【文献】
長尾光悦 外3名,表情識別に対するMTS法の適用,電気学会論文誌C 電子・情報・システム部門誌,社団法人電気学会,2000年 8月 1日,第120-C巻 第8/9号,第1157−1164頁
【文献】
鈴木新 外1名,符号付きマハラノビス距離による炊飯調理量推定,電気学会論文誌C 電子・情報・システム部門誌,社団法人電気学会,2011年 8月 1日,第131巻 第8号,第1439−1444頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の状態のそれぞれについて複数種類の特徴量を有する学習用の情報から、前記複数の状態のうちの一の状態について前記複数種類の特徴量を因子として直交表を作成する直交表作成手段と、
前記複数の状態のうちの一の状態について、前記特徴量の組み合わせを単位空間としたときの前記複数の状態の他の状態との距離を算出する距離算出手段と、
前記距離算出手段が算出した距離のうち、前記複数種類の特徴量のうち一の特徴量を含む場合の距離の大きさと、前記一の特徴量を含まない場合の距離の大きさとを比較し、前記一の特徴量を含む場合の距離が大きくなる前記一の特徴量を前記一の状態について有効な特徴量として選択するとともに、前記一の状態について有効な特徴量と、前記一の状態以外の他の状態のそれぞれについて有効な特徴量とに基づいて、複数の状態について有効な特徴量を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した前記特徴量について前記学習用の情報を用いて学習する学習手段とを有する情報処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、本構成を用いない場合に比べて、推定方法の学習に要する計算量を低減する推定方法学習プログラム及び情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の推定方法学習プログラム及び情報処理装置を提供する。
【0007】
[1]コンピュータを、
複数の状態のそれぞれについて複数種類の特徴量を有する学習用の情報から、前記複数の状態のうちの一の状態について前記複数種類の特徴量を因子として直交表を作成する直交表作成手段と、
前記複数の状態のうちの一の状態について、前記特徴量の組み合わせを単位空間としたときの前記複数の状態の他の状態との距離を算出する距離算出手段と、
前記距離算出手段が算出した距離のうち、前記複数種類の特徴量のうち一の特徴量を含む場合の距離の大きさと、前記一の特徴量を含まない場合の距離の大きさとを比較し、前記一の特徴量を含む場合の距離が大きくなる前記一の特徴量を前記一の状態について有効な特徴量として選択する
とともに、前記一の状態について有効な特徴量と、前記一の状態以外の他の状態のそれぞれについて有効な特徴量とに基づいて、複数の状態について有効な特徴量を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した前記特徴量について前記学習用の情報を用いて学習する学習手段として機能させるための推定方法学習プログラム。
【0009】
[
2]前記距離算出手段は、前記距離としてマハラノビス距離を算出する前記[1
]に記載の推定方法学習プログラム。
【0010】
[
3]前記選択手段は、前記距離の大きさを評価する値として前記マハラノビス距離のS/N比を用いる前記[
2]に記載の推定方法学習プログラム。
【0011】
[
4]複数の状態のそれぞれについて複数種類の特徴量を有する学習用の情報から、前記複数の状態のうちの一の状態について前記複数種類の特徴量を因子として直交表を作成する直交表作成手段と、
前記複数の状態のうちの一の状態について、前記特徴量の組み合わせを単位空間としたときの前記複数の状態の他の状態との距離を算出する距離算出手段と、
前記距離算出手段が算出した距離のうち、前記複数種類の特徴量のうち一の特徴量を含む場合の距離の大きさと、前記一の特徴量を含まない場合の距離の大きさとを比較し、前記一の特徴量を含む場合の距離が大きくなる前記一の特徴量を前記一の状態について有効な特徴量として選択する
とともに、前記一の状態について有効な特徴量と、前記一の状態以外の他の状態のそれぞれについて有効な特徴量とに基づいて、複数の状態について有効な特徴量を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した前記特徴量について前記学習用の情報を用いて学習する学習手段とを有する情報処理装置。
【発明の効果】
【0012】
請求項1又は5に係る発明によれば、本構成を用いない場合に比べて、推定方法の学習に要する計算量を低減することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、複数の状態について有効な特徴量を選択して、本構成を用いない場合に比べて、推定方法の学習に要する計算量を低減することができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、マハラノビス距離を用いて、推定方法の学習に要する計算量を低減することができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、マハラノビス距離の大きさを評価する値としてマハラノビス距離のS/N比を用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態]
(情報処理装置の構成)
図1は、情報処理装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
この情報処理装置1は、携帯情報端末2を所持する利用者が移動する際に、携帯情報端末2に備えられた加速度センサ20から得られた加速度の情報に基づいて、利用者の状態を推定するものであり、状態の一例として徒歩、バス、車、電車のいずれで移動しているか、又は移動せずに停止しているか推定する。
【0019】
また、情報処理装置1は、上記推定を実行するために必要なアルゴリズムを学習するものであり、徒歩、バス、車、電車のいずれで移動しているか、又は移動せずに停止しているかを示す状態と、当該状態に対応する加速度の情報とを用いて学習する。
【0020】
情報処理装置1は、CPU等から構成され各部を制御するとともに各種のプログラムを実行する制御部10と、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記録媒体から構成され情報を記憶する記憶装置の一例としての記憶部11と、携帯情報端末2と通信する通信部12とを備える。
【0021】
制御部10は、後述する推定方法学習プログラム110を実行することで、加速度情報取得手段100、特徴量抽出手段101、直交表作成手段102、マハラノビス距離算出手段103、要因効果図作成手段104、特徴量選択手段105、アルゴリズム学習手段106、アルゴリズム決定手段107、状態推定手段108及び推定結果出力手段109等として機能する。
【0022】
加速度情報取得手段100は、加速度センサ20が検出した加速度の時間変化(以下、「加速度情報」という。)を取得する。
【0023】
特徴量抽出手段101は、学習時には、加速度情報取得手段100が取得した加速度情報から平均、中央値、偏差値等の特徴量を抽出して学習用情報112として保存する。また、状態推定時には、抽出した特徴量を状態推定手段108に出力する。なお、加速度情報から特徴量を抽出する前に、重力方向の加速度を抽出する等の前処理を行ってもよい。
【0024】
直交表作成手段102は、複数の状態のそれぞれを単位空間とし、特徴量抽出手段101が抽出した特徴量について直交表を作成する。ここで、直交表は、複数種類の特徴量を因子とし、「特徴量を用いる」、「特徴量を用いない」の2つを水準とし、一例として60通りの組み合わせを有するものとする。直交表の詳細については後述する。
【0025】
マハラノビス距離算出手段103は、直交表作成手段102が例えば状態として「徒歩」を単位空間として直交表を作成した場合には、直交表の各組合せの単位空間を作成し、「徒歩」以外の状態(「バス」、「車」、「電車」、「停止」)とのマハラノビス距離の平均を算出する。
【0026】
要因効果図作成手段104は、マハラノビス距離算出手段103が算出したマハラノビス距離について、特徴量のそれぞれについて「特徴量を用いる」場合と「特徴量を用いない」場合でいずれのマハラノビス距離が大きくなるか否かを確かめるためにS/N比を算出し、要因効果図を作成する。要因効果図の詳細については後述する。
【0027】
なお、S/N比(調和平均の対数)を用いるのはマハラノビス距離に加法性がないためであり、マハラノビス距離と大小関係が同じで加法性のある評価値であればよく、単に調和平均、算術平均、相乗平均、幾何平均等であってもよい。
【0028】
特徴量選択手段105は、状態のそれぞれについて、要因効果図作成手段104が作成した要因効果図に基づいて、「特徴量を用いる」場合にマハラノビス距離が大きくなる因子を選択することで特徴量を選択する。また、状態のそれぞれについて選択した特徴量から特徴量評価表を作成し、評価の高い特徴量を選択する。
【0029】
アルゴリズム学習手段106は、学習用情報112を用いて、特徴量選択手段105が選択した特徴量についてデータマイニング等の手法により学習を実行し、アルゴリズムを構築する。
【0030】
アルゴリズム決定手段107は、アルゴリズム学習手段106が構築したアルゴリズムから判別率のよいアルゴリズムを状態推定に用いるアルゴリズムとして決定する。
【0031】
状態推定手段108は、アルゴリズム決定手段107が決定したアルゴリズムを用いて、加速度情報取得手段100が取得し特徴量抽出手段101が状態推定用に抽出した特徴量に基づき携帯情報端末2の状態を推定する。
【0032】
推定結果出力手段109は、状態推定手段108が推定した携帯情報端末2の状態を外部のサーバ等に送信する。なお、携帯情報端末2の状態は、他の携帯情報端末を所持する他の利用者に配信され、他の利用者は携帯情報端末2が「徒歩」の状態であれば電話でコンタクト可能と判断し、「バス」の状態であれば電話は不可でメールであればコンタクト可能と判断し、「車」の状態であればハンズフリーであれば電話は可でメールであればコンタクト可能と判断し、「電車」の状態であれば交通機関のため電話は不可でメールであればコンタクト可能と判断し、「停止」の状態であれば着席中のため電話及びメールでコンタクト可能と判断する、といったようにコンタクトの判断用途に用いられる。
【0033】
記憶部11は、推定方法学習プログラム110、状態推定プログラム111及び学習用情報112等を格納する。
【0034】
推定方法学習プログラム110は、制御部10で実行することにより制御部10を上記した各手段100〜107として機能させるプログラムである。
【0035】
状態推定プログラム111は、制御部10で実行することにより制御部10を上記した各手段108、109として機能させるプログラムである。
【0036】
学習用情報112は、特徴量抽出手段101によって学習用に、加速度情報取得手段100が取得した加速度情報から平均、中央値、偏差値等の特徴量を抽出して保存されたものである。
【0037】
なお、情報処理装置1は、例えば、サーバ装置やパーソナルコンピュータであるが、加速度センサ20を備えた携帯電話等や携帯情報処理端末を用いて構成してもよい。
【0038】
携帯情報端末2は、例えば携帯電話等であり、携帯電話の機能に加えて三軸方向の加速度を検出する加速度センサ20を備える。
【0039】
また、加速度センサ20は、加速度センサの他、照度センサ、近接センサ等を用いてもよい。
【0040】
(情報処理装置の動作)
次に、本実施の形態の作用を、(1)基本動作、(2)学習動作、(3)推定動作に分けて説明する。
【0041】
(1)基本動作
まず、利用者は携帯情報端末2を携帯し、様々な手段で移動をする。一例として、利用者は携帯情報端末2を利用者の着用するシャツの胸ポケットに入れた状態で徒歩、バス、車、電車等の手段で移動するほか、移動せずに停止(着席や休憩)する。
【0042】
(2)学習動作
図5は、情報処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0043】
まず、特徴量抽出手段101は、加速度情報取得手段100が取得した加速度情報から平均、中央値、偏差値等の特徴量を学習用に抽出した学習用情報112を取得する(S1)。
【0044】
次に、直交表作成手段102は、複数の状態のそれぞれを単位空間とし、特徴量抽出手段101が抽出した特徴量について直交表を作成する(S2)。ここで、直交表は、複数種類の特徴量を因子とし、「特徴量を用いる」、「特徴量を用いない」の2つを水準とし、一例として60通りの組み合わせを有するものとする。以下に、状態として「徒歩」を単位空間とした場合の直交表の構成を示す。
【0045】
図2は、直交表の構成の一例を示す概略図である。
【0046】
直交表102aは、「特徴量を用いる」(「○」で表記)又は「特徴量を用いない」(「×」で表記)の組み合わせを行とし、特徴量の種類を列とし、一例として60行、58列で構成される。すべての列は「特徴量を用いる」が30、「特徴量を用いない」が30ずつ含まれるもので、各行はそれぞれ異なる組み合わせとなっている。
【0047】
次に、マハラノビス距離算出手段103は、直交表作成手段102が状態として「徒歩」を単位空間として直交表を作成した場合には、直交表の各組合せ、つまり
図2に示す直交表102aの行についての単位空間を作成し、「徒歩」以外の状態(「バス」、「車」、「電車」、「停止」)とのマハラノビス距離の平均を算出する(S3)。
【0048】
次に、要因効果図作成手段104は、マハラノビス距離算出手段103が算出したマハラノビス距離について特徴量のそれぞれについて「特徴量を用いる」場合と「特徴量を用いない」場合でマハラノビス距離が大きくなるか否かを確かめるために、マハラノビス距離のS/N比を算出し、要因効果図を作成する(S4)。以下に、状態として「徒歩」を単位空間とした場合の要因効果図の構成を示す。
【0049】
図3は、要因効果図の構成の一例を示す概略図である。
【0050】
要因効果
図104aは、左から右へ
図2に示す特徴量を順に並べたものであり、「特徴量を用いる」場合を左に「特徴量を用いない」場合を右にペアとして記載したものである。縦軸は「特徴量を用いる」場合及び「特徴量を用いない」場合のそれぞれについてマハラノビス距離の大きさを示す値としてS/N比を示すものである。
【0051】
次に、特徴量選択手段105は、状態のそれぞれについて、要因効果図作成手段104が作成した要因効果図に基づいて、「特徴量を用いる」場合にマハラノビス距離が大きくなる因子を選択することで特徴量を選択する(S5)。「特徴量を用いる」場合(図面左側)と「特徴量を用いない」場合(図面右側)のペアのうち、
図3に太線及び大ドットで示すように、左側が上がっており、ドットの差が予め定めた閾値以上のペアが「特徴量を用いる」場合にマハラノビス距離が大きくなる因子であり、このペアに該当する特徴量を選択する。
【0052】
また、状態「徒歩」、「バス」、「車」、「電車」、「停止」のそれぞれについて選択した特徴量から特徴量評価表を作成し、評価の高い特徴量を選択する。以下に、特徴量評価表の構成を示す。
【0053】
図4は、特徴量評価表の構成の一例を示す概略図である。
【0054】
特徴量評価表105aは、
図4に示すように、単位空間とした状態と他の状態との組み合わせを行とし、各単位空間において特徴量選択手段105によって選択された特徴量について
図3に示すS/N比の差(「特徴量を用いる」場合のS/N比−「特徴量を用いない」場合のS/N比)を列として構成される。
まず、特徴量選択手段105は、各列についての和を算出し、
図4の最下の行に示す「合計」とする。次に、当該「合計」の値がある閾値以上又は上位に含まれるものを選択する。なお、ある状態において選択されず、他の状態において選択された特徴量については空欄とし、数値は「0」として扱うものとする。また、特徴量選択手段105は、各列の和を算出する際に重み付けする等の変更をしてもよいし、負の値の個数が少ないものを選択する等の変更をしてもよい。
【0055】
次に、アルゴリズム学習手段106は、学習用情報112を用いて、特徴量選択手段105が選択した特徴量についてデータマイニング等の手法により学習を実行し、アルゴリズムを構築する(S6)。
【0056】
アルゴリズム決定手段107は、アルゴリズム学習手段106が構築したアルゴリズムから判別率のよいアルゴリズムを状態推定に用いるアルゴリズムとして決定する(S7)。
【0057】
(3)推定動作
状態推定手段108は、アルゴリズム決定手段107が決定したアルゴリズムを用いて、加速度情報取得手段100が取得し特徴量抽出手段101が状態推定用に抽出した特徴量に基づき携帯情報端末2の状態を推定する。
【0058】
推定結果出力手段109は、状態推定手段108が推定した携帯情報端末2の状態を外部のサーバ等に送信する。
【0059】
携帯情報端末2の状態は、他の携帯情報端末を所持する他の利用者に配信され、他の利用者は携帯情報端末2の状態を確認する。
【0060】
他の利用者は、携帯情報端末2の状態に応じて、利用者にコンタクトをとる手段を判断する。
【0061】
(実施の形態の効果)
上記した実施の形態によると、すべての特徴量の組み合わせについてアルゴリズム学習を行い、判別率の高いアルゴリズムを採用する総当たり法のように本構成を用いない場合に比べて、推定方法の学習に要する計算量を低減することができる。
【0062】
また、すべての特徴量の組み合わせを複数の軸に分割し、各軸についてアルゴリズム学習を行い、判別率の高いアルゴリズムを採用する順位づけ法のように本構成を用いない場合に比べて、特徴量の選択において有効な特徴量を選択し損ねる確率を低減することができる。
【0063】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々な変形が可能である。例えば、特徴量を選択する際に、直交表を評価する指標としてマハラノビス距離のS/N比を用いたが、他の指標を用いてもよい。
【0064】
上記実施の形態では制御部10内の各手段100−109の機能をプログラムで実現したが、各手段の全て又は一部をASIC等のハードウエアによって実現してもよい。また、上記実施の形態で用いたプログラムをCD−ROM等の記録媒体に記憶して提供することもできる。また、上記実施の形態で説明した上記ステップの入れ替え、削除、追加等は本発明の要旨を変更しない範囲内で可能である。