(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記陰エッジ判断部は、前記車両の陰の境界線が前記車線境界線の候補に重なっても、前記エッジ候補検出部によって前記車線境界線の候補が検出され続ける場合、前記車線境界線の候補を陰の境界線ではないと判断することを特徴とする請求項1に記載の車線境界線検出装置。
前記車両挙動制御部は、前記車線境界線の候補と前記車両の陰の境界線との平行度が前記所定値よりも高い状態を保ったまま、前記陰エッジ推定部により推定された車両の陰の境界線を、前記エッジ候補検出部により検出された車線境界線の候補に近づけることを特徴とする請求項3に記載の車線境界線検出装置。
前記車両挙動制御部は、前記エッジ候補検出部により検出された車線境界線の候補と車両との衝突を回避可能な速度以下で、前記陰エッジ推定部により推定された車両の陰の境界線を、前記エッジ候補検出部により検出された車線境界線の候補に近づけることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車線境界線検出装置。
前記陰エッジ判断部は、陰の境界線であると判断された前記車線境界線の候補を車両の前後方向に延ばした延長線上に他の車線境界線の候補がある場合、前記他の車線境界線の候補を陰の境界線であると判断することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車線境界線検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<車線境界線検出装置>
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係わる車線境界線検出装置を説明する。車線境界線検出装置は、撮像部(1f、1sa、1sb、1r)と、画像処理部2と、車両挙動制御部3とを備える。撮像部(1f、1sa、1sb、1r)は、車両周囲の路面の画像を撮像する。画像処理部2は、撮像部により撮像された画像を処理して、車両周囲の路面上に設けられた車線境界線を検出する。車両挙動制御部3は、車線境界線を検出する上で必要となる車両の挙動制御を行う。また、車線境界線検出装置は、車両の操舵を制御する操舵制御部8、車両の速度を制御する速度制御部7、及び車両の乗員に対して警報を発する警報部6を備える。
【0010】
更に、
図2に示すように、車線境界線検出装置は、車両の速度を検出する車速センサ4、車両の操舵角を検出する操舵角センサ5、及び地図データベース9を備える。
【0011】
撮像部は、車両前方の路面を撮像する前方カメラ1fと、車両の左側方の路面を撮像する左側方カメラ1saと、車両の右側方の路面を撮像する右側方カメラ1sbと、車両後方の路面を撮像する後方カメラ1rとを備える。各カメラ1f、1sa、1sb、1rにより撮像された画像データは、画像処理部2へ送信される。画像処理部2は、画像データから特徴点を抽出して地図データベース9に格納されている特徴点情報と照合することにより、車両の走行位置及び車両周囲にある物体(他の車両及び塀など)を特定する。
【0012】
車両挙動制御部3は、画像処理部2による画像処理結果、車速センサ4が検出した車両の速度、操舵角センサ5が検出した車両の操舵角に基づいて、操舵制御部8及び速度制御部7を介して車両の操舵及び速度を制御する。車両挙動制御部3は、画像処理部2により特定された車両の走行位置及び地図データベース9に格納されている車線境界情報から、車両が走行している車線内での走行位置を算出し、車両が車線中央付近を走行するように、車両の操舵及び速度を制御する。速度制御部7は、画像処理部2により特定された車両周囲にある物体の情報に基づいて、安全な車間距離及び衝突余裕時間(TTC)を維持できるようなモータトルク及び摩擦ブレーキ圧力を計算し、アクチュエータを駆動する。操舵制御部8は、目標となる操舵角を達成するために必要な操舵トルクを計算し、操舵アクチュエータを駆動する。
【0013】
なお、「車線境界線」とは、車両が走行する車線を区画する境界線を示し、例えば、白線及び縁石が含まれる。
【0014】
図3を参照して、
図2の画像処理部2の詳細な構成を説明する。画像処理部2は、エッジ候補検出部21と、陰エッジ推定部22と、陰エッジ判断部23とを備える。エッジ候補検出部21は、撮像部により撮像された画像を解析して、路面上に設けられた車線境界線の候補を検出する。陰エッジ推定部22は、日時及び車両が向く方角から車両の陰の境界線を推定する。陰エッジ判断部23は、車両の陰の境界線を用いて車線境界線の候補が陰の境界線であるか否かと判断する。
【0015】
エッジ候補検出部21は、撮像部により撮像された画像データから輝度信号を画素毎に抽出して、A/D(アナログ/デジタル)変換し、輝度データを生成する。輝度データは、輝度が明るいほど大きく、暗いほど小さい値となる。エッジ候補検出部21は、この輝度データを用いて、既知の手法により車線境界線の候補を抽出する。
【0016】
例えば、水平方向に並ぶ画素列について各画素の輝度データを並べ、隣接する画素との間で輝度データの偏差を求める。そして、輝度データの偏差が所定の閾値よりも大きい画素をエッジ画素として抽出し、抽出されたエッジ画素が列を成しているか否かを判断する。抽出されたエッジ画素が列を成している場合、この画素列を車線境界線の候補として抽出することができる。
【0017】
陰エッジ推定部22は、日時から太陽の方角及び高さを推定し、太陽の方角及び高さ及び車両が向く方角から車両の陰の向きや形状を推定する。そして、陰エッジ推定部22は、車両の陰の向きや形状から、車両の陰の境界線の位置を推定する。
【0018】
エッジ候補検出部21は、車線境界線の候補と陰エッジ推定部22により推定された車両の陰の境界線との距離を、横位置補正量として算出し、
図2の車両挙動制御部3へ転送する。
【0019】
図2の車両挙動制御部3は、車両の速度や操舵角を含む車両の挙動を制御することにより、陰エッジ推定部22により推定された車両の陰の境界線を、エッジ候補検出部21により検出された車線境界線の候補に重ね合わせる。車両挙動制御部3は、車両の陰の境界線を車線境界線の候補に向けて横位置補正量だけ近づけることにより、車両の陰の境界線を車線境界線の候補に重ね合わせることができる。
【0020】
図3の陰エッジ判断部23は、車両の陰の境界線が車線境界線の候補に重なることにより、エッジ候補検出部21によって車線境界線の候補が検出されなくなる場合、車線境界線の候補を陰の境界線であると判断する。つまり、車両の陰の境界線が車線境界線の候補に重なることにより、車線境界線の候補が消えた場合、車線境界線の候補を陰の境界線であると判断する。逆に、陰エッジ判断部23は、車両の陰の境界線が車線境界線の候補に重なっても、エッジ候補検出部21によって車線境界線の候補が検出され続ける場合、車線境界線の候補を陰の境界線ではなく、車両境界線であると判断する。
【0021】
画像処理部2は、車線境界線の候補と車両の陰の境界線との平行度が所定値よりも高いか否かを判断する平行度判断部24を更に備える。車線境界線の候補と車両の陰の境界線との平行度が所定値よりも高いと平行度判断部24が判断した場合に限り、車両挙動制御部3は、車両の挙動を制御することにより、車両の陰の境界線を車線境界線の候補に重ね合わせる。そして、車線境界線の候補と車両の陰の境界線との平行度が所定値よりも高いと平行度判断部24が判断した場合に限り、陰エッジ判断部23は、車線境界線の候補が陰の境界線であるか否かを判断する。
【0022】
<車線境界線検出方法>
次に、
図4を参照して、
図2の車線境界線検出装置を用いた車線境界線検出方法の手順を説明する。
図4に示すフローチャートは、車線境界線検出装置の電源オンにより開始され、車線境界線検出装置の電源がオフされるまで、所定時間毎に繰り返し実行される。また、
図4に示すフローチャートは、後述する
図7のフローチャートに示す車両の挙動制御と並行して実施される。
【0023】
先ず、ステップS101において、画像処理部2は、車速センサ4により検出された車両の速度、操舵角センサ5により検出された車両の操舵角、及びヨーレートを含む車両状態量を取得する。次に、ステップS102に進み、画像処理部2は、各カメラ1f、1sa、1sb、1rが撮像した車両周囲の画像を取得する。
【0024】
次いで、ステップS103に進み、エッジ候補検出部21は、取得した画像から、輝度データの偏差が所定の閾値よりも大きいエッジ画素を抽出する。更にステップS104に進み、抽出したエッジ画素が列を成している場合、エッジ候補検出部21は、この画素列を車線境界線の候補として検出する。
【0025】
なお、ステップS104において、エッジ候補検出部21は、「所定の閾値」として複数の閾値を用いることができる。この場合、エッジ候補検出部21は、白線エッジである確率が高いエッジ列を「車線境界線」として検出し、白線エッジである確率が低いエッジ列を、「判別できない車線境界線」つまり車線境界線の候補として検出することができる。これにより、ステップS200及びS300で行う陰エッジ判定処理の対象の数を減らすことができるので、データ処理負担が軽減され、データ処理速度を速めることができる。
【0026】
ステップS105に進み、陰エッジ推定部22は、日時及び車両が向く方角から、車両の陰の境界線を推定する。
【0027】
ステップS200に進み、車両挙動制御部3は、車両の速度や操舵角を含む車両の挙動を制御することにより、ステップS105で推定された車両の陰の境界線を移動させる。そして、車両挙動制御部3は、車両の陰の境界線を、ステップS103で検出された車線境界線の候補に重ね合わせる。
【0028】
図5を参照して、ステップS200の詳細な手順を説明する。ステップS201において、エッジ候補検出部21は、「判別できない車線境界線」つまり車線境界線の候補が存在するか否かを判断する。車線境界線の候補が存在する場合(ステップS201でYES)、ステップS202に進む。車線境界線の候補が存在しない場合(ステップS201でNO)、ステップS205に進む。
【0029】
ステップS202において、平行度判断部24は、車線境界線の候補と車両の陰の境界線との平行度を算出する。そして、ステップS203に進み、平行度判断部24は、算出した平行度が所定値よりも高いか否かを判断する。平行度が所定値よりも高い場合(ステップS203でYES)、ステップS204へ進み、平行度が所定値以下である場合(ステップS203でNO)、
図5のフローチャートは終了する。これにより、車線境界線の候補と車両の陰の境界線との平行度が所定値よりも高い場合に限り、陰エッジ判断処理(ステップS300)を行うことができる。
【0030】
ステップS204において、エッジ候補検出部21は、ステップS104で検出された車線境界線の候補とステップS105で推定された車両の陰の境界線との距離を、横位置補正量として算出し、車両挙動制御部3へ転送する。
【0031】
ステップS205において、車両挙動制御部3は、車両の操舵角及び速度を制御して、車両の陰の境界線を車線境界線の候補に横位置補正量だけ近づける。これにより、車両挙動制御部3は、車両の陰の境界線を車線境界線の候補に重ね合わせる。以上の手順により、
図5の車両陰の移動処理が終了する。
【0032】
図4に戻り、ステップS300において、陰エッジ判断部23は、車両の陰の境界線が車線境界線の候補に重なることにより、エッジ候補検出部21によって車線境界線の候補が検出されなくなる場合、車線境界線の候補を陰の境界線であると判断する。
【0033】
図6を参照して、ステップS300の詳細な手順を説明する。ステップS301において、エッジ候補検出部21は、
図5のステップS201と同様にして、車線境界線の候補が存在するか否かを判断する。車線境界線の候補が存在する場合(ステップS301でYES)、ステップS302に進む。車線境界線の候補が存在しない場合(ステップS301でNO)、
図6のフローチャートは終了する。
【0034】
ステップS302において、平行度判断部24は、
図5のステップS202と同様にして、車線境界線の候補と車両の陰の境界線との平行度を算出する。そして、ステップS303に進み、平行度判断部24は、
図5のステップS203と同様にして、算出した平行度が所定値よりも高いか否かを判断する。平行度が所定値よりも高い場合(ステップS303でYES)、ステップS304へ進み、平行度が所定値以下である場合(ステップS303でNO)、
図6のフローチャートは終了する。
【0035】
ステップS304において、車両挙動制御部3は、車両の陰の境界線が車線境界線の候補に重なったか否かを判断する。車両の陰の境界線が車線境界線の候補に重なった場合(ステップS304でYES)、ステップS305に進む。車両の陰の境界線が車線境界線の候補に重なっていない場合(ステップS304でNO)、
図6のフローチャートは終了する。
【0036】
ステップS305において、陰エッジ判断部23は、車両の陰の境界線が車線境界線の候補に重なることにより、エッジ候補検出部21によって車線境界線の候補が検出されなくなるか否かを判断する。車線境界線の候補が検出されなくなる場合(S305でYES)、ステップS306に進み、陰エッジ判断部23は、車線境界線の候補を陰の境界線であると判断して、車線境界線の候補を除去する。車両の陰の境界線が車線境界線の候補に重なっても、車線境界線の候補が検出され続ける場合(S305でNO)、陰エッジ判断部23は、車線境界線の候補を陰の境界線ではなく、車線境界線であると判断する。車線境界線の候補の残したまま、
図6のフローチャートは終了する。以上の手順により、
図6の陰エッジ判断処理が終了する。
【0037】
図4に戻り、ステップS107において、車線境界線検出装置は、ステップS300で抽出された車線境界線の情報と地図データベース9に格納された地図データとから、自己位置認識の計算を行って車両の位置を取得する。車両の位置は、全地球測位システム(GPS)におけるENU座標系(地平座標系)での自己位置として取得してもよいし、緯度経度の値を取得してもよい。また、車両の中央と車両の向きを基準とした相対座標系の値を求めてもよい。
【0038】
ステップS108に進み、画像処理部2は、ステップS103で取得されたエッジ画素の情報を用いて、パターンマッチングによって車両が走行する走路上に居る他の車両や走路の周囲にある物体の位置を抽出する。
【0039】
次に、
図7を参照して、
図2の車両挙動制御部3による車両の挙動制御の手順を説明する。
図7に示すフローチャートは、車線境界線検出装置の電源オンにより開始され、車線境界線検出装置の電源がオフされるまで、所定時間毎に繰り返し実行される。また、
図7に示すフローチャートは、前述した
図4のフローチャートに示す車線境界線検出処理と並行して実施される。
【0040】
先ず、ステップS401において、車両挙動制御部3は、車両の速度、車両の操舵角、及びヨーレートを含む車両状態量、及び測距センサーで計測した距離データに基づいて抽出された周囲物体形状データおよび車両からの距離データを取得する。
【0041】
ステップS402に進み、車両挙動制御部3は、画像処理部2で算出された目標横位置補正量を取得する。そして、ステップS403に進み、車両挙動制御部3は、地図データベース9に格納されている道路の形状、車線、停止線、及び制限速度に関する情報を読み込む。
【0042】
ステップS404に進み、車両挙動制御部3は、ステップS401及びステップS403で取得した各種情報に基づいて、
図8に示すように、車線境界線(101、102)と車両10との距離を一定に保つような目標横位置103を算出する。ここで、ステップS402で取得した目標横位置補正量が値を持っている、或いは目標横位置補正量が零ではない場合、
図8に示すように、ステップS402で読み込んだ目標横位置補正量(α)を加算して最終的な目標横位置103’を算出する。その後、ステップS405へ移行する。
【0043】
ステップS405において、車両挙動制御部3は、ステップS404で算出された目標横位置103’を車両がトラッキングするために必要な目標操舵角(φ)を算出する。この際、車両挙動制御部3は、車線境界線の候補と車両の陰の境界線との平行度が所定値よりも高い状態を保ったまま、目標横位置103’まで車両が移動できるような目標操舵角(φ)を算出する。これにより、車両挙動制御部3は、車線境界線の候補と車両の陰の境界線との平行度が所定値よりも高い状態を保ったまま、車両の陰の境界線を、車線境界線の候補に近づけることができる。操舵制御部8は、操舵角のサーボ演算を行い、操舵トルクを制御して操舵角を目標操舵角(φ)に追従させる。
【0044】
ステップS406に進み、車両挙動制御部3は、ステップS403で取得した制限速度や道路の形状に関する情報に基づいて、基本目標車速度を算出する。基本目標車速度は、旋回加速度が大きくなり過ぎないような推奨速度を参照して計算される。また、車両挙動制御部3は、ステップS401で取得した周囲物体形状データに基づいて、衝突余裕時間(TTC)を所定値以上(例えば3秒以上)に保持できる車速度を算出する。そして、この車速度と基本目標車速度のいずれか小さい方を選択して目標車速度とする。速度制御部7は、車速度のサーボ演算を行い、制駆動トルクを制御して、車速度を目標車速度に追従させる。以上の手順により、
図8の車両挙動制御が終了する。
【0045】
次に、
図9〜
図11を参照して、実際の走行状況の例に沿って、実施形態に係わる車線境界線検出装置の動作を説明する。
図9は、車線境界線検出装置が動作する車両10の走行状況の一例を示す鳥瞰図である。片側一車線の左側通行の車道20を走行方向DDへ車両10が走行している。走行方向DDの前方の車道20周囲に建物40がある。建物40の陰50が車道20にかかり、車道20に日向と日陰が混在した状況が形成されている。また、車両10の陰60が車両10の右側側方に形成されている。
【0046】
図10(a)に示すように、前方カメラ1fは車両前方の路面EDR1を撮像する。そして、エッジ候補検出部21は、前方カメラ1fにより撮像された画像データから車線境界線の候補(70、71、72)を抽出する。本例においては、車線境界線の候補として、車道外側線70、車道中央線72の他に、建物の陰50の境界線71が抽出されている。また、陰エッジ推定部22は、日時と走行方向DDの方角から車両の陰60の境界線を推定する。そして、平行度判断部24は、車線境界線の候補(70、71、72)と車両の陰60の境界線との平行度が所定値よりも高いか否かを判断する。本例では、総ての車線境界線の候補(70、71、72)について、平行度判断部24は平行度が所定値よりも高いと判断した。なお、平行度の算出において、車両の陰60の境界線として、例えば、車両のボンネット或いはルーフの部分の陰の境界線を用いることができる。
【0047】
図10(b)に示すように、エッジ候補検出部21は、建物の陰50の境界線71と車両の陰60の境界線との距離を、横位置補正量として算出する。そして、車両挙動制御部3は、車両の陰60の境界線を建物の陰50の境界線71に向けて横位置補正量だけ近づけることにより、車両の陰60の境界線を建物の陰50の境界線71に重ね合わせる。この時、車両挙動制御部3は、建物の陰50の境界線71と車両の陰60の境界線との平行度が所定値よりも高い状態を保ったまま、車両の陰60の境界線を、建物の陰50の境界線71に近づける。なお、EDR2は、左側方カメラ1saにより撮像可能な車両の左側方の路面の領域を示す。
【0048】
図10(c)に示すように、車両の陰60の境界線が建物の陰50の境界線71に重なることにより、エッジ候補検出部21は、左側方カメラ1saにより撮像された画像データから、建物の陰50の境界線71を検出できなくなる。つまり、建物の陰50の境界線71は消えてしまう。この場合、陰エッジ判断部23は、建物の陰50の境界線71を陰の境界線であると判断する。
【0049】
一方、
図10(d)に示すように、車両の陰60の境界線が車道外側線70に重なっても、エッジ候補検出部21は、左側方カメラ1saにより撮像された画像データから、車道外側線70を検出し続ける。つまり、車道外側線70は消えない。この場合、陰エッジ判断部23は、車道外側線70を陰の境界線ではなく、車線境界線であると判断する。
【0050】
図11(a)〜
図10(d)は、
図9とは異なる車両10の走行状況の例において、車線境界線の候補の検出、及び陰エッジ判断処理を説明するための鳥瞰図である。
図9と比べて、建物の陰50’の境界線73が、車道外側線70よりも外側に位置している点が相違するが、その他の点は同じである。
【0051】
図11(a)に示すように、エッジ候補検出部21は、前方カメラ1fにより撮像された画像データから車線境界線の候補(70、72、73)を抽出する。本例においては、車線境界線の候補として、車道外側線70、車道中央線72の他に、建物の陰50の境界線73が抽出されている。そして、平行度判断部24は、車線境界線の候補(70、72、73)と車両の陰60の境界線との平行度が所定値よりも高いか否かを判断する。本例では、総ての車線境界線の候補(70、72、73)について、平行度判断部24は平行度が所定値よりも高いと判断した。
【0052】
図11(b)に示すように、エッジ候補検出部21は、車道外側線70と車両の陰60の境界線との距離を、横位置補正量として算出する。そして、車両挙動制御部3は、車両の陰60の境界線を車道外側線70に向けて横位置補正量だけ近づけることにより、車両の陰60の境界線を車道外側線70に重ね合わせる。この時、車両挙動制御部3は、車道外側線70と車両の陰60の境界線との平行度が所定値よりも高い状態を保ったまま、車両の陰60の境界線を、車道外側線70に近づける。
【0053】
図11(c)に示すように、車両の陰60の境界線が車道外側線70に重なっても、エッジ候補検出部21は、左側方カメラ1saにより撮像された画像データから、車道外側線70を検出し続ける。この場合、陰エッジ判断部23は、車道外側線70を陰の境界線ではなく、車線境界線であると判断する。
【0054】
一方、
図11(d)に示すように、車両の陰60の境界線が建物の陰50’の境界線73に重なることにより、エッジ候補検出部21は、左側方カメラ1saにより撮像された画像データから、建物の陰50’の境界線73を検出できなくなる。この場合、陰エッジ判断部23は、建物の陰50’の境界線73を陰の境界線であると判断する。
【0055】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0056】
車両の陰60の境界線が車線境界線の候補(70〜73)に重なることにより、車線境界線の候補(70〜73)が検出されなくなる場合、陰エッジ判断部23は、車線境界線の候補(70〜73)を陰(日向と日陰)の境界線であると判断する。これにより、建物や塀の陰の境界線が、道路上の白線や縁石のエッジと重なったり、近傍に存在した場合であっても、建物や塀の陰の境界線が白線や縁石のエッジではないことを判別できるため、車両の走行制御の安定性を保つことができる。また、自車以外の物(建物や塀)による日陰と日向が車両周囲の路面に混在する場合であっても、車線境界線の検出精度の低下を抑制することができる。
【0057】
車両の陰60の境界線が車線境界線の候補(70〜73)に重なっても、エッジ候補検出部21によって車線境界線の候補(70〜73)が検出され続ける場合、陰エッジ判断部23は、車線境界線の候補を陰の境界線ではないと判断する。これにより、建物や塀の陰の境界線が、道路上の白線や縁石のエッジと重なったり、近傍に存在した場合であっても、白線や縁石のエッジが正しい走路境界情報としてのエッジであることを判別できるため、車両の走行制御を継続することができる。
【0058】
車線境界線の候補と車両の陰60の境界線との平行度が所定値よりも高いと平行度判断部24が判断した場合に限り、車両挙動制御部3は車両10の挙動を制御し、陰エッジ判断部23は車線境界線の候補が陰の境界線であるか否かを判断する。平行度が所定値以下である場合は車両の車線境界線の候補に対する進入角度が大きくなっている可能性がある。この場合に、車線境界線の候補が実際の物体の境界線であると判断された場合に、衝突を回避することが難しくなってしまう。そこで、平行度が所定値より高い場合にのみ、陰エッジ判断処理を行う。これにより、実際の物体の境界線であると判断された場合にはスムーズに衝突を回避することができる。
【0059】
車両挙動制御部3は、車線境界線の候補と車両の陰60の境界線との平行度が所定値よりも高い状態を保ったまま、陰エッジ推定部22により推定された車両の陰60の境界線を、エッジ候補検出部21により検出された車線境界線の候補に近づける。これにより、車両10の車線境界線の候補に対する進入角度を小さい値に保つことができる。このため、車線境界線の候補が実際の物体の境界線であると判断された場合であっても、車線境界線の候補との衝突をスムーズに回避することができる。
【0060】
(その他の実施形態)
車両挙動制御部3は、エッジ候補検出部21により検出された車線境界線の候補と車両との衝突を回避可能な速度以下で、陰エッジ推定部22により推定された車両の陰60の境界線を、車線境界線の候補に近づけることができる。例えば、
図7のステップS406において、車両挙動制御部3は、エッジ候補検出部21により検出された車線境界線の候補と車両との衝突を回避可能な速度を算出する。そして、速度制御部7は、車両の速度を、車線境界線の候補と車両との衝突を回避可能な速度以下に制御する。これにより、車両10の車線境界線の候補に対する進入角度が大きい値であっても、車線境界線の候補との衝突をスムーズに回避することができる。
【0061】
また、陰の境界線であると判断された車線境界線の候補を車両の前後方向に延ばした延長線上に他の車線境界線の候補がある場合、陰エッジ判断部23は、他の車線境界線の候補を陰の境界線であると判断することができる。そして、陰エッジ判断部23は、
図6のステップS306において他の車線境界線の候補を除去することができる。これにより、車線境界線の候補が除去されれば、除去された車線境界線の候補の延長上の、例えば前方あるいは後方の遠い場所に検出されている他の車線境界線の候補まで、車線境界線であるか否かを正しく判定できる。すなわち、複数のカメラ(1f、1sa、1sb、1r)のいずれかの撮像範囲における判定結果に基づいて、その他のカメラ(1f、1sa、1sb、1r)の撮像範囲における他の車線境界線の候補を合理的に判断することができる。
【0062】
ステップS108では、画像処理部2が、ステップS103で取得されたエッジ画素の情報を用いて、パターンマッチングによって車両が走行する走路上に居る他の車両や走路の周囲にある物体の位置を抽出した。本発明の実施形態は、画像処理による位置抽出に限らない。例えば、
図12に示すように、車線境界線検出装置がレーダーやソナーなどの測距センサ11を備えていてもよい。この場合、測距センサ11は、水平面または3次元空間における距離データ分布に基づいて、周囲物体の属性を抽出し、周囲物体までの距離を計測する。これにより、車両が走行する走路上に居る他の車両や走路の周囲にある物体の位置を抽出することができる。
【0063】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。