特許第5983242号(P5983242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983242
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】蓋材
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20160818BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20160818BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160818BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20160818BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   B65D65/40 D
   B65D77/20
   B32B27/00 H
   B32B27/08
   B32B27/32
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-211488(P2012-211488)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-65509(P2014-65509A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉永 雅信
【審査官】 佐野 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−229664(JP,A)
【文献】 特開2004−314449(JP,A)
【文献】 特開2000−79663(JP,A)
【文献】 特開平10−138420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 27/00
B32B 27/08
B32B 27/32
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂からなる容器もしくはポリプロピレン樹脂で形成されたシール部を有する容器に用いられる蓋材において、
前記蓋材が、基材と、シーラント層からなり、
前記シーラント層は、前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層と、ポリプロピレン樹脂で形成されたシール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層とを積層した積層構造を有し、
前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層との厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、
前記第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、前記第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、前記第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有することを特徴とする、蓋材。
【請求項2】
前記基材は、紙層と、前記紙層の一方の面に形成された印刷インキ層と、他方面に接着樹脂層を介して積層される金属箔層とから構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
前記金属箔層と、前記第1の熱可塑性樹脂層との間にアンカーコート層が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の蓋材。
【請求項4】
前記基材は、紙層と、前記紙層の一方の面に形成された印刷インキ層と、他方面に接着樹脂層を介して積層される遮光層とから構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の蓋材。
【請求項5】
前記第1の熱可塑性樹脂層は、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン‐アクリル酸‐アクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸‐アクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐アクリル酸‐メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸‐メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐アクリル酸エステル‐酸無水物三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸エステル‐酸無水物三元共重合体樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂からなり、
前記第2の熱可塑性樹脂層は、前記第1の熱可塑性樹脂として直鎖状低密度ポリエチレンを10〜30wt%と、低密度ポリエチレンを40〜60wt%と、前記第2の熱可塑性樹脂としてポリブテン−1を10〜30wt%とを含むブレンド樹脂からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蓋材。
【請求項6】
前記直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.900〜0.915g/cm、メルトフローレート(MFR)が5〜30g/10minであって、
前記低密度ポリエチレンは、融点が100〜115℃、MFRが15〜40g/10minであることを特徴とする、請求項5に記載の蓋材。
【請求項7】
前記第2の熱可塑性樹脂層は、剥離強度調整剤としてエラストマーをさらに含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の蓋材。
【請求項8】
前記剥離強度調整剤として添加するエラストマーはエチレン−ブテン共重合体であることを特徴とする、請求項7に記載の蓋材。
【請求項9】
前記シーラント層が共押出ラミネートにより、前記基材に積層されていることを特徴とする請求項1〜8にいずれかに記載の蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂からなる容器もしくはポリプロピレンで覆われたシール部を有する容器に用いられる蓋材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品包装分野において、インスタントラーメン、ゼリー、ヨーグルトなどの内容物をカップもしくはトレーに充填した包装形態が増加している。これらのカップもしくはトレーは一般的に、ポリスチレン、発泡ポリスチレン、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂を射出成形、真空圧縮成形などの製法を利用して製造されている。
【0003】
これらのカップ容器に用いる蓋材の要求品質としては、内容物を保護するため蓋材最内層のシーラント層と被着材であるカップなどの容器とが強接着であることが望まれる。また一方、開封時にはできるだけ易開封であるという相反する品質が求められる。
【0004】
上述した要求品質を満たすため、様々な機能が蓋材に付与されてきた。その1つとして、易開封機構の設計がある。易開封機構の例として、層間剥離機構、凝集剥離機構が挙げられる。このうち、凝集剥離機構は、熱可塑性樹脂に非相溶系あるいは部分相溶系の熱可塑性樹脂をブレンドすることで設計される。凝集剥離機構における剥離原理としては、非相溶系あるいは部分相溶系の熱可塑性樹脂ブレンド層の凝集力が小さいことを利用し、開封時は蓋材最内シーラントと被着材との界面ではなく、非相溶系あるいは部分相溶系の熱可塑性樹脂ブレンド層の凝集破壊を利用することが挙げられる。
【0005】
上述の凝集剥離機構の問題点としては、開封時に糸引きが発生することが挙げられる。糸引きの発生は、易開封層(熱可塑性樹脂ブレンド層)の層厚を極力薄くすることによって抑制される。あるいは、易開封層は一般的には微細な球状ドメイン相がマトリックス相に分散した海島構造を形成しているので、上記のドメイン相の分散径を極力小さくするなどのモルフォロジー設計をすることによっても糸引きの発生を抑制できる。しかしながら、熱可塑性樹脂ブレンド層を薄く製膜する事は、膜厚制御の点から非常に困難な技術であり、加工性を低下させる。また、ドメイン相の微細分散化は、両者の界面接着性を著しく向上させる事から、開封強度が強くなり、易開封性を付与させる事が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−245399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、易開封性を低下させることなく、開封時の糸引きの発生を低減できる蓋材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ポリプロピレン樹脂からなる容器もしくはポリプロピレン樹脂で形成されたシール部を有する容器に用いられる蓋材において、蓋材が、基材と、シーラント層からなり、シーラント層は基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層と、ポリプロピレン樹脂で形成されたシール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層とを積層した積層構造を有し、第1の熱可塑性樹脂層と第2の熱可塑性樹脂層との厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、易開封性に優れ、かつ開封時の糸引きの発生を低減できる蓋材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る蓋材の層構成の1例を示した断面模式図
図2A】第2の熱可塑性樹脂のドメインが楕円形状あるいは扁平状に分散した状態を示す図
図2B】第2の熱可塑性樹脂のドメインが完全球状に分散した状態を示す図
図3】実施例1に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
図4】実施例2に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
図5】実施例3に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
図6】実施例4に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
図7】実施例5に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
図8】実施例6に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
図9】比較例1に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
図10】比較例2に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明に係る蓋材1の層構成の1例を示す断面模式図である。図1に示すように、蓋材1は、基材2の一方面に、シーラント層7を積層して構成されている。
【0012】
基材2は、例えば、紙層4と、紙層4の一方面に印刷を施すことにより形成される印刷インキ層3と、紙層4の他方面に接着樹脂層5を介して積層される金属箔層6とから構成されている。接着樹脂層5として、例えば、ポリエチレン樹脂や、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂などの酸コポリマーなどを用いることができる。また、金属箔層6として、アルミニウム箔を好適に用いることができる。尚、基材2の層構成は、上記構成に限らず、例えば、紙層と遮光印刷を付与したPET層との2層を積層した構成でもよい。また、必要に応じて接着剤層などを積層させてもよい。また、紙層4の材質も特に限定されるものではない。
【0013】
シーラント層7は、基材側の第1の熱可塑性樹脂層8と最表面となる第2の熱可塑性樹脂層11とから構成される。シーラント層7は、第1の熱可塑性樹脂層8の形成材料と、第2の熱可塑性樹脂層11の形成材料とを、基材2の一方面に共押し出しすることにより形成される。基材2とシーラント層7との接着性を確保するため、必要に応じて、基材2の一方面にアンカーコート層12を設けてもよい。第1の熱可塑性樹脂層8と第2の熱可塑性樹脂層11の厚みは、第1の熱可塑性樹脂層8の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層11の厚みとなるように構成される。第2の熱可塑性樹脂層11の厚みが第1の熱可塑性樹脂層8の厚みよりも薄いとヒートシール面に第1の熱可塑性樹脂層8が露出してしまう為に、接着を阻害することになる。接着力及びコスト面から第1の熱可塑性樹脂層8と第2の熱可塑性樹脂層11との厚みは等しくすることが好ましい。
【0014】
第1の熱可塑性樹脂層8として、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸−メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エステル−酸無水物(無水マレイン酸など)三元共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸エステル−酸無水物(無水マレイン酸など)三元共重合体樹脂などの少なくとも1種の樹脂からなる層を用いることができる。
【0015】
第2の熱可塑性樹脂層11は、第1の熱可塑性樹脂9と第2の熱可塑性樹脂10とが配合された樹脂層である。ここで、蓋材1において、凝集剥離を開封機構として採用する場合、第2の熱可塑性樹脂層11に配合する第2の熱可塑性樹脂10は、第1の熱可塑性樹脂9に完全非相溶あるいは部分相溶する樹脂である。また、本発明において、カップなどの容器がポリプロピレン樹脂からなるもしくはシール部がポリプロピレン樹脂で覆われている場合、第1の熱可塑性樹脂9として、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを用い、第2の熱可塑性樹脂10として、ポリブテン−1を用いることができる。
【0016】
また、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとポリブテン−1の配合比は、直鎖状低密度ポリエチレンが10〜30wt%と、低密度ポリエチレンが40〜60wt%と、ポリブテン−1が10〜30wt%との範囲であることが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンの配合比が10wt%未満であると、シール強度が上がらず、30wt%を超えると易開封性に劣ることになる。また、ポリブテン−1の配合比が10wt%未満であると、シール強度が強くなりすぎ、30wt%を超えると、開封時に糸引きが発生しやすくなる。
【0017】
また、第2の熱可塑性樹脂層11に用いる直鎖状低密度ポリエチレンは、密度0.900〜0.915g/cm、メルトフローレート(MFR)が5〜30g/10minの範囲のものを用いることが好ましい。また、第2の熱可塑性樹脂層11に用いる低密度ポリエチレンは、融点が100℃〜115℃、MFRが15〜40g/10minのものを用いることが好ましい。また、第2の熱可塑性樹脂層11に用いるポリブテン−1は、融点が125℃、密度が0.915g/cmであるものを用いることが好ましい。
【0018】
さらに、第2の熱可塑性樹脂層11に、剥離強度調整剤として、エチレン−プロピレンや、エチレン−ブテン共重合体といったエラストマーを添加してもよい。上記の剥離強度調整剤を添加することにより、容器へヒートシールする際の剥離強度の温度依存性を低減させ、ヒートシール温度のばらつきに関わらず易開封性に優れた蓋材とすることができ、かつ、蓋材を容器から剥離した後の外観をよくすることができる。剥離強度調整剤の配合割合は、10〜20wt%が好ましい。
特に易開封性の向上にはエチレン−ブテン共重合体の添加が好ましく、その場合ポリブテン−1の配合比は10〜20wt%が好ましい。
【0019】
第2の熱可塑性樹脂層11のモルフォロジーとしては、ベースとなる第1の熱可塑性樹脂9中に分散する第2の熱可塑性樹脂10のドメイン径比l/s(l:ドメインの長径、s:ドメインの短径)が、1.5≦l/s≦10の範囲であることが好ましい。第2の熱可塑性樹脂10中に、ドメイン径比が上記の範囲である第2の熱可塑性樹脂10が全体の50%以上含まれていれば、易開封性に優れ、糸引きの発生を低減することが達成できる。第2の熱可塑性樹脂10のドメイン径比l/sが、上記範囲で収まっており、図2Aで示すように、楕円形状あるいは偏平状に分散されることで、図2Bで示すように、完全に球状状態で分散(l/s=1)しているよりも、開封時にマトリックス相を破断する面積を小さくする事が可能であり、開封時の強度を抑制することが可能である。第2の熱可塑性樹脂10のドメイン径比の範囲がl/s>10の場合には、蓋材1の開封時に第2の熱可塑性樹脂10が引きのばされ、糸引きの原因となる虞がある。第2の熱可塑性樹脂10のドメイン径比l/sの範囲が1.5≦l/s≦10で、さらに好ましくは、以下にも述べるが、第1の熱可塑性樹脂9の樹脂物性を、JIS.K7113における引張破断強度で5〜20MPaでかつ、引張破断伸びが600%以下にする。第1の熱可塑性樹脂9の樹脂物性を、上記の範囲にすることで、マトリックス相の破断面積を小さくさせる効果と相乗して、糸引き解消の効果を発揮することが可能である。
【0020】
上述したモルフォロジーを形成させるためには、第1の熱可塑性樹脂9および第2の熱可塑性樹脂10のJIS.K7210に準ずる190℃、21.168NにおけるMFR比、あるいは、実際の加工温度およびせん断速度域での溶融粘度比を調整する必要があるが、一般的に、成形加工温度およびせん断速度下で、第1の熱可塑性樹脂9の粘度よりも第2の熱可塑性樹脂10の粘度の方が高ければ、上記モルフォロジーを形成させる事が可能である。そのため、製膜条件における第1の熱可塑性樹脂9の溶融粘度が、第2の熱可塑性樹脂10の溶融粘度より小さければ問題は無い。特に、第1の熱可塑性樹脂9と第2の熱可塑性樹脂10の溶融粘度の差が離れていれば離れているほど、第2の熱可塑性樹脂10が楕円形状あるいは偏平状に分散するので好ましい。
【0021】
上述したように、第1の熱可塑性樹脂9は、JIS.K7113における引張破断強度で5〜20MPaで、かつ、引張破断伸びが600%以下であることが好ましい。ここで、JIS.K7113における引張破断強度、引張破断伸びの測定試験片および測定条件は、JIS.K7113に従う。例えば、測定する樹脂が低密度ポリエチレン樹脂であれば、2号試験片で厚さ2.0±0.2mm、試験速度200mm/min.の条件で試験を行う。
【0022】
第1の熱可塑性樹脂9の引張り破断強度が5MPaより小さいと、樹脂としての強度が低くなりすぎ、シール強度が得られない可能性がある。また、第1の熱可塑性樹脂9の引張り破断強度が20MPaより大きく、かつ、引張破断伸びが600%を超えると、開封時に糸引きを発生する虞がある。したがって、引張破断強度が5〜20MPaでかつ、引張破断伸びが600%以下であることが好ましい。
【0023】
蓋材1の容器との開封強度は、易開封性を考えると1〜15N/15mmであることが好ましい。開封強度が1N/15mmよりも小さいと接着強度に劣り、開封強度が15N/15mmより大きいと易開封性に劣る。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を更に詳しく説明するため、以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0025】
<実施例1>
図3は、実施例1に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
印刷インキ層/紙層/ポリエチレン層/アルミニウム箔層の層構成を有する基材を用いた。
【0026】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン−アクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.910g/cm、MFR:20g/10min)30wt%、低密度ポリエチレン(融点:105℃、MFR:25g/10min)を40wt%、ポリブテン−1を30wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料及び第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚及び第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は、いずれも15μmとした。
【0027】
<実施例2>
図4は、実施例2に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
実施例1と同様の基材を用いた。
【0028】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン−メタクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.905g/cm、MFR:15g/10min)20wt%、低密度ポリエチレン(融点:100℃、MFR:15g/10min)を50wt%、ポリブテン−1を30wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料及び第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚及び第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は、いずれも15μmとした。
【0029】
<実施例3>
図5は、実施例3に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
実施例1と同様の基材を用いた。
【0030】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン−アクリル酸エステル−酸無水物三元共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.915g/cm、MFR:30g/10min)20wt%、低密度ポリエチレン(融点:115℃、MFR:40g/10min)を40wt%、ポリブテン−1を20wt%、ポリエチレン−ブテン共重合体20wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料及び第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚は5μmとし、第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は15μmとした。
【0031】
<実施例4>
図6は、実施例4に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
実施例1と同様の基材を用いた。
【0032】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン−メタクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.915g/cm、MFR:30g/10min)10wt%、低密度ポリエチレン(融点:115℃、MFR:40g/10min)を60wt%、ポリブテン−1を10wt%、ポリエチレン−ブテン共重合体20wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料及び第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚は15μmとし、第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は15μmとした。
【0033】
<実施例5>
図7は、実施例5に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
PET層/印刷インキ層/紙層/エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂層/アルミニウム箔層の層構成を有し、紙層と印刷インキ層を設けたPET層とがポリエステル、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤を介して積層されている基材を用いた。
【0034】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン−メタクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.910g/cm、MFR:20g/10min)30wt%、低密度ポリエチレン(融点:105℃、MFR:25g/10min)を40wt%、ポリブテン−1を30wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料及び第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚及び第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は、いずれも10μmとした。
【0035】
<実施例6>
図8は、実施例6に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
PET層/印刷インキ層/紙層/遮光印刷を付与したPET層の層構成を有し、紙層と印刷インキ層を設けたPET層と、また紙層と遮光印刷を付与したPET層とをポリエステル、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤を用いて積層されている基材を用いた。また、紙層には、紙層とその上層のPET層とを部分的に剥離するためにミシン目線を設けた。
【0036】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン−メタクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.910g/cm、MFR:20g/10min)30wt%、低密度ポリエチレン(融点:105℃、MFR:25g/10min)を40wt%、ポリブテン−1を30wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材の遮光印刷を付与したPET層上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料及び第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚及び第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は、いずれも10μmとした。
【0037】
<比較例1>
図9は、比較例1に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
実施例1と同様の基材を用いた。
【0038】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン−アクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.910g/cm、MFR:20g/10min)45wt%、低密度ポリエチレン(融点:105℃、MFR:25g/10min)を50wt%、ポリブテン−1を5wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料及び第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚及び第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は、いずれも15μmとした。
【0039】
<比較例2>
図10は、比較例2に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材の形成)
実施例1と同様の基材を用いた。
【0040】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン−メタクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.910g/cm、MFR:20g/10min)25wt%、低密度ポリエチレン(融点:105℃、MFR:25g/10min)を25wt%、ポリブテン−1を50wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料及び第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚及び第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は、いずれも15μmとした。
【0041】
上記、実施例1〜6、比較例1および2で得られた図3〜10で示した層構成を有する蓋材を用いて、以下の測定および評価をおこなった。
【0042】
(シール強度の測定)
上記で得られた蓋材を、ポリプロピレン樹脂で覆われたシール部を有する容器に130〜160℃でヒートシールし、ヒートシール強度を測定した。このときのシール圧は0.15MPaとし、シール時間は1秒とした。この各蓋材をヒートシールした容器を用いて、90度剥離試験を行い、シール強度を測定した。
【0043】
(剥離面の糸引きの評価)
シール強度の測定と同様に各蓋材をヒートシールした容器を用いて、手で蓋材を開封した際の、剥離面の糸引きを目視で評価した。
【0044】
(開封感の評価)
シール強度の測定と同様に各蓋材をヒートシールした容器を用いて、手で蓋材を開封した際の開封感を評価した。
【0045】
表1に、シール強度の測定結果および剥離面の糸引き、開封感の評価結果を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1より、実施例1〜6で得られた蓋材にあっては、比較例1、2で得られた蓋材と比べて、蓋材と容器との間で強接着であることを満たし、易開封性を有する蓋材であることが確認できた。また、実施例1〜6で得られた蓋材は、比較例1、2で得られた蓋材と比べて、開封時にも糸引きの発生を低減でき、開封感も良好であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ポリプロピレン樹脂からなる容器もしくはポリプロピレン樹脂で覆われたシール部を有する容器に用いられる蓋材として有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 蓋材
2 基材
3 印刷インキ層
4 紙層
5 接着樹脂層
6 金属箔層
7 シーラント層
8 第1の熱可塑性樹脂層
9 第1の熱可塑性樹脂
10 第2の熱可塑性樹脂
11 第2の熱可塑性樹脂層
12 アンカーコート層
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10