、変速操作装置は、右ハンドル車両では運転席の左側に設けられ、左ハンドル車両では運転席の右側に設けられる。一方、車両の操作感覚を同一にするためには、右ハンドル仕様の場合と左ハンドル仕様の場合とでゲートパターンが左右対称であることが望まれる。このような点で、直線状のシフトゲートを持つ変速操作装置は、右ハンドル仕様の車両と左ハンドル仕様の車両とで同一のゲートプレートを共用することが可能であり、操作感覚を共通化することが容易である。
【0010】
しかしながら、上記のスタッガードゲートを備えた変速操作装置のゲートパターンは、通常は左右対称の形状ではない。そのため、それぞれの仕様に適した二種類の部品を製造することになり、製品の製造コストを削減することが難しいという課題がある。
【0011】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、左右ハンドル仕様の異なる車両に対する部品の汎用性を向上させ、コスト削減に寄与する車両の変速操作装置を提供することである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)ここで開示する車両の変速操作装置は、変速機のシフトポジションを設定するレバー部材と、前記レバー部材の移動範囲を規制するガイド部材と、前記ガイド部材及び前記レバー部材の揺動中心を収容するアッパーパートとを備える。また、前記アッパーパートとは別体に形成され、車両に固定されるとともに前記アッパーパートを保持するロアパートを備える。
【0013】
た、前記ガイド部材の表裏を貫通し、車両前後方向及び車幅方向のそれぞれに沿った部位を含む階段状の長孔として形成されるとともに、車両前後方向に線対称の形状(ゲートパターン)を有するゲート部を備える。さらに、前記アッパーパートが、二回回転対称性を持った外形を有する。
ここでいう二回回転対称性とは、ある回転軸を中心として水平方向に180°回転させたときに同一形状となるような回転対称性を意味する。また、ここでいう階段状の長孔とは、車両前後方向に延在する部分の端部に対して車幅方向に延在する部分の端部を接続した形状の長孔である。このような形状は、例えばスタッガードゲート形状やジグザグ形状等とも呼ばれる。
【0014】
)また、前記ゲート部が、車両前後方向に延在する縦孔部と、前記縦孔部の端部から車幅方向に延在する横孔部とを有することが好ましい。この場合、前記レバー部材に固定されたディテントロッドと、前記ディテントロッドの先端に当接する位置に配置されたディテントパネルと、前記ディテントパネルに刻設され、前記レバー部材が前記ゲート部に沿って移動するように前記ディテントロッドの先端を案内する溝部と、前記溝部上に凹設され、前記縦孔部の後端に前記レバー部材が位置する状態で前記ディテントロッドの先端に係合する係合穴とを備えることが好ましい。
ここでいう後端とは、車両前後方向の後端であって、運転手から見ると手前側である。つまり、階段状の長穴のうち、縦孔部の手前側に変速機のレンジ(例えば、Dレンジ,Dsレンジ,Bレンジ等)が設定されることが好ましい。
【0015】
)また、前記ゲート部の端部に充填され、前記レバー部材の可動範囲に制限を加える制限部材を備えることが好ましい。
例えば、ゲート部の形状がレバー部材を移動させたい形状よりも大きくはみ出した形状であるときに、そのはみ出した部分に制限部材を設ける。この制限部材は、レバー部材との干渉により、レバー部材の移動を直接的に制限するように機能する。
【0016】
)また、前記ディテントパネルが、前記ゲート部の端部に対応する位置での前記ディテントロッドの可動範囲を規制する規制部を有することが好ましい。
例えば、ゲート部の形状がレバー部材を移動させたい形状よりも大きくはみ出した形状であるときに、そのはみ出した部分に対応するディテントパネル上の部位に規制部を設ける。規制部は、ディテントロッドとの干渉により、ディテントロッドの移動を直接的に規制するように機能する。これにより、レバー部材の移動が間接的に制限されることになる。
【発明の効果】
【0017】
開示の車両の変速操作装置によれば、アッパーパートとロアパートとを別体に設けることで、ロアパートの部品を共通化することができ、部品点数を減少させることができ、製品コストを削減することができる。また、ロアパートの固定位置や固定手法は、左ハンドル仕様車と右ハンドル仕様車とで共通となり、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態の車両の変速操作装置を示す分解斜視図である。
図2図1の変速操作装置に内蔵されるシフトレバーガイドを示す図であり、(a)は上面側を示す分解斜視図、(b)は上面図である。
図3図1の変速操作装置の内部構成を例示する断面図(図1のA−A断面図)である。
図4図1の変速操作装置に内蔵されるディテントパネルを示す図であり、(a)は下面側を示す斜視図、(b)は(a)のB−B断面図である。
図5】(a)〜(h)は、ゲートパターン及びシフトポジションの設定例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して車両の変速操作装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0020】
[1.構成]
図1は、右ハンドル仕様の車両に適用される変速操作装置10の分解斜視図である。この変速操作装置10には、車室フロアやインストルメントパネル等に対して固定されるロアパート1と、ロアパート1の上部に装着されるアッパーパート2とが設けられる。
ロアパート1は、アッパーパート2を車室内に固定するための台座である。このロアパート1には、アッパーパート2の外周面と嵌合する中空形状に形成されたアッパーパート保持部1aと、アッパーパート保持部1aの下端外縁から外側方向に向かって延設されたフランジ状のロアパート固定部1bとが設けられる。
【0021】
アッパーパート保持部1aは、アッパーパート2の外形に対応する大きさに形成された器状の部位である。図1中に白抜き矢印で示すように、アッパーパート2はアッパーパート保持部1aの内側に嵌め込まれて固定される。
アッパーパート2の外形(すなわち、アッパーパート保持部1aの内側形状)は、二回回転対称性を有する外形とされる。つまり、アッパーパート2は、アッパーパート保持部1aに対して水平方向に180°回転させた状態でも保持される形状となっている。また、ロアパート固定部1bは、任意の固定手段(ボルト,ビス,係止爪等)を介して車体に固定される。
【0022】
アッパーパート2には、シフトレバー3,ケーシング4,シフトレバーガイド5,ディテント機構7及びディテントパネル8が設けられる。
シフトレバー3(レバー部材)は、運転手が変速機のシフトレンジ(シフトポジション)を設定するための操作棹である。シフトレバー3の上端にはシフトノブが設けられ、シフトレバー3の下端には球面軸受(揺動中心)が設けられる。シフトレバー3は、車両前後方向及び車幅方向の両方に対して揺動自在に支持される。
【0023】
図1に示すように、シフトレバー3の球面軸受を通って車両前後方向に延在する回転軸をC1とおき、車幅方向に延在する回転軸をC2とおくと、シフトレバー3は回転軸C1を中心として車幅方向に沿って揺動自在であり、回転軸C2を中心として車両前後方向に沿って揺動自在に設けられる。なお、球面軸受はケーシング4に対して固定される。
【0024】
ケーシング4は、アッパーパート2内の他の部材を収容する箱状の部位である。ケーシング4の底面側は、ロアパート1に対して開放される。一方、ケーシング4の上面側にはシフトレバーガイド5が取り付けられ、その下方にディテントパネル8が取り付けられる。図1では、シフトレバーガイド5がケーシング4の上面全体を覆うように設けられたものを例示する。本実施形態のケーシング4は、図1に示すように、四角柱から底面及び頂面を取り外すとともに、上方に向かって凸に湾曲した曲面で側面の頂面側端辺を切断したような形状とされる。
【0025】
シフトレバーガイド5(ガイド部材)は、シフトレバー3の可動範囲を制限するための板状の部材であり、ケーシング4に対して着脱自在に設けられる。シフトレバーガイド5の外形は、二回回転対称性を有する形状とされる。すなわち、水平方向に180°回転させたときの外形が、回転させる前の外形と一致する形状とされる。本実施形態のシフトレバーガイド5は、図1に示すように、車両前後方向に切断したときの鉛直断面において、上方に向かって凸となる曲面状に形成される。また、シフトレバーガイド5の上面視における輪郭形状は長方形とされる。
【0026】
シフトレバーガイド5には、階段状の長孔として形成されたシフトゲート6(ゲート部)が穿孔される。シフトゲート6は、シフトレバーガイド5の表裏を貫通して設けられる。このシフトゲート6の内側には、シフトレバー3が挿通される。
シフトゲート6の形状は、車両前後方向に線対称の形状とされる。シフトレバーガイド5の上面視における車両前後方向の中心線をC3としたとき、シフトゲート6の形状は中心線C3に線対称の形状とされる。なお、この中心線C3は、シフトレバーガイド5の外形に対する車両前後方向の中心線でもあり、かつ、ケーシング4の外形に対する車両前後方向の中心線でもある。
【0027】
ここで、シフトゲート6のうち車両前後方向に延在する部位のことを縦孔部6aと呼び、車幅方向に延在する部位のことを横孔部6bと呼ぶ。シフトゲート6の形状は、基本的には縦孔部6aの前端及び後端のそれぞれに対して横孔部6bの左端部又は右端部を連結した一筆書き状の形状とされる。ただし、図2(a)に示すように、本実施形態においてシフトゲート6の最端部に位置する縦孔部6aについては、その中間部が横孔部6bの端部に対して連結されるように配置される。
【0028】
また、シフトゲート6の端部には、シフトレバー3の可動範囲を制限するための孔埋め部材6c(制限部材)が取り付けられる。図2(a)では、最も車両前方側の端部に位置する縦孔部6aがI字型の孔埋め部材6cで孔埋めされるとともに、最も車両後方側の端部に位置する縦孔部6a及び横孔部6bがT字型の孔埋め部材6cで孔埋めされたものを示す。これにより、シフトゲート6の全体形状は、一つの横孔部6bと一つの縦孔部6aとからなる鉤形(L字型)の溝を連続的に接続した形状となる。
【0029】
このようなシフトゲート6の形状に対して設定される自動変速機のシフトポジションの例を図2(b)に示す。この例では、変速機のポジション数が6ポジションであり、最も車両前方側に位置する横孔部6bの右端部(シフトゲート6の車両前方側の最端部)にPレンジ(パーキングレンジ)が設定される。また、その横孔部6bの左端部には縦孔部6aの前端部が接続される。さらに、その縦孔部6aの後端部に接続された別の横孔部6bの右端部にRレンジ(リバースレンジ)が設定されている。
【0030】
また、Rレンジの位置から縦孔部6a及び横孔部6bを一つずつ隔てた右下の位置にNレンジ(ニュートラルレンジ)が設定され、その直後方側(縦孔部6aの後端部)にDレンジ(ドライブレンジ)が設定されている。以下、シフトレバー3を車幅方向及び車両後方向に一回ずつ移動させたときの位置に、Dsレンジ(ドライブスロープレンジ),Bレンジ(ブレーキレンジ)が設定されている。つまり、変速機のシフトポジションのうち、車両の前進方向への通常走行に係るDレンジ,Dsレンジ及びBレンジは、縦孔部6aの後端部の位置に設定されている。
【0031】
ディテント機構7は、シフトレバー3の操作位置に応じて、操作に対する反力(抵抗力)を作用させることにより、シフトレバー3の動作に節度感を与える機構である。このディテント機構7には、図3に示すように、ロッドケース7a,ディテントロッド7b及びスプリング7cが設けられる。ロッドケース7aは、シフトレバー3に固定された筒状の部材である。このロッドケース7aの内部には、スプリング7cによって付勢されたディテントロッド7bが摺動自在に挿入される。また、ディテントロッド7bの先端部7dは、常にディテントパネル8に押し付けられた状態で当接している。
【0032】
ディテントパネル8は、シフトレバー3の操作位置に関わらず、常にディテントロッド7bの先端部7dに当接する位置に配置された板状の部材である。ディテントパネル8の形状は、シフトレバーガイド5と同様に、車両前後方向に切断したときの鉛直断面において、上方に向かって凸の曲面をなしている。なお、図3に示すディテントパネル8は、車幅方向に切断したときの鉛直断面においても、上方(外側)に向かって凸の曲面とされたものである。ディテントロッド7bは、ディテントパネル8の下面側に対して当接する。
【0033】
図4(a)に示すように、ディテントパネル8の下面側には、縦溝部8a,横溝部8b,規制部8c及び係合穴8dが設けられる。縦溝部8a及び横溝部8b(ともに溝部)は、ディテントパネル8の下面側の表面に刻設された溝状の部位である。ここでは溝状の部位のうち、車両前後方向に延在する部位を縦溝部8aと呼び、車幅方向に延在する部位を横溝部8bと呼ぶ。これらの縦溝部8a,横溝部8bはそれぞれ、シフトゲート6の縦孔部6a,横孔部6bに対応する位置に設けられる。例えば、シフトレバー3が最も車両前方側の横孔部6bに位置するときに、ディテントロッド7bの先端部7dが最も車両前方側の横溝部8bに位置する状態となる。
【0034】
シフトゲート6の端部に取り付けられる孔埋め部材6cに対応する位置には、規制部8cが設けられる。この規制部8cは、ディテントロッド7bがその部位に進入しないようにすべく、溝が形成されていない部位である。
【0035】
また、シフトゲート6内でシフトポジションが設定された位置に対応するように、ディテントパネル8には係合穴8dが凹設される。図4(a)に示す例では、最も車両前方側に位置する横溝部8bの左端部に、Pレンジに対応する係合穴8dが設けられる。また、この係合穴8dから溝部に沿って進み、進路を二回変更した突き当たりの位置には、Rレンジに対応する係合穴8dが設けられる。
また、Rレンジに対応する係合穴8dから縦溝部8a及び横溝部8bを一つずつ隔てた位置には、Nレンジに対応する係合穴8dが形成される。これは、縦溝8aの前端部の位置に設けられる。さらに、Nレンジに対応する係合穴8dが設けられた縦溝8aの後端部には、Dレンジに対応する係合穴8dが設けられる。以下、Dレンジに対応する係合穴8dの位置から、横溝部8b及び縦溝部8aを一つずつ隔てた位置に、係合穴8dが設定される。つまり、Dレンジ,Dsレンジ及びBレンジに対応する係合穴8dは、縦溝部8aの後端部の位置に設けられる。
【0036】
縦溝部8a及び横溝部8bは、シフトレバー3がシフトゲート6に沿って移動するように、ディテントロッド7bの先端部7dを案内するように機能する。ディテントロッド7bの先端部7dは、これらの縦溝部8a及び横溝部8bから逸脱しないようにその移動範囲を制限される。また、係合穴8dは、図4(b)に示すように、縦溝部8a,横溝部8bよりも深く凹設されており、ディテントロッド7bの先端部7dが縦溝部8a,横溝部8b上に位置するときよりも、その先端部7dの移動を強く規制するように作用する。
【0037】
これにより、シフトポジションを変更する際のシフトレバー3の操作に適度な節度感が与えられ、操作性が向上する。また、ディテントロッド7bの先端部7dが縦溝部8a,横溝部8b上に位置するときには、先端部7dの溝内からの逸脱が防止されることになり、シフトレバー3はシフトゲート6内をスムーズに移動する。
【0038】
なお、右ハンドル仕様の場合と左ハンドル仕様の場合とでは、ディテントパネル8に形成される縦溝部8a,横溝部8b及び係合穴8dの溝穴形状が左右対称となる。一方、このような溝穴形状は、シフトゲート6の形状とは異なり、水平方向に180°回転させたときに一致する形状(すなわち二回回転対称性を持った形状)にはならない。したがって、ディテントパネル8は、左ハンドル仕様のものと右ハンドル仕様のものとの二種類が用意される。
【0039】
[2.作用,効果]
(1)上記の変速操作装置10では、ロアパート1とアッパーパート2とが別体に形成される。これにより、例えば左ハンドル仕様車と右ハンドル仕様車とでロアパート1の部品を共通化することができる。つまり、変速操作装置10の仕様が異なる場合には、アッパーパート2のみをそれぞれの仕様毎に用意すればよく、変速操作装置10のトータルの部品点数を削減することができる。したがって、部品の汎用性を向上させることができ、製品コストを削減することができる。また、車両に対するロアパート1の固定手法は、左右のハンドル仕様において共通となり、変速操作装置10の施工性を向上させることができる。
【0040】
(2)また、上記の変速操作装置10では、アッパーパート2の外形が二回回転対称性を有する形状とされ、かつ、シフトゲート6の形状が中心線C3について車両前後方向に線対称形状とされる。これにより、アッパーパート2を180°回転させてロアパート1に取り付けることで、シフトゲート6の形状が左右対称形状となる。このような特性は、図2に示すように、シフトレバーガイド5が曲面状であっても、平面状であっても得られる特性である。
【0041】
例えば、図2(a)に示すように、シフトレバーガイド5の立体形状がシフトレバー3の揺動運動に対応する丸みを帯びた形状(上方に凸の曲面形状)であったとしても、左ハンドル仕様のゲートパターンが形成されたシフトレバーガイド5を半回転させたときのゲートパターンは、右ハンドル仕様のゲートパターンに一致する。
したがって、単一の部品で左ハンドル仕様のゲートパターンと右ハンドル仕様のゲートパターンとの双方に対応することができ、部品の汎用性を高めることができる。また、変速操作装置10を構成する部品点数を削減することができ、製品コストを削減することができる。
【0042】
また、アッパーパート2を構成する基本部分の部品についても、左ハンドル仕様の車両と右ハンドル仕様の車両との間で共用可能となり、例えばシフトレバー3やシフトレバーガイド5を二種類製造する必要がなくなる。したがって、製品のコストを削減することができるとともに、変速操作装置10の施工性を向上させることができる。
【0043】
(3)また、上記の変速操作装置10では、Dレンジ,Dsレンジ及びBレンジに対応する係合穴8dが、縦溝部8aの後端部の位置に設けられる。つまり、シフトレバー3を手前に引いた位置でディテントロッド7bの先端部7dが係合穴8dと係合し、シフトレバー3の位置が保持される。このように、シフトレバー3を手前に引いた位置に変速機のシフトポジションを設定することで、左ハンドル車であっても、右ハンドル車であっても、直感的に理解しやすいシフトパターンを提供することができる。
【0044】
(4)また、上記の変速操作装置10では、シフトレバー3の可動範囲を制限するための孔埋め部材6cがシフトゲート6の端部に取り付けられる。このような孔埋め部材6cを設けることで、車種毎に異なるゲートパターンを容易に実現することができる。例えば、実際のゲートパターンよりも可動範囲を大きめに設定しておき、不要な部分に孔埋め部材6cを挿入すればよい。これは、実際のゲートパターンが車両前後方向に線対称形状でない場合に用いて好適である。
【0045】
(5)さらに、上記の車両の変速操作装置10では、シフトゲート6の端部に取り付けられる孔埋め部材6cに対応する位置に規制部8cが設けられる。これにより、シフトレバー3の可動範囲をより精度良く制限することができる。なお、規制部8cによるシフトレバー3の移動制限が十分であれば、孔埋め部材6cを省略することも可能である。また、孔埋め部材6cと規制部8cとをともに適用した場合には、シフトレバー3の移動制限が二重に作用することになり、ゲートパターンの確実性,信頼性を高めることができる。
【0046】
[3.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
例えば、上述の実施形態では、アッパーパート2及びシフトレバーガイド5の両方の外形が二回回転対称性を持つ形状とされたものを例示したが、少なくとも何れか一方の外形が二回回転対称性を持った形状であれば、左ハンドル仕様,右ハンドル仕様の両方に対応するものとなる。例えば、アッパーパート2を180°反転させてロアパート1に取り付ける構成の代わりに、シフトレバーガイド5を反転させてケーシング4に取り付ける構成とすることで、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【0047】
また、上述の実施形態では、図2(a),(b)に示すように、変速機のポジション数が6ポジションである場合について説明したが、具体的な変速機のポジション数や、シフトゲート6内での各レンジの配置に関してはこれに限定されない。
図5(a)〜(d)は右ハンドル仕様のシフトポジション設定例であり、図5(e)〜(h)は左ハンドル仕様のシフトポジション設定例である。図5(a)は変速機が5ポジションの場合、図5(b)はマニュアルモード付き4ポジションの場合、図5(c)は6ポジションの場合、図5(d)は7ポジションの場合に相当する。また、図5(e)〜(h)はそれぞれ、図5(a)〜(d)のレイアウトを左右反転させたものであり、すなわち、同一のアッパーパート2を用いて実施可能となっている。なお、図中にハッチングで示す部位は、孔埋め部材6cである。図5(a)に示すように変速機にマニュアルモードがない場合には、シフトゲート6の最端部に横孔部6bを配置することで、孔埋め部材6cが不要である。
【0048】
このように、シフトレバーガイド5に形成されるシフトゲート6の形状を車両前後方向に線対称形状とすることで、あらゆるレイアウトでのシフトポジションについて、左右ハンドル仕様の相違に関わらず、部品を共通化することができ、製品コストを削減することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ロアパート
2 アッパーパート
3 シフトレバー(レバー部材)
4 ケーシング
5 シフトレバーガイド(ガイド部材)
6 シフトゲート(ゲート部)
6a 縦孔部
6b 横孔部
6c 孔埋め部材(制限部材)
7 ディテント機構
7a ロッドケース
7b ディテントロッド
7c スプリング
7d 先端部
8 ディテントパネル
8a 縦溝部(溝部)
8b 横溝部(溝部)
8c 規制部
8d 係合穴
10 変速操作装置
図1
図2
図3
図4
図5