特許第5983251号(P5983251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983251
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】監視装置及び監視システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20160818BHJP
   G08G 1/056 20060101ALI20160818BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20160818BHJP
   G06T 7/20 20060101ALI20160818BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   G08G1/00 J
   G08G1/056
   G08G1/04 D
   G06T7/20 B
   H04N7/18 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-216942(P2012-216942)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-71640(P2014-71640A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】梨木 登
(72)【発明者】
【氏名】矢島 浩孝
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−357484(JP,A)
【文献】 特開平07−200986(JP,A)
【文献】 特開2001−091246(JP,A)
【文献】 特開2012−103921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G06T 7/20
G08G 1/04
G08G 1/056
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を走行する車両を含む物体の画像を撮影する撮影部が異なる時間に撮影した複数の撮影画像を取得する画像取得部と、
前記複数の撮影画像に写っている物体に含まれる複数の特徴点が動く向き及び速度の少なくとも1つを検出する検出部と、
前記物体の特徴点が動く方向が、予め特定された前記車両の進行方向と異なっており、かつ前記複数の特徴点のうちの少なくとも1つの特徴点が動く向き又は速度が、前記複数の特徴点のうちの他の特徴点が動く向き又は速度と異なる場合に、前記物体を異物と判定する異物判定部と
を備える監視装置。
【請求項2】
前記検出部は、単位時間内に動く距離が所定の閾値よりも大きな物体が動く方向を前記車両の進行方向として検出する
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記異物判定部が前記異物と判定した前記物体の高さ、面積及び体積の少なくとも1つにより示される前記物体の大きさを算出する大きさ算出部と、
前記大きさ算出部が算出した前記物体の大きさに基づいて、前記車両に与える危険の大きさを示す危険度を算出する危険度算出部と
をさらに有する
請求項1又は2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記検出部は、所定の速度以上で移動する前記物体を検出してから所定の時間が経過した後であって、前記所定の速度以上で移動する前記物体が前記画像に写らない状態になってから撮影された前記画像に写っている物体が動く方向を検出する
請求項1から3のいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項5】
道路を走行する車両を含む物体の画像を撮影する撮影部を有する監視装置と、
前記監視装置から前記画像を受信するデータ管理装置と
を備える監視システムであって、
前記撮影部が撮影した複数の前記画像に写っている物体に含まれる複数の特徴点が動く向き及び速度の少なくとも1つを検出する検出部と、
前記物体の特徴点予め特定された前記車両の進行方向と異なる方向に動いており、かつ前記複数の特徴点のうちの少なくとも1つの特徴点が動く向き又は速度が、前記複数の特徴点のうちの他の特徴点が動く向き又は速度と異なることを前記検出部が検出すると、前記物体を異物と判定する異物判定部と
をさらに備える監視システム。
【請求項6】
複数の前記監視装置を備え、
それぞれの前記監視装置は、前記異物判定部が前記異物と判定したことを示す異物情報を隣接する前記監視装置に送信する送受信部をさらに有する
請求項5に記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影した画像に基づいて物品を検出する監視装置及び監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路上の様子をカメラで撮影し、複数の撮影画像の間の相関値に基づいて道路上の障害物を検出する方法が知られている。従来の方法においては、一定時間ごとにサンプリングされた画像に対して相関値の計算を繰り返し行って、相関値の変化状態に応じて、撮影画像に障害物が写っているか否かを判定する。例えば、障害物がない状態で撮影された画像との間の相関値の変化量が大きい領域には移動する車両が写っており、相関値の変化量が小さい領域には移動しない障害物が写っていると判定される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−24808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、車両はさまざまな速度で移動するので、車両が写っている領域における相関値は広い範囲で変化し得る。したがって、障害物がブルーシートや大きな布のように道路上を移動する物体である場合には、物体が写った領域の画像の相関値の変化量が、車両が写った領域における相関値が変化し得る範囲内に入ってしまう場合がある。このような場合に、従来の監視装置は移動する物体を車両と誤認識してしまい、車両の走行を妨害する可能性がある異物であると認識できない場合が生じていた。
【0005】
また、複数のタイミングで撮影された画像間の相関値は、物体が存在するか否かによらず変化する場合がある。例えば、対向車線を走る自動車のヘッドライトの光が路面に当たると、撮影している路上に物体がないにもかかわらず相関値が変化する。その結果、異物が存在しないにも関わらず、異物が存在すると誤認識して警報を発してしまうという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点を鑑みてなされたものであり、移動する物体を異物として検出できる監視装置及び監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様によれば、道路を走行する車両を含む物体の画像を撮影する撮影部が異なる時間に撮影した複数の撮影画像を取得する画像取得部と、複数の撮影画像に写っている物体が動く方向を検出する検出部と、検出した物体が動く方向が車両の進行方向と異なっている場合に当該物体を異物と判定する異物判定部とを備える監視装置を提供する。
【0008】
例えば、上記の検出部は、物体に含まれる複数の特徴点が動く向き及び速度の少なくとも1つを検出し、異物判定部は、複数の特徴点のうちの少なくとも1つの特徴点が動く向き又は速度が、複数の特徴点のうちの他の特徴点が動く向き又は速度と異なる場合に、当該物体を異物と判定する。検出部は、単位時間内に動く距離が所定の閾値よりも大きな物体が動く方向を車両の進行方向として検出してもよい。
【0009】
上記の監視装置は、異物判定部が異物と判定した物体の高さ、面積及び体積の少なくとも1つにより示される物体の大きさを算出する大きさ算出部と、大きさ算出部が算出した物体の大きさに基づいて、車両に与える危険の大きさを示す危険度を算出する危険度算出部とをさらに有してもよい。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、道路を走行する車両を含む物体の画像を撮影する撮影部を有する監視装置と、監視装置から画像を受信するデータ管理装置とを備える監視システムであって、撮影部が撮影した複数の画像に写っている物体が動く方向を検出する検出部と、物体が車両の進行方向と異なる方向に動いていることを検出部が検出すると、物体を異物と判定する異物判定部とをさらに備える監視システムを提供する。
【0011】
上記の監視システムは、複数の監視装置を備え、それぞれの監視装置は、異物判定部が異物と判定したことを示す異物情報を隣接する監視装置に送信する送受信部をさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動する物体を異物として検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態の監視システムの構成例を示す。
図2】第1の実施形態の監視システムの使用態様の一例を示す。
図3】第1の実施形態の監視装置の道路における設置例を示す。
図4】第1の実施形態の監視装置の構成例を示す。
図5】撮影画像における位置座標を示す。
図6A】車両における複数の特徴点の移動ベクトルの一例を示す。
図6B】異物における複数の特徴点の移動ベクトルの一例を示す。
図7】撮影画像の位置座標と道路上の位置との関係の一例を示す。
図8】第2の実施形態に係る監視システムの構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
[監視システム10の基本構成]
図1は、第1の実施形態の監視システム10の構成例を示す。図2は、第1の実施形態の監視システム10の使用態様の一例を示す。図3は、監視装置100の道路における設置例を示す。一例として、監視装置100は、道路に沿って等間隔で設置され、道路の上方から道路を走行する車両を撮影する。
【0015】
監視システム10は、例えばデイジーチェーン接続された複数の監視装置100(監視装置100−1、監視装置100−2、・・・、監視装置100−n、ただしnは3以上の自然数)と、複数の監視装置100と接続されたデータ管理装置200とを備える。データ管理装置200は、例えばサーバである。複数の監視装置100の間は、通信線50により接続されている。通信線50は、例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)用の8芯ケーブルである。
【0016】
監視システム10は、データ管理装置200と監視装置100−1との間にハブ300を備えてもよい。それぞれの監視装置100は、ハブ300を介してデータ管理装置200に接続してもよい。監視システム10は、ハブ300に接続された複数の監視装置100の群を複数備えてもよい。監視システム10は、監視装置100が撮影した画像(以下、撮影画像)を表示するモニタ400を備えてもよい。
【0017】
[異物を検出する監視装置100の構成例]
図4は、監視装置100の構成例を示す。監視装置100は、制御部110、記憶部120、撮影部130、画像取得部140及び送受信部150を備える。制御部110は、例えば、記憶部120に記憶されたプログラムを実行することにより制御部110が撮影した画像を解析して異物を検出するマイクロプロセッサである。制御部110は、異物を検出したことを表示部に表示してもよく、送受信部150を介して、異物を検出したことを他の監視装置100及びデータ管理装置200に通報してもよい。
【0018】
記憶部120は、制御部110を動作させるためのプログラム、及び、制御部110の動作中に生成されるデータを記憶する記憶媒体である。記憶部120は、例えばROM及びRAMの少なくとも1つを含む。記憶部120は、監視装置100に内蔵された記憶媒体であってもよく、取り外し可能な記憶媒体であってもよい。
【0019】
撮影部130は、レンズ及びCCD(電荷結合素子)を有し、道路を走行する車両を含む物体の画像を撮影する。画像取得部140は、撮影部130が異なる時間に撮影した複数の撮影画像を取得する。例えば、画像取得部140は、撮影部130から出力される画像信号を取得し、取得した画像信号をアナログ/デジタル変換して生成したデジタル画像を制御部110に入力してもよい。
【0020】
送受信部150は、制御部110が異物を検出したことをデータ管理装置200に送信するとともに、データ管理装置200から各種の情報を受信する。送受信部150は、デイジーチェーン接続された他の監視装置100との間でデータを送受信してもよい。例えば、監視装置100−2の送受信部150は、隣接する監視装置100−3の送受信部150から画像を受信するとともに、監視装置100−1の送受信部150を介してデータ管理装置200に送信する。
【0021】
制御部110は、検出部112、異物判定部114、大きさ算出部116及び危険度算出部118を有する。制御部110は、プログラムを実行することにより、検出部112、異物判定部114、大きさ算出部116及び危険度算出部118として機能してもよい。
【0022】
検出部112は、撮影部130が撮影した複数の画像に写っている物体が動く方向を検出する。検出部112は、物体が動く向きを検出してもよい。例えば、検出部112は、所定の時間ごとに撮影部130が撮影した複数の画像を取得し、複数の画像に写っている物体の位置が変化する向きを検出することにより、物体が動く方向及び向きの少なくとも1つを検出する。検出部112は、所定の時間ごとに撮影された複数の画像における物体の位置座標の変化量に基づいて、物体が動く速度を検出してもよい。
【0023】
図5は、撮影画像における位置座標を示す。撮影画像における車両の進行方向に平行な方向にX軸が設けられ、X軸と垂直な方向にY軸が設けられている。撮影画像の解像度が例えばXGA(画素数1024×768)である場合には、X軸上の座標の最大値は1024であり、Y軸上の座標の最大値は768である。本明細書においては、X軸上の位置がx、Y軸上の位置がyの物体の位置座標を(x,y)と表記する。例えば、画素数1024×768の撮影画像の中央に写っている物体の位置座標は、(512,384)と表される。
【0024】
検出部112は、第1の時間t1における撮影画像において(x1,y1)の位置座標にあった物体が第2の時間t2における撮影画像において(x2,y2)の位置座標に移動した場合、物体が動く向きを示す移動ベクトルを(x2−x1,y2−y1)と算出する。検出部112は、位置座標間の距離を複数の撮影画像を撮影した時間差t2−t1で除することにより、物体の移動速度を算出する。
【0025】
具体的には、検出部112は、第1の画像内の物体の特徴点を抽出して、第1の画像における特徴点の位置座標を生成する。物体の特徴点とは、例えば、物体の角のように輪郭線の方向が変化したり明度が変化したりする位置である。
【0026】
次に、検出部112は、第1の画像から所定の時間が経過した後に撮影された第2の画像において、第1の画像で抽出した物体の特徴点を検出する。例えば、検出部112は、第1の画像において抽出した物体の輪郭線で囲まれた領域の画像との相関値が所定の閾値より大きな領域の画像を抽出し、抽出した画像の輪郭線に基づいて特徴点を検出する。検出部112は、検出した特徴点の位置座標を算出する。
【0027】
続いて、検出部112は、第2の画像において検出した特徴点の位置座標の値から第1の画像において検出した特徴点の位置座標の値を引くことにより、特徴点の移動ベクトルを算出する。例えば、第1の画像における特徴点の位置座標が(100,100)で表され、第2の画像における特徴点の位置座標が(100,150)で表される場合には、移動ベクトルは(50,0)であり、Y軸方向に特徴点が50画素分だけ移動したことが示される。
【0028】
検出部112は、車両が動く方向を検出してもよい。例えば、検出部112は、単位時間内に動く距離が所定の閾値よりも大きな物体が動く方向を車両の進行方向として検出する。検出部112は、所定の時間内に動きを検出した複数の物体の移動方向を検出し、複数の物体のうち所定の割合より多くの物体が移動する方向を車両の進行方向としてもよい。
【0029】
異物判定部114は、物体が動く方向が車両の進行方向と異なっていると、物体を異物と判定する。異物判定部114は、物体が動く向きと車両が進行する向きとが異なる場合に物体を異物と判定してもよい。異物判定部114は、予め記憶部120に記憶された車両の進行方向を示す移動ベクトルを用いて判定してもよく、検出部112が検出した車両の進行方向を用いて判定してもよい。
【0030】
例えば、異物判定部114は、画像におけるX軸方向が車両の進行方向である場合に、物体が、X軸方向に対して車両の進行方向のばらつき範囲を超えて異なる方向に動いている場合に、当該物体を異物であると判定する。具体的には、画像のX軸方向に道路が写っている場合に、車線変更が発生する場合を考慮しても、車両はX軸の方向±30°以内の範囲の方向に進行すると考えられる。そこで、異物判定部114は、物体の特徴点の移動ベクトルの方向がX軸の方向から±30°の範囲に入っていない場合に、物体が異物であると判定する。
【0031】
異物判定部114は、物体が動く速度と当該物体の周辺において検出された複数の車両の平均速度との差が所定量以上に大きい場合に、物体が異物であると判定してもよい。例えば、検出部112が検出した物体の前後に検出した2台の車両の平均速度が時速50kmであり、かつ、物体の移動速度が時速5km以下である場合に、異物判定部114は、検出した物体が異物であると判定する。
【0032】
[複数の特徴点に基づいて判断する]
図6Aは、車両における複数の特徴点の移動ベクトルの一例を示す。図6Bは、異物における複数の特徴点の移動ベクトルの一例を示す。撮影された物体が車両である場合には、複数の特徴点は車両の走行速度で移動する。したがって、車両における複数の特徴点の移動ベクトルは、図6Aに示すように、ほぼ同一の向き及び大きさを有する。これに対して、撮影された物体がシート状の物体である場合には、複数の特徴点はランダムに移動するので、図6Bに示すように、それぞれの特徴点の移動ベクトルは異なる向き及び大きさを有する。
【0033】
そこで、監視装置100は、複数の特徴点に基づいて異物を検出してもよい。具体的には、検出部112は、物体に含まれる複数の特徴点が動く向き及び速度の少なくとも1つを検出する。異物判定部114は、複数の特徴点のうちの少なくとも1つの特徴点が動く向き又は速度が、複数の特徴点のうちの他の特徴点が動く向き又は速度と異なる場合に、当該物体を異物と判定する。監視装置100は、複数の特徴点に基づいて異物が検出されたことを表示してもよく、他の監視装置100又はデータ管理装置200に通報してもよい。
【0034】
例えば、検出部112は、物体の複数の角を複数の特徴点として検出し、異なる時間に撮影された複数の画像に基づいて、それぞれの特徴点の移動ベクトルを算出する。異物判定部114は、検出部112が算出した全ての移動ベクトルの向き及び大きさがほぼ同一である場合には、物体を車両であると判定する。異物判定部114は、複数の移動ベクトルの中に、異なる向き又は大きさの移動ベクトルが含まれている場合には、物体を異物であると判定する。異物判定部114は、判定の精度を高めるために、複数の特徴点のそれぞれの移動速度が所定範囲内であり、かつ、少なくとも一部の複数の特徴点が動く向きが互いに異なる場合に、物体を異物と判断してもよい。
【0035】
以上の通り、監視装置100が物体における複数の特徴点に基づいて異物を検出することにより、ブルーシートのように形状を変化させる異物を高い精度で検出することができる。さらに、形状を変化させる異物が存在することを表示することにより、運転手や道路の管理者に対して注意を促すことができる。
【0036】
[位置座標と道路上の位置とを対応づけて物体の動きを検出する]
図7は、撮影画像の位置座標と道路上の位置との関係の一例を示す。監視装置100が道路の端に設置されている場合には、図7に示すように、撮影画像内の位置によって1画素あたりの道路上の長さが異なる。そこで、検出部112は、位置座標と道路上の位置との間の関係に基づいて、物体の方向、向き又は速度を算出することが好ましい。
【0037】
図7に示す台形は、撮影部130が撮影した画像に写っている道路上の領域を示している。撮影された領域の境界線上のA、B、C、D、E、Fの各点は、それぞれ位置座標(0,0)、(0,384)、(0,768)、(1024,0)、(1024,384)、(1024,768)に対応する。
【0038】
図7の例においては、AD間の距離が5m、CF間の距離が10mであり、X軸方向の1画素あたりの実際の長さはY軸方向の位置によって異なることがわかる。同様に、AB間の画素数とBC間の画素数は等しいにもかかわらず、実際のAB間の距離はBC間の距離よりも短い。このように、Y軸方向の1画素あたりの実際の長さもY軸方向の位置によって異なる。記憶部120は、撮影画像における位置座標と道路上の実際の位置との関係を記憶してもよい。
【0039】
検出部112は、位置座標と道路上の実際の位置との関係に基づいて、物体が移動する方向、向き又は速度を算出する。検出部112は、記憶部120に記憶された位置情報と実際の位置との関係を使用してもよく、監視装置100が設置された道路に対する水平方向の位置及び垂直方向の位置に基づいて、位置座標に対する道路上の実際の位置を算出してもよい。
【0040】
以上の通り、監視装置100が位置座標と道路上の位置とを対応づけて物体の動きを検出することにより、監視装置100が道路に対して斜め上方に設置されている場合であっても物体が移動する向き及び速度を高い精度で検出することができる。その結果、監視装置100は、高い精度で異物を検出できる。
【0041】
[異物の大きさを算出する]
監視装置100は、異物の大きさを算出して、異物の大きさに応じた表示又は通報をしてもよい。大きさ算出部116は、画像取得部140から取得した画像に基づいて、異物判定部114が異物と判定した物体の高さ、面積及び体積の少なくとも1つにより示される物体の大きさを算出する。
【0042】
大きさ算出部116は、例えば、異物と判定した物体の輪郭線における最も高い位置の高さを物体の高さとして算出する。大きさ算出部116は、物体がブルーシートのように変形する場合には、変形した状態における最も高い位置の高さを物体の高さとする。大きさ算出部116は、複数のレンズを有する撮影部130において撮影された立体画像を用いて高さを算出することが好ましい。
【0043】
大きさ算出部116は、物体の輪郭線上の複数の特徴点の位置座標に基づいて、物体を上から見た場合の面積を算出する。例えば、大きさ算出部116は、位置座標と道路上の基準位置からの距離との関係を示すテーブルに基づいて、それぞれの特徴点の道路上の位置を算出し、算出した道路上の位置に基づいて面積を算出する。大きさ算出部116は、算出した高さと面積とに基づいて物体の体積を算出する。
【0044】
危険度算出部118は、大きさ算出部116が算出した物体の大きさに基づいて、車両に与える危険の大きさを示す危険度を算出する。危険度算出部118は、例えば、高さ、面積及び体積のそれぞれを閾値と比較することにより、高さ、面積及び体積のそれぞれが明らかに危険な場合が危険度3、危険な可能性がある場合が危険度2、危険性が低い場合が危険度1であるとする。
【0045】
制御部110は、危険度算出部118が算出した危険度が所定の条件を満たす場合に、他の監視装置100及びデータ管理装置200に通報してもよい。例えば、制御部110は、高さ、面積及び体積のうち1つでも危険度が2より大きい場合に、危険であることを表示したり危険な異物があることをデータ管理装置200に通報したりする。
【0046】
危険度算出部118は、物体の高さ、面積及び体積の値に応じて予め設定された危険度を示す情報に基づいて、総合的な危険度を示す情報を算出してもよい。具体的には、危険度算出部118は、高さに基づく危険度が3、面積に基づく危険度が2、体積に基づく危険度が2である場合に、総合的な危険度を3×2×2=12と算出する。制御部110は、総合的な危険度の値が閾値よりも大きい場合に、危険であることを表示したり危険な異物があることをデータ管理装置200に通報したりしてもよい。
【0047】
以上の通り、監視装置100が異物の大きさを算出し、大きさに応じた情報を表示したり通報したりすることにより、運転手や道路の管理者に注意を促すことができる。
【0048】
[車両が通過した後に物体が動く方向を検出する]
異物として検出するべき物体がブルーシートのように薄い形状をしている場合には、物体の上を車両が通過する場合がある。物体の上を車両が通過する間は物体が移動しないので、検出部112は動く方向を検出することができない。そこで、検出部112は、方向を検出すべき物体の位置を車両が通過した後に物体が動く方向を検出してもよい。
【0049】
具体的には、検出部112は、所定の速度以上で移動する物体を検出した後に、当該物体が画像に写らない状態になってから撮影された画像に写っている物体が動く方向を検出する。例えば、ほとんどの車両が時速20km以上で走行する道路に沿って監視装置100が設置されている場合に、検出部112は、時速20km以上で移動する車両が画像に写ったことを検出してから所定の時間が経過した後に撮影された複数の画像に写っている物体の位置座標に基づいて物体が動く方向を検出する。
【0050】
車両が通過した直後に浮き上がったシート状の異物は、車両が通過してから時間が経過すると、地面に貼り付いた状態になる場合がある。シート状の異物が地面に貼り付いた状態においては、危険度算出部118は、シート状の異物の危険度を正確に算出できない。そこで、検出部112は、方向を検出すべき物体の位置を車両が通過してから所定の時間が経過するまでの間に物体が動く方向を検出することが好ましい。
【0051】
以上の通り、監視装置100が車両が通過してから所定の期間内に異物を検出することにより、道路に貼り付いた状態になったり浮き上がったりするシート状の異物を検出しやすくなる。
【0052】
[異物を検出したことを他の監視装置100に通報する]
制御部110は、検出部112が検出した物体が異物であると異物判定部114が判定すると、異物を検出したことを他の監視装置100に通知してもよい。例えば、監視装置100−2の異物判定部114が、監視装置100−1が設置されている位置に近づく向きに移動している異物を検出した場合、監視装置100−2は、異物が監視装置100−1に向かって移動していることを監視装置100−1に通報する。
【0053】
監視装置100−1が異物に関する通報を受けると、監視装置100−1の異物判定部114は、検出部112が検出した物体が異物であるか否かを判定する基準を変化させてもよい。例えば、異物判定部114は、通常は、車両の進行方向と異なる方向に移動している物体を異物であると判定するとともに、隣接する監視装置100から異物に関する通報を受けると、移動方向によらず、物体の移動速度及び形状の少なくとも1つに基づいて異物であると判定する。異物判定部114が、他の監視装置100からの情報に基づいて物体が異物であるか否かを判定することにより、異物が存在することを迅速に検出することができる。
【0054】
<第2の実施形態>
[データ管理装置200が異物を検出する監視システム10]
図8は、第2の実施形態に係る監視システム10の構成を示す。本実施形態に係る監視システム10は、道路を走行する車両を含む物体の画像を撮影する撮影部130を有する監視装置100と、監視装置100から受信した画像に基づいて異物を検出するデータ管理装置200とを有する。
【0055】
監視装置100は、制御部110、撮影部130及び送受信部150を有する。データ管理装置200は、制御部210、記憶部220、画像取得部240及び送受信部250を有する。制御部210、記憶部220及び画像取得部240は、図4に示した制御部110、記憶部120及び画像取得部140に対応する。制御部110は、検出部112、異物判定部114、大きさ算出部116及び危険度算出部118に対応する検出部212、異物判定部214、大きさ算出部216及び危険度算出部218を有する。
【0056】
送受信部250は、監視装置100の送受信部150との間でデータを送受信する。例えば、送受信部250は、複数の監視装置100を制御するメッセージを送信し、複数の監視装置100が撮影した画像を受信する。送受信部250は、受信した画像を画像取得部240に入力する。
【0057】
以上の通り、監視システム10において、データ管理装置200が監視装置100から取得した画像に基づいて異物を検出することにより、監視装置100が検出部112、異物判定部114、大きさ算出部116及び危険度算出部118を有しない場合であっても、異物を検出することができる。また、データ管理装置200が複数の監視装置100から取得した複数の画像に基づいて異物を検出することにより、監視システム10は、異物の形状や移動の様子を詳細に把握し、運転手や道路の管理者に適切な情報を提供することができる。
【0058】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。例えば、検出部112、異物判定部114、大きさ算出部116及び危険度算出部118のうちの一部を監視装置100が有し、他の一部をデータ管理装置200が有しても、上記の実施形態と同等の作用効果を奏する。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0059】
10・・・監視システム、50・・・通信線、100・・・監視装置、110・・・制御部、112・・・検出部、114・・・異物判定部、116・・・算出部、118・・・危険度算出部、120・・・記憶部、130・・・撮影部、140・・・画像取得部、150・・・送受信部、200・・・データ管理装置、210・・・制御部、212・・・検出部、214・・・異物判定部、216・・・算出部、218・・・危険度算出部、220・・・記憶部、240・・・画像取得部、250・・・送受信部、300・・・ハブ、400・・・モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8