(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983319
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】放電ランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 61/36 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
H01J61/36 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-242292(P2012-242292)
(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公開番号】特開2014-93165(P2014-93165A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【弁理士】
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 征彦
(72)【発明者】
【氏名】的場 正憲
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊夫
【審査官】
佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3171517(JP,U)
【文献】
特開平08−329896(JP,A)
【文献】
特開2000−129447(JP,A)
【文献】
実開平06−080251(JP,U)
【文献】
特開2007−242579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/30−61/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一対の電極が配置された発光部とその両端の封止部とからなる発光管と、前記封止部の内部に配置された封止用ガラス部材と、該ガラス部材の側面に沿って長手方向に伸びるように配置された複数の金属箔と、前記ガラス部材の端面に配置された集電ディスクとからなり、該集電ディスクは、前記電極が固定された内部リード及び/又は封止部の外方に導出された外部リードと、前記金属箔とを電気的に接続してなる放電ランプにおいて、
前記集電ディスクは、前記内部リード及び/又は外部リードに固定される第1のディスクと、該第1のディスクの外周に沿って配置される第2のディスクとからなり、
前記第1のディスクは前記第2のディスクに比較して、延性−脆性転移温度(DBTT)が低い金属からなるとともに、
前記内部リード及び/又は外部リードは、外周面に凹部が形成されていて、前記第1のディスクに形成された貫通孔に挿入されており、
前記第1のディスクを、前記貫通孔近傍において塑性変形させて、当該第1のディスクの一部を前記内部リード及び/又は外部リードの前記凹部に侵入させてカシメ固定しているとともに、該第1のディスクの塑性変形により第2のディスクと接合固定していることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記第1のディスクは、延性−脆性転移温度(DBTT)が室温以下の金属からなることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記第1のディスクはタンタル、ニオブのいずれかであり、第2のディスクはモリブデンであることを特徴とする請求項2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記凹部は、前記内部リード及び/又は外部リードの外周面に円周方向に間隔をあけてドット状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記凹部は、前記内部リード及び/又は外部リードの外周面に円周方向に連続して溝状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は放電ランプに関し、特に、封止部内で金属箔と内部リードとを集電ディスクを介して電気的に接続してなる放電ランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体基板や液晶ディスプレイ用の液晶基板を露光するのに使用する露光装置の紫外線光源として、放電ランプが使用されている。
この種の放電ランプでは、特開2007−115498号公報(引用文献1)に示されるような、封止部内で金属箔と内部リードとを集電ディスクを介して電気的に接続する構造のものが多用されている。
【0003】
図5は、従来の放電ランプの全体断面図である。
図5に示すように、この放電ランプにおいて、石英ガラスにより形成される発光管1は、発光空間Sを囲繞する球形状の発光部2と、この発光部2の両端から外方に伸びるよう連設された筒状の封止部3とにより構成されている。
該発光管1の発光部2内には、陽極4および陰極5が互いに対向するよう配置されており、その各々は、封止部3から発光部2に管軸に沿って伸びる、例えばタングステンよりなる円柱状の内部リード6、6の先端に固定されて支持されている。そして、前記発光管1の発光部2内には、キセノン、アルゴン、クリプトン等の希ガス若しくはこれらの混合物よりなる封入ガスおよび水銀などの発光物質が封入されている。
【0004】
前記発光管1の封止部3内においては、発光部2に接近した位置に、石英ガラスよりなる内部リード保持用筒体7が配設され、前記内部リード6はこの内部リード保持用筒体7を貫通・支持されている。
上記内部リード保持用筒体7の後方には石英ガラスよりなる封止用ガラス部材8が配置されている。
そして、この封止用ガラス部材8の前端面には、前記内部リード保持用筒体7との間に挟まれるように、内部集電ディスク12が設けられている。
【0005】
そして、電極4、5を保持した内部リード6は、前記内部リード保持用筒体7を貫通し、前記内部集電ディスク12に接続されている。
一方、前記封止用ガラス部材8には、その前端面から軸方向に沿って伸びる有底孔8aと、後端面から伸びる有底孔8bが形成されており、これらの有底孔8a、8bにはそれぞれ内部リード6と外部リード9が挿入されている。この外部リード9は封止部3の後方に延出している。
前記封止用ガラス部材8の後端面には外部集電ディスク13が配置され、前記外部リード9は、この外部集電ディスク13を貫通して接続されている。
【0006】
前記封止用ガラス部材8の外周面には、モリブデンよりなる複数の帯状の金属箔11が、当該封止用ガラス部材8の周方向に互いに離間して長手方向に伸びるように配置されており、該金属箔11の各々の内端部は、前記内部集電ディスク12に接続されて内部リード6と電気的に接続されており、一方、前記金属箔11の各々の外端部は、前記外部集電ディスク13に接続されて外部リード9と電気的に接続されている。
これにより、前記内部リード6と外部リード9とは、内部集電ディスク12、金属箔11および外部集電ディスク13を介して電気的に接続される。
そして、封止用ガラス部材8の外周面は、金属箔11を介して封止部3の内面に気密に溶着されている。
なお、前記封止用ガラス部材8の外端側には、外部リード保持用筒体10が配置され、前記外部リード9がこの外部リード保持用筒体10に挿通・支持されていて、該外部リード保持用筒体10の外周面は、封止部3の内面に気密に溶着されている。
【0007】
かかる従来技術においては、前記集電ディスクは、材質としてはモリブデンからなり、内部リード及び外部リードはタングステンで構成される。
そして、内部集電ディスクと内部リード、及び、外部集電ディスクと外部リードとを接合する手段としては、これらの間での電気的導通を図るためにロウ材としてプラチナ(Pt)を使用してロウ付け接合する方法が採用されている。
ところが、プラチナは発光管内に封入された水銀と反応する性質を有するので、集電ディスクの表面にまで到達してくる水銀と反応してアマルガムを形成してしまい、この反応により体積膨張して、封止部が破裂するという問題があった。この現象は、発光部により近い内部集電ディスクにおいて顕著に出現する。
そこで、本出願人は先に、実用新登録第317517号公報(特許文献2)によって、集電ディスクとリードとを接合する際に、ロウ材を用いることなく、カシメ固定によって接合することを提案している。
【0008】
図6に詳細が示されるように、内部リード6の外周面には、その円周方向に凹部15が形成されている。
一方、内部集電ディスク12の中心には、前記内部リード6の外径に適合する内径(若干大きめの内径)の貫通孔12aが形成されており、前記内部リード6は該貫通孔12aに挿入されている。このとき、内部リード6の凹部15が内部リード6の貫通孔12a内に位置するようにする。
そして、集電ディスク12の貫通孔12aの近傍に、その両側からカシメプレス機圧子30、30を当接してプレスする。
これにより、
図7に示すように、集電ディスク12が塑性変形して、その塑性変形した材料の一部12bが、内部リード6の凹部15内に侵入することによって、集電ディスク12は内部リード6にカシメ固定されて接合される。
また、外部集電ディスク13と外部リード9の接合にも同様な手段が採用されている。
【0009】
ところで、先に例示したように、集電ディスクは、耐熱性、電気伝導性、コスト性の観点からモリブデンが使用されている。
しかしながら、集電ディスク12を高い圧力でプレスした際、クラックが入り、内部リード又は外部リードに接合できないことがある。具体的に説明すると、
図8に示されるように、集電ディスク12の貫通孔12aから放射状にクラックCが生じて破損する。
このようなクラックCは、プレス加工時に、室温状態(冷間)において強力な圧力がかかることにより、モリブデンが脆性破壊をしたためであると、本発明者らの調査により判明した。
このような破損は、集電ディスクの材質としてモリブデン以外の材料が選択された場合でも、加工時の温度と当該材料の特性との関係で生じるので、単に材質の選択に留まらない対策が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−115498号公報
【特許文献1】実用新案登録第317517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明が解決しようとする課題は、発光管の封止部内で、電極に繋がる内部リードに集電ディスクが接続され、該集電ディスクが金属箔によって接続されてなる放電ランプにおいて、内部リード及び/又は外部リードと集電ディスクとの接合構造としてカシメ固定による接合構造を採用したものにおいて、集電ディスクに脆性破壊によるクラックや損傷が生じることがなく、強固にかつ歩留まりよく接合することができる、生産性が良好な放電ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明に係る高圧放電ランプでは、前記集電ディスクは、前記内部リード及び/又は外部リードに固定される第1のディスクと、該第1のディスクの外周に沿って配置される第2のディスクとからなり、前記第1のディスクは前記第2のディスクに比較して、延性−脆性転移温度(DBTT)が低い金属からなるとともに、前記内部リード及び/又は外部リードは、外周面に凹部が形成されていて、前記第1のディスクに形成された貫通孔に挿入されており、前記第1のディスクを、前記貫通孔近傍において塑性変形させて、当該第1のディスクの一部を前記内部リード及び/又は外部リードの前記凹部に挿入させてカシメ固定しているとともに、該第1のディスクの塑性変形により第2のディスクと接合固定していることを特徴とする。
また、前記第1のディスクは、延性−脆性転移温度(DBTT)が室温以下の金属からなることを特徴とする。
また、前記第1のディスクはタンタル、ニオブのいずれかであり、第2のディスクはモリブデンであることを特徴とする。
また、前記凹部は、前記内部リードの外周面に円周方向に間隔をあけて形成されていることを特徴とする。
また、前記凹部は、前記内部リードの外周面に円周方向に連続して溝状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、内部リード及び/又は外部リードと集電ディスクとのカシメ接合構造において、集電ディスクを構成する第1のディスクの延性−脆性転移温度(DBTT)が第2のディスクよりも低いので、プレス加工時にもその展延性によって、クラック等の損傷が起こることなく塑性変形して、強固に内部リードに接合することができる。
しかも、該第1のディスクのプレス加工により、外周方向への塑性変形により第2のディスクと接合するので、第1のディスクへのプレス加工により、一度に内部リードと第2のディスクへの接合が同時に行われて、工数の低減が図れる。
また、第1のディスクを、その延性−脆性転移温度(DBTT)が室温以下の金属から構成することによって、部材を加熱することなく室温での加工が可能となる。
更には、第2のディスクをモリブデンで構成できるので、ディスク全体を、より高価なニオブやタンタルで構成するよりも安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】リードと集電ディスクの分解図(A)および組立図(B)。
【
図6】従来例のリードと集電ディスクの接合工程を表す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明にかかる内部リード6と集電ディスク20との接合構造を示す要部断面図であり、
図2は更にその要部の拡大図である。
図1に示すように、発光管1の封止部3内における封止用ガラス部材8の前端面に集電ディスク20が配置されている。
図1および
図2に示すように、該集電ディスク20は、前記内部リード6に固定される第1のディスク21と、該第1のディスク21の外周に外嵌されて配置される第2のディスク22とからなる。
前記第1のディスク21は前記第2のディスク22に比較して、延性−脆性転移温度(DBTT)が低い金属からなっている。また、この第1のディスク21の延性−脆性転移温度は室温(20〜25℃)以下であることが好ましい。
その具体的な材質の一例をあげると、第1のディスク21がタンタル、ニオブなどであり、第2のディスク22はモリブデン、タングステンである。これら材質の延性−脆性転移温度は、それぞれ、モリブデンは30℃、タングステンは300℃であり、タンタルは−113℃、ニオブは−140℃である。
【0016】
一方で、
図2に示すように、前記内部リード6の外周面には凹部15が形成されていて、該内部リード6が前記集電ディスク20の第1のディスク21に形成された貫通孔23内に挿通されたとき、前記凹部15はこの貫通孔23内に位置する。
この凹部15は、円周方向に間隔をあけて形成された複数のドット状の凹部からなるものであってもよいし、円周方向に連続する溝形状であってもよい。また、その断面形状も、図示した三角形の他に、四角形状、半円形状、U字形状など種々の形状であってよい。
【0017】
前記集電ディスク20は、第1のディスク21を、その貫通孔23の近傍で塑性変形させることにより、その材料の一部21bを前記内部リード6の凹部15内に侵入させてカシメ固定されている。
このとき、前記第1のディスク21に外嵌された第2のディスク22は、該第1のディスク21が塑性変形する時にその外周縁では、半径方向外方に膨張するように変形することにより、該第1のディスク21と密着して接合固定される。
これにより、内部リード6−集電ディスク20−金属箔11という電気的接続がなされる。
なお、
図1において、集電ディスク20の前方には内部リード保持用筒体7が配設され、前記内部リード6はこの内部リード保持用筒体7を貫通・支持されている。
また、該内部リード6の前記集電ディスク20を貫通した後端6aは、封止用ガラス部材8に形成した有底孔8a内に挿入されている。
【0018】
前記集電ディスク20と内部リード6詳細な構造及びそのカシメ工程を
図3及び
図4に基づいて説明する。
図3(A)、(B)に示すように、集電ディスク20は第1のディスク21と、これに外嵌される第2のディスク22とからなり、第1のディスク21の貫通孔23を内部リード6が貫通している。
図4に示すように、内部リード6の外周面には周方向の凹部15が形成されていて、該内部リード6が第1のディスク21の貫通孔23を貫通した状態では、前記凹部15は、前記集電ディスク20(第1のディスク21)の貫通孔23内に位置している。
前記内部リード6と第1のディスク21の貫通孔23との隙間、及び第1のディスク21と第2のディスク22との隙間は、ともに、前記第1のディスク21が塑性変形して、それぞれ内部リード6及び第2のディスク22と互いに密着してカシメ固定される程度であって、具体的には、例えば、内部リード6の直径がφ5mm、第1のディスク21の貫通孔23の径が5.05mm、第1のディスク21の外径が10mm、第2のディスク22の内径が10.3mmである。
【0019】
図3(B)のように内部リード6に装着された集電ディスク20において、
図4に示すように、第1のディスク21の貫通孔23近傍に、その両側からカシメプレス機圧子30、30を当接してパンチプレスする。
このプレス加工によって、第1のディスク21が塑性変形して、その内径部分では材料の一部が内部リード6の凹部15内に侵入して、第1のディスク21が内部リード6にカシメ固定される。(
図2参照)
また、該第1のディスク21の外周縁では、前記塑性変形によりその半径方向の外方に膨張して、第2のディスク22と密着して接合固定される。
こうして集電ディスク20は、
図2に示すように、第1のディスク21と第2のディスク22とが接合されるとともに、内部リード6にカシメ固定される。
【0020】
また、
図5に示される外部リード9と外部集電ディスク13との接続においても、上記と同様な構造を採用することができる。
即ち、内部リードと内部集電ディスクの接続構造、外部リードと外部集電ディスクの接続構造の両者とも、本発明の集電ディスク構造とカシメ構造を採用することができるし、いずれか一方のリードと集電ディスクの接続構造においてのみ採用することもできる。
ただいずれか一方のみに本発明の構造を採用する場合、発光部に近い内部リード側では、熱的な影響がより大きいことから、内部リード側に本発明のカシメ構造を採用することがより好ましい。
【0021】
本発明の効果を実証すべく、以下の実験例に基づいて検証を行った。
以下の、実施例、比較例の各仕様に基づいて、集電ディスクと内部リードのサンプルをそれぞれ10本ずつ作製し、得られたサンプルについて、第1〜第3の手順に基づいて、放電ランプに使用することができるか否か、耐久性についての検証を行った。
<実施例1>
・内部リード:タングステン製、円柱状、直径φ5mm
・集電ディスク:
第1のディスク:タンタル製、内径φ5.05mm、外径φ10mm、
厚さ4mm
第2のディスク:モリブデン製、内径10.3mm、外径φ20mm、
厚さ4mm
<実施例2>
上記実施例1における第1のディスクの材質をタンタルに代えてニオブを採用した。それ以外の条件は上記実施例1と同様である。
【0022】
<比較例1>(
図7に示す従来例)
・内部リード:タングステン製、円柱状、直径φ5mm
・集電ディスク:モリブデン製の単一構造
内径φ5.05mm、外径φ20mm、厚さ4mm
<比較例2>
上記実施例1における第1のディスクの材質をタンタルに代えてタングステンを採用した。それ以外の条件は実施例1と同様である。
【0023】
以上の実施例1、2と比較例1、2を表1に示すと以下の通りである。
【0024】
これらの実施例1、2、比較例2は
図4に示した手順に従い、また、比較例1は
図6に示した手順に従って、それぞれ集電ディスクと内部リードとを室温でカシメ固定したもので、それぞれ10本ずつ用意した。
なお、ここで、カシメプレス機の圧子30は鋼製であり、2t程度の荷重で集電ディスクにカシメ加工を行った。
カシメ加工後に、第1に外観検査を行い、カシメ加工により集電ディスクにクラックが発生したかを目視で調べた(クラックが確認された場合は不良と判断)。
第2に、第1の検査で良品と判断されたものについて、500kgfの荷重で集電ディスクと内部リードの引き抜き試験を行い、接合強度に問題がないかを検証した。
第3に、第1及び第2の検査で良品と判断されたものについて、ランプとして使用する場合よりも高い電流である200Aを内部リードと集電ディスクの外縁部間に作用させ、同部品間でスパークや特異な温度上昇などの問題が発生しないかを検証した。
【0025】
以上の実験結果をまとめて表2に示す。
【0026】
表2から明らかなように、比較例2においては、カシメ加工によって10本の全てにクラックが入り、外観検査において良品と判断されるものはなかった。これは、第1のディスクの材料であるタングステンの延性−脆性転移温度(DBTT)が300℃と高いため、室温でのカシメ加工により脆性破壊したためである。
また、従来技術である比較例1においては、試験本数10本のうち外見検査で合格したもの(クラックが入らなかったもの)は6本であり、これら6本を引き抜き試験した結果、合格したものが3本であった。そして、この3本を通電検査した結果、2本が合格した。つまり、当初の10本の内、第1〜第3の検査を通じて合格したものは10本中2本であり、その良品率は2/10であった。
これに対して、本願発明の実施例1、2においては、いずれの試験も合格して、その良品率は10/10であった。
この結果から、集電ディスクの材質としてモリブデンのみを使用した比較例1(従来技術)と比較して、モリブデンディスクの内側にタンタルディスクやニオブディスクを使用した実施例1、2においては、良品率が大幅に向上することが分かった。
【0027】
以上のことから、第2のディスクの内側に設けられる第1のディスクの材料としては、第2のディスク材料より延性−脆性転移温度(DBTT)が低い材料が良く、特に、室温以下の温度であることが好適であって、このような材料を選択すれば、室温によるカシメ加工でクラックが入ることがない。
【0028】
以上説明したように、前記集電ディスクを、内部リード及び/又は外部リードに固定される第1のディスクと、該第1のディスクの外周に沿って配置される第2のディスクとから構成し、前記第1のディスクは前記第2のディスクに比較して、延性−脆性転移温度(DBTT)が低い金属からなるようにしたことにより、前記第1のディスクを、中央に形成した貫通孔近傍において塑性変形させて、当該第1のディスクの一部を前記内部リード及び/又は外部リードの外周面に形成した凹部に侵入させてカシメ固定する際に、該第1のディスクに脆性破壊によるクラックが入ることを防止でき、良品率が飛躍的に向上する。
また、第1のディスクのカシメ加工時の塑性変形によって、第1のディスクと第2のディスクが密着接合するので、特段の接合手段を要することがない。
更に、前記第1のディスクを、延性−脆性転移温度(DBTT)が室温以下の金属から構成することによって、室温でのカシメ加工が可能となり、加工作業の簡略化が図られる。
【符号の説明】
【0029】
1 発光管
2 発光部
3 封止部
4 陽極
5 陰極
6 内部リード
7 内部リード保持用筒体
8 封止用ガラス部材
9 外部リード
11 金属箔
15 内部リードの凹部
20 集電ディスク
21 第1のディスク
22 第2のディスク
23 貫通孔
30 カシメプレス機圧子