特許第5983278号(P5983278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983278
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】高炉用高反応性コークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 57/06 20060101AFI20160818BHJP
   C10B 53/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   C10B57/06
   C10B53/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-226161(P2012-226161)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-77086(P2014-77086A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100140121
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 朝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健次
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−277452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 1/00−57/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを熱分解して回収したチャーをコークス製造用の配合炭に添加してコークス炉で乾留する高炉用コークスの製造方法において、前記チャーの直径が1mm以下であることを特徴とする高炉用高反応性コークスの製造方法。
【請求項2】
前記チャーを3〜5質量%配合炭に添加することを特徴とする請求項1に記載の高炉用高反応性コークスの製造方法。
【請求項3】
前記チャーを添加した配合炭を乾燥して、水分量を2〜6%に調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉用高反応性コークスの製造方法。
【請求項4】
記バイオマスを熱分解して得た残部油分を乾燥後の配合炭に添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高炉用高反応性コークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを用い、高炉操業に用いるガス反応性の高い高炉用コークスを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、室式コークス炉を用いた高炉用コークスの製造において、粘結炭に比べて埋蔵量が多く、安価な非微粘結炭の配合割合を増加し、かつ、冷間強度などの品質に優れたコークスを製造する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1〜4、参照)。しかし、従来の製造方法においては、所望のコークス強度が得られていないのが現実である。
【0003】
近年、製造方法における実情に加え、地球規模での温暖化問題への対応が進められていて、二酸化炭素の発生量の低減、一般及び産業廃棄物のリサイクル又はエネルギーとしての利用などが検討されている。
【0004】
この中で、特に、バイオマスはカーボンニュートラルであり、気候変動枠組条約締結国会議(COP3〜6、COP;The Conference Of the Party)での国際公約を達成するため、石油、石炭などの代替資源として、積極的に使用することが望まれている。
【0005】
このことを踏まえ、バイオマスを原料として用いる高炉用コークスの製造方法が幾つか提案されている(例えば、特許文献5〜8、参照)。
【0006】
特許文献6に記載の高炉用コークスの製造方法によれば、バイオマスの有効利用及びCO2発生量の削減を実現できる他、乾燥炭搬送時の発塵及び乾燥炭装入時の微粉炭キャリーオーバーを抑制して、所要の強度と粒径を有する高炉用コークスを製造することができるが、ガスとの反応性の点で課題が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63―15950号公報
【特許文献2】特開平07−82568号公報
【特許文献3】特開平08−239669号公報
【特許文献4】特開平06−264069号公報
【特許文献5】特許第4139260号公報
【特許文献6】特許第4050992号公報
【特許文献7】特開2004−359898号公報
【特許文献8】特開2012−017528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の実情に鑑み、本発明は、バイオマスを用いて高炉用コークスを製造する方法において、コークスのガス反応性を改善することを課題とし、該課題を解決する高炉用コークスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。バイオマスを用いる場合、熱分解して生成したチャー(以下「バイオマスチャー」ということがある。)を配合炭に添加するが、粒度1mm以下のバイオマスチャーを配合炭に添加してコークスを製造すると、ガス反応性の高いコークスを製造できることを見いだした。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は、以下の通りである。
【0011】
(1)バイオマスを熱分解して回収したチャーをコークス製造用の配合炭に添加してコークス炉で乾留する高炉用コークスの製造方法において、前記チャーの直径が1mm以下であることを特徴とする高炉用高反応性コークスの製造方法。
【0012】
(2)前記チャーを3〜5質量%配合炭に添加することを特徴とする前記(1)に記載の高炉用高反応性コークスの製造方法。
【0013】
(3)前記チャーを添加した配合炭を乾燥して、水分量を2〜6%に調整することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の高炉用高反応性コークスの製造方法。
【0014】
(4)前記バイオマスを熱分解して得た残部油分を乾燥後の配合炭に添加することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高炉用高反応性コークスの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バイオマスを活用して、所要の強度と粒径を備え、かつ、ガスとの反応性が高い高炉用コークスを製造することができる。また、本発明によれば、バイオマスを資源リサイクル化し、かつ、CO2の発生量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】バイオマスを用いたコークス製造プロセスの一例を示す図である。
図2】配合炭に添加するバイオマスチャーの粒径とコークスの反応性との相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の高炉用高反応性コークスの製造方法(以下「本発明方法」ということがある。)は、粒径1mm以下のチャーを配合炭に添加して、コークス炉で乾留することを特徴とする。以下、図面に基づいて説明する。
【0018】
本発明方法において用いるバイオマスは、以下のFAO(国連食糧農業機関)に定義に準じて定義される。
【0019】
FAO(国連食糧農業機関)によれば、バイオマスとは生物量の総称であり、農業系(麦わら、サトウキビ、米糠、草木等)、林業系(製紙廃棄物、製材廃材、除間伐材、薪炭林等)、畜産系(家畜廃棄物)、水産系(水産加工残滓)、廃棄物系(生ごみ、RDF(ゴミ固形化燃料;Refused Derived Fuel)、庭木、建設廃材、下水汚泥)等に分類される。本発明方法において用いるバイオマスは、木質系バイオマスが好ましい。
【0020】
図1に、バイオマスを利用した高炉用コークスの製造プロセスの一例を示す。バイオマスは、外熱式の乾留炉1に供給され、非酸化性雰囲気で、少なくとも1000℃以上に過熱され、熱分解される。生成物として、固形分のバイオマスチャー、常温で液体の油分、及び、ガスが生成する。
【0021】
生成物のうち、バイオマスチャーは、乾留炉1から排出され、コークス製造用の原料として回収される。また、生成物のうち、高温状態のガス及び油分は、乾留炉1から排出された後、ガス冷却器2でガスと油分に分離される。
【0022】
この油分には、バイオマスチャーから発生する水分を含有するので、油水分離器3で油分と水分に分離する。油分は、油分タンク5に一旦貯蔵され、分離した水分は、発生水タンク4に回収される。
【0023】
バイオマスの熱分解で生成する油分には、化学工業において利用価値の高い化学原料が含まれる。そのため、油分は、油分抽出機8に供給され、化学原料と、その残りの油分(以下「残部油分」ということがある。)に分離される。
【0024】
化学原料は、抽出液タンク9に貯蔵され、残部油分は、乾燥後のコークス原料炭の添加剤として、添加油分ホルダー10に一旦貯蔵される。化学原料は、例えば、酢酸、アルコール類、フェノール類など、化学工業において利用価値の高い化学成分が好ましい。
【0025】
石炭配合槽の石炭フィーダー(図示せず)から、各種銘柄の石炭を所定量切り出して、コークス製造用の配合炭(1種類又は2種類以上の銘柄の石炭が所定割合で配合された原料炭)とする。配合炭中の水分量は、原料ヤードの状況(天候、季節等)によって変化するが、通常、9%前後である。
【0026】
バイオマスチャーは、バイオマスチャー添加装置19により、配合炭に所定量(後で説明する。)添加される。バイオマスチャーが添加された配合炭は、石炭乾燥機11で乾燥される。バイオマスチャー中の水分量は、少なくとも6%以下に低減する。
【0027】
残部油分は、バイオマス油分添加装置18で、乾燥後の配合炭に所定量(後で説明する。)添加される。残部油分が添加された乾燥後の配合炭は、ベルトコンベア12でコークス炉17の炉頂に配置した石炭塔16まで搬送されて、コークス炉17の炭化室に装入される。バイオマスチャーは、乾燥後の配合炭に添加してもよい。
【0028】
本発明者らは、配合炭にバイオマスチャーを添加して製造した高炉用コークスにおいては、ガスとの反応性の点で課題が残っていることに鑑み、ガスとの反応性を改善することを試みた。
【0029】
本発明者らは、バイオマスチャーが多孔質であることに着目し、配合炭に添加するバイオマスチャーの粒径とガス反応性の相関について調査した。その結果を図2に示す。図2から、配合炭に添加するバイオマスチャーの粒径が1mm以下であると、コークスのJIS反応性が、44%以上に顕著に向上し、通常のコークスのガス反応性が32〜40%であるのに比較して、従来にない高いガス反応性のコークスが得られることが解る。それ故、本発明方法においては、配合炭に添加するバイオマスチャーの粒径は1mm以下とする。
【0030】
バイオマスチャーの粒径は小さいほど好ましく、特に下限を設定する必要はないが、実際には、0.1mm程度が下限となる。
【0031】
次に、バイオマスチャーの添加量について説明する。
【0032】
バイオマスチャーは、乾燥前又は乾燥後の配合炭に添加すると、コークス炉での乾留工程において、次の効果が発現する。
【0033】
通常、室式コークス炉での配合炭の乾留は、燃焼室の熱で加熱された炉壁近傍の石炭が軟化し、熱分解で揮発成分が脱離した後、再固化し、その後、熱収縮してコークス化される。
【0034】
コークス化反応が両側の炉壁から炭化室中心部に向かって進行するが、再固化後、熱収縮過程で、炉壁面に平行な方向に熱応力が発生し、その応力集中部から亀裂が発生する。亀裂は、壁面側から炭化室中心部の方向へコークス化の進行に伴い進展する。
【0035】
コークス中の大きな亀裂は、コークス押し出し後の成品コークスの平均粒径を低下させ、粉コークスを増加させる原因となるが、バイオマスチャーは、石炭が再固化する温度域における収縮率が、石炭に比べて小さいので、バイオマスチャーを添加した配合炭を乾留すると、上記再固化後の熱収縮過程で亀裂が発生した場合には、亀裂先端部のエネルギーが、バイオマスチャー粒界近傍での微小亀裂の発生により開放されて、さらなる亀裂伝播が阻止される。
【0036】
その結果、コークス中の大きな亀裂は減少し、成品コークスの平均粒径は増大し、粉コークス量は減少する。即ち、バイオマスチャーの添加で、所要の粒径を有する高強度のコークスを製造することができる。
【0037】
また、バイオマスチャーは、従来の粉コークスに比べ収縮率は変わらないが、気孔量が多く、嵩密度が大きく、さらに、従来の無煙炭に比べ揮発成分がないので、収縮率が小さい。
【0038】
そのため、従来の粉コークスや無煙炭などの添加量に比べ少ない添加量で、成品コークス中の大きな亀裂の発生の抑制、及び、平均粒径の増大などの効果を得ることができる。
【0039】
バイオマスチャーの添加効果は、1質量%以上の添加で得られるが、粒径1mm以下のバイオマスチャーを用いる場合は、前述のようにコークス塊内にバイオマスチャー粒界近傍に微小亀裂が発生することにより、コークス中の大きな亀裂が減少し、成品コークスの平均粒径が大きくなる効果を顕著に発揮させるためには3質量%以上の添加が好ましい。
【0040】
バイオマスチャーの添加量を増大すると、成品コークスの強度は低下するが、この強度の低下量は、粉コークスや無煙炭を添加した場合に比べて小さいので、多量に添加することが可能であるが、5質量%を超えて添加すると、成品コークス強度の低下を無視できずないので、添加量の上限は5質量%が好ましい。よって、本発明方法において、バイオマスチャーの添加量は3〜5質量%が好ましい。
【0041】
バイオマスチャーを配合炭に添加した後、コークス炉に装入する際の嵩密度を高くして、強度の高いコークスを製造するため、バイオマスチャー添加配合炭を乾燥して、水分量を2〜6%に調整する。バイオマスチャーは、水分量を2〜6%に調整した配合炭に添加してもよい。水分量は、コークス炉に装入する石炭の嵩密度を高くするために2〜6%が好ましい。
【実施例】
【0042】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0043】
(実施例)
杉の廃材(林業系バイオマス)を、乾留炉で、1000℃、5時間、乾留して熱分解し、熱分解生成物として、バイオマスチャー:26質量%、油分:21質量%、水分30質量%、ガス:23質量%を得た。
【0044】
図1に示すコークス製造プロセスにおいて、杉の廃材から得たバイオマスチャーを用い、表1に示す条件で高炉用コークスを製造し、DI15015(−)、平均粒径(mm)、及び、JIS反応性(%)を測定した。結果を表1に併せて示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1から、バイオマスを活用して、所要の強度と粒径を備え、かつ、ガスとの反応性が高い高炉用コークスを製造できることが解る。
【産業上の利用可能性】
【0047】
前述したように、本発明によれば、バイオマスを活用して、所要の強度と粒径を備え、かつ、ガスとの反応性が高い高炉用コークスを製造することができる。また、本発明によれば、バイオマスを資源リサイクル化し、かつ、CO2の発生量を削減することができる。よって、本発明は、技術的のみならず経済的な効果は非常に大きく、産業上の利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0048】
1 乾留炉
2 ガス冷却器
3 油水分離器
4 発生水タンク
5 油分タンク
6 ガスブロワー
7 ガスホルダー
8 油分抽出機
9 抽出液タンク
10 添加油分ホルダー
11 加熱乾燥機
12 ベルトコンベア
13 ダクト
14 フード
15 バグフィルター
16 石炭塔
17 コークス炉
18 バイオマス油分添加装置
19 バイオマスチャー添加装置
図1
図2