特許第5983237号(P5983237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983237
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】電力マネジメントシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20160818BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160818BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20160818BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20160818BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   H02J13/00 311T
   H02J7/00 P
   H02J7/00 X
   H02J7/35 J
   H02J3/32
   B60L3/00 S
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-210474(P2012-210474)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-68433(P2014-68433A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加島 大之
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−054439(JP,A)
【文献】 特開2012−175792(JP,A)
【文献】 特開2012−115115(JP,A)
【文献】 特開2012−120295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
B60L 3/00
H02J 3/32
H02J 7/00
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギーを利用した発電設備と、蓄電池を搭載した電動車両と、住宅用蓄電池とが接続された住宅内の電力を管理する電力マネジメントシステムにおいて、
住宅内の消費電力量の推移を予測する消費電力量予測部と、
前記自然エネルギーを利用した発電設備による発電量の推移を予測する発電量予測部と、
前記消費電力量予測部と前記発電量予測部との予測結果に基づいて、前記電動車両の充電量及び放電量の推移を予測する充放電予測部と、
現在の前記電動車両の残電力量を基準に、前記電動車両の充電量及び放電量の推移予測に従って前記電動車両の電力が推移した場合に、所定日数の間に前記電動車両の残電力量が第1の判定値以下となるか否か判定する判定部と、
前記第1の判定部によって前記残電力量が第1の判定値以下とならないと判定された場合には、前記電動車両を走行に利可能であると判断し、前記電動車両を走行に利用可能な時間帯を決定する決定部と、を有し、
前記決定部は、前記住宅用蓄電池の残電力量の基準に、前記電動車両の充電量及び放電量の推移予測に従って前記住宅用蓄電池の電力が推移した場合に、前記住宅用蓄電池の残電力量が第2の判定値以下となるまでの時間帯を、前記電動車両を走行に利用可能な時間帯とすることを特徴とする電力マネジメントシステム。
【請求項2】
前記決定部は、前記電動車両の利用開始時刻を段階的に設定し、当該設定された利用開始時刻毎に、前記電動車両を走行に利用可能な時間帯を決定することを特徴とする請求項1に記載された電力マネジメントシステム。
【請求項3】
前記決定部は、前記電動車両が走行に利用される場合には、前記発電設備により発電された電力が前記電動車両に充電されないことを考慮して、前記電動車両の充電量及び放電量の推移予測を利用することを特徴とする請求項1又は2に記載された電力マネジメントシステム。
【請求項4】
前記決定部は、前記電動車両を走行に利用した後に前記住宅内で必要な電力量に基づいて、前記電動車両の走行に利用可能な電力量をさらに決定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された電力マネジメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅内の電力を管理する電力マネジメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気自動車といった電動車両の利用が種々検討されている。電動車両は、乗用としての利用に限らず、大容量の蓄電池を備えることから、住宅の電源として利用することができる。例えば、太陽光といった自然エネルギーを利用して得た電力を電動車両に蓄電し、この電力を住宅内に供給することで、電力の自給自足を実現するといった手法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、住宅全体におけるエネルギー状態を一元管理でき、かつ各機器を一つのコントローラで制御できるシステムが開示されている。このシステムは、外部の系統電力と、住宅に設けられた自家発電手段と、住宅に設けられた住宅用蓄電池と、電動車両と、住宅に設けられた家庭内負荷とが連携され、これらによるエネルギー消費及び供給を管理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−23872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された手法によれば、電動車両を走行利用することが考慮されていない。そのため、電動車両が走行によって電力を消費してしまえば、電力の自給自足が成り立たなくなる恐れがあり、電動車両を走行に利用することができないという不都合がある。一方で、住宅用蓄電池の容量を十分に大きなものにすれば、システムのコストアップが懸念される。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストで住宅内の電力の自給自足を実現しつつ、電動車両を走行に利用可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明は、自然エネルギーを利用した発電設備と、蓄電池を搭載した電動車両と、住宅用蓄電池とが接続された住宅内の電力を管理する電力マネジメントシステムを提供する。この電力マネジメントシステムでは、電動車両の残電力量が第1の判定値以下とならないと判定された場合には、住宅用蓄電池の残電力量の基準に、電動車両の充電量及び放電量の推移予測に従って住宅用蓄電池の電力が推移した場合に、住宅用蓄電池の残電力量が第2の判定値以下となるまでの時間帯を、電動車両を走行に利用可能な時間帯とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電動車両を走行に利用可能な時間帯を制限することで、住宅用蓄電池の容量を必要最低限に抑えることができるので、低コストで住宅内の電力を自給自足することができる。また、自給自足の実現できる範囲で、電動車両を走行に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電力マネジメントシステムの構成を模式的に示す説明図
図2】住宅内における電力の自給自足の概念を示す説明図
図3】電力マネジメントシステムによる処理の流れを示すフローチャート
図4】消費電力量及び太陽光発電量の推移予測を示す説明図
図5】電気自動車の充電量及び放電量の推移予測を示す説明図
図6】電気自動車の残電力量の推移予測を示す説明図
図7】電気自動車の充電量及び放電量と、走行に利用可能な時間帯とを模式的に示す説明図
図8】電気自動車の残電力量の推移をシミュレーションした説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態にかかる電力マネジメントシステム1の構成を模式的に示す説明図である。この電力マネジメントシステム1は、電力会社からの系統電力を使用せずに、自然エネルギーを利用した発電設備と、電気自動車と、住宅用蓄電池とを利用して、低コストで住宅内の電力を自給自足しつつ、電気自動車を走行に利用可能とするシステムである。
【0011】
この電力マネジメントシステム1は、太陽光発電システム10と、住宅用蓄電池20と、電気自動車30と、パワーコンディショナ40と、配電盤50と、負荷60と、制御装置70とを主体に構成されている。
【0012】
太陽光発電システム10は、太陽光(太陽エネルギー)から発電を行うシステムであり、光起電力効果を利用して太陽エネルギーを電力に変換する太陽電池を備えている。太陽光発電システム10によって発電された電力は、パワーコンディショナ40に出力される。この太陽光発電システム10は、住宅内で消費される1日分の電力量を十分に発電することができるような仕様に設定されている。
【0013】
住宅用蓄電池20は、所定容量の電力を蓄えて、パワーコンディショナ40を介して、住宅内に電力を供給することができる。また、この住宅用蓄電池20は、パワーコンディショナ40から出力される電力を充電することができる。住宅用蓄電池20の容量は任意に設定することができるが、低コストでシステムを実現するために、電気自動車30を走行に利用している間に、住宅内に電力を供給することができる程度の容量に設定されている。例えば、住宅内のエアコン、冷蔵庫、その他の家電の待機電力の稼動を常に維持できる電力量を目安として考えた場合、住宅内の1日分の消費電力量の3割程度の容量に設定することができる。
【0014】
電気自動車30は、電動機を動力源とする自動車であり、電動機と、負荷に電力を供給する蓄電池31とを主体に構成されている。
【0015】
電動機は、例えば、永久磁石が埋設されたロータと、ステータコイルが巻き付けられたステータとで構成される永久磁石同期電動機であり、電力の供給を受けることにより回転駆動する。蓄電池31は、例えば、複数の単電池を直列に接続した組電池であり、各単電池としては、ニッケル水素電池などのアルカリ蓄電池、リチウムイオン電池などの有機電解液電池などを用いることができる。ここで、蓄電池31が蓄える電力の容量は、一般家庭の1日分の消費電力量以上に設定されている。負荷は、蓄電池31と電気的に接続されて使用されるものであり、たとえば、電気自動車30に搭載される電動機、インバータ、電気自動車30の空調装置、電装品などがこれに該当する。
【0016】
この電気自動車30は、所定のケーブルを介して住宅と接続した場合には、パワーコンディショナ40から電力が供給され、蓄電池31を充電することができる。また、電気自
動車30は、蓄電池31に充電された電力をパワーコンディショナ40に供給することができる。
【0017】
なお、電気自動車30は、これを走行利用することも可能であり、また、外部の商用交流電源に接続したり、外部の専用充電器に接続したりすることで、蓄電池31の充電を行うこともできる。
【0018】
パワーコンディショナ40は、太陽光発電システム10、住宅用蓄電池20、電気自動車30(すなわち蓄電池31)から供給される直流電力を交流電力に変換して配電盤50へと出力する。
【0019】
配電盤50は、パワーコンディショナ40から供給される電力を分配し、エアコン、冷蔵庫、その他の家電といった住宅内の様々な負荷60に供給する。
【0020】
制御装置70は、太陽光発電システム10の発電量、住宅用蓄電池20並びに電気自動車30の残電力量及び負荷60を監視して、住宅用蓄電池20及び電気自動車30の充放電制御を行う。制御装置70としては、例えば、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。
【0021】
図2は、住宅内における電力の自給自足の概念を示す説明図である。同図において、Laは、太陽光発電システム10により発電される電力量の推移を示し、Lbは、家庭内で消費される電力量の推移を示している。本住宅環境において、制御装置70は、昼間太陽光発電システム10により発電した電力のうち、負荷60で消費しきれない余剰電力を住宅用蓄電池20及び電気自動車30に充電する。また、制御装置70は、太陽光発電システム10による発電ができない時(例えば夕方以降から早朝まで、曇り若しくは降雨時など)は、電気自動車30から負荷60に電力を供給するように制御することで、電力の自給自足を行う。ここで、制御装置70は、充電を行う場合には、電気自動車30よりも住宅用蓄電池20を優先させることとする。また、制御装置70は、電気自動車30が走行に利用されてパワーコンディショナ40に接続されていない間は、住宅用蓄電池20から電力の供給を行うこととしている。
【0022】
本実施形態との関係において、制御装置70は、電気自動車30を走行に利用しても電力の自給自足を維持できるようにするため、電気自動車30を走行に利用可能な時間帯や、走行に利用可能な電力量又は走行距離を算出する。制御装置70による具体的な処理について、後述する。
【0023】
この制御装置70は、例えばネットワークを介して所定のサーバ80と通信することができ、当該サーバ80から将来の天気予報を取得することができる。また、制御装置70には、液晶ディスプレイといったモニタ90が接続されており、制御装置70が出力する情報を表示したりすることができる。
【0024】
図3は、本実施形態に係る電力マネジメントシステム1による処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、所定時間毎に呼び出され、制御装置70によって実行される。
【0025】
まず、ステップ1(S1)において、制御装置70は、住宅内の消費電力量の推移と、太陽光発電システム10による発電量(以下「太陽光発電量」という)の推移とを予測する。例えば、本ステップ1による予測は、現在から所定日数先までの間の電力量の推移を1時間単位で予測する。
【0026】
制御装置70は、過去における住宅内の消費電力量の実績を示すデータベース、例えば、1日における消費電力量の1時間毎の推移と、天気とを関連付けたデータの履歴を1日毎に記録・保持している。そして、制御装置70は、サーバ80から、現在から所定日先までにおける1時間毎の天気の推移を取得すると、当該データベースを参照し、対応する暦(時刻や季節)及び天気予報に関連付けられた消費電力量を特定する。これにより、制御装置70は、現在から所定日数先までにおける消費電力量の推移を1時間単位で予測する(図4参照(図中の棒グラフで示す))。
【0027】
同様に、制御装置70は、過去における太陽光発電量の実績を示すデータベース、例えば、1日における太陽光発電量の1時間毎の推移と、天気とを関連付けたデータの履歴を1日毎に記録・保持している。そして、制御装置70は、サーバ80から、現在から所定日数先までにおける1時間毎の天気の推移を取得すると、当該データベースを参照し、対応する暦(時刻や季節)及び天気予報に関連付けられた太陽光発電量を特定する。これにより、制御装置70は、現在から所定日数先までにおける太陽光発電量の推移を1時間単位で予測する(図4参照(図中の折れ線グラフで示す))。
【0028】
そして、制御装置70は、これらの予測結果に基づいて、電気自動車30の充電量及び放電量の推移を予測する。具体的には、制御装置70は、太陽光発電量が、消費電力量を上回った分を余剰電力として、電気自動車30又は住宅用蓄電池20に充電する電力量とする。一方、予測された太陽光発電量が、予測された消費電力量を下回った分を不足電力として、電気自動車30から放電する電力量とする。これにより、現在から所定日数先までにおける、電気自動車30の充電量及び放電量の推移を1時間単位で予測することができる。図5は、電気自動車30の充電量及び放電量の推移予測を示す説明図であり、同図に示す例では、余剰電力を全て電気自動車30に充電したとしている。
【0029】
ステップ2(S2)において、制御装置70は、現在の電気自動車30の残電力量と、電気自動車30の充電量及び放電量の推移予測とに基づいて、電気自動車30の残電力量の推移を予測する(図6参照)。
【0030】
そして、ステップ3(S3)において、制御装置70は、所定日数先まで電力の自給自足が可能か否かを判断する。具体的には、制御装置70は、電気自動車30の残電力量の推移予測において、その期間中に電気自動車30の残電力量が第1の判定値(例えばゼロ)以下となってしまう時間帯がある場合には、自給自足が不可能であると判断する(同図(b)参照)。一方、予測した電気自動車30の残電力量の推移予測において、その期間中に電気自動車30の残電力量が第1の判定値以下となってしまう時間帯がない場合には、自給自足が可能であると判断する(同図(a)参照)。
【0031】
このステップ3において肯定判定された場合、すなわち、自給自足が可能であると判断された場合には、ステップ4(S4)に進む。一方、ステップ3において否定判定された場合、すなわち、自給自足が不可能であると判断された場合には、ステップ5(S5)に進む。そして、制御装置70は、電力の自給自足を継続することが困難であることから、電気自動車30について充電スタンドなど外部での充電が必要な旨をモニタ90へ表示する(ステップ5)。
【0032】
ステップ4において、制御装置70は、電気自動車30を走行に利用するものとして、出発時刻((電気自動車30の利用を開始する時刻)毎に、その出発時刻から電気自動車30を利用することができる時間帯(範囲)を算出する。図5に示すように、時間毎の放電量の推移は予測することができている。そこで、制御装置70は、電気自動車30の代わりに住宅用蓄電池20のみで住宅内の消費電力量を賄うことができる時間帯を算出し、この時間体を走行に利用可能な時間帯とする。換言すれば、制御装置70は、現在の住宅
用蓄電池20の残電力量の基準に、電気自動車30の放電量の推移予測に従って住宅用蓄電池20の電力が推移した場合に、住宅用蓄電池20の残電力量が第2の判定値(例えばゼロ)以下となるまでの時間帯を、電気自動車30を走行に利用可能な時間帯とする。具体的には、制御装置70は、ある時刻に出発することを仮定し、放電量の推移予測から、出発時刻以降の放電量を逐次合算し、その合計値が住宅用蓄電池20の残電力量以下となる範囲を、走行に利用可能な時間帯として決定する。
【0033】
ここで、図7は、電気自動車30の充電量及び放電量と、走行に利用可能な時間帯とを模式的に示す説明図である。同図は、朝7時以降の1時間毎の出発時刻と、走行に利用可能な時間帯との関係を示している。例えば朝8時に出発する場合、朝8時以降の放電量を順次合算すると、放電量の合計値が20時よりも前の間であれば、住宅用蓄電池20の残電力量以下となる。これにより、住宅用蓄電池20に蓄電された電力だけで住宅内の電力供給が可能であることが計算でき、よって、朝8時を出発時刻とする場合、20時までを走行に利用可能な時間帯と決定する。
【0034】
ステップ6(S6)において、制御装置70は、出発時刻毎に利用可能な時間帯を算出したら、各時間帯について、走行利用後の必要電力量を算出する。電力を自給自足するためには、電気自動車30を走行に利用した後に、当該電気自動車30に残っている電力を使って住宅内へ電力を供給しなければならない。そこで、制御装置70は、電気自動車30を走行に利用している間は、太陽光発電システム10による余剰電力を電気自動車30へ充電することができないことを考慮して、電気自動車30の残電力量の推移をシミュレーションする。これにより、制御装置70は、走行利用後の必要電力量、すなわち、走行利用後に電気自動車30で確保しておくべき電力量を算出する。
【0035】
図8は、電気自動車30の残電力量の推移をシミュレーションした説明図である。同図では、現在の電気自動車30の残電力量が20kwhで、8時から20時までの間、走行に利用した場合の電気自動車30の残電力量の推移を示している。同図の上段には、図5と同様、電気自動車30の充電量及び放電量の推移予測を示しているが、電気自動車30を走行に利用している間、すなわち、8時から20時までの間は、太陽光発電システム10による余剰電力が充電量にカウントされていない。この場合、同図の下段で示すように、現在の電気自動車30の残電力量を基準として、電気自動車30の残電力量の推移をシミュレーションすると、住宅へ供給される最大電力量、すなわち、帰宅後の必要電力量が12kwhと算出される。したがって、残りの8kwhは、走行に利用可能な電力量であると判定することができる。
【0036】
ステップ7(S7)において、制御装置70は、走行に利用可能な電力量があるか否かを判断する。このステップ7において肯定判定された場合、すわちち、走行に利用可能な電力量がある場合には、ステップ8(S8)に進む。一方、ステップ7において否定判定された場合、すわちち、走行に利用可能な電力量がない場合には、ステップ9(S9)に進む。
【0037】
ステップ8において、制御装置70は、前述のステップ4,6において算出した出発時刻毎に利用可能な時間帯と、走行に利用可能な電力量とをモニタ90に出力する。なお、制御装置70が、電気自動車30の電費情報を入手可能な場合には、走行に利用可能な電力量の代わりに走行可能距離を出力してもよい。これにより、ユーザは電気自動車30を走行に利用したい場合、モニタ90を確認することで、出発時刻毎に利用可能な時間帯と、走行に利用可能な電力量若しくは走行距離が確認できる。
【0038】
ステップ9において、制御装置70は、走行利用が不可能であることを提示する。
【0039】
このように本実施形態において、制御装置70は、消費電力量予測部と、発電量予測部と、充放電予測部と、判定部と、決定部との機能を担っている。具体的には、制御装置70は、住宅内の消費電力量の推移を予測し(消費電力量予測部)、太陽光発電システム10による発電量である太陽光発電量の推移を予測する(発電量予測部)。また、制御装置70は、消費電力量及び太陽光発電量の予測結果に基づいて、電気自動車30の充電量及び放電量の推移を予測する(充放電予測部)。そして、制御装置70は、現在の電気自動車30の残電力量を基準に、電気自動車30の充電量及び放電量の推移予測に従ってその電力が推移した場合に、所定日数の間に電気自動車30の残電力量が第1の判定値以下となるか否か判定する(判定部)。ここで、制御装置70は、電気自動車30の残電力量が第1の判定値以下とならないと判定された場合には、電気自動車30を走行に利可能であると判断し、電気自動車30を走行に利用可能な時間帯を決定する(決定部)。この場合、制御装置70は、住宅用蓄電池20の残電力量の基準に、電気自動車30の充電量及び放電量の推移予測に従って住宅用蓄電池の電力が推移した場合に、住宅用蓄電池20の残電力量が第2の判定値以下となるまでの時間帯を、電気自動車30を走行に利用可能な時間帯とする。
【0040】
かかる構成によれば、太陽光発電システム10と、電気自動車30と、住宅用蓄電池20とを利用して住宅内の電力を賄うこととしている。ここで、電気自動車30を走行に利用可能な時間帯を制限することで、住宅用蓄電池20の容量を必要最低限に抑えることができるので、低コストで住宅内の電力を自給自足することができる。また、自給自足の実現できる範囲で、電気自動車30を走行に利用することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態において、制御装置70は、電気自動車30の利用開始時刻を段階的に設定し、設定された利用開始時刻毎に、電気自動車30を走行に利用可能な時間帯を決定している。これにより、使用者は電気自動車30を走行に利用可能な時間帯を事前に計画することができる。
【0042】
また、本実施形態において、制御装置70は、電気自動車30が走行に利用される場合には、太陽光発電システム10により発電された電力が電気自動車30に充電されないことを考慮して、電気自動車30の充電量及び放電量の推移予測を利用している。これにより、電気自動車30を走行に利用しても、住宅内の電力の自給自足が可能であるか否かを適切に判定することができる。
【0043】
また、制御装置70は、電気自動車30を走行に利用した後に住宅内で必要な電力量に基づいて、電気自動車30の走行に利用可能な電力量をさらに決定している。かかる構成によれば、使用者に、自給自足の範囲において走行で使用可能な電力量を案内することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態に係る電力マネジメントシステムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。例えば、住宅内の発電設備は、太陽光発電システムに限らず、水力、風力といった自然エネルギーを利用するものを広く利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 電力マネジメントシステム
10 太陽光発電システム
20 住宅用蓄電池
30 電気自動車
31 蓄電池
40 パワーコンディショナ
50 配電盤
60 負荷
70 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8