(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係る回転レバーの位置保持装置を適用した車両用ドアロック装置を示す図である。この車両用ドアロック装置は、車両の前方右側に装備されるドア(図示省略)に装着される。この車両用ドアロック装置は、ラッチ機構10と、インサイドオープンレバー21と、アウトサイドオープンレバー22と、オープンリンク23と、スプリング24と、アクティブレバー(回転レバー)25と、ハウジング90(ベース部材)とを備えている。また、車両用ドアロック装置は、ハウジング90のカバー(
図1では本体91から取り外されていて図示されていない)に設けられたアンロック保持ガイド92a(
図2参照)と、アクティブレバー25に設けられたロック保持ガイド25aおよび押動アーム部25bを備えている。
【0019】
ラッチ機構10は、周知のように、ドアをボデー(図示省略の車体)に対して閉じた状態で保持するためのものであり、本体91とカバー(図示省略)を備えたハウジング90に組付けられていて、ハウジング90とともにドアに組付けられる。このラッチ機構10は、ボデーに固定されたストライカ(図示省略)に対して係合・離脱可能なラッチ(図示省略)と、このラッチに対して係合・非係合可能でラッチのストライカに対する係合を維持・解放可能なポール(図示省略)と、このポール(図示省略)と一体的なリフトレバー12(
図2参照)を備えている。
【0020】
リフトレバー12には取付孔12aが形成されており、
図2に示したように取付孔12aにてポール(図示省略)の回転軸13に一体的に組付けられ、ポール(図示省略)と一体的に回転する。リフトレバー12は、オープンリンク23の押動頭部23aと係合・離脱可能な係合アーム部12bと、オープンリンク23の受動胴部23bと係合・離脱可能な押動脚部12cとを有し、その主体部(回転軸13に嵌合されている部分)が回転する平面は
図2の紙面に対して略平行である。
【0021】
上記したラッチ機構10のラッチがストライカに係合し、この係合が維持されることで、ドアが閉じた状態(ラッチ状態)に保持される。また、ラッチ機構10のラッチとストライカとの係合が解かれてストライカがラッチから離脱することで、ドアが閉じた状態から開いた状態(アンラッチ状態)に移行する。
【0022】
インサイドオープンレバー21は、ドアの内側に設けられたインサイドドアハンドル(図示省略)のドア開操作に伴って、初期位置(
図1に示した復帰位置)から作動位置(アウトサイドオープンレバー22とオープンリンク23を
図1に示した位置から所定量持ち上げる位置)に回転駆動される。
図1に示したように、インサイドオープンレバー21には支持孔21aが形成され、支持孔21aにてハウジング90に支持軸93を介して回転可能に組付けられる。インサイドオープンレバー21は、インサイドドアハンドルに操作ケーブル(図示省略)を介して連係される操作アーム部21bと、アウトサイドオープンレバー22の係合アーム部22dに係合・離脱可能な第1の押動アーム部21cと、アクティブレバー25の受動部25cに係合・離脱可能な第2の押動アーム部21dを備える。
【0023】
アウトサイドオープンレバー22は、ドアの外側に設けられたアウトサイドドアハンドル(図示省略)のドア開操作に伴って、初期位置(
図2、
図3に示した復帰位置)から作動位置(復帰位置から
図2、
図3の時計回転方向に所定量回転した位置)に回転駆動される。アウトサイドオープンレバー22には、インサイドオープンレバー21に形成されている支持孔21aに対して略直交するように配置された支持孔22aが形成されている。この支持孔22aにて、アウトサイドオープンレバー22がハウジング90に支持軸94を介して回転可能に組付けられる。アウトサイドオープンレバー22は、アウトサイドドアハンドルに例えばリンク等の操作力伝達部材(図示省略)を介して連係される操作部22bと、オープンリンク23と連結された連結孔部(連結部位)22cと、インサイドオープンレバー21の第1の押動アーム部21cに係合・離脱可能な係合アーム部22dを備えている。
【0024】
また、アウトサイドオープンレバー22は、スプリング27によって初期位置に向けて付勢されている。スプリング27は、ハウジング90に対してアウトサイドオープンレバー22を所定の付勢力で初期位置(
図2、
図3に示した位置)に向けて付勢している。また、スプリング27は、ハウジング90に設けられた支持軸94に組付けられるコイル部27aと、このコイル部27aを形成する線材の両端部から径外方に延びる一対のアーム部27b、27cを備えていて、一方のアーム部27bにてアウトサイドオープンレバー22に係合し、他方のアーム部27cにてハウジング90に係合する。
【0025】
オープンリンク23は、上記した押動頭部23aと受動胴部23bを有するとともに、連結脚部23cと支持部23dを有する。オープンリンク23は、連結脚部23cにてアウトサイドオープンレバー22の連結孔部(連結部位)22cに
図2の左右方向に所定量傾動可能に組付けられる。オープンリンク23の主体部(押動頭部23a、受動胴部23b等)が傾動する平面は、
図2の紙面に対して略平行であり、リフトレバー12の主体部が回転する平面に対して並列に配置される。また、オープンリンク23は、支持部23dにてスプリング24を支持している。さらに、オープンリンク23は、アクティブレバー25の押動アーム部25bと係合・離脱可能な係合脚部23eと、ハウジング90のアンロック保持ガイド92aと係合・離脱可能な係合アーム部23fと、アクティブレバー25のロック保持ガイド25a(
図1、
図3参照)と係合・離脱可能な係合胴部23gを有する。
【0026】
オープンリンク23は、インサイドオープンレバー21の初期位置から作動位置への回転駆動時またはアウトサイドオープンレバー22の初期位置から作動位置への回転駆動時に
図2または
図3に示した初期位置からリフトレバー12に向けて押動されて作動位置に移動される。さらにオープンリンク23は、アクティブレバー25のロック位置(
図5(c)に示した位置)からアンロック位置(
図5(a)に示した位置)への移動時にアンロック状態(
図2に示した状態)に切り替えられかつアクティブレバー25のアンロック位置からロック位置への移動時にロック状態(
図3に示した状態)に切り替えられるように構成される。
【0027】
なお、オープンリンク23がアンロック状態にあるとき、各ドアハンドルのドア開操作に伴う各オープンレバー21,22のドア開方向への作動は、オープンリンク23を介してリフトレバー12に伝えられる。一方、オープンリンク23がロック状態にあるとき、各ドアハンドルのドア開操作に伴う各オープンレバー21,22のドア開方向への作動は、オープンリンク23に伝えられるものの、オープンリンク23からリフトレバー12に伝えられない。
【0028】
スプリング24は、アウトサイドオープンレバー22とオープンリンク23間に介装されたリターンスプリングであり、アウトサイドオープンレバー22に対してオープンリンク23をアンロック状態(
図2に示した状態)に向けて付勢する。オープンリンク23がアクティブレバー25と係合している状態では、スプリング24はアクティブレバー25をアンロック位置に向けて常に付勢する。また、スプリング24は、オープンリンク23の支持部23dに組付けられるコイル部24aと、このコイル部24aを形成する線材の両端部から径外方に延びる一対のアーム部24b、24cを備えていて、一方のアーム部24bにてアウトサイドオープンレバー22に係合し、他方のアーム部24cにてオープンリンク23に係合する。なお、スプリング24の付勢力は、上述したスプリング27の付勢力に比して小さく設定される。
【0029】
このため、スプリング24の機能により、ドアロック状態(ドアの施錠状態)において、図示省略のドアハンドルと施解錠操作部材(ドアの内側に設けたロックノブ(図示省略)、ドアの外側から操作可能なキーシリンダ(図示省略)、駆動機構30の電気モータ31(
図1参照)を作動させるためのリモコン等)が同時に操作されてパニック状態となったときに、オープンリンク23が、アンロック状態に向けて付勢されてリフトレバー12の係合アーム部12bに対して弾性的かつ相対移動可能に保持され、
図2に示した初期位置への復帰が許容される。
【0030】
アクティブレバー25は、施解錠操作部材のロック操作により
図1および
図5(a)に示したアンロック位置から
図5(c)に示したロック位置に切り替えられてオープンリンク23を
図3に示したロック状態とする。また、アクティブレバー25は、施解錠操作部材のアンロック操作によりロック位置からアンロック位置に切り替えられてオープンリンク23をアンロック状態とする。アクティブレバー25は、そのボス部に設けた支持孔25dにてハウジング90に支持軸95を介して回転自在に組付けられるとともにハウジング90に支持される。
【0031】
このアクティブレバー25は、上記したロック保持ガイド25a、押動アーム部25b、受動部25c、支持孔25dを備える。さらにアクティブレバー25は、ドアの内側に設けたロックノブ(図示省略)に操作ケーブル(図示省略)を介して連結される操作部25eと、駆動機構30と連係する駆動部25fと、位置決め用のトーションスプリング26に係合する係合ピン部25g(
図1参照)と、ドアの外側に設けたキーシリンダ(図示省略)にロッキングコントロールレバー41、キースイッチレバー42、アウトサイドロッキングレバー43等を介して連係する係合ピン部25gを備えている。
【0032】
また、アクティブレバー25は、ハウジング90の本体91に設けられた第1ストッパ部(第1ストッパ部材)91aと第2ストッパ部(第2ストッパ部材)91b間に配設される突出部25iを有する。そして、アクティブレバー25は、ハウジング90内に組付けられてアクティブレバー25に設けられた係合ピン部25g(
図1参照)に係合する位置決め用のトーションスプリング26によって、アンロック位置(
図1と
図5(a)に示したように突出部25iが第1ストッパ部91aと当接する位置)またはロック位置(
図5(c)に示したように突出部25iが第2ストッパ部91bと当接する位置)にて弾性的に保持されるように構成されている。
【0033】
トーションスプリング26の保持力(アクティブレバー25をロック位置に保持する力)は、スプリング27の付勢力(アウトサイドオープンレバー22を初期位置に向けて付勢する力)に比して大きく設定されている。このため、ドアロック状態では、アウトサイドオープンレバー22、オープンリンク23、アクティブレバー25等が、
図3に示した状態に保持される。
【0034】
押動アーム部25bは、アクティブレバー25のアンロック位置(
図2の位置)からロック位置(
図3の位置)への切り替えによって、アンロック状態にあるオープンリンク23を傾動させるようにオープンリンク23の係合脚部23eと係合可能に構成される。また、押動アーム部25bは、アクティブレバー25がロック位置にある際において、ロック状態にあるオープンリンク23に対してはオープンリンク23のアンロック状態への移動を許容すべくオープンリンク23から離脱可能に構成される。
【0035】
図5は、アクティブレバー25(回転レバー)と両ストッパ部91a,91b(ストッパ部材)とトーションスプリング26の関係を示した作動説明図である。
図5においては、アクティブレバー25の係合ピン部25gとトーションスプリング26との係合を明確とするために、係合ピン部25gとトーションスプリング26が実線で示されている。
【0036】
図5に示すように、第1ストッパ部91aは、アクティブレバー25が
図5において時計周り方向に回転したときにアクティブレバー25の突出部25iに当接してアクティブレバー25をアンロック位置(第1位置)に保持する。
図5(a)は、アクティブレバー25がアンロック位置にある場合における、アクティブレバー25と両ストッパ部91a,91bとトーションスプリング26の関係を示す図である。また、第2ストッパ部91bは、アクティブレバー25が
図5において反時計周り方向に回転したときにアクティブレバー25の突出部25iに当接してアクティブレバー25をロック位置(第2位置)に保持する。
図5(c)は、アクティブレバー25がロック位置にある場合における、アクティブレバー25と両ストッパ部91a,91bとトーションスプリング26の関係を示す図である。
【0037】
トーションスプリング26は、アクティブレバー25とハウジング90の本体91間に介装される。トーションスプリング26は、
図5(a)に示すようにアクティブレバー25がアンロック位置にあるとき、アクティブレバー25の突出部25iを第1ストッパ部91aに向かう第1の方向(時計周り方向)に付勢し、
図5(c)に示すようにアクティブレバー25がロック位置にあるとき、アクティブレバー25の突出部25iを第2ストッパ部91bに向かう第2の方向(反時計周り方向)に付勢する。このトーションスプリング26は、バネ鋼の線材よりなるもので、巻回部分26a、第1腕部分26bおよび第2腕部分26cを有し、自然状態では
図4(a)に示したように第1腕部分26bと第2腕部分26cが交差するように両腕部分26b,26cが閉じられている。自然状態で閉じられた2つの腕部分26b、26cを開かせて、その間に係合ピン部25gを挟み込むんだ状態で、トーションスプリング26が本体91およびアクティブレバー25に組み付けられる。
図4(b)に、組み付け状態におけるトーションスプリングを示す。
【0038】
巻回部分26aは、ハウジング90の本体91に立設されたボス部91c周りに回転可能に装着される。第1腕部分26bと第2腕部分26cは、
図1に示したように組付けられた状態にて、巻回部分26aを形成する線材部分の両端からボス部91cの軸方向とは略直交する径方向に延在していて、アクティブレバー25に形成された係合ピン部25gを両側から挟むように互いに対向し合っている。
【0039】
第1腕部分26bには山部26b1が形成されている。山部26b1は、
図4(b)に示すようにトーションスプリング26が組み付けられた状態において第2腕部分26cに向かって凸状に形成され、頂部26b2と、頂部26b2から第1腕部分26bの基端側に向かって傾斜した基端側傾斜部(第1傾斜部)26b3と、頂部26b2から第1腕部分26bの先端側に向かって傾斜した先端側傾斜部(第2傾斜部)26b4とを有する。アクティブレバー25がアンロック位置にあるときには基端側傾斜部26b3にアクティブレバー25の係合ピン部25gが当接する。一方、アクティブレバー25がロック位置にあるときには先端側傾斜部26b4にアクティブレバー25の係合ピン部25gが当接する。
【0040】
また、第2腕部分26cには、基端部26c2と、直線部26c1(逆方向付勢部)と、先端部26c3とが形成されている。基端部26c2は巻回部分26aから延設されていて、この基端部26c2の先端側に直線部26c1が連続的に形成されて巻回部分26aの径外方に向かって延びている。直線部26c1の先端からほぼ直角に折れ曲がるように先端部26c3が延びている。アクティブレバー25が第1位置と第2位置との間の回転位置にあるときは、アクティブレバー25の係合ピン部25gが直線部26c1に当接する。
【0041】
また、
図1からわかるように、ハウジング90の本体91にはリブ(規制部材)96が設けられる。リブ96は本体91から立設され、
図1に示す正面視にて円弧状に形成されている。
図8は、
図1のA−A断面図であり、リブ96の断面形状を示す。
図8からわかるように、このリブ96は、本体91の上面91dからリブ96の立設方向(上面91dと垂直な方向)に沿って形成された第1側壁面961および第2側壁面962と、両側壁面961,962の上端を接続する上壁面963とを有する。上壁面963は、上方に凸状に形成され、第1側壁面961の上端位置の高さが最も低くなるように第1側壁面961の上端から第2側壁面962側に向かって上方に傾斜した第1傾斜上面部963aと、第2側壁面962の上端位置の高さが最も低くなるように第2側壁面962の上端から第1側壁面961側に向かって上方に傾斜した第2傾斜上面部963bとを有する。このリブ96は、
図1に示すように、トーションスプリング26の第1腕部分26bと第2腕部分26cとの間に位置し、且つ第1側壁面961にトーションスプリング26の第1腕部分26bが当接可能なように、本体91に形成されている。
【0042】
上記のように構成した本実施形態に係る車両用ドアロック装置において、例えば図示しないロックノブの操作力が操作ケーブルを介してアクティブレバー25の操作部25eに作用した場合、アクティブレバー25は支持軸95を中心として回転する。アクティブレバー25の回転範囲は上述したように第1ストッパ部91aと第2ストッパ部91bとにより規制される。したがって、アクティブレバー25は、第1ストッパ部91aに当接したアンロック位置と第2ストッパ部91bに当接したロック位置との間を回転する。
【0043】
アクティブレバー25がアンロック位置からロック位置まで回転した場合、あるいはアクティブレバー25がロック位置からアンロック位置まで回転した場合、アクティブレバー25の係合ピン部25gが円弧軌跡を描く。その円弧軌跡の途中で、係合ピン部25gはトーションスプリング26の第1腕部分26bに形成された山部26b1の頂部26b2に乗り上げる。アクティブレバー25の係合ピン部25gが山部26b1の頂部26b2に乗り上げたときにおけるアクティブレバー25の回転位置を中立位置と定義する。この中立位置は、アンロック位置とロック位置との間の回転位置である。
図5(b)は、アクティブレバー25が中立位置にある場合における、アクティブレバー25と両ストッパ部91a,91bとトーションスプリング26の関係を示す図である。アクティブレバー25がアンロック位置から中立位置までの間の回転位置にあるときは、係合ピン部25gはトーションスプリング26の第1腕部分26bの基端側傾斜部26b3及び第2腕部分26cの直線部26c1に当接する。一方、アクティブレバー25がロック位置から中立位置までの間の回転位置にあるときは、係合ピン部25gはトーションスプリング26の第1腕部分26bの先端側傾斜部26b4および第2腕部分26cの直線部26c1に当接する。
【0044】
図6は、係合ピン部25gがトーションスプリング26の第1腕部分26bの基端側傾斜部26b3および第2腕部分26cの直線部26c1に当接しているとき、すなわちアクティブレバー25がアンロック位置から中立位置までの間の回転位置にあるときに、トーションスプリング26から係合ピン部25gに働く力の向きを示す図である。
図6に示す状態では、トーションスプリング26の第1腕部分26bと第2腕部分26cが係合ピン部25gを挟み込んで締め付けている。第1腕部分26bからの締め付け力は、基端側傾斜部26b3と係合ピン部25gとの接点Pにて接線に垂直な方向に作用する。この締め付け力が弾性力F1として
図6に表わされている。弾性力F1は、アクティブレバー25の回転方向(アクティブレバー25の回転中心Oと接点Pとを結ぶ線分に垂直な方向)に沿った成分(回転方向成分F1a)と径方向に沿った成分(径方向成分F1b)とに分解される。
図6に示す場合においては、回転方向成分F1aは、アクティブレバー25を
図6において時計方向周りに回転させるように作用する。換言すれば、係合ピン部25gと基端側傾斜部26b3との接点位置における弾性力F1の回転方向成分F1aの作用方向が、アクティブレバー25が
図6の時計周りに回転する方向であるように、アクティブレバー25の回転中心Oに対する係合ピン部25gと基端側傾斜部26b3との接点位置が決められている。
【0045】
また、第2腕部分26cからの締め付け力は、直線部26c1と係合ピン部25gとの接点Qにて接線に垂直な方向に作用する。この締め付け力が弾性力F2として
図6に表わされている。弾性力F2は、アクティブレバー25の回転方向(アクティブレバー25の回転中心Oと接点Qとを結ぶ線分に垂直な方向)に沿った成分(回転方向成分)F2aと径方向成分F2bとに分解される。
図6に示す場合においては、回転方向成分F2aは、アクティブレバー25を
図6において反時計周りに回転させるように作用する。換言すれば、係合ピン部25gと直線部26c1との接点位置における弾性力F2の回転方向成分F2aの作用方向が、アクティブレバー25が
図6において反時計周りに回転する方向であるように、アクティブレバー25の回転中心に対する係合ピン部25gと直線部26c1との接点位置が決められている。なお、アクティブレバー25がアンロック位置から中立位置までの間の回転位置にあるときに第2腕部分26cの直線部26c1が係合ピン部25gに接する部分、具体的には、直線部26c1のうち、アクティブレバー25が中立位置にあるときに係合ピン部25gが接する位置よりも基端側寄りの部分(
図5(b)における部分26c4)が、本発明の第1逆方向付勢部に相当する。
【0046】
したがって、弾性力F1の回転方向成分F1aと弾性力F2の回転方向成分F2aとの合力でアクティブレバー25が回転付勢される。この場合において、弾性力F1の回転方向成分F1aよりも弾性力F2の回転方向成分F2aの方が小さくなるように、係合ピン部25gと基端側傾斜部26b3との接点位置、係合ピン部25gと直線部26c1(第1逆方向付勢部)との接点位置、基端側傾斜部26b3からの弾性力F1の大きさ、および直線部26c1(第1逆方向付勢部)からの弾性力F2の大きさが定められている。よって、これらの合力はアクティブレバー25を時計周り方向に回転させるようにアクティブレバー25に作用する。このような合力の作用方向は、
図5に示すようにアクティブレバー25の突出部25iが第1ストッパ部91aに向かう方向である。このため、アクティブレバー25がアンロック位置から中立位置までの間の回転位置にある場合、突出部25iが第1ストッパ部91aに向かう方向(時計周り方向)に回転付勢される。また、アクティブレバー25がアンロック位置にある場合、突出部25iが第1ストッパ部91aに弾性的に押し付けられることで、アクティブレバー25がアンロック位置にある状態が保持される。
【0047】
図7は、係合ピン部25gがトーションスプリング26の第1腕部分26bの先端側傾斜部26b4および第2腕部分26cの直線部26c1に当接しているとき、すなわちアクティブレバー25がロック位置から中立位置までの間の回転位置にあるときに、トーションスプリング26から係合ピン部25gに働く力の向きを示す図である。
図7に示す状態でも、トーションスプリング26の第1腕部分26bと第2腕部分26cが係合ピン部25gを挟み込んで締め付けている。第1腕部分26bからの締め付け力は、先端側傾斜部26b4と係合ピン部25gとの接点にて接線に垂直な方向に作用する。この締め付け力が弾性力F3として
図7に表わされている。弾性力F3は、アクティブレバー25の回転方向(アクティブレバー25の回転中心Oと接点Rとを結ぶ線分に垂直な方向)に沿った成分(回転方向成分)F3aと径方向成分F3bとに分解される。
図7に示す場合においては、回転方向成分F3aは、アクティブレバー25を
図7において反時計方向周りに回転させるように作用する。換言すれば、係合ピン部25gと先端側傾斜部26b4との接点位置における弾性力F3の回転方向成分F3aの作用方向が、アクティブレバー25が
図7の反時計周りに回転する方向であるように、アクティブレバー25の回転中心Oに対する係合ピン部25gと先端側傾斜部26b4との接点位置が決められている。
【0048】
また、第2腕部分26cからの締め付け力は、直線部26c1と係合ピン部25gとの接点Sにて接線に垂直な方向に作用する。この締め付け力が弾性力F4として
図7に表わされている。弾性力F4は、アクティブレバー25の回転方向(アクティブレバー25の回転中心Oと接点Sとを結ぶ線分に垂直な方向)に沿った成分(回転方向成分)F4aと径方向成分F4bとに分解される。
図7に示す場合においては、回転方向成分F4aは、アクティブレバー25を
図7において時計周りに回転させるように作用する。換言すれば、係合ピン部25gと直線部26c1との接点位置における弾性力F4の回転方向成分F4aの作用方向が、アクティブレバー25が
図7において時計周りに回転する方向であるように、アクティブレバー25の回転中心Oに対する係合ピン部25gと直線部26c1との接点位置が決められている。なお、アクティブレバー25がロック位置から中立位置までの間の回転位置にあるときに第2腕部分26cの直線部26c1が係合ピン部25gに接する部分、具体的には、直線部26c1のうち、アクティブレバー25が中立位置にあるときに係合ピン部25gが接する位置よりも先端端側寄りの部分(
図5(b)における部分26c5)が、本発明の第2逆方向付勢部に相当する。
【0049】
したがって、弾性力F3の回転方向成分F3aと弾性力F4の回転方向成分F4aとの合力でアクティブレバー25が回転付勢される。この場合において、弾性力F3の回転方向成分F3aよりも弾性力F4の回転方向成分F4aの方が小さくなるように、係合ピン部25gと先端側傾斜部26b4との接点位置、係合ピン部25gと直線部26c1(第2逆方向付勢部)との接点位置、先端側傾斜部26b4からの弾性力F3の大きさ、および直線部26c1(第2逆方向付勢部)からの弾性力F4の大きさが定められている。よって、これらの合力はアクティブレバー25を時計周り方向に回転させるようにアクティブレバー25に作用する。このような合力の作用方向は、
図5に示すようにアクティブレバー25の突出部25iが第2ストッパ部91bに向かう方向である。このため、アクティブレバー25がロック位置から中立位置までの間の回転位置にある場合、突出部25iが第2ストッパ部91bに向かう方向(反時計周り方向)に回転付勢される。また、アクティブレバー25がロック位置にある場合、突出部25iが第2ストッパ部91bに弾性的に押し付けられることで、アクティブレバー25がロック位置にある状態が保持される。
【0050】
アクティブレバー25がアンロック位置から反時計周り方向に回転してロック位置まで回転変位する場合、係合ピン部25gはトーションスプリング26の第1腕部分26bに形成された山部26b1を乗り越える。山部26b1を乗り越える前まで、すなわちアクティブレバー25がアンロック位置から中立位置に回転変位するまでは、トーションスプリング26がアクティブレバー25を時計周り方向に付勢する。この付勢方向はアクティブレバー25の回転方向と反対方向であるので、トーションスプリング26からアクティブレバー25の回転に対する抵抗力を受ける。一方、山部26b1を乗り越えた後、すなわちアクティブレバー25が中立位置からロック位置に回転変位するまでは、トーションスプリング26がアクティブレバー25を反時計周り方向に付勢する。この付勢方向はアクティブレバー25の回転方向と同一方向であるので、トーションスプリング26によってアクティブレバー25の回転がアシストされる。
【0051】
また、アクティブレバー25がロック位置から時計周り方向に回転してアンロック位置まで回転変位する場合にも、係合ピン部25gは山部26b1を乗り越える。山部26b1を乗り越える前まで、すなわちアクティブレバー25がロック位置から中立位置に回転変位するまでは、トーションスプリング26がアクティブレバー25を反時計周り方向に付勢する。この付勢方向はアクティブレバー25の回転方向と反対方向であるので、トーションスプリング26からアクティブレバー25の回転に対する抵抗力を受ける。一方、山部26b1を乗り越えた後、すなわちアクティブレバー25が中立位置からアンロック位置に回転変位するまでは、トーションスプリング26がアクティブレバー25を時計周り方向に付勢する。この付勢方向はアクティブレバー25の回転方向と同一方向であるので、トーションスプリング26によってアクティブレバー25の回転がアシストされる。
【0052】
このように、アクティブレバー25がアンロック位置からロック位置まで回転変位する場合、および、アクティブレバー25がロック位置からアンロック位置まで回転変位する場合のいずれにおいても、アクティブレバー25が中立位置を越えた後に、回転方向に付勢される。このためアクティブレバー25の回転位置の切り換え動作に節度感を持たせることができる。
【0053】
また、本実施形態においては、アクティブレバー25がアンロック位置からロック位置まで回転変位する場合、および、アクティブレバー25がロック位置からアンロック位置まで回転変位する場合、のいずれにおいても、アクティブレバー25が中立位置を越えた後にトーションスプリング26の第1腕部分26bから回転補助力(回転をアシストする方向に働く付勢力)を受けるとともに第2腕部分26cから回転補助力よりも小さい大きさの回転抵抗力(回転を妨げる方向に働く付勢力)を受ける。回転抵抗力によって相対的に回転方向への付勢力の大きさが小さくされるため、大きな力でアクティブレバー25が回転付勢されることによって第1ストッパ部91aあるいは第2ストッパ部91bに突出部25iが勢いよく衝突して当接音が大きくなることを防止することができる。
【0054】
さらに、本実施形態においては、ハウジング90の本体91にリブ96が設けられている。このリブ96は上述したようにトーションスプリング26の第1腕部分26bと第2腕部分26cとの間に位置するように、本体91に形成される。また、リブ96は、アクティブレバー25がロック位置からアンロック位置に向かって回転する際において、アクティブレバー25がアンロック位置に到達する直前に、トーションスプリング26の第1腕部分26bが第1側壁面961に当接するような位置に配設されている。
【0055】
したがって、アクティブレバー25がロック位置からアンロック位置に向かって回転してアンロック位置に至る直前に、トーションスプリング26の第1腕部分26bがリブ96に当接し、第1腕部分26bのそれ以上の撓み(動き)が規制される。第1腕部分26bのそれ以上の撓み(動き)が規制されるため、係合ピン部25gは第1腕部分26bにそれ以上締め付けられることがなく、その結果、第1腕部分26bから係合ピン部25gに作用する弾性力F1は、第1腕部分26bがリブ96に当接する直前に係合ピン部25gに作用させていた弾性力の大きさに制限される。ここで、第1腕部分26bがリブ96に当接しなかった場合は、アクティブレバー25がアンロック位置に到達するまで係合ピン部25gが第1腕部分26bに締め付けられ続けるため、弾性力F1の回転方向成分F1aは、アクティブレバー25がアンロック位置に到達したときに最も大きくなる。言い換えれば、アクティブレバー25がアンロック位置に到達する前に第1腕部分28bの動き(撓み)をリブ96で規制することで、アクティブレバー25がアンロック位置に到達したときにおける弾性力F1の回転方向成分F1aが、第1腕部分28bの動き(撓み)がリブ96で規制されたときにおける弾性力F1の回転方向成分F1aに制限される。このような回転方向成分F1aの制限により回転補助力が小さくされる。このため、アクティブレバー25が第1ストッパ部91aに当接する際における当接音をより一層低減することができる。この結果、当接音の低減対策が不要となり、当該当接音低減対策のための部品数増加や材料コストアップを無くすことが可能とされる。
【0056】
また、本実施形態で示した形状のリブ96を用いることで、本体91へのトーションスプリング26の組付け性が向上する。リブ96の上壁面963には上述したように第1傾斜上面部963aと第2傾斜上面部963bが形成されている。トーションスプリング26を本体91に組み付ける際には、
図4に示すような自然状態のトーションスプリング26の第1腕部分26b(例えば
図4のC部)がリブ96の第1傾斜上面部963a上に乗り、第2腕部分26c(例えば
図4のD部)がリブ96の第2傾斜上面部963b上に乗るように、リブ96の上方にトーションスプリング26を配置する。そして、トーションスプリング26を下方(本体91)に向けて押さえ付ける。すると、第1腕部分26bが第1傾斜上面部963aに沿って滑るとともに第2腕部分26cが第2傾斜上面部963bに沿って滑る。第1腕部分26bの滑り方向は第2腕部分26cの滑り方向と反対の方向であるので、両腕部分26b、26cがそれぞれの傾斜上面部を滑ることで、閉じていた第1腕部分26bと第2腕部分26cとの間隔が拡げられる。そして、第1側壁面961の上端から第1腕部分26bが落下するとともに第2側壁面962の上端から第2腕部分26cが落下して、第1腕部分26bと第2腕部分26cとでリブ96が挟まれる。そして、リブ96を挟むことにより開かれた第1腕部分26bと第2腕部分26cとの間に係合ピン部25gを挟んだ状態でトーションスプリング26が本体91に組み付けられる。このようにして、トーションスプリング26を開かせた状態での組付けが簡単に行えるので、組み付け性が向上する。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態においては、車両の前方に装備されるドア(前側ドア)に装着されるドアロック装置に本発明を適用した例を示したが、
図9および
図10に示すように車両の後方に装備されるドア(後側ドア)に装着されるドアロック装置に本発明を適用してもよい。尚、
図9は、後側ドアに装着されるドアロック装置のハウジング90の本体91に装着されるアクティブレバー25(係合ピン部25g)と、第1ストッパ部91aと、第2ストッパ部91bと、トーションスプリング26との配置関係を示す図であり、
図10は
図9のB部詳細図である。また、上記実施形態では、アクティブレバー25を回転レバーの一例として示したが、その他のレバーであってその回転操作に節度感を持たせたいものにも本発明を適用することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。