特許第5983414号(P5983414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983414
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】車両のスロープ装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/43 20060101AFI20160818BHJP
   A61G 3/06 20060101ALI20160818BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20160818BHJP
   B60R 3/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   B60P1/43 B
   A61G3/06 705
   B60P3/00 A
   B60R3/00
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-3227(P2013-3227)
(22)【出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2014-133496(P2014-133496A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比 和宏
(72)【発明者】
【氏名】林 政也
(72)【発明者】
【氏名】川上 渉
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−041263(JP,A)
【文献】 特開2002−154368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/43
A61G 3/06
B60P 3/00
B60R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室のドア開口部の下辺を構成する部位に上下回動可能な状態で連結されている基端側平板部と、その基端側平板部の先端に上下回動可能な状態で連結されている先端側平板部とを備え、前記基端側平板部が上回動して起立し、その基端側平板部に前記先端側平板部が折り重なった状態で前記車室内に格納され、前記基端側平板部が下回動して倒伏する過程で、先端側平板部をスロープ板展開機構により前記基端側平板部に対して展開させられるように構成された車両のスロープ装置であって、
前記基端側平板部と前記先端側平板部とのいずれか一方には、係合部が設けられており、
前記基端側平板部と前記先端側平板部とのいずれか他方には、前記係合部が係合可能な被係合部が設けられており、
前記係合部は、前記先端側平板部が前記基端側平板部に折り重なる際にその先端側平板部の重量による荷重で前記被係合部と係合し、前記先端側平板部が前記スロープ板展開機構の動作により前記基端側平板部に対して展開する際に前記先端側平板部の重量による荷重よりも大きい先端側平板部の展開力で前記被係合部から外れるように構成されていることを特徴とする車両のスロープ装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のスロープ装置であって、
係合部には、弾性変形可能に構成されたフック部が設けられており、
被係合部には山形部が設けられて、その山形部の一方の斜面に前記係合部のフック部が掛けられる掛り傾斜面が設けられ、前記山形部の他方の斜面に前記掛り傾斜面と頂部を介して連続するように、その掛り傾斜面よりも緩やかな傾斜のガイド傾斜面が設けられており、
前記先端側平板部が前記基端側平板部に折り重なる際、前記係合部のフック部が被係合部のガイド傾斜面に沿って掛り傾斜面の位置まで移動し、前記先端側平板部が前記基端側平板部に対して展開する際に、前記係合部のフック部が被係合部の掛り傾斜面に沿って外れるように構成されていることを特徴とする車両のスロープ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両のスロープ装置であって、
基端側平板部と先端側平板部とには、その基端側平板部と先端側平板部との連結部分を通ってワイヤが通されて、そのワイヤの一端が車室のドア開口部の下辺を構成する部位に連結され、前記ワイヤの他端が先端側平板部に連結されており、
前記基端側平板部が起立する過程でワイヤが弛み、前記先端側平板部が自重で前記基端側平板部に対して折り畳まれ、前記基端側平板部が倒伏する過程で先端側平板部がワイヤに引っ張られ、前記先端側平板部が基端側平板部に対して展開する構成であることを特徴とする車両のスロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員を車椅子で車両に乗車させる際に使用される車両のスロープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用昇降装置が特許文献1に記載されている。
この車両用昇降装置は、車両に荷物等を積み下ろしする際に使用されるプラットホームを昇降するための装置であり、使用後にそのプラットホームを起立させて車両に格納できるように構成されている。そして、格納されたプラットホームはロック装置によって起立位置に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−028962号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した車両用昇降装置において、プラットホームを使用する場合には、ロック装置のロック解除操作を行った後、起立しているプラットホームを水平位置まで展開させてから昇降操作を行う。また、プラットホームを格納した後は、ロック装置によりロック操作を行う。
このように、プラットホームを使用する前にロック解除操作が必要であり、また、プラットホームの格納後にロック操作が必要である。このため、車両用昇降装置の操作が煩雑になる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両のスロープ装置の展開、あるいは格納操作が煩雑にならないようにするとともに、基端側平板部と先端側平板部とが車室内に格納されている状態で、車両走行時にガタツキが発生しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車室のドア開口部の下辺を構成する部位に上下回動可能な状態で連結されている基端側平板部と、その基端側平板部の先端に上下回動可能な状態で連結されている先端側平板部とを備え、前記基端側平板部が上回動して起立し、その基端側平板部に前記先端側平板部が折り重なった状態で前記車室内に格納され、前記基端側平板部が下回動して倒伏する過程で、先端側平板部をスロープ板展開機構により前記基端側平板部に対して展開させられるように構成された車両のスロープ装置であって、前記基端側平板部と前記先端側平板部とのいずれか一方には、係合部が設けられており、前記基端側平板部と前記先端側平板部とのいずれか他方には、前記係合部が係合可能な被係合部が設けられており、前記係合部は、前記先端側平板部が前記基端側平板部に折り重なる際にその先端側平板部の重量による荷重で前記被係合部と係合し、前記先端側平板部が前記スロープ板展開機構の動作により前記基端側平板部に対して展開する際に前記先端側平板部の重量による荷重よりも大きい前記先端側平板部の展開力で前記被係合部から外れるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、係合部は、先端側平板部が基端側平板部に折り重なる際にその先端側平板部の重量による荷重で被係合部と係合するように構成されている。このため、基端側平板部を起立させて車室内に格納することで、その基端側平板部に折り重なった先端側平板部を格納位置に保持できるようになる。したがって、先端側平板部を格納位置に格納した後、ロック機構等を操作する必要がなくなる。
また、係合部は、先端側平板部が基端側平板部に対して展開する際に前記先端側平板部の重量による荷重よりも大きい前記先端側平板部の展開力で前記被係合部から外れるように構成されている。このため、基端側平板部と先端側平板部とが車室内に格納されている状態では、車両走行中の振動等により係合部と被係合部との係合が外れることがなく、先端側平板部が基端側平板部に対してガタツクことがない。さらに、先端側平板部を基端側平板部に対して展開する際にロック機構等を操作してロックを解除する必要がなくなる。
このため、スロープ装置の操作が煩雑でなくなる。
【0008】
請求項2の発明によると、係合部には、弾性変形可能に構成されたフック部が設けられており、被係合部には山形部が設けられて、その山形部の一方の斜面に前記係合部のフック部が掛けられる掛り傾斜面が設けられ、前記山形部の他方の斜面に前記掛り傾斜面と頂部を介して連続するように、その掛り傾斜面よりも緩やかな傾斜のガイド傾斜面が設けられており、前記先端側平板部が前記基端側平板部に折り重なる際、前記係合部のフック部が被係合部のガイド傾斜面に沿って掛り傾斜面の位置まで移動し、前記先端側平板部が前記基端側平板部に対して展開する際に、前記係合部のフック部が被係合部の掛り傾斜面に沿って外れるように構成されていることを特徴とする。
このように、被係合部の山形部におけるガイド傾斜面と掛り傾斜面との傾斜角度を変えることで、係合部と被係合部とが係合する際の力と、前記被係合部から係合部が外れる際の力とを変化させることができるため、構成が簡単になる。
【0009】
請求項3の発明によると、基端側平板部と先端側平板部とには、その基端側平板部と先端側平板部との連結部分を通ってワイヤが通されて、そのワイヤの一端が車室のドア開口部の下辺を構成するボディパネルに連結され、前記ワイヤの他端が先端側平板部に連結されており、前記基端側平板部が起立する過程でワイヤが弛み、前記先端側平板部が自重で前記基端側平板部に対して折り畳まれ、前記基端側平板部が倒伏する過程で先端側平板部がワイヤに引っ張られ、前記先端側平板部が基端側平板部に対して展開する構成であることを特徴とする。
このため、先端側平板部が基端側平板部に対して展開するための構成が簡単になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、車両のスロープ装置の展開、あるいは格納操作が煩雑にならない。さらに、基端側平板部と先端側平板部とが車室内に格納されている状態で、ガタツキが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の本実施形態1に係る車両のスロープ装置の格納状態を表す模式斜視図である。
図2】前記車両のスロープ装置の展開状態を表す模式斜視図である。
図3】前記スロープ装置の格納状態を表す側面図である。
図4】前記スロープ装置の展開状態を表す側面図である。
図5】前記スロープ装置における格納保持機構の動作を表す側面図である。
図6】前記スロープ装置における格納保持機構の動作を表す側面図である。
図7】変更例に係るスロープ装置の格納保持機構を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
以下、図1から図7に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のスロープ装置について説明する。本実施形態に係る車両のスロープ装置は、ワンボックス車両Cのドア開口部Hに設置されて車椅子の乗員をドア開口部Hから乗車させる際に使用される装置である。
なお、図中に示す前後左右及び上下はスロープ装置10を備えるワンボックス車両Cの前後左右及び上下に対応している。
【0013】
<ワンボックス車両Cの概要について>
スロープ装置10を説明する前に、先ず、ワンボックス車両Cの概要について簡単に説明する。
ワンボックス車両C(以下、車両Cという)は、図1図2に示すように、車室の後端部にドア開口部Hを備えており、そのドア開口部Hが上方に跳ね上げ式のバックドアDbによって開閉可能に構成されている。そして、車両Cのドア開口部Hの内側に、乗員を車椅子でドア開口部Hから乗降させる際に使用されるスロープ装置10が設置されている。
【0014】
<スロープ装置10について>
スロープ装置10は、上記したように、乗員を車椅子でドア開口部Hから乗降させる際に使用される装置であり、図2図3等に示すように、スロープ板本体部20と、スロープ板展開機構30と、スロープ板回動機構40と、格納保持機構50とから構成されている。
【0015】
<スロープ板本体部20について>
スロープ板本体部20は、図2図3に示すように、車椅子用のスロープを構成する板部であり、基端側平板部22と、その基端側平板部22の先端に連結部23を介して上下回動可能な状態で連結されている先端側平板部21とから構成されている。
スロープ板本体部20の基端側平板部22と先端側平板部21とは、共に角形をした板状部材であり、両平板部21,22がほぼ等しい幅寸法に設定されている。そして、基端側平板部22が先端側平板部21とよりも長さ寸法が大きく設定されている。
基端側平板部22の基端部は、支持架台15(図2等参照)に支持されており、その支持架台15が車両Cのドア開口部Hの下辺を構成するボディパネル12にヒンジ機構17を介して上下回動可能な状態で連結されている。
ここで、前記支持架台15は、装飾板15eによって覆われており、スロープ板本体部20が前傾となる格納位置(図3参照)まで起立して車室内に格納された状態で、その装飾板15eは、図1に示すように、リヤバンパ13の意匠面と連続するようになる。
【0016】
<スロープ板展開機構30について>
スロープ板本体部20は、スロープ板展開機構30により展開可能に構成されている。
スロープ板展開機構30は、スロープ板本体部20の基端側平板部22が直立位置(図示省略)から後方の倒伏位置(図4参照)まで下回動する過程で、先端側平板部21を基端側平板部22に対して展開させるための機構である。スロープ板展開機構30は、図3等に示すように、スロープ板本体部20の基端側平板部22と先端側平板部21とに通されるワイヤ32と、基端側平板部22と先端側平板部21との連結部23の位置で前記ワイヤ32が掛けられるリール部34とから構成されている。そして、ワイヤ32の一端側が車両Cのボディパネル12の床面位置に固定された第1引き止め金具36に連結されている。また、ワイヤ32の他端側は先端側平板部21の途中位置に設けられた第2引き止め金具38に連結されている。
【0017】
第1引き止め金具36は、図3に示すように、前傾となる格納位置に保持されたスロープ板本体部20の基端側平板部22の直近で、その基端側平板部22の延長線上に位置決めされている。そして、第1引き止め金具36の位置がスロープ板本体部20の回動中心であるヒンジ機構17の位置から前方にズレている。
このため、スロープ板本体部20の基端側平板部22がヒンジ機構17を中心にして前傾の格納位置から直立位置(図示省略)まで後方に回動する間は、第1引き止め金具36から基端側平板部22がほとんど離れることがなく、先端側平板部21がワイヤ32によって引っ張られることがない。したがって、スロープ板本体部20の先端側平板部21は、基端側平板部22に対して折り重なった状態に保持される。
しかし、スロープ板本体部20の基端側平板部22が直立位置から後方の倒伏位置方向に下回動すると、図4に示すように、第1引き止め金具36から基端側平板部22が徐々に後方に離れるようになる。これにより、スロープ板本体部20の先端側平板部21が徐々にワイヤ32に引っ張られ、基端側平板部22に対して上方に回動して展開するようになる。
また、図4に示す状態からスロープ板本体部20の基端側平板部22が徐々に上回動すると、第1引き止め金具38と基端側平板部22とが徐々に接近して、ワイヤ32が緩められ、先端側平板部21は自重で基端側平板部22に対して折り畳まれる方向に回動するようになる。
【0018】
<スロープ板回動機構40について>
スロープ板回動機構40は、スロープ板本体部20の基端側平板部22を格納位置と倒伏位置との間で回動させる機構である。スロープ板回動機構40は、図3図4に示すように、アーム付き歯車42と、アーム付き歯車42のアーム部42aとスロープ板本体部20の基端側平板部22とを連結するリンク43と、前記アーム付き歯車42を回転させるモータ歯車45と、そのモータ歯車45を回転させるモータ46とから構成されている。
アーム付き歯車42は、円盤状の歯車部42wと、その歯車部42wから半径方向外側に突出するアーム部42aとを備えており、前記歯車部42wの中心軸42jが水平な状態で回動機構架台(図示省略)の軸受に回転自在に支持されている。ここで、前記回動機構架台は、車両Cのドア開口部Hの内側に固定されている。
また、前記回動機構架台には、モータ46が固定されており、そのモータ46のモータ歯車45がアーム付き歯車42の歯車部42wと噛合している。そして、アーム付き歯車42のアーム部42aの先端部とスロープ板本体部20の基端側平板部22における回転中心寄り位置がリンク43によって連結されている。
【0019】
上記構成により、図3に示すように、スロープ板本体部20が格納位置にある状態からモータ46が正転方向に回転してアーム付き歯車42が右回転すると、アーム部42aの先端が歯車部42wの外周に沿って上後方に移動し、スロープ板本体部20の基端側平板部22と、その基端側平板部22に折り重なる先端側平板部21とが直立位置(図示省略)まで後方に回動する。この状態から引き続きアーム付き歯車42が右回転すると、アーム部42aの先端が歯車部42wの外周に沿って後方に移動することで、リンク43がスロープ板本体部20の基端側平板部22を押して直立位置から徐々に後方の倒伏位置まで倒伏させる。これにより、スロープ板本体部20の先端側平板部21が、前述のように、基端側平板部22に対して展開し、倒伏位置でスロープ板本体部20の先端側平板部21と基端側平板部22とが、図4に示すように、ワンボックス車両Cのドア開口部Hと地面間に掛け渡される。
また、図4に示すように、スロープ板本体部20が展開されている状態からモータ46が逆転方向に回転してアーム付き歯車42が左回転すると、アーム部42aの先端が歯車部42wの外周に沿って前方に移動することで、リンク43がスロープ板本体部20の基端側平板部22を徐々に引っ張って起立させる。
【0020】
<格納保持機構50について>
格納保持機構50は、スロープ板本体部20の基端側平板部22が前傾の格納位置まで起立した状態で、その基端側平板部22に折り重なる先端側平板部21をガタつかないように基端側平板部22に保持する機構である。
格納保持機構50は、図3図4に示すように、基端側平板部22の裏側に設けられた被係合部52と、先端側平板部21の裏側に設けられて、前記被係合部52と係合可能な係合部55とから構成されている。
格納保持機構50の被係合部52は、図5に示すように、略鏃状に形成された厚板であり、基端側平板部22に固定されるブラケット部53と、ブラケット部53から突出する鏃本体部54とを備えている。鏃本体部54は、中心線Lに対して対称に形成された上下の山形部54mにより略菱形に形成されている。そして、ブラケット部53側に位置する山形部54mの斜面に前記係合部55のフック部56(後記する)が掛けられる掛り傾斜面54kが設けられている。また、前記山形部54mの先端側に位置する斜面に前記掛り傾斜面54kと頂部を介して連続するガイド傾斜面54eが設けられている。
ここで、ガイド傾斜面54eの中心線Lに対する傾斜角度θ1は、掛り傾斜面54kの中心線Lに対する傾斜角度θ2よりも十分小さな値に設定されている。
【0021】
格納保持機構50の係合部55は、図5に示すように、先端側平板部21の裏側の角形凹部21hに収納された板バネであり、側面略横U字形に形成されている。そして、係合部55の上下両端部分に被係合部52の山形部54mと係合可能に構成されたフック部56が設けられている。また、係合部55のフック部56を除く部分が先端側平板部21の角形凹部21hに固定されるコ字形の固定部57となっている。
ここで、係合部55における上下のフック部56間の間隔は、被係合部52の鏃本体部54の幅寸法(上下寸法)よりは十分小さな値に設定されている。また、係合部55の奥行き寸法は、図6に示すように、被係合部52の鏃本体部54の突出寸法よりは十分大きな値に設定されている。
【0022】
上記構成により、スロープ板本体部20の基端側平板部22が直立位置(図示省略)まで上方に回動すると、図5に示すように、被係合部52における鏃本体部54の上下のガイド傾斜面54eに対して係合部55における上下のフック部56の先端部が当接するようになる。そして、この状態からスロープ板本体部20の基端側平板部22が前傾の格納位置まで回動すると、先端側平板部21の重量による荷重で被係合部52の鏃本体部54が相対的に係合部55のフック部56間に押し込まれ、前記フック部56は拡開方向に弾性変形しつつ、ガイド傾斜面54eに沿って掛り傾斜面54kの方向に移動する。そして、スロープ板本体部20の基端側平板部22が格納位置に到達する前に、先端側平板部21の係合部55のフック部56が被係合部52の山形部54mの頂部を乗り越え、バネ力で掛り傾斜面54kに掛けられる(図6参照)。
ここで、被係合部52のガイド傾斜面54eの傾斜角度θ1と、係合部55のフック部56のバネ力は、先端側平板部21の重量による荷重を受けて前記フック部56が被係合部52のガイド傾斜面54eから掛り傾斜面54kの位置まで移動できるような値に設定されている。
【0023】
また、スロープ板本体部20の基端側平板部22が直立位置から後方に回動して先端側平板部21が基端側平板部22に対して展開すると、先端側平板部21の展開力で係合部55の上下のフック部56が被係合部52の上下の掛り傾斜面54kに対して拡開方向に弾性変形し、それらの掛り傾斜面54kに沿って外れるようになる。ここで、被係合部52の掛り傾斜面54kの傾斜角度θ2と、係合部55のフック部56のバネ力は、先端側平板部21の重量による荷重が外れ方向に加わった場合でも係合部55のフック部56が被係合部52の掛り傾斜面54kから外れないような値に設定されている。しかし、被係合部52の掛り傾斜面54kの傾斜角度θ2と、係合部55のフック部56のバネ力は、先端側平板部21の展開力が外れ方向に加わった場合には、係合部55のフック部56が被係合部52の掛り傾斜面54kから外れるような値に設定されている。
なお、先端側平板部21の展開力は、先端側平板部21の重量による荷重よりは十分に大きな値に設定されている。
【0024】
<本実施形態に係る車両のスロープ装置10の動作について>
スロープ装置10がワンボックス車両Cに格納されている状態、即ち、スロープ板本体部20が前傾の格納位置にある状態では、スロープ板本体部20の基端側平板部22に対して先端側平板部21が折り重なっている。そして、格納保持機構50の被係合部52の掛り傾斜面54kに対して係合部55のフック部56が掛けられている。即ち、格納保持機構50の被係合部52と係合部55とが係合している。
前述のように、被係合部52の掛り傾斜面54kの傾斜角度θ2と、係合部55のフック部56のバネ力は、先端側平板部21の重量による荷重が外れ方向に加わった場合でも係合部55のフック部56が被係合部52の掛り傾斜面54kから外れないような値に設定されている。このため、例えば、車両走行中等に振動がスロープ板本体部20に加わった場合でも、スロープ板本体部20の先端側平板部21が基端側平板部22に対してガタつくようなことがなくなる。
次に、スロープ板回動機構40のモータ46が駆動してアーム付き歯車42が図3において右回転すると、リンク43に押されて、スロープ板本体部20の基端側平板部22と先端側平板部21とが折り重なった状態で前傾の格納位置から直立位置(図示省略)まで後方に回動する。さらに、この状態から引き続きアーム付き歯車42が右回転すると、リンク43がスロープ板本体部20の基端側平板部22を直立位置から徐々に後方に下回動させる。これにより、スロープ板展開機構30のワイヤ32がスロープ板本体部20の先端側平板部21を徐々に引っ張り、先端側平板部21に対して展開力が加わるようになる。
【0025】
ここで、格納保持機構50における被係合部52の掛り傾斜面54kの傾斜角度θ2と、係合部55のフック部56のバネ力は、先端側平板部21の展開力が外れ方向に加わった場合には、係合部55のフック部56が被係合部52の掛り傾斜面54kから外れるような値に設定されている。このため、前記展開力で格納保持機構50の係合部55と被係合部52との係合が解除され、スロープ板本体部20の基端側平板部22に対して先端側平板部21が展開するようになる。そして、スロープ板本体部20の基端側平板部22が、図4に示すように、倒伏位置まで下回動することで、先端側平板部21が基端側平板部22に対して約180°展開し、スロープ板本体部20がワンボックス車両Cのドア開口部Hと地面間に掛け渡される。
【0026】
また、スロープ板回動機構40のモータ46の駆動によりアーム付き歯車42が左回転すると、リンク43に引っ張られてスロープ板本体部20の基端側平板部22が倒伏位置から上方に回動する。これにより、スロープ板展開機構30の第1引き止め金具38とスロープ板本体部20の基端側平板部22とが徐々に接近して、ワイヤ32が緩められ、先端側平板部21は自重で基端側平板部22に対して折り畳まれる方向に回動する。このようにして、スロープ板本体部20の基端側平板部22が直立位置まで起立した状態で、先端側平板部21は基端側平板部22に折り重なるようになる。そして、スロープ板本体部20の基端側平板部22が直立位置から格納位置まで前傾する過程で、先端側平板部21の重量による荷重によって被係合部52の鏃本体部54が相対的に係合部55のフック部56間に押し込まれ、係合部55と被係合部52とが係合するようになる。
【0027】
<本実施形態に係る車両のスロープ装置10の長所について>
本実施形態に係る車両のスロープ装置10によると、係合部55は、スロープ板本体部20の先端側平板部21が基端側平板部22に折り重なる際にその先端側平板部21の重量による荷重で被係合部52と係合するように構成されている。このため、基端側平板部22を起立させて車室内に格納することで、その基端側平板部22に折り重なった先端側平板部21を格納位置に保持できるようになる。したがって、先端側平板部21を格納位置に格納した後、ロック機構等を操作する必要がなくなる。
また、係合部55は、先端側平板部21が基端側平板部22に対して展開する際に先端側平板部21の重量による荷重よりも大きい先端側平板部21の展開力で被係合部52から外れるように構成されている。このため、基端側平板部22と先端側平板部21とが車室内に格納されている状態では、車両走行中の振動等により係合部55と被係合部52との係合が外れることがないため、先端側平板部21が基端側平板部22に対してガタツクことがない。さらに、先端側平板部21を基端側平板部22に対して展開する際にロック機構等を操作してロックを解除する必要がなくなる。
このため、スロープ装置10の操作が煩雑でなくなる。
【0028】
また、被係合部52の鏃本体部54の山形部54mにおけるガイド傾斜面54eと掛り傾斜面54kとの傾斜角度を変えることで、係合部55と被係合部52とが係合する際の力と、前記被係合部52から係合部55が外れる際の力とを変化させることができるため、構成が簡単になる。
また、スロープ板展開機構30は、ワイヤ32と、そのワイヤ32が掛けられるリール部34から構成されるため、先端側平板部21を基端側平板部22に対して展開するための構成が簡単になる。
【0029】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、図5図6に示すように、格納保持機構50の被係合部52を略菱形に形成して、その被係合部52の上下両側に掛り傾斜面54kとガイド傾斜面54eとを設け、係合部55の上下両側にフック部56を設ける例を示した。
しかし、図7に示すように、格納保持機構60の被係合部64の上側のみに掛り傾斜面64kとガイド傾斜面64eとを設け、係合部65の上側のみにフック部66を設けるようにすることも可能である。
また、本実施形態では、格納保持機構50の係合部55を板バネから構成する例を示したが、ゴム等の弾性体により構成することも可能である。
また、本実施形態では、スロープ板本体部20の基端側平板部22に被係合部52を設け、先端側平板部21に係合部55を設ける例を示した。しかし、スロープ板本体部20の基端側平板部22に係合部55を設け、先端側平板部21に被係合部52を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0030】
12・・・・ボディパネル
21・・・・先端側平板部
22・・・・基端側平板部
32・・・・ワイヤ
52・・・・被係合部
54e・・・ガイド傾斜面
54k・・・掛り傾斜面
54m・・・山形部
55・・・・係合部
56・・・・フック部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7