(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーとしてポリマー(A)を用いることで、導電性ポリマーと従来の水酸基含有非導電性ポリマーを用いたとき課題となる着色による透明性の低下と非導電性ポリマーの添加による導電性の低下を抑えることができる。さらに導電性ポリマーとポリマー(A)からなる透明導電層が加熱処理されて形成されることにより、有機電子デバイスに用いた場合、駆動電圧に優れた透明電極が得られることを見出し、本発明に至った次第である。
【0015】
(透明基板)
本発明に用いられる透明基板としては、150℃以上の高温処理を行っても基板の変形などがなければ特に制限はなく、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上の材料が好適に用いられる。また、材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、高い透明性を有していることが好ましい。例えばガラス基板やポリイミドフィルムなどが挙げられるが、透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、バリア性の点から、ガラス基板がより好ましい。
【0016】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。また、透明基板がフィルムの場合には必要に応じてバリアコート層が予め形成されていてもよいし、ハードコート層が予め形成されていてもよい。バリアコート層としては表面または裏面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10
−3g/(m
2・24h)以下のバリア性を持つ透明基板であることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10
−3ml/(m
2・24h・atm)以下、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10
−3g/(m
2・24h)以下であることが好ましい。
【0017】
バリア層を形成する材料としては、水分や酸素等デバイスの劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。さらに該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0018】
(導電性ポリマー)
本発明に係る導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを有してなる導電性ポリマーである。こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
【0019】
(π共役系導電性高分子)
本発明に用いるπ共役系導電性高分子としては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類、の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンが最も好ましい。
【0020】
(π共役系導電性高分子前駆体モノマー)
π共役系導電性高分子の形成に用いられる前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0021】
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0022】
(ポリ陰イオン)
本発明に用いられるポリ陰イオンは、置換もしくは未置換のポリアルキレン、置換もしくは未置換のポリアルケニレン、置換もしくは未置換のポリイミド、置換もしくは未置換のポリアミド、置換もしくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、少なくともアニオン基を有する構成単位を有している。
【0023】
このポリ陰イオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリ陰イオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0024】
ポリ陰イオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0025】
ポリ陰イオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。
【0026】
また、化合物内にさらにF(フッ素原子)を有するポリ陰イオンであってもよい。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)等を挙げることができる。
【0027】
さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリ陰イオンは、水酸基含有非導電性ポリマーとの相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
【0028】
ポリ陰イオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
【0029】
ポリ陰イオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有しないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
【0030】
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/または重合触媒の存在下で、酸化重合またはラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/または重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
【0031】
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
【0032】
得られたポリマーがポリ陰イオン塩である場合には、ポリ陰イオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0033】
導電性ポリマーに含まれるπ共役系導電性高分子とポリ陰イオンの比率、「π共役系導電性高分子」:「ポリ陰イオン」は質量比で1:1〜20が好ましい。導電性、分散性の観点からより好ましくは1:2〜10の範囲である。
【0034】
π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーをポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合して、本発明に係る導電性ポリマーを得る際に使用される酸化剤は、例えばJ.Am.Soc.,85、454(1963)に記載されるピロールの酸化重合に適する、いずれかの酸化剤である。実際的な理由のために、安価でかつ取扱い易い酸化剤、例えば鉄(III)塩、例えばFeCl
3、Fe(ClO
4)
3、有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩、または過酸化水素、重クロム酸カリウム、過硫酸アルカリ(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)またはアンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム及び銅塩例えば四フッ化ホウ酸銅を用いることが好ましい。加えて、酸化剤として随時触媒量の金属イオン例えば鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン及びバナジウムイオンの存在下における空気及び酸素も使用することができる。過硫酸塩並びに有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の使用が腐食性でないために大きな応用上の利点を有する。
【0035】
有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の例としては炭素数1〜20のアルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩、例えばラウリル硫酸;炭素数1〜20のアルキルスルホン酸、例えばメタンまたはドデカンスルホン酸;脂肪族炭素数1〜20のカルボン酸、例えば2−エチルヘキシルカルボン酸;脂肪族パーフルオロカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸及びパーフルオロオクタノン酸;脂肪族ジカルボン酸、例えばシュウ酸並びに殊に芳香族の、随時炭素数1〜20のアルキル置換されたスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩が挙げられる。
【0036】
こうした導電性ポリマーは、市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることができる。
【0037】
第2ドーパントとして水溶性有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることができる水溶性有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、水酸基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等が挙げられる。前記水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、等が挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0038】
(水酸基含有非導電性ポリマー)
本発明に係る水酸基含有非導電性ポリマーはポリマー(A)を一定量含むことを特徴とする。本発明においては、透明導電層に導電性ポリマーとポリマー(A)を併用することで、導電性ポリマー含有層の導電性を向上させることが可能で、さらに、導電性ポリマーとの相溶性も良好で高い透明性が達成できる。これにより透明導電層の膜厚を厚くすることが可能となり、透明性を低下させずに基板表面に付着した異物やパターン導電層の凹凸を埋め込むことができ、有機電子デバイスの電極間のリークを抑制できる。また、本発明の水酸基含有非導電性ポリマーは、水溶性であることが好ましく、ポリマー(A)が、25℃の水100gに0.001g以上溶解することが好ましい。溶解性は、ヘイズメーター、濁度計で測定することができる。さらに、ポリ陰イオンがスルホ基を有する場合は、スルホ基が効果的に脱水触媒として働き、架橋剤等の追加の剤を利用しなくても、導電性ポリマーとポリマー(A)が緻密な架橋層を形成でき、強固な透明導電層を形成できる。そのため、耐久性が高く、基板を洗浄する際、有利である。また、架橋は透明導電層のガラス転移温度やナノインデンテーション弾性率の変化、さらにFTIR測定による官能基の変化により測定できる。
【0039】
(ポリマー(A))
本発明に係るポリマー(A)は、下記一般式(I)及び一般式(II)から選ばれる構造単位を含むポリマーである。
【0040】
ポリマー(A)内の一般式(I)の構造単位の構成率をm、一般式(II)の構造単位の構成率をnとすると、m+nの構成率(mol%)は、50≦m+n≦100であり、m/(m+n)≧0.2である。
【0041】
ポリマー(A)は一般式(I)、及び一般式(II)の構造単位の成分の合計が50mol%以上100%以下であり、かつ一般式(I)の構造単位の成分が20%以上である共重合ポリマーである。一般式(I)、(II)の構造単位の成分の合計が80mol%以上100%以下であることがより好ましい。
【0042】
本発明のポリマー(A)は一般式(I)で表される構造単位と一般式(II)で表される構造単位以外に構造単位を含有していても良い。
【0043】
また、ポリマー(A)における一般式(I)の構造単位の成分が20%より少なくなると水酸基の数が少なくなり、架橋点である水酸基が減少し、膜の安定性、緻密性が減少し、水洗耐性や寿命が悪くなる。
【0045】
本発明一般式(I)で表される水酸基を有する構造単位において、R
1、R
2はそれぞれ独立に水素原子、メチル基を表す。また、Q
1、Q
2はそれぞれ独立に−C(=O)O−、−C(=O)NRa−を表し、Raは水素原子、アルキル基を表す。アルキル基は、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、或いは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は置換基で置換されていても良い。これら置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等で置換されても良い。これらのうち好ましくは、水酸基、アルキルオキシ基である。
【0046】
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。
【0047】
上記置換基の例として、アルキル基は分岐を有していてもよく、炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜8であることが更に好ましい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が含まれる。
【0048】
上記シクロアルキル基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましく、3〜8であることが更に好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が含まれる。上記アルコキシ基は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びオクチルオキシ基が含まれ、好ましくはエトキシ基である。上記アルキルチオ基の炭素数は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が含まれる。上記アリールチオ基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールチオ基の例にはフェニルチオ基及びナフチルチオ基等が含まれる。上記シクロアルコキシ基の炭素原子数は、3〜12であることが好ましく、より好ましくは3〜8である。シクロアルコキシ基の例には、シクロプロポキシ基、シクロブチロキシ基、シクロペンチロキシ基及びシクロヘキシロキシ基が含まれる。上記アリール基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリール基の例にはフェニル基及びナフチル基が含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールオキシ基の例にはフェノキシ基及びナフトキシ基が含まれる。上記ヘテロシクロアルキル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましく、3〜5であることが更に好ましい。ヘテロシクロアルキル基の例にはピペリジノ基、ジオキサニル基及び2−モルホリニル基が含まれる。上記ヘテロアリール基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜10であることが更に好ましい。ヘテロアリール基の例にはチエニル基、ピリジル基が含まれる。上記アシル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アシル基の例にはホルミル基、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。上記アルキルカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アルキルカルボンアミド基の例にはアセトアミド基等が含まれる。上記アリールカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アリールカルボンアミド基の例にはベンズアミド基等が含まれる。上記アルキルスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アルキルスルホンアミド基の例にはメタンスルホンアミド基等が含まれる。上記アリールスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アリールスルホンアミド基の例には、ベンゼンスルホンアミド基及びp−トルエンスルホンアミドが基含まれる。上記アラルキル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アラルキル基の例にはベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が含まれる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルコキシカルボニル基の例にはメトキシカルボニル基が含まれる。上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アリールオキシカルボニル基の例にはフェノキシカルボニル基が含まれる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は8〜20であることが好ましく、8〜12であることが更に好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例にはベンジルオキシカルボニル基が含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アシルオキシ基の例にはアセトキシ基及びベンゾイルオキシ基が含まれる。上記アルケニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルケニル基の例に、ビニル基、アリル基及びイソプロペニル基が含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルキニル基の例にはエチニル基が含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アルキルスルホニル基の例に、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基が含まれる。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールスルホニル基の例に、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基が含まれる。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は1〜20あることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アルキルオキシスルホニル基の例に、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基が含まれる。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールオキシスルホニル基の例に、フェノキシスルホニル基、ナフトキシスルホニル基が含まれる。上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アルキルスルホニルオキシ基の例に、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基が含まれる。
【0049】
上記アリールスルホニルオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールスルホニルオキシ基の例に、フェニルスルホニルオキシ基、ナフチルスルホニルオキシ基が含まれる。置換基は同一でも異なっていても良く、これら置換基が更に置換されても良い。
【0050】
本発明一般式(I)で表される水酸基を有する構造単位において、A
1、A
2はそれぞれ独立に置換或いは無置換アルキレン基、−(CH
2CHRbO)x−、−(CH
2CHRbO)
x−CH
2CHRb−を表す。アルキレン基は、例えば炭素原子数1〜5が好ましく、より好ましくはエチレン基、プロピレン基である。これらのアルキレン基は前述した置換基で置換されていても良い。また、Rbは水素原子、アルキル基を表す。アルキル基は、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、或いは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は前述の置換基で置換されていても良い。更に、xは平均繰り返しユニット数を表し、1〜100が好ましく、より好ましくは1〜10である。繰り返しユニット数は分布を有しており、表記は平均値を示し、小数点以下1桁で表記しても良い。
【0051】
本発明一般式(II)で表される水酸基を有さない構造単位において、Ra、Rb、xは一般式(I)で定義した内容と同義である。
【0052】
本発明一般式(II)で表される水酸基を有さない構造単位において、yは0、1を表す。また、Zはアルキル基、−C(=O)−Rc、−SO
2−Rd、−SiRe
3を表し、アルキル基は、例えば炭素原子数1〜12が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基で、更に好ましくはメチル基である。これらのアルキル基は前述した置換基で置換されても良い。Rc、Rd、Reはアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基を表し、アルキル基は、例えば炭素原子数1〜12が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基で、更に好ましくはメチル基である。これらのアルキル基は前述した置換基で置換されても良い。パーフルオロアルキル基は、例えば炭素原子数1〜8が好ましく、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基で、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。アリール基は、例えばフェニル基、トルイル基が好ましく、より好ましくはトルイル基である。更に、これらのアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基は前述した置換基で置換されても良い。
【0053】
ポリマー(A)は主たる共重合成分がそれぞれ一般式(I)、(II)で表される構造単位を形成するモノマー(I)、(II)の共重合で得ることができる。
【0054】
本発明のポリマー(A)は汎用的な重合触媒を用いたラジカル重合により得ることができる。重合様式としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられ、好ましくは溶液重合である。重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
【0055】
本発明ポリマー(A)の数平均分子量は3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000〜500,000、更に好ましくは5000〜100000の範囲内である。
【0056】
本発明ポリマー(A)の数平均分子量、分子量分布の測定は、一般的に知られているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行うことができる。使用する溶媒は、ポリマー(A)が溶解すれば特に限りはなく、THF、DMF、CH
2Cl
2が好ましく、より好ましくはTHF、DMFであり、更に好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが40℃が好ましい。
【0057】
また、ポリマー(A)は数平均分子量において、分子量1000以下の含有量が0〜5質量%以下であることが好ましい。低分子成分が少ないことで、素子の保存性や、導電層に対して垂直方向に電荷をやりとりする際の、層に対して垂直方向に障壁があるような挙動をより低下させることができる。
【0058】
このポリマー(A)の数平均分子量において、分子量1000以下の含有量が0〜5質量%以下とする方法としては、再沈殿法、分取GPCに、リビング重合による単分散のポリマーを合成等により、低分子量成分を除去する、または低分子量成分の生成を抑制する方法を用いることができる。再沈殿法は、ポリマーが溶解可能な溶媒へ溶解し、ポリマーを溶解した溶媒より溶解性の低い溶媒中へ滴下することにより、ポリマーを析出させ、モノマー、触媒、オリゴマー等の低分子量成分を除去する方法である。また、分取GPCは、例えばリサイクル分取GPCLC−9100(日本分析工業社製)、ポリスチレンゲルカラムで、ポリマーを溶解した溶液をカラムに通すことにより分子量で分けることができ、所望の低分子量成分を除去することができる方法である。リビング重合は、開始種の生成が経時で変化せず、また停止反応等の副反応が少なく、分子量の揃ったポリマーが得られる。分子量はモノマーの添加量により調整できるため、例えば分子量を2万のポリマーを合成すれば、低分子量体の生成を抑制することができる。生産適性から、再沈殿法、リビング重合が好ましい。
【0059】
本発明に係るポリマー(A)の分子量分布は1.01〜1.30が好ましく、より好ましくは1.01〜1.25である。分子量分布は(重量平均分子量/数平均分子量)の比で表す。
【0060】
分子量1000以下の含有量は、GPCにより得られた分布において、分子量1000以下の面積を積算し、分布全体の面積で割ることで割合を換算した。
【0061】
導電性ポリマーとポリマー(A)の比率は、導電性ポリマーを100質量部とした時、ポリマー(A)が30〜900質量部であることが好ましく、ポリマー(A)の導電性アシスト効果、透明性の視点からは、ポリマー(A)が100〜900質量部であることがより好ましい。
【0062】
(加熱処理)
本発明における加熱処理は、150℃以上300℃以下で行われることを特徴とする。導電性ポリマーとポリマー(A)を含有する透明導電層は150℃以上300℃以下の温度範囲で加熱処理されて形成することで、有機電子デバイスに用いた場合、駆動電圧が低下する。駆動電圧が下がることについての原理の詳細は不明であるが、ポリマー(A)と導電性ポリマーからなる透明導電層を高温で処理することにより、透明導電層内のポリマーとパターン導電層との間に何らかの反応が起き、分子レベルでの接点を作りやすくなり導電パスができるためと考えている。さらに、高温で処理することにより、透明導電層の膜構造が安定化し、さらに緻密な膜となるため強固となり、洗浄耐性に優れ、高温環境下での劣化が少ない電極が得られる。
【0063】
加熱処理温度が150℃未満だと、透明導電層とパターン導電層との間の反応が不十分なためか、駆動電圧が低下しない。さらに、透明導電層中に水分が残留してしまい有機電子デバイスの寿命、高温状態での保存性を劣化させてしまう。また、300℃より高い温度で加熱処理を行うと、導電性ポリマーの結合の一部が壊れて始め、抵抗が高くなるため、有機電子デバイスに好適に用いることができない。
【0064】
加熱処理方法は150℃以上300℃以下で処理できれば特に制限はなく、公知の処理方法を用いることができる。例えば、ヒータ、IRヒータ、真空加熱などを挙げることができるが、これに限定されない。加熱処理時間は10秒以上30分以下であることが好ましく、10秒以上10分以下であることがより好ましい。加熱処理時間が10秒以上の場合、透明導電層の水分を十分に減らすことができ、有機電子デバイスの寿命を劣化するのを防止できる。一方、加熱処理が30分以下とすることで、透明導電層の一部の結合が一部壊れ始めるのを防止し、抵抗に影響することを防止できる。
【0065】
(パターン導電層)
本発明に係るパターン導電層は、基板上に金属材料または金属酸化物をパターン状に形成することを特徴とする。パターン導電層には、公知のITOやIZOなどの金属酸化物を用いてもよいし、金属材料を用いてもよい。金属酸化物を用いた場合、透明性は金属材料を用いたものより優れるが、透明電極の抵抗の観点から、金属材料に劣る。そのため、大面積な透明電極を作成するためには、金属材料のほうがより好ましい。
【0066】
パターン導電層に金属材料を用いる場合、金属材料からなる光不透過の導電部と透光性窓部を併せ持つ基板となり、導電性に優れた電極基板が作製できる。金属材料は、導電性に優れていれば特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等の金属の他に合金でもよい。特に、後述のようにパターンの形成のしやすさの観点から金属材料の形状は、金属微粒子または金属ナノワイヤであることが好ましく、金属材料は導電性の観点から銀であることが好ましい。
【0067】
パターン形状には特に制限はないが、例えば、導電部がストライプ状、メッシュ状あるいはランダムな網目状であってもよいが、開口率は透明性の観点から80%以上であることが好ましい。開口率とは、光不透過の導電部が全体に占める割合である。例えば、導電部がストライプ状あるいはメッシュ状であるとき、線幅100μm、線間隔1mmのストライプ状パターンの開口率は、およそ90%である。パターンの線幅は10〜200μmが好ましい。
【0068】
細線の線幅を10μm以上とすることで所望の導電性が得られ、また200μm以下とすることで透明性が向上する。細線の高さは0.1〜10μmが好ましい。細線の高さを0.1μm以上とすることで所望の導電性が得られ、また10μm以下とすることで有機電子デバイスの形成において、電流リークや機能層の膜厚分布不良の要因となるのを防止できる。
【0069】
導電部がストライプ状またはメッシュ状の電極を形成する方法としては、特に、制限はなく、従来公知な方法が利用できる。例えば、基材全面に金属層を形成し、公知のフォトリソ法によって形成できる。具体的には、基材上に全面に、印刷、蒸着、スパッタ、めっき等の1あるいは2以上の物理的または化学的形成手法を用いて導電体層を形成する、あるいは、金属箔を接着剤で基材に積層した後、公知のフォトリソ法を用いて、エッチングすることにより、所望のストライプ状あるいはメッシュ状に加工できる。
【0070】
別な方法としては、金属微粒子を含有するインクをスクリーン印刷により所望の形状に印刷する方法や、メッキ可能な触媒インクをグラビア印刷、あるいは、インクジェット方式で所望の形状に塗布した後、メッキ処理する方法、さらに別な方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用できる。銀塩写真技術を応用した方法については、例えば、特開2009−140750号公報の段落0076〜0112、及び実施例を参考にして実施できる。触媒インクをグラビア印刷してメッキ処理する方法については、例えば、特開2007−281290号公報を参考にして実施できる。
【0071】
ランダムな網目構造としては、例えば、特表2005−530005号公報に記載のような、金属微粒子を含有する液を塗布乾燥することにより、自発的に導電性微粒子の無秩序な網目構造を形成する方法を利用できる。
【0072】
別な方法としては、例えば、特表2009−505358号公報に記載のような、金属ナノワイヤを含有する塗布液を塗布乾燥することで、金属ナノワイヤのランダムな網目構造を形成させる方法を利用できる。
【0073】
金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする繊維状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmサイズの短径を有する多数の繊維状構造体を意味する。
【0074】
金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均短径には特に制限はないが、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。金属ナノワイヤの平均短径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。金属ナノワイヤの目付け量は0.005〜0.5g/m
2が好ましく、0.01〜0.2g/m
2がより好ましい。
【0075】
金属ナノワイヤに用いられる金属としては、銅、鉄、コバルト、金、銀等を用いることができるが、導電性の観点から銀が好ましい。また、金属は単一で用いてもよいが、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、主成分となる金属と1種類以上の他の金属を任意の割合で含んでもよい。
【0076】
金属ナノワイヤの製造方法には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837、Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、銅ナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した銀ナノワイヤの製造方法は、水溶液中で簡便に銀ナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、好ましく適用することができる。
【0077】
また、パターン導電層の細線部の表面比抵抗は、100Ω/□以下であることが好ましく、大面積化するには20Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0078】
また、パターン導電層は加熱することが好ましい。これにより、金属微粒子や金属ナノワイヤ同士の融着が進み、パターン導電層の高導電化するため、特に好ましい。加熱温度は金属微粒子であれば、150℃以上500℃以下であることが好ましく、200℃以上350℃以下であることがより好ましい。
【0079】
(透明導電層)
透明導電層は、パターン形成されたパターン導電層を完全に被覆してもよいし、一部を被覆または接触してもよい。透明導電層は導電性ポリマーとポリマー(A)を含む分散液を塗布、乾燥して膜形成する。透明導電層の塗布は、前述のグラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法を用いることができる。また、転写フィルムに透明導電層を塗布、乾燥して膜形成した後に、パターン導電層を形成し、透明基板に転写してもよい。
【0080】
また、パターン導電層の一部を透明導電層が被覆または接触している透明電極を作製する手段としては、転写フィルムにパターン導電層を上述の方法で形成し、さらに透明導電層を上述の方法で積層したしたものを、上述の透明基板に転写する方法が挙げられる。また、パターン導電層の非導電部にインクジェット法等で公知の方法で、透明導電層を形成する方法等が挙げられる。
【0081】
透明導電層は、さらにポリマー(A)を含むことが特徴である。これにより、高い導電性、高い透明性、強い膜強度を得ることができる。
【0082】
このような構造を有する本発明の導電層を形成することで、金属または金属酸化物細線、あるいは導電性ポリマー層単独では得ることのできない高い導電性を、電極面内において均一に得ることができる。
【0083】
透明導電層の乾燥膜厚は30〜2000nmであることが好ましい。導電性の点から、100nm以上であることがより好ましく、電極の表面平滑性の点から、200nm以上であることがさらに好ましい。また、透明性の点から、1000nm以下であることがより好ましい。
【0084】
透明導電層を塗布した後、適宜乾燥処理を施すことができる。乾燥処理の条件としては加熱処理温度以下で加熱することが好ましい。例えば、80〜120℃で1分以上10分以下の乾燥処理をすることができる。本発明において、乾燥終了後、さらに加熱処理を行うことで、透明導電層の抵抗を下げることができ、さらに透明導電層中の水分を十分に減らすことができる。さらに、高温で処理することにより、透明導電層の膜構造が安定化し強固になる。また、これにより電極の加熱により耐性が著しく向上する。これらの効果により、特に有機EL素子においては、寿命の向上、高温環境下での素子の保存性の向上といった効果が得られる。
【0085】
本発明に係る導電性ポリマー及びポリマー(A)を含む分散液は、導電層の導電性、透明性、平滑性を同時に満たす範囲において、さらに他の透明な非導電性ポリマーや添加剤や架橋剤を含有してもよい。
【0086】
透明な非導電性ポリマーとしては、天然高分子樹脂または合成高分子樹脂から広く選択して使用することができ、水溶性高分子または水性高分子エマルジョンが特に好ましい。水溶性高分子としては、天然高分子のデンプン、ゼラチン、寒天等、半合成高分子のヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、合成高分子のポリビニルアルコール、ポリアクリル酸系高分子、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等が、水性高分子エマルジョンとしては、アクリル系樹脂(アクリルシリコン変性樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等を使用することができる。
【0087】
また、合成高分子樹脂としては、透明な熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン)や、熱・光・電子線・放射線で硬化する透明硬化性樹脂(例えば、メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケート等のシリコン樹脂)を使用することができる。
【0088】
添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料等の着色剤等が挙げられる。さらに、塗布性等の作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0089】
ポリマー(A)の架橋剤としては、例えばオキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、阻止イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤等を単独あるいは複数併用して用いることができる。
【0090】
(有機電子デバイス)
本発明の透明電極は各種有機電子デバイスに用いることができる。有機電子デバイスとは、支持体上にアノード電極と、カソード電極を有し、電極間に少なくとも1層の有機機能層を有する。有機機能層としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層等が挙げられるが、特に限定されない。本発明は、機能層が薄膜でかつ電流駆動系のデバイスである有機発光層、有機光電変換層である場合において、特に有効で、有機ELデバイス、太陽電池等の有機電子デバイスに適用できる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0092】
《導電層の作製》
ガラス基板上に下記塗布液A〜Iを、押し出し法を用いて、乾燥膜厚300nmになるように押し出しヘッドのスリット間隙を調整して塗布し、100℃、1分加熱して、導電層A〜Iとした。
【0093】
(塗布液A)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%)(H.C.Starck社製) 2.00g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.08g
(塗布液B)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製) 1.59g
P−1(固形分20%水溶液) 0.35g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.08g
(塗布液C)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製) 1.59g
P−2(固形分20%水溶液) 0.35g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.08g
(塗布液D)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製) 1.59g
P−3(固形分20%水溶液) 0.35g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.08g
(塗布液E)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
ポリビニルアルコール PVA−235(クレハ製)固形分2% 水溶液
3.50g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.20g
(塗布液F)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
ポリビニルピロリドンK15(粘度平均分子量10、000 東京化成工業)固形分2% 水溶液 3.50g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.20g
(塗布液G)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH750(固形分濃度1.03%)(H.C.Starck社製) 3.27g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.13g
(塗布液H)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH750(固形分濃度1.03%)(H.C.Starck社製) 2.92g
P−1(固形分20%水溶液) 0.35g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.13g
(塗布液I)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製) 1.59g
P−4(固形分20%水溶液) 0.35g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.08g
ポリマー(A)の合成
<ポリマー(A)の合成>
合成例1(ポリマー(A)であるP−1の合成)
500ml三ツ口フラスコにTHF200mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。2−ヒドロキシエチルアクリレート(10.0g、86mmol、分子量:116.05)、AIBN(1.41g、8.5mmol、分子量:164.11)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、5000mlのMEK中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。MEKをデカンテーション後、200mlのMEKで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量35700、分子量分布2.3のP−1を9.0g(収率90%)得た。
【0094】
分子量はGPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
【0095】
<GPC測定条件>
装置:Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414 (Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
合成例2(ポリマー(A)であるP−2の合成)
モノマーとしてヒドロキシメチルアクリレートを用いた以外は合成例1と同様な方法により、P−2を得た。
【0096】
合成例3(ポリマー(A)であるP−3の合成)
200ml三ツ口フラスコにTHF100mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。2−ヒドロキシエチルアクリレート(4.1g、35mmol、分子量:116.05)、ブレンマーPME−900(7.4g、15mmol、分子量:496.29)、AIBN(0.8g、5mmol、分子量:164.11)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、3000mlのMEK中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。MEKをデカンテーション後、100mlのMEKで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量33700、分子量分布2.4のP−3を10.3g(収率90%)得た。
【0097】
合成例4(P−4の合成)
200ml三ツ口フラスコにTHF100mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。2−ヒドロキシエチルアクリレート(0.6g、5mmol、分子量:116.05)、ブレンマーPME−900(21g、45mmol、分子量:496.29)、AIBN(0.8g、5mmol、分子量:164.11)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、3000mlのMEK中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。MEKをデカンテーション後、100mlのMEKで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量34500、分子量分布2.3のP−4を17.3g(収率80%)得た。
【0098】
(電極1〜24の作製)
導電層A〜Iを、それぞれ下記の温度で加熱処理し電極1〜24を作製した。加熱時間は2分とした。
導電層Aを150℃、200℃で加熱して電極1、2とした。
導電層Bを130℃、150℃、200℃、250℃、300℃、330℃で加熱して電極3〜8とした。
導電層Cを200℃、250℃で加熱して電極9、10とした。
導電層Dを200℃、250℃で加熱して電極11、12とした。
導電層Eを150℃、200℃、250℃で加熱して電極13〜15とした。
導電層Fを150℃、200℃、250℃で加熱し電極16〜18とした。
導電層Gを200℃、250℃で加熱して電極19、20とした。
導電層Hを200℃、250℃で加熱して電極21、22とした。
導電層Iを200℃、250℃で加熱して電極23、24とした。
【0099】
《電極1〜24の評価》
得られた電極の透明性、導電性及び膜の水洗耐性を下記のように評価した。
【0100】
(透明性)
東京電色社製 HAZE METER NDH5000を用いて、全光線透過率を測定し、下記基準で評価した。有機電子デバイスに用いるため、80%以上であることが好ましい。
【0101】
○:80%以上
△:75%〜80%未満
×:70%〜75%未満
××:0%〜70%未満
(導電性)
抵抗率計(ロレスタGP(MCP−T610型):(株)三菱化学アナリテック製)を用いて表面抵抗を測定した。表面抵抗は1500Ω/□以下であることが好ましく、有機電子デバイスを大面積にするには、1000Ω/□以下であることがより好ましい。
【0102】
◎:1000Ω/□未満
○:1000〜1500Ω/□未満
△:1500〜3000Ω/□未満
×:3000〜10000Ω/□未満
××:10000Ω/□以上
(膜の洗浄耐性)
洗浄液はMilli−Q水製造装置 Milli−Q Advantage(日本ミリポア(株))を用いて作製した超純水を用い、10分間、洗浄液に基板をつけ、目視により透明導電層の表面に乱れが無いかを下記の基準で評価した。
【0103】
○:なし
×:あり
電極1〜24に用いた導電性ポリマー、非導電性ポリマー及び加熱処理等の試料内容と上記の評価結果を表1にまとめた。
【0104】
【表1】
【0105】
表1から導電性ポリマー単独では厚膜化したときに透明性が悪く、層の洗浄耐性が足りないことが分かる(電極1、2、19、20)。また、親水基含有非導電性ポリマーにポリマー(A)以外のPVAやPVPを用いた場合、導電性、透明性が悪いことがわかる。更に、本発明に係る構造単位を有していても、その構成率が範囲外の場合(m/(m+n)=0.1)は、良好な結果が得られないことが分かる(電極23、24)。一方、親水基含有非導電性ポリマーにポリマー(A)を用い、高温で加熱処理された本発明電極の場合、透明性、導電性、洗浄耐性に優れた透明電極が得られることが分かる。
【0106】
また、パターンの同じAg細線を形成したガラス基板上に、前述の導電層1−24を形成し、透明性、洗浄耐性を評価したところ、透明性はAg細線のロス分だけ透過率が減少しただけで、評価結果の相関関係は表1と同様な結果であり、洗浄耐性は表1と同様な結果が得られた。
【0107】
〈有機ELデバイスの作製〉
次にガラス基板に、以下の方法でAg細線格子、ITO、銀ナノワイヤそれぞれのパターン導電層を作成し、取り出し電極として、ITOをパターン電極につながるようにスパッタした。さらに前述の塗布液A〜Fを用いて、透明導電層を前述の方法でパターン電極層上に300nm積層し、余分な部分については加熱前にふき取りを行った。そして、種々の温度で加熱処理を2分行うことにより有機EL用電極1〜14を作成した。さらに以下の方法で有機EL用電極1〜14を用いて表2で示した基板と導電層の組成と加熱処理温度の組み合わせとなるように有機ELデバイス1〜14を作成した。以下作製の詳細を記す。
【0108】
(Ag細線格子)
3cm角のガラス基板の1.5cm×1.5cmの大きさで中央部に細線格子を作成した。細線格子(金属材料)については以下に示す、インクジェット法により作製した。
【0109】
(インクジェット法)
銀ナノ粒子インク(ハリマNPS−J ハリマ化成製)を、インクジェット記録ヘッドとして、圧力印加手段と電界印加手段とを有し、ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのドット数を表す)のピエゾ型ヘッドを搭載したインクジェットプリント装置に装填し、3cm角のガラス基板の中央部1.5cm×1.5cmの範囲に、線幅50μm、高さ0.5μm、間隔1.0mmの細線格子を印刷した後、220℃、60分の乾燥処理を行った。
【0110】
(銀ナノワイヤ)
3cm角のガラス基板の中央部1.5cm×1.5cmの範囲に、銀ナノワイヤを用いてランダムな網目構造を作製した。
【0111】
銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤの目付け量が0.06g/m
2となるように、銀ナノワイヤ分散液を、バーコート法を用いて塗布し110℃、5分乾燥加熱し、銀ナノワイヤ基板を作製した。余分な部分についてはふき取りを行った。
【0112】
銀ナノワイヤ分散液は、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、PVP K30(分子量5万;ISP社製)を利用して、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別、洗浄処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を銀に対し25質量%加えた水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
【0113】
(ITO基板)
3cm角のガラス基板に、ITO(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により150nm成膜し、ITO基板を作成し、フォトリソ法により、中央部15mm×15mmの範囲にITOが残るようにパターニングした。
【0114】
《有機ELデバイスの作製》
作製した有機EL用電極3〜14を超純水で洗浄後、アノード電極として、以下の手順でそれぞれ有機ELデバイスを作製した。正孔輸送層以降は蒸着により形成した。導電性ポリマーを積層した電極1、2は導電層の一部が洗浄によりはがれてしまうため、洗浄は行わなかった。有機EL用電極1〜14から、洗浄のあとは、同一の処理を施し、それぞれ有機ELデバイス1〜14を作製した。
【0115】
市販の真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に必要量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0116】
まず、正孔輸送層、有機発光層、正孔阻止層、電子輸送層からなる有機EL層を中央部17mm×17mmの範囲に順次形成した。
【0117】
〈正孔輸送層の形成〉
真空度1×10
−4Paまで減圧した後、化合物1の入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ30nmの正孔輸送層を設けた。
【0118】
〈有機発光層の形成〉
次に、以下の手順で各発光層を設けた。
【0119】
形成した正孔輸送層上に、化合物2が13.0質量%、化合物3が3.7質量%、化合物5が83.3質量%になるように、化合物2、化合物3及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で正孔輸送層と同じ領域に共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光の有機発光層を形成した。
【0120】
次いで、化合物4が10.0質量%、化合物5が90.0質量%になるように、化合物4及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で緑赤色燐光発光の有機発光層と同じ領域に共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光の有機発光層を形成した。
【0121】
〈正孔阻止層の形成〉
さらに、形成した有機発光層と同じ領域に、化合物6を膜厚5nmに蒸着して正孔阻止層を形成した。
【0122】
〈電子輸送層の形成〉
引き続き、形成した正孔阻止層と同じ領域に、CsFを膜厚比で10%になるように化合物6と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
【0123】
【化3】
【0124】
〈カソード電極の形成〉
形成した電子輸送層の上に、17mm×17mmの陰極形成用材料としてAlを5×10
−4Paの真空下にてマスク蒸着し、厚さ100nmの陰極を形成した。
【0125】
さらに、陰極及び陽極の外部取り出し端子が形成できるように、端部を除き陽極の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレートを基材としAl
2O
3を厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ封止膜を形成し、発光エリア15mm×15mmの有機ELデバイスを作製した。
【0126】
《有機ELデバイスの評価》
得られた有機ELデバイス1〜14のそれぞれについて電流の面均一性、駆動電圧、寿命及び高温条件下での保存性を下記のように評価した。
【0127】
(電流の面均一性)
電流の面均一性は発光均一性を評価することで行った。KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、各有機EL素子に直流電圧を印加して輝度が1000cd/m
2になるよう発光させ、発光状態を下記基準で目視評価した。
【0128】
○:均一発光しており、問題ない
×:部分的に発光ムラが見られる
(駆動電圧)
初期の輝度を5000cd/m
2で発光した時の電圧を駆動電圧とし、アノード電極として作成した有機EL用透明電極ではなくITOとした有機ELデバイスを上記と同様の方法で作製し、これに対する比率を求め、以下の指標で評価した。95%未満が好ましく90%未満であることがより好ましい。
【0129】
◎:90%未満
○:90〜95%未満
△:95〜100%未満
×:100%以上
(寿命)
得られた有機ELデバイスの、初期の輝度を5000cd/m
2で連続発光させて、電圧を固定して、輝度が半減するまでの時間を求めた。アノード電極として作成した有機EL用透明電極ではなくITOとした有機ELデバイスを上記と同様の方法で作製し、これに対する比率を求め、以下の基準で評価した。100%以上が好ましく、150%以上であることがより好ましい。
【0130】
◎:150%以上
○:100〜150%未満
△:80〜100%未満
×:80%未満
(保存性)
80℃の恒温槽で保存。12時間毎に恒温槽から取り出し、初期の1000cd/m
2発光時の電圧を印加し、その時の輝度を測定、輝度が半減した時間を評価し、保存時間とした。アノード電極として作成した有機EL用透明電極ではなくITOとした有機ELデバイスを上記と同様の方法で作製し、これに対する比率を求め、以下の指標で評価した。100%以上が好ましく、120%以上であることがより好ましい。
【0131】
◎:120%以上
○:100〜120%未満
△:80〜100%未満
×:80%未満
有機ELデバイス1〜14について、上記の電流の面均一性、寿命、高温条件下での輝度保存性の評価結果を、基板、導電層の組成、加熱処理温度条件とともに表2にまとめた。
【0132】
【表2】
【0133】
表2から、導電性ポリマー単独(有機ELデバイス1,2)や水酸基含有しない非導電性ポリマーと導電性ポリマーを併用した場合(有機ELデバイス12)やポリマー(A)に当てはまらない水酸基含有非導電性ポリマーと導電性ポリマーを併用した場合(有機ELデバイス11)は、駆動電圧が高いことが分かる。また、導電性ポリマー単独では、洗浄できないことによる異物の影響や透明性の悪さにより、有機ELの寿命、保存性が悪いことが分かる(有機ELデバイス1,2)。また、親水基含有非導電性ポリマーにポリマー(A)以外のPVAやPVPを用いた場合も、導電性が悪いため、発光が均一にならない。さらに、透明性が悪いため、効率が悪くなり、寿命が悪くなる。一方、親水基含有非導電性ポリマーにポリマー(A)を用い、加熱処理されて形成された本発明の透明電極を用いた場合、駆動電圧が低く、発光均一性、寿命、保存性に優れた有機ELデバイスが得られることが分かる。